説明

ドライケミストリーによるデヒドロゲナーゼまたは対応する基質の測定方法およびそれに用いる検査器具

【課題】本発明の課題は、高濃度で試料中に存在するデヒドロゲナーゼまたは対応する基質をドライケミストリーの技術により正確に測定する方法およびそれに用いる検査器具を提供することにある。
【解決手段】液状流体試料中のデヒドロゲナーゼまたは対応する基質、または酵素反応によりデヒドロゲナーゼまたは対応する基質を中間的または最終的に発生する液状流体試料中の特定物質を測定する方法であって、該液状流体試料と試薬とを反応させる検査器具を用いた測定方法であり、
用いる検査器具が、少なくとも反応室とその反応室を構成するための隣接する面を有し、その面の少なくとも一部に試薬が付着されており、かつ、試薬が、液状流体試料中のデヒドロゲナーゼまたは対応する基質を測定するための酵素反応を行うための試薬、あるいは、酵素反応によりデヒドロゲナーゼまたは対応する基質を中間的または最終的に発生する試料中の特定物質を測定するための試薬であり、かつ、液状流体試料を反応室に供給し、試薬が付着された面と接触させることにより、付着された試薬を液状流体試料中に溶解させて液状流体試料と混合し、デヒドロゲナーゼまたは対応する基質および試薬による酵素反応を液状で行い、その液状流体試料中のデヒドロゲナーゼまたは対応する基質、または特定物質を測定する、測定方法により、高濃度で試料中に存在するデヒドロゲナーゼまたは対応する基質、または特定物質をドライケミストリーの技術により正確に測定することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料中のデヒドロゲナーゼまたは対応する基質をドライケミストリーによる測定する方法およびそれに用いる検査器具に関する。
【背景技術】
【0002】
血清、血漿等の試料中には、高濃度のデヒドロゲナーゼまたは対応する基質が存在する。臨床化学診断においては、それらを測定するため、補酵素としてニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD)またはニコチンアミドアデニンジヌクレオチドホスフェート(NADP)を用いることが一般的である。このような方法に用いられるデヒドゲナーゼと基質との組み合わせとしては、乳酸デヒドロゲナーゼと乳酸、グルタミン酸デヒドロゲナーゼとグルタミン酸、アルコールデヒドロゲナーゼとアルコール、グリセロール−3−リン酸デヒドロゲナーゼとグリセロール−3−リン酸、グルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼとグルコース−6−リン酸等が知られている。この場合、その組み合わせのいずれか一方を測定するため、他の一方を、補酵素とともに試薬として用いる。また、それと同様に、試料中の尿素等の特定物質を測定するため、特定物質を試薬により酵素反応させることにより、特定のデヒドロゲナーゼ又は対応する基質を中間的または最終的に発生させ、そのデヒドロゲナーゼ又は対応する基質を上記補酵素とともに反応させ、結果的に特定物質を測定することも幅広く行われている。
【0003】
これらの測定方法においては、最終的にはNADまたはNADPがデヒドロゲナーゼ反応により、還元型であるNADHまたはNADPHに変換され、その結果生ずる紫外線波長域(通常、340nm)における吸光度の上昇に基づいてデヒドロゲナーゼまたは対応する基質を測定する方法を採用することが一般的である。しかし、この場合、紫外線領域で測定するため、測定セルとして簡便なガラスやプラスチックは使えず、高価な石英を用いる必要があり、加えて分析装置として紫外線光源や検出装置を使う必要があり、そのため、分析装置が大型で高価になりやすいという傾向があった。その結果、ドライケミストリーの分野や小さい病院でも測定できる可視分光光度計を用いた装置には適用できなかった。よって、そのような場合に使用できるようにするためには、可視部で、前記したデヒドロゲナーゼまたは対応する基質を測定する方法が望まれている。
【0004】
他方、特許文献1には、グルコース−6−リン酸にグルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼを反応させる際に、補酵素としてチオNADまたはチオNADPとNADHまたはNADPHとの組み合わせを用いて、酵素サイクリング反応を行わせ、生成する還元型酵素であるチオNADHまたはチオNADPHを400nm付近の可視部の吸光度に基いて、グルコース−6−リン酸を測定する方法が提案されている。しかしながら、この方法は酵素サイクリング反応を用いるものであって、必ずも簡便な測定方法とは言えないものであり、また高濃度の測定対象物を測定するのに適した測定方法とも言えないものである。
また、特許文献2には、液状流体の試料を、第1の平面および第2の平面から構成される反応室であって、それらの平面には試薬が付着された反応室に導入して、液状流体の試料中の測定対象物と、該試料中に溶解した試薬とを反応させて測定対象物を、所謂、ドライケミストリーの技術により測定する方法が提案されている。しかしながら、この方法が、血清、血漿等の試料中に高濃度に存在するデヒドロゲナーゼまたは対応する基質の測定に適応できるか否かについては明らかではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平4−335898号公報
