説明

ドア固定治具

【課題】 簡易な構成で車体に対してドアを所定の開放状態に保持することができるドア固定治具を提供する。
【解決手段】 車体Wに対してドアDを所定の開放状態に保持するドア固定治具10であって、ドアチェッカー1のためにドアDに形成された四角形状の開口孔3に係合する第1取付部20と、この第1取付部20と第1アーム11で連結され、車体Wに形成されたドアチェッカー1のブラケット固定用のねじ孔5に係合する第2取付部30と、第1アーム11に連結された第2アーム12の先端に設けられ、車体Wのドア開口部周縁のフランジ部13に係合する第3取付部40からなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体に対してドアを所定の開放状態に保持するためのドア固定治具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車製造の塗装工程では、ドアを所定の開放状態に保持して、ドア周縁のヘミング部や車体のドア開口部周縁などの外板と内板の合わせ部に、作業者またはロボットが塗布ノズルを用いてシーラ材を塗布している。
【0003】
ドアを所定の開放状態に保持するためのドア固定治具としては、特許文献1に記載のように、車体側ヒンジブラケットの起立部に当接すると共にドア側ヒンジブラケットの切り欠き部に係合可能な係止部材と、この係止部材に回動可能に支持される回動部材とを有し、ドアの所定の開放時に、係止部材が起立部に当接すると共に切り欠き部に係合し、かつ回動部材が車体側とドア側のヒンジブラケット間に形成される隙間からヒンジ内側に入り込み、この状態で回動部材が回動して係止部材と共に起立部を挟持してドアを所定の開放状態に保持するドア固定治具が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−143298号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に記載のドア固定治具おいては、車体とドアの奥まった狭所で係止部材を車体側ヒンジブラケットの起立部に当接すると共にドア側ヒンジブラケットの切り欠き部に係合させ、且つ回動部材が車体側とドア側のヒンジブラケット間に形成される隙間からヒンジ内側に入り込む必要があるため、取り付け作業が非常に煩雑であり、また車体側とドア側のヒンジブラケットからの取り外し作業も煩雑で工数が掛かる。更に、ドア側ヒンジブラケットに切り欠き部を形成するための加工が必要になる。
【0006】
本発明は、従来の技術が有するこのような問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、簡易な構成で車体に対してドアを所定の開放状態に保持することができるドア固定治具を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決すべく請求項1に係る発明は、車体に対してドアを一定の開度で保持するドア固定治具であって、ドアチェッカーを取り付けるためにドアに形成された四角形状の開口孔に係合する第1取付部と、この第1取付部と第1アームで連結され、車体に形成されたドアチェッカーのブラケット固定用のねじ孔に係合する第2取付部と、前記第1アームに連結された第2アームの先端に設けられ、車体のドア開口部周縁のフランジ部に係合する第3取付部からなるものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、車体とドアに対して着脱が容易であるため、工数低減が図れ、またドアに形成されたドアチェッカーを取り付けるための開口孔と車体に形成されたドアチェッカーのブラケット固定用のねじ孔を利用するので、ヒンジなどに特別な加工を施す必要がないため、コスト低減が図れる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】車体とドアの係合関係を示す概要説明図
【図2】本発明に係るドア固定治具の正面図
【図3】図2のA矢視図
【図4】図2のB矢視図
【図5】第3取付部の拡大斜視図
【図6】本発明に係るドア固定治具の使用説明図で、(a)は第1取付部のドアの開口孔に対する係合開始状態、(b)は第1取付部のドアの開口孔に対する係合完了状態
【図7】本発明に係るドア固定治具の使用説明図で、(a)は第3取付部の車体のフランジ部に対する係合開始状態、(b)は第3取付部の車体のフランジ部に対する係合完了状態
【図8】図7(b)のC矢視図
【図9】図7(b)のD矢視図
【図10】本発明に係るドア固定治具を車体とドアに取り付けた状態の説明図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。図1に示すように、上下一対のドアヒンジHとこのドアヒンジHの間に配設されたドアチェッカー1により、車体Wに対してドアDが開閉自在に取り付けられている。ドアチェッカー1は、ドアD内に装着された保持部2からドアDに形成された四角形状の開口孔3を通して外部に出没自在に設けたアーム4と、車体Wのドア開口部W1のピラーW2の一側に開けられたねじ孔5に取り付けられたブラケット6と、ブラケット6に配設された回転体7で構成されている。
【0011】
そして、回転体7にアーム4の先端を回転自在に係合し、アーム4に形成された凹状の停止部材(不図示)に保持部2に形成された凸状の係止片(不図示)が係合することにより、所定開度の開放状態でドアDを保持するように構成されている。本発明は、ドアDに形成された四角形状の開口孔3と、車体Wのドア開口部W1のピラーW2の一側に開けられたねじ孔5を利用するドア固定治具である。
【0012】
本発明に係るドア固定治具10は、図2〜図5に示すように、ドアチェッカー1を取り付けるためにドアDに形成された四角形状の開口孔3に係合する第1取付部20と、第1取付部20と第1アーム11で連結され、車体Wに形成されたドアチェッカー1のブラケット固定用のねじ孔5に係合する第2取付部30と、第1アーム11に連結された第2アーム12の先端に設けられ、車体Wのドア開口部周縁のフランジ部13に係合する第3取付部40からなる。
【0013】
第1取付部20は、ガイドプレート21と、ガイドプレート21の一面に一体に形成される挿入プレート22より構成される。ガイドプレート21と挿入プレート22には、それらの貫通孔21a,22aに第1アーム11の一端11aが挿入され固定されている。ガイドプレート21は、その下部21bがドアDに形成された四角形状の開口孔3の幅より幅広に形成され、その上部21cは開口孔3に挿入可能な幅に形成されている。
