説明

ドラフト装置のコンデンサ、及び紡績機

【課題】コンデンサ幅の調整をコンデンサの付け替えによって行わずに、1つのコンデンサにより効率良く調整できるドラフト装置のコンデンサを提供する。
【解決手段】スライバの幅方向に移動自在である第1スライバ規制部材71aと、スライバの幅方向に移動自在である第2スライバ規制部材71bと、第1スライバ規制部材71aと第2スライバ規制部材71bとを互いに接近又は離間する方向へ連動させて、第1スライバ規制部材71aと第2スライバ規制部材71bとの間に形成される、スライバの通過可能な幅であるコンデンサ幅を可変とする連動機構70とを備えたドラフト装置2のコンデンサ26である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スライバの幅を規制するドラフト装置のコンデンサ、及び紡績機の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、バックローラと、サードローラと、エプロンバンドを装架したミドルローラと、フロントローラと、からなるドラフト装置を備え、さらに、当該ドラフト装置にドラフト中のスライバの幅を規制するためのコンデンサが設置されている紡績機の技術は公知となっている(特許文献1、2参照)。
【0003】
図7に示すように、従来のコンデンサ500は、スライバSが貫通して通過する横幅が漸次縮小した通路hを形成したものである。この通路hの下流側端部の横幅(通路hの横幅で最も狭い部分)がコンデンサ500のコンデンサ幅となり、コンデンサ幅の広狭によりスライバSの規制幅が決まる。コンデンサ500は、コンデンサ幅が固定形成されていることから、スライバSの規制幅を制御するためには、コンデンサ幅の異なる複数のコンデンサを予め準備し、その中から規制幅に対応したコンデンサを選択して行わなければならなかった。
【0004】
また、紡績工程において糸切れが発生した場合には、糸切れ後の紡績の再開時に、バックローラ及びサードローラを再駆動させて、スライバの送りを再開し、紡績装置において噴射される圧縮空気により結束繊維状の糸を紡績する糸出し紡績を行う。しかし、細番手の紡績糸を生成している過程において糸切れが発生した場合には、通常の細番手の糸生成作業と同じ繊維量を紡績装置に供給して糸出し紡績を行うと、繊維量が少ないために紡績条件によっては、糸出し紡績時の結束糸の生成において繊維を結束させるのに必要な繊維量を満たさず、糸出し紡績における糸生成が失敗することになる。そこで、バックローラ及びサードローラの回転速度を通常紡績時よりも速くすることで、ドラフト装置のドラフト比を下げ、紡績装置に供給する繊維量を増加する(特許文献3参照)。
【特許文献1】特開平8−246274号公報
【特許文献2】特許2773445号公報
【特許文献3】特許3575470号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のコンデンサはコンデンサ幅が固定成形されていることから、スライバの量に応じてコンデンサ幅を制御するためには、対応したコンデンサ幅を有するコンデンサに付け替えて処理しなければならず、作業性が悪いという問題点があった。また、対応したコンデンサ幅を有するコンデンサに付け替えて処理しなければならないことから、コンデンサ幅の異なる複数のコンデンサを予め準備しておかなければならず、部品点数が多くなるとともに、コストがかかるという問題点もあった。
【0006】
さらに、細番手の糸生成作業における糸出し紡績時には、紡績装置に供給する繊維量を増加するため、ドラフト装置に供給されるスライバの量も多くなる。そのため、細番手の糸生成時に用いるコンデンサで糸出し紡績を行うと、コンデンサ幅が狭くスライバのつまりが生じるという問題点があった。
【0007】
本発明は、かかる問題を解決すべくなされたものであり、コンデンサ幅の調整をコンデンサの付け替えによって行わずに、1つのコンデンサにより効率良く調整できるドラフト装置のコンデンサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
当該目的を達成するために、請求項1に記載のドラフト装置のコンデンサは、スライバの幅方向に移動自在である第1スライバ規制部材と、スライバの幅方向に移動自在である第2スライバ規制部材と、前記第1スライバ規制部材と前記第2スライバ規制部材とを互いに接近又は離間する方向へ連動させて、前記第1スライバ規制部材と前記第2スライバ規制部材との間に形成される、前記スライバの通過可能な幅であるコンデンサ幅を可変とする連動機構と、
