ドアロックアクチュエータ
【課題】スーパーロック状態からロック状態またはアンロック状態へと切換可能とし、これらを簡単な制御で選択可能とする。
【解決手段】カム部材(ウォームホイール26)は、ロック作動方向へ回転されることにより、ロータ37をアンロック位置からロック位置へ作動させるロック設定位置を経て、作動部33がスライダ53を連結状態から非連結状態に作動させるスーパーロック設定位置へ回動可能である一方、アンロック作動方向へ回転されることにより、作動部34がスライダ53を非連結状態から連結状態に作動させるスーパーロック解除位置を経て、ロータ37をロック位置からアンロック位置へ作動させるロック解除位置へ回動可能であり、カム部材に、可動接点59を作動させ、カム部材をスーパーロック解除位置に停止させる第1操作部36を設ける。
【解決手段】カム部材(ウォームホイール26)は、ロック作動方向へ回転されることにより、ロータ37をアンロック位置からロック位置へ作動させるロック設定位置を経て、作動部33がスライダ53を連結状態から非連結状態に作動させるスーパーロック設定位置へ回動可能である一方、アンロック作動方向へ回転されることにより、作動部34がスライダ53を非連結状態から連結状態に作動させるスーパーロック解除位置を経て、ロータ37をロック位置からアンロック位置へ作動させるロック解除位置へ回動可能であり、カム部材に、可動接点59を作動させ、カム部材をスーパーロック解除位置に停止させる第1操作部36を設ける。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用のドアロックアクチュエータに関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両用ドアロックアクチュエータは、モータを駆動することにより、車両のドアに配設したドアロック装置のロックレバーを、ロック位置、および、アンロック位置に回動させるものである。特許文献1に記載のドアロックアクチュエータは、車両のインナーロックノブに連結されたノブシャフトと、ロックレバーに連結されたロータとを備えている。これらノブシャフトとロータは、スライダにより連結状態または非連結状態に切換可能に構成されている。そして、モータの駆動によってスライダを非連結位置に作動させることにより、スーパーロック状態とする。なお、スーパーロック状態とは、インナーロックノブを操作してもドアロック状態を解除不可能な状態を意味する。
【0003】
近年では、盗難等を目的とした忍び込み対策、即ち、運転者がドアをアンロック状態として車外にでるまでの間に、他のドアから車内に忍び込む行為を防止するための対策が要望されている。そして、この対策の1つとして、1モーション(1回の操作)で運転席ドアはスーパーロック状態からアンロック状態となり、他席ドアはスーパーロック状態からロック状態に切り換えられる方法が要望されている。即ち、スーパーロック状態からロック状態へ、または、スーパーロック状態から直接アンロック状態ヘ、2種の切換作動が可能なアクチュエータが要望されている。
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載のドアロックアクチュエータでは、このように選択的に作動状態を切り換えることはできない。具体的には、このドアロックアクチュエータは、アンロック状態からロック状態を経てスーパーロック状態とすることはできる一方、スーパーロック状態からはアンロック状態にしか切り換えることができない。即ち、スーパーロック状態からロック状態へ切り換えることはできない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−74242号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、従来の問題に鑑みてなされたもので、スーパーロック状態からロック状態またはアンロック状態へと切換可能とし、これらを簡単な制御で選択可能とするドアロックアクチュエータを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため、本発明のドアロックアクチュエータは、正転駆動および逆転駆動が可能なモータと、前記モータの駆動によりロック作動方向およびアンロック作動方向に回動され、切換用の作動部を設けたカム部材と、ドアロック装置のロックレバーに連結され、該ロックレバーおよび前記カム部材の回動によりロック位置およびアンロック位置間を移動されるロータと、車内に設けられたインナーロックノブに連結されたロックノブと、前記カム部材の作動部によって作動され、前記ロータとロックノブとを連結状態および非連結状態に切り換えるスライダと、前記モータの通電経路を切り換える可動接点と、を備えたドアロックアクチュエータにおいて、前記カム部材は、ロック作動方向へ回転されることにより、前記ロータをアンロック位置からロック位置へ作動させるロック設定位置を経て、前記作動部がスライダを連結状態から非連結状態に作動させるスーパーロック設定位置へ回動可能である一方、アンロック作動方向へ回転されることにより、前記作動部がスライダを非連結状態から連結状態に作動させるスーパーロック解除位置を経て、前記ロータをロック位置からアンロック位置へ作動させるロック解除位置へ回動可能であり、前記カム部材に、前記可動接点を作動させ、前記モータの通電経路を切り換えて該カム部材をスーパーロック解除位置に停止させる第1操作部を設けた構成としている。
【0008】
本発明のドアロックアクチュエータは、スーパーロック状態でアンロック作動させると、カム部材をスーパーロック解除位置(ロック状態)を経てロック解除位置(アンロック状態)に移動可能であるため、ドアロックアクチュエータをスーパーロック状態から直接アンロック状態へ作動させることができる。しかも、カム部材に設けた第1操作部により可動接点を作動させてモータの通電経路を切り換えることにより、カム部材を途中のスーパーロック解除位置(ロック状態)に停止させることができる。また、これらロック解除位置またはスーパーロック解除位置への作動は、通電経路の切り換え後にモータに印加される電流の極性によって選択が可能であるため、電気的な制御信号をドア毎に設定することにより、所定のドアはスーパーロック状態から直接アンロック状態とする一方、他のドアはスーパーロック状態からロック状態とすることができる。
【0009】
このドアロックアクチュエータでは、前記カム部材に、前記可動接点を作動させてモータの通電経路を切り換えることにより、該カム部材をロック設定位置に停止させる第2操作部を更に設けることが好ましい。このようにすれば、部品点数を増やすことなく、安価にスーパーロック状態からロック状態またはアンロック状態へ、アンロック状態からロック状態またはスーパーロック状態へと選択的に作動可能なドアロックアクチュエータを構成できる。
【0010】
また、前記カム部材の第1操作部および第2操作部を、該カム部材の軸方向に沿って所定間隔をもって設けることが好ましい。このようにすれば、各操作部の形成位置の自由度を向上できる。
【発明の効果】
【0011】
本発明のドアロックアクチュエータでは、モータの通電経路の切り換えによりスーパーロック状態からロック状態またはアンロック状態へと選択的に作動させることができる。そのため、1台の車両において、所定のドアはスーパーロック状態から直接アンロック状態とする一方、他のドアはスーパーロック状態からロック状態とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係る実施形態のドアロックアクチュエータを示す平面図である。
【図2】ドアロックアクチュエータの断面図である。
【図3】ケーシングの平面図である。
【図4】ウォームホイールを示し、(A)は平面図、(B)は側面図である。
【図5】ロータを示し、(A)は平面図、(B)は正面図である。
【図6】ロックノブを示し、(A)は平面図、(B)は正面図である。
【図7】スライダを示し、(A)は平面図、(B)は正面図である。
【図8】可動接点を示す平面図である。
【図9】スイッチシャフトを示し、(A)は平面図、(B)は側面図である。
【図10】(A)は各作動の制御信号を示す図表、(B)はドアロックアクチュエータの回路図である。
【図11】アンロック状態からロック作動させた状態を示し、(A)は回路図、(B)は作動状態を示す平面図である。
【図12】図11からの遷移状態を示し、(A)は回路図、(B)は作動状態を示す平面図である。
【図13】(A),(B),(C)はアンロック状態からのロック作動による作動遷移を示す平面図である。
【図14】(A)はロック状態からスーパーロック作動させた状態を示す回路図、(B)はアンロック状態からスーパーロック作動させた状態を示す回路図である。
【図15】(A),(B),(C)はロック状態からのスーパーロック作動による作動遷移を示す平面図である。
【図16】スーパーロック状態でインナーロックノブが操作された状態を示す平面図である。
【図17】スーパーロック状態からスーパーロック解除作動させた状態を示し、(A)は回路図、(B)は作動状態を示す平面図である。
【図18】図17からの遷移状態を示し、(A)は回路図、(B)は作動状態を示す平面図である。
【図19】(A),(B)はスーパーロック状態からのスーパーロック解除作動による作動遷移を示す平面図である。
【図20】(A)はスーパーロック解除状態からアンロック作動させた状態を示す回路図、(B)はスーパーロック状態からアンロック作動させた状態を示す回路図である。
【図21】(A),(B)はスーパーロック解除状態からのアンロック作動による作動遷移を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を図面に従って説明する。
【0014】
