説明

ドラフト装置及び紡績機

【課題】繊維束のドラフトに影響を与えることなく、ドラフトローラの周面に付着した繊維を効果的に清掃できるドラフト装置を提供する。
【解決手段】ドラフト装置7は、トップローラとボトムローラとから構成されるドラフトローラ対を4対備え、ボトムローラを駆動することで、当該ドラフトローラ対により繊維束8をドラフトする。このドラフト装置7は、清掃ベルト37と、間欠送り装置101と、を備える。清掃ベルト37は、バックボトムローラ66及びサードボトムローラ67に接触して清掃する清掃面を有する。間欠送り装置101は、清掃ベルト37を間欠送りする。間欠送り装置101は、4つのうち1つのボトムローラ(バックボトムローラ66)を駆動するバックボトムローラ駆動モータ91から動力を得て、清掃ベルト37を間欠送りする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として、ドラフト装置に使用するドラフトローラをクリーニングするための構成に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、紡績機において、繊維束をドラフトするためのドラフト装置を備える構成が知られている。このドラフト装置は、トップローラ及びボトムローラからなるドラフトローラ対を複数備えており、このドラフトローラ対がそれぞれ速度を異ならせながら回転することで、繊維束をドラフトすることができる。
【0003】
このドラフト装置で繊維束をドラフトする際に、繊維束の繊維がドラフトローラ(トップローラ又はボトムローラ)の周面に付着することがある。ドラフトローラの周面に異物が大量に付着すると、下流側の紡績装置において生成される糸の品質が低下したり、糸切れ等が発生したりする原因になる。従って、これを回避するために、ドラフト装置におけるドラフトローラの周面を清掃する構成が従来から提案されている。
【0004】
特許文献1で開示されるドラフトローラのクリーニング装置は、ドラフトローラの周面に接触してその表面を清掃する清掃面を有する清掃ベルトを備える。このクリーニング装置は、ドラフトローラの1つであるミドルローラに設けられた回転突起が1回転するごとに、清掃ベルトを支持するローラに設けられたギア部材のギア歯が1歯分だけ送られる構成になっており、これにより、清掃ベルトの間欠送りが実現されている。
【0005】
特許文献2で開示されるドラフトローラのクリーニング装置では、スクレーパ部材が設けられている。このスクレーパ部材は尖鋭端縁を備えており、この尖鋭端縁をドラフトローラの外周面に当接させることで、ローラ外周面に付着した綿糖や油剤等を掻き取って清掃することができる。スクレーパ部材の下部には吸引部材が設けられており、この吸引部材の吸引作用により、掻き取った風綿等を取り除くように構成されている。
【0006】
特許文献3で開示されるドラフト装置においては、ドラフトローラの1つであるサードボトムローラの下方に、清掃用ベルトが配置される。この構成で、サードボトムローラが回転すると、清掃用ベルトがサードボトムローラとの摩擦力によって回転し、これにより、サードボトムローラの表面に付着した風綿が清掃用ベルトによって除去される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−13550号公報
【特許文献2】特開2006−22443号公報
【特許文献3】特開2011−127238号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
この種のドラフト装置においては、異物の中でも特に、ドラフト時に繊維束から抜けてドラフトローラの周面に付着した繊維をどのように除去するかという課題がある。この繊維がドラフトローラの周面に巻き付くように付着してしまうと、ドラフトに与える影響が大きく、また繊維の除去自体も難しくなるからである。
【0009】
この点、上記特許文献1の構成では、間欠送りされる清掃ベルトでドラフトローラを清掃するため、繊維の除去効果は高いと考えられる。一方で、清掃ベルトを間欠送りするミドルローラがどのように回転するかについては、特許文献1に開示されていない。清掃ベルトを駆動するミドルローラが相手側のローラの回転に伴って従動回転する場合は、清掃ベルトの駆動負荷が原因でローラ同士のスリップが誘発される等してミドルローラの回転に影響が生じ、ドラフトの品質を低下させるおそれがある。
【0010】
特許文献2の構成では、静止するスクレーパ部材により、ローラ外周面に付着した繊維を効果的に掻き取ることができると考えられる。しかしながら、その異物がスクレーパ部材に溜まっていくばかりで吸引部材でも除去し切れない場合があり、清掃効果を安定して発揮できないおそれがあった。
【0011】
また、特許文献3の構成では、清掃用ベルトがサードボトムローラによって摩擦駆動されるため、清掃用ベルトの表面とローラの周面との間で速度差が殆ど出ない構成となっていた。このため、サードボトムローラの周面から繊維を剥がすようにして除去することが難しかった。
【0012】
本発明は以上の事情に鑑みてされたものであり、その目的は、繊維束のドラフトに影響を与えることなく、ドラフトローラの周面に付着した繊維を効果的に清掃できるドラフト装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0013】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段とその効果を説明する。
【0014】
本発明の第1の観点によれば、以下の構成のドラフト装置が提供される。即ち、このドラフト装置は、トップローラと、前記トップローラに対向するように配置されたボトムローラと、から構成されるドラフトローラ対を複数備え、前記ボトムローラを駆動することで当該ドラフトローラ対により繊維束をドラフトする。このドラフト装置は、清掃部材と、間欠送り部と、を備える。前記清掃部材は、前記ボトムローラに接触して前記ボトムローラを清掃する清掃面を有する。前記間欠送り部は、複数の前記ボトムローラのうち少なくとも何れかを駆動する駆動源から動力を得て、前記清掃部材を間欠送りする。
【0015】
これにより、ドラフトローラ対のうち駆動側に相当するボトムローラを清掃する清掃部材を、ボトムローラを駆動する駆動源の動力を確実に得て間欠送りすることができる。この結果、繊維束のドラフトに影響を与えることなく、ボトムローラに付着した繊維を効果的に清掃することができる。また、間欠送りのための特別の駆動源を設ける必要がないので、ドラフト装置全体のコストを抑制することができる。
【0016】
前記のドラフト装置においては、前記清掃部材は可撓性の無端ベルトであることが好ましい。
【0017】
これにより、ボトムローラを連続的に清掃することで清掃効果を高めることができる。また、清掃面を広く確保できるので、清掃部材に繊維が蓄積しても清掃効果が低下しにくい構成を実現することができる。
