説明

ドープ正孔輸送層を介して改善されたOLED安定性

有機発光デバイスが提供される。このデバイスは、アノードおよびカソードを含む。第1の有機層は、アノードとカソードとの間に配置される。第1の有機層は、第1の有機発光材料を含む発光層である。デバイスは、アノードと第1の有機層との間に配置された第2の有機層も含む。第2の有機層は非発光層である。第2の有機層は、50から99重量%の濃度を有する有機低分子正孔輸送材料と、0.1から5重量%の濃度を有する有機低分子電子輸送材料とを含む。その他の材料が存在していてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、参照によりその開示全体が本明細書に明確に援用される、2008年12月12日に出願した米国仮出願第61/121,991号の優先権および当該仮出願の米国特許法第119条(e)に基づく利益を主張するものである。
【0002】
主張される本発明は、産学共同研究契約に関係する以下の当事者、即ちRegents of the University of Michigan、Princeton University、The University of Southern California、及びUniversal Display Corporationの1つまたは複数によって、これらを代表して、および/またはこれらと一緒になって、なされたものである。本契約は、主張される本発明がなされた日およびそれ以前に効力が発生し、主張される本発明は、本契約の範囲内で取り組んだ活動の結果としてなされたものである。
【0003】
本発明は、有機発光デバイスと、そのようなデバイスに関する改善された構造に関する。
【背景技術】
【0004】
有機材料を利用する光電子デバイスは、いくつもの理由で益々求められるようになっている。そのようなデバイスを作製するのに使用される材料の多くは、比較的安価であり、したがって有機光電子デバイスは、無機デバイスにも勝るコスト上の利点がある可能性がある。さらに、可撓性などの有機材料本来の性質により、この材料を、フレキシブル基板上での作製など、特定の適用例に十分適したものにすることができる。有機光電子デバイスの例には、有機発光デバイス(OLED)、有機光トランジスタ、有機光起電力電池、および有機光検出器が含まれる。OLEDの場合、有機材料は、従来の材料にも勝る性能上の利点を有することができる。例えば、有機発光層が光を放出する波長は、一般に、適切なドーパントで容易に調整することができる。
【0005】
OLEDは、デバイスの両端に電圧を印加すると光を放出する、薄い有機被膜を利用する。OLEDは、フラットパネルディスプレイ、照明、および背面照明などの用途で使用するのに益々興味深い技術になりつつある。いくつかのOLED材料および構成は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる米国特許第5,844,363号、同第6,303,238号、および同第5,707,745号に記載されている。
【0006】
リン光発光分子に関するある適用例は、フルカラーディスプレイである。そのようなディスプレイに関する工業規格は、「飽和」色と呼ばれる特定の色を発光するように適合させた画素を求める。特に、これらの規格は、飽和赤、緑、および青の画素を求める。色は、当技術分野で周知のCIE座標を使用して測定することができる。
【0007】
緑発光分子の一例は、式Iの構造を有するIr(ppy)で示される、tris(2−フェニルピリジン)イリジウムである。
【0008】
【化1】

