説明

ドデカヒドロ−3a,6,6,9a−テトラメチルナフト[2,1−b]フラン原料の製造方法

【課題】微生物により生産される、ドデカヒドロ-3a,6,6,9a-テトラメチルナフト[2,1-b]フランの原料である中間体を、産生微生物である子嚢菌菌体から効率よく分離する方法の提供。
【解決手段】ドデカヒドロ-3a,6,6,9a-テトラメチルナフト[2,1-b]フランの製造原料である各中間体、スクラレオール、スクラレオリドと、デカヒドロ-2-ヒドロキシ-2,5,5,8a-テトラメチルナフタレンエタノールを、産生微生物菌体とを分離する方法であって、原料を含有する溶液の溶液密度を調整して、原料と菌体とを分離する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微生物によりドデカヒドロ-3a,6,6,9a-テトラメチルナフト[2,1-b]フラン原料を生産し、その後ドデカヒドロ-3a,6,6,9a-テトラメチルナフト[2,1-b]フラン原料を微生物と分離するドデカヒドロ-3a,6,6,9a-テトラメチルナフト[2,1-b]フラン原料の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ドデカヒドロ-3a,6,6,9a-テトラメチルナフト[2,1-b]フラン(ヒドロアンブロキサン(商標)と呼ばれる場合もある)は残香性の高い香料であり、主にクラリーセージ(Salvia sclarea)から抽出されたスクラレオール(Sclareol)から化学変換によって製造されている。スクラレオールからドデカヒドロ-3a,6,6,9a-テトラメチルナフト[2,1-b]フランを生産する工程を図8に示す。図8に示すように、ドデカヒドロ-3a,6,6,9a-テトラメチルナフト[2,1-b]フラン中間体としては、デカヒドロ-2-ヒドロキシ-2,5,5,8a-テトラメチルナフタレンエタノール及びスクラレオリド(ドデカヒドロ-3a,6,6,9a-テトラメチルナフト[2,1-b]フラン-2(1H)-オン;(Sclareolide))が知られている。
【0003】
微生物によるスクラレオールからドデカヒドロ-3a,6,6,9a-テトラメチルナフト[2,1-b]フラン中間体の変換反応は、例えば特許文献1〜4に記載されている。特許文献1にはHyphozyma roseoniger ATCC20624によるデカヒドロ-2-ヒドロキシ-2,5,5,8a-テトラメチルナフタレンエタノールの生産が開示されている。また、特許文献2にはCryptococcus laurentii ATCC20920によるドデカヒドロ-3a,6,6,9a-テトラメチルナフト[2,1-b]フラン中間体の生産が開示され、特許文献3にはBensingtonia cilliata ATCC20919によるドデカヒドロ-3a,6,6,9a-テトラメチルナフト[2,1-b]フラン中間体の生産が開示され、特許文献4にはCryptococcus albidus ATCC20918及びCryptococcus albidus ATCC20921によるドデカヒドロ-3a,6,6,9a-テトラメチルナフト[2,1-b]フラン中間体の生産が開示されている。このように微生物を用いてドデカヒドロ-3a,6,6,9a-テトラメチルナフト[2,1-b]フラン中間体を生産することで、ドデカヒドロ-3a,6,6,9a-テトラメチルナフト[2,1-b]フラン合成を低コスト化することが可能となる。
【0004】
微生物を用いたドデカヒドロ-3a,6,6,9a-テトラメチルナフト[2,1-b]フラン中間体の製造工程においては、ドデカヒドロ-3a,6,6,9a-テトラメチルナフト[2,1-b]フラン中間体の分離・精製を効率的にすることが求められる。特許文献4には、上述した微生物を使用してドデカヒドロ-3a,6,6,9a-テトラメチルナフト[2,1-b]フラン中間体(スクラレオリド)を分離・精製する方法が開示されている。特許文献4に開示された方法は、酢酸エチルを用いた溶媒抽出法、及びメッシュを用いたろ過に引き続いて結晶化する方法である。
【0005】
しかしながら、従来のドデカヒドロ-3a,6,6,9a-テトラメチルナフト[2,1-b]フラン原料の製造方法では、微生物により生産されたドデカヒドロ-3a,6,6,9a-テトラメチルナフト[2,1-b]フラン中間体を分離・精製する際の収率が悪いとった問題点があった。
【0006】
【特許文献1】特許第2547713号
【特許文献2】特許第2802588号
【特許文献3】特許第3002654号
【特許文献4】特許第2063550号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明は、上述したような実状に鑑み、微生物により生産されたドデカヒドロ-3a,6,6,9a-テトラメチルナフト[2,1-b]フラン中間体を効率よく分離することができるドデカヒドロ-3a,6,6,9a-テトラメチルナフト[2,1-b]フラン原料の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した目的を達成するため本発明者らは、鋭意検討した結果、ドデカヒドロ-3a,6,6,9a-テトラメチルナフト[2,1-b]フラン中間体と菌体とを含む溶液において溶液密度を調節することで、両者を分離できることを見いだし本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち本発明は以下を包含する。
