説明

ナノインプリント用モールド

【課題】 再生が容易であると共に、紫外線硬化樹脂への正確なパターン形成が可能なナノインプリント用モールドを提供する。
【解決手段】 モールド1はガラスモールド2とパターンモールド3とを備えており、パターンモールド3はガラスモールド2に接着されている。ガラスモールド2とパターンモールド3との接着を解除しパターンモールド3を交換するだけで、モールド1を再生できる。また、パターンモールド3は、パターンPが形成されたエリア30aと形成されていないエリア30bとを含む。接着剤4は、エリア30bに対向するエリア31aと凹部21の底面21aとの間に配置されている。紫外線硬化樹脂にパターン形成を行う際に、接着剤4が、パターンモールド3のパターン部分における紫外線の透過に影響を及ぼすことが避けられる。よって、紫外線硬化樹脂への正確なパターン形成が可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナノインプリント用モールドに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ナノインプリント法のスタンパーに用いられるレプリカモールドの製造方法が記載されている。この製造方法においては、まず、シリコン基板に微細なパターンを形成してなるマスターモールドと、弾性支持部材の上に光後硬化性樹脂組成物層を積層してなるモールド材とを用意する。続いて、モールド材の光後硬化性樹脂組成物層をマスターモールドに押し付けることにより、モールド材をマスターモールドの上に積層する。これにより、マスターモールドのパターンをモールド材の光後硬化性樹脂組成物層に転写する。続いて、モールド材をマスターモールドの上に積層した状態において、それらを室温にて所定時間放置することにより、光後硬化性樹脂組成物層を硬化させる。その後、モールド材をマスターモールドから剥離することにより、光後硬化性樹脂組成物層と弾性支持部材とからなるマザーパターンを得る。
【0003】
続いて、マザーパターンの光後硬化性樹脂組成物層の上に、熱硬化性樹脂組成物層を積層する。これにより、光後硬化性樹脂組成物層のパターンを熱硬化性樹脂組成物層に転写する。その熱硬化性樹脂組成物層の上にスチール板を載置した後にアニールを施し、熱硬化性樹脂組成物層を硬化させる。そして、熱硬化性樹脂組成物層とスチール板とをマザーパターンから剥離することによりレプリカモールドを得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−245684号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載されたレプリカモールドの製造方法では、レプリカモールドの樹脂層(熱硬化性樹脂組成物層)にパターンを形成している。このため、レプリカモールドを繰り返し使用することによって、その樹脂層のパターンに汚れやキズが生じた場合には、同一のレプリカモールドを再生して使用することが困難である。一方で、この製造方法は、上述したように、マスターモールドを用意し、そのマスターモールドからマザーパターンを作製し、そのマザーパターンからレプリカモールドを作製するといったように、レプリカモールドが得られるまでの製造工程が多い。このため、レプリカモールドのパターンに汚れやキズが生じた場合には、上述した多くの工程を経て、レプリカモールドを新たに製造し直さなくてはならない。
【0006】
このような問題は、例えば次のようなモールドを用いることで解決することができる。すなわち、基体と、ナノインプリントのためのパターンを有し基体に接着されたパターンモールドとからなるナノインプリント用モールドを用いることが考えられる。このように構成されるナノインプリント用モールドにおいては、パターンモールドのパターンに汚れやキズが生じた場合には、そのパターンモールドを交換するだけで、ナノインプリント用モールドを容易に再生することが可能となる。
【0007】
このようなナノインプリント用モールドを用いて、ナノインプリント用樹脂としての紫外線硬化樹脂にパターンを形成するには、基体とパターンモールドとを、紫外線を透過する材料から構成することが考えられる。その場合には、紫外線硬化樹脂に当該ナノインプリント用モールドを押し付けた状態において、基体及びパターンモールドを介して紫外線硬化樹脂に紫外線を照射し、紫外線硬化樹脂を硬化することが可能となる。しかしながら、そのようなナノインプリント用モールドを用いる場合、パターンモールドを基体に接着するための接着剤が、パターンモールドのパターン部分における紫外線の透過に影響を及ぼす結果、紫外線硬化樹脂への正確なパターン形成が阻害される虞がある。
