説明

ドアロック装置の取付け構造

【課題】ドアロック装置のケーシングをドアの内側パネルに取付けるための取付け部材のケーシングからの脱落を防止するとともに、その取付け部材の被水も回避する。
【解決手段】ケーシング12を構成する一対の合成樹脂から成るケース半体16,17の一方16に、ねじ孔26を有する円筒部24aと、該円筒部24aの軸線に関して対称に形成されて円筒部24aから半径方向外方に突出する一対の係合突部24cとを一体に有する金属製のナット24を軸方向一方側から挿入可能な円筒状の取付け筒部27が一体に設けられ、該取付け筒部27の内面が、ナット24を軸方向に沿う所定の位置まで挿入して所定の角変位量だけ周方向一方に角変位操作することで両係合突部24cに軸方向両側から係合してナット24の抜け止めを果たすように形成され、他方のケース半体17に、ナット24の周方向他方への角変位を阻止する一対のストッパ29が設けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドアロック装置のケーシングをドアの内側パネルに取付けるためのドアロック装置の取付け構造に関する。
【背景技術】
【0002】
合成樹脂製のケーシングの係止部に金属製の略L字状の固定部材が圧入され、該固定部材がドアの内側パネルに締結されるようにしたものが、特許文献1によって知られている。
【特許文献1】特開2005−113374号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところが上記特許文献1で開示されたものでは、固定部材が、合成樹脂から成るケーシングに設けられた係止部に、該係止部を弾性変形させながら圧入され、ケーシングから突出する構造であるので、固定部材を取り付けたままのドアロック装置の搬送時に固定部材に外力が作用しやすく、固定部材への外力の作用によって係止部が弾性変形して固定部材が外れてしまう可能性がある。またドア内は基本的に被水する環境であるので、ケーシングから突出した金属製の固定部材の錆対策も必要となる。
【0004】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、ケーシングをドアの内側パネルに取付けるための取付け部材のケーシングからの脱落を防止するとともに、その取付け部材の被水も回避し得るようにしたドアロック装置の取付け構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、請求項1記載の発明は、ドアロック装置のケーシングをドアの内側パネルに取付けるためのドアロック装置の取付け構造であって、相互に結合されて前記ケーシングを構成する一対の合成樹脂から成るケース半体の一方に、前記内側パネルに挿通されるボルトを螺合せしめるねじ孔を有する円筒部と、該円筒部の軸線に関して対称に形成されて前記円筒部から半径方向外方に突出する一対の係合突部とを一体に有する金属製のナットを軸方向一方側から挿入可能な円筒状の取付け筒部が一体に設けられ、該取付け筒部の内面が、該取付け筒部に対して所定の周方向相対位置にある前記ナットを軸方向に沿う所定の位置まで挿入して所定の角変位量だけ周方向一方に角変位操作することで前記両係合突部に軸方向両側から係合して前記ナットの抜け止めを果たすように形成され、前記両ケース半体の他方に、前記所定の周方向相対位置から所定の角変位量だけ角変位した前記ナットの周方向他方への角変位を阻止する一対のストッパが設けられることを特徴とする。
【0006】
また請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明の構成に加えて、前記取付け筒部の内面に、前記係合突部の周方向に沿う長さよりも大きな第1間隔を周方向にあけるとともに前記取付け筒部の軸線に関して対称位置に配置される第1および第2突部と、第1および第2突部間で前記取付け筒部の軸線に関して対称に配置される第3および第4突部とが、前記円筒部の外径よりも大きな直径の仮想円に内周面を沿わせるととともに第1および第2突部から前記取付け筒部の周方向一方側の第3および第4突部までの間に第2間隔があくようにして突設され、前記第3および第4突部には、前記取付け筒部の軸方向一方側に臨む受け面が前記係合突部を当接させるようにしてそれぞれ設けられ、前記第1および第2突部には、前記受け面に前記係合突部を当接させた状態での前記ナットの前記周方向一方への角変位操作によって前記受け面に一部を係合、当接させた前記係合突部の残部に軸方向一方側から係合、当接する係合面ならびに前記ナットの前記周方向一方への角変位量を規制する規制面とがそれぞれ設けられ、前記両ストッパが、前記係合面への前記係合突部の係合、当接状態を解除する側への前記ナットの角変位を阻止するようにして前記第2間隔に対応する位置で前記取付け筒部内に挿入されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
