説明

ドラフト機構

本発明は、ドラフト機構であって、トップローラ−支持−荷重アーム(1)を備え、該トップローラ−支持−荷重アーム(1)に、空気力式に荷重を掛けられるトップローラ(5,6,7)が設けられており、該トップローラ(5,6,7)は、保持装置(2)内に設けられた鉛直に可動の支柱(3)に配置されており、トップローラ−支持−荷重アーム(1)に配置された、押圧力を支柱(3)に及ぼすための空気力式の圧力体(4)を備え、圧縮装置の圧力ローラ(8)を備え、該圧力ローラ(8)は、ボトムローラを備えており、該ボトムローラに、圧力ローラ(8)が、押圧力で押し付けられるようになっているものに関し、圧縮装置の圧力ローラ(8)は、トップローラ−支持−荷重アーム(1)に設けられた保持装置(10)における別の支柱(11)に組み込まれており、圧力ローラ(8)は、圧力板(12)を介して、空気力式の圧力体(4)の押圧力で荷重を掛けられるようになっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の上位概念に記載のドラフト機構に関する。
【0002】
コンパクト紡績のために、一般的に、リング精紡機の作業部位に、ダブルエプロンユニットを備えた3シリンダ式ドラフト機構および空気力式の圧縮装置が用いられる。圧縮装置は、ドラフトされた繊維束の飛び出た外繊維を束ねて圧縮するために、ドラフト機構のフロントローラ対に後置されており、これにより毛羽立ちの減少およびヤーン強度の向上が達成される。ドラフト機構および圧縮装置のこのような配置構造は、ドイツ連邦共和国特許第10227463号明細書において、空気力式に荷重を掛けられるトップローラを備えた3シリンダ式ドラフト機構が記載されている。圧縮装置は、穿孔された圧縮エプロンの巻き掛けられたボトムローラとボトムローラに対応して上側に配置された圧力ローラとを備えており、ボトムローラおよび圧力ローラは、所定の力でローラに押し付けられる。
【0003】
公知の圧縮装置における欠点によれば、圧力ローラがボトムローラに及ぼす荷重は、リング精紡機の各ドラフト機構において個別調節する必要があり、これによりドラフト機構の後装着された圧縮装置において荷重の調節時に不精度が生じる。
【0004】
本発明の課題は、ドラフト機構を改良して、リング精紡機における圧縮装置の全ての圧力ローラの所定の均等な荷重が達成されるようにすることである。
【0005】
この課題は、請求項1の特徴部に記載の構成を有するドラフト機構によって解決される。
【0006】
本発明の別の有利な形態は、従属請求項の対象である。
【0007】
請求項1によれば、圧縮装置の圧力ローラは、トップローラ−支持−荷重アームに設けられた保持装置における別の支柱に組み込まれており、圧力ローラは、圧力板を介して、空気力式の圧力体の押圧力で荷重を掛けられるようになっている。圧力体のための空圧を中央で提供することによって、繊維機械の各ドラフト機構に同じ空圧が形成されるので、各ドラフト機構のトップローラの圧力板ならびに圧力ローラの圧力板は、均等に押圧力を掛けられる。これによって生じる、ドラフト機構に組み込むことの利点は、空気力式の圧力体によって圧力ローラに押圧力を掛けること、またこれによって得られる、圧力ローラから圧縮装置のボトムローラに及ぼされる押圧力の極めて小さなばらつきにみられる。各圧力板のサイズに応じて、トップローラもしくは圧力ローラに及ぼされる力は、互いに関係させることができる。ドラフト機構における各トップローラおよびボトムローラの互いに関係する荷重は、ロット交換時の様々な荷重で適用される。繊維機械の中央部位における空圧の変化による、荷重の、空気力式の荷重によって実現される無段階の調節によって、ロット交換後の、及ぼそうとする荷重の正確に調和された適合が許容され、このことは圧力ローラがばねによって力を加えられる背景技術では、段階的にしか行われない。空気力式の荷重の調節は、従来技術による慣用のばねにおける4〜6daNの最大荷重に対して0.3daNを下回る範囲で行われる。さらにドラフト機構に圧力ローラを組み込むことによって、トップローラ−支持−荷重アームに圧力ローラを固定するために必要な、圧力ローラを保持するのに用いられる装置が省略される。
【0008】
有利には、圧力体から及ぼされる押圧力を制限するための弾性手段が設けられており、弾性手段は、圧力板と、ドラフト機構の、支柱に対して不動の部分とに結合されている。押圧力を所定に制限するための手段の使用によって、圧力ローラに比較的小さな圧力で荷重を掛けなければならない状況が考慮されるが、圧力板のサイズの縮小が達成される。
【0009】
