説明

ナノウェブ層を有する改良型濾材

空気またはその他の気体から微粒子を濾過するための濾材には、膜およびこの膜と流体接触状態にある上流側の深層濾過層が含まれている。この深層濾過層はナノウェブ層およびこのナノウェブ層の上流側にありナノウェブ層と流体連通状態にある予備濾過層を含んでいる。予備濾過層は不織布であってもよく、一実施形態において、具体的には、帯電されていてもよいメルトブローン不織布であってもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、濾過に関するものであり、より詳細には空気またはその他の気体から微粒子を濾過するためのナノウェブ層を含む濾材に関する。
【背景技術】
【0002】
気体流からの微粒子の除去は、産業施設における重要な作業である。微粒子などを気体流から濾過するための従来の手段としては、フィルタバッグ、フィルタチューブ、フィルタパネルおよびフィルタカートリッジが含まれるが、これに限定されない。フィルタは通常、内部を気体が通過しかつ気体流から濾過すべき粒子を保持する1つ(または複数)の濾材を含む。
【0003】
使用される濾材のタイプの選択は、典型的には、フィルタエレメントが接触することになる流体流、システムの運転条件および濾過対象の微粒子のタイプに基づいている。濾材を、深層濾過濾材および表面濾過濾材のいずれかとして広義に特徴づけしてもよい。深層濾過濾材では、粒子が内部に幾分か進入して蓄積する傾向をもつ。これとは対照的に表面濾過濾材ではその表面上に大部分の粒子が集まる。
【0004】
深層濾過濾材としては、ポリエステル、ポリプロピレン、アラミド、セルロース、ガラスおよびフルオロポリマーを含むさまざまな材料で作られたスパンボンドまたはメルトブローンウェブ、フェルトおよびファブリックを含めた数多くの材料が有用であることが公知である。公知のメルトブローン濾材は高い効率および低い圧力降下を示す。
【0005】
メルトブローン濾材などの深層濾過濾材に対し静電荷を提供するとその濾過効率が改善される。静電フィルタ材料つまりエレクトレットは、繊維に粒子をひきつけそれらを保持することによりフィルタ性能を増強させる静電気的に増強された繊維を有する。静電フィルタは、フィルタを横断する所与の圧力降下について収集効率を劇的に高める上で、荷電粒子に依存している。静電フィルタ内の圧力降下も同様に一般的に増大するが、類似の効率をもつ機械的フィルタの場合に比べ緩やかな速度で増大する。
【0006】
静電濾材は、使用中、特にフィルタエレメントが水分または油性粒子に曝露される環境内で使用された場合に効率を喪失するかもしれない。静電フィルタと接触することになる粒子および汚染物質の多くは、これらのフィルタの濾過能力を妨げる。例えば、液体エアゾル、特に油性エアロゾルは、エレクトレットフィルタにその静電気増強型濾過効率を喪失させる傾向を有する。
【0007】
これらの効果を削減するために、ウェブ層を追加することまたはエレクトレットフィルタウェブの厚みを増大することによって、エレクトレットフィルタ内の不織ポリマーウェブの量を増大させてよい。しかしながら、追加のウェブは、エレクトレットフィルタを横断する圧力降下を増大させると共に重量および嵩も増加させる。
【0008】
膜などの表面フィルタは、一部の利用分野、詳細には屋外環境においてまたは濾過すべき流体がエアロゾルまたは過酷な化学薬品を含有する利用分野において良く知られている。その他の利用分野では、膜フィルタ濾材は、深層濾過濾材に比べより恒常な濾過効率を有することから、有利である。深層濾過濾材とは異なり膜フィルタの効率は細塵粒子のケークの集積に左右されないことから、膜は安定した濾過効率を有する。
【0009】
通常は数多くの従来の金属およびポリマー材料を分解させる過酷な化学的環境などの数多くの分野において、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)が有用性を示した。従来のフィルタエレメント上に表面積層品として発泡PTFE(ePTFE)膜濾過濾材が組込まれた時に粒子濾過の分野における有意な開発が達成された。このような濾材の例は米国特許第4,878,930号明細書および米国特許第5,207,812号明細書の中で教示されており、これらの特許は、移動する気体または空気流から細塵粒子を除去するためのフィルタカートリッジに向けられている。ePTFEで作られた膜は、有利にも水密性を有する。しかしながら、膜は、深層濾過濾材に比べると相対的に高い圧力降下を示し、比較的低い塵埃容量を有するかもしれない。