を備えるものである。
【0009】
以上の構成により、以下の作用がある。
コンデンサ幅を形成する第1スライバ規制部材及び第2スライバ規制部材が、互いに接近又は離間する方向へ連動することでコンデンサ幅を可変とすることで、一つのコンデンサでスライバの規制幅を制御する。
【0010】
請求項2においては、請求項1記載のドラフト装置のコンデンサであって、前記連動機構を構成する部材であって、前記連動機構が作動することで前記コンデンサ幅に応じて位置が変化する表示部材と、前記コンデンサ幅と前記表示部材の位置との対応を表示する表示部とを備えるものである。
【0011】
以上の構成により、以下の作用がある。
コンデンサ幅の変化に応じて、表示部材が表示部の対応する位置まで変化する。
【0012】
請求項3に記載の紡績機は、スライバをドラフトするドラフト装置を備える複数の紡績ユニットを具備する紡績機であって、前記ドラフト装置ごとに設けられ、前記ドラフト装置でドラフトされるスライバの幅を規制する請求項1又は2に記載のドラフト装置のコンデンサと、前記各ドラフト装置を一括して制御すると共に、前記コンデンサ幅が可変するように前記各コンデンサを一括して制御する制御装置と、を備えるものである。
【0013】
以上の構成により、以下の作用がある。
制御装置により、各紡績ユニットに備えるコンデンサのコンデンサ幅が自動的に調整される。
【0014】
請求項4に記載の紡績機は、請求項3に記載の紡績機であって、前記紡績ユニット毎に空気式の紡績装置が備えられると共に、前記各紡績装置で紡績糸の生成を開始する糸出し時に、前記制御装置は、前記ドラフト装置の運転条件を変更して通常紡績時と比べて前記紡績装置に供給されるスライバの量を変更すると共に、前記コンデンサ幅が前記糸出し時と前記通常紡績時とで変更されるように前記各コンデンサを制御するものである。
【0015】
以上の構成により、以下の作用がある。
紡績装置に供給されるスライバの量に応じてコンデンサ幅が変更される。
【発明の効果】
【0016】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0017】
請求項1においては、1つのコンデンサで、スライバの規制幅を制御できるため、コンデンサの付け替え等が不要となり、作業性が向上する。また、1つのコンデンサでスライバの規制幅を制御することができるため、スライバの規制幅に対応したコンデンサを複数準備する必要がなく、部品点数及びコストを削減できる。
【0018】
請求項2においては、コンデンサ幅の変化に応じて、表示部材が表示部の対応する位置まで変化することから、コンデンサ幅の大きさを容易に確認することができる。
【0019】
請求項3においては、コンデンサ幅の調整をコンデンサを付け替えることで行う場合と比べて、コンデンサ幅の調整作業の作業性が向上している。
【0020】
請求項4においては、紡績装置に送られるスライバの量を変更することで、太番手の糸出し時におけるスライバ詰まりや細番手の糸出し時におけるスライバの量の不足による紡績不良を防止できる。加えて、スライバの量の変更に応じてスライバの規制幅を制御することも可能となっている。特に細番手の糸出し時にはスライバの量を増やすのでコンデンサでスライバ詰まりが発生する恐れがあるが、これに応じてコンデンサ幅を調整するので、コンデンサでのスライバのつまりを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下に本発明の実施形態に係る紡績機100について図面に基づいて説明する。
図1は本発明の実施形態に係る紡績機100についての側面図、図2は本発明の実施形態に係る紡績ユニット200についての側面図である。
【0022】
図1に示すように、紡績機100は、複数の紡績ユニット200・200・・・と、制御装置300と、駆動装置400と、を具備する。駆動装置400は、各紡績ユニット200を一括して駆動する。尚、駆動装置400は、紡績ユニット200に備える一部の装置(糸送り装置4等)を駆動する。紡績ユニット200に備える他の装置は、紡績ユニット200自体に備えられた駆動源により駆動される。制御装置300は、全紡績ユニット200の一括駆動に係る駆動装置400と、各紡績ユニット200の駆動源とを制御することで、各紡績ユニット200を制御する。紡績機100は、図示左側端部に制御装置300及び駆動装置400が配置され、制御装置300及び駆動装置400と並列して各紡績ユニット200が並設されている。