【0009】
この、および本明細書の後半の図において、本発明者らは、窒素から金属(本明細書では、Ir)までの配位結合を直線で示す。
【0010】
本明細書で使用される「有機」という用語は、有機光電子デバイスの製作に使用することができるポリマー材料、並びに低分子有機材料を含む。「低分子」は、ポリマーではない任意の有機材料を指し、「低分子」は、実際には非常に大きくてもよい。低分子は、ある状況では繰返し単位を含んでいてもよい。例えば、置換基として長鎖アルキル基を用いても、その分子は「低分子」として分類される。低分子は、例えばポリマー主鎖の側基としてまたは主鎖の一部として、ポリマーに組み込まれていてもよい。低分子は、デンドリマーのコア部分として働いてもよく、このデンドリマーは、コア部分上に構築された一連の化学シェルからなるものである。デンドリマーのコア部分は、蛍光またはリン光低分子発光体であってもよい。デンドリマーは「低分子」であってもよく、OLEDの分野で現在使用されるすべてのデンドリマーは、低分子であると考えられる。
【0011】
本明細書で使用される「上部」は、基板から最も遠く離れていることを意味するのに対し、「底部」は、基板に最も近いことを意味する。第1の層が第2の層の「上方に配置されている」と記述する場合、この第1の層は、基板からさらに遠く離れて配置されている。第1の層が第2の層に「接触している」と示されない限り、第1および第2の層の間にその他の層が存在していてもよい。例えばカソードは、様々な有機層が間にあるとしても、アノードの「上方に配置されている」と記述してもよい。
【0012】
本明細書で使用される「溶液処理可能」とは、溶液または懸濁液の形で、液体媒体中に溶解し、分散し、または輸送すること、および/または液体媒体から堆積することが可能であることを意味する。
【0013】
リガンドが、発光物質の光活性特性に直接寄与すると考えられる場合、そのリガンドを「光活性」と呼んでもよい。リガンドが発光材料の光活性特性に寄与しないと考えられる場合、リガンドを「補助的」と呼んでもよいが、補助的リガンドは、光活性リガンドの性質を変える場合がある。
【0014】
本明細書で使用され、また当業者により一般的に理解され得る、第1の「最高被占分子軌道」(HOMO)または「最低空分子軌道」(LUMO)エネルギー準位は、第1のエネルギー準位が真空エネルギー準位により近い場合、第2のHOMOまたはLUMOエネルギー準位「よりも大きく」または当該準位「よりも高い」。イオン化電位(IP)は、真空レベルに対する負のエネルギーとして測定されるので、より高いHOMOエネルギー準位は、より小さい絶対値を有するIP(負の度合いが少ないIP)に対応する。同様に、より高いLUMOエネルギー準位は、より小さい絶対値を有する電子親和性(EA)(負の度合いが少ないEA)に対応する。最上部に真空レベルがある従来のエネルギー準位図で、材料のLUMOエネルギー準位は同じ材料のHOMOエネルギー準位よりも高い。「より高い」HOMOまたはLUMOエネルギー準位は、「より低い」HOMOまたはLUMOエネルギー準位より、そのような図の最上部により近いように見える。
【0015】
本明細書で使用されまた当業者により一般に理解される、第1の仕事関数は、この第1の仕事関数がより高い絶対値を有する場合、第2の仕事関数「よりも大きく」または当該仕事関数「よりも高い」。仕事関数は一般に、真空レベルに対する負の数として測定されるので、「より高い」仕事関数は負の度合いがより大きいことを意味する。真空レベルが最上部にある従来のエネルギー準位図において、「より高い」仕事関数は、下向き方向に真空レベルからさらに遠く離れるように示される。したがって、HOMOおよびLUMOエネルギー準位の定義は、仕事関数とは異なる規則に従う。
【0016】
OLEDに関するさらなる詳細および上述の定義は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる米国特許第7,279,704号に見出すことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】米国特許第5,844,363号
【特許文献2】米国特許第6,303,238号
【特許文献3】米国特許第5,707,745号
【特許文献4】米国特許第7,279,704号
【特許文献5】米国特許第4,769,292号
【特許文献6】米国特許出願公開第2003/0230980号
【特許文献7】米国特許第5,703,436号
【特許文献8】米国特許第6,097,147号
【特許文献9】米国特許出願公開第2004/0174116号
【特許文献10】米国特許第5,247,190号
【特許文献11】米国特許第6,091,195号
【特許文献12】米国特許第5,834,893号
【特許文献13】米国特許第6,013,982号
【特許文献14】米国特許第第6,087,196号
【特許文献15】米国特許第6,337,102号
【特許文献16】米国特許出願第10/233,470号
【特許文献17】米国特許第6,294,398号
【特許文献18】米国特許第6,468,819号
【非特許文献】
【0018】
【非特許文献1】Baldoら、「Highly Efficient Phosphorescent Emission from Organic Electroluminescent Devices」、Nature、395巻、151〜154頁、1998年
【非特許文献2】Baldoら、「Very high−efficiency green organic light−emitting devices based on electrophosphorescence」、Appl.Phys.Lett.、75巻、No.3、4〜6頁(1999)
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0019】
有機発光デバイスが提供される。デバイスは、アノードおよびカソードを含む。第1の有機層は、アノードとカソードとの間に配置される。第1の有機層は、第1の有機発光材料を含む発光層である。デバイスは、アノードと第1の有機層との間に配置された第2の有機層も含む。第2の有機層は、非発光層である。第2の有機層は、50から99重量%の濃度を有する有機低分子正孔輸送材料と、0.1から5重量%の濃度を有する有機低分子電子輸送材料とを含む。その他の材料が存在していてもよい。
【0020】
好ましくは、有機低分子電子輸送材料は、第2の有機層内に0.1から4重量%の濃度を有し、より好ましくは2から4重量%の濃度を有する。さらにより好ましくは、有機低分子電子輸送材料は、第2の有機層内に0.1から3重量%の濃度を有し、より好ましくは2から3重量%の濃度を有する。好ましくは、第2の有機層は、第1の有機層に直接接触している。
【0021】
一実施形態では、デバイスは、第2の有機層とアノードとの間に配置された第3の有機層も含み、この第3の有機層は、正孔注入材料を含んでいる。一実施形態では、第3の有機層は、アノードおよび第2の有機層に直接接触している。
【0022】
一実施形態では、デバイスは、第1の有機層とカソードとの間に配置された第4の有機層も含み、この第4の有機層は、第2の発光材料を含む発光層である。
【0023】
一実施形態では、デバイスは、第2の有機層とアノードとの間に配置された第5の有機層も含み、この第5の有機層は有機低分子正孔輸送材料を含み、有機低分子電子輸送材料を含まない。
【0024】
一実施形態では、有機低分子電子輸送材料は、有機低分子正孔輸送材料のHOMO−LUMOの差よりも少なくとも0.2eV少ない、HOMO−LUMOの差を有する。
【0025】
一実施形態では、有機低分子電子輸送材料は、有機低分子正孔輸送材料のLUMOエネルギー準位よりも少なくとも0.2eV少ないLUMOエネルギー準位を有する。
【0026】
好ましくは、第1の有機発光材料はリン光性である。