図1および図2は、本発明の実施形態に係るドアロックアクチュエータを示す。このドアロックアクチュエータは、車両のドアに搭載したドアロック装置を電動モータ24の動力により施錠および解錠するものである。そして、本実施形態では、施錠および解錠させるために、3個の接続端子部20A〜20Cに対して通電する電気信号を変更することにより、アンロック状態からロック状態、ロック状態(アンロック状態)からスーパーロック状態、スーパーロック状態からロック状態、および、ロック状態(スーパーロック状態)からアンロック状態に切換可能としている。
【0015】
このドアロックアクチュエータは、固定接点19A〜19Cを一体的に設けたケーシング10の内部に、大略、モータ24と、カム部材であるウォームホイール26と、ロータ37と、ロックノブ45と、スライダ53と、可動接点59とが配設されている。
【0016】
ケーシング10は、図2に示すように、上方を開口した箱状のもので、その開口がカバー17により閉塞されている。このケーシング10には、図1および図3に示すように、一端に矩形状をなすモータ配設部11が設けられている。このモータ配設部11の横には、ドアロック装置を制御する車両のメインマイコンを接続する端子接続部12が設けられている。また、このモータ配設部11の下側隅部には、ウォームホイール26を回転可能に装着するカム配設部13が設けられている。このカム配設部13の横には、ウォームホイール26の回転軸28を回転可能に支持する支持部14が設けられている。また、カム配設部13の下側には、ウォームホイール26の外周部に位置するように軸支部15が設けられている。さらに、この軸支部15の横には、ロータ37およびスイッチシャフト61の回動を停止させるストッパ部16が設けられている。なお、カバー17には、後述するスプリング57の突出片58bを位置決めする位置決め部18が設けられている。
【0017】
このケーシング10の底には、電気回路を構成するための固定接点19A〜19Cがインサート成形により敷設されている。これら固定接点19A〜19Cは、ケーシング10の形成前には、所定部位が連結され、この連結部位がインサート成形時に破断(絶縁)されている。各固定接点19A〜19Cは、端子接続部12からカム配設部13の下部の軸支部15にかけて延びるように設けられている。そして、固定接点19A〜19Cの端子接続部12に配置される各一端は、メインマイコンに接続される接続端子部20A〜20Cを構成する。また、各固定接点19A〜19Cの他端は、後述する可動接点59が接続(短絡)される接点部21A〜21Cを構成する。接点部21Aは、軸支部15を中心として円形状をなすように延びる。接点部21B,21Cは、軸支部15を中心として径方向に所定間隔をもって位置するとともに、周方向に所定間隔をもって位置するように配置されている。これにより、一方の接点部21B,21Cが短絡状態となると、他方の接点部21C,21Bが絶縁状態となるように構成している。なお、固定接点19A,19Bの短絡状態および固定接点19A,19Cの短絡状態の間の切換途中でもモータ24への通電を可能とするために、固定接点19A,19B間には第1ダイオード22が配設され、固定接点19A,19C間には第2ダイオード23が配設されている。
【0018】
モータ24は、正転駆動および逆転駆動が可能で、過電流に対してモータ24を保護するポジスターを内蔵したものである。具体的には、このモータ24は、ケーシング10のモータ配設部11に配設されることにより、一方の電極が固定接点19Aの接続端子部20Aに、他方の電極が固定接点19Aの接点部21Aにそれぞれ電気的に接続される。そして、接点部21Aに対して正極の電流が印加されて接続端子部20Aが接地されることにより、正転してロック作動を実行する一方、接続端子部20Aに対して正極の電流が印加されて接点部21Aが接地されることにより、逆転してアンロック作動を実行する。このモータ24の出力軸にはウォームギア25が配設され、その先端が支持部11aに配置されている。このウォームギア25は、ウォームホイール26に対して接線方向に延びるように配設されている。
【0019】
ウォームホイール26は、図2および図4(A),(B)に示すように、下端開口の円筒状をなし、その上側外周部にはウォームギア25に噛み合うギア27が径方向に突出するように設けられている。このウォームホイール26は、別体の回転軸28が貫通されることによりカム配設部13に回転可能に配設され、モータ24の正転駆動によりロック作動方向(時計回り)に回転され、モータ24の逆転駆動によりアンロック作動方向(反時計回り)に回動される。このウォームホイール26の内部にはリターンスプリング29が配設され、このリターンスプリング29により回転前の中立位置に保持されている。ここで、スーパーロック設定位置は、ロック作動方向の回転により、中立位置からロック設定位置を経て更に先方に位置する。即ち、このウォームホイール26は、ロック作動方向へ回転されることにより、中立位置からロック設定位置を経てスーパーロック設定位置へ回動可能である。一方、スーパーロック解除位置は、アンロック作動方向の回転により、中立位置とロック解除位置との間に位置する。即ち、ウォームホイール26は、アンロック作動方向へ回転されることにより、中立位置からスーパーロック解除位置を経てロック解除位置へ回動可能である。なお、リターンスプリング29の内部には、ウォームホイール26の回動範囲を規制するストッパが配設されている。
【0020】
このウォームホイール26には、組付状態で上側に位置する面にカム部30が設けられている。このカム部30は上向きに延びる壁からなり、外周部から中央に向けて流曲線状に延び、ロータ37をアンロック状態からロック状態とするためのロック作動部31と、中央から外周部に向けて流曲線状に延び、ロータ37をロック状態からアンロック状態とするためのアンロック作動部32とを備えている。また、ウォームホイール26には、カム部30のロック作動部31の外周部に、スライダ53を連結位置から非連結位置(スーパーロック位置)に作動させるスーパーロック作動部33が上向きに突出するように設けられている。さらに、ウォームホイール26の外周部には、スライダ53を非連結位置から連結位置(スーパーロック解除位置)に作動させるスーパーロック解除作動部34が上向きに突出するように設けられている。また、ウォームホイール26の外周部には、ギア27の下部に位置するように、可動接点59を作動させてウォームホイール26をロック設定位置に停止させるロック位置停止用操作部35(第2操作部)が設けられている。さらに、ウォームホイール26には、閉塞された下端に位置するように、可動接点59を作動させてウォームホイール26をスーパーロック解除位置に停止させるスーパーロック解除位置停止用操作部36(第1操作部)が設けられている。これら操作部35,36は、ウォームホイール26の外周部において、周方向および軸方向に所定間隔をもって位置するように設けられている。
【0021】
ロータ37は、車外からの鍵を用いた操作により動作するドアロック装置のロックレバーに連結され、このロックレバーまたはウォームホイール26の回動により、ロック位置およびアンロック位置間を移動されるものである。具体的には、図2および図5(A),(B)に示すように、ロータ37は扇形形状をなし、その軸芯に位置するようにケーシング10の軸支部15に回転可能に配設するための軸部38を備えている。このロータ37の一側にはロックレバー連結部39が突設されている。また、ロータ37には、アンロック位置からロック位置へ向けて回動された際に、ケーシング10のストッパ部16に当接することによりロック位置に停止させるストッパ片40が突設されている。さらに、ロータ37には、ウォームホイール26のカム部30内に位置するカム受部41が下向きに突出するように設けられている。また、ロータ37には、カム受部41の横に位置し、円形状の孔と、該孔の対向位置に設けた切欠部とからなるスライダ装着部42が設けられている。このスライダ装着部42とカム受部41との間には、スライダ装着部42を中心として円弧状に延びるガイド溝43が設けられている。このガイド溝43は、軸部38を中心として略径方向に延びるように設けられ、その径方向外側に位置する端部が連結位置を構成し、径方向内側に位置する端部が非連結位置を構成する。そして、ガイド溝43の一方の縁には、スライダ53を連結位置または非連結位置に保持するための弾性片44が設けられている。
【0022】
ロックノブ45は、車内で施錠および解錠するためのインナーロックノブ(図示せず)に連結されるものである。具体的には、ロックノブ45は、図2および図6(A),(B)に示すように、ケーシング10に対してロータ37の上側に位置するように配設される。このロックノブ45は扇形形状をなし、その軸芯に位置するように連結軸部46が設けられている。この連結軸部46は、その下部がロータ37の軸部に同軸で回動可能に外嵌するロータ連結部47を構成する。また、連結軸部46の上部は、カバー17を貫通して外側に突出され、その突出部分がインナーロックノブを連結するための連結部材(図示せず)を連結するインナーロックノブ連結部48を構成する。さらに、ロックノブ45には、スライダ53を介してロータ37と一体的に回転可能な連結状態、および、ロータ37と分離した非連結状態とするための係合溝49が設けられている。この係合溝49は、連結軸部46に対して略径方向に延びる連結用溝部50と、連結軸部46を中心として略周方向に延びる非連結用溝部51とを有する略L字形状をなす。そのうち、連結用溝50部は、ロータ37との連結状態でガイド溝43と上下に略一致する。なお、非連結用溝部51は、連結軸部46に対して径方向外側に位置する縁を、連結用溝部50へ誘導するガイド面となるように、その形状が設定されている。そして、ロックノブ45には、係合溝49の連結用溝部50の横に位置するようにスプリング取付部52が設けられている。
【0023】