【0023】
図1、図2に示すように、紡績ユニット200は、スライバ供給ユニット1と、ドラフト装置2と、空気式の紡績装置3と、糸送り装置4と、糸欠点検出装置5と、巻取装置6と、を具備する。
【0024】
スライバ供給ユニット1は、原料となるスライバ10と、スライバ10を入れるスライバケース11と、スライバ10をドラフト装置2へ案内するスライバガイド12と、からなる。
【0025】
ドラフト装置2は、スライバ10を挟み込んで延伸するドラフトローラ対を四組備えるものである。前記四組のドラフトローラ対は、スライバ10の搬送方向に沿って配置されるバックローラ対21と、サードローラ対22と、セカンドローラ対23と、フロントローラ対24と、からなる。また、セカンドローラ対23には、皮又は合成ゴム製の無端帯であるエプロンバンド25が巻回されている。前記四組のドラフトローラ対のそれぞれは、図示せぬ駆動源により回転する駆動ローラと、駆動ローラと接触して従動する従動ローラとで構成されている。
【0026】
ドラフト装置2は、まずスライバ10をバックローラ対21とサードローラ対22との間を通すことで1段階目のドラフトを行う。この時、駆動ローラであるサードローラ22aの回転速度が、駆動ローラであるバックローラ21aの回転速度より高速であるため、スライバ10が引き伸ばされる。
【0027】
次に、ドラフト装置2は、スライバ10をサードローラ対22とセカンドローラ対23との間を通すことで2段階目のドラフトを行う。この時、駆動ローラであるセカンドローラ23aの回転速度が、サードローラ22aの回転速度より高速であるため、スライバ10がさらに引き伸ばされる。
【0028】
さらに、ドラフト装置2は、スライバ10をセカンドローラ対23とフロントローラ対24との間を通すことで3段階目のドラフトを行う。この時、駆動ローラであるフロントローラ24aの回転速度が、セカンドローラ23aの回転速度より高速であるため、スライバ10がさらに引き伸ばされる。
【0029】
ドラフト装置2において、セカンドローラ23a及びフロントローラ24aは、駆動装置400により駆動される。また、バックローラ21a及びサードローラ22aは、各紡績ユニット200に備える駆動源(モータ)により駆動される。セカンドローラ23a及びフロントローラ24aは、全紡績ユニット200について駆動装置400により一括して駆動される。このため、セカンドローラ23a及びフロントローラ24aの回転速度は常時一定に保たれている。これに対して、バックローラ21a及びサードローラ22aは、各紡績ユニット200で個別に駆動される。このため、バックローラ21a及びサードローラ22aの回転速度は変更可能となっている。尚、本実施形態においては上記構成であるが、ドラフト装置2に備えるドラフトローラのすべてを、各紡績ユニット200に備える駆動源で駆動するようにしてもよい。
【0030】
サードローラ対22と、セカンドローラ対23との間には、スライバ10の幅を規制するコンデンサ26が設置されている。つまり、コンデンサ26は、スライバの搬送方向でサードローラ対22の下流側に位置する。尚、コンデンサ26の設置場所は、サードローラ対22と、セカンドローラ対23との間に限定されるものではなく、ドラフト装置2のいずれかのドラフトローラ対の下流側であれば構わない。さらに、コンデンサ26の設置数は1つに限定されるものではなく、複数設置しても構わない。
【0031】
紡績装置3は、ドラフト装置2で延伸したスライバ10に旋回気流を作用させることで、糸(結束糸)40を製造する空気式の紡績装置である。
【0032】
糸送り装置4は、紡績装置3で製造された糸40を巻取装置6へ送り出す装置であり、デリベリローラ41およびニップローラユニット42を備えている。ニップローラユニット42は、レバー43の一端部にニップローラ44、他端部に回動支軸45を備えている。回動支軸45は、紡績ユニット200のフレームに支持されている。そして、ニップローラ44がデリベリローラ41に対して、接近・離脱可能となるように、回動支軸45周りで回転自在に支持されている。
【0033】
糸欠点検出装置5は、巻取装置6へ送られる途中の糸40の糸欠点を検出する装置であり、この糸欠点検出装置5での糸欠点検出情報に基づいて、糸欠点部位が除去され、不良な糸のパッケージ61への巻き取りが防止される。また、糸欠点検出装置5には、糸欠点の検出に応じて、糸40を切断する図示せぬ切断装置や、糸欠点部位の切除のため一旦切断された糸40の両端を繋ぐ図示せぬ糸継装置が備えられている。
【0034】