【0018】
前記のドラフト装置においては、前記無端ベルトを前記ボトムローラに押し付けるための付勢部材を備えることが好ましい。
【0019】
これにより、ボトムローラの周面に清掃部材の清掃面を安定して押し当てることができるので、良好に清掃を行うことができる。また、ボトムローラの位置の変更にも容易に対応することができる。
【0020】
前記のドラフト装置においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、このドラフト装置は、前記無端ベルトが巻き掛けられ、間欠回転することで当該無端ベルトを間欠送りする間欠駆動ローラを備える。前記間欠駆動ローラの周面には複数の凹部が形成されている。
【0021】
これにより、間欠駆動ローラと無端ベルトの間で滑りが生じにくくなるので、停止及び回転を繰り返す間欠駆動ローラに対して無端ベルトを良好に追従させることができる。このため、無端ベルトの確実な間欠送りを実現できる。
【0022】
前記のドラフト装置においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、このドラフト装置は、間隔をあけて配置された2つのベルト支持ローラを備える。前記無端ベルトは、長円状となるように、前記2つのベルト支持ローラに巻き掛けられる。
【0023】
これにより、長い無端ベルトを扁平状に配置できるので、ボトムローラの清掃のためのコンパクトな構成を実現できる。従って、清掃部材をボトムローラの周辺の狭い空間にも容易に配置することができる。また、1つの無端ベルトで2つ以上のボトムローラを清掃することも容易である。
【0024】
前記のドラフト装置においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、このドラフト装置は、前記繊維束の走行方向に並べられた少なくとも3つの前記ドラフトローラ対を備える。少なくとも3つのドラフトローラ対は、前記繊維束の走行方向下流側から順に配置された、フロントローラ対と、ミドルローラ対と、サードローラ対と、から構成される。前記ミドルローラ対のトップローラとボトムローラにはエプロンベルトがそれぞれ取り付けられる。前記清掃部材としての無端ベルトの清掃面は、前記サードローラ対のボトムローラに接触する。
【0025】
即ち、一般的に、繊維束の走行方向上流側に配置されるドラフトローラ間の距離は、下流側のドラフトローラ間の距離よりも長い。従って、エプロンベルトが取り付けられるドラフトローラ対より1つ上流側のドラフトローラであるサードローラには、繊維が特に巻き付き易い。この点、上記の構成では、清掃部材がサードローラ対のボトムローラを清掃するので、ボトムローラへの繊維の巻付きを効果的に防止することができる。
【0026】
前記のドラフト装置においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記ドラフトローラ対は前記繊維束の走行方向に略平行な方向に並べられている。前記駆動部は、前記繊維束の走行方向の最上流側に位置する前記ボトムローラを駆動するモータである。前記間欠送り部は、前記モータから動力を得て、前記清掃部材を間欠送りする。
【0027】
これにより、清掃部材を間欠送りするための動力を近い位置で取ることができるので、駆動伝達経路を簡素化できる。
【0028】
前記のドラフト装置においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記間欠送り部は、入力回転体と、出力回転体と、往復動アームと、偏心部と、連結部材と、ワンウェイクラッチと、を備える。前記入力回転体には、前記駆動源の動力が伝達される。前記出力回転体は、前記清掃部材を駆動する。前記往復動アームは、回転可能に支持される。前記偏心部は、前記入力回転体と一体的に回転する。前記連結部材は、前記偏心部と前記往復動アームとを連結する。前記ワンウェイクラッチは、前記往復動アームと前記出力回転体との間に配置される。
【0029】
これにより、無端ベルトの一方向の間欠送りを実現できるため、ボトムローラに付着した繊維を確実に清掃することができる。
【0030】
前記のドラフト装置においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、このドラフト装置は、ドラフト装置本体と、清掃ユニットと、を備える。前記ドラフト装置本体は、前記ドラフトローラ対を支持する。前記清掃ユニットは、前記清掃部材を支持する。前記清掃ユニットは前記ドラフト装置本体に対して着脱可能に構成されている。
【0031】
これにより、清掃部材の交換等のメンテナンス作業を簡単に行うことができる。
【0032】
前記のドラフト装置においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記間欠送り部は、入力回転体と、出力回転体と、往復動アームと、偏心部と、連結部材と、ワンウェイクラッチと、を備える。前記入力回転体には、前記駆動源の動力が伝達される。前記出力回転体は、前記清掃部材を駆動する。前記往復動アームは、回転可能に支持される。前記偏心部は、前記入力回転体と一体的に回転する。前記連結部材は、前記偏心部と前記往復動アームとを連結する。前記ワンウェイクラッチは、前記往復動アームと前記出力回転体との間に配置される。前記清掃ユニットには少なくとも、前記出力回転体と、前記往復動アームと、前記ワンウェイクラッチと、が配置されている。
【0033】
これにより、清掃部材やそれに関連する部品群をまとめて、清掃ユニットとして一体的に取り扱うことができる。この結果、メンテナンス作業を効率的に行うことができる。
【0034】
本発明の第2の観点によれば、以下の構成の紡績機が提供される。即ち、この紡績機は、ドラフト装置と、紡績装置と、巻取装置と、を備える。前記紡績装置は、前記ドラフト装置でドラフトされた繊維束を空気流にて紡績して紡績糸を生成する。前記巻取装置は、前記紡績装置で生成された前記紡績糸をパッケージに巻き取る。
【0035】
これにより、ボトムローラが清掃された状態で繊維束をドラフトし、この繊維束から生成された紡績糸でパッケージを巻き取るため、品質の高いパッケージを得ることができる。また、ドラフト装置での繊維の滞留を抑制できるため、ドラフト装置に繊維が過度に蓄積する等して紡績機の運転が停止することがない。従って、紡績機の稼動効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の一実施形態に係る精紡機の全体的な構成を示す正面図。
【図2】紡績ユニットの側面図。
【図3】紡績装置の断面図。
【図4】バックボトムローラ及びサードボトムローラの周辺の構成を示す側面図。
【図5】取り外された状態の清掃カセットを示す側面断面図。
【発明を実施するための形態】
【0037】