スライダ53は、ロータ37に対して下方から配設され、ウォームホイール26の作動部33,34で作動されることにより、ガイド溝43および係合溝49を貫通する連結ピン56によってロータ37とロックノブ45とを連結状態および非連結状態に切り換えるものである。具体的には、スライダ53は、図2および図7(A),(B)に示すように、ロータ37のスライダ装着部42に回転可能に取り付けられる装着部54を備えている。この装着部54は、取付軸の端部に径方向外向きに突出する一対の突片を設けたものである。このスライダ53には、装着部54の逆側下部に位置するように当接片55が突設されている。この当接片55は、ウォームホイール26のスーパーロック作動部33の作動を受けることにより、連結ピン56を中心としてスライダ53を連結位置から非連結位置に回動させる。また、スーパーロック解除作動部34の作動を受けることにより、スライダ53を非連結位置から連結位置に回動させる。そして、このスライダ53には、当接片55の上部に位置するように、ロータ37のガイド溝43およびロックノブ45の係合溝49を貫通するように組み付けられる連結ピン56が突設されている。この連結ピン56は、スライダ53が連結位置に回動した状態では、ガイド溝43の上部、かつ、係合溝49の連結用溝部50内に位置する。これにより、ロックノブ45が連結軸部46を中心として施錠および解錠方向に回動された場合、連結用溝部50の縁が連結ピン56に当接することにより、ロータ37を一緒に回動させる。一方、連結ピン56は、スライダ53が非連結位置に回動した状態では、ガイド溝43の下部、かつ、係合溝49の非連結用溝部51内に位置する。これにより、ロックノブ45が連結軸部46を中心として解錠方向に回動された場合、非連結用溝部51が連結ピン56に当接しないため、ロータ37を回動させることなくロックノブ45だけが回動する。
【0024】
スライダ53は、スーパーロック状態でロックノブ45が解錠操作された際に、付勢部材であるスプリング57によって連結位置に向けて付勢される。このスプリング57は、ロックノブ45のスプリング取付部52に取り付けられる巻回部から突出する一対の突出片58a,58bを備えている。一方の突出片58aは、スライダ53の連結ピン56に配置され、他方の突出片58bがカバー17の位置決め部18に配置される。これにより、連結ピン56を介してスライダ53を連結位置の側に付勢する構成としている。
【0025】
可動接点59は、固定接点19A〜19Cを介してモータ24への通電経路を切り換えることにより、モータ24を駆動および停止させるものである。この可動接点59は、図8に示すように、固定接点19A〜19Cの接点部21A〜21Cにそれぞれ短絡する接続片60a〜60cをそれぞれ備えている。
【0026】
可動接点59は、ウォームホイール26の回動に連動して相対方向に回動するスイッチシャフト61に固定されている。このスイッチシャフト61は、図2および図9(A),(B)に示すように、ロータ37の軸部に外嵌される回転筒部62を備え、この回転筒部62の外周部に略L字形状をなすように可動接点取付部63を設けたものである。回転筒部62の下端は、ケーシング10の軸支部15に外嵌する嵌着部64とされている。この嵌着部64の外周部には、軸方向に沿った上部に、ウォームホイール26のロック位置停止用操作部35の操作を受けるロック位置停止用操作受部65が、径方向外向きに突出するように設けられている。また、嵌着部64の外周部には、軸方向に沿った下部に、ウォームホイール26のスーパーロック解除位置停止用操作部36の操作を受けるスーパーロック解除位置停止用操作受部66が、径方向外向きに突出するように設けられている。さらに、回転筒部62には、ケーシング10のストッパ部16に当接することにより、可動接点59の接続片60a,60bが接点部21A,21Bに短絡した状態で停止させる当接腕部67が設けられている。
【0027】
このように構成したドアロックアクチュエータは、図10(A),(B)に示すように、固定接点19A〜19Cおよび可動接点59により、モータ24を正転駆動または逆転駆動させるための電気回路を構成する。そして、固定接点19A〜19Cの接続端子部20A〜20Cに印加する直流電流の極性を変更することにより、モータ24を動作させてロック作動、スーパーロック作動およびアンロック作動させることができる。具体的には、アンロック状態で、接続端子部20Aを負極とし、接続端子部20Bを負極とし、接続端子部20Cを正極とすることにより、ロック状態に作動させることができる。また、ロック状態またはアンロック状態で、接続端子部20Aを負極とし、接続端子部20Bを正極とし、接続端子部20Cを正極とすることにより、スーパーロック状態に作動させることができる。さらに、スーパーロック状態で、接続端子部20Aを正極とし、接続端子部20Bを負極とし、接続端子部20Cを正極とすることにより、ロック状態に作動させることができる。そして、ロック状態またはスーパーロック状態で、接続端子部20Aを正極とし、接続端子部20Bを負極とし、接続端子部20Cを負極とすることにより、アンロック状態に作動させることができる。
【0028】
次に、各作動について具体的に説明する。
【0029】
まず、アンロック状態では、図1に示すように、ウォームホイール26がリターンスプリング29により中立位置に位置し、可動接点59は固定接点19A,19Cの接点部21A,21Cを短絡させ、固定接点19Bは絶縁状態となっている。この状態で、ロック作動させるために、接続端子部20Aに負極電流を印加し、接続端子部20Bに負極電流を印加し、接続端子部20Cに正極電流を印加すると、図11(A)に示すように、固定接点19A,19Cおよび可動接点59を通してモータ24が通電される。これにより、モータ24は正転駆動し、図11(B)に示すように、ウォームホイール26がロック作動方向に回転され、ロック位置停止用操作部35がスイッチシャフト61のロック位置停止用操作受部65に当接する。
【0030】
その後、ウォームホイール26がロック設定位置まで回転すると、図12(B)に示すように、ロック位置停止用操作部35がロック位置停止用操作受部65を押圧することにより、スイッチシャフト61がウォームホイール26に対して相対方向(反時計回り)に回動する。これにより可動接点59が一緒に回動し、固定接点19A,19C間が遮断状態となり、固定接点19A,19B間が短絡状態となる。しかし、接続端子部20A,20Bは、それぞれ負極電流が印加されているため、図12(A)に示すように、モータ24の駆動は停止する。なお、可動接点59が固定接点19Cの接点部21Cから離反し、固定接点19Bの接点部21Bに短絡するまでの状態では、モータ24の通電は解除されるが、モータ24およびウォームホイール26は僅かに惰性によって作動し続けるため、スイッチシャフト61は、可動接点59が固定接点19Bの接点部21Bに短絡する位置まで回転する。また、このアンロック状態からロック状態に切り換える際のウォームホイール26の回動角度は約100度である。
【0031】
一方、ウォームホイール26が図13(A)に示すアンロック状態からロック作動方向に回転されると、カム部30のロック作動部31によりロータ37のカム受部41がロック位置に向けて押圧される。そして、ウォームホイール26がロック設定位置まで回転すると、図13(B)に示すように、ロータ37がロック位置に回動する。また、この状態では、スライダ53が連結位置に位置しているため、ロータ37と一緒にロックノブ45もロック位置に回動する。この状態で、前述のように、モータ24の駆動が停止するため、ウォームホイール26は、図13(C)に示すように、リターンスプリング29の付勢力で中立位置に回動する。
【0032】
このロック状態(アンロック状態から移行したロック状態)では、前述のように、可動接点59が固定接点19A,19Bの接点部21A,21Bを短絡させ、固定接点19Cは絶縁状態となっている。この状態で、スーパーロック作動させるために、接続端子部20Aに負極電流を印加し、接続端子部20Bに正極電流を印加し、接続端子部20Cに正極電流を印加すると、図14(A)に示すように、固定接点19A,19Bおよび可動接点59を通してモータ24が通電される。これにより、モータ24は正転駆動し、ウォームホイール26がロック作動方向に回転される。なお、アンロック状態でスーパーロック作動させるために、同様の印加状態とした場合には、前述したアンロック状態でロック作動させた場合と同様に、接続端子部20Aに負極電流、接続端子部20Cに正極電流が印加されるため、図14(B)に示す可動接点59が固定接点19A,19Cを短絡させた状態から、続いて図14(A)に示すように、可動接点59が固定接点19A,19Bを短絡させた状態をなす。そのため、アンロック状態でスーパーロック作動させるために、同様の印加状態とした場合には、図13(A),(B)の状態を経て以下の動作を実行する点でのみ、相違する。
【0033】
具体的には、固定接点19A〜19Cに対してスーパーロック作動させるための印加が行われると、ウォームホイール26は、図15(A)に示すように、図13(B)に示すロック設定位置を越えて回動する。これにより、スライダ53の当接片55にウォームホイール26のスーパーロック作動部33が当接する。その後、ウォームホイール26がスーパーロック設定位置まで回転すると、スーパーロック作動部33が当接片55を押圧することにより、図15(B)に示すように、スライダ53が時計回りに回動する。その結果、スライダ53の連結ピン56は、弾性片44の弾性力に抗して、ロータ37のガイド溝43内およびロックノブ45の係合溝49内で移動し、ロックノブ45の非連結用溝部51内に位置する。なお、このスライダ53の回動状態は、弾性片44の弾性力で維持される。また、ウォームホイール26は、ケーシング10によって回動が規制されることにより、ロック作動方向の回転が停止される。このウォームホイール26の回動角度は、中立位置を基準とすると約170度である。また、モータ24は、タイマにより通電開始から所定時間(0.4秒)後に遮断されることにより停止される。これにより、ウォームホイール26は、図15(C)に示すように、リターンスプリング29の付勢力で中立位置に回動する。
【0034】
このスーパーロック状態では、例えば、ドアとガラスとの隙間から針金等を挿入し、車内のインナーロックノブをアンロック操作した場合、ロータ37とロックノブ45との連結が解除されているため、図16に示すように、ロックノブ45だけが回動し、ロータ37を回動させることはできない。その結果、ドアロック装置のロックレバーを操作することはできない。よって、不正な解錠は不可能である。
