説明

ドアロック装置

【課題】組み付け性を向上することができるドアロック装置を提供することを課題とする。
【解決手段】ラッチ機構と、ロック機構とを有し、ハウジング11,21と、回動レバー50と、回動レバー50を支持軸13b周りに付勢する弾性部材55とを備えたドアロック装置において、弾性部材55のレバー側端部56を、回動レバー50の回動軌跡上の所定位置に仮止めする仮止め部17を設け、仮止め部17は、弾性部材55のレバー側端部56を、回動レバー50が第1ケース部材11に組み付けられた組み付け位置にあるときには回動レバー50に係合せず、回動レバー50が組み付け位置からドアロック装置が完成する完成位置まで回動する間に回動レバー50との係合が開始される係合開始位置に保持する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のドアに装着されるドアロック装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両のドアには、車体に固定された略U字形状をなすストライカに係脱可能に係止するドアロック装置が配設されている。このドアロック装置は、ストライカを係止するラッチ機構と、該ラッチ機構によるストライカの係止を解除するロック機構とを備えている。
【0003】
特許文献1には、ラッチ機構、ロック機構および電動アクチュエータなどを1つの閉鎖ハウジング内に収容保持するドアロック装置が記載されている。このようなドアロック装置には、ロック機構を構成する1つの部品として、弾性部材によって付勢された回動レバーを備えたものがある。例えば、図12(A)および図12(B)に示すように、第1ケース部材101が、回動レバー102を回動可能に支持する支持軸103と、この支持軸103の外周に設けられ、スプリング104を装着する筒状のスプリング装着部105と、スプリング104の一端を係止する係止部106とを備えている。
【0004】
回動レバー102を第1ケース部材101に組み付けるには、まず、スプリング104をスプリング装着部105に装着し、一端を係止部106に係止する。そして、スプリング104の他端104aを反時計周り方向に付勢力に抗して手などで回動させて保持し、回動レバー102を支持軸103に挿入する。次に、スプリング104の他端104aの付勢を解除して回動レバー102とスプリング104の他端104aを係合させる。これにより、回動レバー102は図12(B)中、実線で示す組み付け位置に、支持軸103の周りに時計方向に付勢される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−203738号公報
【0006】
このドアロック装置では、回動レバー102を支持軸103に挿入する際に、スプリング104の他端104aを付勢力に抗して引っ張っておく必要があり、組み付けに手間が掛かるという問題があった。
【0007】
また、回動レバー102の端部に設けられたインナーケーブル連結部102aを第2ケース部材の開口(図示せず)から外部に露出させる際に、回動レバー102を付勢力に抗して図12(B)中、二点差線で示す挿通位置に治具や手で保持しておく必要があり、組み付け性が悪かった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は前記従来の問題点に鑑みてなされたもので、組み付け性を向上することができるドアロック装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するため、本発明のドアロック装置は、
ストライカを係脱可能なラッチ機構と、
前記ラッチ機構による前記ストライカの係止を解除可能なアンロック状態と、前記ラッチ機構による前記ストライカの係止を解除不可能なロック状態とに切替可能なロック機構とを有し、
前記ロック機構を配設する第1ケース部材と、該第1ケース部材を被覆する第2ケース部材とからなるハウジングと、
前記ハウジング内において、前記第1ケース部材に設けられた支持軸に回動可能に支持された回動レバーと、
前記回動レバーを前記支持軸周りに付勢する弾性部材とを備えたドアロック装置において、
前記弾性部材のレバー側端部を、前記回動レバーの回動軌跡上の所定位置に仮止めする仮止め部を設け、