したがって、一部の利用分野では、膜を用いたフィルタエレメントには頻繁な交換または清掃が必要となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、匹敵する濾過効率を有する濾材に比べ、清掃または交換に至るまでの優れた耐用年数および低い圧力降下を有する濾材に対するニーズが存在する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、膜およびこの膜と流体接触状態にある上流側の深層濾過層を含む、空気またはその他の気体から微粒子を濾過するための濾材である。この深層濾過層は、ナノウェブ層およびこのナノウェブ層の上流側にありそれと流体連通状態にある予備濾過層を含んでいる。
【0012】
本発明の一実施形態において、ナノウェブは、少なくとも約2gsmの坪量を有する。さらなる実施形態において、予備濾過層は、帯電した不織布を含む。さらなる実施形態において、帯電した不織布は、さらにメルトブローンウェブであってよい。帯電したメルトブローンウェブは、少なくとも約30gsmの坪量を有していてよい。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本明細書で使用される「ナノファイバ」という用語は、約1000nm未満、さらには約800nm未満、さらには約50nm〜500nm、またさらには約100〜400nmの数平均直径または横断面を有する繊維を意味する。本明細書中で使用される直径という用語は、非円形の最大断面を含む。
【0014】
「不織(布)」という用語は、多数のランダムに分布した繊維を含むウェブを意味する。繊維は一般に互いにボンディングされていてもされていなくてもよい。繊維は、ステープルファイバーまたは連続繊維であり得る。繊維は、異なる繊維の組合せとしてかまたは異なる材料で各々構成された類似の繊維の組合せとして、単一の材料または多数の材料を含むことができる。「ナノウェブ」は、ナノファイバを含む不織ウェブである。本明細書で使用される「ナノウェブ」という用語は、「ナノファイバウェブ」という用語と同義である。
【0015】
1つの系内の2つの構成要素に関して「流体接触状態にある」という用語は、一方の構成要素が他方の構成要素の上流側にあり、次にこのシステムの正常な運転中、システム内を通過する流体の本質的に全てが最初に一方の上流側構成要素を通過し次に他方の構成要素を通過することを意味する。本明細書で使用されている「流体接触」および「流体連通」という用語は、本明細書の中では同義である。
【0016】
2つのウェブまたは1つのウェブと膜などの2つの品目の相対的位置に関して「隣接する」という用語は、これらの品目が互いに流体接触状態にあり、同じ濾過体内に取付けられていることを意味する。これらは、互いに接触していても、互いにボンディングされていてもよく、あるいは、フィルタシステムの正常な運転中液体または気体が満たされる空隙がそれらの間に存在してもよい。
【0017】
複合濾材は少なくとも1つの深層濾過濾材層を膜層と流体連通状態で含んでいる。深層濾過濾材層はナノウェブ層と流体連通状態で予備濾過層を含む。予備濾過層は、不織布例えば、非限定的に、ポリプロピレンまたはポリエチレンからなるメルトブローンまたはスパンボンドウェブ、不織ポリエステルまたはポリアミドファブリック、ガラス繊維、マイクロファイバーグラス、セルロースおよびポリテトラフルオロエチレンを含むことができる。好ましくは、複合フィルタには、少なくとも1つのメルトブローンポリマー繊維ウェブが含まれる。深層濾過濾材は、ナノウェブと流体接触状態にあり、このナノウェブ自体は濾過膜と接触している。
【0018】
メルトブローンウェブは、加熱された空気の収束流によりメルトスパン繊維を同伴させて極めて細かいフィラメントを生成することにより生産される。メルトブローン加工は、典型的に10ミクロン未満である相対的に小さな径の繊維を用いて、デニール以下の連続繊維を形成する。
【0019】
ポリプロピレン、ポリエステル、ポリアミド、ポリ塩化ビニル、ポリメチルメタクリレートおよびポリエチレンを含むさまざまなポリマー材料から、1つまたは複数のメルトブローンポリマー繊維ウェブ層を作ることができる。ポリプロピレンが、より好ましいポリマー材料の中に入る。典型的には、ウェブを形成するポリマー繊維は、約0.5ミクロン〜約10ミクロンの範囲内の直径を有する。好ましくは、繊維直径は、約1ミクロン〜約5ミクロンである。