【0008】
本発明は、そのような事情に鑑みてなされたものであり、再生が容易であると共に、紫外線硬化樹脂への正確なパターン形成が可能なナノインプリント用モールドを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明のナノインプリント用モールドは、第1の凹部が設けられた表面を有する基体と、ナノインプリントのためのパターンを有し、第1の凹部に配置されたパターンモールドと、基体とパターンモールドとを互いに接着する接着剤と、を備え、パターンモールドは、主面と、主面に対向する裏面とを有し、主面は、第1のエリアと、第1のエリアを囲う第2のエリアとを含み、裏面は、第2のエリアに対向する第3のエリアを含み、第1のエリアにはパターンが形成されており、第2のエリアにはパターンが形成されておらず、接着剤は、第3のエリアと、第1の凹部の底面との間に配置されており、主面は、表面から突出しており、基体及びパターンモールドは、紫外線を透過する材料からなり、接着剤は、スペーサ材を含むことを特徴とする。
【0010】
このナノインプリント用モールドは、基体と、ナノインプリントのためのパターンを有するパターンモールドとを備えており、パターンモールドは接着剤によって基体に接着されている。このため、パターンモールドのパターンに汚れやキズが生じた場合には、パターンモールドと基体との接着を解除し、パターンモールドを交換するだけで、ナノインプリント用モールドを容易に再生することができる。また、このナノインプリント用モールドにおいては、パターンモールドは、パターンが形成された第1のエリアとパターンが形成されていない第2のエリアとを含む主面を有している。また、パターンモールドは、その主面の第2のエリアに対向する第3のエリアを含む裏面を有している。そして、基体とパターンモールドとを接着する接着剤は、第3のエリアと基体の凹部の底面との間に配置されている。したがって、このナノインプリント用モールドを用いたナノインプリントにより紫外線硬化樹脂にパターン形成を行う際に、接着剤が、パターンモールドのパターン部分(主面の第1のエリアと裏面との間の部分)における紫外線の透過に影響を及ぼすことが避けられる。しかも、接着剤は、スペーサ材を含んでいる。このため、スペーサ材の寸法を調節することにより、基体の表面からのパターンモールドの主面の突出高さを、バラツキなく所望の高さに維持することができる。よって、このナノインプリント用モールドによれば、紫外線硬化樹脂への正確なパターン形成が可能となる。
【0011】
本発明のナノインプリント用モールドにおいては、第1の凹部の底面には、第2の凹部が設けられており、第2の凹部は、第3のエリアに対向するように配置されており、接着剤は、第3のエリアと第2の凹部の底面との間に配置されていることができる。このナノインプリント用モールドにおいては、接着剤が、第1の凹部の底面に形成された第2の凹部に配置される。このため、パターンモールドの裏面において、第3のエリア以外のエリアに接着剤が侵入することが避けられる。よって、接着剤が、パターンモールドのパターン部分における紫外線の透過に影響を及ぼすことが確実に避けられる。
【0012】
また、本発明のナノインプリント用モールドにおいては、パターンモールドは、第3のエリアから突出する突出部を有し、突出部は、第2の凹部に挿入されており、接着剤は、突出部と第2の凹部の底面との間に配置されていることができる。このナノインプリント用モールドにおいては、パターンモールドは、第2の凹部に突出部を挿入した状態で基体に接着される。このため、基体に対するパターンモールドの位置合わせが容易且つ確実となる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、再生の容易である共に、紫外線硬化樹脂への正確なパターン形成が可能なナノインプリント用モールドを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明のナノインプリント用モールドの第1実施形態の構成を示す図である。
