説明

ドラムカバー支持部材

【課題】接着剤を使用せずにドラムカバーに容易に取付けることのできるドラムカバー支持部材。
【解決手段】所定の間隔を空けて互いに対向する第1壁部3と第2壁部4とを備えており、第1壁部3において、ドラムカバー8の端部に設けられる係止孔9に嵌入可能な係止爪を設けると共に、第2壁部4において、係止爪の対向する位置に、少なくとも係止爪の先端部が収容され得る収容凹部を設け、ドラムカバーの端部10を第1壁部3の係止爪と第2壁部4の収容凹部との間に挿入し、ドラムカバーの係止孔9に、係止爪を嵌入させて係止させることによって、ドラムカバー8に取付け可能なドラムカバー支持部材1。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置内の感光体ドラムを保護するシート状のドラムカバーにおいて、前記画像形成装置における開閉カバーの開閉動作に連動して、前記ドラムカバーを引き出し自在に支持するドラムカバー支持部材に関する。
【背景技術】
【0002】
通常、画像形成装置(複写機、ファクシミリ、プリンタ等)においては、転写紙が搬送路中で詰まった場合(ジャム発生)に対処したり、他のメンテナンスを行えるように、装置本体の内部に通じる開閉カバーが設けられており、開閉カバーを開けると、その開口を通して、搬送路や、それに面した各種パーツ等が、暴露された状態となる。
従って、例えば、ジャムに対処する場合には、開閉カバーを開けることで、その開口から装置内に手を入れて詰まった転写紙を簡単に取り除く事ができる。
しかしながら、そのような作業の際に、感光体ドラムの表面に手や紙や他物が触れると、ドラム表面の乱れや損傷によって画像形成不良の原因になりかねないので、それを防止するために、開閉カバーの開状態においては、ドラムカバーが保護状態となるように設けられている。そして、開閉カバーの閉状態においては、ドラムカバーが転写紙の搬送を妨げないように退避状態となるように構成されている。
即ち、ドラムカバーの端部が、適当な支持部材によって支持されており、開閉カバーの開閉動作に連動して自在に引き出し得るように構成されている。
尚、上記支持部材は、適当な接着剤によってドラムカバーに接着固定されているのが一般的であり、実際に実施されてはいるが、この点について言及した適切な特許文献は見当らないため、先行技術文献を開示できない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上述したように、従来の画像形成装置においては、支持部材は、接着剤によってドラムカバーに接着固定されており、そのため、画像形成が実施されて装置内の温度が上昇すると、接着剤中に含まれる有機溶剤等が気化し、画像形成工程に悪影響を及ぼす虞があった。
また、ドラムカバーと支持部材とを接着する際、接着剤を均等に塗布する必要があると共に、接着剤が固化するまで時間を要し、さらには支持部材の材質によっては接着困難な場合があるなど、ドラムカバーに支持部材を取付ける上で種々の不都合も生じていた。
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであって、接着剤を使用せずにドラムカバーに容易に取付けることのできるドラムカバー支持部材を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の第1の特徴構成は、画像形成装置内の感光体ドラムを保護するシート状のドラムカバーにおいて、前記画像形成装置における開閉カバーの開閉動作に連動して、前記ドラムカバーを引き出し自在に支持するドラムカバー支持部材であって、
所定の間隔を空けて互いに対向する第1壁部と第2壁部とを備えており、前記第1壁部において、ドラムカバーの端部に設けられる係止孔に嵌入可能な係止爪を設けると共に、前記第2壁部において、前記係止爪の対向する位置に、少なくとも前記係止爪の先端部が収容され得る収容凹部を設け、前記ドラムカバーの端部を前記第1壁部の係止爪と前記第2壁部の収容凹部との間に挿入して、前記ドラムカバーの係止孔に、前記係止爪を嵌入させて係止させることによって、前記ドラムカバーに取付け可能に構成してある点にある。
〔作用及び効果〕