【0027】
一実施形態では、発光材料は、600から700nmの可視スペクトルでピーク発光波長を有する。別の実施形態では、発光材料は、500から600nmの可視スペクトルでピーク発光波長を有する。別の実施形態では、発光材料は、400から500nmの可視スペクトルでピーク発光波長を有する。
【0028】
有機低分子電子輸送材料用として好ましい種類の材料は、金属キノレートである。Alqは好ましい金属キノレートである。LG201も、好ましい有機低分子電子輸送材料である。
【0029】
有機低分子正孔輸送材料用として好ましい種類の材料は、アミン含有材料である。NPDは、好ましいアミン含有材料である。
【0030】
好ましくは、有機低分子電子輸送材料は、有機低分子正孔輸送材料の場合よりも高い電子移動度を有する。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】有機発光デバイスを示す図である。
【図2】個別の電子輸送層を持たない、逆有機発光デバイスを示す図である。
【図3】電子輸送材料がドープされた非発光層を有する有機発光デバイスを示す図である。
【図4】電子輸送材料がドープされた非発光層と、その他の特定の層とを有する有機発光デバイスを示す図である。
【図5】電子輸送材料がドープされた非発光層を有する、特定の有機発光デバイス構造を示す図である。
【図6】電子輸送材料がドープされた非発光層を有する、特定の有機発光デバイス構造を示す図である。
【図7】電子輸送材料がドープされた非発光層を有する、特定の有機発光デバイス構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
一般的に、OLEDは、アノードとカソードとの間に配置された、及び、アノード及びカソードに電気的に接続された少なくとも一つの有機層を含む。電流を流すと、アノードは正孔を、カソードは電子を、有機層内に注入する。注入された正孔および電子はそれぞれ、反対に帯電した電極に向かって移動する。電子および正孔が同じ分子上に局在化した場合、励起エネルギー状態を有する局在化電子−正孔対である「励起子」を形成する。光は、励起子が光電子放出メカニズムを介して緩和したときに放出される。ある場合には、励起子は、エキシマーまたはエキシプレックス上に局在化していてもよい。熱緩和などの非放射性メカニズムが生じてもよいが、一般に望ましくないと見なされる。
【0033】
初期OLEDは、例えば、参照によりその全体が組み込まれる米国特許第4,769,292号に開示されるように、一重項状態から光(蛍光)を放出する発光分子を使用していた。蛍光発光は、一般に、10ナノ秒未満の時間枠で生じる。
【0034】
より最近になって、三重項状態から光(「リン光」)を放出する発光材料を有するOLEDが、実証された。Baldoら、「Highly Efficient Phosphorescent Emission from Organic Electroluminescent Devices」、Nature、395巻、151〜154頁、1998年;(「Baldo−I」)、およびBaldoら、「Very high−efficiency green organic light−emitting devices based on electrophosphorescence」、Appl.Phys.Lett.、75巻、No.3、4〜6頁(1999)(”Baldo−II”)は、参照によりその全体が援用される。リン光については、参照により組み込まれる米国特許第7,279,704号の5〜6欄に、より詳細に記述されている。
【0035】
図1は、有機発光デバイス100を示す。この図は、必ずしも一定の縮尺で描かれているわけではない。デバイス100は、基板110、アノード115、正孔注入層120、正孔輸送層125、電子遮断層130、発光層135、正孔遮断層140、電子輸送層145、電子注入層150、保護層155、およびカソード160を含んでいてもよい。カソード160は、第1の導電層162および第2の導電層164を有する複合カソードである。デバイス100は、記述される層を順に堆積することによって製作してもよい。これら様々な層の性質および機能、並びに例示される材料は、参照により組み込まれる米国特許第7,279,704号、6〜10欄に、より詳細に記述されている。
【0036】
これらの層のそれぞれに関するさらなる例が、利用可能である。例えば、フレキシブルで透明な基板−アノードの組合せが、参照によりその全体が組み込まれる米国特許第5,844,363号に開示されている。pドープ正孔輸送層の例は、参照によりその全体が組み込まれる米国特許出願公開第2003/0230980号に開示されるように、50:1のモル比でF−TCNQがドープされたm−MTDATAである。発光およびホスト材料の例は、参照によりその全体が組み込まれているThompsonらの米国特許第6,303,238号に開示されている。nドープ電子輸送層の例は、参照によりその全体が組み込まれている米国特許出願公開第2003/0230980号に開示されるように、1:1のモル比でLiがドープされたBPhenである。参照によりその全体が組み込まれている米国特許第5,703,436号および同第5,707,745号は、重なり合う透明な導電性のスパッタ堆積されたITO層を備えた、Mg:Agなどの金属の薄層を有する複合カソードを含むカソードの例を開示する。遮断層の理論および使用については、参照によりその全体が組み込まれている米国特許第6,097,147号および米国特許出願公開第2003/0230980号に、より詳細に記述されている。注入層の例は、参照によりその全体が組み込まれている米国特許出願公開第2004/0174116号に提供される。保護層に関する記述は、参照によりその全体が組み込まれる米国特許出願公開第2004/0174116号に見出すことができる。
【0037】
図2は、逆OLED 200を示す。このデバイスは、基板210、カソード215、発光層220、正孔輸送層225、およびアノード230を含む。デバイス200は、記述される層を順に堆積することによって製作してもよい。最も一般的なOLED構成は、アノード上に配置されたカソードを有し、またデバイス200は、アノード230の下に配置されたカソード215を有するので、デバイス200を「逆」OLEDと呼んでもよい。デバイス100に関して記述されたものと同様の材料を、デバイス200の対応する層に使用してもよい。図2は、いくつかの層をデバイス100の構造からどのように省くことができるかの一例を提供する。
【0038】
図1および2に示される簡単な層構造は、非限定的な例として提供され、本発明の実施形態は、広く様々なその他の構造と関連して使用してもよいことが理解される。記述される特定の材料および構造は、事実上例示的なものであり、その他の材料および構造を使用してもよい。機能性OLEDは、種々の方法で記述される様々な層を組み合わせることによって実現してもよく、または層は、設計、性能、およびコスト要因に基づき完全に省略されてもよい。特に記述されていないその他の層を含めてもよい。特に記述されるもの以外の材料を使用してもよい。本明細書で提供される例の多くは、単一材料を含むとして様々な層について述べているが、材料の組合せ、例えばホストおよびドーパントの混合物、より一般的には混合物を、使用してもよいことが理解される。また、層は、様々な副層を有していてもよい。本明細書で様々な層に与えられる名称は、厳密に限定しようとするものではない。例えば、デバイス200において、正孔輸送層225は、正孔を輸送しかつ正孔を発光層220内に注入し、したがって正孔輸送層または正孔注入層と称してもよい。一実施形態では、OLEDは、カソードとアノードとの間に配置された「有機層」を有すると言ってもよい。この有機層は、単層を含んでいてもよく、または、たとえば図1および2に関して記述されるような種々の有機材料の多層をさらに含んでいてもよい。
