説明

ドレン水浄化装置

【課題】ドレン水排出機器から排出されるドレン水について、低コストでそのまま排水可能なレベルまで浄化できるようにする。
【解決手段】排出されたドレン水を導入して連続的に貯留タンク2に貯留しながら油水分離手段6に送って通過させることで油分を所定レベル以下まで除去するドレン水浄化装置1において、その油水分離手段6がフィルタ520,530をカートリッジ式に交換可能な状態で内蔵した少なくとも2つ以上の濾過ユニット6A,6Bを直列的に連結されてなるものであり、そのフィルタ520,530が、シート状の濾材で周壁を形成して管状構造とされて外周側に導入したドレン水をその周壁の外側から内側に通過させることで油粒子及び汚れ粒子を捕捉するものであって、濾材を外周面側と内周面側とで逆方向に折り返して周壁の厚さ方向に往復させることにより管状構造の中心軸線に対し直角な面による断面形状が菊花状とされたものとした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドレン水浄化装置に関し、殊に、エアーコンプレッサー等のドレン水排出機器から排出された油分を含むドレン水を、排水基準を満たすレベルまで浄化するためのドレン水浄化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
エアーコンプレッサーから排出されるドレン水には、通常30〜500mg/L程度の油分が含まれており、このドレン水を施設外部に排出する場合には、水質汚濁防止法の全国排水基準(5mg/L)を満足するレベルまで浄化することが義務づけられている。
【0003】
このドレン水を浄化する手法として、油と水の比重の違いを利用して油水分離を行なうことで上層の油分を回収することが一般に普及しており、比較的簡易な構成により比較的低コストでドレン水を浄化することを可能としている。しかし、この手法ではドレン水導入量の変動に対応しにくいことに加え、含有する油分が微細なエマルジョン状になって拡散している場合には油水分離が不充分となり、満足できる浄化機能を発揮できなくなる場合も多い。
【0004】
これに対し、特開平6−304405号公報等に記載されているように、油吸着剤を用いた吸着フィルタでドレン水に含まれる油分を吸着させて浄化する手法や、特開平10−314502号公報等に記載されているように、電気分解用の電極板を備えた電解槽にドレン水を導入して、電気分解に伴い液面に浮遊した油スラッジを回収して浄化する手法も知られている。
【0005】
しかしながら、前者の手法は油吸着剤を用いた吸着フィルタが比較的高価であることに加え、比較的短期間で目詰まりしやすいことからランニングコストが嵩みやすくなる点がネックであり、また、含有する油分の状態によっては浄化が不充分になるという欠点もある。一方、後者の手法においては、処理装置が大がかりでイニシャルコストが嵩むことに加え、比較的多量の油スラッジを生じてその後の処理コストがネックとなりやすい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平6−304405号公報
【特許文献2】特開平10−314502号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記のような問題点を解決しようとするものであり、ドレン水排出機器から排出されるドレン水について、低コストでそのまま排水可能なレベルまで浄化できるようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そこで、本発明は、油分を含むドレン水を排出するドレン水排出機器に配管で接続され、排出されたドレン水を導入して連続的に貯留タンクに貯留しながら油水分離手段に送り、この油水分離手段を通過させることで油分を所定レベル以下まで除去して清水にするドレン水浄化装置において、その油水分離手段はフィルタをカートリッジ式に交換可能な状態で内蔵した少なくとも2つ以上の濾過ユニットが直列的に連結されてなるものであり、そのフィルタはシート状の濾材で周壁を形成して管状構造とされ外周側に導入したドレン水がその周壁を外側から内側に通過することでドレン水に含まれる油粒子及び汚れ粒子を捕捉するものであって、その濾材が外周面側と内周面側とで逆方向に折り返して周壁の厚さ方向に往復させることにより管状構造の中心軸線に対し直角な面による断面形状が菊花状に形成されている、ことを特徴とするものとした。