押圧板を介して圧力ローラに及ぼされる圧力を制限するための手段として、支柱と保持装置とに結合された、反力を形成する構成部材が設けられている。このために反力を形成する構成部材は、適当なばね特性曲線、有利には直線的なばね特性曲線経過を有しており、これによって圧力ローラの空気力式の荷重による無段階調節の利点が得られる。
【0010】
特に反力を形成する構成部材は、保持装置に配置された押圧ばねとして形成されており、押圧ばねは、圧力板に支持されている。押圧ばねは、特に簡単にドラフト機構に配置することのできる構成部材を成している。
【0011】
別の形態では、反力を形成する構成部材は、引張荷重を掛けられる少なくとも1つのばねエレメントとして形成されており、ばねエレメントは、トップローラ−支持−荷重アームならびに支柱に配置されている。
【0012】
別の形態では、反力を形成する構成部材は、引張荷重を掛けられる少なくとも1つのばねエレメントとして形成されており、ばねエレメントは、保持装置および支柱に配置されている。
【0013】
同様に、反力を形成する構成部材は、引張荷重を掛けられる少なくとも1つのばねエレメントとして形成されており、ばねエレメントは、保持装置および圧力板に配置されている。
【0014】
特に反力を形成する構成部材は、引張荷重を掛けられる少なくとも1つのばねエレメントとして形成されており、ばねエレメントは、トップローラ−支持−荷重アームならびに圧力板に配置されている。
【0015】
有利には、ばねエレメントもしくは押圧ばねは、コイルばね、板ばねまたはプラスチックばねとして形成されている。
【0016】
選択的に、圧力体から及ぼされる押圧力を制限するための非弾性手段が設けられており、非弾性手段は、保持装置と結合されている。非弾性手段は、トップローラ−支持−荷重アームと結合されていてもよい。
【0017】
このために非弾性的な手段として支持部材が設けられており、支持部材は、圧力板に隣接して配置されている。支持部材は、鉛直の延伸度で、圧力板とほぼ同じ作業高さを有するように形成されている。このようにして圧力体から及ぼされる押圧力は、部分的に支持体に伝達され、そこから保持装置に、または直にトップローラ−支持−荷重アームに伝達される。特に支持部材は、鉛直方向で圧力板を少なくとも部分的に包囲するように形成することができ、支持部材は、たとえばU字形プロフィール(成形輪郭)を有している。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】トップローラ−支持−荷重アームの部分断面図である。
【図2】板状の荷重軽減エレメントを備えた、図1に示した保持装置を示す概略図である。
【図3】圧縮コイルばねを備えた、図1に示した保持装置を示す概略図である。
【図4】板ばねを備えた、図1に示した保持装置を示す概略図である。
【図5】中空円筒形のプラスチックばねを備えた、図1に示した保持装置を示す概略図である。
【図6】引張ばねを備えた、図1に示した保持装置を示す概略図である。
【0019】
次に図面に基づいて、本発明の実施の形態を詳しく説明する。
【0020】
図1には、空気力式に荷重を掛けられるトップローラ5,6,7を備えたドラフト機構のトップローラ−支持−荷重アーム1を概略部分断面図で示した。トップローラ−支持−荷重アーム1は、軸線19を中心に支持部材18に支承されていて、上位の終端位置と下位の紡績運転位置との間で旋回可能である。支持部材18は、機械長さの保持ロッド20に配置されており、保持ロッド20は、トップローラ−支持−荷重アーム1のための圧縮空気の供給管路を備えている。トップローラ−支持−荷重アーム1のこのような支承は、たとえばドイツ連邦共和国特許第4429671号明細書に記載されている。トップローラ5,6,7は、トップローラに対応して配置された、簡略化するために図示していないボトムローラに押し付けられ、トップローラとボトムローラとの間で繊維束がドラフトされる。
【0021】
トップローラ5,6,7は、それぞれトップローラ−支持−荷重アーム1に設けられた保持装置2における支柱3に配置されている。保持装置2は、トップローラ−支持−荷重アーム1の長手方向で調整可能であり、それも、図示していない固定部分(摩擦結合または形状結合式に作用する)が弛緩(分離)されたあとで調整可能であり、これによって前ドラフトおよび主ドラフトのラッチの可変調節が達成される。支柱3は、プラスチックまたは金属から成っていて、上位端部で、圧力板9を備えており、圧力板9は、フロントトップローラ7で示した。圧力板9に、チューブ状の圧力体4(圧力体4は少なくとも保持装置2の調整によって設定可能なラッチ部分にわたって延在している)によって圧縮荷重が及ぼされる。このために空気ばねとして作用する圧力体4は、直接的または間接的に圧力板9と結合されている。各保持装置2の支柱3は、鉛直方向で上下運動可能に形成されているので、荷重(荷重の大きさは圧力板9の大きさに関連する)が、各トップローラ5,6,7に伝達される。紡績運転位置では、トップローラ5,6,7は、このようにして所定の力でボトムローラに押し付けられる。