【図2】図1に示されたナノインプリント用モールドの作製方法を示す図である。
【図3】図1に示されたナノインプリント用モールドの作製方法を示す図である。
【図4】図1に示されたナノインプリント用モールドの作製方法を示す図である。
【図5】本発明のナノインプリント用モールドの第2実施形態の構成を示す図である。
【図6】図5に示されたガラスモールドの構成を示す図である。
【図7】図5に示されたパターンモールドの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の知見は、例示として示された添付図面を参照して以下の詳細な記述を考慮することによって容易に理解できる。引き続いて、添付図面を参照しながら、本発明のナノインプリント用モールドに係る実施の形態を説明する。可能な場合には、同一部分には同一の符号を付する。
[第1実施形態]
【0016】
図1は、本発明のナノインプリント用モールドの第1実施形態の構成を示す図である。図1の(a)部は、第1実施形態に係るナノインプリント用モールドの模式的な断面図であり、図1の(b)部は、第1実施形態に係るナノインプリント用モールドの平面図である。図1に示されるように、ナノインプリント用モールド1は、ガラスモールド(基体)2と、パターンモールド3と、接着剤4とを備えている。ナノインプリント用モールド1は、特に、ステップアンドリピート方式のナノインプリントに好適に用いられる。
【0017】
ガラスモールド2は、例えば、紫外線を透過する石英ガラスによって略正方形板状に形成されている。より具体的には、ガラスモールド2は、例えば6025基板を1/4カットすることにより形成された石英ガラス板である。ガラスモールド2の平面視における一辺の長さL2は、例えば、65mm程度である。ガラスモールド2の厚さT2は、例えば6mm程度である。このようなガラスモールド2は表面20を有している。表面20には、凹部(第1の凹部)21が形成されている。凹部21は、表面20の略中央部に配置されている。凹部21は、平面視で略正方形状を呈している。凹部21の平面視における一辺の長さL21は、例えば、5mm〜30mmの範囲において、ナノインプリントを行う際のショットサイズに合わせて任意に設定される。凹部21の深さD21は、例えば0.3mm〜1.0mm程度である。凹部21の底面21aは、略平坦となっている。
【0018】
パターンモールド3は、そのような凹部21に配置されている。パターンモールド3は、例えば、紫外線を透過する石英ガラスによって略正方形板状に形成されている。パターンモールド3の平面視における一辺の長さL3は、5mm〜30mmの範囲において、凹部21の上記寸法と略同一に設定される。ただし、パターンモールド3の一辺の長さL3は、凹部21の一辺の長さL21よりも、例えば、1mm以下程度、好適には500μm程度小さく設定される。すなわち、パターンモールド3の側面3bと凹部21の側面21bとの距離D3は、例えば1mm以下程度に設定される。これにより、パターンモールド3を凹部21内に配置することが可能となる。パターンモールド3の厚さT3は、例えば1mm程度である。
【0019】
パターンモールド3は、主面30と、主面30に対向する(主面30の反対に位置する)裏面31とを有している。主面30は、ガラスモールド2の表面20から突出している。ガラスモールド2の表面20からの主面30の突出高さH30は、例えば、1μm〜3μm程度である。主面30は、第1のエリア30aと第2のエリア30bとを含んでいる。第1のエリア30aは、主面30の略中心に位置している。第1のエリア30aは、略正方形状に設定されている。第1のエリア30aの一辺の長さL30は、例えば5mm程度である。第2のエリア30bは、第1のエリア30aを囲うように配置されている。第2のエリア30bは、第1のエリア30aの外形に沿って略一定幅の矩形環状に設定されている。第2のエリア30bの幅W30は、例えば1mm程度である。第1のエリア30aと第2のエリア30bとは互いに連続している。第1のエリア30aには、ナノインプリントのためのパターンPが形成されている。第2のエリア30bには、ナノインプリントためのパターンPが形成されていない。なお、パターンPは、例えば、半導体光素子の回折格子のためのパターンとすることができる。また、第1のエリア30aには、2つのアライメントマークMが設けられている。