次に、本発明の一実施形態に係る精紡機(紡績機)について、図面を参照して説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る精紡機1の全体的な構成を示す正面図である。図2は、紡績ユニット2の側面図である。図3は、紡績装置9の断面図である。
【0038】
図1に示す紡績機としての精紡機1は、並設された多数の紡績ユニット2を備えている。この精紡機1は、糸継台車3と、ブロアボックス80と、原動機ボックス5と、を備えている。
【0039】
図1に示すように、各紡績ユニット2は、上流から下流へ向かって以下の順に配置された、ドラフト装置7と、紡績装置9と、糸弛み取り装置(糸貯留装置)12と、巻取装置13と、を主要な構成として備えている。なお、本明細書において「上流」及び「下流」とは、紡績時での繊維束及び糸の走行方向における上流及び下流を意味するものとする。各紡績ユニット2は、ドラフト装置7から送られてくる繊維束8を紡績装置9で紡績して紡績糸10を生成し、この紡績糸10を巻取装置13で巻き取ってパッケージ45を形成する。
【0040】
ドラフト装置7は、精紡機1が備えるフレーム6の上端近傍に設けられている。ドラフト装置7は、図略のスライバケースからスライバガイドを介して供給される繊維束(スライバ)8を、所定の幅になるまでドラフト(繊維束を引き伸ばすこと)するものである。ドラフト装置7でドラフトされた繊維束8は、紡績装置9に供給される。
【0041】
紡績装置9は、ドラフト装置7から供給された繊維束8に撚りを加えて、紡績糸10を生成する。本実施形態では、紡績装置9として、旋回気流を利用して繊維束8に撚りを与える空気式のものが採用されている。図3に示すように、紡績装置9は、ノズルホルダ63と、中空ガイド軸体23と、繊維ガイド(繊維案内部)22と、を主に備えている。
【0042】
ノズルホルダ63と中空ガイド軸体23の間には、紡績室26が形成されている。ノズルホルダ63には、紡績室26内に空気を噴出する空気噴出ノズル27が形成されている。繊維ガイド22には、紡績室26内に繊維束8を導入する導入口21が形成されている。空気噴出ノズル27は、紡績室26内に空気を噴出して旋回気流を発生させることができるように構成されている。この構成で、ドラフト装置7から供給された繊維束8は、導入口21を有する繊維ガイド22によって紡績室26内に案内される。紡績室26内において、繊維束8は、旋回気流によって中空ガイド軸体23の周囲を振り回されることにより、撚りが加えられて紡績糸10となる。撚りが加えられた紡績糸10は、中空ガイド軸体23の軸中心に形成された糸通路29を通って、下流側の糸出口(図略)から紡績装置9の外部に送出される。
【0043】
なお、前記導入口21には、その先端を紡績室26内に向けるようにして配置された針状のガイドニードル22aが配置されている。導入口21から導入される繊維束8は、このガイドニードル22aに巻き掛かるようにして紡績室26内に案内される。これにより、紡績室26内に導入される繊維束8の状態を安定させることができる。また、このようにガイドニードル22aに巻き掛かるように繊維束8が案内されるので、紡績室26内で繊維に撚りが加えられても、繊維ガイド22よりも上流側に撚りが伝播することが防止される。これにより、紡績装置9による加撚がドラフト装置7に影響を与えることを防止できる。
【0044】
紡績装置9の下流には、糸貯留装置12が設けられている。この糸貯留装置12は、図2に示すように、糸貯留ローラ14と、当該糸貯留ローラ14を回転駆動する電動モータ25と、を備えている。
【0045】
糸貯留ローラ14は、その外周面に一定量の紡績糸10を巻き付けて一時的に貯留することができるように構成されている。糸貯留ローラ14の外周面に紡績糸10を巻き付けた状態で当該糸貯留ローラ14を所定の回転速度で回転させることにより、糸貯留装置12は、紡績装置9から紡績糸10を所定の速度で引き出して下流側に搬送することができる。
【0046】
巻取装置13は、支軸73まわりに揺動可能に支持されたクレードルアーム71を備える。このクレードルアーム71は、紡績糸10を巻回するためのボビン48を回転可能に支持することができる。
【0047】
また、前記巻取装置13は、巻取ドラム72と、トラバース装置75と、を備えている。巻取ドラム72は、前記ボビン48やそれに紡績糸10を巻回して形成されるパッケージ45の外周面に接触して駆動できるように構成されている。また、トラバース装置75は、紡績糸10に係合可能なトラバースガイド76を備えている。この構成で、トラバースガイド76を図略の駆動手段によって往復動させながら巻取ドラム72を図略の電動モータによって駆動することで、巻取装置13は、巻取ドラム72に接触するパッケージ45を回転させ、紡績糸10を綾振りしつつ巻き取るようになっている。
【0048】
糸継台車3は、図1及び図2に示すように、スプライサ(糸継装置)43と、サクションパイプ44と、サクションマウス46と、を備えている。糸継台車3は、ある紡績ユニット2で糸切れや糸切断が発生すると、前記レール41上を当該紡績ユニット2まで走行し、停止するように構成されている。前記サクションパイプ44は、軸を中心に上下方向に回動しながら、紡績装置9から送出される糸端を吸い込みつつ捕捉してスプライサ43へ案内する。サクションマウス46は、軸を中心に上下方向に回動しながら、前記巻取装置13に支持されたパッケージ45から糸端を吸引しつつ捕捉してスプライサ43へ案内する。スプライサ43は、案内された糸端同士の糸継ぎを行う。
【0049】
また、紡績装置9と糸貯留装置12との間の位置には、ヤーンクリアラ52が設けられている。紡績装置9で紡出された紡績糸10は、糸貯留装置12で巻き取られる前に前記ヤーンクリアラ52を通過するようになっている。ヤーンクリアラ52は、走行する紡績糸10を図略のセンサによって監視し、紡績糸10の糸欠点(糸の太さなどに異常がある箇所や糸に含まれる異物)を検出した場合に、糸欠点検出信号を図示しないユニットコントローラへ送信する。
【0050】
前記ユニットコントローラは、前記糸欠点検出信号を受信すると、直ちにカッタ57で紡績糸10を切断し、更にドラフト装置7や紡績装置9等を停止させるとともに、巻取装置13における巻き取りも停止させる。また、ユニットコントローラは糸継台車3に制御信号を送り、当該紡績ユニット2の前まで走行させる。糸継台車3は、サクションパイプ44及びサクションマウス46によって紡績装置9側の糸端とパッケージ45側の糸端をスプライサ43に案内し、当該スプライサ43において糸継動作を行う。以上の糸継動作により、糸欠点の箇所が除去され、パッケージ45への紡績糸10の巻取りを再開できる。なお、カッタ57を省略して、巻取装置13の駆動を継続した状態でドラフト装置7の駆動を停止することにより、紡績糸10を引きちぎるように切断する構成でも良い。また、紡績装置9への空気の供給を停止することにより紡績糸10の生成を中止して、紡績糸10を切断するようにしても良い。
【0051】