【0022】
さらにフロントトップローラ7に圧力ローラ8が後置されており、圧力ローラ8は、圧縮装置の一部である。圧力ローラ8をドラフト機構に組み込むために、トップローラ−支持−荷重アーム1に追加的な保持装置10が配置されており、追加的な保持装置10にも同様に支柱11が鉛直方向で上下運動可能にガイドされており、支柱11は、圧力ローラ8を収容するのに用いられる。圧力ローラ8は、押圧力で負荷を掛けられて、圧縮装置の図示していない圧縮エプロンに押し付けられる。このために支柱11は、圧力板12を備えており、圧力板12は、圧力ヘッド4から、押圧力で荷重を掛けられる。
【0023】
品質向上の過程において、圧力ローラ8に及ぼされる必要な押圧力は、ドラフトのためにトップローラ5,6,7に及ぼされる押圧力よりも極めて小さい。リング精紡機に配置された全てのドラフト機構に関する圧縮空気の供給は、有利には中央の圧縮空気源によって行われるので、中央の圧縮空気源は、同様に、圧縮装置の、トップローラ−支持−荷重アーム1に組み込まれた圧力ローラ8に荷重を掛けるためにも存在する。及ぼされる押圧力を低減するために、圧力板12の、荷重付与表面積を減少することができる。圧力板12の表面積がある値を下回ってはならず、ならびに圧力板12の表面積の適合による、及ぼされる押圧力のフレキシブルな適合が、圧力板12の交換によって制限下でしか実現されず、これは大きな手間に繋がるので、圧力体4によって圧力ローラ8に及ぼされる押圧力を適合するために、圧力体4のばね行程を制限するための手段が設けられている。図2〜図6には、制限手段の様々な形態を示しており、制限手段によって、押圧力またはばね行程の低減が達成される。
【0024】
図2には、保持装置10ならびに支柱11を、荷重の掛けられていない位置で示しており、荷重の掛けられていない位置では、トップローラ−支持−荷重アーム1は開いているので、支柱11は、保持装置10の内側で降下する。トップローラ−支持−荷重アーム1が閉じられると、支柱11は、作業位置を占め、作業位置では、圧力板12および圧力板12に隣接して配置された支持部材13が、ほぼ同じ作業高さに位置する。支持部材13は、押圧力を低減するための非弾性手段として形成されている。支持部材13は、保持装置10における固い延長部であり、延長部に、圧力体4が、ドラフト機構の作業位置で載置する。これによって空気力式の圧力体4によって形成される押圧力の一部の伝達が、支持部材13を介して保持装置10に行われる。空気力式の圧力体4は、押圧力を、支持部材13および圧力板12に伝達し、この場合圧力板12は、もはや全面的に荷重を掛けられない。したがって支持部材13は、圧力体4から圧力ローラ8に及ぼされる押圧力を低減する。支持部材13は、圧力板12を鉛直方向で部分的または全体的に包囲するように形成してもよい。
【0025】
押圧力を低減するための選択的な形態を、図3〜図6に示した。図3には、押圧力を低減するための、反力を形成する構成部材と共に、図1に示した圧力ローラ8の保持装置10を概略図で示した。構成部材は、圧縮コイルばね14として形成されていて、圧力板12ならびに保持装置10に支持されていて、圧力体4によって荷重を掛ける際に、圧力体4による荷重の作用方向に抗する反力を形成する。
【0026】
図4には、板ばね15として形成された、反力を形成する構成部材と共に、保持装置10を概略図で示した。板ばね15の配置構造は、圧縮コイルばね14と同様に選択されており、板ばね15は、圧力板12および保持装置10に支持されている。
【0027】
図5に示したように、相応に中空円筒形のプラスチックばね16の配置構造を設けることができる。
【0028】
圧力体4のばね行程を制限するためのばね使用によって、ばねの比較的簡単な交換が実現され、ここでは異なるばね強度を有するばねが使用され、これによって圧力ローラ8に及ぼされる圧縮荷重を調節することができる。
【0029】
さらに図6には、引張荷重の掛けられたばね少なくとも1つのエレメント17を備えた形態を簡単な原理図で示しており、ばねエレメント17は、一方の端部で支柱11に、他方の端部でトップローラ−支持−荷重アーム1に取り付けることができる。圧力板12に圧力荷重が及ぼされると、引張ばね17によって反力が形成され、反力は、相応に圧力体4のばね行程を低減し、これによって圧力ローラ8から圧縮エプロンに及ぼされる圧力を調節することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドラフト機構であって、