請求項1または2記載の発明によれば、ケーシングを内側パネルに締結するための金属製のナットが、ケーシングを相互に構成する一対のケース半体の一方に設けられる取付け筒部内へのナットの挿入ならびに挿入したナットの角変位操作によって、取付け筒部から内に軸方向位置を定めて保持されることになり、さらに他方のケース半体に設けられたストッパを取付け筒部内に挿入してナットの角変位を阻止することでナットが取付け筒部内に固定される。したがってナットを取付けた状態でのドアロック装置の搬送時にナットに外力が直接作用することはなく、ケーシングに外力が作用してもナットが脱落することはない。しかもナットが取付け筒部内に配置されるものであるので、ナットへの被水を極力回避することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
図1〜図7は本発明の一実施例を示すものであり、図1はドアロック装置のドアへの取付け状態を示す斜視図、図2は図1の2−2線拡大断面図、図3は図2の3−3線断面図、図4は図2の4−4線断面図、図5はナットおよびストッパを省略した状態での図2の5矢視図、図6は図3の6ー6線断面図、図7は図3の7−7線断面図である。
【0009】
先ず図1において、たとえば乗用車両における右側のドアDには、ドアロック装置11が設けられるものであり、このドアロック装置11のケーシング12には、車体側のストライカを進入させる進入溝13を有する金属製のプレート14が固定され、該プレート14が、閉じ状態で車体側に向く位置でドアDに複数のボルト15,15…によって締結される。
【0010】
図2を併せて参照して、前記ケーシング12は、合成樹脂から成る第1および第2ケース半体16,17が、複数箇所で弾発係合されるとともに複数箇所で締結されるようにして結合されて成るものであり、第2ケース半体17をドアDの内側パネル18側に配置するようにしてドアD内に配置され、第2ケース半体17の一部は、第2ケース半体17および前記内側パネル18間に介在するようにして合成樹脂から成るカバー19で覆われる。
【0011】
而して第2ケース半体17には、外部導線を接続するためのカプラ20を配置した接続筒部21が前記内側パネル18に設けられた開口部22に配置されるようにして一体に突設されており、該接続筒部21に近接した外方で前記ケーシング12には、金属製のナット24が取付けられ、前記内側パネル18に挿通されるボルト25を前記ナット24に螺合して締めつけることにより、ケーシング12が内側パネル18に取付けられる。
【0012】
図3〜図7を併せて参照して、前記ナット24は、前記内側パネル18に挿通されるボルト25を螺合せしめるねじ孔26を有するとともに軸方向一端には半径方向外方に張り出す鍔部24bが設けられる円筒部24aと、該円筒部24aの軸線に関して対称に形成されるとともに前記鍔部24bから半径方向外方に突出する一対の係合突部24c,24cとを一体に有するものである。
【0013】
一方、第1ケース半体16には、前記鍔部24bおよび前記両係合突部24c…を挿入方向後端に配置するようにして前記ナット24をドアDの内側パネル18とは反対側の軸方向一方側から挿入可能な円筒状の取付け筒部27が一体に設けられる。しかも該取付け筒部27の内面は、該取付け筒部27に対して所定の周方向相対位置にある前記ナット24を軸方向に沿う所定の位置まで挿入して所定の角変位量だけ図3〜図5の矢印28で示す周方向一方に角変位操作することで前記両係合突部24c…に軸方向両側から係合して前記ナット24の抜け止めを果たすように形成されており、第2ケース半体17には、前記所定の周方向相対位置から所定の角変位量だけ角変位した前記ナット24の周方向他方への角変位を阻止する一対のストッパ29,29が設けられる。
【0014】
而して前記矢印28で示す周方向一方への角変位方向は、前記ナット24のねじ孔26に前記ボルト25をねじ込む方向に設定される。
【0015】
前記取付け筒部27の内面には、前記係合突部24c…の周方向に沿う長さLよりも大きな第1間隔L1を周方向にあけるとともに取付け筒部27の軸線に関して対称位置に配置される第1および第2突部31,32と、第1および第2突部31,32間で前記取付け筒部27の軸線に関して対称に配置される第3および第4突部33,34とが、前記円筒部24aの外径よりも大きな直径の仮想円Cに内周面を沿わせるととともに第1および第2突部31,32から前記取付け筒部27の矢印28で示す周方向一方側の第3および第4突部33,34までの間に第2間隔L2があくようにして突設される。