次に、ドラフト装置7について詳しく説明する。
【0052】
ドラフト装置7は、繊維束8を導入するための筒状のスライバガイド15を備えるとともに、複数のドラフトローラを備えている。各ドラフトローラは、2つ1組でドラフトローラ対を構成している。本実施形態のドラフト装置7は、上流側から以下の順に配置された、ドラフトローラ16及び66からなるバックローラ対、ドラフトローラ17及び67からなるサードローラ対、ドラフトローラ19及び69からなるミドルローラ対、並びにドラフトローラ20及び70からなるフロントローラ対、の4つのドラフトローラ対を備えた、いわゆる4線式のドラフト装置として構成されている。
【0053】
各ドラフトローラ対において、精紡機1の正面側のドラフトローラをトップローラ、精紡機1の背面側のドラフトローラをボトムローラと称する。トップローラは、上流側から順に、バックトップローラ16、サードトップローラ17、エプロンベルト18を装架したミドルトップローラ19、及びフロントトップローラ20となっている。一方、ボトムローラは、上流側から順に、バックボトムローラ66、サードボトムローラ67、エプロンベルト68を装架したミドルボトムローラ69、及びフロントボトムローラ70となっている。
【0054】
各トップローラ16,17,19,20は、その外周面がゴム等の弾性部材から構成されているローラである。また各トップローラ16,17,19,20は、図略の軸受等を介して、その軸線を中心に回転可能に支持されている。一方、各ボトムローラ66,67,69,70は金属製のローラであり、その軸線を中心に回転駆動されるように構成されている。各ドラフトローラ対において、トップローラとボトムローラは対向するように配置されている。
【0055】
ドラフト装置7は、各トップローラ16,17,19,20を、それに対向するボトムローラ66,67,69,70に向かって付勢する付勢手段(図示略)を有している。これにより、トップローラ16,17,19,20の外周面が,ボトムローラ66,67,69,70の外周面にそれぞれ弾性的に接触する。この構成で、ボトムローラ66,67,69,70を回転駆動することにより、これに対向して接触するトップローラ16,17,19,20も従動回転する。
【0056】
ドラフト装置7は、回転するトップローラ16,17,19,20とボトムローラ66,67,69,70の間で繊維束8をニップする(挟み込む)ことにより、当該繊維束8を下流側に向けて搬送するように構成されている。ドラフト装置7においては、下流側のドラフトローラ対ほど回転速度が速くなるように構成されている。従って、繊維束8は、ドラフトローラ対とドラフトローラ対との間で搬送される間に引き伸ばされ(ドラフトされ)、これに伴い、下流側にいくほど繊維束8の幅が細くなっていく。
【0057】
各ボトムローラ66,67,69,70の回転速度を適宜設定することにより、繊維束8がドラフトされる程度を変更できるので、所望の幅になるようにドラフトした繊維束8を紡績装置9に対して供給することができる。これにより、紡績装置9において、所望の番手(太さ)の紡績糸10を紡績することができる。
【0058】
次に、上記のバックボトムローラ66及びサードボトムローラ67を駆動するための構成、及びこれらの周面を清掃するための構成について、図4及び図5を参照して説明する。図4は、バックボトムローラ66及びサードボトムローラ67の周辺の構成を示す側面図である。図5は、取り外された状態の清掃カセット30を示す側面断面図である。
【0059】
ドラフト装置7は、バックボトムローラ66を支持するための第1支持プレート81と、サードボトムローラ67を支持するための第2支持プレート82と、を備えている。これらの支持プレート81及び82は、図4には示されていないが、精紡機1が備えるフレーム6に取り付けられている。
【0060】
バックボトムローラ66は、第1支持プレート81の上部に回転可能に支持されている。バックボトムローラ66のローラ軸には連結プーリ83が固定されており、この連結プーリ83は、バックボトムローラ66と一体的に回転できるように構成されている。更に、第1支持プレート81には清掃入力プーリ(入力回転体)84が回転可能に支持されている。この清掃入力プーリ84は、繊維束8の走行経路からみてバックボトムローラ66よりも遠い位置に、かつ、後述のバックボトムローラ駆動モータ91よりも近い位置に配置されている。この清掃入力プーリ84が備えるプーリ軸の端面には偏心ピン(偏心部)85が凸状に形成されており、この偏心ピン85に、細長く形成されたリンク部材(連結部材)86の一端が回転可能に連結されている。
【0061】
第1支持プレート81の下方(繊維束8の走行経路から遠い側)にはバックボトムローラ駆動モータ(駆動源)91が配置され、このバックボトムローラ駆動モータ91の出力軸には出力プーリ92が固定されている。この出力プーリ92と、前記連結プーリ83と、前記清掃入力プーリ84と、は歯付きのプーリとして構成されている。この3つのプーリ92,83,及び84は、歯付きの無端ベルトである駆動ベルト93が巻き掛けられることで互いに連結されている。
【0062】
サードボトムローラ67は、第2支持プレート82の上部(繊維束8の走行経路に近い側の部分)に回転可能に支持されている。サードボトムローラ67のローラ軸には連結プーリ87が固定されており、この連結プーリ87は、サードボトムローラ67と一体的に回転することができる。
【0063】
第2支持プレート82の下方(繊維束8の走行経路から遠い側)にはサードボトムローラ駆動モータ94が配置され、このサードボトムローラ駆動モータ94の出力軸には出力プーリ95が固定されている。この出力プーリ95と、前記連結プーリ87と、は歯付きのプーリとして構成されており、この2つのプーリ95及び87は、歯付きの無端ベルトである駆動ベルト96が巻き掛けられることで互いに連結されている。
【0064】
第1支持プレート81には、板状の清掃支持フレーム88が固定される。この清掃支持フレーム88には貫通状の取付孔89が形成されている。この取付孔89に、後述する清掃カセット30のハウジング31が有する突起55を差し込むことができる。なお、この清掃支持フレーム88は、繊維束8をドラフト装置7に案内するためのスライバガイド15を支持する役割をも兼ねている。
【0065】
清掃カセット(清掃ユニット)30は、清掃の対象であるバックボトムローラ66及びサードボトムローラ67と、これらのドラフトローラ66及び67をそれぞれ駆動するバックボトムローラ駆動モータ91及びサードボトムローラ駆動モータ94と、の間に差し込まれるようにして配置される。この清掃カセット30は、ハウジング31と、揺動アーム(往復動アーム)32と、駆動ローラ(ベルト支持ローラ、間欠駆動ローラ、出力回転体)33と、ワンウェイクラッチ34と、従動ローラ支持アーム35と、従動ローラ(ベルト支持ローラ)36と、清掃ベルト(清掃部材)37と、を備えている。