本発明のドラムカバー支持部材は、係止孔が設けられているシート状のドラムカバーの端部を、第1壁部の係止爪と第2壁部の収容凹部との間に挿入し、ドラムカバーの係止孔に、第1壁部の係止爪を嵌入させて係止させることによって、簡便且つ迅速にドラムカバーに取付けることが可能であり、接着剤を使用する必要がない。
しかも、係止爪に係止孔が係止されたドラムカバーは、互いに対向する第1壁部と第2壁部間に介在するために、係止爪から係止孔が抜け出ようとしても第2壁部に阻止されるために簡単には外れず、取付状態を確実に維持できる。
【0005】
本発明の第2の特徴構成は、樹脂で構成される点にある。
〔作用及び効果〕
本発明のドラムカバー支持部材は、樹脂で構成されるため、軽量で成型加工し易く、製作性に優れる。
【0006】
本発明の第3の特徴構成は、前記第2壁部における前記収容凹部が、前記第2壁部を貫通する開口状態に形成される点にある。
〔作用及び効果〕
本発明のドラムカバー支持部材は、第2壁部における収容凹部が、第2壁部を貫通する開口状態に形成されるものであるため、その第2壁部の開口を介して、ドラムカバーの係止孔に対する第1壁部の係止爪の嵌入状態(係止爪が、きちんとドラムカバーの係止孔に嵌入したかどうか)を容易に確認することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下に本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明のドラムカバー支持部材1と、シート状のドラムカバー8を示しており、2つのドラムカバー支持部材1(前方支持部材1a及び後方支持部材1b)をそれぞれ、ドラムカバー8の両端に取付ける構成となっている。
(ドラムカバー支持部材)
本実施形態におけるドラムカバー支持部材1(前方支持部材1a及び後方支持部材1b)は、図1に示すように、ドラムカバー8の幅寸法と同程度の長さを有しており、基底部2、第1壁部3、及び第2壁部4を備え、且つその両端に係合部5が設けられている(尚、前方支持部材1a及び後方支持部材1bについては、その係合部5a及び係合部5bに係る形状以外の構造については、同じ構造を有するものである)。
第1壁部3と第2壁部4は、所定の間隔(T)を空けて互いに対向するように基底部2から立設しており(図2参照)、第1壁部3は、基底部2の長手方向に沿って複数箇所に設けられている。
また、図2及び図3に示すように、第1壁部3においては、ドラムカバー8の端部10に設けられる係合孔9に嵌入可能な係止爪6が設けられていると共に、第2壁部4においては、各第1壁部3の係止爪6の対向する位置に、少なくとも係止爪6の先端部が収容され得る収容凹部7がそれぞれ設けられている。
収容凹部7に関しては、ドラムカバー8の端部10を挿入可能であって、尚且つ少なくとも係止爪6の先端部が収容され得るような空間を有する形状であれば特に限定されるものではない。尚、本実施形態においては、図3に示すように、収容凹部7が、第2壁部4を貫通する開口状態に形成されており、その第2壁部4の開口を介して、ドラムカバー8の係合孔9に対する第1壁部3の係止爪6の嵌入状態(係止爪6が、きちんとドラムカバー8の係合孔9に嵌入したかどうか)を容易に確認することができる。
【0008】
(ドラムカバー)
本発明に適用し得るドラムカバー8は、可撓性を有するシート状のドラムカバーであり、その端部10(前方端部10a及び後方端部10b)には、ドラムカバー支持部材1における第1壁部3の係止爪6が嵌入可能な係合孔9が、その幅方向に沿って複数設けられている(図1参照)。
ドラムカバー8は、感光体ドラムに接触した時に、適度な弾性によって傷が付き難いという理由からポリエチレン製であることが好ましいが、これに限るものではなく、例えば、他の合成樹脂シート(例えば、ポリスチレンシート、ポリエステルシート、ポリプロピレンシート等)や、布や紙や金属シート(例えば、アルミニウムシート、ステンレスシート等)等であっても良い。また、ドラムカバー8の厚さは、0.2mm〜0.4mmであることが好ましい。
【0009】
(ドラムカバー支持部材の取付け方法)