【0039】
参照によりその全体が組み込まれているFriendらの米国特許第5,247,190号に開示されるような、ポリマー材料からなるOLED(PLED)などの、特に記述されていない構造および材料を使用してもよい。さらなる例として、単一有機層を有するOLEDを使用してもよい。OLEDは、例えば参照によりその全体が組み込まれているForrestらの米国特許第5,707,745号に記載されるように、積層されていてもよい。OLED構造は、図1および2に示される簡単な層状化構造から外れてもよい。例えば基板は、参照によりその全体が組み込まれているForrestらの米国特許第6,091,195号に記載されているメサ構造および/またはBulovicらの米国特許第5,834,893号に記載されているピット構造など、アウトカップリングを改善するために角度の付いた反射面を含んでいてもよい。
【0040】
他に指示しない限り、様々な実施形態の層のいずれかを、任意の適切な方法により堆積してもよい。有機層の場合、好ましい方法は、熱蒸着、参照によりその全体が組み込まれる米国特許第6,013,982号および同第6,087,196号に記載されているようなインクジェット、参照によりその全体が組み込まれるForrestらの米国特許第6,337,102号に記載されているような有機気相成長(OVPD)、および参照によりその全体が組み込まれる米国特許出願第10/233,470号に記載されているような有機気相ジェット印刷(OVJP)による堆積を含む。その他の適切な堆積方法は、スピンコーティングおよびその他の溶液ベースのプロセスを含む。溶液ベースのプロセスは、好ましくは、窒素中または不活性雰囲気中で実施される。その他の層の場合、好ましい方法は、熱蒸着を含む。好ましいパターニング方法は、マスクを通した堆積、参照によりその全体が組み込まれる米国特許第6,294,398号及び同第6,468,819号に記載されているような冷間圧接、およびインクジェットやOVJDなどの堆積方法のいくつかに関連したパターニングを含む。その他の方法を使用してもよい。堆積される材料は、特定の堆積方法に適合させるように修正してもよい。例えば、分岐又は非分岐の、及び好ましくは少なくとも三つの炭素を含む、アルキル基及びアリール基等の置換基が溶液処理され易くするために低分子内で使用されてよい。20個以上の炭素を有する置換基を使用してもよく、3〜20個の炭素が好ましい範囲である。非対称材料は再結晶の傾向が低いため、非対称構造を有する材料は対称な構造を有するものより良好な溶液処理性を有し得る。デンドリマー置換基は、低分子が溶液処理を受ける能力を高めるのに使用されてよい。
【0041】
本発明の実施形態により製作されたデバイスは、フラットパネルディスプレイ、コンピュータモニタ、テレビ、看板、屋内または屋外照明および/もしくは信号用のライト、ヘッドアップディスプレイ、完全に透明なディスプレイ、フレキシブルディスプレイ、レーザプリンタ、電話、携帯電話、携帯情報端末(PDA)、ラップトップコンピュータ、デジタルカメラ、カムコーダ、ビューファインダ、マイクロディスプレイ、車両、大面積の壁面、劇場もしくはスタジアム用スクリーン、または標識を含めた、広く様々な消費者製品に組み込まれてよい。パッシブマトリックスおよびアクティブマトリックスも含め、さまざまな制御メカニズムを、本発明により製作されたデバイスの制御に使用してもよい。デバイスの多くは、18℃から30℃など、より好ましくは室温(20〜25℃)の、人に快適な温度範囲での使用が意図される。
【0042】
本明細書に記述される材料および構造は、OLED以外のデバイスに利用してもよい。例えば、有機太陽電池および有機光検出器などのその他の光電子デバイスは、この材料および構造を用いてもよい。より一般的には、有機トランジスタなどの有機デバイスは、この材料および構造を用いてもよい。
【0043】
ハロ、ハロゲン、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリールキル、複素環基、アリール、芳香族基、およびヘテロアリールという用語は、当技術分野で公知であり、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第7,279,704号の31〜32欄で定義されている。
【0044】
有機発光デバイスが提供される。デバイスは、アノードおよびカソードを含む。第1の有機層は、アノードとカソードとの間に配置される。第1の有機層は、第1の有機発光材料を含む発光層である。デバイスは、アノードと第1の有機層との間に配置された第2の有機層も含む。第2の有機層は、非発光層である。第2の有機層は、50から99重量%の濃度を有する有機低分子正孔輸送材料と、0.1から5重量%の濃度を有する有機低分子電子輸送材料を含む。その他の材料が存在していてもよい。
【0045】
記述される構造を使用することにより、OLED寿命を、第2の有機層に有機低分子電子輸送材料を含まないデバイスに対して2倍超改善した。第2の有機層は、発光層よりもアノードのほうに近く、したがって正孔を発光層に輸送する。この層に電子輸送材料を十分な量で導入することは、いくらか直観に反しているが、それはこの電子輸送材料が、望ましくないことにデバイスの動作電圧を上昇させることが予測されると考えられかつ実際に多くの状況でそのように上昇されるからであり、これは正孔輸送材料を希釈するからである。しかし、低分子有機デバイスで正しい濃度で使用する場合は、動作電圧のこの望ましくない上昇は、デバイス寿命の望ましい延長によって十分に相殺される。第2の有機層内の有機低分子電子輸送材料に関する0.1〜5重量%の濃度、好ましい範囲は0.1〜4重量%、2〜4重量%、より好ましくは0.1〜3重量%、より好ましくは2〜3重量%の濃度は、延長されたデバイス寿命と増加した動作電圧との間の兼ね合いが、広範な材料に非常に好ましいことが予測される範囲である。
【0046】
本発明のいくつかの実施形態がなぜ作用するかに関し、いかなる理論にも拘泥するものではないが、多くの一般的なおよびそうでない場合には非常に望ましい正孔輸送材料が、電子および/または励起子からの損傷を受け易いと考えられる。これらの正孔輸送材料は、一般に、正孔輸送が主要な輸送メカニズムであり電子および励起子が比較的稀であるデバイスのアノード側で使用されるが、比較的低い濃度の電子または励起子は、経時的に、デバイス寿命を著しく短縮するのに十分な正孔輸送分子に損傷を与える可能性があることが考えられる。例えば、正孔濃度よりも10小さい電子濃度が、そのような損傷をもたらす可能性があると考えられる。
【0047】
ある特定の破損メカニズムは、隣接するEML層からHTLへの電子または励起子の漏れに起因する、正孔輸送材料上での励起子の形成である可能性がある。電子は、正孔輸送分子上の正孔と再結合し、励起子を形成する可能性がある。電子輸送材料が正孔輸送材料よりも低い発光エネルギーを有し、また正孔輸送および電子輸送材料の発光スペクトルが重なり合う、正孔輸送層でのドーパントとしての電子輸送材料の使用によって、正孔輸送材料から電子輸送材料にエネルギーが伝達される。この状況で、正孔輸送材料は、励起子が電子輸送材料上に形成されるにつれて基底状態にまで緩和される可能性がある。電子輸送材料上の励起子の存在は、正孔輸送材料上の励起子の存在ほど、デバイスの安定性に破壊的ではない。電子輸送材料上の励起子は、引き続き、好ましくは非放射的に減衰する可能性があるが、少量の放射性減衰は、デバイスのスペクトルに著しい影響を及ぼさない限り許容することができる。
【0048】