【0066】
ハウジング31は、合成樹脂あるいは金属により、ドラフトローラ16,17の軸線方向で見たときに細長い形状に構成されている。このハウジング31は、バックボトムローラ66及びサードボトムローラ67に面する部分において開放された箱状に形成されている。ハウジング31の底部には、清掃支持フレーム88の取付孔89にほぼ対応した形状の突起55が形成されており、この突起55が取付孔89に差し込まれることで、ハウジング31(清掃カセット30)を清掃支持フレーム88に取り付けることができる。
【0067】
ハウジング31には、当該ハウジング31を清掃支持フレーム88に固定するための引掛け部材60が取り付けられている。この引掛け部材60は、挟みアーム61を備えており、挟みアーム61とハウジング31との間で清掃支持フレーム88を挟み込むように構成されている。挟みアーム61の先端には、取付孔89の縁部に引っ掛けることが可能な爪部62が形成されている。引掛け部材60には、挟みアーム61及び爪部62をハウジング31に近づける向きに付勢する図示しない付勢バネが取り付けられている。
【0068】
上記の構成で、図4には清掃カセット30がドラフト装置7に装着された様子が示されている。この状態では、清掃支持フレーム88の取付孔89にハウジング31の突起55が差し込まれるとともに、引掛け部材60の挟みアーム61が、付勢バネの付勢力により、先端側の爪部62を当該取付孔89に反対側から差し込んで引っ掛けている。これにより、清掃カセット30を清掃支持フレーム88に対して動かないように固定することができる。
【0069】
一方、メンテナンス作業を行う場合においては、作業者は引掛け部材60に指を掛けて図4の鎖線で示すように回転させることで、爪部62を取付孔89から引き抜き、更に突起55を取付孔89から抜くようにハウジング31を浮かせながら繊維束8の走行方向と反対側に(即ち、図4の白抜き矢印の向きに)引き抜くことで、ドラフト装置7から清掃カセット30を取り外すことができる。図5には、取り外された状態の清掃カセット30の断面図が示されている。
【0070】
揺動アーム32は、図4に示すようにハウジング31の一側の側面(繊維束8の走行方向に略平行な方向に位置している側面)に回転可能に支持されている。揺動アーム32の先端部は、リンク部材86を介して偏心ピン85に連結されている。この構成で、清掃入力プーリ84が回転すると、偏心ピン85の位置が変化するのに伴い、揺動アーム32は小さなストロークで往復するように回転する。
【0071】
リンク部材86には、揺動アーム32と連結するために、上側が開放されたC字状の凹部56が形成されている。一方、揺動アーム32の先端には、連結ピン58が固定されている。揺動アーム32はある程度の弾性変形が可能な素材(本実施形態では、合成樹脂)で構成されており、前記凹部56を変形させるようにしながら連結ピン58を嵌め込むことで、リンク部材86と揺動アーム32とを連結することができる。このようにリンク部材86が揺動アーム32に対して着脱可能となっているので、清掃カセット30のドラフト装置7への取付け/取外しを容易に行うことができる。
【0072】
なお、リンク部材86は、偏心ピン85側からみて、凹部56の形成部位から更に延びるように形成された延長部59を有している。作業者は、この延長部59を指で押し下げるように力を加えることで、凹部56から連結ピン58を簡単に外して、リンク部材86と揺動アーム32との連結を解除することができる。
【0073】
駆動ローラ33は、揺動アーム32のアーム軸と軸線を一致させるようにして、ハウジング31に回転可能に支持されている。この駆動ローラ33は、バックボトムローラ66及びサードボトムローラ67よりもローラ軸方向に伸びる幅が若干広いローラとして構成されている。図5に示すように、駆動ローラ33の周面には、軸方向に細長い溝(凹部)33aが周方向に等間隔で並べて形成されている。
【0074】
ワンウェイクラッチ34は、揺動アーム32と駆動ローラ33の間に介在されている。このワンウェイクラッチ34は、揺動アーム32の一方向の回転(具体的には、図4における時計回りの回転)を駆動ローラ33に伝達する一方、それと反対の回転(図4における反時計回りの回転)は駆動ローラ33に伝達しないように構成されている。これにより、駆動ローラ33の間欠駆動を実現することができる。
【0075】
従動ローラ支持アーム35は、細長く形成されたアーム状の部材であり、その第1の先端がハウジング31に回転可能に支持され、第2の先端側の一部がハウジング31から突出するように配置されている。この従動ローラ支持アーム35には、捩りコイルバネ状の付勢バネ38が取り付けられる。この付勢バネ38は、そのバネ力によって、従動ローラ支持アーム35の第2の先端をサードボトムローラ67側に近づける向き(上昇させる向き)に付勢している。
【0076】
図5に示すように、従動ローラ支持アーム35の長手方向中途部には、当て面35aが形成されている。当て面35aは、付勢バネ38の作用による従動ローラ支持アーム35の回転に伴い、清掃ベルト37の内周面を上へ(外側へ)押して、当該清掃ベルト37の清掃面をバックボトムローラ66及びサードボトムローラ67に対して押し当てるように構成されている。
【0077】
ここで、当て面35aが清掃ベルト37を押し上げる位置は、図4に示すように、バックボトムローラ66及びサードボトムローラ67の間の位置である。従って、清掃ベルト37をジグザグ状に少し湾曲させながら、バックボトムローラ66及びサードボトムローラ67に対して広面積で接触させることができる。これにより、清掃ベルト37によりバックボトムローラ66及びサードボトムローラ67を良好に清掃することができる。
【0078】
従動ローラ36は、図4に示すように、従動ローラ支持アーム35の第2の先端に回転可能に支持されている。この従動ローラ36は、駆動ローラ33とほぼ等しい径を有し、また、バックボトムローラ66及びサードボトムローラ67よりもローラ軸方向に伸びる幅が若干広いローラとして構成されている。
【0079】
清掃ベルト37は、バックボトムローラ66及びサードボトムローラ67よりもローラ軸方向に伸びる幅が若干広い無端状の部材として構成されている。そして、清掃ベルト37は、側面視でほぼ長円状となるように、駆動ローラ33と従動ローラ36とに巻き掛けられている。これにより、清掃ベルト37の形状は、繊維束8の走行経路にほぼ平行な扁平状とされている。
【0080】
前述のとおり、従動ローラ支持アーム35には付勢バネ38のバネ力が作用しており、これによって前記従動ローラ36が押し上げられるので、清掃ベルト37の外周面(清掃面)は、バックボトムローラ66及びサードボトムローラ67の周面に対して適宜の力で押し付けられる。
【0081】