【0035】
このスーパーロック状態では、前述のように、可動接点59が固定接点19A,19Bの接点部21A,21Bを短絡させ、固定接点19Cは絶縁状態となっている。この状態で、スーパーロック解除作動させるために、接続端子部20Aに正極電流を印加し、接続端子部20Bに負極電流を印加し、接続端子部20Cに正極電流を印加すると、図17(A)に示すように、固定接点19A,19Bおよび可動接点59を通してモータ24が通電される。これにより、モータ24は逆転駆動し、図17(B)に示すように、ウォームホイール26がアンロック作動方向に回転され、スーパーロック解除位置停止用操作部36がスイッチシャフト61のスーパーロック解除位置停止用操作受部66に当接する。
【0036】
その後、ウォームホイール26がスーパーロック解除位置まで回転すると、図18(B)に示すように、スーパーロック解除位置停止用操作部36がスーパーロック解除位置停止用操作受部66を押圧することにより、スイッチシャフト61がウォームホイール26に対して相対方向(時計回り)に回動する。これにより可動接点59が一緒に回動し、固定接点19A,19B間が遮断状態となり、固定接点19A,19C間が短絡状態となる。しかし、接続端子部20A,20Cは、それぞれ正極電流が印加されているため、図18(A)に示すように、モータ24の駆動は停止する。なお、可動接点59が固定接点19Bの接点部21Bから離反し、固定接点19Cの接点部21Cに短絡するまでの状態では、モータ24の通電は解除されるが、モータ24およびウォームホイール26は僅かに惰性によって作動し続けるため、スイッチシャフト61は、可動接点59が固定接点19Cの接点部21Cに短絡する位置まで回転する。また、このスーパーロック状態からロック状態に切り換える際のウォームホイール26の回動角度は約27度である。
【0037】
一方、ウォームホイール26が図15(C)に示すスーパーロック状態からアンロック作動方向に回転されると、図19(A)に示すように、スライダ53の当接片55にウォームホイール26のスーパーロック解除作動部34が当接する。その後、ウォームホイール26がスーパーロック解除位置まで回転すると、スーパーロック解除作動部34が当接片55を押圧することにより、図19(B)に示すように、スライダ53が反時計回りに回動する。その結果、スライダ53の連結ピン56は、弾性片44の弾性力に抗して、ロータ37のガイド溝43内およびロックノブ45の係合溝49内で移動し、ロックノブ45の連結用溝部50内に位置する。そして、このスライダ53の回動状態は、弾性片44の弾性力で維持される。この状態で、前述のように、モータ24の駆動が停止するため、ウォームホイール26は、リターンスプリング29の付勢力で中立位置に回動する。
【0038】
このスーパーロック状態からロック状態とした場合と、アンロック状態からロック状態とした場合とは、スイッチシャフト61を介した可動接点59の動作状態は相違するが、ロータ37、ロックノブ45およびスライダ53の動作状態は同一である。
【0039】
なお、このスーパーロック解除状態では、前述のように、可動接点59が固定接点19A,19Cの接点部21A,21Cを短絡させ、固定接点19Bは絶縁状態となっている。この状態で、アンロック作動させるために、接続端子部20Aに正極電流を印加し、接続端子部20Bに負極電流を印加し、接続端子部20Cに負極電流を印加すると、図20(A)に示すように、固定接点19A,19Cおよび可動接点59を通してモータ24が通電される。これにより、モータ24は逆転駆動し、ウォームホイール26がアンロック作動方向に回転される。なお、スーパーロック状態でアンロック作動させるために、同様の印加状態とした場合には、前述したスーパーロック状態でスーパーロック解除作動させた場合と同様に、接続端子部20Aに正極電流、接続端子部20Bに負極電流が印加されるため、図20(B)に示す可動接点59が固定接点19A,19Bを短絡させた状態から、続いて図20(A)に示すように、可動接点59が固定接点19A,19Cを短絡させた状態をなす。そのため、スーパーロック状態でアンロック作動させるために、同様の印加状態とした場合には、図19(A),(B)の状態を経て以下の動作を実行する点でのみ、相違する。
【0040】
具体的には、固定接点19A〜19Cに対してアンロック作動させるための印加が行われると、ウォームホイール26は、図21(A)に示すように、図19(B)に示すスーパーロック解除位置を越えて回動する。これにより、ウォームホイール26のカム部30のアンロック作動部32によりロータ37のカム受部41がアンロック位置に向けて押圧される。そして、ウォームホイール26がロック解除位置まで回転すると、図21(B)に示すように、ロータ37がアンロック位置に回動する。また、この状態では、スライダ53が連結位置に位置しているため、ロータ37と一緒にロックノブ45もアンロック位置に回動する。なお、ウォームホイール26は、ケーシング10によって回動が規制されることにより、アンロック作動方向の回転が停止される。このウォームホイール26の回動角度は、中立位置を基準とすると約170度である。また、モータ24は、タイマにより通電開始から所定時間(0.4秒)後に遮断されることにより停止される。これにより、ウォームホイール26は、リターンスプリング29の付勢力で中立位置に回動する。
【0041】
このように、本実施形態のドアロックアクチュエータは、ウォームホイール26をスーパーロック状態でアンロック作動させると、スーパーロック解除位置(ロック状態)を経てロック解除位置(アンロック解除位置)に移動可能である。即ち、ドアロックアクチュエータをスーパーロック状態から直接アンロック状態へ作動させることができる。しかも、ウォームホイール26に設けたスーパーロック解除位置停止用操作部36により、途中のスーパーロック解除位置(ロック状態)において可動接点59を作動させ、モータ24の通電経路を切り換えることができる。そして、その後、モータ24を引き続き作動させてウォームホイール26をロック解除位置まで回動させてアンロック状態とするか、あるいは、モータ24の作動を停止させてそのままロック状態(スーパーロック解除位置)とするかは、可動接点59によって切り換えられるモータ24の通電経路に印加される電流の極性によって選択可能である。即ち、モータ24の通電経路を構成する複数の固定接点19A〜19Cに印加される電流の極性をそれぞれ適宜設定することで、ドアロックアクチュエータをスーパーロック状態からアンロック状態にするのか、あるいは、スーパーロック状態からロック状態にするのかを、簡単に選択することが可能である。したがって、電気的な制御信号をドア毎に設定することにより、所定のドアはスーパーロック状態から直接アンロック状態とする一方、他のドアはスーパーロック状態からロック状態とすることができる。よって、盗難等を目的とした忍び込み対策としての要望に応えることができる。また、ドア毎に設定された制御信号を車両に搭載後でも変更できるように設定しておけば、ユーザの好みに応じて各ドアのロック状態の変位を自由に選択することも可能である。
【0042】
また、ウォームホイール26に、可動接点59を作動させて該ウォームホイール26をロック設定位置に停止させるロック位置停止用操作部35を更に設けているため、部品点数を増やすことなく、安価にスーパーロック状態からロック状態またはアンロック状態へ、アンロック状態からロック状態またはスーパーロック状態へと選択的に作動可能なドアロックアクチュエータを構成できる。しかも、各操作部35,36は、軸方向に沿って所定間隔をもって設けるため、設計の自由度を向上できる。
【0043】
なお、本発明のドアロックアクチュエータは、前記実施形態の構成に限定されるものではなく、種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0044】
10…ケーシング
17…カバー
19A〜19C…固定接点
24…モータ
25…ウォームギア
26…ウォームホイール(カム部材)
30…カム部
33…スーパーロック作動部
34…スーパーロック解除作動部
35…ロック位置停止用操作部(第2操作部)
36…スーパーロック解除位置停止用操作部(第1操作部)
37…ロータ
41…カム受部
43…ガイド溝
45…ロックノブ
49…係合溝
53…スライダ
56…連結ピン
59…可動接点
61…スイッチシャフト
65…ロック位置停止用操作受部
66…スーパーロック解除位置停止用操作受部
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用のドアロックアクチュエータに関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両用ドアロックアクチュエータは、モータを駆動することにより、車両のドアに配設したドアロック装置のロックレバーを、ロック位置、および、アンロック位置に回動させるものである。特許文献1に記載のドアロックアクチュエータは、車両のインナーロックノブに連結されたノブシャフトと、ロックレバーに連結されたロータとを備えている。これらノブシャフトとロータは、スライダにより連結状態または非連結状態に切換可能に構成されている。そして、モータの駆動によってスライダを非連結位置に作動させることにより、スーパーロック状態とする。なお、スーパーロック状態とは、インナーロックノブを操作してもドアロック状態を解除不可能な状態を意味する。
【0003】
近年では、盗難等を目的とした忍び込み対策、即ち、運転者がドアをアンロック状態として車外にでるまでの間に、他のドアから車内に忍び込む行為を防止するための対策が要望されている。そして、この対策の1つとして、1モーション(1回の操作)で運転席ドアはスーパーロック状態からアンロック状態となり、他席ドアはスーパーロック状態からロック状態に切り換えられる方法が要望されている。即ち、スーパーロック状態からロック状態へ、または、スーパーロック状態から直接アンロック状態ヘ、2種の切換作動が可能なアクチュエータが要望されている。
