説明

ドライバイオマスを用いた持続可能な食糧・繊維・エネルギー生産法

【課題】ドライバイオマス及び有機系廃棄物の不完全燃焼ガスを原料に用いメタン生成菌の基質として活用する事によって微生物蛋白・生分解性プラスチック・メタンガスの3つを持続的に大量生産する技術を提供する。
【解決手段】(1)木材等のドライバイオマスやプラスチック等の有機系廃棄物を高温で部分酸化処理して得た一酸化炭素ガス、水素ガス、二酸化炭素ガスをメタン生成菌の基質として活用してメタン生成菌等を大量生産し菌体を食糧・飼料(微生物蛋白)とする。(2)有機系廃棄物を高温で部分酸化処理して得た一酸化炭素ガス、水素ガス、二酸化炭素ガス等を基質として活用し増殖させたメタン生成菌等からポリ−3−ヒドロキシ酪酸等の生分解性プラスチックを生産する。(3)有機系廃棄物を高温で部分酸化処理して得た一酸化炭素ガス、水素ガス、二酸化炭素ガスをメタン生成菌の基質として活用しメタンガスを大量生産する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、木材等のドライバイオマス及び有機系廃棄物の不完全燃焼ガス(一酸化炭素ガス、水素ガス、二酸化炭素ガス等)を原料に用いメタン生成菌の基質として活用する事によって食糧(微生物蛋白)・繊維(生分解性プラスチック)・エネルギー(メタンガス)の3つを持続的に大量生産する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
我が国の農業は「石油漬け」とも呼ばれる高エネルギー消費型食糧生産システムであるが、いつまでも化石燃料を贅沢に使える訳ではなく、「持続的かつ低エネルギー」で食糧生産できる手段を考えていく必要がある。また、今後、世界全体でエネルギーの大半を化石燃料からドライバイオマスに段階移行させていくものと予測できるが、エネルギーはバイオマスを使ってもプラスチック、化学繊維等に関しては石油が利用できる間は物性、価格面で有利な石油系繊維・プラスチックに頼った方が既存生分解性プラスチック技術の下では有利と考えられる。しかし、それでも遅かれ早かれ化石燃料は枯渇する。従って化学繊維、プラスチック等に関してもドライバイオマスから安価に生産可能なシステムを構築しておいた方が人類にとって有利となる。本発明は以上の背景に鑑みなされたものであり、森林資源等の持続可能なドライバイオマスからエネルギー(メタンガス等)だけでなく、食糧やプラスチック等も生産可能なシステム骨格を示した国家戦略レポートである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、ドライバイオマス及び有機系廃棄物の不完全燃焼ガス(一酸化炭素ガス、水素ガス、二酸化炭素ガス等)を原料に用いメタン生成菌の基質として活用する事によって食糧(微生物蛋白)・繊維(生分解性プラスチック)・エネルギー(メタンガス)の3つを持続的に大量生産する技術を提供する事を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記目的を達成するため、(1)木材等のドライバイオマスやプラスチック等の有機系廃棄物を高温で部分酸化処理して得た一酸化炭素ガス、水素ガス、二酸化炭素ガスをメタン生成菌の基質として活用してメタン生成菌等を大量生産し菌体を食糧・飼料(微生物蛋白、MCP)とする資源循環方法及び装置、(2)木材等のドライバイオマスやプラスチック等の有機系廃棄物を高温で部分酸化処理して得た一酸化炭素ガス、水素ガス、二酸化炭素ガス等を基質として活用し増殖させたメタン生成菌等からPHB(ポリ−3−ヒドロキシ酪酸)等の生分解性プラスチックを生産する資源循環方法及び装置、(3)木材等のドライバイオマスやプラスチック等の有機系廃棄物を高温で部分酸化処理して得た一酸化炭素ガス、水素ガス、二酸化炭素ガスをメタン生成菌の基質として活用しメタンガスを大量生産する資源循環方法及び装置、の計3技術のうちの1つ以上を適用すればよい。
【発明の効果】
【0005】
本発明によって全世界の森林バイオマス資源や可燃性廃棄物等を安価かつ持続的に食糧、繊維、メタンガスに転換する事が可能となる事が期待できるので、持続可能エネルギー社会への移行がスムーズになる効果が期待できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下、本発明を実施するための最良の形態を説明する。まず、木材等のドライバイオマスやプラスチック等の有機系廃棄物を高温で部分酸化処理(すなわち不完全燃焼)して得た一酸化炭素ガス、水素ガス、二酸化炭素ガス等の燃焼ガスを生産する。この燃焼過程において必要に応じて水蒸気を加えても良い。
【0007】
メタン生成菌は種によって基質が異なるが、多くの種は一酸化炭素ガス、水素ガス、二酸化炭素ガスを基質利用可能である。従って、この燃焼ガスをメタン生成菌を含んだ発酵タンクに基質として添加すればよい。その際、当然であるが、炭素源、水素源以外の栄養源は別途培地に加える必要がある。ただそれも何らかの廃棄物を再利用した方がよい(http://www.kyutech.ac.jp/top/target/malaysia.html)。なお、この燃焼ガスをメタン生成菌の基質とする際はタールなどの微生物増殖阻害物質は予め除去しておいた方がよい。メタン発酵タンクは鹿島建設株式会社(http://www.kajima.co.jp/tech/organic waste/metakles/)をはじめとする国内外の多くの企業で製造実績があり技術的には成熟している状況にあるので、それをベースに活用すればよい。なお、本項において使用する菌は必ずしもメタン生成菌である必要はなく、一酸化炭素ガス、水素ガス、二酸化炭素ガス等の燃焼ガスを基質として利用できる微生物で毒性がないならば何でも良い。