【0020】
裏面31は、第3のエリア31aと第4のエリア31bとを含んでいる。第3のエリア31aは、主面30の第2のエリア30bに対向している。また、第3のエリア31aは、第2のエリア30bと略同一の形状に設定されている。したがって、主面30の第2のエリア30bと裏面31の第3のエリア31aとは、パターンモールド3の厚さ方向において重複している。第4のエリア31bは、主面30の第1のエリア30aに対向している。また、第4のエリア31bは、第1のエリア30aと略同一の形状に設定されている。したがって、主面30の第1のエリア30aと裏面31の第4のエリア31bとは、パターンモールド3の厚さ方向において重複している。裏面31は、略平坦となっている。
【0021】
接着剤4は、ガラスモールド2とパターンモールド3とを互いに接着している。接着剤4は、パターンモールド3の裏面31の第3のエリア31aと、ガラスモールド2の凹部21の底面21aとの間に配置されている。より具体的には、接着剤4は、第3のエリア31aに沿うように、凹部21の底面21aに矩形環状に塗布されている。一方、接着剤4は、裏面31の第4のエリア31bと、凹部21の底面21aとの間には配置されていない。接着剤4は、例えば、紫外線硬化樹脂とスペーサ材とを含む。スペーサ材は、例えば、粒径の揃った粉末シリカやガラス繊維等のフィラーとすることができる。スペーサ材の寸法(例えば粒径)は、所望する突出高さH30に応じて適宜設定可能であるが、例えば1μm〜10μm程度とすることができる。
【0022】
このように構成されるナノインプリント用モールド1の作製方法について説明する。まず、図2の(a)部に示されるように、例えば2〜8インチのガラス基板Gを用意する。ガラス基板Gには、パターンモールド3のための領域Gaが設定されている。領域Gaは、ガラス基板Gにおいて2次元アレイ状に配列されている。各領域Gaの表面には、上述した第1のエリア30a及び第2のエリア30bが設定されている。続いて、各領域Gaの第1のエリア30aにパターンPを形成する。パターンPの形成には、例えば、EB描画やステッパーを利用することができる。その後、図2の(b)部に示されるように、ガラス基板Gから各領域Gaを切り出す。これにより、一度に複数のパターンモールド3を作製することができる。
【0023】
一方で、図3に示されるように、ガラスモールド2を用意する。ガラスモールド2は、例えば、6025基板を1/4カットした後に、周知の方法により凹部21を形成することで作製することができる。続いて、図4の(a)部に示されるように、ガラスモールド2の凹部21の底面21aに接着剤4を塗布する。接着剤4は、パターンモールド3の裏面31の第3のエリア31aに対向するように凹部21の縁部に沿って、例えば1mm程度の幅で矩形環状に塗布される。なお、接着剤4のスペーサ材の寸法(粒径)は、ナノインプリント用モールド1の完成時において、ガラスモールド2の表面20からのパターンモールド3の主面30の突出高さH30が、例えば1μm〜3μm程度となるように調整することができる。換言すれば、接着剤4のスペーサ材の寸法は、例えば、(凹部21の深さD21)−(パターンモールド3の厚さT3)+1μm〜3μmを満たすように調整することができる。
【0024】
続いて、図4の(b)部に示されるように、パターンモールド3を、ガラスモールド2の凹部21内に接着剤4を介して配置した後に、例えば3分間、2N〜20Nの圧力で、例えば鉄板等の重しをパターンモールド3の主面30に押し付ける。その後、図4の(c)部に示されるように、接着剤4に紫外線Lを照射し、接着剤4を硬化させる。これにより、ガラスモールド2とパターンモールド3とが互いに接着されて、ナノインプリント用モールド1が完成する。
【0025】
このように作製されるナノインプリント用モールド1を用いたインプリントは、例えば以下のように行うことができる。すなわち、まず、所定の基板の上に、ナノインプリント用樹脂として、例えば紫外線硬化エポキシ樹脂を塗布する。その後、パターンモールド3の主面30をその紫外線硬化エポキシ樹脂に押し付ける。このときの圧力及び加圧時間は、例えば、4N及び20sとすることができる。また、所定の基板としては、Si、InP及びGaAs等の半導体基板や、金属材料、ガラス、石英、及びプラスチック等の基板等であって、所定の強度及び加工性を有するものとすることができる。