巻取装置6は、紡績装置3で製造された糸40を、ボビン62の軸方向にトラバースして巻き取ってパッケージ61を形成する装置である。パッケージ61あるいはボビン62は、駆動ドラム63の駆動力を受けて回転し、ボビン62に糸40が巻かれてパッケージ61となる。
【0035】
次に、コンデンサ26について、図面に基づいて説明する。図3は、コンデンサ26の斜視図である。コンデンサ26はサードローラ22aの下流側で、且つセカンドローラ23aの上流側(図2)に配置される。コンデンサ26の配置は特に限定されないが、本実施形態では、ドラフト比が小さい、すなわちローラ間の速度差が小さい領域にコンデンサ26を配置する。ドラフト比が大きいローラ間にコンデンサを設置すると、コンデンサがスライバに対して抵抗体として作用し、ドラフト作用の障害になる恐れがあるためである。従って、本実施形態では速度差が最も小さいサードローラ22aとセカンドローラ23aとの間に配置されている。コンデンサ26は、スライバ10の幅方向の片側を規制する第1スライバ規制部材71aと、スライバ10の幅方向の他方側を規制する第2スライバ規制部材71bと、第1スライバ規制部材71a及び第2スライバ規制部材71bを連動させる連動機構70と、を具備する。
【0036】
第1スライバ規制部材71a及び第2スライバ規制部材71bは長方形の板状体であり、互いに対向するように配置される。ただし、第1スライバ規制部材71a及び第2スライバ規制部材71bの間隔が、スライバ10の搬送方向(図3矢印A方向)の上流側に大きく開き、下流側に向けて幅が狭まるように、第1スライバ規制部材71a及び第2スライバ規制部材71bは配置される。第1スライバ規制部材71a及び第2スライバ規制部材71bより形成される幅のうち最も狭い部分(スライバ10の搬送方向の最下流部)の幅(図4の間隔D)が、スライバ10の通過可能な幅であるコンデンサ幅である。
【0037】
連動機構70は、端部に第1スライバ規制部材71aを接続した第1アーム部材72aと、端部に第2スライバ規制部材71bを接続した第2アーム部材72bと、第1アーム部材72aと第2アーム部材72bとを連結する連結部材73と、第1アーム部材72a及び第2アーム部材72bをガイドするガイド部材74から形成されている。
【0038】
連動機構70は、第1スライバ規制部材71aと第2スライバ規制部材71bとを互いに接近又は離間する方向へ連動させて、スライバの通過可能な幅であるコンデンサ幅を可変とするものである。また連動機構70は、後述するモータ28(図6)に接続され、モータ28が駆動することにより、連動機構70が作動する。
【0039】
第1アーム部材72aはスライバ10の幅方向に延びた水平部分72a1とスライバ10の幅方向に対して垂直に延びた直立部分72a2とからなる略L字状の部材である。第1アーム部材72aは水平部分72a1がガイド部材74によってスライバ10の幅方向に移動自在に案内されることでスライバ10の幅方向でのみ移動自在となる。
【0040】
第2アーム部材72bはスライバ10の幅方向に延びた水平部分72b1とスライバ10の幅方向に対して垂直に延びた直立部分72b2とからなる略L字状の部材である。第2アーム部材72bは水平部分72b1がガイド部材74によってスライバ10の幅方向に移動自在に案内されることでスライバ10の幅方向でのみ移動自在となる。
【0041】
連結部材73は、長孔73a、73bを有する板状体であり、回動支点となる支持軸75aに固定されている。長孔73aには第1アーム部材72aの支持軸75bが挿入され、長孔73bには第2アーム部材72bの支持軸75cが挿入されている。
【0042】
ガイド部材74は、第1アーム部材72aをスライバ10の幅方向に移動自在に案内するレール状のガイド部74aと、第2アーム部材72bをスライバ10の幅方向に移動自在に案内するレール状のガイド部74bと、支持軸75aを回動自在に支持する穴部74cと、から形成されている。ガイド部74aは第1アーム部材72aの水平部分72a1をスライバ10の幅方向に移動自在に案内することで第1アーム部材72aをスライバ10の幅方向でのみ移動自在にする。またガイド部74bは第2アーム部材72bの水平部分72b1をスライバ10の幅方向に移動自在に案内することで第2アーム部材72bをスライバ10の幅方向でのみ移動自在にする。
【0043】
支持軸75aは連結部材73を回動するための支持軸でありガイド部材74の穴部74cで回動自在に支持されている。また支持軸75aは後述するモータ28(図6)に接続され、モータ28が駆動することにより回動する。