【0020】
深層濾過層の厚みはさほど重要ではない。深層濾過濾材が例えばメルトブローンウェブである場合、厚みは約0.25mm〜約3mmであってよい。これより大きい厚みは結果としてより高い塵埃容量をもたらす。ただし、深層濾過濾材層が過度に厚くなると、複合濾材内で使用できる層の合計数が制限されるかもしれない。
【0021】
深層濾過濾材の坪量の選択も同様に、当業者の能力範囲にある。例えばメルトブローン繊維ウェブの重量は約1g/m2〜約100g/m2の範囲内にあってよく、好ましくは、メルトブローン繊維ウェブの坪量は約10g/m2〜約50g/m2である。
【0022】
一態様において、深層濾過濾材は、静電荷を有する極めて効率の良い層を含む少なくとも1つのエレクトレットフィルタ濾材層を含む。電荷をメルトブローン繊維質ウェブに付与して、さまざまな公知の技術を用いてそれらの濾過性能を改善することができる。
【0023】
例えばTsaiらに対する米国特許第5,401,446号明細書の中で教示されている要領で、隣接する電界が互いとの関係において実施的に反対の極性を有するような形で、順次ウェブを一連の電界に付すことで適切なウェブを適切に低温帯電させる。その特許中で記述されているように、ウェブの一方面は、当初正の電荷に付され、一方ウェブの他方の面は当初負の電荷に付される。その後、ウェブの第1の面は負の電荷に付され、ウェブの他方の面は正の電荷に付される。しかしながら、エレクトレットフィルタ材料は同様に、さまざまなその他の公知の技術によって製造されてもよい。
【0024】
深層濾過濾材は同様に、濾過性能を増強するための添加剤を含んでいてよく、また性能を改善するために低レベルの抽出性炭化水素を有していてもよい。繊維は、いくつかの溶融加工可能なフルオロカーボン例えばフルオロケミカルオキサゾリジノンおよびピペラジンおよびペルフルオロ部分を含む化合物またはオリゴマーを含んでいてよい。このような添加物の使用は、帯電ウェブフィルタの性能にとってきわめて有益であり得る。
【0025】
深層濾過層はナノウェブも含んでいる。紡糸された状態のナノウェブは主としてまたは専ら、有利には従来のエレクトロスピニング法またはエレクトロブロー法といったエレクトロスピニング法と同様メルトブロー法またはその他のこのような適切なプロセスにより生産されたナノファイバを含んでいる。従来のエレクトロスピニング法は、ナノファイバおよび不織マットを製造するため溶解状態のポリマーに対し高電圧が印加される、全体が参照により本明細書に援用されている米国特許第4,127,706号明細書中で例証された技術である。しかしながら、エレクトロスピニングプロセスにおける合計処理量は過度に低いため、より重い坪量のウェブを形成する上で商業的に実現可能ではない。
【0026】
「エレクトロブロー法」プロセスは、全体が参照により本明細書に援用されている国際公開第03/080905号パンフレット中で開示されている。ポリマーおよび溶剤を含むポリマー溶液流が、貯蔵タンクから紡糸口金内部の一連の紡糸ノズルまで補給され、これに高電圧が印加され、これを通してポリマー溶液が放出される。その間、場合により加熱されていてもよい圧縮空気が、紡糸ノズルの側面内または紡糸ノズルの周囲に配置された空気ノズルから出される。この空気は一般に、吹込み気体流として下方に向けられ、この気体流が、新たに出されたポリマー溶液を包み前送りし、繊維質ウェブの形成を助け、このウェブは、真空チャンバ上の接地された多孔性収集ベルトの上に収集される。エレクトロブロープロセスは、比較的短時間で、約1gsm超の秤量さらには約40gsm以上という高い秤量で業務用のサイズおよび数量のナノウェブの形成を可能にする。
【0027】
基体上に紡糸されたナノファイバウェブを収集し組合せるため収集装置上に基体またはスクリムを配置して、組合せ繊維ウェブが高性能フィルタ、ワイパーなどとして使用されるようにすることができる。基体の例としては、さまざまな不織布、例えばメルトブローン不織布、ニードルパンチまたはスパンレース不織布、織布、編布、紙などが含まれてよく、ナノファイバ層を基体上に追加できるかぎり、制限なく使用可能である。不織布は、スパンボンド繊維、ドライレイドまたはウェットレイド繊維、セルロース繊維、メルトブローン繊維、ガラス繊維またはその配合物を含むことができる。
【0028】