別の特定の破損メカニズムは、発光層から正孔輸送層内への電子の漏れおよび/または光の吸収に起因した、励起状態正孔輸送材料荷電分子(ラジカル陰イオンまたはポラロン)の形成である可能性がある。この場合、正孔輸送材料の陰イオン状態は、デバイスに対して破壊的である可能性がある。正孔輸送層内に存在する電子輸送材料は、正孔輸送層内を通して電子を輸送し、正孔輸送材料分子上での正孔および電子の再結合を防止することができる。好ましくは、電子輸送材料は、少なくとも0.2eVだけ正孔輸送材料よりも低いLUMOエネルギーを有し、その結果、正孔輸送層内の電子が電子輸送材料に優先的に移動しかつそこに留まることが確実になる。
【0049】
例えば、トリアリールアミン正孔輸送材料は、発光層からの電子および励起子の漏れによって、いくつかのデバイスで分解し、それによって動作中にデバイス全体の劣化が生じると考えられる。
【0050】
励起子を消光することもできる少量の電子輸送材料の導入は、有用であり得る。Alqは、そのような材料の例である。デバイス寿命の改善は、EML界面からNPD HTL内への電子または励起子の漏れに起因して形成されたNPD励起状態分子の消光によると考えられる。改善された寿命の原因と考えられる別のメカニズムは、Alqなどの電子輸送材料による、NPDなどの正孔輸送層を通した過剰な電子の輸送であり、同じNPD分子上での正孔および電子の再結合が回避される。この輸送メカニズムを利用するために、発光層からアノードに、またはおそらくは正孔注入層にまで至る単一正孔輸送層があること、および電子輸送材料が正孔輸送材料の端から端にいたるまで存在することが好ましい。しかし、いくつかの実施形態では、電子輸送層を含む正孔輸送層の他に、電子輸送材料を含まない正孔輸送層があってもよい。この場合、多くのデバイスでは、発光層の内部または発光層のすぐ隣に接する分子の分解がデバイス寿命に最も影響を及ぼす可能性があると考えられるので、デバイス寿命のみを依然として改善することができる。
【0051】
正孔輸送層での少量の電子輸送材料の導入は、好ましい濃度において、デバイスのスペクトルおよび電圧効率特性にほとんど影響を与えずにデバイス寿命を改善することが示された。この考えは、2から10%のAlqがドープされたNPD HTLを有する緑および赤のリン光OLEDで試験された。Alqは、NPDよりも低い励起状態を有しかつNPDから励起子を容易に受容するので、電子輸送材料として選択した。Alqは、NPD HTLに対する電子の損傷を避けるために、HTLを通して過剰な電子(EMLから漏れた)も輸送できる。しかし、正孔輸送および電子輸送材料の広範な組合せは、同様の結果を示すことになると考えられる。試験の結果は、5重量%以下、好ましくは4重量%、より好ましくは3重量%以下の濃度が、正孔輸送層内の電子輸送材料の濃度が非常に高くなったときに生ずる望ましくない作用を回避するのに好ましいことを示した。
【0052】
好ましくは、第2の有機層は、第1の有機層に直接接触している。発光層のアノード側のすぐ上にある非発光層、即ち発光層に接触している非発光層は、発光層のアノード側で、電子濃度が最も高いと予測される場所である。これは、低い濃度での電子輸送材料の存在から最も利益を与えることができる層である。
【0053】
アミン含有材料は、アミン基を含む任意の有機材料である。アミン含有材料は、その良好な正孔輸送特性により、OLEDに望ましい正孔輸送材料の部類である。トリアリールアミン、および特にNPDは、好ましいアミン含有材料であり、多くのOLED構造で正孔輸送材料として使用される。しかし、アミン含有材料は、上述のように電子および励起子から損傷を受け易い。NPDおよびその他のトリアリールアミン正孔輸送材料は、励起状態(陰イオン状態または励起子状態)で、特に化学的に不安定であると考えられ、それが、トリアリールアミン正孔輸送材料を使用したデバイスのより短い寿命の大きな理由である可能性がある。アミン含有材料は、本発明のいくつかの実施形態で使用される好ましい正孔輸送材料である。
【0054】
金属キノレートは、その良好な電子輸送特性により、OLEDに望ましい電子輸送材料の部類である。Alqは、好ましい金属キノレートであり、多くのOLED構造で電子輸送材料として使用される。金属キノレートは、本発明のいくつかの実施形態で使用される好ましい電子輸送材料である。
【0055】
「非発光性」とは、層が、デバイスの発光に非有意に寄与することを意味する。「非発光」とは、材料が、デバイス内で有意に発光しないがその他の状況においては発光性であり得ることを意味する。非発光性正孔輸送層内の電子輸送ドーパントが「非発光」であるか否かを測定する1つの方法は、対照デバイスに対する、ドープされたデバイスの1931 CIE座標でのシフトの測定を介する。例えば、正孔輸送層内に特定の電子輸送ドーパントを有するデバイスが、ドーパントを持たない通常なら同一のデバイスの(0.005, 0.005)内にある1931 CIE座標を有する場合、ドーパントは、「非発光」であると見なすことができる。好ましくは、1931 CIE座標における任意のシフトは、(0.003, 0.003)未満である可能性がある。多くの電子輸送材料は、正孔輸送層内にドープされる場合、望ましくないことであるがこの層からの発光をもたらし、および/または範囲が本明細書に開示されるものよりも高い場合、より高い動作電圧をもたらすと考えられる。好ましくは、第2の有機層内の低分子有機電子輸送材料の濃度は、5重量%以下であり、好ましくは4重量%以下、より好ましくは3重量%以下である。
【0056】
一実施形態では、デバイスは、第2の有機層とアノードとの間に配置された第3の有機層も含み、この第3の有機層は、正孔注入材料を含んでいる。一実施形態では、第3の有機層は、アノードおよび第2の有機層に直接接触している。第3の有機層は正孔注入層として働いてもよく、アノードから正孔を容易に受容しかつデバイスの残りの部分に注入する。
【0057】
一実施形態では、デバイスは、第1の有機層とカソードとの間に配置された第4の有機層も含み、第4の有機層は、第2の発光材料を含む発光層である。そのような第4の有機層の使用は、好ましくは、OLEDでの多数の発光材料の使用を可能にし、広い発光スペクトルおよび/または白色光を有するOLEDの生成に使用することができる。
【0058】
一実施形態では、デバイスは、第2の有機層とアノードとの間に配置された第5の有機層も含み、第5の有機層は、有機低分子正孔輸送材料を含み、有機低分子電子輸送材料を含まない。有機低分子電子輸送材料は、有機低分子正孔輸送材料が存在するどの場所にも存在しないので、この実施形態は、正孔輸送層内の低分子電子輸送材料の大半の好ましい作用が、正孔輸送層を通して電子を輸送するのとは対照的に、電子に関する再結合部位として動作する電子輸送材料に起因すると考えられる状況において最も有用である。低分子有機電子輸送材料の存在を、発光層付近の領域に限定することによって、デバイス動作電圧に対する低分子有機電子輸送材料の任意の有害な作用を、さらに最小限に抑えることができる。
【0059】
一実施形態では、有機低分子電子輸送材料は、有機低分子正孔輸送材料のHOMO−LUMOの差よりも少なくとも0.2eV少ないHOMO−LUMOの差を有する。有機低分子電子輸送材料の、より小さいHOMO−LUMOの差によって、有機低分子電子輸送材料は有機低分子正孔輸送材料からの励起子を容易に受け取ることが可能になり、一方、反対方向の励起子の移動は、それほど一般的ではない事象になる可能性がある。有機低分子電子輸送材料上の励起子の存在は、有機低分子正孔輸送材料上の励起子の存在よりも、デバイス性能に対してそれほど有害ではないと考えられる。
【0060】
一実施形態では、有機低分子電子輸送材料は、有機低分子正孔輸送材料のLUMOエネルギー準位よりも少なくとも0.2eV少ないLUMOエネルギー準位を有する。有機低分子電子輸送材料の、より低いLUMOエネルギー準位によって、有機低分子電子輸送材料は、有機低分子正孔輸送材料から電子を容易に受け取ることが可能になり、または、有機低分子正孔輸送材料に優先して正孔輸送層内に発光層から漏れた任意の電子を受け取ることが可能になる。有機低分子電子輸送材料上の電子の存在は、有機低分子正孔輸送材料上の電子の存在よりも、デバイス性能に対してそれほど有害ではないと考えられる。
