ナット保持部材
【課題】ボルト孔を有する基材をボルト接合する際に用いられ、ボルトとナットの定着性を高め、強固な締結状態を恒久的に維持するナット保持部材を提供する。
【解決手段】ナット保持部材5は、ナット6が回り止め状態にはめ込まれるナット嵌め込み部51と、ナット嵌め込み部に嵌め込まれたナット6が抜け外れないように抜け外れ防止状態でナットを保持する係止部53とから成り、係止部53は、ボルト9の先端がナット保持部材5のナット6にねじ込まれ、同ねじ込み力により前記ナット6がボルト9の頭部方向へ移動する際に、変形して抜け外れ防止状態を解除可能な形状としている。
【解決手段】ナット保持部材5は、ナット6が回り止め状態にはめ込まれるナット嵌め込み部51と、ナット嵌め込み部に嵌め込まれたナット6が抜け外れないように抜け外れ防止状態でナットを保持する係止部53とから成り、係止部53は、ボルト9の先端がナット保持部材5のナット6にねじ込まれ、同ねじ込み力により前記ナット6がボルト9の頭部方向へ移動する際に、変形して抜け外れ防止状態を解除可能な形状としている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ボルト孔を有する基材をボルト接合する際に用いるナット保持部材の技術分野に属し、更に云うとボルトとナットの定着性を高め、強固な締結状態を恒久的に維持するナット保持部材に関する。
なお、ボルト孔を有する基材をボルト接合する際にナット保持部材を用いた接合構造の代表例として、隣接するビームパイプ同士を一連にボルト接合し、支柱に取付けたブラケットへ前記ビームパイプをボルト接合により取り付けて成る道路用防護柵が挙げられる。よって、以下、道路用防護柵に使用されるナット保持部材を中心に説明する。
【背景技術】
【0002】
従来、上記ビームパイプによる道路用防護柵は、前記ビームパイプが人の手を差し入れることができない程に小径で、ビームパイプの中空部内でボルト接合用のナットを保持することが困難ないし不可能なので、ナット保持部材を使用することが知られている。
【0003】
例えば、下記の特許文献1に開示された防護柵に使用するナット保持部材は、支柱に支持されたジョイントパイプとビームパイプをボルト接合するにあたり、平プレートにナットを固着し、更に前記平プレートに吸盤を取り付けたナット保持部材であり、このナット保持部材をジョイントパイプの内部へ挿入し、吸盤を吸着させて平プレートおよびナットの位置を決め、ボルト接合を可能にする構成が開示されている。
【0004】
また、下記の特許文献2に開示された道路用防護柵に使用するナット保持部材は、支柱に支持されたジョイントパイプとビームパイプをボルト接合するにあたり、断面が溝形状の保持部材の溝中にナットをカシメて固定したナット保持部材であり、このナット保持部材をジョイントパイプの内部へ挿入し、前記ナットとボルト孔の位置を合致させた上で、ナット保持部材をリベット止め、或いはタッピングビス止め等の手段でジョイントパイプへ位置決めしてボルト接合する構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開昭55−48909号公報
【特許文献2】実開平2−6717号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記した特許文献1及び2には、道路用防護柵を構成するビームパイプの中空部が人の手を差し入れられない程小径であったり、或いは略閉鎖形状であるビームパイプであって、その中空部内へボルト接合のためのナットを差し入れて保持することが困難ないし不可能な場合のボルト接合に対処する手段として、それぞれのボルト接合の条件に応じたナット保持部材の構造が提案されている。
【0007】
しかし、各先行技術に共通して見られる問題点は、ナット保持部材の各所へナットを固定するために固着させたり、カシメている点にある。つまり、上記のようにナットを強固に固定すると、ナットが全く動かない状態となり、ボルト接合する際にボルト操作のみによりボルトの先端をナットへねじ込まなければならない。ボルトの先端をナットにねじ込む作業は、ボルト操作だけでなく、ナットもボルトの軸に合わせて寄り動く状態の方が容易であるが、上記のようにナットがナット保持部材に溶接されて全く動かない状態でのボルト接合作業は非常に煩わしいだけでなく、施工精度にバラツキが出る。
とは言え、ナット保持部材にナットを固定せずに保持させるには、ナットの座面(基材に接する側の面)を押さえる係止部を設けることが考えられるが、前記係止部を設けたナット保持部材に保持されたナットへボルトをねじ込んでいくと、最終的にはボルトとナットの間に係止部が挟まり、ボルトとナットの定着精度が著しく低下し、強固な締結を阻害する要因となってしまう。
【0008】
要するに、ナット保持部材へナットを固着又はカシメずに多少の遊びを持たせつつ、ナットの抜け外れを防止し、且つ、ボルト接合時にはナットとの安定した定着性を発揮し、強固な締結状態を保持するナット保持部材は、道路用防護柵に使用されるナット保持部材を含め現在のところ開示されていない。
【0009】
本発明の目的は、上記の問題点を解決することであり、ナットを収めたナット保持部材の構造に工夫を施すことにより、ボルトとナットの締結作業を効率良く確実に行え、且つ、ナット保持部材の設置時にはナットの抜け外れを防止し、前記ボルト接合時にはナットの抜け外れ防止状態を解除してボルトとナットの定着性を高め、強固な締結状態を恒久的に維持できるナット保持部材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するための手段として、請求項1に記載した発明に係るナット保持部材は、
ボルト孔を有する複数の基材をボルト接合する際に用いるナット保持部材であって、
前記ナット保持部材は、ボルトのねじ込みに対してナットが共回りしない状態に嵌め込まれるナット嵌め込み部と、前記ナットの座面と反対側に位置する上面が座る段部と、前記ナット嵌め込み部に嵌め込まれたナットが抜け外れないように抜け外れ防止状態でナットを保持する係止部とから成り、
前記係止部は、前記ナット嵌め込み部に嵌め込まれたナットの基材へ設置させる面である座面側に張り出す形状又は前記ナットの上面側に張り出してネジ溝に引っ掛かる突起部を備える形状であり、
前記ボルトの先端が前記ナットにねじ込まれることにより、前記係止部が変形してナットの抜け外れ防止状態を解除することを特徴とする。
【0011】
請求項2記載の発明は、請求項1記載したナット保持部材において、
ナット保持部材の係止部は、ナット嵌め込み部内に嵌め込まれたナットの座面側に張り出す爪部を有し、
前記ナット嵌め込み部に嵌め込まれたナットへボルトがねじ込まれ、そのボルトの回転により前記ナットがボルトの頭部方向へ移動することにより、前記爪部を有する係止部が曲げられてナットの抜け外れ防止状態を解除することを特徴とする。
【0012】
請求項3記載の発明は、請求項1に記載したナット保持部材おいて、
ナット保持部材の係止部は、ナット嵌め込み部内に嵌め込まれたナットの座面側に張り出す爪部であり、
前記ナット嵌め込み部に嵌め込まれたナットへボルトがねじ込まれ、そのボルトの回転により前記ナットがボルトの頭部方向へ移動することにより、前記爪部が曲げられてナットの抜け外れ防止状態を解除することを特徴とする。
【0013】
請求項4記載の発明は、請求項1に記載したナット保持部材において、
ナット保持部材の係止部は、ナット嵌め込み部の側壁を成し前記ナット嵌め込み部に嵌め込まれたナットの座面側に傾斜して被る傾斜部から成り、
前記ナット嵌め込み部に嵌め込まれたナットへボルトがねじ込まれ、そのボルトの回転により前記ナットがボルトの頭部方向へ移動することにより、同ナットが前記傾斜部へ当たり、前記側壁が外側へ曲げられてナットの抜け外れ防止状態を解除することを特徴とする。
【0014】
請求項5記載の発明は、請求項1に記載したナット保持部材において、
ナット保持部材の係止部は、ナット嵌め込み部に嵌め込まれたナットの上面側に張り出す腕部と、前記ナットのネジ孔へ挿入されて同ネジ孔のネジ溝へ引っ掛ける突起部とを有する略L字形状であり、
前記ナット嵌め込み部に嵌め込まれたナットへボルトがねじ込まれ、同ボルトの先端が前記ナットのネジ溝へ引っ掛けた前記突起部を同ナットの外方へ押し、前記腕部を曲げながら、同突起部をナットのネジ孔から押し出すことでナットの抜け外れ防止状態を解除することを特徴とする。
【0015】
請求項6記載の発明は、請求項1〜5のいずれか一に記載したナット保持部材において、
ナット保持部材のナット嵌め込み部は、ナットの外形よりも若干大きく形成され、ナット嵌め込み部に嵌め込まれたナットは、ボルトのねじ込みに対してナット嵌め込み部内で共回りしない程度に緩く保持されていることを特徴とする。
請求項7記載の発明は、請求項1〜6のいずれか一に記載したナット保持部材において、
ナット保持部材は、非発泡の合成樹脂、又は低発泡ないし中発泡の発泡樹脂で形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
請求項1〜7に記載した発明に係るナット保持部材によれば、以下の効果を奏する。
(1)ナット嵌め込み部に設けられた係止部は、ボルトの先端がナット保持部材のナットにねじ込まれ、そのボルトの回転により前記ナットがボルトの頭部方向へ移動する際又は、ボルトの先端がナットのネジ孔へねじ込まれる際に、変形してナットの抜け外れ防止状態を解除可能な構成とされている。
したがって、ナット保持部材の設置時にはナット嵌め込み部に嵌め込まれたナットの抜け外れを確実に防止するが、ボルトとナットの締結時には、ボルトの回転によりナットがボルトの頭部位置へ移動する寄動力を利用し、同寄動力によりナットの座面側に張り出た係止部を押し広げ又は折れ曲がらせることで、係止部はボルト・ナット間から押し退けられて同ナットの抜け外れ防止状態を効果的に解除できる。又は、ナットのネジ孔へボルトの先端がねじ込まれる際に、同ボルトの進入に伴ってネジ孔内へ配置した係止部が変形し同係止部がナットから押し出されることで、同ナットの抜け外れ防止状態を解除できる。そのままねじ込みを続けることで、ナットは基材へ密着し、強固なボルト締めを恒久的に安定して行うことができる。