本発明のナノウェブを形成する上で使用可能なポリマー材料は、特に限定されず、付加ポリマーおよび縮合ポリマー材料の両方、例えばポリアセタール、ポリアミド、ポリエステル、ポリオレフィン類、セルロースエーテルおよびエステル、ポリアルキレンスルフィド、ポリアリーレンオキシド、ポリスルフォン、変性ポリスルフォンポリマー、およびその混合物を含む。これらの包括的部類内に入る好ましい材料としては、架橋形態および非架橋形態でさまざまな加水分解度(87%〜99.5%)のポリ(塩化ビニル)、ポリメチルメタクリレート(およびその他のアクリル樹脂)、ポリスチレン、およびそれらのコポリマー(ABAタイプのブロックコポリマーを含む)、ポリ(フッ化ビニリデン)、ポリ(塩化ビニリデン)、ポリビニルアルコールが含まれる。好ましい付加ポリマーは、ガラス質となる傾向をもつ(室温より高いTg)。これは、ポリ塩化ビニルおよびポリメチルメタクリレート、ポリスチレンポリマー組成物又はアロイについてあてはまり、あるいはポリフッ化ビニリデンおよびポリビニルアルコール材料については結晶化度が低い。ポリアミド縮合ポリマーの1つの好ましい部類は、ナイロン材料、例えばナイロン−6、ナイロン−6,6、ナイロン6,6−6,10などである。本発明のポリマーナノウェブがメルトブロー法により形成される場合、ポリオレフィン類、例えばポリエチレン、ポリプロピレンおよびポリブチレン、ポリエステル類、例えばポリ(エチレンテレフタレート)およびポリアミド類、例えば以上で列挙したナイロンポリマーを含めた、ナノファイバへとメルトブロー可能なあらゆる熱可塑性ポリマーを使用することができる。
【0029】
繊維ポリマーのTgを低減させるために、上述のさまざまなポリマーに対して、当該技術分野で公知の可塑化剤を添加することが有利であり得る。適切な可塑化剤は、エレクトロスピニングまたはエレクトロブローすべきポリマーならびに、ナノウェブが導入される特定の最終用途によって左右される。例えば、ナイロンポリマーは水さらにはエレクトロスピニングまたはエレクトロブロープロセスの残留溶剤で可塑化され得る。ポリマーTgを低下させる上で有用であり得る当該技術分野で公知のその他の可塑化剤としては、脂肪族グリコール類、芳香族スルファノミド類、ジブチルフタレート、ジヘキシルフタレート、ジシクロヘキシルフタレート、ジオクチルフタレート、ジイソデシルフタレート、ジウンデシルフタレート、ジドデカニルフタレート、およびジフェニルフタレートからなる群から選択されたものを含めた(ただしこれらに限定されない)フタレートエステル類などが含まれるが、これらに限定されない。参照により本明細書に援用されているGeorge Wypych編のHandbook of Plasticizers,2004 Chemtec Publishingは、本発明において使用可能なその他のポリマーと可塑化剤の組合せを開示している。
【0030】
エレクトロブロープロセスにより被着され本発明において使用するのに適したナノファイバの平均繊維直径は、約1000nm未満、またはさらには約800nm未満、またさらには約50nm〜約500nmそしてさらには約100nm〜約400nmである。各々のナノファイバ層は、少なくとも約1g/m2、そしてより好ましくは少なくとも約2g/m2の坪量を有する。各々のナノファイバ層は同様に、約6g/m2〜約100g/m2、さらには約6g/m2〜約60g/m2の坪量、そして約20μm〜約500μmさらには約20μm〜約300μmの厚みを有していてよい。
【0031】
深層濾過層の下流側には、微孔性ポリマー膜濾過層がある。微孔性ポリマー膜は、取外し可能な深層濾過層を通過する粒子を捕捉するように意図されている。微孔性ポリマー膜は、流体流から粒子および有機体を除去する上でのディペンダビリティー(dependability)および信頼性を実証した。膜は通常、そのポリマー組成、透気率、水侵入圧および濾過効率により特徴づけされる。
【0032】
利用分野の要件に応じて、さまざまな微孔性ポリマー膜を膜濾過層として使用することができる。膜フィルタ層は、ニトロセルロース、トリアセチルセルロース、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリスルフォン、ポリ塩化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、アクリレートコポリマーという例示的材料から製造されてよい。
【0033】
膜濾過層は好ましくは、液体の通過を防ぐことのできる疎水性材料で製造される。膜濾過層は、中を液体が全く通過することなく、濾材を横断して加えられる差圧に耐えることができなくてはならない。好ましい膜は、0.2bar〜1.5barの水侵入圧および約7Frazier〜約100Frazier、さらに好ましくは約10Frazier〜約40Frazierの平均透気率を有する。