【0009】
従来、フィルタを用いてドレン水の油分を吸着または捕捉して濾過する場合には、シート状の濾材を単に丸めて管状としたフィルタを用いており、濾過面積が小さく短期間で目詰まりしやすいために交換頻度が高くメンテナンスの手間・コストが嵩みやすかった。これに対し、フィルタを構成する濾材を断面菊花状となるようにプリーツを形成させながら管状構造としたことにより、同体積の従来のフィルタよりも表面積(濾過面積)が格段に大きくなり、エマルジョン状に分散した油分を長期間に亘って効率的に捕捉して優れた浄化能を発揮するものとなり、且つ、フィルタ部分だけを簡易に交換できるカートリッジ式にしたことで、フィルタ交換に要する手間とコストを大きく低減できるようになった。
【0010】
また、この場合、導入したドレン水を一旦貯める貯留タンクに、内部に貯めたドレン水の液面にドレン水を浄化した清水の一部又は貯留タンク中のドレン水の一部を上方から噴射する拡散手段を付設し、拡散手段の作動により液面側に集まった油分を均一に拡散させてドレン水中でエマルジョン状に分散した状態を維持させるものとすれば、液面で層を形成したり大径化したりした油分がフィルタに一時的に大きな負荷をかけて交換寿命の短縮を招く事態を回避することができる。
【0011】
さらに、上述したドレン水浄化装置において、その貯留タンクに水位検知手段を付設し、ドレン水排出機器から排出され貯留タンクに連続的に貯留されたドレン水が予め設定した量に達したことをその水位検知手段で検出することに連動して、ドレン水の浄化行程が自動的に行われることを特徴としたものとすれば、管理者の手間を要することなく適宜ドレン水が浄化されるものとなる。
【0012】
さらにまた、上述したドレン水浄化装置において、その油分離手段を、最も上流側の濾過ユニットのフィルタが複数枚のシート状の濾材を重ねて構成されたものとし、且つ、平均ポア径3.5μm以下の濾材の層を少なくとも有したものとすれば、ドレン水中の微細粒子を確実に捕捉しやすいものとなる。
【0013】
加えて、上述したドレン水浄化装置において、その直列配置した濾過ユニットを、下流側のものになるほどフィルタを構成する濾材の目開きが小さくなるものとすれば、直列配置した複数の濾過ユニットでドレン水に含まれる様々なサイズの粒子に対応しながら全体としてまんべんなく捕捉できるため、より長期間に亘って優れた浄化能を発揮できるものとなる。
【0014】
また加えて、上述したドレン水浄化装置において、その直列配置した濾過ユニットを、最も上流側のものが水溶液中で電荷を帯びないフィルタを内蔵し、これよりも下流側のものが水溶液中で陽電荷を帯びる陽電荷フィルタを内蔵していることを特徴としたものとすれば、上流側の通常のフィルタで捕捉されなかった微細な油粒子が下流側で電位的な力で吸着されるため、より高度で確実な油分除去を実現することができる。
【発明の効果】
【0015】
体積あたりの濾過面積を大きくしたフィルタをカートリッジ式に備えた濾過ユニットを貯留タンク下流側に直列配置した本発明によると、低コストでドレン水をそのまま排出可能なレベルまで浄化できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明における実施の形態であるドレン水浄化装置の配置図。
【図2】図1のドレン水浄化装置の油水分離手段の詳細な縦断面図。
【図3】(A)は図2の油水分離手段の上流側濾過ユニットに内蔵されたフィルタカートリッジの正面図、(B)は(A)のフィルタカートリッジの縦断面図。
【図4】図3(A)のフィルタカートリッジのX−X線に沿う拡大断面図。
【図5】図2の下流側濾過ユニットに内蔵されたフィルタカートリッジの拡大横断面図。
【図6】左は浄化前のドレン水の状態を示す外観写真、右は本実施の形態のドレン水浄化装置で浄化した後のドレン水の状態を示す外観写真。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、図面を参照しながら本発明を実施するための形態を説明する。
【0018】