前記仮止め部は、前記弾性部材のレバー側端部を、前記回動レバーが前記第1ケース部材に組み付けられた組み付け位置にあるときには前記回動レバーに係合せず、前記回動レバーが前記組み付け位置からドアロック装置が完成する完成位置まで回動する間に前記回動レバーとの係合が開始される係合開始位置に保持するものである。
【0010】
上記構成により、弾性部材のレバー側端部は、組み付け位置にある回動レバーと係合しないように保持されている。従って、回動レバーを支持軸に装着する際に、回動レバーと弾性部材のレバー側端部とを係合させて組み付ける工程を省くことができ、組み付け性を向上することができる。また、完成位置まで回動した回動レバーに対しては、弾性部材のレバー側端部が係合するため、所定の付勢力を回動レバーに発生させることが可能となる。
【0011】
前記弾性部材のレバー側端部は、前記弾性部材の付勢力によって付勢された状態で前記仮止め部に係止されることが好ましい。
弾性部材は、自身の付勢力によってレバー側端部が仮止め部に押し付けられた状態で保持されるため、弾性部材の脱落を防止できる。
【0012】
前記第2ケース部材に、前記回動レバーの端部を前記ハウジングの外側に露出させる開口部を設け、
前記回動レバーの端部が前記開口部に対応する挿通位置を、前記回動レバーが前記係止部に仮止めされた前記弾性部材のレバー側端部に係合しない非係合位置に設定することが好ましい。
【0013】
回動レバーは、その端部が第2ケース部材の開口部に対応する挿通位置においては弾性部材の付勢力を受けない。よって、弾性部材の付勢力に抗して回動レバーを手などで保持しておく必要がなく、回動レバーの端部を開口部に対して容易に位置決めして組み付けを行うことができる。
【0014】
前記回動レバーを前記挿通位置から、前記挿通位置と前記完成位置との間まで回動させる傾斜面を、前記開口部を閉塞するカバーに設けることが好ましい。
カバーをハウジングに装着すると、カバーに設けられた傾斜面によって回動レバーは挿通位置から、完成位置側にずれた位置まで回動される。これにより、回動レバーに連結された操作伝達部材の他端に操作部材を連結する際に、回動レバーが開口部の縁に引っ掛かり、組み付け不能となることを防止できる。
【0015】
前記第1ケース部材には、前記弾性部材の前記レバー側端部と摺動して前記レバー側端部を前記仮止め部までガイドするレール状凸部を設けることが好ましい。
弾性部材を第1ケース部材の支持軸周りに装着する際に、レバー側端部をレール状凸部の上面を滑らせるように操作することで容易に仮止め部まで移動させることができ、レバー側端部を仮止め部に容易に組み付けることができる。
【0016】
前記弾性部材の前記レバー側端部を前記支持軸の軸方向と並行に延設し、前記回動レバーの回動に伴う前記レバー側端部の回動軌跡に対応する位置に、前記レバー側端部の前記第1ケース部材側への移動を規制する規制部を設けることが好ましい。
【0017】
レバー側端部の第1ケース部材側への移動を規制する規制部を設けることで、弾性部材の傾きを抑制でき、レバー側端部と回動レバーとの係合状態を確実に維持できる。これにより、レバー側端部に回動レバーとの係合を維持する曲げ形状等を設ける必要がなくなり、弾性部材の形状を簡単化でき、製造コストを削減できる。また、レバー側端部を支持軸の軸方向と並行に延説することで、回動レバーを支持軸に組み付ける際に、レバー側端部が回動レバーに干渉することを回避でき、回動レバーの組み付けを容易に行うことができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明のドアロック装置によれば、弾性部材のレバー側端部は、組み付け位置にある回動レバーと係合しないように保持されている。従って、回動レバーを支持軸に装着する際に、回動レバーと弾性部材のレバー側端部とを係合させて組み付ける工程を省くことができ、組み付け性を向上することができる。また、完成位置まで回動した回動レバーに対しては、弾性部材のレバー側端部が係合するため、所定の付勢力を回動レバーに発生させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施形態に係るドアロック装置がアンロック状態にある状態を示す正面図。
【図2】本発明の実施形態に係るドアロック装置がロック状態にある状態を示す正面図。
【図3】図2のIII−III線断面図。
【図4】(A)は図2の第1ケース部材の取付軸部まわりを示す部分拡大正面図、(B)は(A)のB−B線断面図、(C)はスプリングの拡大図。