【0044】
以上で説明した構成により、連結部材73の回転運動が、第1アーム部材72aや第2アーム部材72bの直線運動に変換されるようにしている。
【0045】
図4は、コンデンサ26の正面図である。第1スライバ規制部材71a及び第2スライバ規制部材71bは、中心線Bからの距離が等間隔で互いに接近又は離間する方向(図示左右方向)に連動する。ここで中心線Bとは、スライバ10の幅方向の中心が通過する線をいう。第1スライバ規制部材71a及び第2スライバ規制部材71bの間隔Dがコンデンサ26のコンデンサ幅となる。間隔Dを変化させることにより、スライバ10の幅を任意の規制幅に制御することができる。
【0046】
図4に示すように、連結部材73を支持軸75aを中心に図示反時計回り(矢印C方向)に回動させると、第1スライバ規制部材71aは第1アーム部材72aを介して図示左方向へ、第2スライバ規制部材71bは第2アーム部材72bを介して図示右方向へ、それぞれ移動する。これにより間隔Dが広がり、コンデンサ幅が広くなる。
逆に、連結部材73を支持軸75aを中心に図示時計回りに回動させると、第1スライバ規制部材71aは第1アーム部材72aを介して図示右方向へ、第2スライバ規制部材71bは第2アーム部材72bを介して図示左方向へ、それぞれ移動する。これにより間隔Dが狭まり、コンデンサ幅が狭くなる。
【0047】
このように、コンデンサ26は、連結部材73を回動させることでコンデンサ26のコンデンサ幅を調整可能であることから、1つのコンデンサでスライバの規制幅を制御することができる。このため、スライバの規制幅に対応したコンデンサを複数準備する必要がなく、部品点数及びコストを削減できる。
【0048】
次にコンデンサ26の表示部について説明する。図5は、表示部を設けたコンデンサ26の概略図である。
【0049】
コンデンサ26は、コンデンサ26のコンデンサ幅(間隔D)と連結部材73の位置との対応を表示する表示部76を具備する。表示部76は円形の部材であり、円形である表示部76の中心位置と支持軸75aの軸心位置とが一致するように配置されている。また表示部76は上部側面に目盛り76aが付されている。目盛り76aは、コンデンサ26のコンデンサ幅の変化に対応して一定間隔で付されている。
【0050】
図5に示すように、表示部76は、上部から連結部材73の細径部73c(図5斜線部)が見えるように連結部材73と重ねて設けている。連結部材73が支持軸75aを中心に回動することで、細径部73cが目盛り76aに沿って移動する。また、連結部材73の回転位置(傾き)の変化は、コンデンサ26のコンデンサ幅の変化と対応しているため、細径部73cの位置の変化もコンデンサ26のコンデンサ幅の変化と対応する。そして、目盛り76aの各部に、細径部73cの位置に応じたコンデンサ幅の大きさを示す数値を記載しておく。このようにすると、作業者は、細径部73cが示す目盛り76a上の数値を見ることで、そのときのコンデンサ幅を知ることができる。つまり、連結部材73がコンデンサ幅に応じて位置を変化する表示部材であるとともに、細径部73cが目盛り76aを指す指示針の役割を有している。
【0051】
このように、細径部73cが目盛り76aに沿って移動し、その移動がコンデンサ26のコンデンサ幅の変化と対応していることから、細径部73cの移動と目盛り76aとの対応を見るだけで、コンデンサ幅の大きさを容易に確認することができる。
【0052】
次に、コンデンサ26のコンデンサ幅の調整機構について説明する。図6は、紡績ユニット200のドラフト装置2及び紡績装置3の平面図である。
【0053】
図6に示すように、コンデンサ26のコンデンサ幅の調整機構は、モータ28と、ユニット制御装置29と、制御装置300と、で構成されている。
【0054】
ユニット制御装置29は、紡績ユニット200ごとに設けられ、すべてのユニット制御装置29・29・・・は制御装置300に接続されている。各ユニット制御装置29は、一つの紡績ユニット200を制御する。ユニット制御装置29と制御装置300とは接続されている。制御装置300は、各ユニット制御装置29を介して各紡績ユニット200を個別に制御すると共に、駆動装置400を介して各紡績ユニット200を制御する。
【0055】