図1は、本実施の形態であるドレン水浄化装置1の配置図を示しており、このドレン水浄化装置1は、エアーコンプレッサー等のドレン水排出機器から延びたドレンパイプ9aが接続されドレン水を導入しながら一旦貯留する所定容量の貯留タンク2を備えており、その底部側のストレーナー8から途中にポンプ3を配設してドレン水搬送管9bが延設されており、このドレン水搬送管9bは、ポンプ3の下流側で貯留タンク2に戻す戻し管9cと途中に油水分離手段6が配設されて外部排水路に繋がる排水管9dとに分岐している。
【0019】
本実施の形態では、図2の詳細な部分縦断面図に示すように、その排水管9dの途中に配設された油水分離手段6は、上端が開口した筒体60,60とその開口端を塞ぐとともにドレン水の流路を有している円盤体61,61とで構成されたケーシングに、フィルタカートリッジ5A,5Bをカートリッジ式に交換可能に内蔵した濾過ユニット6A,6Bが直列的に連設されてなるものであり、そのフィルタカートリッジ5A,5Bを構成する各フィルタ520,530は、シート状の濾材で周壁による管状構造を形成している。
【0020】
そして、この濾過ユニット6A,6Bを構成する筒体60,60内でフィルタカートリッジ5A,5Bの外周空間50,50に導入されたドレン水は、各フィルタ520,530による周壁を外側から内側に通過することにより分散状態で含む油粒子及び汚れ粒子が捕捉されて排水可能なレベルまで浄化される。また、フィルタ520,530は、その管状構造の中心軸線に対し直角な面による断面形状が菊花状となるように、濾材を外周面側と内周面側とで逆方向に折り返して周壁の厚さ方向に往復させてプリーツを形成している点を特徴としている。
【0021】
図3(A)は、図2の濾過ユニット6Aにおいてカートリッジ式に装着されるフィルタカートリッジ5Aをさらに詳細に示した正面図であり、図3(B)はその縦断面図を示している。このフィルタカートリッジ5Aは、3層のシート状の濾材521,522,523により筒状に形成されたフィルタ520を備えて全体として筒状に形成されており、その外周・内周側には所定の力学的強度を有して所定サイズ以下の個体及び液体を通過させる網状部材からなる外部カバー527、内部カバー528が配設され、且つ、その上下端をドーナツ状の蓋材525,526で封止されて、その中心軸線に沿って中心孔51が上下に貫通している。
【0022】
このフィルタカートリッジ5Aのうち、筒状のフィルタ520を形成しているシート状の濾材521,522,523は、水溶液中で電化を帯びない通常の濾材からなり、図3(A)のX−X線に沿う拡大した断面図及びその拡大部分図(円中)である図4に示すように、フィルタ520はシート状の濾材521,522,523が重ねられて3層とされながら横断面菊花状のプリーツを形成してなるものである。
【0023】
即ち、このフィルタ520は、筒状構造を形成する所定厚さの周壁の外周面側と内周面側とで逆向きに連続的に折り返されて、周壁の厚さ方向に往復しながら横断面形状が全体として菊花状となるようにプリーツを形成したものであり、シート状の濾材を単に丸めて筒状にした従来例のフィルタと比べて、濾過面積が格段に大きくなっている点を特徴としている。
【0024】
このように、体積あたりの表面積が広く大きな濾過面積とされたフィルタ520は、ドレン水中に分散したエマルジョン状の油分や錆粉などの汚れ微細粒子を、濾過抵抗を過大にすることなく高効率で捕捉可能として高い液体浄化能力を発揮するものとなり、且つ、濾材を3重にしたことで油分や汚れ粒子の捕捉容量(キャパシティ)が極めて大きくなったため、従来例と比べて目詰まりしにくくフィルタ寿命が格段に長くなっている。
【0025】
このフィルタ520を構成する濾材521,522,523としては、極細繊維を不織的に絡みあわせたり部分的に結合させたりして目の細かい濾材としながらシート状に形成したものが、良好な濾過機能を確保する観点で好ましい。また、このように作成された複数層のうち少なくとも1層に、平均ポア径3.5μm以下とされたものを使用することにより、微細なエマルジョン状の油分も確実に捕捉可能なものとなる。
【0026】