【特許文献2】特開2007−248101号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、高濃度で試料中に存在するデヒドロゲナーゼまたは対応する基質をドライケミストリーの技術により正確に測定する方法およびそれに用いる検査器具を提供することにある。更には、可視部での吸光度に基く測定が可能で、ドライケミストリーの分野や小さい病院でも測定できる可視分光光度計を用いた装置に適用でき、かつ、高濃度で試料中に存在するデヒドロゲナーゼまたは対応する基質を正確に測定する方法およびそれに用いる測定器具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、特許文献2に記載されているような、所謂、ドライケミストリーの技術によるデヒドロゲナーゼまたは対応する基質の測定について検討した結果、ドライケミストリーの技術により、血清、血漿等の試料中に高濃度に存在するデヒドロゲナーゼまたは対応する基質を正確に測定できることを見出した。
また、例えば特許文献1に記載されているように、酵素サイクリング法により低濃度のデヒドロゲナーゼまたは対応する基質を測定するために用いられている補酵素チオNADまたはチオNADPが酵素反応により可視部の吸光度を変化させるのに注目し、その補酵素を用いて、試料中に高濃度で存在する測定対象を測定する方法について検討した。その結果、高濃度の測定対象を補酵素としてチオNADまたはチオNADPを用いた場合、高濃度領域で直線性が維持されにくく、加えてブランクも高くなることがあり、測定対象を正確に測定できないことが判明した。
本発明者は、試料中のある種の物質をある酵素で除去するため、補酵素としてNADを用いて酵素反応をさせ、次に、その物質を除去した試料を用いてデヒドロゲナーゼ、対応する基質およびチオNADを反応させて可視部領域の吸光度を測定することにより、試料中のデヒドロゲナーゼまたはその対応する基質を測定しようと試みた。ところが、NADとチオNADの添加の順番にかかわらず、試料にデヒドロゲナーゼ、対応する基質、チオNAD、NADを共存させた単純な構成で可視部領域の吸光度を測定することにより、驚くべきことに、反応ブランクが減少し、検量線の傾きが小さくなり、試料中のデヒドロゲナーゼまたはその対応する基質を正確に測定できることを発見した。その結果、このような構成により、上記の問題が解決され、高濃度領域でもデヒドロゲナーゼまたは対応する基質を正確に測定できることが判明した。
従って、試料中に含まれるデヒドロゲナーゼまたは対応する基質を可視部の吸光度で測定する方法において、補酵素として、チオNADまたはチオNADPとNADまたはNADPの両方を用いることにより、測定対象が高濃度領域でも直線性を維持でき、かつ、検量線のブランクを小さくすることができ、その結果、簡便な可視分光光度計にて測定対象濃度の広い領域で、簡単かつ正確にデヒドロゲナーゼまたは対応する基質を測定する方法を提供できることを見出し、更には、この方法を、特許文献2に記載されているような、所謂、ドライケミストリーの技術に適用できることを見出した。
本発明はこれらの知見により完成されたものである。
【0008】
従って、本発明は、液状流体試料中のデヒドロゲナーゼまたは対応する基質、または酵素反応によりデヒドロゲナーゼまたは対応する基質を中間的または最終的に発生する液状流体試料中の特定物質を測定する方法であって、該液状流体試料と試薬とを反応させる検査器具を用いた測定方法であり、
用いる検査器具が、少なくとも反応室とその反応室を構成するための隣接する面を有し、その面の少なくとも一部に試薬が付着されており、かつ、試薬が、液状流体試料中のデヒドロゲナーゼまたは対応する基質を測定するための酵素反応を行うための試薬、あるいは、酵素反応によりデヒドロゲナーゼまたは対応する基質を中間的または最終的に発生する液状流体試料中の特定物質を測定するための試薬であり、かつ、液状流体試料を反応室に供給し、試薬が付着された面と接触させることにより、付着された試薬を液状流体試料中に溶解させて液状流体試料と混合し、デヒドロゲナーゼまたは対応する基質と試薬による酵素反応を液状で行い、その液状流体試料中のデヒドロゲナーゼまたは対応する基質、または特定物質を測定する、測定方法に関する。
【0009】
上記の測定方法において、好ましい態様は、液状流体試料中のデヒドロゲナーゼまたは対応する基質を、補酵素としてチオNADまたはチオNADPおよびNADまたはNADPを用いて、反応室にて反応させ、生成するチオNADHまたはチオNADPHに由来する吸光度の増加を測定することにより、液状流体試料中のデヒドロゲナーゼまたは対応する基質を測定する、測定方法である。
上記の測定方法において、更に好ましい態様は、第1の平面および第2の平面のいずれかの面に、デヒドロゲナーゼと基質のうち測定対象以外の成分が付着され、他の面に、チオNADまたはチオNADPおよびNADまたはNADPが付着されている、測定方法である。
上記の測定方法において、他の好ましい態様は、液状流体試料中の特定物質を、酵素反応によりデヒドロゲナーゼまたは対応する基質を中間的または最終的に発生させるための成分と、反応室にて反応させ、次いで、発生させたデヒドロゲナーゼまたは対応する基質を、デヒドロゲナーゼと対応する基のうち発生させた以外の成分と、補酵素としてチオNADまたはチオNADPおよびNADまたはNADPを用いて、反応室にて反応させ、生成するチオNADHまたはチオNADPHに由来する吸光度の増加を測定することにより、液状流体試料中の特定物質を測定する、測定方法である。