また、上記のように清掃ベルト37を2つのローラ(駆動ローラ33及び従動ローラ36)で扁平状に支持することで、並べて配置されたバックボトムローラ66及びサードボトムローラ67の両方に、付勢バネ38の作用で清掃ベルト37をバランス良く押し当てることができる。また、ドラフト装置7では、紡績する繊維の種類や用途に応じてドラフトローラ対同士の間隔(ゲージ)を変更すべく、ボトムローラ66,67,69,70の位置を調整することがある。本実施形態によれば、バックボトムローラ66及びサードボトムローラ67を繊維束8の走行方向で変位させても、扁平状の清掃ベルト37を安定して接触させ、良好な清掃効果を発揮させることができる。
【0082】
以上の構成のドラフト装置7において、第1支持プレート81、第2支持プレート82、バックボトムローラ駆動モータ91、サードボトムローラ駆動モータ94、連結プーリ83と87、及び駆動ベルト93と96等は、繊維束8をドラフトするボトムローラ(バックボトムローラ66及びサードボトムローラ67)を支持して駆動するドラフト装置本体7xを構成する。一方で、清掃入力プーリ84、リンク部材86、揺動アーム32、駆動ローラ33、及びワンウェイクラッチ34等は、清掃ベルト37を間欠送りするための間欠送り装置(間欠送り部)101を構成する。
【0083】
この間欠送り装置101が備える清掃入力プーリ84は、バックボトムローラ66を駆動するバックボトムローラ駆動モータ91の出力軸と、駆動ベルト93によって機械的に連結される。このように、間欠送り装置101は、上流側の2つのボトムローラ66及び67を清掃する清掃ベルト37を間欠送りするために、最も上流側のバックボトムローラ66の駆動源から動力を得ている。従って、間欠送りのための動力を近い位置から取ることができるので、駆動伝達経路を簡素化することができる。
【0084】
次に、上記の構成のドラフト装置7において、バックボトムローラ66及びサードボトムローラ67の駆動と、それに伴う清掃ベルト37の間欠送りについて説明する。
【0085】
バックボトムローラ駆動モータ91に駆動信号が送られ、出力プーリ92が駆動されると、この出力プーリ92に駆動ベルト93を介して連結されている連結プーリ83が回転し、これによりバックボトムローラ66が回転駆動される。このとき、バックトップローラ16は、バックボトムローラ66の回転に伴って従動回転される。
【0086】
また、サードボトムローラ駆動モータ94に駆動信号が送られ、出力プーリ95が駆動されると、この出力プーリ95に駆動ベルト96を介して連結されている連結プーリ87が回転し、これによりサードボトムローラ67が回転駆動される。このとき、サードトップローラ17は、サードボトムローラ67の回転に伴って従動回転される。
【0087】
以上により、2つのドラフトローラ対の間で繊維束8をドラフトしながら、当該繊維束8を下流側のドラフトローラ対へ送ることができる。
【0088】
そして、上記のようにバックボトムローラ駆動モータ91の出力プーリ92が回転するのに伴い、当該出力プーリ92と駆動ベルト93を介して連結された清掃入力プーリ84が回転する。これにより、清掃入力プーリ84のプーリ軸に設けられている偏心ピン85の位置が変化するので、この偏心ピン85にリンク部材86を介して連結された揺動アーム32が回転する。具体的には、清掃入力プーリ84が1回転する毎に、揺動アーム32は所定の角度範囲内で1回の往復回転を行う。
【0089】
ワンウェイクラッチ34は、揺動アーム32が図4の時計回りに回転するときは当該回転を駆動ローラ33に伝達し、図4の反時計回りに回転するときは回転の伝達を遮断する。これにより、駆動ローラ33を図4の時計回りに間欠的に回転させ、清掃ベルト37を間欠送りすることができる。
【0090】
清掃ベルト37は、付勢バネ38によりバックボトムローラ66及びサードボトムローラ67に押し付けられながら、上記のように間欠送りされる。これにより、清掃ベルト37が停止しているときは、その表面でバックボトムローラ66及びサードボトムローラ67の周面が擦られることで繊維を剥がし、清掃ベルト37が送られることで、剥がされた繊維を清掃ベルト37側に移行させることができる。そして、上記した清掃ベルト37の停止と送りとを交互に反復することで、バックボトムローラ66及びサードボトムローラ67の周面の繊維を効果的に除去できるので、バックボトムローラ66及びサードボトムローラ67への繊維の巻付きを防止することができる。
【0091】
以上に説明したように、本実施形態のドラフト装置7は、トップローラ16,17,19,20と、トップローラ16,17,19,20に対向するように配置されたボトムローラ66,67,69,70と、から構成されるドラフトローラ対を複数(4対)備える。そして、ドラフト装置7は、ボトムローラ66,67,69,70を駆動することで、当該ドラフトローラ対により繊維束8をドラフトする。このドラフト装置7は、清掃ベルト37と、間欠送り装置101と、を備える。清掃ベルト37は、バックボトムローラ66及びサードボトムローラ67に接触して、当該バックボトムローラ66及びサードボトムローラ67を清掃する清掃面を有する。間欠送り装置101は、4つのうち1つのボトムローラ(バックボトムローラ66)を駆動するバックボトムローラ駆動モータ91から動力を得て、清掃ベルト37を間欠送りする。
【0092】
これにより、ドラフトローラ対のうち駆動側に相当するボトムローラ(バックボトムローラ66及びサードボトムローラ67)を清掃する清掃ベルト37を、バックボトムローラ66を駆動するバックボトムローラ駆動モータ91の動力を確実に得て間欠送りすることができる。この結果、繊維束8のドラフトに影響を与えることなく、バックボトムローラ66及びサードボトムローラ67に付着した繊維を効果的に清掃することができる。また、間欠送りのための特別の駆動源を設ける必要がないので、ドラフト装置7全体のコストを抑制することができる。
【0093】
また、本実施形態のドラフト装置7においては、清掃ベルト37は可撓性の無端ベルトとして構成されている。
【0094】
これにより、バックボトムローラ66及びサードボトムローラ67を連続的に清掃することで清掃効果を高めることができる。また、清掃面を広く確保できるので、清掃ベルト37に繊維が蓄積しても清掃効果が低下しにくい構成を実現することができる。
【0095】
また、本実施形態のドラフト装置7は、清掃ベルト37をバックボトムローラ66及びサードボトムローラ67に押し付けるための付勢バネ38を備える。
【0096】
これにより、バックボトムローラ66及びサードボトムローラ67の周面に清掃ベルト37の清掃面を安定して押し当てることができるので、良好に清掃を行うことができる。また、上記のゲージ変更のためにバックボトムローラ66及びサードボトムローラ67の位置を変更させた場合でも、清掃効果が低下しにくい構成とすることができる。
【0097】
また、本実施形態のドラフト装置7は、清掃ベルト37が巻き掛けられ、間欠回転することで当該清掃ベルト37を間欠送りする駆動ローラ33を備える。駆動ローラ33の周面には複数の溝33aが形成されている。