図5は、濾過ユニット6Aの下流側に配置された濾過ユニット6Bに内蔵されるフィルタカートリッジ5Bを、図4と同様に拡大した横断面図にして示したものである。図4のフィルタカートリッジ5Aが、濾材の目開きのサイズよりも大きなサイズのエマルジョン粒子等を通過させないことで物理的に捕捉するものであるのに対し、このフィルタカートリッジ5Bは、濾材の目開きのサイズによる捕捉に加え、濾材の微粒子捕捉部分が水溶液中で陽電荷を帯びる素材から構成されており、水溶液中で陰電荷を帯びやすい鉱物油等によるエマルジョン粒子を電位的な力で吸着して捕捉する点を特徴としている。
【0027】
このように、濾材を構成する素材が水溶液中で陽電荷を帯びる性質を利用したフィルタは、一般に陽電荷フィルタと呼ばれるものであるが、これを使用することにより、濾材の目開きのサイズよりも微小であったり変形することでさらに小径化したりする粒子であっても、確実且つ効率的に捕捉できるとともに、その吸着力により捕捉した微粒子が遊離しにくいものとなるため、濾過抵抗を過大にすることなく微細にエマルジョン化した油分等が下流側に漏出することを確実に防止できるものとなる。
【0028】
斯かるフィルタカートリッジ5Bにおいても、図のようにフィルタ530は横断面形状が菊花状とされてその濾過面積を大きくしていることが好ましい。また、この場合、図のように前述の濾材521,522,523よりも厚手の1枚の濾材から構成されたものが好ましいが、図5拡大部分図の円中に示すように、これを構成する濾材が陽電荷を帯びる芯材532とその表裏に設けた補強材531,532とで構成したものとすればよい。
【0029】
この補強材531,533は、通常の濾材と同様に一般的な繊維を不織的に絡み合わせる等して形成したものでよいが、その芯材532はガラス繊維等からなる所定の骨格に直径0.1μm以下の無機繊維状物質である無機ナノファイバーを三次元的な枝状に設けてなるもので水溶液中で陽電荷を帯びて陰電荷の物質を吸着する性質を備えたものが好ましい。
【0030】
尚、この心材532の目開きは、無機ナノファイバーで形成されている関係でフィルタ520を構成する濾材531,522,523の目開きよりも小さくなることから、上流側のフィルタ520を通過した微細なエマルジョン粒子等を目開きのサイズで捕捉する機能も備えているものの、フィルタ530の粒子捕捉機能の中心は陽電荷による電位的な吸着力によるものである。
【0031】
尚、補強材531,533の目開きのサイズも同様に前述した上流側の濾材521,522,523よりも小さいものとして、下流側になるに従って縮小する目開きサイズによる段階的な濾過層を構成させ、より効率的な濾過を実現させるようにすることが推奨される。
【0032】
このように、本実施の形態において複数層の濾材を横断面菊花状にして濾過面積及び捕捉容量を大きくしたフィルタ520を内蔵してなる濾過ユニット6Aを上流側に配置し、その下流側に前述した陽電荷フィルタとしての特性を有するフィルタ530を内蔵してなる濾過ユニット6Bを直列的に配置して油水分離手段6を構成したことにより、上流側のフィルタ520の存在で下流側の超高性能のフィルタ530の負荷を軽減しながら、全体として極めて高いドレン水浄化能力を発揮できるようになった。
【0033】
また、斯かる構成の油水分離手段6は、濾過抵抗を過大にすることなくフィルタの交換頻度を低いものとして、メンテナンスに費やす手間と費用を大きく削減することができるため、コストパフォーマンスに極めて優れたものとなっている。尚、本実施の形態では、濾過ユニットを直列の2段式としたが、これよりも多段階にして全体の捕捉容量を大きくしても良いことは言うまでもない。
【0034】
一方、本実施の形態のドレン水浄化装置1は、図1の配置図に示したように導入したドレン水を一旦貯める貯留タンク2を備えており、この貯留タンク2には、内部に貯めたドレン水の液面に、貯留タンク2に戻る戻し管9cを経たドレン水を上方から噴射して貯留タンク2内ドレン水表面側の油分を拡散させる拡散手段としてのシャワーユニット7が付設されており、水と油分の比重差で液面側に集まり大径化した油分をシャワーの噴射力で小径化しながら拡散させて、ドレン水中でエマルジョン状に分散した状態にすることを特徴としている。
【0035】
このシャワーユニット7の作動は、ドレン水搬送管9bに配設されたポンプ3の駆動による圧送力によるものであり、ポンプ3が駆動することによりシャワーユニット7に設けた複数の噴射孔から貯留タンク2中の液面に向かってドレン水を上方からまんべんなく噴射するようになっている。