【0010】
すなわち、微生物により生産されたドデカヒドロ-3a,6,6,9a-テトラメチルナフト[2,1-b]フラン原料と微生物菌体とを分離する工程を含むドデカヒドロ-3a,6,6,9a-テトラメチルナフト[2,1-b]フラン原料の製造方法であって、ドデカヒドロ-3a,6,6,9a-テトラメチルナフト[2,1-b]フラン原料と微生物菌体とが懸濁された溶液の溶液密度を調整して、ドデカヒドロ-3a,6,6,9a-テトラメチルナフト[2,1-b]フラン原料と菌体とを分離することを特徴とするドデカヒドロ-3a,6,6,9a-テトラメチルナフト[2,1-b]フラン原料の製造方法である。
【0011】
ここで、前記ドデカヒドロ-3a,6,6,9a-テトラメチルナフト[2,1-b]フラン原料は、ドデカヒドロ-3a,6,6,9a-テトラメチルナフト[2,1-b]フラン合成過程における中間体を意味している。当該中間体としては、デカヒドロ-2-ヒドロキシ-2,5,5,8a-テトラメチルナフタレンエタノール及びスクラレオリド(ドデカヒドロ-3a,6,6,9a-テトラメチルナフト[2,1-b]フラン-2(1H)-オン)を挙げることができる。
【0012】
本発明にかかるドデカヒドロ-3a,6,6,9a-テトラメチルナフト[2,1-b]フラン原料の製造方法において、前記溶液の溶液密度は1.07g/mL以上とすることが好ましい。また、前記溶液の溶液密度は、遠心分離によっても菌体が沈殿せず浮遊してしまう値未満であることが好ましい。
【0013】
また、本発明にかかるドデカヒドロ-3a,6,6,9a-テトラメチルナフト[2,1-b]フラン原料の製造方法によれば、2種類以上のドデカヒドロ-3a,6,6,9a-テトラメチルナフト[2,1-b]フラン原料を含む溶液から、1種類のドデカヒドロ-3a,6,6,9a-テトラメチルナフト[2,1-b]フラン原料を残りのドデカヒドロ-3a,6,6,9a-テトラメチルナフト[2,1-b]フラン原料と微生物菌体とから分離することも可能である。具体的には、デカヒドロ-2-ヒドロキシ-2,5,5,8a-テトラメチルナフタレンエタノールとスクラレオリドと微生物とを含む溶液から、デカヒドロ-2-ヒドロキシ-2,5,5,8a-テトラメチルナフタレンエタノールをスクラレオリド及び微生物から分離することができる。
【0014】
さらに、本発明にかかるドデカヒドロ-3a,6,6,9a-テトラメチルナフト[2,1-b]フラン原料の製造方法によれば、2種類以上のドデカヒドロ-3a,6,6,9a-テトラメチルナフト[2,1-b]フラン原料と菌体とを分離した後、1種類のドデカヒドロ-3a,6,6,9a-テトラメチルナフト[2,1-b]フラン原料を残りのドデカヒドロ-3a,6,6,9a-テトラメチルナフト[2,1-b]フラン原料から分離することも可能である。具体的には、デカヒドロ-2-ヒドロキシ-2,5,5,8a-テトラメチルナフタレンエタノールとスクラレオリドと微生物とを含む溶液から、先ず、デカヒドロ-2-ヒドロキシ-2,5,5,8a-テトラメチルナフタレンエタノールとスクラレオリドとを微生物から分離することができ、その後、デカヒドロ-2-ヒドロキシ-2,5,5,8a-テトラメチルナフタレンエタノールをスクラレオリドから分離することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明にかかるドデカヒドロ-3a,6,6,9a-テトラメチルナフト[2,1-b]フラン原料の製造方法によれば、ドデカヒドロ-3a,6,6,9a-テトラメチルナフト[2,1-b]フラン原料を、当該ドデカヒドロ-3a,6,6,9a-テトラメチルナフト[2,1-b]フラン原料を生産した微生物から効率よく分離することができる。したがって、本発明にかかるドデカヒドロ-3a,6,6,9a-テトラメチルナフト[2,1-b]フラン原料の製造方法によれば、ドデカヒドロ-3a,6,6,9a-テトラメチルナフト[2,1-b]フラン合成に必要なドデカヒドロ-3a,6,6,9a-テトラメチルナフト[2,1-b]フラン原料を低コストに得ることができることになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明を詳細に説明する。
ドデカヒドロ-3a,6,6,9a-テトラメチルナフト[2,1-b]フラン原料生産微生物
本発明においては、ドデカヒドロ-3a,6,6,9a-テトラメチルナフト[2,1-b]フラン原料となるドデカヒドロ-3a,6,6,9a-テトラメチルナフト[2,1-b]フラン合成系におけるドデカヒドロ-3a,6,6,9a-テトラメチルナフト[2,1-b]フラン中間体を生産する微生物であれば如何なる微生物をも使用することができる。すなわち、本発明にかかるドデカヒドロ-3a,6,6,9a-テトラメチルナフト[2,1-b]フラン原料の製造方法においては、ドデカヒドロ-3a,6,6,9a-テトラメチルナフト[2,1-b]フラン中間体の生成能を指標として、土壌から単離した微生物を使用することができる。ドデカヒドロ-3a,6,6,9a-テトラメチルナフト[2,1-b]フラン中間体の生成能は、供試微生物をスクラレオール含有培地にて培養し、培地中に含まれるドデカヒドロ-3a,6,6,9a-テトラメチルナフト[2,1-b]フラン中間体を検出することで評価することができる。培地中に含まれるドデカヒドロ-3a,6,6,9a-テトラメチルナフト[2,1-b]フラン中間体は、供試微生物を除去した後の培地から有機溶媒を用いてドデカヒドロ-3a,6,6,9a-テトラメチルナフト[2,1-b]フラン中間体を抽出した後、例えばガスクロマトグラフィー(GC)等によって検出することができる。