【0098】
これにより、駆動ローラ33と清掃ベルト37の間でスリップが生じにくくなるので、停止及び回転を繰り返す駆動ローラ33に対して清掃ベルト37を良好に追従させることができる。このため、清掃ベルト37の確実な間欠送りを実現できる。
【0099】
また、本実施形態のドラフト装置7は、間隔をあけて配置された2つのベルト支持ローラ(駆動ローラ33及び従動ローラ36)を備える。そして、清掃ベルト37は、長円状となるように、駆動ローラ33及び従動ローラ36に巻き掛けられる。
【0100】
これにより、長い清掃ベルト37を扁平状に配置できるので、バックボトムローラ66及びサードボトムローラ67の清掃のためのコンパクトな構成を実現できる。従って、ボトムローラ66,67,69,及び70の周辺(バックボトムローラ66及びサードボトムローラ67の下方)の狭い空間であっても、清掃ベルト37を容易に配置することができる。また、1つの清掃ベルト37で2つのボトムローラ66,67を容易に清掃することができる。
【0101】
また、本実施形態のドラフト装置7は、繊維束8の走行方向に並べられた4つのドラフトローラ対を備える。この4つのドラフトローラ対は、繊維束8の走行方向の下流側から順に配置された、フロントローラ対(フロントトップローラ20及びフロントボトムローラ70からなるドラフトローラ対)と、ミドルローラ対(ミドルトップローラ19及びミドルボトムローラ69からなるドラフトローラ対)と、サードローラ対(サードトップローラ17及びサードボトムローラ67からなるドラフトローラ対)と、から構成される3つのドラフトローラ対を含んでいる。ミドルローラ対を構成するミドルトップローラ19及びミドルボトムローラ69には、エプロンベルト18及び68がそれぞれ取り付けられる。そして、清掃ベルト37の清掃面は、サードローラ対のサードボトムローラ67に接触する。
【0102】
即ち、一般的に、繊維束8の走行方向上流側に配置されるドラフトローラ間の距離は、下流側のドラフトローラ間の距離よりも長い。従って、エプロンベルト18及び68が取り付けられるミドルローラ対より1つ上流側のサードローラ対(サードトップローラ17及びサードボトムローラ67)には、繊維が特に巻き付き易い。この点、上記の構成では、清掃ベルト37がサードボトムローラ67を清掃するので、ボトムローラへの繊維の巻付きを効果的に防止することができる。
【0103】
また、本実施形態のドラフト装置7において、4つのドラフトローラ対は繊維束8の走行方向に並べられている。そして、間欠送り装置101は、繊維束8の走行方向の最も上流側に位置するドラフトローラ対(バックトップローラ16及びバックボトムローラ66からなるドラフトローラ対)のボトムローラを駆動するバックボトムローラ駆動モータ91から動力を得て、清掃ベルト37を間欠送りする。
【0104】
これにより、清掃ベルト37を間欠送りするための動力を近い位置で取ることができるので、駆動伝達経路を簡素化できる。
【0105】
また、本実施形態のドラフト装置7において、間欠送り装置101は、清掃入力プーリ84と、駆動ローラ33と、揺動アーム32と、偏心ピン85と、リンク部材86と、ワンウェイクラッチ34と、を備える。清掃入力プーリ84には、バックボトムローラ駆動モータ91の駆動力が伝達される。駆動ローラ33は、清掃ベルト37を駆動する。揺動アーム32は、回転可能に支持される。偏心ピン85は、清掃入力プーリ84と一体的に回転する。リンク部材86は、偏心ピン85と、揺動アーム32と、を連結する。ワンウェイクラッチ34は、揺動アーム32と駆動ローラ33との間に配置される。
【0106】
これにより、清掃ベルト37の一方向の間欠送りを実現できるため、バックボトムローラ66及びサードボトムローラ67に付着した繊維を確実に清掃することができる。
【0107】
また、本実施形態のドラフト装置7は、ドラフト装置本体7xと、清掃カセット30と、を備える。ドラフト装置本体7xは、ドラフトローラ対を支持する。清掃カセット30は、清掃ベルト37を支持する。清掃カセット30は、ドラフト装置本体7xに着脱可能に構成されている。
【0108】
これにより、清掃ベルト37の交換等のメンテナンス作業を簡単に行うことができる。
【0109】
また、本実施形態のドラフト装置7において、清掃カセット30には少なくとも、駆動ローラ33と、揺動アーム32と、ワンウェイクラッチ34と、が配置されている。
【0110】
これにより、清掃ベルト37やそれに関連する部品群をまとめて、清掃カセット30として一体的に取り扱うことができる。この結果、メンテナンス作業を効率的に行うことができる。
【0111】
また、本実施形態の精紡機1は、ドラフト装置7と、紡績装置9と、巻取装置13と、を備える。紡績装置9は、ドラフト装置7でドラフトされた繊維束8を空気流にて紡績して紡績糸10を生成する。巻取装置13は、紡績装置9で生成された紡績糸10をパッケージ45に巻き取る。
【0112】
これにより、バックボトムローラ66及びサードボトムローラ67が清掃された状態で繊維束8をドラフトし、この繊維束8から生成された紡績糸10をパッケージ45に巻き取るため、品質の高いパッケージ45を得ることができる。また、ドラフト装置7での繊維の滞留を抑制できるため、ドラフト装置7に繊維が過度に蓄積する等して精紡機1の運転が停止することがない。従って、精紡機1の稼動効率を向上させることができる。
【0113】
以上に本発明の好適な実施の形態を説明したが、上記の構成は例えば以下のように変更することができる。
【0114】
凸状の偏心ピン85を清掃入力プーリ84のプーリ軸に設けることに代えて、凹状の偏心凹部を清掃入力プーリ84の適宜の場所に設け、この偏心凹部に、リンク部材86の一端に取り付けたピンを差し込んで連結するように構成することができる。また、リンク部材86と揺動アーム32との連結構造においても、凹部と連結ピンの関係を逆にすることができる。
【0115】
リンク部材86と揺動アーム32との間を着脱可能にすることに代えて、あるいはそれに加えて、偏心ピン85とリンク部材86との間を着脱可能に構成することができる。
【0116】
バックボトムローラ駆動モータ91の出力回転をバックボトムローラ66及び間欠送り装置101に伝達する構成としては、無端状の駆動ベルト93に限らず、それ以外の駆動伝達部材(例えばギア等)を用いて実現することもできる。
【0117】
間欠送り装置101に入力される動力は、バックボトムローラ駆動モータ91に代えて、サードボトムローラ駆動モータ94から得るように変更することができる。また、バックボトムローラ66及びサードボトムローラ67を駆動するモータを共通化して、当該モータから間欠送り装置101が動力を得るように構成することができる。
【0118】
駆動ローラ33の周面の形状は、軸方向に細長い溝33aを周方向に並べて形成することに代えて、例えば円形の凹部を多数形成するように変更することができる。
【0119】