【0036】
尚、このシャワーユニット7は、複数の噴射孔を固定的に配置することのほか、水平方向に延びた管状の噴射バーがポンプ3の圧送力による水圧で回転する構成とすることによりさらに拡散機能に優れたものとなる。また、このシャワーユニット7によるドレン水中の油分の拡散は、前述したように貯留タンク2のドレン水を噴射することによるほか、ドレン水を浄化して得られた清水の一部を噴射することによるものとしても良い。
【0037】
加えて、本実施の形態のドレン水浄化装置1は、図1の配置図に示したように、その貯留タンク2に貯留したドレン水の水位が所定レベルに達したことを検出して検出信号を出力する水位検出手段としての液面センサ21、及びドレン水浄化行程の実施を制御する制御手段20を備えている。この制御手段20は、ポンプ3を駆動操作するとともに排水管9dの油水分離手段6上流側に配置した流量調整弁4を開閉操作するものであり、貯留タンク2のドレン水が所定レベル以上に達している状況においてのみ、流量調整弁4を開いて油水分離手段6にドレン水を流し、浄化行程を実施するようになっている点を特徴としている。
【0038】
このように、液面センサ21及び制御手段20を設けて浄化行程を自動化したことにより、管理者の手間を要することなく貯留タンク2におけるドレン水のオーバーフローを回避可能なものとなり、且つ、燃料ポンプ3の駆動電力を必要最小限に抑えることができる。尚、制御手段20がこの浄化行程とは別に適当なタイミングでポンプ3を駆動させてシャワーユニット7にドレン水を送るようにすれば、ドレン水中におけるエマルジョン粒子の大径化を回避しながら均一な分散状態を常に維持しやすいものとなる。
【0039】
図6の写真は、図1のドレン水浄化装置1と同様の構成で実際に作成したドレン水浄化装置の浄化能力を検証した結果を示す外観写真であり、左のビーカは浄化前のドレン水の状態を示し、右のビーカは浄化後のドレン水の状態を示している。このドレン水浄化装置では、貯留タンクの容量を130Lとし、100L貯水されたら貯水ランプ(青)が点灯するようにして、管理者がこれを確認することにより手動で処理スイッチをONにして濾過・排水を開始するものとし、その後、貯留タンクに配置した下限センサで水位が下限位置(10L)になったことを検出することで自動的に処理スイッチをOFFにするように設定した。
【0040】
また、このドレン水浄化装置では水位が100Lを超えることで貯水ランプ(青)が点灯するが、その後、水位が上昇し110L以上になった場合には、異常ランプ(赤)が点灯するとともに自動運転で100Lになるまで濾過・排水を行うものとして、オーバーフローを完全に防止できるようにした。尚、油水分離手段における上流側の濾過ユニットでは3層とも平均ポア径3.5μm以下の濾材を使用し、下流側の濾過ユニットでは、ガラス骨格にアルミナを主成分とした直径約2nmの無機ナノファイバーを有する陽電荷フィルタを用いた。
【0041】
図6の写真に示すように、左のビーカのドレン水は白みがかった赤茶色に濁っていたが、濾過後の右のビーカでは完全に澄明な清水となった。また、濾過前のドレン水はn―ヘキサン抽出量が94mg/L以上であったのに対し、濾過後は1.6mg/L未満となっており、そのまま排水可能なレベルまで浄化されていた。さらに、このドレン水浄化装置ではエアーコンプレッサーによる平均的な油含有量のドレン水(30〜100mg/L)を連続的に浄化した場合、1000Lまで5mg/L未満のレベルに浄化することができた。
【0042】
以上の結果から本願発明者・出願人らが試算したところ、エアーコンプレッサーのドレン水(一日40Lの場合)を処理する場合の費用は、従来のように専門業者に依頼して行う場合は、25円/L×40L/日×22日/月×12月=264000円/年であったのに対し、本発明のドレン水浄化装置によると、12円/L×40L/日×22日/月×12月=126720円/年となり、半分以下の経費で済む計算となった。
【0043】