【0034】
好ましくは、膜濾過層は、微孔性フルオロポリマー例えばPTFE、フッ素化エチレンプロピレン(FEP)、パーフルオロナルコキシポリマー(PFA)、ポリプロピレン(PU)、ポリエチレン(PE)または超高分子量ポリエチレン(uhmwPE)である。
【0035】
最も好ましくは、膜濾過層は、ePTFEを含む。適切なePTFE膜は、米国特許第5,814,405号明細書中に記載されている。そこで記述されている膜は、優れた濾過効率、高い空気流量および破裂強度を有する。適切なePTFE膜を製造する方法が、その中で完全に説明され、参照により本明細書に援用されている。これらのePTFE膜は、W.L.Gore and Associates Inc.(Newark,Del)またはDonaldson Corporation(Minneapolis,MN)から入手可能である。しかしながら、その他の手段により製造されたePTFE膜も同様に使用可能である。
【0036】
膜濾過層は、フィルタの一部の特性を改善するための充填剤材料を含んでいてよい。適切な充填剤例えばカーボンブラックまたはその他の導電性充填剤、触媒微粒子、ヒュームドシリカ、コロイドシリカまたは吸着材、例えば活性炭またはセラミック充填剤例えば活性アルミナおよびTiO2、そして本発明において有用な充填された膜の調製方法は、米国特許第5,814,405号明細書中で完全に記述されている。
【0037】
流体流量に対し適切な方向性に濾過層を維持するための支持体層を具備してよい。好ましい支持材料は、膜および取外し可能な層を支持するのに充分な剛性を有するものの膜の損傷を避けるのに充分柔軟なものでなくてはならない。支持体層は、不織布または織布を含んでいてよい。適切な支持体層材料のその他の例としては、製織されたおよび不織のポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレン、ガラス繊維、マイクロファイバーグラスおよびポリテトラフルオロエチレンが含まれてよいが、これらに限定されない。材料は、プリーティングされた方向性で、プリーツを開いた形に保持した(すなわち襞がつぶれないようにした)状態で、プリーツ内に空気流の流路を提供するはずである。この利用分野において使用するためには、スパンボンデッド不織布などの材料が特に適している。
【0038】
支持体層は、膜濾過層の上流側または下流側に位置づけされてよい。支持体材料を膜濾過層に積層してベース層を形成してもよい。この態様では、ベース層は有利には、上にある深層濾過濾材層に対する支持体を提供すると同時に、最終的濾過表面としても作用する。
【0039】
一実施形態において、濾過系は、微孔性膜と流体接触状態にある1つ以上のナノファイバ層を有するナノファイバウェブを含み得る。さらなる実施形態において、ナノウェブは、50kPaの作用荷重および200m2のアンビル表面積の下で、参照により本明細書に援用されているISO534により決定された場合に約300μm未満さらには約150μm未満の厚みを有していてよい。
【0040】
ナノウェブおよび膜は、互いに隣接していてもよく、場合によりその表面の一部分または全体にわたり互いにボンディングされていてもよい。ナノウェブと膜は、ナノファイバウェブを膜に接着積層することによってかまたは上述のプロセス中において収集ベルト上に膜を置くことで膜上に直接ナノファイバ層を形成して膜/ナノファイバ層構造を形成させることによって組合されてよく、後者の場合、ナノファイバ層を機械的絡み合いにより膜に接着させることができる。膜の例としては、さまざまな微孔性フイルム例えば延伸、充填ポリマーおよび発泡ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)が含まれていてよく、これは、膜が所要濾過性能を有するかぎり制限なく使用可能である。
【0041】
本発明の一実施形態において、ナノファイバウェブおよび膜は、互いに流体接触状態にあるが必ずしも互いに物理的に接触しているわけではない。これらは、間に空隙を伴って所定の場所に保持されてよく、あるいは、異なる濾過体内に保持され、流体搬送流路または管によって連結されていてよい。
【0042】