【0017】
(2)また、このナット保持部材は、前記ナットがボルトのねじ込みに対し共回りしない状態にはめ込まれるナット嵌め込み部と、前記ナット嵌め込み部に嵌め込まれたナットが抜け外れないように抜け外れ防止状態でナットを保持する係止部とから成り、特にナット嵌め込み部は、ナットの外形よりも若干大きく形成され、ナット嵌め込み部に嵌め込まれたナットは、ナット嵌め込み部内で共回りしない程度に緩く保持されている。このように、ナットに少し遊びを持たせることで、ナットがボルトの始端へ寄り動いてボルト接合時に差し入れた接合ボルトとナットの芯合わせとボルト締め作業をボルトの操作のみで自在に行える。よって、ボルト接合当初の位置合わせ(ボルト始端の探索ないし整合)も含めて的確に迅速に行うことができ、作業能率の良いボルト接合作業を行うことができる。
もっては、斜めの状態でねじ込まれるなどの不具合を防止できるため安定した定着性を期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明のナット保持部材の一例を示す斜視図である
【図2】A〜Cは、ナット保持部材のナット嵌め込み部に嵌め込んだナットへボルトをねじ込んだ際の係止部の動きを段階的に表した断面図である。
【図3】ボルト接合構造を実施した道路用防護柵を一部を破断して示した平面図である。
【図4】図3に示した道路用防護柵の正面図である。
【図5】図3に示した道路用防護柵の側面図である。
【図6】ナット保持部材をインナースリーブの中空部内へ挿入し、ビームパイプを接合する要領の一例を示した参考図である。
【図7】実施例3のナット保持部材の一例を示す斜視図である。
【図8】A〜Cは、図7のナット保持部材のナット嵌め込み部に嵌め込んだナットへボルトをねじ込んだ際の係止部の動きを段階的に表した断面図である。
【図9】実施例4のナット保持部材の一例を示す斜視図である。
【図10】A〜Cは、図9のナット保持部材のナット嵌め込み部に嵌め込んだナットへボルトをねじ込んだ際の係止部の動きを段階的に表した断面図である。
【図11】実施例5のナット保持部材の一例について底面を上から見た斜視図である。
【図12】A〜Cは、図11のナット保持部材のナット嵌め込み部に嵌め込んだナットへボルトをねじ込んだ際の係止部の動きを段階的に表した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明は、ボルト孔3a(4a)を有する基材3(4)をボルト接合する際に用いるナット保持部材5である。
前記ナット保持部材5は、ボルトのねじ込みに対してナット6が共回りしない状態にはめ込まれるナット嵌め込み部51と、前記ナット6の上面(基材3(4)に接しない側の面)が座る段部52と、前記ナット嵌め込み部51に嵌め込まれたナット6が抜け外れないように抜け外れ防止状態でナットを保持する係止部53とから構成されている。
前記ナット保持部材5のナット嵌め込み部51は、ナット6の外形よりも若干大きく形成され、ナット嵌め込み部51に嵌め込まれたナット6は、ボルトのねじ込みに対してナット嵌め込み部51内で共回りしない程度に緩く保持されている。
前記係止部53は、ボルト9(10、11)の先端が前記ナット保持部材5のナット6にねじ込まれ、同ボルトの回転により前記ナット6がボルト9(10、11)の頭部方向へ移動する際に、弾性変形可能で抜け外れ防止状態を解除可能な形状とされている。
【実施例1】
【0020】
以下に、本発明を図示した実施例に基づいて説明する。
本発明のナット保持部材5は、ボルト孔を有する複数の基材とボルト接合する際に使用されるが、ボルト接合される様々な形状の基材について本実施例ではその一例として道路用防護柵のビームパイプ4及びインナースリーブ3並びにブラケット2とし、各ボルト接合に使用するナット保持部材5を中心に説明する。
図3〜図5は、支柱1にブラケット2を取付け、同ブラケット2へビームパイプ4をインナースリーブ3を介して取り付けるボルト接合を、同インナースリーブ3の中空部内へ挿入される図1に示すナット保持部材5に保持したナット6を利用して構築した道路用防護柵の実施例を示している。
【0021】
上記道路用防護柵に使用されるナット保持部材5は、ビームパイプ4の長さの中間部に位置する中間支柱1(以下、単に支柱1という)にブラケット2を取り付け、同ブラケット2へビームパイプ4の中間部位を取り付けるボルト9、10、11との接合に好適に実施される。
前記ナット保持部材5は、図1に示すように、その外周面の形状が、前記インナースリーブ3の中空部内へ挿入され(図4、図6参照)、同インナースリーブ3の内面へ内側から接して、同インナースリーブ3の管軸に対して直交する各方向への移動が制限される形状とされている。これは、ナット保持部材5の直径をインナースリーブ3の中空部の直径よりもほんの少しだけ小径にして同インナースリーブ3内へきっちりと収め、管軸に対して直交する方向への移動を制限する形状である。
この実施例1では、基材であるインナースリーブ3に対するナット保持部材5の位置決めは、ナット保持部材5の断面形状を上記記載のようにインナスリーブ3の管軸に対して直交する方向への移動を制限する形状にすることで、ナット6と基材のボルト孔とが対応する位置へ位置決めしている(例えばインナースリーブ3の断面形状と同じで若干小さい略円形状)。しかし、本願における基材に対するナット保持部材5の位置決めは上記に限らない。本願の全ての実施例を含め、本願の技術思想を用いるナット保持部材は、基材に対する固定方法がなんら限定されず、どのような方法を用いてもよい。たとえば、先に記載した特許文献1のように吸盤を用いて吸着させることで、基材に対してナット保持部材を位置決めしてもよい。また、特許文献2のようにリベット止めやタッピングビス止めでもよいし、基材の凹部に嵌め込んでもよいし、基材の端部や凸部を挟み込んでもよいし、接着剤による仮接着や仮溶接するなど基材に対しナット保持部材が位置決めできればどのような方法も適用できる。この設置方法は、以下に記載する他の実施例においても同様であるため、以下省略する。
また、ナット保持部材の外観形状は、これら様々な位置決めに合わせた様々な形状として適用する。
【0022】
このナット保持部材5の外周面には、前記インナースリーブ3のボルト孔3aと一致する配置(図3〜図6参照)で、ボルトのねじ込みに対してナット6が共回りしない状態に嵌め込まれるナット嵌め込み部51が設けられている。前記ナット嵌め込み部51には、嵌め込まれたナット6を抜け外れ防止状態で保持する係止部53を備えている。要するに、このナット保持部材5は、その管軸方向と周方向に、インナースリーブ3に予め設けられたボルト孔3aの個数および配置に対応する配置で、いわゆる3次元の向きにナット6を保持できる長さと外径の成形部材50を主体として構成されている。
本実施例の成形部材50は、大量生産に適して安価に軽く製造でき、取り扱いが容易であるように、熱硬化性又は熱可塑性の合成樹脂、例えばフェノール樹脂やエポキシ樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂等々を使用して成形することができる。また、低・中発泡ないし高発泡のポリスチレン樹脂やポリプロピレン樹脂等で成形して実施することも好適である。なお、非発泡の合成樹脂製として実施することもできるし、木製や金属製として製作し実施することもできる。
【0023】
上記成形部材50のナット嵌め込み部51は、具体的には、ナット6の嵌め込み位置に、ナットを嵌め込む用の孔であり、同成形部材50のインナースリーブ3の延長方向の中心軸線と直交する方向に貫通する形態で設けられている。このナット嵌め込み部51は、嵌め込んだナット6がボルト接合の作業時に共回りしない程度に固定する形状、大きさに成形されている。
このナット嵌め込み部51を貫通形態に設けた理由は、成形部材50の使用材料量を減量化し、軽量化する肉盗みにより、製造原価を引き下げるためである。ナット嵌め込み部51は、図示した正六角形のナット6を楽に挿入でき、かつ同ナット6を接合するボルトの先端で多少ぐらつかせられる余裕をもつ大きさの六角形状として、以下の構成に設けられている。
【0024】
上記ナット嵌め込み部51には、成形部材50の外周面からナット6の高さ相当の寸法だけ入った内部に、ナット6の上面(インナースリーブ3の内壁に接しない側の面)を座らせる段部52が形成されている。ナット嵌め込み部51へ嵌め入れたナット6は、その上面を前記段部52へ座らせて、ボルトのねじ込みに対してナット6が共回りしない状態に落ち着かせる構成とされている。したがって、前記段部52より以深のナット嵌め込み部51の貫通形状と大きさは、ナット6へねじ込まれるボルトの先端部が、ナット嵌め込み部51へ当たることの無いように、また、成形部材50の使用材料量の減量化と軽量化の目的を達する肉盗みの必要の形態に形成する。一方、前記段部52へ落ち着いたナット6の座面(インナースリーブ3の内壁に接する側の面)は、成形部材50をインナースリーブ3の中空部内へ挿入する際に支障とならない程度に、同成形部材50の外周面よりも少し沈み込んで外周面近傍に露出する状態にナット嵌め込み部51内に嵌め込まれている。
【0025】
上記のようにナット嵌め込み部51内へ挿入されたナット6が不用意に浮上して抜け外れる不都合を防ぐため、ナット保持部材5には、ナット6の前記座面を押さえる係止部53が、上端部に爪部53aを有する係止部53として設けられている。
図2と図6では、ナット嵌め込み部51の入口部分に、六角形の一つの辺の中央部位に、成形部材50の構成材料を弾性変形可能で抜け外れ防止状態を解除可能な形状に成形した構成で設けられている。