【0026】
続いて、紫外線硬化エポキシ樹脂にパターンモールド3を押し付けた状態において、ガラスモールド2及びパターンモールド3を介して紫外線硬化エポキシ樹脂に紫外線を照射し、紫外線硬化エポキシ樹脂を硬化させる。このときの紫外線の照射は、例えば、350mJ/cm、80s程度とすることができる。そして、硬化した紫外線硬化エポキシ樹脂からパターンモールド3を離間する。これにより、紫外線硬化エポキシ樹脂へのパターン形成が行われる。
【0027】
このようにナノインプリント用モールド1を繰り返し使用し、パターンモールド3のパターンPに傷や樹脂付着等が生じた場合には、以下のようにナノインプリント用モールド1を再生することができる。すなわち、まず、例えばOアッシングを60min程度、硫酸・過水洗浄を30min程度行うことにより、パターンモールド3の主面30や、凹部21の側面21bとパターンモールド3の側面3bとの隙間に付着したナノインプリント用樹脂を除去する。
【0028】
続いて、ナノインプリント用モールド1を、例えば水又はアセトンに30min程度浸し、接着剤4に水又はアセトンを膨潤させて接着剤4を除去する。これにより、ガラスモールド2とパターンモールド3との接着を解除し、凹部21からパターンモールド3を除く。その後、実体顕微鏡により、ガラスモールド2の表面20の異物の有無を確認する。ガラスモールド2の表面20に異物がある場合には、再度、例えばOアッシングを60min程度、硫酸・過水洗浄を30min程度行うことにより、当該異物を除去する。そして、新たなパターンモールド3を接着剤4によってガラスモールド2に接着することにより、ナノインプリント用モールド1が再生される。
【0029】
以上説明したように、本実施形態に係るナノインプリント用モールド1は、その土台となるガラスモールド2と、パターンPを有するパターンモールド3とを別体として備えており、ガラスモールド2とパターンモールド3とが接着剤4によって互いに接着されて一体化されている。このため、パターンモールド3のパターンPに汚れやキズが生じた場合には、ガラスモールド2とパターンモールド3との接着を解除し(すなわち接着剤4を除去し)、パターンモールド3を交換するだけで、ナノインプリント用モールド1を容易に再生することができる。
【0030】
また、本実施形態に係るナノインプリント用モールド1においては、パターンモールド3は、パターンPが形成された第1のエリア30aとパターンPが形成されていない第2のエリア30bとを含む主面30を有している。また、パターンモールド3は、その主面30の第2のエリア30bに対向する第3のエリア31aと、第1のエリア30aに対向する第4のエリア31bとを含む裏面31を有している。そして、ガラスモールド2とパターンモールド3とを接着する接着剤4は、第3のエリア31aと凹部21の底面21aとの間に配置されている。つまり、パターンPが形成された第1のエリア30aに対向する第4のエリア31bと、凹部21の底面21aとの間には、接着剤4が配置されていない。よって、ナノインプリント用モールド1を用いたナノインプリントにより紫外線硬化樹脂にパターン形成を行う際に、接着剤4が、パターンモールド3のパターン部分(主面30の第1のエリア30aと裏面31の第4のエリア31bとの間の部分)における紫外線の透過に影響を及ぼすことが避けられる。
【0031】
しかも、ガラスモールド2とパターンモールド3とを互いに接着する接着剤4は、スペーサ材を含んでいる。このため、スペーサ材の寸法を調節することにより、ガラスモールド2の表面20からのパターンモールド3の主面30の突出高さH30を、バラツキなく所望の高さに維持することができる。よって、本実施形態に係るナノインプリント用モールド1によれば、紫外線硬化樹脂への正確なパターン形成が可能となる。
【0032】
また、本実施形態に係るナノインプリント用モールド1においては、パターンPを有するパターンモールド3が石英ガラスからなる。このため、パターンを有するモールドが樹脂材料からなる場合に比べて、紫外線硬化樹脂との間の離形性が高い。よって、ナノインプリント用モールド1を用いたナノインプリントによって紫外線硬化樹脂にパターン形成を行う際に、そのパターンの変形や欠損が生じることが避けられる。
【0033】