上記の他の好ましい態様において、更に好ましい態様は、第1の平面および第2の平面のいずれかの面に、液状流体試料中の特定物質を酵素反応によりデヒドロゲナーゼまたは対応する基質を中間的または最終的に発生させるための成分と、デヒドロゲナーゼと対応する基のうち発生させる以外の成分とが付着され、他の面に、チオNADまたはチオNADPおよびNADまたはNADPが付着されている、測定方法である。
【0010】
更に、本発明は、液状流体試料中のデヒドロゲナーゼまたは対応する基質、または酵素反応によりデヒドロゲナーゼまたは対応する基質を中間的または最終的に発生する液状流体試料中の特定物質を測定するための検査器具であって、
少なくとも反応室とその反応室を構成するための隣接する面を有し、その面の少なくとも一部に試薬が付着されており、かつ、試薬が、液状流体試料中のデヒドロゲナーゼまたは対応する基質を測定するための酵素反応を行うための試薬、あるいは、酵素反応によりデヒドロゲナーゼまたは対応する基質を中間的または最終的に発生する試料中の特定物質を測定するための試薬であり、かつ、液状流体試料を反応室に供給し、試薬が付着された面と接触させることにより、付着された試薬を液状流体試料中に溶解させて液状流体試料と混合し、デヒドロゲナーゼまたは対応する基質および試薬による酵素反応を液状で行い、その液状流体試料中のデヒドロゲナーゼまたは対応する基質、または特定物質を測定するための、検査器具に関する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、試料中に含まれるデヒドロゲナーゼまたは対応する基質をドライケミストリーの技術により正確に測定できる。また、本発明によれば、試料中に含まれるデヒドロゲナーゼまたは対応する基質を可視部の吸光度で測定するにもかかわらず、補酵素として、チオNADまたはチオNADPとNADまたはNADPの両方を用いてドライケミストリーの技術により、測定対象が高濃度領域でも、検量線のブランクを小さくすることができ、測定対象を簡単かつ正確に測定できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明で用いる検査器具の一例を示す縦断面図である。
【図2】図1の検査器具の分解斜視図である。
【図3】本発明で用いる検査器具における測定室および流路の関係を示す図である。
【符号の説明】
【0013】
1 第1プレート
2 第2プレート
3 第3プレート
4 第4プレート
7 反応室
8 流路
A 液状流体試料
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の測定方法は、ドライケミストリーの技術によるものである。なお、本明細書においては、ドライケミストリーとは、特定の化学反応又は酵素反応を起こす試薬が乾燥状態で用意されていて、そこに液体状の検体が添加されると、検体中の水分を溶媒として、試薬が含まれているマトリックスの中で反応が進行するものをいうものとする。
そのための検査器具としては、例えば、少なくとも反応室と、デヒドロゲナーゼまたは対応する基質を測定するための試薬が付着・乾燥された面(例えば支持体で構成される面またはフィルム面)とを有していればよく、その他として、例えば、試料供給部と、前記供給部に供給された試料を前記反応室までの移送するための流路を備えていることが好ましい。試薬は、反応室を構成する面に付着されているのが好ましい。このような装置を用いて、液状流体試料を検査器具に導入することにより、付着された試薬を液体としての試料により溶解させて試料と混合し、デヒドロゲナーゼ酵素反応を反応室中で液状にて行い、その試料中のデヒドロゲナーゼ又は対応する基質、又は特定物質を測定できる。この場合、付着された試薬を試料で溶解させるため、液状試薬で試料を測定する場合に比べ、試料は、試薬に対し多量に使うため、ブランクの上昇を起こしやすくその結果測定範囲が著しく狭くなる。そのため、この場合、本発明の測定方法が特に好適である。
【0015】
このような検査器具を用いる、液状流体試料中のデヒドロゲナーゼまたは対応する基質、または酵素反応によりデヒドロゲナーゼまたは対応する基質を中間的または最終的に発生する液状流体試料中の特定物質を測定する本発明の方法においては、用いる検査器具が少なくとも反応室とその反応室を構成するための隣接する面を有し、その面の少なくとも一部に試薬が付着されており、かつ、試薬が、液状流体試料中のデヒドロゲナーゼまたは対応する基質を測定するための酵素反応を行うための試薬であり、かつ、液状流体試料を反応室に供給し面と接触させることにより、付着された試薬を溶解させて液状流体試料と混合し、デヒドロゲナーゼまたは対応する基質および試薬によるデヒドロゲナーゼ酵素反応を液状で行い、その液状流体試料中のデヒドロゲナーゼまたは対応する基質、または特定物質を測定できる。
【0016】