モータ28は、ユニット制御装置29及びコンデンサ26の連動機構70に接続され、ユニット制御装置29から送信される制御信号に応じて連動機構70を作動させ、コンデンサ幅を変化させる。モータ28のモータ軸は、コンデンサ26の支持軸75aに接続されている。モータ軸の回転により支持軸75aが回転し、続いて支持軸75aの回転で連動機構70が第1スライバ規制部材71a及び第2スライバ規制部材71bを連動させることでコンデンサ26のコンデンサ幅を調整する。
【0056】
ユニット制御装置29は、制御装置300より送信される制御信号に基づいてモータ28を制御する。これにより、制御装置300は、各紡績ユニット200に設置したコンデンサ26のコンデンサ幅を一括して制御することができる。
【0057】
コンデンサ幅の変更は、例えば品種変えのときに行われる。品種変えとは紡績糸の品種を変えることを意味する。つまり、原料となるスライバの種類が変更されたり、(スライバの種類が同一であるか否かに係りなく)製品としての紡績糸の番手が変更されたりする。これに伴って、ドラフト装置2の運転条件(四つのドラフトローラ21a・22a・23a・24aそれぞれの回転速度)も変更されることになる。スライバの種類が変更されると、スライバに含まれる繊維量も変化し、ドラフト装置2の運転条件に変更がなくても、コンデンサ26を通過するスライバ10の幅は変化する。
【0058】
コンデンサ26による最適なコンデンサ幅は、コンデンサ26を通過する位置でのスライバ10の幅に合わせて、その幅が広がりすぎないようにする目的で設定する必要がある。
最適なコンデンサ幅の設定に際して必要な要件として、原料としてのスライバの種類、製品としての紡績糸の番手、ドラフト装置の運転条件、ドラフト装置におけるコンデンサの配置位置がある。これらの要件の一部もしくは全部が変更されると、それに応じて最適なコンデンサ幅が変化する。そこで、制御装置300には、原料としてのスライバの種類、製品としての紡績糸の番手、ドラフト装置の運転条件、ドラフト装置におけるコンデンサの配置位置に応じた、最適なコンデンサ幅が設定された対応表が記憶されている。
【0059】
制御装置300が、各紡績ユニット200に指令して紡績糸の製造を開始させるときには、予め前記各要件(スライバの種類、番手、運転条件、配置位置)が特定されている。これらの各要件に関する情報が、制御装置300に付設される入力装置等により事前に、制御装置300に入力されている。このため、制御装置300は紡績糸の製造を開始させるときに、前記各要件の一つである運転条件に基づいて、ドラフト装置2の駆動を制御する。また、制御装置300は、前記対応表に基づいて、予め特定されている前記各要件に対応するコンデンサ幅を選定し、選定されたコンデンサ幅となるようにコンデンサ26を制御する。
【0060】
ここで本実施形態の調整装置27がコンデンサ26のコンデンサ幅が調整する際の処理の流れについて説明する。
【0061】
品種変えにおけるコンデンサ26のコンデンサ幅の調整は、紡績機100が停止した状態で行う。上述のように、コンデンサ26はユニット制御装置29及びモータ28を介して制御装置300と接続されており、制御装置300からの指令に基づいて各紡績ユニット200のコンデンサ26のコンデンサ幅が一斉に調整される。
【0062】
制御装置300は、前記各要件(スライバの種類、番手、運転条件、配置位置)のデータと、制御装置300に記憶される対応表とに基づいて、最適なコンデンサ幅を選定する。制御装置300は、選定したコンデンサ幅に基づき、各紡績ユニット200のユニット制御装置29へ制御信号を送信する。ユニット制御装置29は、制御装置300から送信される制御信号に基づいてモータ28を制御する。ユニット制御装置29がモータ28を制御することで、コンデンサ26のコンデンサ幅が調整される。
【0063】
次に、紡績の糸出し時におけるコンデンサ26のコンデンサ幅の調整について説明する。糸出し時にコンデンサ幅の調整が必要な場合は二通りあり、細番手の糸生成作業の場合と、太番手の糸生成作業の場合と、がある。紡績機100においては、空気式の紡績装置3により紡績糸の生成が行われる。糸出し時(紡績の開始時)に所定量のスライバ10が紡績装置3に送られないと、紡績装置3への繊維量が少なすぎるために、糸出し紡績が失敗する場合がある。そこで、特に細番手の糸生成における糸出し時には、紡績装置3に供給されるスライバ10の量(幅)が通常紡績時よりも多くなるようにしている。逆に、糸出し時(紡績の開始時)に所定量以上のスライバ10が紡績装置3に送られると、紡績装置3においてスライバ詰まりが発生する恐れがある。そこで、特に太番手の糸生成における糸出し時には、紡績装置3に供給されるスライバ10の量(幅)が通常紡績時よりも少なくなるようにしている。このようにして、糸出し時に紡績装置3に供給されるスライバの量を一定範囲内に保つようにする。そして、紡績装置3に送られるスライバ10の量(幅)の変更に応じて、コンデンサ幅も調整する。