つまり、図2Aに示すように、ナット6が、ナット嵌め込み部51の入口部分に在る弾性変形可能な形状の係止部53を押しのけてナット嵌め込み部51の中へ挿入されると、直ちに係止部53(爪部53a)が働いて止め、ナット6が不用意に浮上したり抜け外れることを防止する。
【0026】
しかし、図2Bに示すように、前記ナット嵌め込み部51に嵌め込まれたナット6のネジ孔内6aへボルト9(10、11を含む)(図3〜図5参照)をねじ込むと、ナット6はボルトのねじ込みに対して共回りしない状態で保持されているので、同ボルト9の回転によりナット6がボルト9の頭部位置へ移動する寄動力が生じる。この寄動力により係止部53は、外側へ押し広げられ又は折れ曲がり(図2C)、同係止部53はボルト・ナット間から押し退けられて同ナット6の抜け外れ防止状態が解除される。そのままねじ込みを続けると、ナット6の座面はインナースリーブ3の内壁にしっかりと密着し、強固なボルト締めを行うことができる。因みに、符号55は、上記したナットの共回りを防止する回り止め壁である。
【0027】
前記ナット保持部材5の両端部には、インナースリーブ3内への挿入又は引き抜き操作の便利のために掴み部54が設けられ、掴み部54の先端部の上下両面には、指先で掴みやすく又は滑り難くするグリップエンド54aが形成されることが好ましい。これは、ナット保持部材5の挿入方向の勝手を、目視又は手で掴んだ際の感触で確認を容易にさせるためで、掴み部54に凹み54bを形成することは適宜なされる(図6参照)。
【0028】
次に、上記構成のナット保持部材5を使用してビームパイプ4同士の連結及び支柱1へ取り付けるボルト接合について図3〜図6に基づいて説明する。
先ず、上記各ボルト接合作業に先行して、予め支柱1の上端へブラケット2が、その上端部を車道側に向かって水平方向(直径線方向)に貫通させたボルト7とナット8とで取り付けられている。このボルト7の他端及び同他端へ締結したナット8は、図3及び図5に示すように、前記ボルト7およびナット8で支柱へ固定されたブラケット2の固定部位からその上方部を迂回して車道側へ突き出されたパイプ受け部2aにより上面部が覆われている。
【0029】
上記のように支柱1へ取り付けたブラケット2へインナースリーブ3を介してビームパイプ4を取り付けるべく、先ず、図4、図6に示すように、インナースリーブ3のボルト孔3aの配置および個数と合致するようにナット嵌め込み部51を形成したナット保持部材5を、掴み部54を活用してインナースリーブ3の左右両端の開口部からその中空部内へ左右2個挿入して位置決めする。
【0030】
続いて例えば、右側のビームパイプ4Rの中空部内へ前記インナースリーブ3を中間位置まで、つまりインナースリーブ3の左側部分がビームパイプ4Rの先端から突き出る状態まで挿入し、ビームパイプ4Rの端部に予め設けてあるボルト孔4a−1〜4a−3を、インナースリーブ3の各ボルト孔3a(3個)の位置と合致させる。
その後、ビームパイプ4Rの3つボルト孔4aのうち、内方のボルト孔4a−1および同内方寄りに隣接して位置するボルト孔4a−2へボルト9、10を差し入れナット保持部材5の対応するナット6へねじ込み締結する。この際、上述したようにナット保持部材5のナット嵌め込み部51に設けられた係止部53(爪部53a)は、ボルト9、10の回転によりボルト頭部方向へ移動するナット6と当たり、同係止部53が外側へ押し退けられて(図2C)同ナット6の抜け外れ防止状態を効果的に解除することで、ナット6の座面がインナースリーブ3の内壁へ密着して、定着精度の高いボルト接合が行なわれる。
【0031】
次に、支柱1へ取り付けたブラケット2へ、前記状態のビームパイプ4Rを取り付ける構成を説明する。
前記支柱1に取り付けられたブラケット2の前面には、ビームパイプ4Rの外形と同じ曲率で凹面状に湾曲させたパイプ受け部2aが設けられている(図5参照)。同パイプ受け部2aに対して、上記のようにインナースリーブ3の左側半分が突き出た状態のビームパイプ4Rが当てがわれる。そして、同ブラケット2の前面のパイプ受け部2aへ予め設けておいたボルト孔(図示省略)と、ビームパイプ4Rにおいて最も外端寄り位置のボルト孔4a−3とを合致させ、同パイプ受け部2aの背面側から同ボルト孔へボルト11を差し入れ、ナット保持部材5の対応するナット6へねじ込み、上述したようにボルトの回転により係止部53(爪部53a)の抜け外れ防止状態を解除して締結させて、ビームパイプ4Rとインナースリーブ3並びにブラケット2とを三位一体の関係で強固にボルト接合することができる。
図1中の符号12は、支柱1の上端へ被せ、上記のボルト7で固定したキャップである。
【0032】
上記のようにインナースリーブ3の左側半分を突き出した状態のビームパイプ4Rをブラケット2へ取り付けた後、左側のビームパイプ4Lを用意し、その中空部内を前記左側半分突き出たインナースリーブ3へ嵌め入れ、先行してボルト接合されている右側のビームパイプ4Rと長手方向の中央部位で当接状態に突き合わせ、同ビームパイプ4Lの端部に予め設けてあるボルト孔4a−1、4a−2とインナースリーブ3の左側の各ボルト孔3aとを一致させて、上記した要領でボルト9、10によるボルト接合が行われる。
【0033】
その後、ビームパイプ4Lのボルト孔4a−3とブラケット2のボルト孔とをボルト11によりボルト接合する点も上記したと同様の要領で実施して、ビームパイプ4R、4L同士の連結と支柱1へのボルト接合が完了する。
したがって、本発明のナット保持部材5は、ボルト接合時に差し入れた接合ボルトとナットの芯合わせと、ボルト締め作業をボルトの操作のみで自在に行えて、作業者が目視しずらい箇所のボルト接合を容易に且つ正確にならしめる。また、ナット保持部材5の係止部53(爪部53a)が、ナット保持部材5のインナースリーブ3への設置時にはナット嵌め込み部51に嵌め込まれたナット6の抜け外れを確実に防止するが、ボルトとナットの締結時には、ボルト9(10、11)の回転によりナット6がボルト9の頭部位置へ移動する寄動力を利用し、同寄動力により係止部53が外向きに押し広げられ又は折れ曲がることで、係止部53を外側へ押し退けて同ナット6の抜け外れ防止状態を効果的に解除して、密着性の高い強固なボルト締めを行うことができるのである。
【実施例2】
【0034】
実施例1では、道路用防護柵のビームパイプの各ボルト接合に使用するナット保持部材5について説明したが、勿論この限りではない。
ボルト孔を有する例えばライナープレートや継手などの基材をボルト接合する際にも、全体形状を適宜設計変更し、上記ナット嵌め込み部51及び係止部53などボルト接合を良好にする上記各構造を同様に適用して実施できる。つまり、係止部53がナット保持部材5を基材へ設置する際にはナットの抜け外れを防止し、ボルト接合する際には前記ナットの抜け外れ防止状態を効果的に解除する上記構成を適宜実施できる。
【実施例3】
【0035】
本発明のナット保持部材5の係止部53の構成は、実施例1で説明した構造に限らない。
即ち、ナット保持部材5のナット嵌め込み部51内へナット6を保持する際には、ナット6の抜け外れを防止し、ボルト接合の際には、ボルトの回転によるナット6の寄動力を利用してナットの抜け外れ防止状態を解除できる構造であればよい。
図7、図8A〜Cには、ナット嵌め込み部51を一個とする単純形状で表したナット保持部材5Tを示した。勿論、図1に示したナット保持部材5について、複数のナット嵌め込み部51を本実施例とかえても、同様に実施することができることを念のため付言する。
図示したナット保持部材5Tは、基本的には図1に示したナット保持部材5と同様の技術的思想を持つ。
【0036】
上記ナット6を保持するナット嵌め込み部51は、ナット6がボルトのねじ込みに対して共回りしない程度に固定でき、ボルトの先端で多少ぐらつかせられる遊びがある六角形状であり、その底部にナット6の上面を座らせる段部52Tが形成されていると共に、底部はボルトを貫通させるべく貫通した状態とされている。このナット嵌め込み部51は、ナット6の上面がナット保持部材5Tの外周面より少し沈み込める深さとされ、上部はボルトを挿入しやすくナット6よりかなり幅広に形成している。
更に、ナット6をナット嵌め込み部51Tへ嵌め入れた際にナット6が不要に抜け外れることを防止する係止部53Tが設けられている。この係止部53Tは、同ナット嵌め込み部51T内であって、同ナット嵌め込み部51Tへ嵌め込まれるナット6の座面に被り、内方へ水平方向に張り出す爪部53Tとして設けられている。図示した爪部53Tは、弾性変形可能な樹脂製であり、三つの角に一定の隙間を空けて相対峙する配置で設けられている。因みに、符号55Tは、上記ナットの共回りを防止する回り止め壁である。
【0037】
したがって、ナット6を上方からナット嵌め込み部51Tの3角にある弾性変形可能な爪部53Tを押し下げてナット嵌め込み部51T内へ挿入すると、図8Aに示すように、直ちに係止部53Tが元の水平位置へ戻りナット6の座面に張り出してナット6が抜け外れることを防止する。
上記構成のナット保持部材5Tを、図8Bに示すように、ナット保持部材5Tを基材(インナースリーブ3及びビームパイプ4を含み、以下単に基材3(4)と云う)の内壁に、そのナット嵌め込み部51Tと基材3(4)のボルト孔(3a及び4a)とが合致する位置に設置し、ボルト9(10、11)を基材3(4)のボルト孔(3a及び4a)へ通し、前記ナット嵌め込み部51Tに嵌め込まれたナット6のネジ孔内6aへねじ込むと、そのボルトの回転により前記ナット6がボルト9の頭部方向へ移動する際に、前記爪部53Tが上方へ折れ曲がってナットの抜け外れ防止状態が解除され、そのままボルトの回転を続けると図8Cに示すように、同ナット6の座面が基材3(4)の内壁と密接に定着し、強固なボルト締結が行える。
【実施例4】
【0038】
ナット保持部材5の係止部53の構成は、実施例1、3の限りではない。
図9、図10A〜Cに実施例4のナット保持部材5Uを示した。