【0008】
当該方法で大量生産したメタン生成菌の菌体を回収し、微生物蛋白としてそのまま食糧・飼料(微生物蛋白)として活用すれば安価かつ持続的に食糧生産可能となる。生産した菌体を破砕してソーセージ、パン、麺等に添加すれば必ずしも美味でなくても食用可能となる(味及び食文化の面で人間食糧としての穀類の重要性は不変)。また飼料として利用するならばトウモロコシ等の農作物由来の飼料より遙かに有利に活用できるであろう。なお、メタン生成菌は嫌気培養が必要となるが、その過程でクロストリジウム属細菌に多い病原菌がコンタミしないよう注意が必要である。そのためには予め培地を滅菌する必要があるが、それにはドライバイオマスの燃焼熱を有効活用すればよい。
【0009】
メタン生成菌の多くはPHB(ポリ−3−ヒドロキシ酪酸)等の生分解性プラスチックを生産する事が知られており、大阪ガス株式会社は昨年、メタンガスを原料としたリサイクル可能な生分解性プラスチックの連続生産技術の開発に成功している(http://www.osakagas.co.jp/Press/pr05/050218.htm)。従って、木材等のドライバイオマスやプラスチック等の有機系廃棄物を高温で部分酸化処理して得た一酸化炭素ガス、水素ガス、二酸化炭素ガス等を基質活用して増殖させたメタン生成菌にこの大阪ガス株式会社の技術を活用するという戦略的結合を行えば、木材や可燃性廃棄物から持続的に化学繊維が生産可能となる。この技術を用いた場合、硫酸糖化や酵素処理させたドライバイオマス糖化液を用いた乳酸発酵(→ポリ乳酸生産)と比較すると遙かに安価に繊維生産が可能となるであろう。なお、本項において使用する菌は必ずしもメタン生成菌である必要はなく、一酸化炭素ガス、水素ガス、二酸化炭素ガス等の燃焼ガスを基質として利用できる微生物で、かつPHB等の繊維が生産可能ならば何でも良い。
【0010】
最後に、昨年9月に出願した特許願にも示したが、木材等のドライバイオマスやプラスチック等の有機系廃棄物を高温で部分酸化処理して得た一酸化炭素ガス、水素ガス、二酸化炭素ガスをメタン生成菌の基質として活用しメタンガスを大量生産させれば、当該方向性によって木材等のドライバイオマスから食糧、繊維、エネルギーをある程度は持続生産可能となる。これによって人類社会は一変するであろう。
【産業上の利用可能性】
【0011】
当該発明で示した技術戦略は21世紀以降の人類物質文明の青写真になりうる。すなわち今まで化石燃料に頼っていたエネルギー、繊維、食糧のある程度は持続的な森林バイオマス活用で賄える事になる(ただ、それでも石油でないと生産できない化成品も多いので、石油は今後そういった石油でないと生産できない分野で活用していく方向性をとるのが賢明であろう)。新たな微生物蛋白産業(飼料、食糧)、PHB等素材産業が本発明で生まれるであろう。なお、最近、米国東海岸でメタンガス受け入れ基地が急速に増加しているが、これは発明者らが昨年9月に出願した本関連発明を米国がアフリカ森林資源に適用したものと推測できる。また、メタンガスパイプライン網構築を伴う東アジア共同体構想が最近、活発化しているが、これも当該関連発明を東南アジア・シベリア森林資源に適用したものと推測でき、我が国では現在、メタンガス関連の株価(新日鐵、IHI、三井造船、東京ガス等)が急騰している。自然と共生する新たな社会構築に役立つ事を祈りたい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
木材等のドライバイオマスやプラスチック等の有機系廃棄物を高温で部分酸化処理して得た一酸化炭素ガス、水素ガス、二酸化炭素ガスをメタン生成菌の基質として活用してメタン生成菌等を大量生産し菌体を食糧・飼料(微生物蛋白、MCP)とする資源循環方法及び装置。
【請求項2】
木材等のドライバイオマスやプラスチック等の有機系廃棄物を高温で部分酸化処理して得た一酸化炭素ガス、水素ガス、二酸化炭素ガス等を基質として活用し増殖させたメタン生成菌等からPHB(ポリ−3−ヒドロキシ酪酸)等の生分解性プラスチックを生産する資源循環方法及び装置。
【請求項3】
木材等のドライバイオマスやプラスチック等の有機系廃棄物を高温で部分酸化処理して得た一酸化炭素ガス、水素ガス、二酸化炭素ガスをメタン生成菌の基質として活用しメタンガスを大量生産する資源循環方法及び装置。

【公開番号】特開2007−185178(P2007−185178A)
【公開日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−33048(P2006−33048)
【出願日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【出願人】(500412183)
【Fターム(参考)】