【図5】図1の第1ケース部材に第2ケース部材およびカバーを組み付け、各連結部にケーブルを接続した状態を示す正面図。
【図6】ドアロック装置のラッチ機構を示し、(A)はドア開放状態を示す側面図、(B)はドア閉塞状態を示す側面図。
【図7】図6のラッチ機構とキーシリンダとの関係を示す側面図。
【図8】第1ケース部材に取り付けたインナーレバー周りの部分拡大正面図。
【図9】(A)は第2ケース部材の挿通孔から外側に端部が露出するインナーレバー周りの部分拡大正面図、(B)は係合開始位置にあるインナーレバー周りの部分拡大正面図。
【図10】(A)から(C)はカバーのレバー保持部がインナーレバーの端部と摺接し移動させる状態を示す図9(B)のX−X線断面図。
【図11】(A)はインナーレバーが完成位置にある状態を示す部分正面図、(B)はインナーレバーが操作位置にある状態を示す部分正面図。
【図12】(A)従来のドアロック装置において第1ケース部材の取付軸部とスプリングを示す部分拡大正面図、(B)は(A)の取付軸部にインナーレバーを取り付けた状態を示す部分拡大正面図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態を図面に従って説明する。
【0021】
図1および図2は、本発明の実施形態に係るドアロック装置を示す。このドアロック装置は、車両のドアに装着され、車体に配設したストライカ1(図6(B)参照)に係脱可能である。このドアロック装置は、ストライカ1に係止するラッチ機構と、該ラッチ機構によるストライカ1の係止状態を解除可能にアンロックまたは解除不可能にロックするロック機構とが配設されている。
【0022】
ラッチ機構およびロック機構を構成する各部品を配設する第1ケース部材11は、図3に示すように、ラッチ機構配設部12とロック機構配設部19とを備えた平面視L字形状である。
【0023】
第1ケース部材11のラッチ機構配設部12には、サブケース30が装着される(図2参照)。図6(A)および図6(B)に示すように、サブケース30には、ストライカ1を挿通する空間となる挿通凹部32が設けられている。また、サブケース30には、ストライカ1を係脱可能に係止するフォーク33が取付部34に回動可能に装着されている。更に、前記フォーク33に係合してフォーク33がストライカ1を保持した状態を維持するクロー35が、取付部36に回動可能に装着されている。取付部36の左側には、クロー35の操作受部37を挿通してラッチ機構配設部12内に突出させる挿通穴38が設けられている。
【0024】
そして、フォーク33とクロー35とから構成されるラッチ機構は、ドアの閉じ力に伴うストライカ1の押圧で図6(A)から図6(B)に示すように、フォーク33が反時計回りに回動する。そして、クロー35の係止部39がフォーク33に係止することにより、フォーク33によるストライカ1の係止状態を維持する。この状態で、クロー35の操作受部37が上向きに作動されると、クロー35が時計回りに回動されることにより、フォーク33とクロー35の係止が解除される。その結果、フォーク33が図示しないスプリングの付勢力で図6(A)に示す開放位置に回動し、ストライカ1の係止を解除する。
【0025】
また、第1ケース部材11に組み付けるロック機構は、ロック機構配設部19に配設される。図1および図2に示すように、クロー35の操作受部37に係止してクロー35を係止解除方向に作動させるためのリンク41と、該リンク41によるクロー35の作動を可能または不可能とするためのロックプレート66とを備えている。
【0026】
リンク41は、操作部43を間に受動部42とロックプレート連結部44とを備えている。操作部43は、図1に示すアンロック位置では、クローの操作受部37に係合して、クロー35を係止解除方向に作動させる。そのため、ラッチ機構によるストライカ1の係止を解除できる。受動部42は、インナーレバー50またはアウターレバー61の作動力を受けることにより、上方向に移動する。また、ロックプレート連結部44はロックプレート66に連結され、このロックプレート66の回動によりアンロック位置およびロック位置に移動される。図2に示すロック位置では、操作部43がクロー35の操作受部37と係合不可能な位置に離間する。このため、アウターレバー61またはインナーレバー50によって上方向に移動されても、クロー35を係止解除方向に作動できない。よって、ラッチ機構によるストライカ1の係止を解除できない。