ドラムカバー8にドラムカバー支持部材1を取付ける際は、図1に示すように、ドラムカバー8の各係合孔9と、ドラムカバー支持部材1(前方支持部材1a及び後方支持部材1b)の各第1壁部3との位置合わせをし、ドラムカバー8の端部10を、ドラムカバー支持部材1の第1壁部3と第2壁部4との間に挿入する(ドラムカバー8の前方端部10a及び後方端部10bをそれぞれ、前方支持部材1a及び後方支持部材1bの第1壁部3と第2壁部4との間に挿入する)。
このとき、図4(イ)〜(ハ)に示すように、ドラムカバー8の端部10は、第1壁部3の係止爪6と第2壁部4の収容凹部7との間に挿入され(図4(イ)参照)、係止爪6のテーパー面6aを乗り越えると(図4(ロ)参照)、ドラムカバー8の各係合孔9に、各第1壁部3の係止爪6がそれぞれ嵌入して係止され(図4(ハ)参照)、取付けが完了する。
尚、第1壁部3と第2壁部4との間に設けられる前記所定の間隔(T)とは、例えば、図4(ハ)に示されるように、ドラムカバー8の端部を、ドラムカバー支持部材1の第1壁部3と第2壁部4との間に挿入して、ドラムカバー8の係合孔9に、第1壁部3の係止爪6が嵌入して係止されて、ドラムカバー8の端部と第2壁部4の上面とが接触している状態において、ドラムカバー8の端部が水平に保たれる距離が好ましい。
【0010】
(使用例)
上述のドラムカバー支持部材1及びドラムカバー8を画像形成装置13に適用し、その画像形成装置13における開閉カバー14の開閉動作に連動して、ドラムカバー8が、ドラムカバー支持部材1によって引き出し自在に支持される構成について以下に例示する(図5〜図7参照)。
ドラムカバー8は高分子量ポリエチレン製で、可撓性を有する矩形形状のシート材で形成してあり、幅寸法(感光体ドラム11の長さ方向に沿う方向における寸法)が感光体ドラム11の長さとほぼ等しい(又は、少し長い)値に設定してあると共に、長さ寸法(感光体ドラム11の径方向に沿う方向における寸法)が感光体ドラム11の外径の約2倍程度の値に設定してある。
そして、図6及び図7に示すように、ドラムカバー8における退避状態から保護状態におけるスライド移動方向の前方端部10aと後方端部10bとには、ほぼ全幅にわたる状態に前方支持部材1a及び後方支持部材1bがそれぞれ取り付けてある。
また、これら両ドラムカバー支持部材1は、その両端部に設けられている係合部5が、画像形成装置13における感光体ドラム11の両端側の固定フレームに各別に形成されているスライドガイド溝12にそれぞれ嵌合されており、スライドガイド溝12の長手方向に沿ってスライド自在に支持されている。
【0011】
このスライドガイド溝12には、スライド方向が縦方向のものと横方向のものとの二種類があり、感光体ドラム11の軸芯方向視において、感光体ドラム11の前方(搬送路側)で縦配置となった縦スライドガイド溝12aと、感光体ドラム11の上方で横配置となった横スライドガイド溝12bとを備えて構成されている。
感光体ドラム11の両端側の縦スライドガイド溝12aには、ドラムカバー8の前方端部10aに取り付けられた前方支持部材1aの両係合部5aがそれぞれ嵌合されている。
一方、横スライドガイド溝12bには、ドラムカバー8の後方端部10bに取り付けられた後方支持部材1bの両係合部5bがそれぞれ嵌合されている。
【0012】
また、画像形成装置13の開閉カバー14には、前方支持部材1aにわたる左右一対のリンクアーム15の一端部がそれぞれ揺動自在な状態に取り付けてあり、この一対のリンクアーム15によって開閉カバー14と前方支持部材1aとの連動が可能となっている。
すなわち、開閉カバー14が閉状態においては、図5(実線部分)及び図6に示すように、縦スライドガイド溝12aの上端部に前方支持部材1aが位置すると共に、開状態においては、図5(破線部分)及び図7に示すように、縦スライドガイド溝12aの下端部に前方支持部材1aが位置するように構成されている。
【0013】
一方、後方支持部材1bの両係合部5bには、左右一対のスプリング付き帯状体16の一端部がそれぞれ取り付けてあり、この帯状体16はポリエステル(PET)樹脂製フィルムから成り、その他端部は、画像形成装置13の固定側に取り付けられている(図6及び図7参照)。
従って、この帯状体16のスプリング機能によって、後方支持部材1bを後方側(前方支持部材1aとは反対方向側)に引き寄せており、その引っ張り力がドラムカバー8に作用し、常に、ドラムカバー8を弛まない状態に保持することができる(即ち、リンクアーム15と、帯状体16とで張力付加機構が構成されている)。