さらに、本実施形態に係るナノインプリント用モールド1においては、ナノインプリントを行う際のショットサイズが、ガラスモールド2の凹部21の寸法やパターンモールド3の寸法に固定されている。このため、例えばナノインプリントを行うウエハ上の有効領域内に無駄なくパターン形成を行うことができる。
[第2実施形態]
【0034】
図5は、本発明のナノインプリント用モールドの第2実施形態の構成を示す図である。図5の(a)部は、第2実施形態に係るナノインプリント用モールドの模式的な断面図であり、図5の(b)部は、第2実施形態に係るナノインプリント用モールドの平面図である。図5に示されるように、ナノインプリント用モールド1Aは、ガラスモールド(基体)2Aと、パターンモールド3Aと、接着剤4とを備えている。ナノインプリント用モールド1Aは、特に、ステップアンドリピート方式のナノインプリントに好適に用いられる。
【0035】
図6の(a)部は、図5に示されたガラスモールドの模式的な断面図であり、図6の(b)部は、図5に示されたガラスモールドの平面図である。図5及び図6に示されるように、ガラスモールド2Aは、凹部(第2の凹部)22を有する点で、ガラスモールド2と異なっている。凹部22は、凹部21の底面21aに形成されている。凹部22は、底面21aに沿った所定の方向に延びる一対の直線部22bと、直線部21b同士を接続する一対の直線部22cとからなる。直線部22b及び直線部22cの幅及び深さは略一定である。つまり、凹部22は、パターンモールド3Aの第3のエリア31aに対向するように、凹部21の縁部に沿って略一定幅及び深さの矩形環状に形成されている。凹部22の幅W22は、例えば2mm程度である。凹部22の深さD22は、例えば500μm程度である。凹部21の凹部22が設けられた部分の深さD21は、例えば1mm程度である。凹部22の底面22aは略平坦となっている。
【0036】
図7の(a)部は、図5に示されたパターンモールドの模式的な断面図であり、図7の(b)部は、図5に示されたパターンモールドの裏面図である。図5及び図7に示されるように、パターンモールド3Aは、突出部32を有する点でパターンモールド3と異なっている。突出部32は、パターンモールド3Aの裏面31の第3のエリア31aから突出して設けられている。換言すれば、パターンモールド3Aは、裏面31の第4のエリア31bに設けられた凹部33を有している。突出部32は、裏面31に沿った所定の方向に延びる一対の直線部32bと、直線部32b同士を接続する一対の直線部32cとからなる。直線部32b及び直線部32cの幅及び高さは略一定である。つまり、突出部32は、第3のエリア31aに沿って幅及び高さが略一定の矩形環状に形成されている。突出部32の幅W32は、凹部22の幅W22よりも小さく、例えば1mm程度である。突出部32の高さH32は、例えば500μm程度である。突出部32の上面32aは、略平坦となっている。
【0037】
図5に示されるように、ナノインプリント用モールド1Aにおいては、接着剤4は、ガラスモールド2Aの凹部22の底面22aに配置されている。接着剤4は、凹部22の底面22aに沿って矩形環状に配置されている。パターンモールド3Aの突出部32は、ガラスモールド2の凹部22に挿入されている。したがって、接着剤4は、突出部32の上面32aと凹部22の底面22aとの間に配置されている。
【0038】
このように構成されるナノインプリント用モールド1Aは、第1実施形態に係るナノインプリント用モールド1と同様に作製することができるが、特に、パターンモールド3においては、第4のエリア31bにおいて裏面31を切削し凹部33を設けることによって、第3のエリア31aに突出部32を形成する。また、ナノインプリント用モールド1Aは、第1実施形態に係るナノインプリント用モールド1と同様に使用・再生することができる。
【0039】
以上説明したように、本実施形態に係るナノインプリント用モールド1Aは、第1実施形態に係るナノインプリント用モールド1と同様の理由から、容易に再生できると共に、紫外線硬化樹脂への正確なパターン形成が可能となる。また、本実施形態に係るナノインプリント用モールド1Aによれば、第1実施形態に係るナノインプリント用モールド1と同様の理由から、ナノインプリント用モールド1Aを用いたナノインプリントにより紫外線硬化樹脂にパターン形成を行う際に、そのパターンの変形や欠損が生じることが避けられると共に、ナノインプリントを行うウエハ上の有効領域内に無駄なくパターン形成を行うことができる。