【0017】
なお、ドデカヒドロ-3a,6,6,9a-テトラメチルナフト[2,1-b]フラン中間体の検出には、GCに限らず、例えば、気液クロマトグラフィ(GLC)、薄層クロマトグラフィ(TLC)、高圧液体クロマトグラフィ(HPLC)、赤外スペクトル(IR)及び核磁気共鳴(NMR)のような従来公知の分析方法を使用することができる。
【0018】
ここで、ドデカヒドロ-3a,6,6,9a-テトラメチルナフト[2,1-b]フラン中間体とは、デカヒドロ-2-ヒドロキシ-2,5,5,8a-テトラメチルナフタレンエタノール及びスクラレオリド(ドデカヒドロ-3a,6,6,9a-テトラメチルナフト[2,1-b]フラン-2(1H)-オン)を意味する。
【0019】
例えば、本発明にかかるドデカヒドロ-3a,6,6,9a-テトラメチルナフト[2,1-b]フラン原料の製造方法では、本願発明者らが先の出願(特願2006-48550号)において開示した微生物を使用することができる。この微生物は、解析の結果、子嚢菌網(Ascomycetes)に属する酵母であり、Ascomycete sp. KSM-JL2842と命名し、独立行政法人製品評価技術基盤機構 特許微生物寄託センター(NITE特許微生物寄託センター:〒292-0818千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8)に2006年1月12日付けで受託番号FERM P-20759として寄託している。
【0020】
また、本発明にかかるドデカヒドロ-3a,6,6,9a-テトラメチルナフト[2,1-b]フラン原料の製造方法においては、受託番号FERM P-20759で特定される子嚢菌網(Ascomycetes)に属する酵母と同一の属に分類され、好ましくは当該酵母と同一の種に分類され、より好ましくは当該酵母と同一の株に分類され且つドデカヒドロ-3a,6,6,9a-テトラメチルナフト[2,1-b]フラン中間体を生成する能力を有する微生物を使用することもできる。
【0021】
さらに、本発明にかかるドデカヒドロ-3a,6,6,9a-テトラメチルナフト[2,1-b]フラン原料の製造方法では、従来公知のドデカヒドロ-3a,6,6,9a-テトラメチルナフト[2,1-b]フラン中間体生産微生物を使用することもできる。例えば、特許文献1と称した特許第2547713号に開示されたHyphozyma roseoniger ATCC20624、特許文献2と称した特許第2802588号に開示されたCryptococcus laurentii ATCC20920、特許文献3と称した特許第3002654号に開示されたBensingtonia cilliata ATCC20919、特許文献4と称した特許第2063550号に開示されたCryptococcus albidus ATCC20918及びCryptococcus albidus ATCC20921を使用することができる。
【0022】
微生物によるドデカヒドロ-3a,6,6,9a-テトラメチルナフト[2,1-b]フラン中間体の生産
上述した微生物を所定の条件下で培養することにより、培地中にドデカヒドロ-3a,6,6,9a-テトラメチルナフト[2,1-b]フラン中間体を生産することができる。具体的には、上述した微生物を、スクラレオールを含有する培地で培養する。培地としては、使用する微生物に応じて適宜、好ましい組成の培地を使用することができる。例えば、上述した受託番号FERM P-20759で特定される子嚢菌網(以下、JL2842株と称する)を使用する場合、使用可能な培地は、炭素源、窒素源、金属ミネラル類及びビタミン類等を含有する固体培地及び液体培地等を挙げることができる。なお、JL2842株を培養するための培地には、培養条件等に応じて界面活性剤や消泡剤を添加してもよい。
【0023】
培地に添加される炭素源としては、単糖、二糖、オリゴ糖及び多糖が挙げられ、これら2種以上を混合して用いても良い。ここで糖質以外の炭素源としては、例えば酢酸塩等の有機酸塩が挙げられる。ここで、炭素源としては、これら各成分を単独で使用しても良いし、必要に応じ複数成分を混合して使用しても良い。
【0024】
また、窒素源としては、例えばアンモニア、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、硝酸アンモニウム、炭酸アンモニウム、リン酸アンモニウム及び酢酸アンモニウム等の無機並びに有機アンモニウム塩、尿素、ペプトン、肉エキス、酵母エキス及びカゼイン加水分解物等の窒素含有有機物、グリシン、グルタミン酸、アラニン及びメチオニン等のアミノ酸等が挙げられる。ここで、窒素源としては、これら各成分を単独で使用しても良いし、必要に応じ複数成分を混合して使用しても良い。
【0025】
さらに、金属ミネラル類としては、例えば塩化ナトリウム、硫酸第一鉄、硫酸マグネシウム、硫酸マンガン、硫酸亜鉛及び炭酸カルシウム等が挙げられる。ここで、金属ミネラル類としては、これら各成分を単独で使用しても良いし、必要に応じ複数成分を混合して使用しても良い。