例えば、用いる検査器具が、液状流体試料を供給するための供給部、検査器具内に設けられ、液状流体試料を試薬と反応させる反応室、供給部に供給された液状流体試料を反応室までの移送するための流路を備え、流路および反応室は、通気性があり且つ非通液状性の多孔性膜を介して検査器具外部と接続されており、反応室は、第1の平面およびこれに対向する第2の平面、第1の平面および第2の平面それぞれに接し、第1の平面と第2の平面との間に空間を形成する第3の面で形成されており、流路と反応室とは、第3の面に連結孔が形成されることにより、連結されており、平面の少なくとも一つの面に試薬が付着させられており、供給部に供給された液状流体試料を供給部に設けられた加圧部によって加圧して、反応室内に移送すること、検査器具であることが好ましい。
試薬の付着が、第1の平面および前記第2の平面に、異なる試薬が付着させられていてもよい。
【0017】
本発明に用いられる液状流体試料としては、血清、血漿、尿等の生体試料、またはそれらのモデルサンプルが好ましい。
本発明の測定対象は、液状流体試料中のデヒドロゲナーゼまたは対応する基質であり、また、酵素反応により中間的または最終的にデヒドロゲナーゼまたは対応する基質を発生させることができる液状流体試料中の特定物質である。
本発明においては、デヒドロゲナーゼ酵素反応を行う際、補酵素としてチオNADまたはチオNADPおよびNADまたはNADPの両方を反応させるのが好ましい。チオNADまたはチオNADPとNADまたはNADPとの組み合せはいずれでもよいが、チオNADとNADとの組み合せ、あるいはチオNADPとNADPとの組み合せが好ましい。
以下、チオNADまたはチオNADPを、チオNAD(P)と略記することがある。また、NADまたはNADPを、NAD(P)と略記することがある。
本発明においては、チオNADとはチオニコチンアミドアデニンジヌクレオチドを意味し、チオNADPとはチオニコチンアミドアデニンジヌクレオチドホスフェートを意味する。また、NADとはニコチンアミドアデニンジヌクレオチドを意味し、NADPとはニコチンアミドアデニンジヌクレオチドホスフェートを意味する。
本明細書において、チオNADH、チオNADPH、NADH、NADPHとは、補酵素の還元型、すなわち、それぞれ、チオNAD、チオNADP、NAD、NADPの還元型を意味する。以下、チオNADHまたはチオNADPHを、チオNAD(P)Hと略記することがある。また、NADHまたはNADPHを、NAD(P)Hと略記することがある。
【0018】
本発明においては、チオNAD(P)とNAD(P)とを、前記検査器具における反応室を構成する、第1の平面およびこれに対向する第2の平面のいずれかの面に付着させて用いるのが好ましい。用いるNAD(P)の量は、特に限定しないが、用いるチオNAD(P)の量の0.5倍モル数以上が好ましく、1.5〜30倍モル数がさらに好ましく、3.0〜20倍モル数が最も好ましい。NAD(P)の量が少なすぎると検量線の直線性が維持しにくいこともあり、また、ブランク低下が不十分なときもある。一方、NAD(P)の量が大きすぎると検量線の直線の傾きが小さくなることがあり、正確に測定対象を測定できにくいことがある。
本発明においては、補酵素としてチオNAD(P)及びNAD(P)の両方を用いてデヒドロゲナーゼ反応させ、生成するチオNAD(P)Hに由来する吸光度の増加を測定することができる。吸光度を測定するための波長は、395〜415nmの範囲が好ましい。
本発明において、デヒドロゲナーゼまたは対応する基質としては、例えば、現在、臨床検査業界で測定対象となっている補酵素としてNAD(P)やチオNAD(P)を用いてデヒドロゲナーゼ酵素反応により測定できるデヒドロゲナーゼまたは対応する基質であれば特に限定されない。この場合、デヒドロゲナーゼまたは対応する基質は、液状流体試料中に当初から存在しているデヒドロゲナーゼまたは対応する基質でもよい。また、液状流体試料中の特定物質を測定するためその特定物質を酵素反応させることにより中間的または最終的に発生されたデヒドロゲナーゼまたは対応する基質でもよく、この場合、発生されたデヒドロゲナーゼまたは対応する基質に依存して、結果的に、特定物質を測定することができる。
【0019】
このような方法に用いられるデヒドロゲナーゼと基質との組み合わせとしては、例えば、乳酸デヒドロゲナーゼと乳酸、グルタミン酸デヒドロゲナーゼとグルタミン酸、アルコールデヒドロゲナーゼとアルコール、グリセロール−3−リン酸デヒドロゲナーゼとグリセロール−3−リン酸、グルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼとグルコース−6−リン酸等を例示できる。この場合、その組み合わせのいずれか一方を測定するため、他の一方を、補酵素とともにデヒドロゲナーゼ酵素反応をさせるための試薬として用いることができる。本発明においては、試料に高濃度で存在する測定対象が好適である。