【0027】
インナーレバー50は、第1ケース部材11に設けた取付軸部13bに回動可能に取り付けられる取付部51を備えている。このインナーレバー50は、取付部51の周りに設けられた弾性部材であるスプリング55により時計方向に付勢され、ドアの車内側に設けたインナードアハンドル(図示せず)に連結されている。インナーレバー50は、リンク41の受動部42に係合され該リンク41をクロー35の操作受部37の側に向けて作動(スライド)させる略J字形状のリンク作動部52と、インナーケーブル(操作伝達部材)57に接続されたインナーケーブル連結部53とを備えている。また、スプリング55のレバー側端部56は、取付部51の周りに装着されるスプリング55の卷回部の径方向に対しておよそ直交する方向、すなわち、取付軸部13bの軸方向に対して並行に延びて設けられている(図4(C)参照)。よって、図12(A)に示す連動レバー102を軸方向に抜け止めするU字形状の端部104aを有するスプリング104に比べて、構成を簡素化できる。
【0028】
図4(A)および図4(B)に示すように、取付軸部13bの外側には、取付軸部13bと同心円上に円筒形のスプリング装着部15が形成されている。スプリング装着部15の上方には、後述するスプリング55の一端を係止する係止溝16が設けられている。スプリング装着部15の下方には、スプリング55の他端に形成されたレバー側端部56を係止する仮止め部17が第1ケース部材11に一体成形されている。仮止め部17は、第1ケース部材11から垂直に立ち上がり、図中矢印で示すスプリング55の付勢方向と交わる方向に延びる直線状に設けられている。
【0029】
また、スプリング装着部15の下方には、レバー側端部56を仮止め部17までガイドするレール状凸部18aと、レバー側端部56の第1ケース部材11側(図4(B)中右側)への移動を規制する規制部18bとが設けられている。レール状凸部18aおよび規制部18bは、第1ケース部材11から垂直に立ち上がり、レバー側端部56の回動軌跡に対応するように取付軸部13bと同心円上に円弧状に形成され、途中、段部18cを介して連続して設けられている。レール状凸部18aは仮止め部17と同じ高さで連続して設けられ、レール状凸部18aと規制部18bとの間に段部18cを設けることで、レバー側端部56を仮止め部17に係合可能としている。
【0030】
本実施形態では、仮止め部17がスプリング装着部15の下方に直線状に突設されている。しかし、仮止め部17はインナーレバー50の回動軌跡内で、仮り止めされたレバー側端部56がインナーレバー50と係合するのであれば、配設場所、および形状は特に限定されない。
【0031】
図5は、第1ケース部材11と共にハウジングを構成する第2ケース部材21を示す。この第2ケース部材21は、第1ケース部材11のロック機構配設部19に装着されている。第2ケース部材21には、インナーレバー50のインナーケーブル連結部53が貫通して外側に突出する開口部22が設けられている(図9(A)および図9(B)参照)。この開口部22は、インナーケーブル連結部53の形状に一致するように形成されている。また、開口部22の斜め上方には、後述するアウターケーブル58を固定するアウターケーブル固定部23が設けられている。
【0032】
インナーケーブル57は、図5に示すように、第2ケース部材21の開口部22から第2ケース部材21の外側に延びるインナーケーブル連結部53に連結されている。また、インナーケーブル57は、アウターケーブル固定部23に固定されたチューブ状のアウターケーブル58内に進退移動可能に収納されている。インナーケーブル57とアウターケーブル58とが、コントロールケーブル59を構成している。インナーケーブル57がインナーケーブル連結部53を左向きに引っ張ることで、インナーレバー50が反時計回りに回動する。これにより、リンク作動部52がリンク41の受動部42に係合し、リンク41を上向きに移動させる。
【0033】
開口部22から突出したインナーケーブル連結部53およびインナーケーブル57を被覆するため、第2ケース部材21にカバー25が装着されている。カバー25には、図9(B)に示すように、インナーケーブル連結部53の近傍に一対のレバー保持部26が設けられている。レバー保持部26は、カバー25の縁からインナーケーブル連結部53に向かって突出している。また、レバー保持部26は、カバー25の第2ケース部材21と対向する面から直角に、図中奥側に向かって延びている。レバー保持部26の端部には、レバー保持部26のインナーケーブル連結部53側がその反対側よりも短くなるように傾斜面27が形成されている(図10(A)参照)。