このナット保持部材5Uも、ナット嵌め込み部51を一個とする単純形状で表すが、勿論、図1に示したナット保持部材5について、各ナット嵌め込み部51を本実施例にかえても同様に実施することができる。
前記ナット保持部材5Uは底部が矩形とされ、その中央部はボルトが貫通するべく貫通した状態とされている。前記ナット嵌め込み部51Uは、矩形状の底部の相対峙する二辺から立設された回り止め壁55Uと、相対峙する異なる二辺から立設された係止部53U(又は係止壁とも云う)とで構成されている。つまり係止部53Uはナット嵌め込み部51Uの二側壁を成している。勿論、ナット嵌め込み部51Uは係止部53Uを四辺全てに設けた構成として実施することもできるし、回り止め壁55Uを3側壁に設け、係止部53Uを1辺から立設させた構成としてもよい。
【0039】
前記回り止め壁55Uの高さは係止壁53Uの高さより若干高く形成されており、六角ナット6の相対峙する2辺を拘束することでナット6のボルトのねじ込みに対する共回りを防止する。また、二側壁を成す前記係止壁53U、53Uは互いにナット6がボルトの先端でぐらつかせられる程度の隙間を有し、その上方がナット6の座面(基材3(4)に接する側の面)に被る程度に内方に向かって傾斜する傾斜部530と、係止壁53Uの外壁下方寄りに設けた断面積が薄いV字形状の切り込み部531とで構成されている。因みに前記切り込み部531は係止壁53Uの内壁下方寄りに設けて実施することもできる。上記ナット嵌め込み部51Uを構成する部材は弾性変形可能な材質で形成されている。したがって、ナット嵌め込み部51Uへナット6を嵌め入れるには、弾性変形可能な係止壁53Uと53Uを外側へ押し広げてナット6をセッティングすることができる。ナット嵌め込み部51Uに嵌め込まれたナット6は段部52Uに座ってセッティングされる。
【0040】
上記ナット6を具備したナット保持部材5Uを、図10Aに示すように、基材3(4)の内壁にナット嵌め込み部51Uと基材3(4)のボルト孔(3a及び4a)と一致させ、同基材3(4)の内壁と前記ナット嵌め込み部51Uを構成するせいの高い回り止め壁55Uの頂面と接触させて前述した様々な位置決め方法で設置される。
この時、せいの低い係止壁53Uの頂部と基材3(4)の内壁とは当然隙間が生じている。因みに、基材が閉鎖断面ではない場合には、前記回り止め壁55Uの頂面とのみ基材3(4)の内壁と溶接などにより連結して実施される。
【0041】
上記の状態で、図10Bに示すように、ボルト9(10、11を含む)を基材3(4)のボルト孔(3a及び4a)へ通し、前記ナット嵌め込み部51Uに嵌め込まれたナット6のネジ孔6aへねじ込むと、そのボルトの回転により同ボルトと共回りしない状態に保持された前記ナット6がボルト9の頭部方向へ移動するに伴い、同ナット6が前記ナット嵌め込み部51Uを構成する係止壁53Uの傾斜部530へ当たり、その切り込み部531から外側へ折れ曲がることでナット6の抜け外れ防止状態が解除され、そのままねじ込みを続けることで、ナット6の座面は基材3(4)の内壁に密着し、強固なボルト締めを行うことができる。因みに前記係止壁53Uはせいが低く形成されているので、外側へ折れ曲がる際に基材3(4)に接触する虞が無い。
【実施例5】
【0042】
上記ナット保持部材5の係止部53の構成は、実施例1、3、4の限りではない。
図11、図12A〜Cに実施例5のナット保持部材5Vを示した。
このナット保持部材5Vも、ナット嵌め込み部51を一個とする単純形状で表すが、勿論、図1に示したナット保持部材5について、各ナット嵌め込み部51を本実施例をかえても同様に実施することができる。
【0043】
このナット保持部材5Vは、やはり六角ナット6をボルトのねじ込みに対して共回りしない状態で、且つ多少の遊びを有する六角形状のナット嵌め込み部51Vが形成されている。この嵌め込み部51Vの底部も貫通した状態とされている。
このナット嵌め込み部51Vにもやはりナット6の抜け外れを防止し且つボルト接合時にはナット6の抜け外れ防止状態を解除する係止部53Vが設けられている。因みに、符号55Vは、やはりボルトのねじ込みに対するナット6の共回りを防止する回り止め壁である。
【0044】
前記係止部53Vは、図12Aに示すように、ナット嵌め込み部51Vの底部から水平に伸びる腕部56Vと、同ナット嵌め込み部51Vに嵌め込まれたナット6のネジ孔6aへ挿入されて、同ナット6のネジ孔6aのネジ溝6bへ引っ掛ける突起部57Vとを有する。つまり、係止部53Vは、腕部56Vと突起部57Vとから成る略L字形状である。因みに、腕部56Vの水平部分はナット6を座らせる段部52Vを兼ねて実施することもできるが、段部52Vを図12Aに示すように別に設けてもどちらでもよい。突起部57Vは、ナット6のネジ溝6bに引っ掛かる大きさと形状で設けられている。
したがって、ナット嵌め込み部51Vへナット6を嵌め入れるには、ナット6を同ナット嵌め込み部51Vの上方から差し入れ、係止部53Vの突起部57Vがナット6のネジ孔6aへ収まるように押し込むことで、突起部57Vがネジ溝6bへ引っ掛かりナット6が抜け外れることを防止する。
【0045】
上記のようにナット6を具備したナット保持部材5Vを、図12Bに示すように、そのナット嵌め込み部51Vと基材3(4)のボルト孔(3a及び4a)とが合致する位置に設置させ、ボルト9(10、11)を基材3(4)のボルト孔(3a及び4a)へ通し、前記ナット嵌め込み部51Vに嵌め込まれたナット6へねじ込むと、前記ナット6のネジ孔6aへ挿入されている係止部53Vを構成する突起部57Vがボルト9(10、11)の進入により下方へ押されて腕部56Vが曲がり、さらにボルト9(10、11)を回転させることでナット6の外方へ突起部57Vが押し出される。これにより、ナット6の抜け外れ防止状態が解除され、そのままねじ込みを続けることで、ナット6の座面は基材の内壁に密着し、強固なボルト締めを行うことができる。
【0046】
以上に本発明を図示した実施例に基づいて説明したが、本発明は、上記実施例の構成に限定されない。その目的と要旨を逸脱しない範囲において、当業者が必要に応じて行う設計変更、応用のバリエーションの範囲を含むことを念のため言及する。例えば、図示例では六角形状のナットを保持するナット保持部材を例に取り説明したが、四角形状のナットにおいても同様の技術的思想に基づいて実施できる。
【符号の説明】
【0047】
1 支柱
2 ブラケット
3 インナースリーブ
3a ボルト孔
4 ビームパイプ
5、5T、5U、5V ナット保持部材
6 ナット
9.10、11 ボルト
51 ナット嵌め込み部
52 段部
53 係止部(係止壁)
53a 爪部
54 掴み部
55 回り止め壁
56V 腕部
57V 突起部
【技術分野】
【0001】
この発明は、ボルト孔を有する基材をボルト接合する際に用いるナット保持部材の技術分野に属し、更に云うとボルトとナットの定着性を高め、強固な締結状態を恒久的に維持するナット保持部材に関する。
なお、ボルト孔を有する基材をボルト接合する際にナット保持部材を用いた接合構造の代表例として、隣接するビームパイプ同士を一連にボルト接合し、支柱に取付けたブラケットへ前記ビームパイプをボルト接合により取り付けて成る道路用防護柵が挙げられる。よって、以下、道路用防護柵に使用されるナット保持部材を中心に説明する。
【背景技術】
【0002】
従来、上記ビームパイプによる道路用防護柵は、前記ビームパイプが人の手を差し入れることができない程に小径で、ビームパイプの中空部内でボルト接合用のナットを保持することが困難ないし不可能なので、ナット保持部材を使用することが知られている。
【0003】
例えば、下記の特許文献1に開示された防護柵に使用するナット保持部材は、支柱に支持されたジョイントパイプとビームパイプをボルト接合するにあたり、平プレートにナットを固着し、更に前記平プレートに吸盤を取り付けたナット保持部材であり、このナット保持部材をジョイントパイプの内部へ挿入し、吸盤を吸着させて平プレートおよびナットの位置を決め、ボルト接合を可能にする構成が開示されている。
【0004】
また、下記の特許文献2に開示された道路用防護柵に使用するナット保持部材は、支柱に支持されたジョイントパイプとビームパイプをボルト接合するにあたり、断面が溝形状の保持部材の溝中にナットをカシメて固定したナット保持部材であり、このナット保持部材をジョイントパイプの内部へ挿入し、前記ナットとボルト孔の位置を合致させた上で、ナット保持部材をリベット止め、或いはタッピングビス止め等の手段でジョイントパイプへ位置決めしてボルト接合する構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開昭55−48909号公報
【特許文献2】実開平2−6717号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記した特許文献1及び2には、道路用防護柵を構成するビームパイプの中空部が人の手を差し入れられない程小径であったり、或いは略閉鎖形状であるビームパイプであって、その中空部内へボルト接合のためのナットを差し入れて保持することが困難ないし不可能な場合のボルト接合に対処する手段として、それぞれのボルト接合の条件に応じたナット保持部材の構造が提案されている。
【0007】
しかし、各先行技術に共通して見られる問題点は、ナット保持部材の各所へナットを固定するために固着させたり、カシメている点にある。つまり、上記のようにナットを強固に固定すると、ナットが全く動かない状態となり、ボルト接合する際にボルト操作のみによりボルトの先端をナットへねじ込まなければならない。ボルトの先端をナットにねじ込む作業は、ボルト操作だけでなく、ナットもボルトの軸に合わせて寄り動く状態の方が容易であるが、上記のようにナットがナット保持部材に溶接されて全く動かない状態でのボルト接合作業は非常に煩わしいだけでなく、施工精度にバラツキが出る。