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載のドアロックアクチュエータでは、このように選択的に作動状態を切り換えることはできない。具体的には、このドアロックアクチュエータは、アンロック状態からロック状態を経てスーパーロック状態とすることはできる一方、スーパーロック状態からはアンロック状態にしか切り換えることができない。即ち、スーパーロック状態からロック状態へ切り換えることはできない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−74242号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、従来の問題に鑑みてなされたもので、スーパーロック状態からロック状態またはアンロック状態へと切換可能とし、これらを簡単な制御で選択可能とするドアロックアクチュエータを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため、本発明のドアロックアクチュエータは、正転駆動および逆転駆動が可能なモータと、前記モータの駆動によりロック作動方向およびアンロック作動方向に回動され、切換用の作動部を設けたカム部材と、ドアロック装置のロックレバーに連結され、該ロックレバーおよび前記カム部材の回動によりロック位置およびアンロック位置間を移動されるロータと、車内に設けられたインナーロックノブに連結されたロックノブと、前記カム部材の作動部によって作動され、前記ロータとロックノブとを連結状態および非連結状態に切り換えるスライダと、前記モータの通電経路を切り換える可動接点と、を備えたドアロックアクチュエータにおいて、前記カム部材は、ロック作動方向へ回転されることにより、前記ロータをアンロック位置からロック位置へ作動させるロック設定位置を経て、前記作動部がスライダを連結状態から非連結状態に作動させるスーパーロック設定位置へ回動可能である一方、アンロック作動方向へ回転されることにより、前記作動部がスライダを非連結状態から連結状態に作動させるスーパーロック解除位置を経て、前記ロータをロック位置からアンロック位置へ作動させるロック解除位置へ回動可能であり、前記カム部材に、前記可動接点を作動させ、前記モータの通電経路を切り換えて該カム部材をスーパーロック解除位置に停止させる第1操作部を設けた構成としている。
【0008】
本発明のドアロックアクチュエータは、スーパーロック状態でアンロック作動させると、カム部材をスーパーロック解除位置(ロック状態)を経てロック解除位置(アンロック状態)に移動可能であるため、ドアロックアクチュエータをスーパーロック状態から直接アンロック状態へ作動させることができる。しかも、カム部材に設けた第1操作部により可動接点を作動させてモータの通電経路を切り換えることにより、カム部材を途中のスーパーロック解除位置(ロック状態)に停止させることができる。また、これらロック解除位置またはスーパーロック解除位置への作動は、通電経路の切り換え後にモータに印加される電流の極性によって選択が可能であるため、電気的な制御信号をドア毎に設定することにより、所定のドアはスーパーロック状態から直接アンロック状態とする一方、他のドアはスーパーロック状態からロック状態とすることができる。
【0009】
このドアロックアクチュエータでは、前記カム部材に、前記可動接点を作動させてモータの通電経路を切り換えることにより、該カム部材をロック設定位置に停止させる第2操作部を更に設けることが好ましい。このようにすれば、部品点数を増やすことなく、安価にスーパーロック状態からロック状態またはアンロック状態へ、アンロック状態からロック状態またはスーパーロック状態へと選択的に作動可能なドアロックアクチュエータを構成できる。
【0010】
また、前記カム部材の第1操作部および第2操作部を、該カム部材の軸方向に沿って所定間隔をもって設けることが好ましい。このようにすれば、各操作部の形成位置の自由度を向上できる。
【発明の効果】
【0011】
本発明のドアロックアクチュエータでは、モータの通電経路の切り換えによりスーパーロック状態からロック状態またはアンロック状態へと選択的に作動させることができる。そのため、1台の車両において、所定のドアはスーパーロック状態から直接アンロック状態とする一方、他のドアはスーパーロック状態からロック状態とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係る実施形態のドアロックアクチュエータを示す平面図である。
【図2】ドアロックアクチュエータの断面図である。
【図3】ケーシングの平面図である。
【図4】ウォームホイールを示し、(A)は平面図、(B)は側面図である。
【図5】ロータを示し、(A)は平面図、(B)は正面図である。
【図6】ロックノブを示し、(A)は平面図、(B)は正面図である。
【図7】スライダを示し、(A)は平面図、(B)は正面図である。
【図8】可動接点を示す平面図である。
【図9】スイッチシャフトを示し、(A)は平面図、(B)は側面図である。
【図10】(A)は各作動の制御信号を示す図表、(B)はドアロックアクチュエータの回路図である。
【図11】アンロック状態からロック作動させた状態を示し、(A)は回路図、(B)は作動状態を示す平面図である。
【図12】図11からの遷移状態を示し、(A)は回路図、(B)は作動状態を示す平面図である。
【図13】(A),(B),(C)はアンロック状態からのロック作動による作動遷移を示す平面図である。
【図14】(A)はロック状態からスーパーロック作動させた状態を示す回路図、(B)はアンロック状態からスーパーロック作動させた状態を示す回路図である。
【図15】(A),(B),(C)はロック状態からのスーパーロック作動による作動遷移を示す平面図である。
【図16】スーパーロック状態でインナーロックノブが操作された状態を示す平面図である。
【図17】スーパーロック状態からスーパーロック解除作動させた状態を示し、(A)は回路図、(B)は作動状態を示す平面図である。
【図18】図17からの遷移状態を示し、(A)は回路図、(B)は作動状態を示す平面図である。
【図19】(A),(B)はスーパーロック状態からのスーパーロック解除作動による作動遷移を示す平面図である。
【図20】(A)はスーパーロック解除状態からアンロック作動させた状態を示す回路図、(B)はスーパーロック状態からアンロック作動させた状態を示す回路図である。
【図21】(A),(B)はスーパーロック解除状態からのアンロック作動による作動遷移を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を図面に従って説明する。
【0014】
図1および図2は、本発明の実施形態に係るドアロックアクチュエータを示す。このドアロックアクチュエータは、車両のドアに搭載したドアロック装置を電動モータ24の動力により施錠および解錠するものである。そして、本実施形態では、施錠および解錠させるために、3個の接続端子部20A〜20Cに対して通電する電気信号を変更することにより、アンロック状態からロック状態、ロック状態(アンロック状態)からスーパーロック状態、スーパーロック状態からロック状態、および、ロック状態(スーパーロック状態)からアンロック状態に切換可能としている。
【0015】
このドアロックアクチュエータは、固定接点19A〜19Cを一体的に設けたケーシング10の内部に、大略、モータ24と、カム部材であるウォームホイール26と、ロータ37と、ロックノブ45と、スライダ53と、可動接点59とが配設されている。
【0016】
ケーシング10は、図2に示すように、上方を開口した箱状のもので、その開口がカバー17により閉塞されている。このケーシング10には、図1および図3に示すように、一端に矩形状をなすモータ配設部11が設けられている。このモータ配設部11の横には、ドアロック装置を制御する車両のメインマイコンを接続する端子接続部12が設けられている。また、このモータ配設部11の下側隅部には、ウォームホイール26を回転可能に装着するカム配設部13が設けられている。このカム配設部13の横には、ウォームホイール26の回転軸28を回転可能に支持する支持部14が設けられている。また、カム配設部13の下側には、ウォームホイール26の外周部に位置するように軸支部15が設けられている。さらに、この軸支部15の横には、ロータ37およびスイッチシャフト61の回動を停止させるストッパ部16が設けられている。なお、カバー17には、後述するスプリング57の突出片58bを位置決めする位置決め部18が設けられている。
【0017】
このケーシング10の底には、電気回路を構成するための固定接点19A〜19Cがインサート成形により敷設されている。これら固定接点19A〜19Cは、ケーシング10の形成前には、所定部位が連結され、この連結部位がインサート成形時に破断(絶縁)されている。各固定接点19A〜19Cは、端子接続部12からカム配設部13の下部の軸支部15にかけて延びるように設けられている。そして、固定接点19A〜19Cの端子接続部12に配置される各一端は、メインマイコンに接続される接続端子部20A〜20Cを構成する。また、各固定接点19A〜19Cの他端は、後述する可動接点59が接続(短絡)される接点部21A〜21Cを構成する。接点部21Aは、軸支部15を中心として円形状をなすように延びる。接点部21B,21Cは、軸支部15を中心として径方向に所定間隔をもって位置するとともに、周方向に所定間隔をもって位置するように配置されている。これにより、一方の接点部21B,21Cが短絡状態となると、他方の接点部21C,21Bが絶縁状態となるように構成している。なお、固定接点19A,19Bの短絡状態および固定接点19A,19Cの短絡状態の間の切換途中でもモータ24への通電を可能とするために、固定接点19A,19B間には第1ダイオード22が配設され、固定接点19A,19C間には第2ダイオード23が配設されている。
【0018】