【0034】
アウターレバー61は、図2と図7に示すように、第1ケース部材11を貫通して内外に延び、回動可能に取り付けられている。このアウターレバー61には、第1ケース部材11から外部に突出する部分に、ドアの車外側に設けたアウターハンドル(図示せず)を接続するアウターハンドル接続部62が設けられている。アウターハンドルが操作されると、受動部42内に連結される先端のリンク連結部63が上向きに移動することにより、リンク41を上向きに移動させる。
【0035】
ロックプレート66は、第1ケース部材11に設けた取付軸部13aに回動可能に取り付けられている。このロックプレート66は、キースイッチレバー73によるアンロック作動を受けるアンロック作動受動部67と、キースイッチレバー73によるロック作動を受ける右側縁部68と、ノブレバー86によるアンロック作動およびロック作動を受けるノブレバー係着部69とを備えている。
【0036】
ロックプレート66は、後述するキースイッチレバー73またはノブレバー86によって時計回りに回動させることにより、リンク係着部70が左側に移動し、リンク41をアンロック位置からロック位置に移動させる。また、反時計回りに回動されることにより、リンク係着部70が右側に移動し、リンク41をロック位置からアンロック位置に移動させる。
【0037】
キースイッチレバー73は、第1ケース部材11の取付軸部13aに、ロックプレート66とともに回動可能に取り付けられている。このキースイッチレバー73は、ドアの車外側に露出するように配設したシリンダ錠83(図7参照)にキーロータ81およびキーリンク76を介して連結されている。キースイッチレバー73は、キーリンク76と係合する連結部74と、アンロック作動受動部67と係合する切欠き部75とを有している。
【0038】
キーリンク76は、キーリンク保持溝77に上下方向に移動可能に保持されている。また、キーリンク76は、キーロータ81と係合する上側円形突起部79と、キースイッチレバー73の連結部74と係合する下側円形突起部78とを備えている。キーロータ81は、軸82回りにシリンダ錠83に従動して時計方向または反時計方向に回動可能に取り付けられている。また、キーロータ81は、上側円形突起部79と係合する楕円形挿通孔84を有している。キーロータ81の回動により、キーリンク76を介してキースイッチレバー73が時計回りに回動されると、ロックプレート66を介してリンク41をロック位置に移動させる。また、キースイッチレバー73が反時計回りに回動されることにより、ロックプレート66を介してリンク41をアンロック位置に回動させる。
【0039】
ノブレバー86は、第1ケース部材11の軸孔14に回動可能に軸着されている。ノブレバー86は、ロックノブ(図示せず)に接続されたノブレバー側連結部87と、ロックプレート66に係合するロックプレート係着部88とを備えている。そして、ロックノブの操作に連動してロックプレート66を作動させ、リンク41をロック位置またはアンロック位置に移動させる。具体的には、ノブレバー86はロックノブによって反時計回りに回動されることにより、ロックプレート係着部88がロックプレート66をロック位置に回動させる。また、時計回りに回動されることにより、ロックプレート係着部88がロックプレート66をアンロック位置に回動させる。さらに、ノブレバー86は、カム受部89を介してカム部材92に係合している。
【0040】
カム部材92に隣接する駆動モータ90は、出力軸91を介してカム部材92を正転または逆転させる。このカム部材92は、ノブレバー86のカム受部89と対向するように回転可能に配設されている。カム部材92には、カム受部89に係合するカム溝94が凹設されている。そして、このカム部材92は、カム受部89が中心側に移動するように回転されることにより、ノブレバー86およびロックプレート66を介してリンク41をロック作動させる。他方、カム受部89が外周側に移動するように回転されることにより、ノブレバー86およびロックプレート66を介してリンク41をアンロック作動させるように構成している。
【0041】