また、専門業者に依頼する場合は、排出されたドレン水をドラム缶に貯めて所定本数保管してから引き渡していたのに対し、本実施の形態のドレン水浄化装置によると、これにドレンホースを接続するだけで順次浄化されてそのまま外部に排水できるため、必要なスペースがより小さく抑えられるとともに衛生管理の面でも好ましいものとなった。
【0044】
さらにこの場合、ドレン水をドラム管に移す作業が省略できるとともに自動運転により管理者の手間を最小限として適宜浄化作業が行われ、且つ、フィルタカートリッジの交換も数分程度で完了するとともに、汚れを捕捉した後のフィルタカートリッジは可燃ゴミとして簡易に廃棄できることから、メンテナンスの手間・コストが大きく削減されるものとなった。
【0045】
以上、述べたように、ドレン水排出機器から排出されるドレン水について、本発明により、低コストでそのまま排出可能なレベルまで浄化できるものとなった。
【符号の説明】
【0046】
1 ドレン水浄化装置、2 貯留タンク、3 ポンプ、4 流量調整弁、5A,5B フィルタカートリッジ、6 油水分離手段、6A,6B 濾過ユニット、7 シャワーユニット、8 ストレーナー、9a ドレンホース、9b ドレン水搬送管、9c 戻し管、9d 排水管、20 制御装置、21 水面センサ、520,530 フィルタ、521,522,523 濾材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
油分を含むドレン水を排出するドレン水排出機器に配管で接続され、排出された前記ドレン水を導入して連続的に貯留タンクに貯留しながら油水分離手段に送り、該油水分離手段を通過させることで油分を所定レベル以下まで除去して清水にするドレン水浄化装置において、
前記油水分離手段は、フィルタをカートリッジ式に交換可能な状態で内蔵した少なくとも2つ以上の濾過ユニットが直列的に連結されてなるものであり、前記フィルタは、シート状の濾材で周壁を形成して管状構造とされ外周側に導入した前記ドレン水が前記周壁を外側から内側に通過することで前記ドレン水に含まれる油粒子及び汚れ粒子を捕捉するものであって、前記濾材を外周面側と内周面側とで逆方向に折り返して前記周壁の厚さ方向に往復させたことにより前記管状構造の中心軸線に対し直角な面による断面形状が菊花状に形成されている、ことを特徴としたドレン水浄化装置。
【請求項2】
前記貯留タンクには、内部に貯めた前記ドレン水の液面に前記ドレン水を浄化した清水の一部又は前記貯留タンク中のドレン水の一部を上方から噴射する拡散手段が付設されており、該拡散手段の作動により液面側に集まった油分を均一に拡散させて前記ドレン水中でエマルジョン状に分散した状態にする、ことを特徴とする請求項1に記載したドレン水浄化装置。
【請求項3】
該貯留タンクには水位検知手段が付設されており、前記ドレン水排出機器から排出されて前記貯留タンクに連続的に貯留された前記ドレン水が予め設定した量に達したことを前記水位検知手段で検出することに連動して、前記ドレン水の浄化行程が自動的に行われることを特徴とする、請求項1または2に記載したドレン水浄化装置。
【請求項4】
前記油水分離手段は、最も上流側の前記濾過ユニットのフィルタが複数枚のシート状の濾材を重ねて構成されているとともに平均ポア径3.5μm以下の濾材の層を少なくとも有している、ことを特徴とする請求項1,2または3に記載したドレン水浄化装置。
【請求項5】
前記複数の濾過ユニットは、下流側のものになるほど前記フィルタを構成する濾材の目開きが小さくなる、ことを特徴とする請求項1,2,3または4に記載したドレン水浄化装置。
【請求項6】
前記複数の濾過ユニットは、最も上流側のものが水溶液中で電荷を帯びない前記フィルタを内蔵し、該最も上流側の濾過ユニットよりも下流側のものが水溶液中で陽電荷を帯びる陽電荷フィルタを内蔵している、ことを特徴とする請求項1,2,3,4または5に記載したドレン水浄化装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−253338(P2010−253338A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−103524(P2009−103524)
【出願日】平成21年4月22日(2009.4.22)
【出願人】(595060018)アルプス工業株式会社 (5)
【Fターム(参考)】