【0026】
JL2842株を培養する際の培養条件としては、特に限定されず、至適範囲のpH及び温度に調整して行われる。具体的にpHの至適範囲は、3〜8、好ましくは4〜8、より好ましくは5〜7である。また、温度の至適範囲は、10〜35℃、好ましくは15〜30℃、より好ましくは20〜30℃である。培養は、振とう培養、嫌気培養、静置培養、醗酵槽による培養の他、休止菌体反応及び固定化菌体反応も用いることができる。
【0027】
このような組成の培地に添加するスクラレオール濃度は、特に限定されないが、0.1%〜50%とすることが好ましい。スクラレオールは、培養に先立って培地に添加しても良いし、培養途中で添加(流加培養)してもよい。また、スクラレオール以外の組成、例えば炭素源、窒素源、ビタミン、ミネラル、界面活性剤、消泡剤も同時に流加することが可能である。
【0028】
JL2842株以外の微生物についても、培地組成を適宜調製して最適な培地組成を用いて、最適な培養条件で培養することができる。
【0029】
ドデカヒドロ-3a,6,6,9a-テトラメチルナフト[2,1-b]フラン中間体と菌体との分離
上述したように、ドデカヒドロ-3a,6,6,9a-テトラメチルナフト[2,1-b]フラン中間体は微生物により生産されるため、先ず、菌体を含む溶液として取得される。そこで、本発明にかかるドデカヒドロ-3a,6,6,9a-テトラメチルナフト[2,1-b]フラン原料の製造方法においては、ドデカヒドロ-3a,6,6,9a-テトラメチルナフト[2,1-b]フラン中間体と菌体とを分離して、ドデカヒドロ-3a,6,6,9a-テトラメチルナフト[2,1-b]フラン中間体を効率よく回収する。
【0030】
具体的には、上述したように微生物をスクラレオールの存在下に培養した後、培養液を遠心分離にかけて沈殿物を回収する。
【0031】
遠心分離によって回収したドデカヒドロ-3a,6,6,9a-テトラメチルナフト[2,1-b]フラン中間体及び菌体は、所定の溶液密度となるように調製された溶液(以下、分離用溶液と称する)に懸濁される。分離用溶液は、水溶液であることが好ましいが、有機溶液であってもよい。また、溶質としては、特に限定されず、例えば、酒石酸ナトリウム、塩化ナトリウム、クエン酸ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素二カリウム等の塩を使用することができる。また、溶質としては、ソルビトール等の糖アルコールを使用することもできる。
【0032】
特に、分離用溶液にドデカヒドロ-3a,6,6,9a-テトラメチルナフト[2,1-b]フラン中間体と菌体とを懸濁することで、ドデカヒドロ-3a,6,6,9a-テトラメチルナフト[2,1-b]フラン中間体を分離用溶液中に浮かせ、菌体を沈降させることができる。したがって、分離用溶液にドデカヒドロ-3a,6,6,9a-テトラメチルナフト[2,1-b]フラン中間体と菌体とを懸濁し、菌体が沈降した後、溶液上清を回収することによって、菌体とドデカヒドロ-3a,6,6,9a-テトラメチルナフト[2,1-b]フラン中間体とを分離することができる。ドデカヒドロ-3a,6,6,9a-テトラメチルナフト[2,1-b]フラン中間体と菌体とを懸濁した後、菌体のみを沈降させるには、例えば、遠心分離法を使用することができる。遠心分離の条件としては、例えば、3000rpmで5分とすることができる。
【0033】
なお、菌体とドデカヒドロ-3a,6,6,9a-テトラメチルナフト[2,1-b]フラン中間体とを分離用溶液に懸濁した後、静置することで菌体のみを沈降させてもよい。静置する場合には、一例として24時間、室温といった条件とすることができる。ここで、分離用溶液は、所定の溶液密度とすることによってドデカヒドロ-3a,6,6,9a-テトラメチルナフト[2,1-b]フラン中間体と菌体とを分離することができる。詳しくは、分離用溶液の溶液密度は、ドデカヒドロ-3a,6,6,9a-テトラメチルナフト[2,1-b]フラン中間体を当該溶液中に浮かせることができ、且つ、菌体は当該溶液中に浮遊せずに沈降するような密度とする。より具体的には、分離用溶液の溶液密度を1.06g/mL以上とすることによって、ドデカヒドロ-3a,6,6,9a-テトラメチルナフト[2,1-b]フラン中間体を当該溶液に浮かせることができ、菌体を沈降させることができる。
【0034】
さらに、分離用溶液の溶液密度を1.07g/mL以上とすることによって、ドデカヒドロ-3a,6,6,9a-テトラメチルナフト[2,1-b]フラン中間体のなかでも特にデカヒドロ-2-ヒドロキシ-2,5,5,8a-テトラメチルナフタレンエタノールを高効率に分離することができる。また、分離用溶液の溶液密度を1.23g/mL以上とすることによって、デカヒドロ-2-ヒドロキシ-2,5,5,8a-テトラメチルナフタレンエタノール及びスクラレオリドを共に高効率に分離することができる。
【0035】