【0016】
しかも第3および第4突部33,34には、前記取付け筒部27の軸方向一方側(ドアDの内側パネル18とは反対側)に臨む受け面35,35が前記係合突部24c…を当接させるようにしてそれぞれ設けられる。また第1および第2突部31,32には、前記受け面35…に前記係合突部24c…を当接させた状態での前記ナット24の前記周方向一方への角変位操作によって前記受け面35…に一部を係合、当接させた前記係合突部24c…の残部に軸方向一方側から係合、当接するようにして軸方向他方側(ドアDの内側パネル18側)に臨む係合面36ならびに前記ナット24の前記周方向一方への角変位量を規制する規制面37とがそれぞれ設けられる。
【0017】
而して第1〜第4突部31〜34の前記内側パネル18側の端面は取付け筒部27の端面と面一に形成されるものであり、第1および第2突部31,32の前記内側パネル18側の端部には、取付け筒部27への前記ナット24への挿入時に該ナット24の円筒部24aと、第1および第2突部31,32との間に大きな間隙があくのを避けるために、半径方向内方に張り出す張り出し部31a,32aがそれぞれ一体に形成される。
【0018】
また第2ケース半体17には、前記ナット24の円筒部24aのうち前記取付け筒部27から突出した部分を嵌合せしめる嵌合筒部40が、前記取付け筒部27の前記内側パネル18側の端部に連なるようにして一体に突設される。
【0019】
しかも前記両ストッパ29…は、取付け筒部27における第1および第2突部31,32の係合面36…への前記ナット24の係合突部24c…の係合、当接状態を解除する側への前記ナット24の角変位を阻止するようにして、前記第2間隔L2に対応する位置で前記取付け筒部27内に挿入されるようにして前記嵌合筒部40に一体に連設される。
【0020】
ところで第1ケース半体16を型成形する上で、第1および第2係合突部31,32の係合面36…に対応する部分は型抜きによって第2ケース半体17の嵌合筒部40側に開放するように形成されるものであり、嵌合筒部40には、前記係合面36…に対応する部分で取付け筒部27内に挿入される一対の挿入突部41,41が、取付け筒部27への挿入時には第3および第4突部31,32の係合面35…とほぼ面一に連なるようにして一体に突設される。
【0021】
次にこの実施例の作用について説明すると、ナット24をケーシング12に取付けるにあたっては、第2ケース半体17とは結合されていない状態の、第1ケース半体16の取付け筒部27に、一対の係合突部24c…を挿入方向後端に配置したナット24を、それらの係合突部24c…が第1および第2突部31,32間に配置された状態である所定の周方向相対位置に位置決めしつつ挿入する。そうすると、両係合突部24c…が、第1および第2突部31,32から矢印28で示す前記周方向一方側の第3および第4突部33,34までの間の第2間隔L2に対応する側に一部がはみ出すようにして第3および第4突部33,34の受け面35…に当接する。次いで、ナット24を矢印28で示した周方向一方側に角変位操作すると、ナット24は、第1および第2突部31,32の規制面37…に当接するまで角変位することになり、この状態で、両係合突部24c…の一部は軸方向一方から受け面35…に当接し、両係合当突部24c…の残部は軸方向他方から第1および第2突部31,32の係合面36…に当接、係合する。
【0022】
すなわち取付け筒部27に対して所定の周方向相対位置にある前記ナット24を軸方向に沿う所定の位置まで挿入して所定の角変位量だけ周方向一方に角変位操作することで前記両係合突部24c…に受け面35…および係合面36…が軸方向両側から係合することになり、この状態で取付け筒部27に挿入されたナット24の抜け止めがなされることになる。
【0023】
そこで第2ケース半体17を第1ケース半体16に結合すると、第2ケース半体17に設けられた一対のストッパ29…が、前記係合面36…への前記係合突部24c…の係合、当接状態を解除する側への前記ナット24の角変位を阻止するようにして前記第2間隔L2に対応する位置で前記取付け筒部27内に挿入されることになる。すなわち、両ストッパ29…によってナット24の周方向他方への角変位が阻止されることになり、第1および第2ケース半体16,17の結合を解除しない限り、ナット24のケーシング12への固定状態が保持されることになる。
【0024】
このようにして金属製のナット24が、取付け筒部27内に固定されることにより、ドアロック装置11の搬送時にナット24に外力が直接作用することはなく、ケーシング12に外力が作用してもナット24が脱落することはない。しかもナット24が取付け筒部27内に配置されるものであるのでナット24への被水を極力回避することができる。