モータ24は、正転駆動および逆転駆動が可能で、過電流に対してモータ24を保護するポジスターを内蔵したものである。具体的には、このモータ24は、ケーシング10のモータ配設部11に配設されることにより、一方の電極が固定接点19Aの接続端子部20Aに、他方の電極が固定接点19Aの接点部21Aにそれぞれ電気的に接続される。そして、接点部21Aに対して正極の電流が印加されて接続端子部20Aが接地されることにより、正転してロック作動を実行する一方、接続端子部20Aに対して正極の電流が印加されて接点部21Aが接地されることにより、逆転してアンロック作動を実行する。このモータ24の出力軸にはウォームギア25が配設され、その先端が支持部11aに配置されている。このウォームギア25は、ウォームホイール26に対して接線方向に延びるように配設されている。
【0019】
ウォームホイール26は、図2および図4(A),(B)に示すように、下端開口の円筒状をなし、その上側外周部にはウォームギア25に噛み合うギア27が径方向に突出するように設けられている。このウォームホイール26は、別体の回転軸28が貫通されることによりカム配設部13に回転可能に配設され、モータ24の正転駆動によりロック作動方向(時計回り)に回転され、モータ24の逆転駆動によりアンロック作動方向(反時計回り)に回動される。このウォームホイール26の内部にはリターンスプリング29が配設され、このリターンスプリング29により回転前の中立位置に保持されている。ここで、スーパーロック設定位置は、ロック作動方向の回転により、中立位置からロック設定位置を経て更に先方に位置する。即ち、このウォームホイール26は、ロック作動方向へ回転されることにより、中立位置からロック設定位置を経てスーパーロック設定位置へ回動可能である。一方、スーパーロック解除位置は、アンロック作動方向の回転により、中立位置とロック解除位置との間に位置する。即ち、ウォームホイール26は、アンロック作動方向へ回転されることにより、中立位置からスーパーロック解除位置を経てロック解除位置へ回動可能である。なお、リターンスプリング29の内部には、ウォームホイール26の回動範囲を規制するストッパが配設されている。
【0020】
このウォームホイール26には、組付状態で上側に位置する面にカム部30が設けられている。このカム部30は上向きに延びる壁からなり、外周部から中央に向けて流曲線状に延び、ロータ37をアンロック状態からロック状態とするためのロック作動部31と、中央から外周部に向けて流曲線状に延び、ロータ37をロック状態からアンロック状態とするためのアンロック作動部32とを備えている。また、ウォームホイール26には、カム部30のロック作動部31の外周部に、スライダ53を連結位置から非連結位置(スーパーロック位置)に作動させるスーパーロック作動部33が上向きに突出するように設けられている。さらに、ウォームホイール26の外周部には、スライダ53を非連結位置から連結位置(スーパーロック解除位置)に作動させるスーパーロック解除作動部34が上向きに突出するように設けられている。また、ウォームホイール26の外周部には、ギア27の下部に位置するように、可動接点59を作動させてウォームホイール26をロック設定位置に停止させるロック位置停止用操作部35(第2操作部)が設けられている。さらに、ウォームホイール26には、閉塞された下端に位置するように、可動接点59を作動させてウォームホイール26をスーパーロック解除位置に停止させるスーパーロック解除位置停止用操作部36(第1操作部)が設けられている。これら操作部35,36は、ウォームホイール26の外周部において、周方向および軸方向に所定間隔をもって位置するように設けられている。
【0021】
ロータ37は、車外からの鍵を用いた操作により動作するドアロック装置のロックレバーに連結され、このロックレバーまたはウォームホイール26の回動により、ロック位置およびアンロック位置間を移動されるものである。具体的には、図2および図5(A),(B)に示すように、ロータ37は扇形形状をなし、その軸芯に位置するようにケーシング10の軸支部15に回転可能に配設するための軸部38を備えている。このロータ37の一側にはロックレバー連結部39が突設されている。また、ロータ37には、アンロック位置からロック位置へ向けて回動された際に、ケーシング10のストッパ部16に当接することによりロック位置に停止させるストッパ片40が突設されている。さらに、ロータ37には、ウォームホイール26のカム部30内に位置するカム受部41が下向きに突出するように設けられている。また、ロータ37には、カム受部41の横に位置し、円形状の孔と、該孔の対向位置に設けた切欠部とからなるスライダ装着部42が設けられている。このスライダ装着部42とカム受部41との間には、スライダ装着部42を中心として円弧状に延びるガイド溝43が設けられている。このガイド溝43は、軸部38を中心として略径方向に延びるように設けられ、その径方向外側に位置する端部が連結位置を構成し、径方向内側に位置する端部が非連結位置を構成する。そして、ガイド溝43の一方の縁には、スライダ53を連結位置または非連結位置に保持するための弾性片44が設けられている。
【0022】
ロックノブ45は、車内で施錠および解錠するためのインナーロックノブ(図示せず)に連結されるものである。具体的には、ロックノブ45は、図2および図6(A),(B)に示すように、ケーシング10に対してロータ37の上側に位置するように配設される。このロックノブ45は扇形形状をなし、その軸芯に位置するように連結軸部46が設けられている。この連結軸部46は、その下部がロータ37の軸部に同軸で回動可能に外嵌するロータ連結部47を構成する。また、連結軸部46の上部は、カバー17を貫通して外側に突出され、その突出部分がインナーロックノブを連結するための連結部材(図示せず)を連結するインナーロックノブ連結部48を構成する。さらに、ロックノブ45には、スライダ53を介してロータ37と一体的に回転可能な連結状態、および、ロータ37と分離した非連結状態とするための係合溝49が設けられている。この係合溝49は、連結軸部46に対して略径方向に延びる連結用溝部50と、連結軸部46を中心として略周方向に延びる非連結用溝部51とを有する略L字形状をなす。そのうち、連結用溝50部は、ロータ37との連結状態でガイド溝43と上下に略一致する。なお、非連結用溝部51は、連結軸部46に対して径方向外側に位置する縁を、連結用溝部50へ誘導するガイド面となるように、その形状が設定されている。そして、ロックノブ45には、係合溝49の連結用溝部50の横に位置するようにスプリング取付部52が設けられている。
【0023】
スライダ53は、ロータ37に対して下方から配設され、ウォームホイール26の作動部33,34で作動されることにより、ガイド溝43および係合溝49を貫通する連結ピン56によってロータ37とロックノブ45とを連結状態および非連結状態に切り換えるものである。具体的には、スライダ53は、図2および図7(A),(B)に示すように、ロータ37のスライダ装着部42に回転可能に取り付けられる装着部54を備えている。この装着部54は、取付軸の端部に径方向外向きに突出する一対の突片を設けたものである。このスライダ53には、装着部54の逆側下部に位置するように当接片55が突設されている。この当接片55は、ウォームホイール26のスーパーロック作動部33の作動を受けることにより、連結ピン56を中心としてスライダ53を連結位置から非連結位置に回動させる。また、スーパーロック解除作動部34の作動を受けることにより、スライダ53を非連結位置から連結位置に回動させる。そして、このスライダ53には、当接片55の上部に位置するように、ロータ37のガイド溝43およびロックノブ45の係合溝49を貫通するように組み付けられる連結ピン56が突設されている。この連結ピン56は、スライダ53が連結位置に回動した状態では、ガイド溝43の上部、かつ、係合溝49の連結用溝部50内に位置する。これにより、ロックノブ45が連結軸部46を中心として施錠および解錠方向に回動された場合、連結用溝部50の縁が連結ピン56に当接することにより、ロータ37を一緒に回動させる。一方、連結ピン56は、スライダ53が非連結位置に回動した状態では、ガイド溝43の下部、かつ、係合溝49の非連結用溝部51内に位置する。これにより、ロックノブ45が連結軸部46を中心として解錠方向に回動された場合、非連結用溝部51が連結ピン56に当接しないため、ロータ37を回動させることなくロックノブ45だけが回動する。
【0024】
スライダ53は、スーパーロック状態でロックノブ45が解錠操作された際に、付勢部材であるスプリング57によって連結位置に向けて付勢される。このスプリング57は、ロックノブ45のスプリング取付部52に取り付けられる巻回部から突出する一対の突出片58a,58bを備えている。一方の突出片58aは、スライダ53の連結ピン56に配置され、他方の突出片58bがカバー17の位置決め部18に配置される。これにより、連結ピン56を介してスライダ53を連結位置の側に付勢する構成としている。
【0025】
可動接点59は、固定接点19A〜19Cを介してモータ24への通電経路を切り換えることにより、モータ24を駆動および停止させるものである。この可動接点59は、図8に示すように、固定接点19A〜19Cの接点部21A〜21Cにそれぞれ短絡する接続片60a〜60cをそれぞれ備えている。
【0026】
可動接点59は、ウォームホイール26の回動に連動して相対方向に回動するスイッチシャフト61に固定されている。このスイッチシャフト61は、図2および図9(A),(B)に示すように、ロータ37の軸部に外嵌される回転筒部62を備え、この回転筒部62の外周部に略L字形状をなすように可動接点取付部63を設けたものである。回転筒部62の下端は、ケーシング10の軸支部15に外嵌する嵌着部64とされている。この嵌着部64の外周部には、軸方向に沿った上部に、ウォームホイール26のロック位置停止用操作部35の操作を受けるロック位置停止用操作受部65が、径方向外向きに突出するように設けられている。また、嵌着部64の外周部には、軸方向に沿った下部に、ウォームホイール26のスーパーロック解除位置停止用操作部36の操作を受けるスーパーロック解除位置停止用操作受部66が、径方向外向きに突出するように設けられている。さらに、回転筒部62には、ケーシング10のストッパ部16に当接することにより、可動接点59の接続片60a,60bが接点部21A,21Bに短絡した状態で停止させる当接腕部67が設けられている。