【0014】
また、挿入プレート22は、ドアDに形成された四角形状の開口孔3に挿入可能な幅に形成され、その下端22bはガイドプレート21の上部21c下端と一致するように配設され、その上部22cはガイドプレート21の上部21c上端より上方に出るように形成されている。挿入プレート22の下端22bには、ガイドプレート21と反対側に突出する凸部22dが形成されている。従って、挿入プレート22は、図3に示すように、側面視で略L字形状に形成されている。
【0015】
第2取付部30は、図2に示すように、曲折した第1アーム11の他端11bに形成した鍔部31と、鍔部31に立設したピン部材32より構成される。
【0016】
第3取付部40は、図2及び図5に示すように、第1アーム11のほぼ中央部から第1アーム11の他端11bの曲折方向と反対方向に延出した第2アーム12の先端に設けられている。そして、第2アーム12の先端に固定された略鉤形状の支持プレート41には、回動プレート44がボルト42とボルト42に締結されたナット43により、回動自在に取り付けられている。ボルト42は、支持プレート41に開けた貫通孔41aと回動プレート44に開けた貫通孔44aに挿通されている。
【0017】
回動プレート44の下部に形成された切り欠き部(不図示)には、挟持部45が取り付けられている。挟持部45は、対向する壁部45a,45bと、これらの壁部45a,45bを連結する背部45cからなり、平面視略U字形状に形成されている。一方の壁部45aの内側面には、他方の壁部45bと対向する隙間調整用の円柱管46が溶着されている。
【0018】
そして、他方の壁部45bの内側面には、第2アーム12の先端を接続した支持プレート41の面41bが当接している。また、挟持部45の背部45cの外側面と回動プレート44の下辺44cには、第3取付部40の姿勢を調整するための回動アーム47が溶着されている。
【0019】
以上のように構成された本発明に係るドア固定治具10を車体WとドアDに取り付ける手順について説明する。先ず、図6(a)に示すように、作業者がドア固定治具10の第1アーム11を把持して、ドアDの開口孔3に第1取付部20の挿入プレート22の上部22cを挿入する。
【0020】
次いで、図6(b)に示すように、第1アーム11を上方に回動し、第1アーム11を押圧して挿入プレート22の下端22bの凸部22dを開口孔3に係合させ、同時にガイドプレート21の上部21cを開口孔3に係合させ、ガイドプレート21の下部21bをドアDの面D1に当接させる。すると、第1取付部20のドアDの開口孔3に対する位置決め係合が完了する。
【0021】
次いで、図10に示すように、作業者が第2取付部30のピン部材32を車体Wのねじ孔5に挿通し、鍔部31を車体WのピラーW2に当接させて第2取付部30を位置決め固定する。この時、第3取付部40の支持プレート41の第2アーム12を接続した面41bと反対側の面41cが車体Wのフランジ部13の室外面側に当接する。
【0022】
次いで、図7(a)に示すように、作業者が第3取付部40の回動アーム47を把持し、ボルト42の軸を中心に回動プレート44を回動させることにより、図7(b)に示すように、挟持部45に取り付けた円柱管46の外周面がフランジ部13の室内面側に当接する。すると、図8及び図9に示すように、支持プレート41の面41cと円柱管46の外周面により、車体Wのフランジ部13が挟持される。
【0023】
そして、図10に示すように、ドアチェッカー1を取り付けるためにドアDに形成された四角形状の開口孔3に係合する第1取付部20と、車体Wに形成されたドアチェッカー1のブラケット固定用のねじ孔5に係合する第2取付部30と、車体Wのドア開口部周縁のフランジ部13に係合する第3取付部40により、車体Wに対してドアDを開放状態に保持することができる。
【0024】
ドアDを開放状態にして、ドア周縁のヘミング部や車体Wのドア開口部周縁など外板と内板の合わせ部へのシーラ材の塗布作業が完了すると、前記した手順と逆の手順でドア固定治具10を車体W及びドアDから外し、次に搬送されて来る車体Wのシーラ材の塗布作業に使用する。
【0025】
このように、従来の技術に比べて簡単に車体WとドアDに対して着脱することが可能になるため、工数低減に寄与し、またドアヒンジHなどに特別な加工を施す必要もないため、従来の技術に比べてコスト低減が図れる。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明によれば、従来の技術に比べて車体とドアに対して着脱が容易であるため、工数低減が図れ、またドアに形成されたドアチェッカーを取り付けるための開口孔と車体に形成されたドアチェッカーのブラケット固定用のねじ孔を利用するので、ドアヒンジなどに特別な加工を施す必要がないため、コスト低減が図れるドア固定治具を提供することができる。
【符号の説明】
【0027】
1…ドアチェッカー、3…開口孔、5…ねじ孔、10…ドア固定治具、11…第1アーム、12…第2アーム、13…フランジ部、20…第1取付部、21…ガイドプレート、22…挿入プレート、22d…凸部、30…第2取付部、31…鍔部、32…ピン部材、40…第3取付部、41…支持プレート、44…回動プレート、45…挟持部、46…円柱管、47…回動アーム、D…ドア、H…ドアヒンジ、W…車体、W1…ドア開口部、W2…ピラー。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体に対してドアを所定の開放状態に保持するドア固定治具であって、ドアチェッカーのためにドアに形成された四角形状の開口孔に係合する第1取付部と、この第1取付部と第1アームで連結され、車体に形成されたドアチェッカーのブラケット固定用のねじ孔に係合する第2取付部と、前記第1アームに連結された第2アームの先端に設けられ、車体のドア開口部周縁のフランジ部に係合する第3取付部からなることを特徴とするドア固定治具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−235804(P2011−235804A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−110056(P2010−110056)
【出願日】平成22年5月12日(2010.5.12)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】