次に、第1ケース部材11へのインナーレバー50の組付について説明する。
【0042】
まず、図4(A)に示すように、スプリング55をスプリング装着部15に装着し、スプリング55の一端を係止溝16に係止させる。すると、スプリング55のレバー側端部56は二点差線で示すようにレール状凸部18aの上に載置される。そして、レバー側端部56を、付勢力に抗してレール状凸部18aの上を滑らせるように仮止め部17まで移動させ、仮止め部17に係止する。このように、レバー側端部56はレール状凸部18aにガイドされるため、レバー側端部56を仮止め部17に容易に係止させることができる。このとき、スプリング55の両端は付勢力を持ってそれぞれ係止されるため、スプリング55はスプリング装着部15に確実に保持される。そして、図8に示すように、スプリング55のレバー側端部56が係止されるインナーレバー50のリンク作動部52が、スプリング55のレバー側端部56と第1ケース部材11の下縁との間に配置されるように、インナーレバー50を支持軸13bに装着する。このとき、スプリング55のレバー側端部56は仮止め部17に保持されているため、レバー側端部56をリンク作動部52に係止させる作業は不要であり、インナーレバー50の装着を簡単に行うことができる。また、インナーレバー50とスプリング55のレバー側端部56とは係合しないため、インナーレバー50に付勢力は発生しない。
【0043】
また、スプリング55のレバー側端部56は、規制部18bによって第1ケース部材11側(図4(B)中右側)への移動が規制されているため、スプリング55が傾くことが阻止され、レバー側端部56とインナーレバー50との係合可能状態を確実に維持できる。更に、規制部18bは、インナーレバー50の回動に伴うレバー側端部56の回動軌跡に対応して設けられているため、インナーレバー50が後述する操作位置まで回動した場合でも、レバー側端部56とインナーレバー50との係合状態を確実に維持することができる。
【0044】
そして、図9(A)に示すように、第1ケース部材11に第2ケース部材21を被せる。このとき、組み付け位置にあるインナーレバー50はスプリング55の付勢力を受けておらずフリー状態となっている。従って、インナーレバー50を容易に開口部22(図9(A)参照)に対応する挿通位置(非係合位置)に回動して開口部22を貫通させることができる。このように、インナーレバー50は、インナーケーブル連結部53が第2ケース部材21の開口部22に対応する挿通位置においてはスプリング55の付勢力を受けない。よって、スプリング55の付勢力に抗してインナーレバー50を手などで保持しておく必要がない。このため、インナーケーブル連結部53を開口部22に対して容易に位置決めして組み付けを行い、組み付け性を向上できる。次に、アウターケーブル58の端部を第2ケース部材21のアウターケーブル固定部23に固定し、インナーケーブル57の端部をインナーケーブル連結部53に連結する。
【0045】
第2ケース部材21にカバー25を装着すると、傾斜面27がインナーケーブル連結部53の縁に摺接しながら押圧し(図10(B)参照)、インナーレバー50を挿通位置から所定角度αだけずれた係合開始位置まで回動させる(図9(B)および図10(C)参照)。このとき、初めてスプリング55のレバー側端部56がインナーレバー50のリンク作動部52に係合し、インナーレバー50には時計回りの付勢力が発生する。以上のように、インナーレバー50を開口部22からずれた係合開始位置に保持する。これにより、コントロールケーブル59の他端側にハンドル等の操作部材を連結する際に、インナーレバー50が開口部22の縁に引っ掛かってコントロールケーブル59を引っ張れない(組付け出来ない)という不具合が発生することを回避できる。
【0046】
そして、ドアロック装置が車両のドアに装着され、コントロールケーブル59の他端に車内のインナーハンドルが装着される。すると、さらにインナーケーブル57は図11(A)中の矢印方向に引っ張られ、インナーレバー50も係合開始位置から点線で示す完成位置まで回動する。この完成状態では、インナーレバー50とスプリング55のレバー側端部56とは係合しており、インナーレバー50はインナーケーブル57を引っ張る方向である時計回り方向に付勢されている。これにより、インナーケーブル57の進退移動に対してインナーレバー50が確実に作動する。
【0047】