膜は例えば、発泡ポリテトラフルオロエチレン、ポリスルフォン、ポリエーテルスルフォン、ポリフッ化ビニリデン、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリアクリロニトリル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、酢酸セルロース、硝酸セルロース、混合セルロースエステル、ならびにその配合物及び組合せからなる群から選択されたポリマーを含んでいてよい。
【0043】
本発明に適したePTFE膜は、数多くの異なる公知のプロセスで調製することができるが、好ましくは、ePTFEを得るための米国特許第4,187,390号明細書;同4,110,239号明細書;および同3,953,566号明細書中で記述されているようにポリテトラフルオロエチレンを発泡させることによって調製され、これらの特許は全て参照により本明細書に援用される。「多孔性」とは、膜が、20mmの水量ゲージで1平方メートルあたり毎分少なくとも0.05立方メートル(m/分)の透気率を有することを意味する。20mm以上の水で200m/分の透気率を有する膜を使用することができる。細孔は、ePTFEのノードとフィブリルの間に形成された微小孔である。
【0044】
同様に、米国特許第5,234,751号明細書、同5,217,666号明細書、同5,098,625号明細書、同5,225,131号明細書、同5,167,890号明細書、同4,104,394号明細書、同5,234,739号明細書、同4,596,837号明細書、特開平1078823号公報および特開平3−221541号公報のいずれかの中に記載されている膜を使用することができ、これらの特許では未発泡の押出しまたは整形済みPTFEは、物品を焼結または半焼結させるため加熱されている。この焼結または半焼結された物品は次に、所望の多孔性および所望の特性を形成するように延伸される。
【0045】
特殊な利用分野向けには、PTFEに充填剤材料を提供して、特殊な利用分野用にPTFEの特性を修正することができる。例えば、米国特許第4,949,284号明細書から、セラミックフィルタ(SiO2)および限定量のマイクログラスファイバをPTFE材料内に取込むことができる、ということが公知であり、また、欧州特許第B−0−463106号明細書では、二酸化チタン、ガラス繊維、カーボンブラック、活性炭などが充填剤として言及されている。
【0046】
高充填のポリマー、通常はポリオレフィンからの微孔性フイルムの調製用技術が公知である。このようなウェブは、本発明の膜として使用するためにも適している。典型的にはポリオレフィン、通常はポリエチレンの組合せが通常CaCO3である充填剤と配合され、フイルムの形に押出加工および延伸されて微孔性フイルムを形成する。
【0047】
本発明の濾過膜として使用するための微孔性フイルムの適切な例としては、全て参照により本明細書に援用されている米国特許第4,472,328号、同4,350,655号明細書および同4,777,073号明細書の中に記載されているものが含まれる。
【0048】
微孔性膜およびナノウェブは、ボンディングされていない状態に残すことができ、またさらには異なる濾過体内に保持することもできる。微孔性膜およびナノウェブは同様に、例えば接着剤ボンディング、熱ボンディング、および超音波ボンディングなどにより場合により互いにボンディングされてもよいが、当業者にとって公知のいかなるボンディング手段を利用してもよい。好ましい実施形態においては、例えば膜またはナノウェブに塗布された接着剤を溶融させるのに充分な温度で高温ロールのニップ中に材料を通すことなどの適切な積層技術を用いて、膜をナノウェブにボンディングする。ロールのうちの1本は、積層品内にボンディングパターンを生成するようにその表面上に雄型を有することができる。
【0049】
内側または外側ファブリックに対してナノウェブおよび微孔性膜または積層品をボンディングするために、1種類以上の接着剤を使用してもよい。1つの適切な接着剤は、多数の加熱および冷却サイクルにわたり加熱時点で軟化され次に冷却時に硬化され得る熱可塑性接着剤である。このような熱可塑性接着剤の一例としては、「ホットメルト」接着剤がある。
【0050】
ファブリックに対して多孔性ePTFE膜を積層するために用いられる接着剤は同様に、ブタジエンアクリロニトリルコポリマー、アクリルエステル、ビニルおよび塩化ビニリデンポリマーベースのコポリマーおよびエマルジョン重合により生成されたコポリマー、スチレン−ブタジエンコポリマーおよびブタジエン、スチレンおよびビニルピリジンのターポリマーの水性アニオン分散を含めたさまざまなフルオロケミカル分散または合成ラテックスの1つであり得る。