デヒドロゲナーゼまたは対応する基質として、液状流体試料中の特定物質を測定するため液状流体試料中の特定物質を酵素反応させることにより中間的または最終的に発生されたデヒドロゲナーゼまたは対応する基質を用いる場合、例えば、デヒドロゲナーゼがグルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼであり、対応する基質がグルコース−6−リン酸である場合を例示できる。その場合、例えば、特定物質として尿素(なお、尿素は慣習的に尿素窒素としても測定できる)を測定することができる。この場合、例えば、第一の酵素反応として、試料中の尿素に、試薬由来のATP、マグネシウムイオン、カリウムイオン、炭酸水素イオンとウレアアミドリアーゼとを作用させてADPを発生させ、次いで、第二の酵素反応として、そのADPに、試薬由来のヘキソキナーゼを作用させてグルコース−6-リン酸を発生させ、次いで、生成するグルコース−6-リン酸(対応する基質)に、グルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼ(デヒドロゲナーゼ)とチオNAD(P)とNAD(P)とを作用させデヒドロゲナーゼ酵素反応をさせることにより、生成するチオNAD(P)Hの量に依存した吸光度の上昇から、生成するグルコース−6-リン酸(対応する基質)を測定することができ、それに基づいて結果的に、試料中の特定物質を測定することができる。このとき、ヘキソキナーゼとしては、ADP依存性ヘキソキナーゼが好ましい。
この例を反応式で示すと以下のようになる。
【0020】
【化1】

【0021】
本発明において、測定対象としてデヒドロゲナーゼまたは対応する基質を測定するときには、例えば、第一試薬として、デヒドロゲナーゼと対応する基質のうち測定対象以外の成分を必須成分とし、それ以外に、必要により緩衝剤、界面活性剤等の他の成分を含ませたものを用いることができる。このような第一試薬は、前記検査器具における反応室を構成する、第1の平面およびこれに対向する第2の平面のいずれかの面に付着させて用いるのが好ましい。第二試薬として、チオNAD(P)とNAD(P)を必須成分とし、それ以外に、緩衝剤、界面活性剤等の他の成分を含ませたものを用いることができる。このような第二試薬は、前記検査器具における反応室を構成する、第1の平面およびこれに対向する第2の平面のうち、第一試薬を付着させた面以外の面に付着させて用いるのが好ましい。
この場合、具体的な測定対象として、グルコース−6−リン酸を測定するときは、例えば、第一試薬として、デヒドロゲナーゼとしてグルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼを必須成分とし、第二試薬としてチオNAD(P)とNAD(P)を必須成分とし、その他として、第一試薬及び第二試薬には、緩衝剤、界面活性剤等の他の成分を含ませることができる。このような第一試薬と第二試薬とを用い、測定対象として、デヒドロゲナーゼまたは対応する基質を測定するときは、例えば、次のように行うことができる。液状流体試料を、前記検査器具における、試料を供給するための供給部に導入し、液状流体試料を、移送するための前記流路を通して前記反応室へ導き、液状流体試料中に、反応室を構成する第1の平面およびこれに対向する第2の平面のいずれかにそれぞれ付着した第一試薬と第二試薬とを溶解させて、0.5〜15分酵素反応を行い、酵素反応後に、反応室に透過光を照射して、得られる反応液の吸光度を405nmで測定する。あらかじめ作成した検量線との測定値との比較により、試料中の測定対象の濃度を測定できる。
【0022】
本発明において、測定対象として特定物質を測定するときには、例えば、第一試薬には、必須成分として特定物質から酵素反応によりデヒドロゲナーゼまたは対応する基質に誘導するための成分、及びそのデヒドロゲナーゼと対応する基質のうち誘導されたもの以外の成分を含ませ、それ以外に、必要により緩衝剤、界面活性剤等の他の成分を含ませることができる。このような第一試薬は、前記検査器具における反応室を構成する、第1の平面およびこれに対向する第2の平面のいずれかの面に付着させて用いるのが好ましい。第二試薬は、チオNAD(P)とNAD(P)を必須成分とし、それ以外に、緩衝剤、界面活性剤等の他の成分を含ませることができる。このような第二試薬は、前記検査器具における反応室を構成する、第1の平面およびこれに対向する第2の平面のうち、第一試薬を付着させた面以外の面に付着させて用いるのが好ましい。
この場合、具体的な測定対象の特定物質として尿素を測定するときは、例えば、第一試薬として、尿素(すなわち特定物質)から酵素反応によりグルコース−6−リン酸(すなわち対応する基質)に誘導する成分として、尿素からADPを生成するための第一酵素反応誘導成分(すなわち、ウレアアミドリアーゼ、ATP、Mg2+、K+、HCO3)、ADPからグルコース−6−リン酸(すなわち対応する基質)を生成するための第二酵素反応誘導成分(すなわち、グルコース、ヘキソキナーゼ)、試薬成分のデヒドロゲナーゼとしてグルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼを含んでいるものを用いることができる。第二試薬は、チオNAD(P)とNAD(P)の両方を必須成分とする。それ以外に、第一試薬および第二試薬には、緩衝剤、界面活性剤等の他の成分を含ませたものを用いることができる。
このような第一試薬と第二試薬とを用い、測定対象として、特定物質を測定するときは、例えば、次のように行うことができる。特定物質を含む液状流体試料を、前記検査器具における、試料を供給するための供給部に導入し、液状流体試料を、移送するための前記流路を通して前記反応室へ導き、液状流体試料中に、反応室を構成する第1の平面およびこれに対向する第2の平面のいずれかにそれぞれ付着した第一試薬と第二試薬とを溶解させて、0.5〜15分酵素反応を行い、酵素反応後に、反応室に透過光を照射して、得られる反応液の吸光度を405nmで測定する。あらかじめ作成した検量線との測定値との比較により、試料中の特定物質の濃度を測定できる。