車両のインナーハンドルを操作すると、インナーケーブル57が引っ張られ、インナーレバー50は図11(B)中の点線で示す操作位置まで回動する。すると、インナーレバー50のリンク作動部52がリンク41の後端を押し上げ、リンク41を介してクロー35の操作部を操作することにより、ラッチ機構が開放状態へと移行して、ストライカ1が開放され、ドアが開放可能となる。
【0048】
インナーハンドルの操作を解除すると、インナーケーブル57が押し戻されて、インナーレバー50は完成位置に戻る。このとき、インナーレバー50は、インナーケーブル57の押し戻しに対して、スプリング55の付勢力が付加されて作動するため、確実に完成位置まで移動することができる。
【0049】
なお、本発明の仮止め部17はインナーレバー50に限定されず、ドアロック装置内にスプリングと共に装着される全ての回動レバーに適用可能である。
【符号の説明】
【0050】
1 ストライカ
11 第1ケース部材(ハウジング)
13b 取付軸部(支持軸)
17 仮止め部
18a レール状凸部
18b 規制部
21 第2ケース部材(ハウジング)
22 開口部
25 カバー
27 傾斜面
50 インナーレバー(回動レバー)
55 スプリング(弾性部材)
56 レバー側端部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ストライカを係脱可能なラッチ機構と、
前記ラッチ機構による前記ストライカの係止を解除可能なアンロック状態と、前記ラッチ機構による前記ストライカの係止を解除不可能なロック状態とに切替可能なロック機構とを有し、
前記ロック機構を配設する第1ケース部材と、該第1ケース部材を被覆する第2ケース部材とからなるハウジングと、
前記ハウジング内において、前記第1ケース部材に設けられた支持軸に回動可能に支持された回動レバーと、
前記回動レバーを前記支持軸周りに付勢する弾性部材とを備えたドアロック装置において、
前記弾性部材のレバー側端部を、前記回動レバーの回動軌跡上の所定位置に仮止めする仮止め部を設け、
前記仮止め部は、前記弾性部材のレバー側端部を、前記回動レバーが前記第1ケース部材に組み付けられた組み付け位置にあるときには前記回動レバーに係合せず、前記回動レバーが前記組み付け位置からドアロック装置が完成する完成位置まで回動する間に前記回動レバーとの係合が開始される係合開始位置に保持することを特徴とするドアロック装置。
【請求項2】
前記弾性部材のレバー側端部は、前記弾性部材の付勢力によって付勢された状態で前記仮止め部に係止されることを特徴とする請求項1に記載のドアロック装置。
【請求項3】
前記第2ケース部材に、前記回動レバーの端部を前記ハウジングの外側に露出させる開口部を設け、
前記回動レバーの端部が前記開口部に対応する挿通位置を、前記回動レバーが前記係止部に仮止めされた前記弾性部材のレバー側端部に係合しない非係合位置に設定したことを特徴とする請求項1、または、2に記載のドアロック装置。
【請求項4】
前記回動レバーを前記挿通位置から、前記挿通位置と前記完成位置との間まで回動させる傾斜面を、前記開口部を閉塞するカバーに設けたことを特徴とする請求項3に記載のドアロック装置。
【請求項5】
前記第1ケース部材には、前記弾性部材の前記レバー側端部と摺動して前記レバー側端部を前記仮止め部までガイドするレール状凸部を設けたことを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載のドアロック装置。
【請求項6】
前記弾性部材の前記レバー側端部を前記支持軸の軸方向と並行に延設し、
前記回動レバーの回動に伴う前記レバー側端部の回動軌跡に対応する位置に、前記レバー側端部の前記第1ケース部材側への移動を規制する規制部を設けたことを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載のドアロック装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−113008(P2013−113008A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−260407(P2011−260407)
【出願日】平成23年11月29日(2011.11.29)
【出願人】(000138462)株式会社ユーシン (241)
【Fターム(参考)】