【0025】
以上、本発明の実施例を説明したが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明を逸脱することなく種々の設計変更を行うことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】ドアロック装置のドアへの取付け状態を示す斜視図である。
【図2】図1の2−2線拡大断面図である。
【図3】図2の3−3線断面図である。
【図4】図2の4−4線断面図である。
【図5】ナットおよびストッパを省略した状態での図2の5矢視図である。
【図6】図3の6ー6線断面図である。
【図7】図3の7−7線断面図である。
【符号の説明】
【0027】
11・・・ドアロック装置
12・・・ケーシング
16,17・・・ケース半体
18・・・内側パネル
24・・・ナット
24a・・・円筒部
24c・・・係合突部
25・・・ボルト
26・・・ねじ孔
27・・・取付け筒部
29・・・ストッパ
31・・・第1突部
32・・・第2突部
33・・・第3突部
34・・・第4突部
35・・・受け面
36・・・係合面
37・・・規制面
C・・・仮想円
D・・・ドア
L1・・・第1間隔
L2・・・第2間隔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドアロック装置(11)のケーシング(12)をドア(D)の内側パネル(18)に取付けるためのドアロック装置の取付け構造であって、相互に結合されて前記ケーシング(12)を構成する一対の合成樹脂から成るケース半体(16,17)の一方(16)に、前記内側パネル(18)に挿通されるボルト(25)を螺合せしめるねじ孔(26)を有する円筒部(24a)と、該円筒部(24a)の軸線に関して対称に形成されて前記円筒部(24a)から半径方向外方に突出する一対の係合突部(24c)とを一体に有する金属製のナット(24)を軸方向一方側から挿入可能な円筒状の取付け筒部(27)が一体に設けられ、該取付け筒部(27)の内面が、該取付け筒部(27)に対して所定の周方向相対位置にある前記ナット(24)を軸方向に沿う所定の位置まで挿入して所定の角変位量だけ周方向一方に角変位操作することで前記両係合突部(24c)に軸方向両側から係合して前記ナット(24)の抜け止めを果たすように形成され、前記両ケース半体(16,17)の他方(17)に、前記所定の周方向相対位置から所定の角変位量だけ角変位した前記ナット(24)の周方向他方への角変位を阻止する一対のストッパ(29)が設けられることを特徴とするドアロック装置の取付け構造。
【請求項2】
前記取付け筒部(27)の内面に、前記係合突部(24c)の周方向に沿う長さよりも大きな第1間隔(L1)を周方向にあけるとともに前記取付け筒部(27)の軸線に関して対称位置に配置される第1および第2突部(31,32)と、第1および第2突部(31,32)間で前記取付け筒部(27)の軸線に関して対称に配置される第3および第4突部(33,34)とが、前記円筒部(24a)の外径よりも大きな直径の仮想円(C)に内周面を沿わせるととともに第1および第2突部(31,32)から前記取付け筒部(27)の周方向一方側の第3および第4突部(33,34)までの間に第2間隔(L2)があくようにして突設され、前記第3および第4突部(33,34)には、前記取付け筒部(27)の軸方向一方側に臨む受け面(35)が前記係合突部(24c)を当接させるようにしてそれぞれ設けられ、前記第1および第2突部(31,32)には、前記受け面(35)に前記係合突部(24c)を当接させた状態での前記ナット(24)の前記周方向一方への角変位操作によって前記受け面(35)に一部を係合、当接させた前記係合突部(24c)の残部に軸方向一方側から係合、当接する係合面(36)ならびに前記ナット(24)の前記周方向一方への角変位量を規制する規制面(37)とがそれぞれ設けられ、前記両ストッパ(29)が、前記係合面(36)への前記係合突部(24c)の係合、当接状態を解除する側への前記ナット(24)の角変位を阻止するようにして前記第2間隔(L2)に対応する位置で前記取付け筒部(27)内に挿入されることを特徴とする請求項1記載のドアロック装置の取付け構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−254968(P2007−254968A)
【公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−77485(P2006−77485)
【出願日】平成18年3月20日(2006.3.20)
【出願人】(000155067)株式会社ホンダロック (164)
【Fターム(参考)】