【0061】
好ましくは、第1の有機発光材料はリン光性である。本明細書に開示される構造は、蛍光発光体とは対照的に、リン光発光体を使用するデバイスと併せて特に役立てることができる。一般に、リン光発光体は、蛍光デバイスの励起子寿命よりも著しく長い励起子寿命を有する。その結果、リン光デバイスでは、励起子を分子から分子に移動させかつ正孔輸送層などの隣接する層内に漏出させるという、より多くの機会が存在する可能性がある。このように、正孔輸送層での有機低分子電子輸送材料の使用によって対処される問題の1つは、リン光デバイスにおいて非常に一般的なものになる可能性がある。
【0062】
一実施形態では、発光材料は、600から700nmの可視スペクトル内のピーク発光波長を有する。別の実施形態では、発光材料は、500から600nmの可視スペクトル内でピーク発光波長を有する。別の実施形態では、発光材料は、400から500nmの可視スペクトル内でピーク発光波長を有する。正孔輸送層で有機低分子電子輸送材料を使用するための、本明細書に開示される濃度のある好ましい態様は、有機低分子電子輸送層が著しく発光しそうにない状態である。Alqなど、多くの好ましい有機低分子電子輸送材料は、いくつかの状況下で発光する可能性がある。Alqは、特に緑色光を発光する。通常なら緑色光を発光することが意図されるデバイスの、意図される発光材料ではない材料からの緑色光の発光は、あまり有害ではない可能性がある。しかし、意図される発光材料が赤または青色光を発光するデバイスでは、輸送層の材料からの緑色光の発光は、非常に望ましくない。
【0063】
有機低分子電子輸送材料の好ましい種類の材料は、金属キノレートである。Alqは、好ましい金属キノレートである。LG201も、好ましい有機低分子電子輸送材料である。
【0064】
有機低分子正孔輸送材料の好ましい種類の材料は、アミン含有材料である。NPDは、好ましいアミン含有材料である。
【0065】
好ましくは、有機低分子電子輸送材料は、有機低分子正孔輸送材料よりも高い電子移動度を有する。当業者は一般に、材料が良好な電子輸送体であるかまたは良好な正孔輸送体であるかを知っている。二極性でありかつ電子および正孔を輸送することができる2〜3種の材料があるが、最も一般的に使用される材料は、良好な電子輸送体または良好な正孔輸送体である。材料が電子輸送材料であるかまたは正孔輸送材料であるかの1つの尺度は、その材料で作製された層の電子および正孔の移動度である。電子輸送材料の層は、一般に、その正孔移動度よりも少なくとも1桁大きい電子移動度を有する。材料が電子輸送材料であるか否かを測定する別の方法は、電子輸送層にその材料を使用して、いくつかの類似したデバイスを構築することである。デバイスは、電子輸送層の厚さが異なる他は同一である。デバイスの電流電圧特性を測定し比較することにより、電子輸送材料の電子輸送特性を定量することができる。さらに、電子輸送材料の、多くの一般に知られている群を、Table 1(表1)に示す。
【0066】
図3は、電子輸送材料がドープされた正孔輸送層である、非発光層を有するデバイス300を示す。デバイス300は、アノード320およびカソード380を含む。第1の有機発光材料を含む発光層である、第1の有機層350は、アノード320とカソード380との間に配置されている。非発光層である第2の有機層340は、有機低分子電子輸送材料がドープされた有機低分子正孔輸送材料を含む。アノード320と第1の有機層350との間に位置付けられた第2の有機層340は、正孔輸送層である。デバイス300は、例示される位置でOLEDで使用される様々な有機層のいずれかであってもよい、その他の層330および370も任意選択で含む。例えば、層370は、正孔および/または励起子遮断層、電子輸送層、および電子注入層の1種または複数を示してもよい。例えば、層370は、第2の有機層340および正孔注入層の他に、正孔輸送層の1種または複数を示してもよい。そのような層の例を、図1および2に示す。その他のタイプの層が存在していてもよい。
【0067】
図4は、デバイス400を示す。デバイス400はデバイス300に類似しており、同様に、アノード320、カソード380、第1の有機層350、および第2の有機層340を含む。デバイス400はさらに、デバイス300の層330を示す。具体的には、デバイス400は、アノード320上に順に配置された正孔注入331および正孔輸送層332を含む。正孔輸送層332は、好ましくは、第2の有機層340と同じ低分子正孔輸送材料を含むが、第2の有機層340とは対照的に、正孔輸送層332は電子輸送材料を含まない。
【0068】
図5は、デバイス500を示す。デバイス500は、緑色発光デバイスに関連する実験で使用された、特定の層および材料の選択を例示する。デバイス500は、ITOの800Åの厚さの層であるアノード510、LG−101の100Åの厚さの層である正孔注入層520、300Åの厚さである正孔輸送層530、10重量%の化合物Aでドープされた化合物Bの300Åの厚さの層である発光層540、化合物Aの100Åの厚さの層である電子輸送層550、LG−201の300Åの厚さの層である別の電子輸送層560、およびLiF/Alであるカソード570を含む。化合物Aは、デバイス500の緑色リン光発光材料である。
【0069】
図6は、デバイス600を示す。デバイス600は、赤色発光デバイスに関連する実験で使用された、特定の層および材料の選択を例示する。デバイス600は、ITOの800Åの厚さの層であるアノード610、LG−101の100Åの厚さの層である正孔注入層620、400Åの厚さである正孔輸送層630、9重量%の化合物CでドープされたBAlq Bの300Åの厚さの層である発光層640、LG−201の550Åの厚さの層である別の電子輸送層650、およびLiF/Alであるカソード660を含む。化合物Cは、デバイス600の赤色リン光発光材料である。
【0070】
図7は、デバイス700を示す。デバイス700は、緑色発光デバイスに関連する実験で使用された、特定の層および材料の選択を例示する。デバイス700は、ITOの800Åの厚さの層であるアノード710、化合物Aの100Åの厚さの層である正孔注入層720、300Åの厚さである正孔輸送層730、10重量%の化合物Aでドープされた化合物Bの300Åの厚さの層である発光層740、化合物Bの100Åの厚さの層である電子輸送層750、Alqの400Åの厚さの層である別の電子輸送層760、およびLiF/Alであるカソード770を含む。化合物Aは、デバイス700の緑色リン光発光材料である。
【0071】
その他の材料との組合せ
有機発光デバイスの特定の層に有用であるとして本明細書に記述される材料は、デバイス内に存在する広く様々なその他の材料と組み合わせて使用してもよい。例えば、本明細書に開示される発光ドーパントは、広く様々なホスト、輸送層、遮断層、注入層、電極、および存在し得るその他の層と併せて使用してもよい。以下に記述されまたは言及される材料は、本明細書に開示される化合物と組み合わせて役立てることができる材料の非限定的な例であり、当業者なら、組合せで役立てることができるその他の材料を特定するのに、文献を容易に調べることができる。
【0072】
本明細書に開示される材料の他におよび/またはそのような材料と組み合わせて、多くの正孔注入材料、正孔輸送材料、ホスト材料、ドーパント材料、励起子/正孔遮断層材料、電子輸送および電子注入材料を、OLEDで使用してもよい。本明細書に開示される材料と組み合わせてOLEDで使用してもよい材料の非限定的な例を、下記のTable 1(表1)に列挙する。Table 1(表1)は、材料の非限定的な種類、各種の化合物の非限定的な例、および材料を開示する文献を列挙する
【0073】
【表1A】