とは言え、ナット保持部材にナットを固定せずに保持させるには、ナットの座面(基材に接する側の面)を押さえる係止部を設けることが考えられるが、前記係止部を設けたナット保持部材に保持されたナットへボルトをねじ込んでいくと、最終的にはボルトとナットの間に係止部が挟まり、ボルトとナットの定着精度が著しく低下し、強固な締結を阻害する要因となってしまう。
【0008】
要するに、ナット保持部材へナットを固着又はカシメずに多少の遊びを持たせつつ、ナットの抜け外れを防止し、且つ、ボルト接合時にはナットとの安定した定着性を発揮し、強固な締結状態を保持するナット保持部材は、道路用防護柵に使用されるナット保持部材を含め現在のところ開示されていない。
【0009】
本発明の目的は、上記の問題点を解決することであり、ナットを収めたナット保持部材の構造に工夫を施すことにより、ボルトとナットの締結作業を効率良く確実に行え、且つ、ナット保持部材の設置時にはナットの抜け外れを防止し、前記ボルト接合時にはナットの抜け外れ防止状態を解除してボルトとナットの定着性を高め、強固な締結状態を恒久的に維持できるナット保持部材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するための手段として、請求項1に記載した発明に係るナット保持部材は、
ボルト孔を有する複数の基材をボルト接合する際に用いるナット保持部材であって、
前記ナット保持部材は、ボルトのねじ込みに対してナットが共回りしない状態に嵌め込まれるナット嵌め込み部と、前記ナットの座面と反対側に位置する上面が座る段部と、前記ナット嵌め込み部に嵌め込まれたナットが抜け外れないように抜け外れ防止状態でナットを保持する係止部とから成り、
前記係止部は、前記ナット嵌め込み部に嵌め込まれたナットの基材へ設置させる面である座面側に張り出す形状又は前記ナットの上面側に張り出してネジ溝に引っ掛かる突起部を備える形状であり、
前記ボルトの先端が前記ナットにねじ込まれることにより、前記係止部が変形してナットの抜け外れ防止状態を解除することを特徴とする。
【0011】
請求項2記載の発明は、請求項1記載したナット保持部材において、
ナット保持部材の係止部は、ナット嵌め込み部内に嵌め込まれたナットの座面側に張り出す爪部を有し、
前記ナット嵌め込み部に嵌め込まれたナットへボルトがねじ込まれ、そのボルトの回転により前記ナットがボルトの頭部方向へ移動することにより、前記爪部を有する係止部が曲げられてナットの抜け外れ防止状態を解除することを特徴とする。
【0012】
請求項3記載の発明は、請求項1に記載したナット保持部材おいて、
ナット保持部材の係止部は、ナット嵌め込み部内に嵌め込まれたナットの座面側に張り出す爪部であり、
前記ナット嵌め込み部に嵌め込まれたナットへボルトがねじ込まれ、そのボルトの回転により前記ナットがボルトの頭部方向へ移動することにより、前記爪部が曲げられてナットの抜け外れ防止状態を解除することを特徴とする。
【0013】
請求項4記載の発明は、請求項1に記載したナット保持部材において、
ナット保持部材の係止部は、ナット嵌め込み部の側壁を成し前記ナット嵌め込み部に嵌め込まれたナットの座面側に傾斜して被る傾斜部から成り、
前記ナット嵌め込み部に嵌め込まれたナットへボルトがねじ込まれ、そのボルトの回転により前記ナットがボルトの頭部方向へ移動することにより、同ナットが前記傾斜部へ当たり、前記側壁が外側へ曲げられてナットの抜け外れ防止状態を解除することを特徴とする。
【0014】
請求項5記載の発明は、請求項1に記載したナット保持部材において、
ナット保持部材の係止部は、ナット嵌め込み部に嵌め込まれたナットの上面側に張り出す腕部と、前記ナットのネジ孔へ挿入されて同ネジ孔のネジ溝へ引っ掛ける突起部とを有する略L字形状であり、
前記ナット嵌め込み部に嵌め込まれたナットへボルトがねじ込まれ、同ボルトの先端が前記ナットのネジ溝へ引っ掛けた前記突起部を同ナットの外方へ押し、前記腕部を曲げながら、同突起部をナットのネジ孔から押し出すことでナットの抜け外れ防止状態を解除することを特徴とする。
【0015】
請求項6記載の発明は、請求項1〜5のいずれか一に記載したナット保持部材において、
ナット保持部材のナット嵌め込み部は、ナットの外形よりも若干大きく形成され、ナット嵌め込み部に嵌め込まれたナットは、ボルトのねじ込みに対してナット嵌め込み部内で共回りしない程度に緩く保持されていることを特徴とする。
請求項7記載の発明は、請求項1〜6のいずれか一に記載したナット保持部材において、
ナット保持部材は、非発泡の合成樹脂、又は低発泡ないし中発泡の発泡樹脂で形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
請求項1〜7に記載した発明に係るナット保持部材によれば、以下の効果を奏する。
(1)ナット嵌め込み部に設けられた係止部は、ボルトの先端がナット保持部材のナットにねじ込まれ、そのボルトの回転により前記ナットがボルトの頭部方向へ移動する際又は、ボルトの先端がナットのネジ孔へねじ込まれる際に、変形してナットの抜け外れ防止状態を解除可能な構成とされている。
したがって、ナット保持部材の設置時にはナット嵌め込み部に嵌め込まれたナットの抜け外れを確実に防止するが、ボルトとナットの締結時には、ボルトの回転によりナットがボルトの頭部位置へ移動する寄動力を利用し、同寄動力によりナットの座面側に張り出た係止部を押し広げ又は折れ曲がらせることで、係止部はボルト・ナット間から押し退けられて同ナットの抜け外れ防止状態を効果的に解除できる。又は、ナットのネジ孔へボルトの先端がねじ込まれる際に、同ボルトの進入に伴ってネジ孔内へ配置した係止部が変形し同係止部がナットから押し出されることで、同ナットの抜け外れ防止状態を解除できる。そのままねじ込みを続けることで、ナットは基材へ密着し、強固なボルト締めを恒久的に安定して行うことができる。
【0017】
(2)また、このナット保持部材は、前記ナットがボルトのねじ込みに対し共回りしない状態にはめ込まれるナット嵌め込み部と、前記ナット嵌め込み部に嵌め込まれたナットが抜け外れないように抜け外れ防止状態でナットを保持する係止部とから成り、特にナット嵌め込み部は、ナットの外形よりも若干大きく形成され、ナット嵌め込み部に嵌め込まれたナットは、ナット嵌め込み部内で共回りしない程度に緩く保持されている。このように、ナットに少し遊びを持たせることで、ナットがボルトの始端へ寄り動いてボルト接合時に差し入れた接合ボルトとナットの芯合わせとボルト締め作業をボルトの操作のみで自在に行える。よって、ボルト接合当初の位置合わせ(ボルト始端の探索ないし整合)も含めて的確に迅速に行うことができ、作業能率の良いボルト接合作業を行うことができる。
もっては、斜めの状態でねじ込まれるなどの不具合を防止できるため安定した定着性を期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明のナット保持部材の一例を示す斜視図である
【図2】A〜Cは、ナット保持部材のナット嵌め込み部に嵌め込んだナットへボルトをねじ込んだ際の係止部の動きを段階的に表した断面図である。
【図3】ボルト接合構造を実施した道路用防護柵を一部を破断して示した平面図である。
【図4】図3に示した道路用防護柵の正面図である。
【図5】図3に示した道路用防護柵の側面図である。
【図6】ナット保持部材をインナースリーブの中空部内へ挿入し、ビームパイプを接合する要領の一例を示した参考図である。
【図7】実施例3のナット保持部材の一例を示す斜視図である。
【図8】A〜Cは、図7のナット保持部材のナット嵌め込み部に嵌め込んだナットへボルトをねじ込んだ際の係止部の動きを段階的に表した断面図である。
【図9】実施例4のナット保持部材の一例を示す斜視図である。
【図10】A〜Cは、図9のナット保持部材のナット嵌め込み部に嵌め込んだナットへボルトをねじ込んだ際の係止部の動きを段階的に表した断面図である。
【図11】実施例5のナット保持部材の一例について底面を上から見た斜視図である。
【図12】A〜Cは、図11のナット保持部材のナット嵌め込み部に嵌め込んだナットへボルトをねじ込んだ際の係止部の動きを段階的に表した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明は、ボルト孔3a(4a)を有する基材3(4)をボルト接合する際に用いるナット保持部材5である。
前記ナット保持部材5は、ボルトのねじ込みに対してナット6が共回りしない状態にはめ込まれるナット嵌め込み部51と、前記ナット6の上面(基材3(4)に接しない側の面)が座る段部52と、前記ナット嵌め込み部51に嵌め込まれたナット6が抜け外れないように抜け外れ防止状態でナットを保持する係止部53とから構成されている。
前記ナット保持部材5のナット嵌め込み部51は、ナット6の外形よりも若干大きく形成され、ナット嵌め込み部51に嵌め込まれたナット6は、ボルトのねじ込みに対してナット嵌め込み部51内で共回りしない程度に緩く保持されている。
前記係止部53は、ボルト9(10、11)の先端が前記ナット保持部材5のナット6にねじ込まれ、同ボルトの回転により前記ナット6がボルト9(10、11)の頭部方向へ移動する際に、弾性変形可能で抜け外れ防止状態を解除可能な形状とされている。
【実施例1】
【0020】
以下に、本発明を図示した実施例に基づいて説明する。
本発明のナット保持部材5は、ボルト孔を有する複数の基材とボルト接合する際に使用されるが、ボルト接合される様々な形状の基材について本実施例ではその一例として道路用防護柵のビームパイプ4及びインナースリーブ3並びにブラケット2とし、各ボルト接合に使用するナット保持部材5を中心に説明する。
図3〜図5は、支柱1にブラケット2を取付け、同ブラケット2へビームパイプ4をインナースリーブ3を介して取り付けるボルト接合を、同インナースリーブ3の中空部内へ挿入される図1に示すナット保持部材5に保持したナット6を利用して構築した道路用防護柵の実施例を示している。