【0027】
このように構成したドアロックアクチュエータは、図10(A),(B)に示すように、固定接点19A〜19Cおよび可動接点59により、モータ24を正転駆動または逆転駆動させるための電気回路を構成する。そして、固定接点19A〜19Cの接続端子部20A〜20Cに印加する直流電流の極性を変更することにより、モータ24を動作させてロック作動、スーパーロック作動およびアンロック作動させることができる。具体的には、アンロック状態で、接続端子部20Aを負極とし、接続端子部20Bを負極とし、接続端子部20Cを正極とすることにより、ロック状態に作動させることができる。また、ロック状態またはアンロック状態で、接続端子部20Aを負極とし、接続端子部20Bを正極とし、接続端子部20Cを正極とすることにより、スーパーロック状態に作動させることができる。さらに、スーパーロック状態で、接続端子部20Aを正極とし、接続端子部20Bを負極とし、接続端子部20Cを正極とすることにより、ロック状態に作動させることができる。そして、ロック状態またはスーパーロック状態で、接続端子部20Aを正極とし、接続端子部20Bを負極とし、接続端子部20Cを負極とすることにより、アンロック状態に作動させることができる。
【0028】
次に、各作動について具体的に説明する。
【0029】
まず、アンロック状態では、図1に示すように、ウォームホイール26がリターンスプリング29により中立位置に位置し、可動接点59は固定接点19A,19Cの接点部21A,21Cを短絡させ、固定接点19Bは絶縁状態となっている。この状態で、ロック作動させるために、接続端子部20Aに負極電流を印加し、接続端子部20Bに負極電流を印加し、接続端子部20Cに正極電流を印加すると、図11(A)に示すように、固定接点19A,19Cおよび可動接点59を通してモータ24が通電される。これにより、モータ24は正転駆動し、図11(B)に示すように、ウォームホイール26がロック作動方向に回転され、ロック位置停止用操作部35がスイッチシャフト61のロック位置停止用操作受部65に当接する。
【0030】
その後、ウォームホイール26がロック設定位置まで回転すると、図12(B)に示すように、ロック位置停止用操作部35がロック位置停止用操作受部65を押圧することにより、スイッチシャフト61がウォームホイール26に対して相対方向(反時計回り)に回動する。これにより可動接点59が一緒に回動し、固定接点19A,19C間が遮断状態となり、固定接点19A,19B間が短絡状態となる。しかし、接続端子部20A,20Bは、それぞれ負極電流が印加されているため、図12(A)に示すように、モータ24の駆動は停止する。なお、可動接点59が固定接点19Cの接点部21Cから離反し、固定接点19Bの接点部21Bに短絡するまでの状態では、モータ24の通電は解除されるが、モータ24およびウォームホイール26は僅かに惰性によって作動し続けるため、スイッチシャフト61は、可動接点59が固定接点19Bの接点部21Bに短絡する位置まで回転する。また、このアンロック状態からロック状態に切り換える際のウォームホイール26の回動角度は約100度である。
【0031】
一方、ウォームホイール26が図13(A)に示すアンロック状態からロック作動方向に回転されると、カム部30のロック作動部31によりロータ37のカム受部41がロック位置に向けて押圧される。そして、ウォームホイール26がロック設定位置まで回転すると、図13(B)に示すように、ロータ37がロック位置に回動する。また、この状態では、スライダ53が連結位置に位置しているため、ロータ37と一緒にロックノブ45もロック位置に回動する。この状態で、前述のように、モータ24の駆動が停止するため、ウォームホイール26は、図13(C)に示すように、リターンスプリング29の付勢力で中立位置に回動する。
【0032】
このロック状態(アンロック状態から移行したロック状態)では、前述のように、可動接点59が固定接点19A,19Bの接点部21A,21Bを短絡させ、固定接点19Cは絶縁状態となっている。この状態で、スーパーロック作動させるために、接続端子部20Aに負極電流を印加し、接続端子部20Bに正極電流を印加し、接続端子部20Cに正極電流を印加すると、図14(A)に示すように、固定接点19A,19Bおよび可動接点59を通してモータ24が通電される。これにより、モータ24は正転駆動し、ウォームホイール26がロック作動方向に回転される。なお、アンロック状態でスーパーロック作動させるために、同様の印加状態とした場合には、前述したアンロック状態でロック作動させた場合と同様に、接続端子部20Aに負極電流、接続端子部20Cに正極電流が印加されるため、図14(B)に示す可動接点59が固定接点19A,19Cを短絡させた状態から、続いて図14(A)に示すように、可動接点59が固定接点19A,19Bを短絡させた状態をなす。そのため、アンロック状態でスーパーロック作動させるために、同様の印加状態とした場合には、図13(A),(B)の状態を経て以下の動作を実行する点でのみ、相違する。
【0033】
具体的には、固定接点19A〜19Cに対してスーパーロック作動させるための印加が行われると、ウォームホイール26は、図15(A)に示すように、図13(B)に示すロック設定位置を越えて回動する。これにより、スライダ53の当接片55にウォームホイール26のスーパーロック作動部33が当接する。その後、ウォームホイール26がスーパーロック設定位置まで回転すると、スーパーロック作動部33が当接片55を押圧することにより、図15(B)に示すように、スライダ53が時計回りに回動する。その結果、スライダ53の連結ピン56は、弾性片44の弾性力に抗して、ロータ37のガイド溝43内およびロックノブ45の係合溝49内で移動し、ロックノブ45の非連結用溝部51内に位置する。なお、このスライダ53の回動状態は、弾性片44の弾性力で維持される。また、ウォームホイール26は、ケーシング10によって回動が規制されることにより、ロック作動方向の回転が停止される。このウォームホイール26の回動角度は、中立位置を基準とすると約170度である。また、モータ24は、タイマにより通電開始から所定時間(0.4秒)後に遮断されることにより停止される。これにより、ウォームホイール26は、図15(C)に示すように、リターンスプリング29の付勢力で中立位置に回動する。
【0034】
このスーパーロック状態では、例えば、ドアとガラスとの隙間から針金等を挿入し、車内のインナーロックノブをアンロック操作した場合、ロータ37とロックノブ45との連結が解除されているため、図16に示すように、ロックノブ45だけが回動し、ロータ37を回動させることはできない。その結果、ドアロック装置のロックレバーを操作することはできない。よって、不正な解錠は不可能である。
【0035】
このスーパーロック状態では、前述のように、可動接点59が固定接点19A,19Bの接点部21A,21Bを短絡させ、固定接点19Cは絶縁状態となっている。この状態で、スーパーロック解除作動させるために、接続端子部20Aに正極電流を印加し、接続端子部20Bに負極電流を印加し、接続端子部20Cに正極電流を印加すると、図17(A)に示すように、固定接点19A,19Bおよび可動接点59を通してモータ24が通電される。これにより、モータ24は逆転駆動し、図17(B)に示すように、ウォームホイール26がアンロック作動方向に回転され、スーパーロック解除位置停止用操作部36がスイッチシャフト61のスーパーロック解除位置停止用操作受部66に当接する。
【0036】
その後、ウォームホイール26がスーパーロック解除位置まで回転すると、図18(B)に示すように、スーパーロック解除位置停止用操作部36がスーパーロック解除位置停止用操作受部66を押圧することにより、スイッチシャフト61がウォームホイール26に対して相対方向(時計回り)に回動する。これにより可動接点59が一緒に回動し、固定接点19A,19B間が遮断状態となり、固定接点19A,19C間が短絡状態となる。しかし、接続端子部20A,20Cは、それぞれ正極電流が印加されているため、図18(A)に示すように、モータ24の駆動は停止する。なお、可動接点59が固定接点19Bの接点部21Bから離反し、固定接点19Cの接点部21Cに短絡するまでの状態では、モータ24の通電は解除されるが、モータ24およびウォームホイール26は僅かに惰性によって作動し続けるため、スイッチシャフト61は、可動接点59が固定接点19Cの接点部21Cに短絡する位置まで回転する。また、このスーパーロック状態からロック状態に切り換える際のウォームホイール26の回動角度は約27度である。
【0037】
一方、ウォームホイール26が図15(C)に示すスーパーロック状態からアンロック作動方向に回転されると、図19(A)に示すように、スライダ53の当接片55にウォームホイール26のスーパーロック解除作動部34が当接する。その後、ウォームホイール26がスーパーロック解除位置まで回転すると、スーパーロック解除作動部34が当接片55を押圧することにより、図19(B)に示すように、スライダ53が反時計回りに回動する。その結果、スライダ53の連結ピン56は、弾性片44の弾性力に抗して、ロータ37のガイド溝43内およびロックノブ45の係合溝49内で移動し、ロックノブ45の連結用溝部50内に位置する。そして、このスライダ53の回動状態は、弾性片44の弾性力で維持される。この状態で、前述のように、モータ24の駆動が停止するため、ウォームホイール26は、リターンスプリング29の付勢力で中立位置に回動する。
【0038】
このスーパーロック状態からロック状態とした場合と、アンロック状態からロック状態とした場合とは、スイッチシャフト61を介した可動接点59の動作状態は相違するが、ロータ37、ロックノブ45およびスライダ53の動作状態は同一である。