【0023】
以下に、図面に基づいて、本発明の測定方法およびそれに用いる検査器具について、更に詳細に説明する。
本発明にかかる検査器具の好ましい一実施形態として検査器具100を図面に基づいて説明する。図1に検査器具100の縦断面図を、図2に血液検査器具100の分解斜視図を示す。検査器具100は、図2に示すように、上下方向に積層された4つの第1〜第4プレート1〜4を備えている。最上層側の第1プレート1には、円形の検体供給口11が形成されている。検体供給口11の上部周囲には堰12が設けられている。この堰12には、有底円筒形状の栓体5が着脱可能に設けられている。
【0024】
第1プレート1の下方に配置する第2プレート2には、供給口11との対向部位に円形状の凹入部20が設けられている。凹入部20の内部には円形状の複数のリブ21が同芯状および放射状に形成されている(図1参照)。リブ21は、血球を分離除去する非対称孔径膜からなる血球分離膜6を支持する。
【0025】
第2プレートには、リブ21の中心部に上下方向に延びる貫通孔81が形成されている(図1参照)。第3プレート3は、所定距離離れた位置に2つの円形の貫通部71、82を有している。貫通部71、82間は、直線状の貫通溝83で連結されている(図1参照)。貫通部82は、第2プレート2と重ね合わせた状態で、貫通孔81とほぼ同心の位置に設けられる。貫通孔81、貫通部82及び溝83により後述するように、液状流体試料Aを反応室7へ導く流路8(液状流体Aの移送用流路)が形成される。
【0026】
また、第2プレート2のうち、第3プレート3と接する面には、貫通部71に対向する位置には、貫通孔が形成された両面テープ2bが貼り付けられている。これにより、第2プレート側には有底状の有底部72が形成される。また、第4プレート4のうち、第3プレート3と接する面には、貫通部71に対向する位置には、貫通孔が形成された両面テープ4bが貼り付けられている。これにより、第4プレート側には有底状の有底部73が形成される。この有底部72,73,および貫通部71によって、液状流体試料Aの反応室7が構成される。
【0027】
測定室7について、図3を用いて説明する。反応室7の第1底面171および、第1底面171に対向する第2底面172には異なる試薬、すなわち、前記した第一試薬および第二試薬がそれぞれ所定量塗布されている。これにより、有底部72,73は所定量の試薬で満たされる。試薬は塗布後に乾燥させればよい。
【0028】
第1プレート1と第2プレート2は、接着剤aを介して、第2プレート2〜第4プレート4は、両面テープ2b、4bにて、積層状態にて一体化される。また、血球分離膜6は、接着剤aにより、前記第1プレート1および第2プレート2と固定される。
【0029】
実際の測定方法について簡単に説明する。図1に示すように、検体供給口11から液状流体試料Aを供給する。そして、栓体5を液状流体試料供給口11に被せ、指で加圧する(図示せず)。これにより、反応室7や流路8内の空気が、第3プレートから外部に排出されて、液状流体試料Aが反応室7内に送り込まれる。反応室7の第1底面171および第2底面172には、それぞれ異なる試薬が塗布されており、反応室7の側面173の孔175から反応室7の空間に、液状流体試料Aが搬送されると、液状流体試料Aと2種類の試薬との反応が開始する。一つの空間内で2種類の試薬とまとめて混合されるので、均一に混合される。
【0030】
測定室7での液状流体試料Aの測定は、透過光を用いた光学測定が採用できる。透過光を用いる光学測定は、前記第2〜第4プレート2〜4の全体を光透過性のある樹脂で形成し、前記反応室7で試薬と液状流体試料Aにより反応を行わせて、第4プレート4の下方から第2プレート2に向かってたとえば、波長405nmの透過光Bを照射し、前記反応室7での透過光Bの吸収により測定すればよい。
【実施例】
【0031】
以下、本発明を実施例を用いて更に詳細に説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。
実施例1から4
ドライケミストリー法による尿素窒素の測定
試料中の特定物質としての尿素窒素を測定するために、第一の酵素反応として、試料中の尿素窒素に、試薬由来のATP、マグネシウムイオン、カリウムイオン、炭酸水素イオンとウレアアミドリアーゼとを作用させてADPを発生させ、次いで、第二の酵素反応として、そのADPに、試薬由来のヘキソキナーゼを作用させてグルコース−6-リン酸を発生させ、次いで、生成するグルコース−6-リン酸(対応する基質)に、グルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼ(デヒドロゲナーゼ)とチオNADとNADとを作用させて、生成するチオNADHの量に依存した吸光度の上昇から、生成するグルコース−6-リン酸(対応する基質)を測定することにより、試料中の特定物質としての尿素窒素を測定した。また、チオNADを単独で用いて同様の測定も行った。
【0032】
1.方法
ウレアアミドリアーゼ、ヘキソキナーゼ、およびグルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼを用いた尿素窒素測定系において、補酵素としてチオNADとNADを混合した測定系(実施例1、2および3)、およびチオNADを単独として用いた測定系(実施例4)を実施した。試料、および試薬は以下の通りである。また、チオNADとNADの使用量は表1に示す。