【0021】
上記道路用防護柵に使用されるナット保持部材5は、ビームパイプ4の長さの中間部に位置する中間支柱1(以下、単に支柱1という)にブラケット2を取り付け、同ブラケット2へビームパイプ4の中間部位を取り付けるボルト9、10、11との接合に好適に実施される。
前記ナット保持部材5は、図1に示すように、その外周面の形状が、前記インナースリーブ3の中空部内へ挿入され(図4、図6参照)、同インナースリーブ3の内面へ内側から接して、同インナースリーブ3の管軸に対して直交する各方向への移動が制限される形状とされている。これは、ナット保持部材5の直径をインナースリーブ3の中空部の直径よりもほんの少しだけ小径にして同インナースリーブ3内へきっちりと収め、管軸に対して直交する方向への移動を制限する形状である。
この実施例1では、基材であるインナースリーブ3に対するナット保持部材5の位置決めは、ナット保持部材5の断面形状を上記記載のようにインナスリーブ3の管軸に対して直交する方向への移動を制限する形状にすることで、ナット6と基材のボルト孔とが対応する位置へ位置決めしている(例えばインナースリーブ3の断面形状と同じで若干小さい略円形状)。しかし、本願における基材に対するナット保持部材5の位置決めは上記に限らない。本願の全ての実施例を含め、本願の技術思想を用いるナット保持部材は、基材に対する固定方法がなんら限定されず、どのような方法を用いてもよい。たとえば、先に記載した特許文献1のように吸盤を用いて吸着させることで、基材に対してナット保持部材を位置決めしてもよい。また、特許文献2のようにリベット止めやタッピングビス止めでもよいし、基材の凹部に嵌め込んでもよいし、基材の端部や凸部を挟み込んでもよいし、接着剤による仮接着や仮溶接するなど基材に対しナット保持部材が位置決めできればどのような方法も適用できる。この設置方法は、以下に記載する他の実施例においても同様であるため、以下省略する。
また、ナット保持部材の外観形状は、これら様々な位置決めに合わせた様々な形状として適用する。
【0022】
このナット保持部材5の外周面には、前記インナースリーブ3のボルト孔3aと一致する配置(図3〜図6参照)で、ボルトのねじ込みに対してナット6が共回りしない状態に嵌め込まれるナット嵌め込み部51が設けられている。前記ナット嵌め込み部51には、嵌め込まれたナット6を抜け外れ防止状態で保持する係止部53を備えている。要するに、このナット保持部材5は、その管軸方向と周方向に、インナースリーブ3に予め設けられたボルト孔3aの個数および配置に対応する配置で、いわゆる3次元の向きにナット6を保持できる長さと外径の成形部材50を主体として構成されている。
本実施例の成形部材50は、大量生産に適して安価に軽く製造でき、取り扱いが容易であるように、熱硬化性又は熱可塑性の合成樹脂、例えばフェノール樹脂やエポキシ樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂等々を使用して成形することができる。また、低・中発泡ないし高発泡のポリスチレン樹脂やポリプロピレン樹脂等で成形して実施することも好適である。なお、非発泡の合成樹脂製として実施することもできるし、木製や金属製として製作し実施することもできる。
【0023】
上記成形部材50のナット嵌め込み部51は、具体的には、ナット6の嵌め込み位置に、ナットを嵌め込む用の孔であり、同成形部材50のインナースリーブ3の延長方向の中心軸線と直交する方向に貫通する形態で設けられている。このナット嵌め込み部51は、嵌め込んだナット6がボルト接合の作業時に共回りしない程度に固定する形状、大きさに成形されている。
このナット嵌め込み部51を貫通形態に設けた理由は、成形部材50の使用材料量を減量化し、軽量化する肉盗みにより、製造原価を引き下げるためである。ナット嵌め込み部51は、図示した正六角形のナット6を楽に挿入でき、かつ同ナット6を接合するボルトの先端で多少ぐらつかせられる余裕をもつ大きさの六角形状として、以下の構成に設けられている。
【0024】
上記ナット嵌め込み部51には、成形部材50の外周面からナット6の高さ相当の寸法だけ入った内部に、ナット6の上面(インナースリーブ3の内壁に接しない側の面)を座らせる段部52が形成されている。ナット嵌め込み部51へ嵌め入れたナット6は、その上面を前記段部52へ座らせて、ボルトのねじ込みに対してナット6が共回りしない状態に落ち着かせる構成とされている。したがって、前記段部52より以深のナット嵌め込み部51の貫通形状と大きさは、ナット6へねじ込まれるボルトの先端部が、ナット嵌め込み部51へ当たることの無いように、また、成形部材50の使用材料量の減量化と軽量化の目的を達する肉盗みの必要の形態に形成する。一方、前記段部52へ落ち着いたナット6の座面(インナースリーブ3の内壁に接する側の面)は、成形部材50をインナースリーブ3の中空部内へ挿入する際に支障とならない程度に、同成形部材50の外周面よりも少し沈み込んで外周面近傍に露出する状態にナット嵌め込み部51内に嵌め込まれている。
【0025】
上記のようにナット嵌め込み部51内へ挿入されたナット6が不用意に浮上して抜け外れる不都合を防ぐため、ナット保持部材5には、ナット6の前記座面を押さえる係止部53が、上端部に爪部53aを有する係止部53として設けられている。
図2と図6では、ナット嵌め込み部51の入口部分に、六角形の一つの辺の中央部位に、成形部材50の構成材料を弾性変形可能で抜け外れ防止状態を解除可能な形状に成形した構成で設けられている。
つまり、図2Aに示すように、ナット6が、ナット嵌め込み部51の入口部分に在る弾性変形可能な形状の係止部53を押しのけてナット嵌め込み部51の中へ挿入されると、直ちに係止部53(爪部53a)が働いて止め、ナット6が不用意に浮上したり抜け外れることを防止する。
【0026】
しかし、図2Bに示すように、前記ナット嵌め込み部51に嵌め込まれたナット6のネジ孔内6aへボルト9(10、11を含む)(図3〜図5参照)をねじ込むと、ナット6はボルトのねじ込みに対して共回りしない状態で保持されているので、同ボルト9の回転によりナット6がボルト9の頭部位置へ移動する寄動力が生じる。この寄動力により係止部53は、外側へ押し広げられ又は折れ曲がり(図2C)、同係止部53はボルト・ナット間から押し退けられて同ナット6の抜け外れ防止状態が解除される。そのままねじ込みを続けると、ナット6の座面はインナースリーブ3の内壁にしっかりと密着し、強固なボルト締めを行うことができる。因みに、符号55は、上記したナットの共回りを防止する回り止め壁である。
【0027】
前記ナット保持部材5の両端部には、インナースリーブ3内への挿入又は引き抜き操作の便利のために掴み部54が設けられ、掴み部54の先端部の上下両面には、指先で掴みやすく又は滑り難くするグリップエンド54aが形成されることが好ましい。これは、ナット保持部材5の挿入方向の勝手を、目視又は手で掴んだ際の感触で確認を容易にさせるためで、掴み部54に凹み54bを形成することは適宜なされる(図6参照)。
【0028】
次に、上記構成のナット保持部材5を使用してビームパイプ4同士の連結及び支柱1へ取り付けるボルト接合について図3〜図6に基づいて説明する。
先ず、上記各ボルト接合作業に先行して、予め支柱1の上端へブラケット2が、その上端部を車道側に向かって水平方向(直径線方向)に貫通させたボルト7とナット8とで取り付けられている。このボルト7の他端及び同他端へ締結したナット8は、図3及び図5に示すように、前記ボルト7およびナット8で支柱へ固定されたブラケット2の固定部位からその上方部を迂回して車道側へ突き出されたパイプ受け部2aにより上面部が覆われている。
【0029】
上記のように支柱1へ取り付けたブラケット2へインナースリーブ3を介してビームパイプ4を取り付けるべく、先ず、図4、図6に示すように、インナースリーブ3のボルト孔3aの配置および個数と合致するようにナット嵌め込み部51を形成したナット保持部材5を、掴み部54を活用してインナースリーブ3の左右両端の開口部からその中空部内へ左右2個挿入して位置決めする。
【0030】
続いて例えば、右側のビームパイプ4Rの中空部内へ前記インナースリーブ3を中間位置まで、つまりインナースリーブ3の左側部分がビームパイプ4Rの先端から突き出る状態まで挿入し、ビームパイプ4Rの端部に予め設けてあるボルト孔4a−1〜4a−3を、インナースリーブ3の各ボルト孔3a(3個)の位置と合致させる。
その後、ビームパイプ4Rの3つボルト孔4aのうち、内方のボルト孔4a−1および同内方寄りに隣接して位置するボルト孔4a−2へボルト9、10を差し入れナット保持部材5の対応するナット6へねじ込み締結する。この際、上述したようにナット保持部材5のナット嵌め込み部51に設けられた係止部53(爪部53a)は、ボルト9、10の回転によりボルト頭部方向へ移動するナット6と当たり、同係止部53が外側へ押し退けられて(図2C)同ナット6の抜け外れ防止状態を効果的に解除することで、ナット6の座面がインナースリーブ3の内壁へ密着して、定着精度の高いボルト接合が行なわれる。
【0031】
次に、支柱1へ取り付けたブラケット2へ、前記状態のビームパイプ4Rを取り付ける構成を説明する。
前記支柱1に取り付けられたブラケット2の前面には、ビームパイプ4Rの外形と同じ曲率で凹面状に湾曲させたパイプ受け部2aが設けられている(図5参照)。同パイプ受け部2aに対して、上記のようにインナースリーブ3の左側半分が突き出た状態のビームパイプ4Rが当てがわれる。そして、同ブラケット2の前面のパイプ受け部2aへ予め設けておいたボルト孔(図示省略)と、ビームパイプ4Rにおいて最も外端寄り位置のボルト孔4a−3とを合致させ、同パイプ受け部2aの背面側から同ボルト孔へボルト11を差し入れ、ナット保持部材5の対応するナット6へねじ込み、上述したようにボルトの回転により係止部53(爪部53a)の抜け外れ防止状態を解除して締結させて、ビームパイプ4Rとインナースリーブ3並びにブラケット2とを三位一体の関係で強固にボルト接合することができる。