また、上述したように、微生物によりドデカヒドロ-3a,6,6,9a-テトラメチルナフト[2,1-b]フラン中間体を生産したときに、培養液中に複数のドデカヒドロ-3a,6,6,9a-テトラメチルナフト[2,1-b]フラン中間体(例えばデカヒドロ-2-ヒドロキシ-2,5,5,8a-テトラメチルナフタレンエタノール及びスクラレオリド)を含む場合には、分離用溶液の溶液密度を調節することによって、1種類のドデカヒドロ-3a,6,6,9a-テトラメチルナフト[2,1-b]フラン中間体を、菌体及び他のドデカヒドロ-3a,6,6,9a-テトラメチルナフト[2,1-b]フラン中間体から分離することができる。例えば、培養液中にデカヒドロ-2-ヒドロキシ-2,5,5,8a-テトラメチルナフタレンエタノール及びスクラレオリドを含む場合には、分離用溶液の溶液密度を1.07g/mL以上、1.15g/mL以下とすることによって、当該溶液中にデカヒドロ-2-ヒドロキシ-2,5,5,8a-テトラメチルナフタレンエタノールを主として浮かせ、スクラレオリドを菌体とともに沈降させることができる。
【0036】
さらにこの場合、沈降させた菌体及びスクラレオリドを、溶液密度を1.15g/mLより大とした、異なる分離用溶液(例えば、1.23g/mLの溶液密度)に再度懸濁することによって、スクラレオリドを主として当該溶液中に浮かせ、菌体のみを沈降させることができる。このように、溶液密度の異なる複数の分離用溶液を順次使用することによって、複数のドデカヒドロ-3a,6,6,9a-テトラメチルナフト[2,1-b]フラン中間体を順次菌体から分離することができる。
【0037】
なお、複数のドデカヒドロ-3a,6,6,9a-テトラメチルナフト[2,1-b]フラン中間体を順次分離する際には、先ず、複数のドデカヒドロ-3a,6,6,9a-テトラメチルナフト[2,1-b]フラン中間体を菌体から分離し、その後、複数のドデカヒドロ-3a,6,6,9a-テトラメチルナフト[2,1-b]フラン中間体から1種類のドデカヒドロ-3a,6,6,9a-テトラメチルナフト[2,1-b]フラン中間体を順次分離するようにしてもよい。この場合には、先ず、例えば具体的に、溶液密度を1.15g/mLより大とした分離用溶液を用いて懸濁し、当該溶液中にデカヒドロ-2-ヒドロキシ-2,5,5,8a-テトラメチルナフタレンエタノール及びスクラレオリドをともに浮かせ、菌体のみを沈降させる。次に、菌体を除く上清画分を回収して、溶液密度を1.07g/mL以上、1.15g/mL以下に調製するか、1.07g/mL以上、1.15g/mL以下である異なる分離用溶液に再懸濁する。これにより、当該溶液中にはデカヒドロ-2-ヒドロキシ-2,5,5,8a-テトラメチルナフタレンエタノールが主として浮くことになり、スクラレオリドは主として沈降することとなる。このように、溶液密度の異なる複数の分離用溶液を順次使用することによって、菌体から分離した後に複数のドデカヒドロ-3a,6,6,9a-テトラメチルナフト[2,1-b]フラン中間体を順次分離することができる。
【0038】
一方、デカヒドロ-2-ヒドロキシ-2,5,5,8a-テトラメチルナフタレンエタノールを分離する際には、分離用溶液のpHを3以上とすることが好ましい。分離用溶液のpHが3未満である場合には、分離用溶液中でデカヒドロ-2-ヒドロキシ-2,5,5,8a-テトラメチルナフタレンエタノールがドデカヒドロ-3a,6,6,9a-テトラメチルナフト[2,1-b]フランへと変化する反応が進行する虞がある。よって、pH3以上の分離用溶液を使用することによって、デカヒドロ-2-ヒドロキシ-2,5,5,8a-テトラメチルナフタレンエタノールをドデカヒドロ-3a,6,6,9a-テトラメチルナフト[2,1-b]フランに変化させることなく回収することができる。
【0039】
ドデカヒドロ-3a,6,6,9a-テトラメチルナフト[2,1-b]フランの合成
以上のように、菌体から分離されたドデカヒドロ-3a,6,6,9a-テトラメチルナフト[2,1-b]フラン中間体は、付加価値の高い、残香性の高い香料であるドデカヒドロ-3a,6,6,9a-テトラメチルナフト[2,1-b]フランを製造する際の原料として使用することができる。ドデカヒドロ-3a,6,6,9a-テトラメチルナフト[2,1-b]フラン中間体を用いてドデカヒドロ-3a,6,6,9a-テトラメチルナフト[2,1-b]フランを製造する方法としては、特に限定されず、従来公知の方法を適宜使用することができる。具体的には、スクラレオリドは、例えば水素化リチウムアルミニウム、水素化ホウ素ナトリウム、又は水素化ホウ素カリウム/塩化リチウム混合物で還元することによって、デカヒドロ-2-ヒドロキシ-2,5,5,8a-テトラメチルナフタレンエタノールに変換する。デカヒドロ-2-ヒドロキシ-2,5,5,8a-テトラメチルナフタレンエタノールは、酸性触媒、例えば、p-トルエンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸クロリド、触媒量の硫酸及び酸性イオン交換体を用いて、種々の溶媒中で脱水環化によりドデカヒドロ-3a,6,6,9a-テトラメチルナフト[2,1-b]フランに変換される。
【実施例】
【0040】
以下、実施例を用いて本発明をより詳細に説明するが、本発明の技術的範囲は以下の実施例に限定されるものではない。
【0041】
[実施例1] 溶液密度調整による培養液からのデカヒドロ-2-ヒドロキシ-2,5,5,8a-テトラメチルナフタレンエタノールの分離〔I〕