試料
尿素窒素として40mg/dLとなる様に尿素溶液を調製し、各濃度に生理食塩水で適宜希釈した。
【0033】
第一試薬
第一試薬が、以下のような濃度になるように成分を調整した。
100mM HEPES(2−[4−(2−ヒドロキシエチル)−1−
ピペラジニル]エタンスルフォン酸)
pH7.5
400mM D−グルコース
200mM 酢酸マグネシウム・四水和物
200mM 炭酸水素カリウム
100mM ATP・2Na(アデノシン三リン酸・二ナトリウム)
1% 界面活性剤
1% ソルビトール
40KU/ ヘキソキナーゼ
20KU/L ウレアアミドリアーゼ
20KU/L グルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼ
第二試薬
第二試薬のMES、界面活性剤は以下のような濃度になるように成分調整した。
20mM MES pH6.0
xmM チオNAD
ymM NAD
1% 界面活性剤
1% ソルビトール
【0034】
第二試薬のチオNADとNADの添加量は表1に示す。また、実施例4では上記の第二試薬組成からNADを除きチオNAD単独で用いた。
【0035】
【表1】

【0036】
測定方法
検査器具は、図1から3に示したように、液状流体試料を供給するための供給部、検査器具内に設けられ、液状流体試料を試薬と反応させる反応室、供給部に供給された液状流体試料を反応室までの移送するための流路を持つものを用いた。
上記の通り調製した試薬は、反応室の面を構成する上下のPETシート(透明面を有する)に、第一試薬は0.375μL、第二試薬は0.5μLとなるように各々塗布し乾燥した。乾燥後、第一試薬、および第二試薬が塗布されたシートは、液状流体試料流路を含むシートをはさみ貼り合わせた。液状流体試料は反応セル体積2.5容中に1容となるように導入し、試薬を溶解させた。具体的には、液状流体試料を供給部から導入後、通路を経由して、反応室に送り込み、その液状流体試料で試薬を溶解させ、その混合液を7分間、37℃で発色反応させた。試薬が塗布された透明部分に対して波長405nmで測光し、発色反応後の吸光度を求めた。
【0037】
2.結果
得られた結果を表2に示す。
【0038】
【表2】

【0039】
表2の結果から、チオNAD単独での試薬組成よりも、チオNADおよびNADを混合した組成ではNADの割合が増加するに従って相関係数が良好となり、良好な直線性が得られることが判った。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明によれば、試料中に含まれるデヒドロゲナーゼまたは対応する基質をドライケミストリーの技術により正確に測定できる。また、本発明によれば、試料中に含まれるデヒドロゲナーゼまたは対応する基質を可視部の吸光度で測定するにもかかわらず、補酵素として、チオNADまたはチオNADPとNADまたはNADPの両方を用いてドライケミストリーの技術により、測定対象が高濃度領域でも、検量線のブランクを小さくすることができ、測定対象を簡単かつ正確に測定できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液状流体試料中のデヒドロゲナーゼまたは対応する基質、または酵素反応によりデヒドロゲナーゼまたは対応する基質を中間的または最終的に発生する液状流体試料中の特定物質を測定する方法であって、該液状流体試料と試薬とを反応させる検査器具を用いた測定方法であり、
用いる検査器具が、少なくとも反応室とその反応室を構成するための隣接する面を有し、その面の少なくとも一部に試薬が付着されており、かつ、試薬が、液状流体試料中のデヒドロゲナーゼまたは対応する基質を測定するための酵素反応を行うための試薬、あるいは、酵素反応によりデヒドロゲナーゼまたは対応する基質を中間的または最終的に発生する液状流体試料中の特定物質を測定するための試薬であり、かつ、液状流体試料を反応室に供給し、試薬が付着された面と接触させることにより、付着された試薬を液状流体試料中に溶解させて液状流体試料と混合し、デヒドロゲナーゼまたは対応する基質と試薬による酵素反応を液状で行い、その液状流体試料中のデヒドロゲナーゼまたは対応する基質、または特定物質を測定する、測定方法。
【請求項2】
用いる検査器具が、
液状流体試料を供給するための供給部;検査器具内に設けられ、液状流体試料を試薬と反応させる反応室;および供給部に供給された液状流体試料を反応室までの移送するための流路を備え、
流路および反応室は、通気性があり且つ非通液状性の多孔性膜を介して検査器具外部と接続されており、
反応室は、第1の平面およびこれに対向する第2の平面、第1の平面および第2の平面それぞれに接し、第1の平面と第2の平面との間に空間を形成する第3の面で形成されており、
流路と反応室とは、第3の面に連結孔が形成されることにより、連結されており、
平面の少なくとも一つの面に試薬が付着されており、
供給部に供給された液状流体試料を供給部に設けられた加圧部によって加圧して、反応室内に移送する、検査器具である、請求項1に記載の測定方法。
【請求項3】
第1の平面および第2の平面に、異なる試薬が付着されている、請求項2に記載の測定方法。