そして、開閉カバー14の開操作に伴って、ドラムカバー8が前方側にスライド移動する際には、帯状体16のスプリング部16aが伸びることで、ドラムカバー8のスライド移動を許容しながら張力を維持するように構成されている。開閉カバー14を終端部まで開操作した状態では、ドラムカバー8が感光体ドラム11の前面を覆う状態になり、この状態を前述の保護状態という(図7参照)。
【0014】
また、開閉カバー14の閉操作に伴っては、後方支持部材1bをスプリング部16aの縮まろうとする力で引き戻し、ドラムカバー8のスライド移動を許容しながら張力を維持するものである。このように、開閉カバー14を完全に閉まるまで閉操作した状態では、ドラムカバー8が感光体ドラム11の上方の隙間にスライド移動によって退避する状態になり、この状態を前述の退避状態という(図6参照)。
尚、退避状態のドラムカバー8の下面に沿う状態に、左右一対のシートガイド17が配置されており、開閉カバー14の開閉操作に伴ってスライド移動するドラムカバー8は、シートガイド17の前端部の曲面に沿った屈曲経路として案内され、装置内の僅かな隙間であってもスライド移動して保護・退避状態への切り替えが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】ドラムカバーとドラムカバー支持部材を示す斜視図
【図2】図1の矢視線X−Xにおけるドラムカバー支持部材の断面図
【図3】ドラムカバー支持部材を第2壁部側からみたときの斜視図
【図4】ドラムカバーの端部をドラムカバー支持部材の係止爪に係止させるときの様子を示す断面図
【図5】画像形成装置(複写機、ファクシミリ、プリンタ等)における内部構造の一部分(感光体ドラム、現像装置、定着装置等)と、開閉カバーとを模式的に示した要部断面図
【図6】画像形成装置におけるドラムカバーの退避状態を示す要部斜視図
【図7】画像形成装置におけるドラムカバーの保護状態を示す要部斜視図
【符号の説明】
【0016】
1 ドラムカバー支持部材
1a 前方支持部材
1b 後方支持部材
2 基底部
3 第1壁部
4 第2壁部
5 係合部
6 係止爪
7 収容凹部
8 ドラムカバー
9 係止孔
10 端部
10a 前方端部
10b 後方端部
11 感光体ドラム
12 スライドガイド溝
12a 縦スライドガイド溝
12b 横スライドガイド溝
13 画像形成装置
14 開閉カバー
15 リンクアーム
16 帯状体
16a スプリング部
17 シートガイド
18 現像装置
19 定着装置
P 転写紙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像形成装置内の感光体ドラムを保護するシート状のドラムカバーにおいて、前記画像形成装置における開閉カバーの開閉動作に連動して、前記ドラムカバーを引き出し自在に支持するドラムカバー支持部材であって、
所定の間隔を空けて互いに対向する第1壁部と第2壁部とを備えており、前記第1壁部において、ドラムカバーの端部に設けられる係止孔に嵌入可能な係止爪を設けると共に、前記第2壁部において、前記係止爪の対向する位置に、少なくとも前記係止爪の先端部が収容され得る収容凹部を設け、前記ドラムカバーの端部を前記第1壁部の係止爪と前記第2壁部の収容凹部との間に挿入して、前記ドラムカバーの係止孔に、前記係止爪を嵌入させて係止させることによって、前記ドラムカバーに取付け可能なドラムカバー支持部材。
【請求項2】
樹脂で構成される請求項1に記載のドラムカバー支持部材。
【請求項3】
前記第2壁部における前記収容凹部が、前記第2壁部を貫通する開口状態に形成される請求項1又は2のいずれか1項に記載のドラムカバー支持部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−309886(P2008−309886A)
【公開日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−155398(P2007−155398)
【出願日】平成19年6月12日(2007.6.12)
【出願人】(000006150)京セラミタ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】