Ascomycete sp.KSM-JL2842(FERM P-20759)を2.1% YM broth(Becton Dickinson)に1白金耳植菌し、25℃にて3日間振とう培養したものを種菌とした。次に、0.2%酵母エキス、0.2%硝酸アンモニウム、0.1%リン酸1カリウム、0.05%硫酸マグネシウム・7水和物及び1.0%グルコースからなる培地に種菌を1%植菌し、25℃にて振とう培養を行った。培養3日目にスクラレオール及びツイーン80を、それぞれ終濃度1.0%及び0.5%となるように添加して更に5日間培養した。
【0042】
培養終了後、培養液を3000rpmで5分間遠心分離することによって、ドデカヒドロ-3a,6,6,9a-テトラメチルナフト[2,1-b]フラン中間体(デカヒドロ-2-ヒドロキシ-2,5,5,8a-テトラメチルナフタレンエタノール)及び菌体を沈殿させた。上清を除去して、菌体とデカヒドロ-2-ヒドロキシ-2,5,5,8a-テトラメチルナフタレンエタノールとの混合沈殿物を回収した。回収した沈殿物を溶液密度1.00〜1.14g/mLに調製した酒石酸ナトリウム溶液又は食塩水(分離用溶液)を用いて懸濁した後、遠心分離(3000rpmで5分間)した。
【0043】
各溶液密度の異なる各分離用溶液について、遠心分離後の上清画分に含まれるデカヒドロ-2-ヒドロキシ-2,5,5,8a-テトラメチルナフタレンエタノールを定量した。デカヒドロ-2-ヒドロキシ-2,5,5,8a-テトラメチルナフタレンエタノールの定量は、ガスクロマトグラフィー(GC)分析により行った。結果を図1及び2に示した。図1及び2に示した結果より、溶液密度が1.06g/mL以上の時、上清画分にデカヒドロ-2-ヒドロキシ-2,5,5,8a-テトラメチルナフタレンエタノールが浮き、菌体が沈殿するといった現象が観測され、デカヒドロ-2-ヒドロキシ-2,5,5,8a-テトラメチルナフタレンエタノールと菌体とを分離できることが明らかとなった。さらに、分離用溶液の溶液密度が1.07g/mL以上の時、上清画分へのデカヒドロ-2-ヒドロキシ-2,5,5,8a-テトラメチルナフタレンエタノール回収率は96%以上であることが明らかとなった。
【0044】
なお、本実施例及び以下の実施例において、回収率は、遠心分離前の培養液中に含まれる生産物量を100%とし、遠心分離後の沈殿部分に含まれる生産物量を差し引いた値の割合として算出した。
【0045】
[実施例2] 溶液密度調整による培養液からのデカヒドロ-2-ヒドロキシ-2,5,5,8a-テトラメチルナフタレンエタノールの分離〔II〕
実施例1と同様にしてAscomycete sp.KSM-JL2842(FERM P-20759)を培養した後、遠心分離により菌体とデカヒドロ-2-ヒドロキシ-2,5,5,8a-テトラメチルナフタレンエタノールとの混合沈殿物を回収した。本例では、溶液密度を1.00〜1.15g/mLの範囲に調製したクエン酸溶液、リン酸水素二ナトリウム溶液、酒石酸ナトリウム溶液、食塩水、リン酸水素二カリウム溶液、あるいはソルビトール溶液(分離用溶液)を用いて、回収された沈殿物を懸濁し、再度遠心分離(3000rpmで5分間)した。
各種溶液の密度を表1に示す。
【0046】
【表1】

【0047】
上記の各分離用溶液について、遠心分離後の上清画分に含まれるデカヒドロ-2-ヒドロキシ-2,5,5,8a-テトラメチルナフタレンエタノールを定量した。デカヒドロ-2-ヒドロキシ-2,5,5,8a-テトラメチルナフタレンエタノールの定量は、実施例1と同様にGC分析により行った。結果を図3及び4に示した。図3及び4に示す結果より、溶液密度が1.06g/mL以上の時、上清画分にデカヒドロ-2-ヒドロキシ-2,5,5,8a-テトラメチルナフタレンエタノールが浮き、菌体が沈殿するといった現象が観測され、デカヒドロ-2-ヒドロキシ-2,5,5,8a-テトラメチルナフタレンエタノールと菌体とを分離できることが明かとなった。また、いずれの分離用溶液を用いても、97%以上のデカヒドロ-2-ヒドロキシ-2,5,5,8a-テトラメチルナフタレンエタノールが回収されることが明らかとなった。
【0048】
一方、上清画分を観察したところ、顕著に菌体が浮く現象は見られなかった。詳細に調べるために、それぞれのサンプルの上清画分を顕微鏡で観察し、上清画分に含まれる菌体を血球計算板を用いて数えた。溶液密度依存的に上清部分に浮く菌体の数は増加していたが、溶液密度1.23g/mLのときでも培養液に含まれる菌体の1/40程度に、溶液密度1.14g/mL以下の時には1/100以下に減少していた。このことから、本実施例で調製した分離用溶液の溶液密度範囲では、JL2842株とドデカヒドロ-3a,6,6,9a-テトラメチルナフト[2,1-b]フラン中間体との分離を妨げないことが示唆された。
【0049】
[実施例3] 溶液密度調整による培養液からのスクラレオリドの分離
本例では、ドデカヒドロ-3a,6,6,9a-テトラメチルナフト[2,1-b]フラン中間体としてスクラレオリドを菌体から分離する方法について検討した。先ず、実施例1と同様にしてAscomycete sp.KSM-JL3571(FERM P-20758)を培養した後、遠心分離により菌体とスクラレオリドとの混合沈殿物を回収した。溶液密度を1.00〜1.23g/mLに調製した酒石酸ナトリウム溶液又は食塩水(分離用溶液)を用いて、回収された沈殿物を懸濁した後、遠心分離(3000rpmで5分間)した。
【0050】