図1中の符号12は、支柱1の上端へ被せ、上記のボルト7で固定したキャップである。
【0032】
上記のようにインナースリーブ3の左側半分を突き出した状態のビームパイプ4Rをブラケット2へ取り付けた後、左側のビームパイプ4Lを用意し、その中空部内を前記左側半分突き出たインナースリーブ3へ嵌め入れ、先行してボルト接合されている右側のビームパイプ4Rと長手方向の中央部位で当接状態に突き合わせ、同ビームパイプ4Lの端部に予め設けてあるボルト孔4a−1、4a−2とインナースリーブ3の左側の各ボルト孔3aとを一致させて、上記した要領でボルト9、10によるボルト接合が行われる。
【0033】
その後、ビームパイプ4Lのボルト孔4a−3とブラケット2のボルト孔とをボルト11によりボルト接合する点も上記したと同様の要領で実施して、ビームパイプ4R、4L同士の連結と支柱1へのボルト接合が完了する。
したがって、本発明のナット保持部材5は、ボルト接合時に差し入れた接合ボルトとナットの芯合わせと、ボルト締め作業をボルトの操作のみで自在に行えて、作業者が目視しずらい箇所のボルト接合を容易に且つ正確にならしめる。また、ナット保持部材5の係止部53(爪部53a)が、ナット保持部材5のインナースリーブ3への設置時にはナット嵌め込み部51に嵌め込まれたナット6の抜け外れを確実に防止するが、ボルトとナットの締結時には、ボルト9(10、11)の回転によりナット6がボルト9の頭部位置へ移動する寄動力を利用し、同寄動力により係止部53が外向きに押し広げられ又は折れ曲がることで、係止部53を外側へ押し退けて同ナット6の抜け外れ防止状態を効果的に解除して、密着性の高い強固なボルト締めを行うことができるのである。
【実施例2】
【0034】
実施例1では、道路用防護柵のビームパイプの各ボルト接合に使用するナット保持部材5について説明したが、勿論この限りではない。
ボルト孔を有する例えばライナープレートや継手などの基材をボルト接合する際にも、全体形状を適宜設計変更し、上記ナット嵌め込み部51及び係止部53などボルト接合を良好にする上記各構造を同様に適用して実施できる。つまり、係止部53がナット保持部材5を基材へ設置する際にはナットの抜け外れを防止し、ボルト接合する際には前記ナットの抜け外れ防止状態を効果的に解除する上記構成を適宜実施できる。
【実施例3】
【0035】
本発明のナット保持部材5の係止部53の構成は、実施例1で説明した構造に限らない。
即ち、ナット保持部材5のナット嵌め込み部51内へナット6を保持する際には、ナット6の抜け外れを防止し、ボルト接合の際には、ボルトの回転によるナット6の寄動力を利用してナットの抜け外れ防止状態を解除できる構造であればよい。
図7、図8A〜Cには、ナット嵌め込み部51を一個とする単純形状で表したナット保持部材5Tを示した。勿論、図1に示したナット保持部材5について、複数のナット嵌め込み部51を本実施例とかえても、同様に実施することができることを念のため付言する。
図示したナット保持部材5Tは、基本的には図1に示したナット保持部材5と同様の技術的思想を持つ。
【0036】
上記ナット6を保持するナット嵌め込み部51は、ナット6がボルトのねじ込みに対して共回りしない程度に固定でき、ボルトの先端で多少ぐらつかせられる遊びがある六角形状であり、その底部にナット6の上面を座らせる段部52Tが形成されていると共に、底部はボルトを貫通させるべく貫通した状態とされている。このナット嵌め込み部51は、ナット6の上面がナット保持部材5Tの外周面より少し沈み込める深さとされ、上部はボルトを挿入しやすくナット6よりかなり幅広に形成している。
更に、ナット6をナット嵌め込み部51Tへ嵌め入れた際にナット6が不要に抜け外れることを防止する係止部53Tが設けられている。この係止部53Tは、同ナット嵌め込み部51T内であって、同ナット嵌め込み部51Tへ嵌め込まれるナット6の座面に被り、内方へ水平方向に張り出す爪部53Tとして設けられている。図示した爪部53Tは、弾性変形可能な樹脂製であり、三つの角に一定の隙間を空けて相対峙する配置で設けられている。因みに、符号55Tは、上記ナットの共回りを防止する回り止め壁である。
【0037】
したがって、ナット6を上方からナット嵌め込み部51Tの3角にある弾性変形可能な爪部53Tを押し下げてナット嵌め込み部51T内へ挿入すると、図8Aに示すように、直ちに係止部53Tが元の水平位置へ戻りナット6の座面に張り出してナット6が抜け外れることを防止する。
上記構成のナット保持部材5Tを、図8Bに示すように、ナット保持部材5Tを基材(インナースリーブ3及びビームパイプ4を含み、以下単に基材3(4)と云う)の内壁に、そのナット嵌め込み部51Tと基材3(4)のボルト孔(3a及び4a)とが合致する位置に設置し、ボルト9(10、11)を基材3(4)のボルト孔(3a及び4a)へ通し、前記ナット嵌め込み部51Tに嵌め込まれたナット6のネジ孔内6aへねじ込むと、そのボルトの回転により前記ナット6がボルト9の頭部方向へ移動する際に、前記爪部53Tが上方へ折れ曲がってナットの抜け外れ防止状態が解除され、そのままボルトの回転を続けると図8Cに示すように、同ナット6の座面が基材3(4)の内壁と密接に定着し、強固なボルト締結が行える。
【実施例4】
【0038】
ナット保持部材5の係止部53の構成は、実施例1、3の限りではない。
図9、図10A〜Cに実施例4のナット保持部材5Uを示した。
このナット保持部材5Uも、ナット嵌め込み部51を一個とする単純形状で表すが、勿論、図1に示したナット保持部材5について、各ナット嵌め込み部51を本実施例にかえても同様に実施することができる。
前記ナット保持部材5Uは底部が矩形とされ、その中央部はボルトが貫通するべく貫通した状態とされている。前記ナット嵌め込み部51Uは、矩形状の底部の相対峙する二辺から立設された回り止め壁55Uと、相対峙する異なる二辺から立設された係止部53U(又は係止壁とも云う)とで構成されている。つまり係止部53Uはナット嵌め込み部51Uの二側壁を成している。勿論、ナット嵌め込み部51Uは係止部53Uを四辺全てに設けた構成として実施することもできるし、回り止め壁55Uを3側壁に設け、係止部53Uを1辺から立設させた構成としてもよい。
【0039】
前記回り止め壁55Uの高さは係止壁53Uの高さより若干高く形成されており、六角ナット6の相対峙する2辺を拘束することでナット6のボルトのねじ込みに対する共回りを防止する。また、二側壁を成す前記係止壁53U、53Uは互いにナット6がボルトの先端でぐらつかせられる程度の隙間を有し、その上方がナット6の座面(基材3(4)に接する側の面)に被る程度に内方に向かって傾斜する傾斜部530と、係止壁53Uの外壁下方寄りに設けた断面積が薄いV字形状の切り込み部531とで構成されている。因みに前記切り込み部531は係止壁53Uの内壁下方寄りに設けて実施することもできる。上記ナット嵌め込み部51Uを構成する部材は弾性変形可能な材質で形成されている。したがって、ナット嵌め込み部51Uへナット6を嵌め入れるには、弾性変形可能な係止壁53Uと53Uを外側へ押し広げてナット6をセッティングすることができる。ナット嵌め込み部51Uに嵌め込まれたナット6は段部52Uに座ってセッティングされる。
【0040】
上記ナット6を具備したナット保持部材5Uを、図10Aに示すように、基材3(4)の内壁にナット嵌め込み部51Uと基材3(4)のボルト孔(3a及び4a)と一致させ、同基材3(4)の内壁と前記ナット嵌め込み部51Uを構成するせいの高い回り止め壁55Uの頂面と接触させて前述した様々な位置決め方法で設置される。
この時、せいの低い係止壁53Uの頂部と基材3(4)の内壁とは当然隙間が生じている。因みに、基材が閉鎖断面ではない場合には、前記回り止め壁55Uの頂面とのみ基材3(4)の内壁と溶接などにより連結して実施される。
【0041】
上記の状態で、図10Bに示すように、ボルト9(10、11を含む)を基材3(4)のボルト孔(3a及び4a)へ通し、前記ナット嵌め込み部51Uに嵌め込まれたナット6のネジ孔6aへねじ込むと、そのボルトの回転により同ボルトと共回りしない状態に保持された前記ナット6がボルト9の頭部方向へ移動するに伴い、同ナット6が前記ナット嵌め込み部51Uを構成する係止壁53Uの傾斜部530へ当たり、その切り込み部531から外側へ折れ曲がることでナット6の抜け外れ防止状態が解除され、そのままねじ込みを続けることで、ナット6の座面は基材3(4)の内壁に密着し、強固なボルト締めを行うことができる。因みに前記係止壁53Uはせいが低く形成されているので、外側へ折れ曲がる際に基材3(4)に接触する虞が無い。
【実施例5】
【0042】
上記ナット保持部材5の係止部53の構成は、実施例1、3、4の限りではない。
図11、図12A〜Cに実施例5のナット保持部材5Vを示した。
このナット保持部材5Vも、ナット嵌め込み部51を一個とする単純形状で表すが、勿論、図1に示したナット保持部材5について、各ナット嵌め込み部51を本実施例をかえても同様に実施することができる。
【0043】
このナット保持部材5Vは、やはり六角ナット6をボルトのねじ込みに対して共回りしない状態で、且つ多少の遊びを有する六角形状のナット嵌め込み部51Vが形成されている。この嵌め込み部51Vの底部も貫通した状態とされている。
このナット嵌め込み部51Vにもやはりナット6の抜け外れを防止し且つボルト接合時にはナット6の抜け外れ防止状態を解除する係止部53Vが設けられている。因みに、符号55Vは、やはりボルトのねじ込みに対するナット6の共回りを防止する回り止め壁である。
【0044】