【0039】
なお、このスーパーロック解除状態では、前述のように、可動接点59が固定接点19A,19Cの接点部21A,21Cを短絡させ、固定接点19Bは絶縁状態となっている。この状態で、アンロック作動させるために、接続端子部20Aに正極電流を印加し、接続端子部20Bに負極電流を印加し、接続端子部20Cに負極電流を印加すると、図20(A)に示すように、固定接点19A,19Cおよび可動接点59を通してモータ24が通電される。これにより、モータ24は逆転駆動し、ウォームホイール26がアンロック作動方向に回転される。なお、スーパーロック状態でアンロック作動させるために、同様の印加状態とした場合には、前述したスーパーロック状態でスーパーロック解除作動させた場合と同様に、接続端子部20Aに正極電流、接続端子部20Bに負極電流が印加されるため、図20(B)に示す可動接点59が固定接点19A,19Bを短絡させた状態から、続いて図20(A)に示すように、可動接点59が固定接点19A,19Cを短絡させた状態をなす。そのため、スーパーロック状態でアンロック作動させるために、同様の印加状態とした場合には、図19(A),(B)の状態を経て以下の動作を実行する点でのみ、相違する。
【0040】
具体的には、固定接点19A〜19Cに対してアンロック作動させるための印加が行われると、ウォームホイール26は、図21(A)に示すように、図19(B)に示すスーパーロック解除位置を越えて回動する。これにより、ウォームホイール26のカム部30のアンロック作動部32によりロータ37のカム受部41がアンロック位置に向けて押圧される。そして、ウォームホイール26がロック解除位置まで回転すると、図21(B)に示すように、ロータ37がアンロック位置に回動する。また、この状態では、スライダ53が連結位置に位置しているため、ロータ37と一緒にロックノブ45もアンロック位置に回動する。なお、ウォームホイール26は、ケーシング10によって回動が規制されることにより、アンロック作動方向の回転が停止される。このウォームホイール26の回動角度は、中立位置を基準とすると約170度である。また、モータ24は、タイマにより通電開始から所定時間(0.4秒)後に遮断されることにより停止される。これにより、ウォームホイール26は、リターンスプリング29の付勢力で中立位置に回動する。
【0041】
このように、本実施形態のドアロックアクチュエータは、ウォームホイール26をスーパーロック状態でアンロック作動させると、スーパーロック解除位置(ロック状態)を経てロック解除位置(アンロック解除位置)に移動可能である。即ち、ドアロックアクチュエータをスーパーロック状態から直接アンロック状態へ作動させることができる。しかも、ウォームホイール26に設けたスーパーロック解除位置停止用操作部36により、途中のスーパーロック解除位置(ロック状態)において可動接点59を作動させ、モータ24の通電経路を切り換えることができる。そして、その後、モータ24を引き続き作動させてウォームホイール26をロック解除位置まで回動させてアンロック状態とするか、あるいは、モータ24の作動を停止させてそのままロック状態(スーパーロック解除位置)とするかは、可動接点59によって切り換えられるモータ24の通電経路に印加される電流の極性によって選択可能である。即ち、モータ24の通電経路を構成する複数の固定接点19A〜19Cに印加される電流の極性をそれぞれ適宜設定することで、ドアロックアクチュエータをスーパーロック状態からアンロック状態にするのか、あるいは、スーパーロック状態からロック状態にするのかを、簡単に選択することが可能である。したがって、電気的な制御信号をドア毎に設定することにより、所定のドアはスーパーロック状態から直接アンロック状態とする一方、他のドアはスーパーロック状態からロック状態とすることができる。よって、盗難等を目的とした忍び込み対策としての要望に応えることができる。また、ドア毎に設定された制御信号を車両に搭載後でも変更できるように設定しておけば、ユーザの好みに応じて各ドアのロック状態の変位を自由に選択することも可能である。
【0042】
また、ウォームホイール26に、可動接点59を作動させて該ウォームホイール26をロック設定位置に停止させるロック位置停止用操作部35を更に設けているため、部品点数を増やすことなく、安価にスーパーロック状態からロック状態またはアンロック状態へ、アンロック状態からロック状態またはスーパーロック状態へと選択的に作動可能なドアロックアクチュエータを構成できる。しかも、各操作部35,36は、軸方向に沿って所定間隔をもって設けるため、設計の自由度を向上できる。
【0043】
なお、本発明のドアロックアクチュエータは、前記実施形態の構成に限定されるものではなく、種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0044】
10…ケーシング
17…カバー
19A〜19C…固定接点
24…モータ
25…ウォームギア
26…ウォームホイール(カム部材)
30…カム部
33…スーパーロック作動部
34…スーパーロック解除作動部
35…ロック位置停止用操作部(第2操作部)
36…スーパーロック解除位置停止用操作部(第1操作部)
37…ロータ
41…カム受部
43…ガイド溝
45…ロックノブ
49…係合溝
53…スライダ
56…連結ピン
59…可動接点
61…スイッチシャフト
65…ロック位置停止用操作受部
66…スーパーロック解除位置停止用操作受部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
正転駆動および逆転駆動が可能なモータと、
前記モータの駆動によりロック作動方向およびアンロック作動方向に回動され、切換用の作動部を設けたカム部材と、
ドアロック装置のロックレバーに連結され、該ロックレバーおよび前記カム部材の回動によりロック位置およびアンロック位置間を移動されるロータと、
車内に設けられたインナーロックノブに連結されたロックノブと、
前記カム部材の作動部によって作動され、前記ロータとロックノブとを連結状態および非連結状態に切り換えるスライダと、
前記モータの通電経路を切り換える可動接点と、
を備えたドアロックアクチュエータにおいて、
前記カム部材は、ロック作動方向へ回転されることにより、前記ロータをアンロック位置からロック位置へ作動させるロック設定位置を経て、前記作動部がスライダを連結状態から非連結状態に作動させるスーパーロック設定位置へ回動可能である一方、アンロック作動方向へ回転されることにより、前記作動部がスライダを非連結状態から連結状態に作動させるスーパーロック解除位置を経て、前記ロータをロック位置からアンロック位置へ作動させるロック解除位置へ回動可能であり、
前記カム部材に、前記可動接点を作動させ、前記モータの通電経路を切り換えて該カム部材をスーパーロック解除位置に停止させる第1操作部を設けたことを特徴とするドアロックアクチュエータ。
【請求項2】
前記カム部材に、前記可動接点を作動させてモータの通電経路を切り換えることにより、該カム部材をロック設定位置に停止させる第2操作部を更に設けたことを特徴とする請求項1に記載のドアロックアクチュエータ。
【請求項3】
前記カム部材の第1操作部および第2操作部を、該カム部材の軸方向に沿って所定間隔をもって設けたことを特徴とする請求項2に記載のドアロックアクチュエータ。
【請求項1】
正転駆動および逆転駆動が可能なモータと、
前記モータの駆動によりロック作動方向およびアンロック作動方向に回動され、切換用の作動部を設けたカム部材と、
ドアロック装置のロックレバーに連結され、該ロックレバーおよび前記カム部材の回動によりロック位置およびアンロック位置間を移動されるロータと、
車内に設けられたインナーロックノブに連結されたロックノブと、
前記カム部材の作動部によって作動され、前記ロータとロックノブとを連結状態および非連結状態に切り換えるスライダと、
前記モータの通電経路を切り換える可動接点と、
を備えたドアロックアクチュエータにおいて、
前記カム部材は、ロック作動方向へ回転されることにより、前記ロータをアンロック位置からロック位置へ作動させるロック設定位置を経て、前記作動部がスライダを連結状態から非連結状態に作動させるスーパーロック設定位置へ回動可能である一方、アンロック作動方向へ回転されることにより、前記作動部がスライダを非連結状態から連結状態に作動させるスーパーロック解除位置を経て、前記ロータをロック位置からアンロック位置へ作動させるロック解除位置へ回動可能であり、
前記カム部材に、前記可動接点を作動させ、前記モータの通電経路を切り換えて該カム部材をスーパーロック解除位置に停止させる第1操作部を設けたことを特徴とするドアロックアクチュエータ。
【請求項2】
前記カム部材に、前記可動接点を作動させてモータの通電経路を切り換えることにより、該カム部材をロック設定位置に停止させる第2操作部を更に設けたことを特徴とする請求項1に記載のドアロックアクチュエータ。
【請求項3】
前記カム部材の第1操作部および第2操作部を、該カム部材の軸方向に沿って所定間隔をもって設けたことを特徴とする請求項2に記載のドアロックアクチュエータ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【公開番号】特開2010−281076(P2010−281076A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−134233(P2009−134233)
【出願日】平成21年6月3日(2009.6.3)
【出願人】(000138462)株式会社ユーシン (241)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年6月3日(2009.6.3)
【出願人】(000138462)株式会社ユーシン (241)
【Fターム(参考)】
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