【0040】
さらに、本実施形態に係るナノインプリント用モールド1Aにおいては、接着剤4が、凹部21の底面21aに形成された凹部22に配置されている。このため、パターンPが形成された第1のエリア30aに対向する第4のエリア31bに、接着剤4が侵入することが確実に避けられる。よって、接着剤4が、パターンモールド3のパターン部分における紫外線の透過に影響を及ぼすことが確実に避けられる。
【0041】
また、本実施形態に係るナノインプリント用モールド1においては、パターンモールド3は、凹部22に突出部32を挿入した状態でガラスモールド2に接着される。このため、ガラスモールド2に対するパターンモールド3の位置合わせが容易且つ確実となる。さらに、本実施形態に係るナノインプリント用モールド1においては、パターンモールド3は、矩形環状の突出部32を、同じく矩形環状の凹部22に挿入した状態でガラスモールド2に接着される。このため、ガラスモールド2に対するパターンモールド3の位置ズレ(特に回転)が避けられる。
【0042】
以上の実施形態は、本発明に係るナノインプリント用モールドの一実施形態を説明したものであり、本発明に係るナノインプリント用モールドは、上記のナノインプリント用モールド1,1Aに限定されるものではない。本発明のナノインプリント用モールドは、各請求項の要旨を変更しない範囲において、任意にナノインプリント用モールド1,1Aを変形したものとすることができる。
【0043】
例えば、ナノインプリント用モールド1及びナノインプリント用モールド1Aにおいて、接着剤4は、凹部21の底面21a及び凹部22の底面22aにおいて、必ずしも矩形環状に塗布される必要はなく、突出高さH30のバラツキを抑えられるように、凹部21の底面21a又は凹部22の底面22aの複数の箇所に分割して塗布されてもよい。
【符号の説明】
【0044】
1,1A…ナノインプリント用モールド、2,2A…ガラスモールド(基体)、3,3A…パターンモールド、4…接着剤、20…表面、21…凹部(第1の凹部)、21a…底面、22…凹部(第2の凹部)、22a…底面、30…主面、30a…第1のエリア、30b…第2のエリア、31…裏面、31a…第3のエリア、32…突出部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の凹部が設けられた表面を有する基体と、
ナノインプリントのためのパターンを有し、前記第1の凹部に配置されたパターンモールドと、
前記基体と前記パターンモールドとを互いに接着する接着剤と、を備え、
前記パターンモールドは、主面と、主面に対向する裏面とを有し、
前記主面は、第1のエリアと、前記第1のエリアを囲う第2のエリアとを含み、
前記裏面は、前記第2のエリアに対向する第3のエリアを含み、
前記第1のエリアには前記パターンが形成されており、
前記第2のエリアには前記パターンが形成されておらず、
前記接着剤は、前記第3のエリアと、前記第1の凹部の底面との間に配置されており、
前記主面は、前記表面から突出しており、
前記基体及び前記パターンモールドは、紫外線を透過する材料からなり、
前記接着剤は、スペーサ材を含む、
ことを特徴とするナノインプリント用モールド。
【請求項2】
前記第1の凹部の底面には、第2の凹部が設けられており、
前記第2の凹部は、前記第3のエリアに対向するように配置されており、
前記接着剤は、前記第3のエリアと前記第2の凹部の底面との間に配置されている、
ことを特徴とする請求項1に記載のナノインプリント用モールド。
【請求項3】
前記パターンモールドは、前記第3のエリアから突出する突出部を有し、
前記突出部は、前記第2の凹部に挿入されており、
前記接着剤は、前記突出部と前記第2の凹部の底面との間に配置されている、
ことを特徴とする請求項2に記載のナノインプリント用モールド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−253236(P2012−253236A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−125513(P2011−125513)
【出願日】平成23年6月3日(2011.6.3)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】