【0074】
【表1B】

【0075】
【表1C】

【0076】
【表1D】

【0077】
【表1E】

【0078】
【表1F】

【0079】
【表1G】

【0080】
【表1H】

【0081】
【表1I】

【0082】
【表1J】

【0083】
【表1K】

【0084】
【表1L】

【0085】
本明細書で使用される下記の化合物は、下記の構造を有する材料を指す:
【0086】
【化2】

【0087】
LG−201は、韓国のLG Chemicalsから購入可能な化合物である。「NPD」は、N,N’−ジ(1−ナフチル)−N,N’−ジフェニルベンジジンを指す。「Alq」は、tris(8−ヒドロキシキノリン)アルミニウムを指す。BAlqは、アルミニウム(III)bis(2−メチル−8−キノリナト)4−フェニルフェノレートを指す。
【0088】
実験
トリアリールアミンHTL(NPD)を有する緑色および赤色リン光OLEDの寿命は、非ドープ型NPD HTL参照デバイスに比べ、2%の金属キノレート(Alq)をHTL中にドープすることによって、2×を超えて改善されてきた。すべてのドープパーセンテージは、重量%を単位とする。Table 2、3、および4(表2、3、および4)で報告したすべての測定は、室温環境で行った。デバイス寿命の改善は、EMLからNPD HTL内に漏れる電子または励起子に起因する、形成されたNPD励起状態分子の消光によると考えられる。ドープされたHTLは、デバイスELスペクトルを汚染することなく、緑色および赤色リン光OLEDで作用することを示し、ドープされたHTLはR、G、B OLEDの一般的な層構造で使用するのに適していることを示す。
【0089】
実験データをTable 2および3(表2および3)に示す。Table 2(表2)は、HTL以外のすべての材料を示した、図5に示される構造を有する緑色リン光OLEDに関するデータを示す。HTL材料は、Table 2(表2)に示されている。緑色リン光OLEDを、NPD HTL(比較例1)、NPD:2%Alq(実施例1)、およびNPD:10%Alq(実施例2)を使用して製作した。NPD HTL内への2%Alqドーパントの添加は、デバイスの色、効率、および電圧を著しく変えることなく、寿命を劇的に改善した(寿命×輝度の平方積[Gnits*h]に関しては2×を超え、これは、種々の輝度出力条件下で測定されたデバイスに関するデバイス寿命の近似比較指標であり−ほとんどのOLEDは、輝度寿命が1/輝度(但し、nは通常1.5から2.5の間である。)に比例する、寿命の逆べき法則依存性を有する)。HTL内のAlqドーパント濃度を10%にさらに増加することによって、40mA/cmでのデバイス寿命はさらになお延長された。しかし、デバイスの電圧、効率、および初期輝度には、著しい悪影響もあった。表は、カンデラ/ampを単位とした発光効率、%を単位とした外部量子効率、ワット当たりのルーメンを単位とした電力効率、デバイスが、初期電流束40mA/cmである場合にnitを単位として測定された初期輝度Lで、その初期輝度の80%(LT80)またはその初期輝度の90%(LT90)にまで減衰するのに必要な時間数、およびGnits時を単位として測定された寿命×輝度の積を示す。
【0090】
【表2】