【0064】
まず、細番手の糸生成作業の糸出し時におけるコンデンサ幅の調整について説明する。
前述したように、細番手の糸生成作業において糸出し紡績をする場合には、通常の細番手の糸生成作業と同じ繊維量を紡績装置3に供給して糸出し紡績を行うと、紡績装置3への繊維量が少なすぎるために、糸出し紡績が失敗する場合がある。そこで、ドラフト装置2のドラフト比を下げて、一時的に紡績装置3に供給される繊維量を増加させる必要がある。本実施形態におけるドラフト装置2のフロントローラ24aは、常時一定の回転速度で制御されている。そこで、バックローラ21aの回転速度をサードローラ22aの回転速度より速くならない程度に通常紡績時よりも速くすることで、バックローラ21aと、フロントローラ24aとの回転速度の差を小さくし、ドラフト装置2におけるドラフト比を下げる。これにより、ドラフト装置2におけるドラフト比が小さくなる。ドラフト装置2におけるドラフト比が小さくなると、コンデンサ26を通過するスライバ10の幅は太くなる。この時、コンデンサ26におけるコンデンサ幅を細番手の糸生成作業時のコンデンサ幅と同じ幅にするとコンデンサ26でスライバ10のつまりが発生する。従って、コンデンサ26におけるコンデンサ幅も変更する必要がある。
【0065】
制御装置300は、バックローラ21aの回転速度を早くする制御を行うとともに、細番手の糸出し時における前記各要件に応じたコンデンサ幅を対応表から選定し、選定したコンデンサ幅でコンデンサ26を制御する。細番手の糸出し時における最適なコンデンサ幅は、通常紡績時の最適なコンデンサ幅より広い幅となっている。
【0066】
糸出し紡績が完了し、通常の細番手の糸生成作業を行う場合、制御装置300は、ドラフト装置2のドラフト比を上げて、紡績装置3へ供給する繊維量を減少させる。制御装置300はドラフト装置2を制御することによりバックローラ21aの回転速度を通常紡績時の回転速度まで戻す。これにより、バックローラ21aとフロントローラ24aとの回転速度の差が大きくなるため、ドラフト装置2におけるドラフト比が大きくなる。ドラフト装置2におけるドラフト比が大きくなると、コンデンサ26を通過するスライバ10の幅は狭くなる。
【0067】
制御装置300は、バックローラ21aの回転速度を通常紡績時の回転速度まで戻す制御を行うとともに、細番手の通常紡績時における前記各要件に応じたコンデンサ幅を対応表から選定し、選定したコンデンサ幅でコンデンサ26を制御する。細番手の通常紡績時におけるコンデンサ幅は、細番手の糸出し紡績時の最適なコンデンサ幅よりも狭い。
【0068】
次に太番手の糸生成作業の糸出し時におけるコンデンサ幅の調整について説明する。
前述したように、太番手の糸生成作業において糸出し紡績をする場合には、通常の太番手の糸生成作業と同じ繊維量を紡績装置3に供給して糸出し紡績を行うと、紡績装置3への繊維量が多すぎるために、紡績装置3のノズルにスライバが詰まり、糸出し紡績が失敗する場合がある。そこで、ドラフト装置2のドラフト比を上げて、一時的に紡績装置3に供給される繊維量を減少させる必要がある。本実施形態におけるドラフト装置2のフロントローラ24aは、常時一定の回転速度で制御されている。そこで、バックローラ21aの回転速度を通常紡績時よりも遅くすることで、バックローラ21aと、フロントローラ24aとの回転速度の差を大きくし、ドラフト装置2におけるドラフト比を上げる。これにより、ドラフト装置2におけるドラフト比が大きくなる。ドラフト装置2におけるドラフト比が大きくなると、コンデンサ26を通過するスライバ10の幅は狭くなる。従って、コンデンサ26におけるコンデンサ幅も変更する必要がある。
【0069】
制御装置300は、バックローラ21aの回転速度を遅くする制御を行うとともに、太番手の糸出し時における前記各要件に応じたコンデンサ幅を対応表から選定し、選定したコンデンサ幅でコンデンサ26を制御する。太番手の糸出し時における最適なコンデンサ幅は、通常紡績時の最適なコンデンサ幅より狭い幅となっている。
【0070】
糸出し紡績が完了し、通常の太番手の糸生成作業を行う場合、制御装置300は、ドラフト装置2のドラフト比を下げて、紡績装置3へ供給する繊維量を増加させる。制御装置300はドラフト装置2を制御することによりバックローラ21aの回転速度を通常紡績時の回転速度まで戻す。これにより、バックローラ21aとフロントローラ24aとの回転速度の差が小さくなるため、ドラフト装置2におけるドラフト比が小さくなる。ドラフト装置2におけるドラフト比が小さくなると、コンデンサ26を通過するスライバ10の幅は広くなる。