各溶液密度の異なる各分離用溶液について、遠心分離後の上清画分に含まれるスクラレオリドを定量した。スクラレオリドの定量は、ガスクロマトグラフィー(GC)分析により行った。結果を図5及び6に示した。図5及び6に示した結果より、溶液密度が1.07g/mL以上の分離用溶液では、沈殿部分に菌体が沈み、上清画分にスクラレオリドが浮くといった現象が観察され、スクラレオリドと菌体とを分離できることが明らかとなった。また、上清画分へのスクラレオリド回収率は、溶液密度が1.23g/mLである分離用溶液を使用した場合に最大(80%程度)となった。
【0051】
[実施例4] 溶液密度調整によるスクラレオリドとデカヒドロ-2-ヒドロキシ-2,5,5,8a-テトラメチルナフタレンエタノールの分離
本例では、複数のドデカヒドロ-3a,6,6,9a-テトラメチルナフト[2,1-b]フラン中間体としてスクラレオリドとデカヒドロ-2-ヒドロキシ-2,5,5,8a-テトラメチルナフタレンエタノールを菌体から分離するとともに、スクラレオリドとデカヒドロ-2-ヒドロキシ-2,5,5,8a-テトラメチルナフタレンエタノールとを互いに分離する方法について検討した。
【0052】
先ず、本例においても、実施例1と同様にしてAscomycete sp.KSM-JL3571(FERM P-20758)を培養した後、遠心分離により菌体とデカヒドロ-2-ヒドロキシ-2,5,5,8a-テトラメチルナフタレンエタノール及びスクラレオリドとの混合沈殿物を回収した。溶液密度を1.11g/mLに調製した酒石酸ナトリウム溶液(分離用溶液)を用いて懸濁した後、遠心分離した(3000rpmで5分間)。デカヒドロ-2-ヒドロキシ-2,5,5,8a-テトラメチルナフタレンエタノール及びスクラレオリドの定量は、実施例1〜3と同様な条件でGC分析により行った。その結果、上清画分には、デカヒドロ-2-ヒドロキシ-2,5,5,8a-テトラメチルナフタレンエタノール及びスクラレオリドともに浮いており、これら中間体を菌体と分離できることが明かとなった。また、上清画分に浮くデカヒドロ-2-ヒドロキシ-2,5,5,8a-テトラメチルナフタレンエタノールの回収率は66.4%、スクラレオリドの回収率は17.9%であった。
【0053】
本例の結果より、分離用溶液を使用することによって、スクラレオリドとデカヒドロ-2-ヒドロキシ-2,5,5,8a-テトラメチルナフタレンエタノールをともに菌体から分離できることが明らかとなった。
【0054】
次に、図2(実施例1)に示したデカヒドロ-2-ヒドロキシ-2,5,5,8a-テトラメチルナフタレンエタノールの回収率を示す図と、図6に示したスクラレオリドの回収率を示す図とを重ね合わせた図を図7として示す。図7より、デカヒドロ-2-ヒドロキシ-2,5,5,8a-テトラメチルナフタレンエタノールを最大に回収できる分離用溶液の溶液密度の最適範囲と、スクラレオリドを最大に回収できる分離溶液の溶液密度の最適範囲とが異なっていることが明らかとなった。したがって、デカヒドロ-2-ヒドロキシ-2,5,5,8a-テトラメチルナフタレンエタノールの回収効率が高く、且つスクラレオリドの回収効率が低い溶液密度の分離用溶液を用いて、デカヒドロ-2-ヒドロキシ-2,5,5,8a-テトラメチルナフタレンエタノールを主として分離することがきることが判った。また、デカヒドロ-2-ヒドロキシ-2,5,5,8a-テトラメチルナフタレンエタノールを主として回収した後、スクラレオリドの回収効率が高い溶液密度の分離用溶液を用いることによって、分離用溶液中にスクラレオリドを主として回収できることが判った。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】実施例1で調製した分離用溶液を用いて菌体とデカヒドロ-2-ヒドロキシ-2,5,5,8a-テトラメチルナフタレンエタノールとの混合沈殿物を懸濁、遠心分離した後の状態を示す写真である。
【図2】実施例1で調製した分離用溶液を用いて菌体とデカヒドロ-2-ヒドロキシ-2,5,5,8a-テトラメチルナフタレンエタノールとの混合沈殿物を懸濁、遠心分離した後、上清画分に含まれるデカヒドロ-2-ヒドロキシ-2,5,5,8a-テトラメチルナフタレンエタノールの回収率を示す特性図である。
【図3】実施例2で調製した分離用溶液を用いて菌体とデカヒドロ-2-ヒドロキシ-2,5,5,8a-テトラメチルナフタレンエタノールとの混合沈殿物を懸濁、遠心分離した後の状態を示す写真である。
【図4】実施例2で調製した分離用溶液を用いて菌体とデカヒドロ-2-ヒドロキシ-2,5,5,8a-テトラメチルナフタレンエタノールとの混合沈殿物を懸濁、遠心分離した後、上清画分に含まれるデカヒドロ-2-ヒドロキシ-2,5,5,8a-テトラメチルナフタレンエタノールの回収率を示す特性図である。
【図5】実施例3で調製した分離用溶液を用いて菌体とスクラレオリドとの混合沈殿物を懸濁、遠心分離した後の状態を示す写真である。
【図6】実施例3で調製した分離用溶液を用いて菌体とスクラレオリドとの混合沈殿物を懸濁、遠心分離した後、上清画分に含まれるスクラレオリドの回収率を示す特性図である。
【図7】図2に示したデカヒドロ-2-ヒドロキシ-2,5,5,8a-テトラメチルナフタレンエタノールの回収率を示すプロファイルと、図6に示したスクラレオリドの回収率を示すプロファイルとを重ねて表示した特性図である。
【図8】スクラレオールからドデカヒドロ-3a,6,6,9a-テトラメチルナフト[2,1-b]フランを生産する工程を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