【0091】
Alqは、緑色発光体であり、HTL内のAlqからの一般に望ましくない発光が、緑色リン光OLEDでは目に見えなくなる可能性がある。この理由で、BAlq:化合物C EMLを有する赤色発光デバイスは、NPD HTL(比較例2)、NPD:2%Alq(実施例3)、およびNPD:5%Alq(実施例4)上に製作した。Table 3(表3)は、HTL以外のすべての材料を示す、図6に示される構造を有する、これら赤色リン光OLEDのデータを示す。HTL材料をTable 3(表3)に示す。5重量%までの濃度でNPD HTL内にAlqドーパントを導入することにより、デバイスのCIEに著しい変化はなかった。デバイス性能は、著しく変化しない。これらの結果は、AlqがドープされたNPDを、緑色以外の色を発光するデバイスのHTLとして使用できることを示す。
【0092】
さらに、測定された電圧、効率、および初期輝度結果の変化に対するドーパント濃度の影響は、デバイスの色が原因で、著しく変化することが予測されない。したがって、Table 2および3(表2および3)を総合すれば、デバイス寿命を延ばすのに、電圧、効率、および初期輝度に対する著しい悪影響なしに5重量%までのドーパント濃度を使用することができ、一方、10重量%などのより高いドーパント濃度は、著しい悪影響をおよぼす可能性があることが示される。これらの材料が選択された理由、即ちその正孔および電子輸送特性に基づいて、結論は、一般に電子および正孔輸送材料にまで妥当に拡張できると考えられる。
【0093】
【表3】

【0094】
【表4】

【0095】
Table 4(表4)は、HTL以外のすべての材料を示す、図7に示される構造を有する緑色リン光OLEDのデータを示す。HTL材料をTable 4(表4)に示す。緑色リン光OLEDは、2および5重量%(実施例5および6)でLG−201がドープされたNPD HTLを使用して製作したが、これらは非ドープ型NPD HTLを有する比較例3よりも安定であることが示された。デバイスの実施例7および8は、スプリットHTL:150Å非ドープ型NPDおよびLG−201がドープされた150ÅNPDを有し、ドープ領域はEML層に近いものである。これらのデバイスも、比較例3の参照デバイスよりも安定である。Table 4(表4)のデータは、Table 2および3(表2および3)に示される結果を、良好な電子輸送材料となることが知られておりかつ金属キノレートではないと考えられるドーパント材料、LG201にまで拡張する。
【0096】
本明細書に記述される様々な実施形態は、単なる例示であり、本発明の範囲を限定するものではないと理解される。例えば、本明細書に記述される材料および構造の多くは、本発明の精神から逸脱することなく、その他の材料および構造に置き換えてもよい。したがって特許請求の範囲に記載される本発明は、当業者に明らかにされるように、本明細書に記述される特定の実施例および好ましい実施形態の変形例を含んでもよい。本発明がなぜ作用するかに関する様々な理論は、限定するものではないことが理解される。
【符号の説明】
【0097】
320 アノード
331 正孔注入層
332 非発光層
340 非発光層
350 発光層
380 カソード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アノードと、
カソードと、
前記アノードと前記カソードとの間に配置され、第1の有機発光材料を含む発光層である、第1の有機層と、
前記アノードと前記第1の有機層との間に配置された非発光層である第2の有機層と
を含み、
前記第2の有機層は、
50から99重量%の濃度を有する有機低分子正孔輸送材料と、
0.1から5重量%の濃度を有する有機低分子電子輸送材料と
を含む、有機発光デバイス。
【請求項2】
前記有機低分子電子輸送材料が、前記第2の有機層内で0.1から4重量%の濃度を有する、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
前記有機低分子電子輸送材料が、前記第2の有機層内で0.1から3重量%の濃度を有する、請求項1に記載のデバイス。
【請求項4】
前記有機低分子電子輸送材料が、前記第2の有機層内で2から3重量%の濃度を有する、請求項1に記載のデバイス。
【請求項5】
前記第2の有機層が、前記第1の有機層に直接接触している、請求項1に記載のデバイス。
【請求項6】
前記第2の有機層と前記アノードとの間に配置された、正孔注入材料を含む第3の有機層をさらに含み、
前記第3の有機層は前記アノードに直接接触しており、
前記第3の有機層は前記第2の有機層に直接接触している、
請求項5に記載のデバイス。
【請求項7】
前記第1の有機層と前記カソードとの間に配置された、第2の発光材料を含む発光層である第4の有機層をさらに含む、請求項1に記載のデバイス。
【請求項8】
前記第2の有機層と前記アノードとの間に配置された、有機低分子正孔輸送材料を含みかつ有機低分子電子輸送材料を含まない第5の有機層をさらに含む、請求項1に記載のデバイス。
【請求項9】
前記有機低分子電子輸送材料が、前記有機低分子正孔輸送材料のHOMO−LUMOの差よりも少なくとも0.2eV少ないHOMO−LUMOの差を有する、請求項1に記載のデバイス。
【請求項10】
前記有機低分子電子輸送材料が、前記有機低分子正孔輸送材料のLUMOエネルギー準位よりも少なくとも0.2eV少ないLUMOエネルギー準位を有する、請求項1に記載のデバイス。
【請求項11】
前記第1の有機発光材料がリン光性である、請求項1に記載のデバイス。
【請求項12】
前記発光材料が、600から700nmの可視スペクトル内でピーク発光波長を有する、請求項11に記載のデバイス。
【請求項13】
前記発光材料が、500から600nmの可視スペクトル内でピーク発光波長を有する、請求項11に記載のデバイス。
【請求項14】
前記発光材料が、400から500nmの可視スペクトル内でピーク発光波長を有する、請求項11に記載のデバイス。
【請求項15】
前記有機低分子電子輸送材料が金属キノレートである、請求項1に記載のデバイス。
【請求項16】
前記有機低分子電子輸送材料がAlqである、請求項15に記載のデバイス。
【請求項17】
前記有機低分子電子輸送材料がLG201である、請求項1に記載のデバイス。
【請求項18】
前記有機低分子正孔輸送材料がアミン含有材料である、請求項1に記載のデバイス。
【請求項19】
前記有機低分子正孔輸送材料がNPDである、請求項18に記載のデバイス。
【請求項20】
前記有機低分子電子輸送材料が、前記有機低分子正孔輸送材料よりも高い電子移動度を有する、請求項1に記載のデバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2012−511833(P2012−511833A)
【公表日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−540725(P2011−540725)
【出願日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際出願番号】PCT/US2009/059198
【国際公開番号】WO2010/068330
【国際公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【出願人】(503055897)ユニバーサル ディスプレイ コーポレイション (61)
【Fターム(参考)】