前記係止部53Vは、図12Aに示すように、ナット嵌め込み部51Vの底部から水平に伸びる腕部56Vと、同ナット嵌め込み部51Vに嵌め込まれたナット6のネジ孔6aへ挿入されて、同ナット6のネジ孔6aのネジ溝6bへ引っ掛ける突起部57Vとを有する。つまり、係止部53Vは、腕部56Vと突起部57Vとから成る略L字形状である。因みに、腕部56Vの水平部分はナット6を座らせる段部52Vを兼ねて実施することもできるが、段部52Vを図12Aに示すように別に設けてもどちらでもよい。突起部57Vは、ナット6のネジ溝6bに引っ掛かる大きさと形状で設けられている。
したがって、ナット嵌め込み部51Vへナット6を嵌め入れるには、ナット6を同ナット嵌め込み部51Vの上方から差し入れ、係止部53Vの突起部57Vがナット6のネジ孔6aへ収まるように押し込むことで、突起部57Vがネジ溝6bへ引っ掛かりナット6が抜け外れることを防止する。
【0045】
上記のようにナット6を具備したナット保持部材5Vを、図12Bに示すように、そのナット嵌め込み部51Vと基材3(4)のボルト孔(3a及び4a)とが合致する位置に設置させ、ボルト9(10、11)を基材3(4)のボルト孔(3a及び4a)へ通し、前記ナット嵌め込み部51Vに嵌め込まれたナット6へねじ込むと、前記ナット6のネジ孔6aへ挿入されている係止部53Vを構成する突起部57Vがボルト9(10、11)の進入により下方へ押されて腕部56Vが曲がり、さらにボルト9(10、11)を回転させることでナット6の外方へ突起部57Vが押し出される。これにより、ナット6の抜け外れ防止状態が解除され、そのままねじ込みを続けることで、ナット6の座面は基材の内壁に密着し、強固なボルト締めを行うことができる。
【0046】
以上に本発明を図示した実施例に基づいて説明したが、本発明は、上記実施例の構成に限定されない。その目的と要旨を逸脱しない範囲において、当業者が必要に応じて行う設計変更、応用のバリエーションの範囲を含むことを念のため言及する。例えば、図示例では六角形状のナットを保持するナット保持部材を例に取り説明したが、四角形状のナットにおいても同様の技術的思想に基づいて実施できる。
【符号の説明】
【0047】
1 支柱
2 ブラケット
3 インナースリーブ
3a ボルト孔
4 ビームパイプ
5、5T、5U、5V ナット保持部材
6 ナット
9.10、11 ボルト
51 ナット嵌め込み部
52 段部
53 係止部(係止壁)
53a 爪部
54 掴み部
55 回り止め壁
56V 腕部
57V 突起部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボルト孔を有する複数の基材をボルト接合する際に用いるナット保持部材であって、
前記ナット保持部材は、ボルトのねじ込みに対してナットが共回りしない状態に嵌め込まれるナット嵌め込み部と、前記ナットの座面と反対側に位置する上面が座る段部と、前記ナット嵌め込み部に嵌め込まれたナットが抜け外れないように抜け外れ防止状態でナットを保持する係止部とから成り、
前記係止部は、前記ナット嵌め込み部に嵌め込まれたナットの基材へ設置させる面である座面側に張り出す形状又は前記ナットの上面側に張り出してネジ溝に引っ掛かる突起部を備える形状であり、
前記ボルトの先端が前記ナットにねじ込まれることにより、前記係止部が変形してナットの抜け外れ防止状態を解除することを特徴とする、ナット保持部材。
【請求項2】
ナット保持部材の係止部は、ナット嵌め込み部内に嵌め込まれたナットの座面側に張り出す爪部を有し、
前記ナット嵌め込み部に嵌め込まれたナットへボルトがねじ込まれ、そのボルトの回転により前記ナットがボルトの頭部方向へ移動することにより、前記爪部を有する係止部が曲げられてナットの抜け外れ防止状態を解除することを特徴とする、請求項1に記載したナット保持部材。
【請求項3】
ナット保持部材の係止部は、ナット嵌め込み部内に嵌め込まれたナットの座面側に張り出す爪部であり、
前記ナット嵌め込み部に嵌め込まれたナットへボルトがねじ込まれ、そのボルトの回転により前記ナットがボルトの頭部方向へ移動することにより、前記爪部が曲げられてナットの抜け外れ防止状態を解除することを特徴とする、請求項1に記載したナット保持部材。
【請求項4】
ナット保持部材の係止部は、ナット嵌め込み部の側壁を成し前記ナット嵌め込み部に嵌め込まれたナットの座面側に傾斜して被る傾斜部から成り、
前記ナット嵌め込み部に嵌め込まれたナットへボルトがねじ込まれ、そのボルトの回転により前記ナットがボルトの頭部方向へ移動することにより、同ナットが前記傾斜部へ当たり、前記側壁が外側へ曲げられてナットの抜け外れ防止状態を解除することを特徴とする、請求項1に記載したナット保持部材。
【請求項5】
ナット保持部材の係止部は、ナット嵌め込み部に嵌め込まれたナットの上面側に張り出す腕部と、前記ナットのネジ孔へ挿入されて同ネジ孔のネジ溝へ引っ掛ける突起部とを有する略L字形状であり、
前記ナット嵌め込み部に嵌め込まれたナットへボルトがねじ込まれ、同ボルトの先端が前記ナットのネジ溝へ引っ掛けた前記突起部を同ナットの外方へ押し、前記腕部を曲げながら、同突起部をナットのネジ孔から押し出すことでナットの抜け外れ防止状態を解除することを特徴とする、請求項1に記載したナット保持部材。
【請求項6】
ナット保持部材のナット嵌め込み部は、ナットの外形よりも若干大きく形成され、ナット嵌め込み部に嵌め込まれたナットは、ボルトのねじ込みに対してナット嵌め込み部内で共回りしない程度に緩く保持されていることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一に記載したナット保持部材。
【請求項7】
ナット保持部材は、非発泡の合成樹脂、又は低発泡ないし中発泡の発泡樹脂で形成されていることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一に記載されたナット保持部材。
【請求項1】
ボルト孔を有する複数の基材をボルト接合する際に用いるナット保持部材であって、
前記ナット保持部材は、ボルトのねじ込みに対してナットが共回りしない状態に嵌め込まれるナット嵌め込み部と、前記ナットの座面と反対側に位置する上面が座る段部と、前記ナット嵌め込み部に嵌め込まれたナットが抜け外れないように抜け外れ防止状態でナットを保持する係止部とから成り、
前記係止部は、前記ナット嵌め込み部に嵌め込まれたナットの基材へ設置させる面である座面側に張り出す形状又は前記ナットの上面側に張り出してネジ溝に引っ掛かる突起部を備える形状であり、
前記ボルトの先端が前記ナットにねじ込まれることにより、前記係止部が変形してナットの抜け外れ防止状態を解除することを特徴とする、ナット保持部材。
【請求項2】
ナット保持部材の係止部は、ナット嵌め込み部内に嵌め込まれたナットの座面側に張り出す爪部を有し、
前記ナット嵌め込み部に嵌め込まれたナットへボルトがねじ込まれ、そのボルトの回転により前記ナットがボルトの頭部方向へ移動することにより、前記爪部を有する係止部が曲げられてナットの抜け外れ防止状態を解除することを特徴とする、請求項1に記載したナット保持部材。
【請求項3】
ナット保持部材の係止部は、ナット嵌め込み部内に嵌め込まれたナットの座面側に張り出す爪部であり、
前記ナット嵌め込み部に嵌め込まれたナットへボルトがねじ込まれ、そのボルトの回転により前記ナットがボルトの頭部方向へ移動することにより、前記爪部が曲げられてナットの抜け外れ防止状態を解除することを特徴とする、請求項1に記載したナット保持部材。
【請求項4】
ナット保持部材の係止部は、ナット嵌め込み部の側壁を成し前記ナット嵌め込み部に嵌め込まれたナットの座面側に傾斜して被る傾斜部から成り、
前記ナット嵌め込み部に嵌め込まれたナットへボルトがねじ込まれ、そのボルトの回転により前記ナットがボルトの頭部方向へ移動することにより、同ナットが前記傾斜部へ当たり、前記側壁が外側へ曲げられてナットの抜け外れ防止状態を解除することを特徴とする、請求項1に記載したナット保持部材。
【請求項5】
ナット保持部材の係止部は、ナット嵌め込み部に嵌め込まれたナットの上面側に張り出す腕部と、前記ナットのネジ孔へ挿入されて同ネジ孔のネジ溝へ引っ掛ける突起部とを有する略L字形状であり、
前記ナット嵌め込み部に嵌め込まれたナットへボルトがねじ込まれ、同ボルトの先端が前記ナットのネジ溝へ引っ掛けた前記突起部を同ナットの外方へ押し、前記腕部を曲げながら、同突起部をナットのネジ孔から押し出すことでナットの抜け外れ防止状態を解除することを特徴とする、請求項1に記載したナット保持部材。
【請求項6】
ナット保持部材のナット嵌め込み部は、ナットの外形よりも若干大きく形成され、ナット嵌め込み部に嵌め込まれたナットは、ボルトのねじ込みに対してナット嵌め込み部内で共回りしない程度に緩く保持されていることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一に記載したナット保持部材。
【請求項7】
ナット保持部材は、非発泡の合成樹脂、又は低発泡ないし中発泡の発泡樹脂で形成されていることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一に記載されたナット保持部材。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−47227(P2012−47227A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−188452(P2010−188452)
【出願日】平成22年8月25日(2010.8.25)
【出願人】(000006839)日鐵住金建材株式会社 (371)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年8月25日(2010.8.25)
【出願人】(000006839)日鐵住金建材株式会社 (371)
【Fターム(参考)】
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