説明

ドーナッツの製造方法

【課題】 熟練を要するイースト発酵の工程を経ずに、イーストドーナッツに特有な、食感がふっくらとしたソフトなドーナッツを、簡便な方法で、しかも安定的に製造することができる、ドーナッツの製造方法を提供すること。
【解決手段】 イーストを使用せず、生地原料に対して10質量%以上の小麦由来の蛋白質、および膨張剤を配合した生地原料を使用して生地を調製し、次いで該生地をねかせた後、油で揚げることを特徴とする、ドーナッツの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食感がふっくらとしたソフトなドーナッツを、イーストを使用せずに製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
イーストドーナッツは、小麦粉として強力粉を使用し、イースト発酵により生地を膨張させ、その膨らんだ生地を油で揚げることに製法上の特徴があり、食感がふっくらとソフトで、かつ、油で揚げたときの吸油量が少ないため、油っぽくないとの食味上の特徴がある。小麦粉として強力粉を使用するのは、イースト発酵により、膨らんだ状態を維持したまま、油で揚げるので、生地に強いグルテン膜の構成が求められるためである。
【0003】
イーストドーナッツを製造するには、イースト発酵の工程を経なければならないため、休眠状態で保存してあるイーストを活性状態に戻し、管理の難しい温度、pHなどの発酵条件を調整しなければならず、第一次発酵、分割、丸め、ベンチタイム、成型、ホイロなど、製造方法が煩雑で、多大な時間と労力がかかり、その安定的な製造管理には熟練が求められている。このような複雑な工程を経て、イーストドーナッツは製造されることから、前もって生地をホイロ後に冷凍して保存しておき、必要なときに取り出し、冷凍状態のままの生地を油で揚げる方法も見出されているが(特許文献1参照)、上記の複雑な工程を経ることに変わりはない。
従って、イーストドーナッツを製造するには、管理の難しいイースト発酵の工程を経ることから、イースト発酵に不慣れな、例えば家庭での操作や外国での製造においては、満足の行く品質のイーストドーナッツを安定的に得ることが難しいという問題がある。
【特許文献1】特開平10−304814号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、熟練を要するイースト発酵の工程を経ずに、イーストドーナッツに特有な、食感がふっくらとしたソフトなドーナッツを、簡便な方法で、しかも安定的に製造することができる、ドーナッツの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、種々検討した結果、特定量の小麦由来の蛋白質と膨張剤を配合した生地原料を使用し、生地を成型した後、ねかせ工程を経ることにより、強いグルテン膜と膨張剤の作用で膨らみを持たせた生地が得られ、この生地を油で揚げると、従来のイーストドーナッツと同様な、食感がふっくらとしたソフトなドーナッツになることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0006】
すなわち、本発明は、イーストを使用せず、生地原料に対して10質量%以上の小麦由来の蛋白質、および膨張剤を配合した生地原料を使用して生地を調製し、次いで該生地をねかせた後、油で揚げることを特徴とする、ドーナッツの製造方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、熟練した技量が求められるイースト発酵の工程を経ずに、イーストドーナッツに特有な、食感がふっくらとしたソフトなドーナッツを、簡便な方法で、しかも安定的に製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明のドーナッツの製造方法について詳細に説明する。
小麦由来の蛋白質とは、グルテンなどの小麦蛋白質の他、生地に配合される小麦粉中に含まれている蛋白質も含む。
小麦由来の蛋白質は、生地原料に対して10質量%以上となるように配合する。このとき、小麦蛋白質の含量が高い小麦粉を使用することによって、生地原料中の小麦由来の蛋白質の量が10質量%以上となっている場合には、別途、小麦由来の蛋白質を配合しなくてもよい。小麦粉として、14質量%以上の小麦蛋白質を含有する強力粉を使用し、生地原料中の小麦由来の蛋白質の量が10質量%以上となっている場合には、別途、小麦由来の蛋白質を配合しない方が好ましい。また、小麦蛋白質の含量が低い小麦粉を使用する時には、小麦由来の蛋白質を配合することが好ましい。
小麦由来の蛋白質の含有量の上限は、特に限定されないが、小麦蛋白質を特に多く含む強力粉の該蛋白質含量が15質量%程度であることから、少なくとも生地原料に対して15質量%程度までは小麦由来の蛋白質を好ましく配合することができる。
【0009】