【0051】
積層前にナノウェブまたは膜に接着剤をコーティングするのに異なる方法を使用することができる。例えば、まず最初にナノウェブの所要部域に接着剤をコーティングし、次にコーティング済みのファブリックの接着剤側にePTFE膜を置く。膜側に伝導熱および充分な圧力を加えて接着剤を膜の細孔内に流入させる。接着剤が架橋性である場合、それは熱のために架橋し、結果として膜が基体に対し機械的に付着する。
【0052】
フルオロポリマーおよび非フッ素化ポリマーの積層品から形成された物品および積層プロセスのさらなる例として、米国特許第5,855,977号明細書は、共重合(interpolymerize)されたモノマー単位を含むフルオロポリマーのフッ素化層と実質的にフッ素化されていない層を含む多層品を開示している。多層品はさらに、脂肪族ジまたはポリアミンを含み、この脂肪族ジまたはポリアミンはこれを含まない多層品に比べて高い接着力を層間に提供する。
【0053】
フッ素化ポリマー層とポリアミドの間の接着力を増大させるためには、さまざまなさらなる方法を使用することができる。例えば、2つのポリマー層の間に接着剤層を加えることができる。米国特許第5,047,287号明細書は、アミノ基を有するアクリロニトリル−ブタジエンまたはアクリロニトリル−イソプレンゴムを含む接着剤により少なくとも一方の表面にボンディングされたフッ素ゴム層を有するベースファブリックを含む、自動車の利用分野において使用するのに適したダイヤフラムを開示している。
【0054】
層の一方または両方の表面処理も、ボンディングを補助する目的で時として利用される。例えば、荷電ガス雰囲気でフルオロポリマー層を処理し(例えばコロナ処理)その後、例えば熱可塑性ポリアミドなどの第2の材料の層を塗布することを教示したものもある。例えば、欧州特許出願第0185590号明細書(Uenoら)および同第0551094号明細書(Krauseら)ならびに米国特許第4,933,060号明細書(Prohaskaら)および同5,170,011号明細書(Martucci)。
【0055】
一部の場合においては、2つの層を合わせてボンディングするのを補助するための中間層として、フルオロポリマーおよび異種層の配合物自体が用いられる。欧州特許出願第0523644号明細書(Kawashimaら)は、ポリアミド樹脂表面層およびフッ素樹脂表面層を有するプラスチック積層品を開示している。
【0056】
フルオロポリマー層に非フルオロポリマーをボンディングする方法のさらなる実施例において、米国特許第6,869,682号明細書は、a)フルオロポリマーを含む第1の層;およびb)第1の層にボンディングされた第2の層を含み、第2層が溶融加工可能な実質的にフッ素化されていないポリマー、塩基およびクラウンエーテルの混合物を含んでいる物品について記述している。
【0057】
フルオロポリマー層に対し非フルオロポリマー層をボンディングする方法のさらなる実施例において、米国特許第6,962,754号明細書は、フルオロポリマーと、その一方の側に直接付着した状態で、本質的に特定の組成をもつ少なくとも1つのジアミンおよび少なくとも1つの二酸を含むモノマーの縮合の結果として得られたポリアミドを含む結束樹脂を含む結束層とを含む構造を記述している。
【0058】
層を合わせる方法(例えば同時押出加工または積層)の熱および圧力は、層間に適切な接着力を提供するのに充分なものであってよい。しかしながら、結果として得た多層品をさらに例えば追加の熱、圧力またはその両方を用いて処理して、層間に追加の接着ボンディング強度を提供することが望ましいかもしれない。多層品が押出加工により調製される場合に追加の熱を供給する一つの方法は、同時押出加工の後に積層品の冷却を遅延させることによる。あるいは、単に複数の構成要素を加工するのに必要な温度より高い温度で層を積層または同時押出することにより多層品に対して追加の熱エネルギーを加えてもよい。あるいは、別の代替案として、仕上った積層品を長時間にわたり高温に維持してもよい。例えば仕上った多層品を、オーブンまたは加熱した液体浴などの物品の温度を上昇させるための別個の手段の中に置いてもよい。これらの方法の組合せも使用してよい。
【0059】