【0071】
制御装置300は、バックローラ21aの回転速度を通常紡績時の回転速度まで戻す制御を行うとともに、太番手の通常紡績時における前記各要件に応じたコンデンサ幅を対応表から選定し、選定したコンデンサ幅でコンデンサ26を制御する。太番手の通常紡績時におけるコンデンサ幅は、太番手の糸出し紡績時の最適なコンデンサ幅よりも広い。
【0072】
このように紡績機100においては、制御装置300が予め記憶された対応表に基づいて最適なコンデンサ幅を選定し、選定結果に基づいてユニット制御装置29へ制御信号を送信する。そしてユニット制御装置29が制御装置300からの制御信号に基づいてモータ28を制御する。モータ28はユニット制御装置29からの制御信号により、紡績装置3に供給されるスライバ10の量が多い場合にはコンデンサ26のコンデンサ幅を広くし、紡績装置3に供給されるスライバ10の量が少ない場合にはコンデンサ26のコンデンサ幅を狭くする。従って、紡績装置3に供給されるスライバ10の量に応じて自動的にコンデンサ幅が調整できるため、スライバの幅に応じてコンデンサを付け替える必要がなく、作業性が向上する。
【0073】
尚、コンデンサ幅の設定は、前記対応表に基づいて行われる場合に限定されるものではない。例えば、制御装置300に付設される入力装置から所望のコンデンサ幅の値を直接入力する。制御装置300は、その入力値に基づいて各コンデンサ26のコンデンサ幅を制御する。このように、コンデンサ幅が直接入力により設定されるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】本発明の実施形態に係る紡績機100についての側面図。
【図2】本発明の実施形態に係る紡績ユニット200についての側面図。
【図3】紡績ユニット200に係るコンデンサ26の斜視図。
【図4】コンデンサ26の側面図。
【図5】コンデンサ26の側面図。
【図6】紡績ユニット200に係るドラフト装置2及び紡績装置3の平面図。
【図7】従来のコンデンサ500の斜視図。
【符号の説明】
【0075】
2 ドラフト装置
10 スライバ
26 コンデンサ
70 連動機構
71a 第1スライバ規制部材
71b 第2スライバ規制部材
73 連結部材(表示部材)
76 表示部
100 紡績機
200 紡績ユニット
300 制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スライバの幅方向に移動自在である第1スライバ規制部材と、
前記スライバの幅方向に移動自在である第2スライバ規制部材と、
前記第1スライバ規制部材と前記第2スライバ規制部材とを互いに接近又は離間する方向へ連動させて、前記第1スライバ規制部材と前記第2スライバ規制部材との間に形成される、前記スライバの通過可能な幅であるコンデンサ幅を可変とする連動機構と、
を備える、
ドラフト装置のコンデンサ。
【請求項2】
前記連動機構を構成する部材であって、前記連動機構が作動することで前記コンデンサ幅に応じて位置が変化する表示部材と、
前記コンデンサ幅と前記表示部材の位置との対応を表示する表示部と、
を備える、請求項1のドラフト装置のコンデンサ。
【請求項3】
前記スライバをドラフトするドラフト装置を備える複数の紡績ユニットを具備する紡績機であって、
前記ドラフト装置ごとに設けられ、前記ドラフト装置でドラフトされる前記スライバの幅を規制する請求項1又は2に記載のドラフト装置のコンデンサと、
前記各ドラフト装置を一括して制御すると共に、前記コンデンサ幅が可変するように前記各コンデンサを一括して制御する制御装置と、
を備える紡績機。
【請求項4】
前記紡績ユニット毎に空気式の紡績装置が備えられると共に、
前記各紡績装置で紡績糸の生成を開始する糸出し時に、
前記制御装置は、前記ドラフト装置の運転条件を変更して通常紡績時と比べて前記紡績装置に供給されるスライバの量を変更すると共に、前記コンデンサ幅が前記糸出し時と前記通常紡績時とで変更されるように前記各コンデンサを制御する、
請求項3に記載の紡績機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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