また、膨張剤としては、食品に用いることのできるベーキングパウダーであれば、特に限定されないが、速効性の膨張剤または遅効性の膨張剤を、単独でまたは混合して用いることができる。膨張剤の配合量は、生地原料に対して、好ましくは0.5〜5.0質量%、より好ましくは2.0〜4.6質量%である。膨張剤の配合量が0.5質量%に満たないと、後のねかせ工程での膨らみが不足し、所望の効果が得られ難く、一方5.0質量%を超えると、膨張剤の有する苦みが感じられるようになる。
【0010】
本発明で用いられる生地原料は、イーストが配合されておらず、かつ所定量の小麦由来の蛋白質と膨張剤が配合されている以外は、従来のドーナッツの製造に用いられる生地原料と同様であり、通常配合されている他の原料を配合して用いることができる。
斯かる他の原料としては、小麦粉の他、米粉、エン麦粉、トウモロコシ粉、ヒエ粉、アワ粉、キビ粉などの穀粉類;これら穀粉類のα化澱粉、コーンスターチ、馬鈴薯澱粉などの澱粉類;卵類;食塩;砂糖、液糖、澱粉糖などの糖類;植物油、バター、マーガリン、ショートニング、ラードなどの油脂類;牛乳、脱脂粉乳、練乳などの乳製品;香料;着色料などがあげられる。
【0011】
本発明においては、上記生地原料を使用して調製した生地を、成型後または成型前に、ねかせる必要がある。ねかせ工程の条件は、膨張剤の種類や、温度により影響を受けるが、20〜50℃で20〜180分、好ましくは30〜40℃で30〜45分である。膨張剤が速効性のものであれば、ねかせる時間を短縮させることができる。
このねかせ工程は、イースト発酵の工程のような条件の厳密な管理を必要とせず、また所定の膨らみが得られた後、それ以上特に膨化が進むこともないため、次の油で揚げる工程に即座に進む必要もない。
このねかせ工程で所定の膨らみを得た後、油で揚げることによって、膨張剤の働きと相俟って、強いグルテン膜を有しながら、十分な膨らみと浮上性が得られ、イーストドーナッツのような食感がふっくらとしたソフトなドーナッツが得られる。
【0012】
生地の調製方法は、特に制限されるものではなく、従来のドーナッツ生地を調製する方法と同様に行うことができる。例えば、食用油以外の生地原料と水をすべて加え、製パン製菓用の縦型ミキサー(フックを使用)で3分間低速ミキシングする。ここで食用油を加え、さらに中高速で3分間ミキシングして、生地を得ることができる。
また、油で揚げる工程は、従来のドーナッツ生地を油で揚げる工程と同様であり、好ましい条件は、160〜200℃で3〜5分、より好ましくは170〜190℃で3〜5分である。
【0013】
なお、本発明においては、ねかせた生地を、一旦、冷蔵または冷凍保存しておいてもよく、該冷蔵生地または冷凍後解凍した生地を油で揚げることにより、本発明に係るドーナッツを得ることができる。
【実施例】
【0014】
以下、実施例および比較例を挙げて本発明をさらに説明するが、本発明は以下の実施例および比較例に何ら限定されるものではない。
【0015】
実施例1〜6および比較例1〜2
表1に示す配合に従って、まずサラダ油以外の生地原料と水をすべて、製パン製菓用の縦型ミキサー(フックを使用)に投入し、低速で3分間ミキシングした。ここにサラダ油を加え、さらに中高速で3分間ミキシングして、生地を得た。得られた生地を40gずつ分割し、丸めた後、抜き型で孔をあけ、厚さ2cm、外径10cmおよび内孔径6cmのリング状に成型した。これを温度40℃で30分間ねかせた後、170℃のショートニングにて片面2分間、反転後、さらに2分間油ちょうし、ドーナッツをそれぞれ得た。得られた各ドーナッツの食感を官能評価した。評価方法は、表2に示す評価基準に従い、10名のパネルに採点させ、その平均値を算出し、各ドーナッツの評価点とした。その結果を表1に示した。
【0016】
【表1】

【0017】
【表2】

【0018】
表1に示す結果から明らかなように、実施例1〜6の本発明に係るドーナッツは、いずれも、ふっくらとソフトな食感である。これに対し、小麦由来の蛋白質の含有量が10質量%未満の生地を使用した比較例1〜2のドーナッツは、いずれも、膨らみがなく食感が硬いものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
イーストを使用せず、生地原料に対して10質量%以上の小麦由来の蛋白質、および膨張剤を配合した生地原料を使用して生地を調製し、次いで該生地をねかせた後、油で揚げることを特徴とする、ドーナッツの製造方法。
【請求項2】
ねかせ工程の条件が、温度20〜50℃、時間20〜180分である、請求項1記載のドーナッツの製造方法。
【請求項3】
膨張剤の配合量が、生地原料に対して0.5〜5.0質量%である、請求項1または2記載のドーナッツの製造方法。

【公開番号】特開2006−25705(P2006−25705A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−209694(P2004−209694)
【出願日】平成16年7月16日(2004.7.16)
【出願人】(398012306)日清フーズ株式会社 (139)
【Fターム(参考)】