微生物により生産されたドデカヒドロ-3a,6,6,9a-テトラメチルナフト[2,1-b]フラン原料と微生物菌体とを分離する工程を含むドデカヒドロ-3a,6,6,9a-テトラメチルナフト[2,1-b]フラン原料の製造方法であって、ドデカヒドロ-3a,6,6,9a-テトラメチルナフト[2,1-b]フラン原料と微生物菌体とが懸濁された溶液の溶液密度を調整して、ドデカヒドロ-3a,6,6,9a-テトラメチルナフト[2,1-b]フラン原料と微生物菌体とを分離することを特徴とするドデカヒドロ-3a,6,6,9a-テトラメチルナフト[2,1-b]フラン原料の製造方法。
【請求項2】
前記ドデカヒドロ-3a,6,6,9a-テトラメチルナフト[2,1-b]フラン原料は、スクラレオール(Sclareol)を基質として合成されるドデカヒドロ-3a,6,6,9a-テトラメチルナフト[2,1-b]フラン合成過程における中間体であることを特徴とする請求項1記載のドデカヒドロ-3a,6,6,9a-テトラメチルナフト[2,1-b]フラン原料の製造方法。
【請求項3】
前記中間体が、デカヒドロ-2-ヒドロキシ-2,5,5,8a-テトラメチルナフタレンエタノール又はスクラレオリド(ドデカヒドロ-3a,6,6,9a-テトラメチルナフト[2,1-b]フラン-2(1H)-オン;(Sclareolide))である、請求項2記載のドデカヒドロ-3a,6,6,9a-テトラメチルナフト[2,1-b]フラン原料の製造方法。
【請求項4】
前記溶液密度が1.07g/mL以上であることを特徴とする請求項1乃至3いずれか一項記載のドデカヒドロ-3a,6,6,9a-テトラメチルナフト[2,1-b]フラン原料の製造方法。
【請求項5】
前記溶液密度は、前記微生物菌体が溶液中に浮遊する値未満であることを特徴とする請求項1乃至4いずれか一項記載のドデカヒドロ-3a,6,6,9a-テトラメチルナフト[2,1-b]フラン原料の製造方法。
【請求項6】
前記ドデカヒドロ-3a,6,6,9a-テトラメチルナフト[2,1-b]フラン原料を2種類以上懸濁した溶液から、1種類のドデカヒドロ-3a,6,6,9a-テトラメチルナフト[2,1-b]フラン原料を残りのドデカヒドロ-3a,6,6,9a-テトラメチルナフト[2,1-b]フラン原料と微生物菌体から分離することを特徴とする請求項1乃至5いずれか一項記載のドデカヒドロ-3a,6,6,9a-テトラメチルナフト[2,1-b]フラン原料の製造方法。
【請求項7】
前記2種類以上のドデカヒドロ-3a,6,6,9a-テトラメチルナフト[2,1-b]フラン原料がデカヒドロ-2-ヒドロキシ-2,5,5,8a-テトラメチルナフタレンエタノール及びスクラレオリド(ドデカヒドロ-3a,6,6,9a-テトラメチルナフト[2,1-b]フラン-2(1H)-オン;(Sclareolide))である請求項6記載のドデカヒドロ-3a,6,6,9a-テトラメチルナフト[2,1-b]フラン原料の製造方法。
【請求項8】
2種類以上のドデカヒドロ-3a,6,6,9a-テトラメチルナフト[2,1-b]フラン原料と菌体とを分離した後、1種類のドデカヒドロ-3a,6,6,9a-テトラメチルナフト[2,1-b]フラン原料を残りのドデカヒドロ-3a,6,6,9a-テトラメチルナフト[2,1-b]フラン原料から分離することを特徴とする請求項1乃至5いずれか一項記載のドデカヒドロ-3a,6,6,9a-テトラメチルナフト[2,1-b]フラン原料の製造方法。
【請求項9】
前記2種類以上のドデカヒドロ-3a,6,6,9a-テトラメチルナフト[2,1-b]フラン原料がデカヒドロ-2-ヒドロキシ-2,5,5,8a-テトラメチルナフタレンエタノール及びスクラレオリド(ドデカヒドロ-3a,6,6,9a-テトラメチルナフト[2,1-b]フラン-2(1H)-オン;(Sclareolide))である請求項8記載のドデカヒドロ-3a,6,6,9a-テトラメチルナフト[2,1-b]フラン原料の製造方法。
【請求項10】
前記溶液密度を、分離対象のドデカヒドロ-3a,6,6,9a-テトラメチルナフト[2,1-b]フラン原料を主として浮かせることができ、且つ他のドデカヒドロ-3a,6,6,9a-テトラメチルナフト[2,1-b]フラン原料を主として沈降させる値とすることを特徴とする請求項6又は8記載のドデカヒドロ-3a,6,6,9a-テトラメチルナフト[2,1-b]フラン原料の製造方法。
【請求項11】
前記溶液密度を、前記デカヒドロ-2-ヒドロキシ-2,5,5,8a-テトラメチルナフタレンエタノールを主として浮かせることができ、且つスクラレオリド(Sclareolide)を主として沈降させる値とすることを特徴とする請求項7又は9記載のドデカヒドロ-3a,6,6,9a-テトラメチルナフト[2,1-b]フラン原料の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−29252(P2008−29252A)
【公開日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−206095(P2006−206095)
【出願日】平成18年7月28日(2006.7.28)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】