清掃ベルト37で清掃する対象としては、バックボトムローラ66及びサードボトムローラ67の両方とすることに限らず、何れか一方のみでも良い。また、ミドルボトムローラ69(エプロンベルト)やフロントボトムローラ70を清掃するために、上記の清掃ベルト37が適用されても良い。更には、3つ以上のボトムローラを1つの清掃ベルト37で清掃する構成にしても良い。
【0120】
紡績装置としては、上記実施形態のように一方向の旋回空気流を発生させる空気噴出ノズル27で撚りを掛ける構成に限らず、様々な紡績方法を採用することができる。例えば、互いに向きが反対の旋回空気流を発生させる一対のノズルを備え、繊維束に対して互いに反対方向の撚りを同時に掛ける構成とすることができる。
【0121】
糸走行方向において紡績装置9と糸貯留装置12との間の位置に、1対のローラからなる糸送り装置を配置するように変更することができる。
【0122】
上記実施形態では、紡績ユニット2において、機台高さ方向の上から下に紡績糸10が走行している。しかしながら、紡績ユニットを、機台高さ方向の下から上に紡績糸が走行する構成に変更することもできる。
【0123】
紡績装置9は上記実施形態のように空気紡績式のものに限られず、他の形式の紡績装置を備えた紡績機にも本願発明の構成を適用することができる。
【符号の説明】
【0124】
1 精紡機(紡績機)
7 ドラフト装置
7x ドラフト装置本体
9 紡績装置
13 巻取装置
16 バックトップローラ(トップローラ、ドラフトローラ)
17 サードトップローラ(トップローラ、ドラフトローラ)
18 エプロンベルト
19 ミドルトップローラ(トップローラ、ドラフトローラ)
20 フロントトップローラ(トップローラ、ドラフトローラ)
30 清掃カセット(清掃ユニット)
32 揺動アーム(往復動アーム)
33 駆動ローラ(ベルト支持ローラ、間欠駆動ローラ、出力回転体)
33a 溝(凹部)
34 ワンウェイクラッチ
36 従動ローラ(ベルト支持ローラ)
37 清掃ベルト(清掃部材)
38 付勢バネ(付勢部材)
66 バックボトムローラ(ボトムローラ、ドラフトローラ)
67 サードボトムローラ(ボトムローラ、ドラフトローラ)
68 エプロンベルト
69 ミドルボトムローラ(ボトムローラ、ドラフトローラ)
70 フロントボトムローラ(ボトムローラ、ドラフトローラ)
84 清掃入力プーリ(入力回転体)
85 偏心ピン(偏心部)
86 リンク部材(連結部材)
91 バックボトムローラ駆動モータ(駆動源)
101 間欠送り装置(間欠送り部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トップローラと、前記トップローラに対向するように配置されたボトムローラと、から構成されるドラフトローラ対を複数備え、前記ボトムローラを駆動することで当該ドラフトローラ対により繊維束をドラフトするドラフト装置において、前記ボトムローラに接触して前記ボトムローラを清掃する清掃面を有する清掃部材と、
複数の前記ボトムローラのうち少なくとも何れかを駆動する駆動源から動力を得て、前記清掃部材を間欠送りする間欠送り部と、
を備えることを特徴とするドラフト装置。
【請求項2】
請求項1に記載のドラフト装置であって、
前記清掃部材は可撓性の無端ベルトであることを特徴とするドラフト装置。
【請求項3】
請求項2に記載のドラフト装置であって、
前記無端ベルトを前記ボトムローラに押し付けるための付勢部材を備えることを特徴とするドラフト装置。
【請求項4】
請求項2又は3に記載のドラフト装置であって、
前記無端ベルトが巻き掛けられ、間欠回転することで当該無端ベルトを間欠送りする間欠駆動ローラを備え、
前記間欠駆動ローラの周面には複数の凹部が形成されていることを特徴とするドラフト装置。
【請求項5】
請求項2から4までの何れか一項に記載のドラフト装置であって、
間隔をあけて配置された2つのベルト支持ローラを備え、
前記無端ベルトは、長円状となるように、前記2つのベルト支持ローラに巻き掛けられることを特徴とするドラフト装置。
【請求項6】
請求項1から5までの何れか一項に記載のドラフト装置であって、
前記繊維束の走行方向に並べられた少なくとも3つの前記ドラフトローラ対を備え、
前記3つのドラフトローラ対は、前記繊維束の走行方向の下流側から順に配置された、フロントローラ対と、ミドルローラ対と、サードローラ対と、から構成され、
前記ミドルローラ対のトップローラとボトムローラにはエプロンベルトがそれぞれ取り付けられ、
前記清掃部材としての無端ベルトの清掃面は、前記サードローラ対のボトムローラに接触することを特徴とするドラフト装置。
【請求項7】
請求項6に記載のドラフト装置であって、
前記ドラフトローラ対は前記繊維束の走行方向に略平行な方向に並べられており、
前記駆動源は、前記繊維束の走行方向の最上流側に位置する前記ボトムローラを駆動するモータであり、
前記間欠送り部は、前記モータから動力を得て、前記清掃部材を間欠送りすることを特徴とするドラフト装置。
【請求項8】
請求項1から7までの何れか一項に記載のドラフト装置であって、
前記間欠送り部は、
前記駆動源の動力が伝達される入力回転体と、
前記清掃部材を駆動する出力回転体と、
回転可能に支持される往復動アームと、
前記入力回転体と一体的に回転する偏心部と、
前記偏心部と前記往復動アームとを連結する連結部材と、
前記往復動アームと前記出力回転体との間に配置されるワンウェイクラッチと、
を備えることを特徴とするドラフト装置。
【請求項9】
請求項1から8までの何れか一項に記載のドラフト装置であって、
前記ドラフトローラ対を支持するドラフト装置本体と、
前記清掃部材を支持する清掃ユニットと、
を備え、
前記清掃ユニットは前記ドラフト装置本体に対して着脱可能に構成されていることを特徴とするドラフト装置。
【請求項10】
請求項9に記載のドラフト装置であって、
前記間欠送り部は、
前記駆動源の動力が伝達される入力回転体と、
前記清掃部材を駆動する出力回転体と、
回転可能に支持される往復動アームと、
前記入力回転体と一体的に回転する偏心部と、
前記偏心部と前記往復動アームとを連結する連結部材と、
前記往復動アームと前記出力回転体との間に配置されるワンウェイクラッチと、
を備え、
前記清掃ユニットには少なくとも、前記出力回転体と、前記往復動アームと、前記ワンウェイクラッチと、が配置されていることを特徴とするドラフト装置。
【請求項11】
請求項1から10までの何れか一項に記載のドラフト装置と、
前記ドラフト装置でドラフトされた繊維束を空気流にて紡績して紡績糸を生成する紡績装置と、
前記紡績装置で生成された前記紡績糸をパッケージに巻き取る巻取装置と、
を備えることを特徴とする紡績機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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