【請求項4】
液状試料流体中のデヒドロゲナーゼまたは対応する基質を、補酵素としてチオNADまたはチオNADPおよびNADまたはNADPを用いて、反応室にて反応させ、生成するチオNADHまたはチオNADPHに由来する吸光度の増加を測定することにより、液状流体試料中のデヒドロゲナーゼまたは対応する基質を測定する、請求項1から3のいずれかに記載の測定方法。
【請求項5】
第1の平面および第2の平面のいずれかの面に、デヒドロゲナーゼと基質のうち測定対象以外の成分が付着され、他の面に、チオNADまたはチオNADPおよびNADまたはNADPが付着されている、請求項4に記載の測定方法。
【請求項6】
液状流体試料中の特定物質を、酵素反応によりデヒドロゲナーゼまたは対応する基質を中間的または最終的に発生させるための成分と、反応室にて反応させ、次いで、発生させたデヒドロゲナーゼまたは対応する基質を、デヒドロゲナーゼと対応する基のうち発生させた以外の成分と、補酵素としてチオNADまたはチオNADPおよびNADまたはNADPを用いて、反応室にて反応させ、生成するチオNADHまたはチオNADPHに由来する吸光度の増加を測定することにより、液状流体試料中の特定物質を測定する、請求項1から3のいずれかに記載の測定方法。
【請求項7】
第1の平面および第2の平面のいずれかの面に、液状流体試料中の特定物質を酵素反応によりデヒドロゲナーゼまたは対応する基質を中間的または最終的に発生させるための成分と、デヒドロゲナーゼと対応する基のうち発生させる以外の成分とが付着され、他の面に、チオNADまたはチオNADPおよびNADまたはNADPが付着されている、請求項6に記載の測定方法。
【請求項8】
付着させるNADまたはNADPが、チオNADまたはチオNADPの0.5倍モル数以上である、請求項5または7に記載の測定方法。
【請求項9】
デヒドロゲナーゼがグルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼであり、対応する基質がグルコース−6−リン酸である、請求項1から8のいずれかに記載の測定する方法。
【請求項10】
デヒドロゲナーゼがグルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼであり、対応する基質がグルコース−6−リン酸であり、特定物質が尿素であり、試料中の尿素に、試薬由来のATP、マグネシウムイオン、カリウムイオン、炭酸水素イオンとウレアアミドリアーゼとを作用させてADPを中間的に発生させる第一の酵素反応を行い、次いで、そのADPに、試薬由来のヘキソキナーゼを作用させてグルコース−6-リン酸を発生させる第二の酵素反応を行う、請求項6から8のいずれかに記載の測定方法。
【請求項11】
反応後の反応室に透過光を照射して吸光度に基いて、液状流体試料中のデヒドロゲナーゼまたは対応する基質、または特定物質を測定する、請求項1から10のいずれかに記載の測定方法。
【請求項12】
液状流体試料中のデヒドロゲナーゼまたは対応する基質、または酵素反応によりデヒドロゲナーゼまたは対応する基質を中間的または最終的に発生する液状流体試料中の特定物質を測定するための検査器具であって、
少なくとも反応室とその反応室を構成するための隣接する面を有し、その面の少なくとも一部に試薬が付着されており、かつ、試薬が、液状流体試料中のデヒドロゲナーゼまたは対応する基質を測定するための酵素反応を行うための試薬、あるいは、酵素反応によりデヒドロゲナーゼまたは対応する基質を中間的または最終的に発生する試料中の特定物質を測定するための試薬であり、かつ、液状流体試料を反応室に供給し、試薬が付着された面と接触させることにより、付着された試薬を液状流体試料中に溶解させて液状流体試料と混合し、デヒドロゲナーゼまたは対応する基質および試薬による酵素反応を液状で行い、その液状流体試料中のデヒドロゲナーゼまたは対応する基質、または特定物質を測定するための、検査器具。
【請求項13】
液状流体試料を供給するための供給部;検査器具内に設けられ、液状流体試料を試薬と反応させる反応室;および供給部に供給された液状流体試料を反応室まで移送するための流路を備え、
流路および反応室は、通気性があり且つ非通液状性の多孔性膜を介して検査器具外部と接続されており、
反応室は、第1の平面およびこれに対向する第2の平面、第1の平面および第2の平面それぞれに接し、第1の平面と第2の平面との間に空間を形成する第3の面で形成されており、
流路と反応室とは、第3の面に連結孔が形成されることにより、連結されており、
平面の少なくとも一つの面に試薬が付着されており、
供給部に供給された液状流体試料を供給部に設けられた加圧部によって加圧して、反応室内に移送する、検査器具である、請求項12に記載の検査器具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−24513(P2011−24513A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−175408(P2009−175408)
【出願日】平成21年7月28日(2009.7.28)
【出願人】(000003975)日東紡績株式会社 (251)
【出願人】(305053226)株式会社ティー・ティー・エム (10)
【Fターム(参考)】