トップローラ−支持−荷重アーム(1)を備え、該トップローラ−支持−荷重アーム(1)に、空気力式に荷重を掛けられるトップローラ(5,6,7)が設けられており、該トップローラ(5,6,7)は、保持装置(2)内に設けられた鉛直に可動の支柱(3)に配置されており、トップローラ−支持−荷重アーム(1)に配置された、押圧力を支柱(3)に及ぼすための空気力式の圧力体(4)を備え、圧縮装置の圧力ローラ(8)を備え、該圧力ローラ(8)は、ボトムローラを備えており、該ボトムローラに、圧力ローラ(8)が、押圧力で押し付けられるようになっている、ドラフト機構において、
圧縮装置の圧力ローラ(8)は、トップローラ−支持−荷重アーム(1)に設けられた保持装置(10)における別の支柱(11)に組み込まれており、
圧力ローラ(8)は、圧力板(12)を介して、空気力式の圧力体(4)の押圧力で荷重を掛けられるようになっていることを特徴とする、ドラフト機構。
【請求項2】
圧力体(4)から及ぼされる押圧力を制限するための弾性手段が設けられており、該弾性手段は、圧力板(12)と、当該ドラフト機構の、支柱(11)に対して不動の部分とに結合されている、請求項1記載のドラフト機構。
【請求項3】
押圧板(12)を介して圧力ローラ(8)に及ぼされる圧力を制限するための手段として、支柱(11)と保持装置(10)とに結合された、反力を形成する構成部材(13,14,15,16,17)が設けられている、請求項2記載のドラフト機構。
【請求項4】
前記構成部材は、保持装置(10)に配置された押圧ばね(14,15,16)として形成されており、該押圧ばね(14,15,16)は、圧力板(12)に支持されている、請求項3記載のドラフト機構。
【請求項5】
前記構成部材は、引張荷重を掛けられる少なくとも1つのばねエレメント(17)として形成されており、該ばねエレメント(17)は、トップローラ−支持−荷重アーム(1)ならびに支柱(11)に配置されている、請求項3記載のドラフト機構。
【請求項6】
前記構成部材は、引張荷重を掛けられる少なくとも1つのばねエレメント(17)として形成されており、該ばねエレメント(17)は、保持装置(10)および支柱(11)に配置されている、請求項3記載のドラフト機構。
【請求項7】
前記構成部材は、引張荷重を掛けられる少なくとも1つのばねエレメント(17)として形成されており、該ばねエレメント(17)は、保持装置(10)および圧力板(12)に配置されている、請求項3記載のドラフト機構。
【請求項8】
前記構成部材は、引張荷重を掛けられる少なくとも1つのばねエレメント(17)として形成されており、該ばねエレメント(17)は、トップローラ−支持−荷重アーム(1)ならびに圧力板(12)に配置されている、請求項3記載のドラフト機構。
【請求項9】
ばねエレメント(17)もしくは押圧ばねは、コイルばね(14,17)、板ばね(15)またはプラスチックばね(16)として形成されている、請求項4から8までのいずれか1項記載のドラフト機構。
【請求項10】
圧力体(4)から及ぼされる押圧力を制限するための非弾性手段(13)が設けられており、該非弾性手段(13)は、保持装置(10)と結合されている、請求項1記載のドラフト機構。
【請求項11】
圧力体(4)から及ぼされる押圧力を制限するための非弾性手段が設けられており、該非弾性手段は、トップローラ−支持−荷重アーム(1)と結合されている、請求項1記載のドラフト機構。
【請求項12】
非弾性的な手段として支持部材(13)が設けられており、該支持部材(13)は、圧力板(12)に隣接して配置されている、請求項10または11記載のドラフト機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2011−503381(P2011−503381A)
【公表日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−533456(P2010−533456)
【出願日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【国際出願番号】PCT/EP2008/008958
【国際公開番号】WO2009/062589
【国際公開日】平成21年5月22日(2009.5.22)
【出願人】(510022967)エーリコン テクスタイル コンポーネンツ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (7)
【氏名又は名称原語表記】Oerlikon Textile Components GmbH
【住所又は居所原語表記】Maria−Merian−Strasse 8, D−70736 Fellbach, Germany
【Fターム(参考)】