本発明のフィルタは、スクリム層を含んでいてよく、この層中、スクリムはナノウェブのみまたは膜のみに隣接してかあるいは両方の間に存在する。本明細書中で使用する「スクリム」とは支持体層のことであり、ナノウェブとボンディング、接着または積層できるあらゆる平面構造であり得る。有利には、本発明において有用なスクリム層は、スパンボンド不織層であるが、不織ファイバのカーデッドウェブなどから作ることができる。一部のフィルタ利用分野のために有用なスクリム層には、襞およびデッドフォールドを保つのに充分な剛性が必要である。
【実施例】
【0060】
材料
ナノウェブは、蟻酸中でNylon6,6(Zytel xx,DuPont,Wilmington,DE)から、国際公開第03/080905号パンフレット中で開示された通りの上述のエレクトロブロープロセスを用いて調製した。坪量が32gsmまたは36gsmである荷電メルトブローンは、デラウェア州ミドルタウンにあるDel Star Technologiesから入手した。未荷電メルトダウンは、荷電無しで作製した。試験を実施するために使用したPTFE膜は、3ミクロンフィルタとして格付けされた典型的なPTFE膜であり、その泡立ち点および平均流細孔はそれぞれ5.6および2.2ミクロンと測定された。
【0061】
試験
直径11.3cmの円形開口部(面積=100cm2)を備えた自動フィルタ試験(TSI8130型)を用いて、平面シート濾材について微粒子塵埃負荷試験を行なった。2wt%の塩化ナトリウム水溶液を用いて、質量平均径0.26ミクロンの細かいエアロゾルを生成し、これを負荷試験で使用した。空気流速は40リットル/分であり、これは6.67cm/sの面速度に対応していた。機器メーカーによると、エアロゾル濃度は約16mg/m3であった。濾過効率および初期圧力降下を、試験の開始時に測定し、最終圧力降下を試験の終了時に測定する。最終圧力降下から初期圧力降下を減算することにより、圧力降下の増加を計算する。
【0062】
比較例1は、濾材がスクリムとPTFE膜で作られていた、同じ微細エアロゾル負荷を使用した。微細エアロゾルをスクリム側から投入したものの、エアロゾルはPTFE膜上に急速に装荷され、圧力降下は15.7分後、128.1mm水柱だけ増大した。スクリムは、微細エアロゾルの予備濾過を全く提供しなかった。スクリムおよびPTFE膜上に荷電メルトブローン層を有する濾材を調製した。以下で記述したものと同じ手順にしたがって負荷試験を実施した。
【0063】
表1は、ナノウェブ無しおよび4つの異なる坪量をもつナノウェブを用いた試料についてのおよそ31分間の濾過全体にわたる圧力増加の比較を示している。したがって4A−4Dと付番された試料は、PTFE膜プラススクリム、スクリムを通してPTFEと流体接触状態にあるナノウェブ、およびナノウェブ上の荷電メルトブローン材料で構成されている。試料2Aは、ナノファイバウェブを全く有しておらず、荷電メルトブローンウェブのみを有する。ナノウェブが存在する場合、初期抵抗はわずかに高いものの、31分間にわたる増加は著しく低く、濾過中圧力を低く保つにあたっての本発明の有効性を実証している。
【0064】
表1 36gsmの荷電メルトブローンを用いた試料と31分間にわたる圧力増加

【0065】
表2は、32gsmのメルトブローン材料を用いた類似の比較を示す。試料2Bは荷電メルトブローン層を有し、試料3は未荷電メルトブローン層を有する。荷電メルトブローンウェブの存在下での塵埃保持容量における同じ改善が明白であり、メルトブローン上の電荷に関するその重要性も示されている。メルトブローン上の電荷が消散した場合、フィルタの塵埃保持容量は有意に減少する。実施例4Fの場合、ナノファイバウェブの存在下で塵埃負荷容量におけるさらなる改善が明らかである。
【0066】
表2 32gsmのメルトブローンを用いた試料

【0067】
表3は、1つの濾材内の荷電メルトブローンとナノウェブを合わせた組合せの有効性を示す。表3において、試料5A−5Dは、荷電メルトブローンを一切有していない。濾材の容量は、ナノウェブの坪量を増加させることによって有意に改善されない。しかしながら、荷電メルトブローン濾材の場合、ナノウェブの坪量が増大した時点で容量は有意に増大する。
【0068】
表3 メルトブローンを有するナノウェブ性能と有さないナノウェブ性能との比較


【特許請求の範囲】
【請求項1】
膜およびこの膜と流体接触状態にある上流側の深層濾過層を含む、空気またはその他の気体から微粒子を濾過するための濾材において、前記深層濾過層がナノウェブ層および前記ナノウェブ層の上流側にありそれと流体連通状態にある予備濾過層を含んでいる、濾材。
【請求項2】
前記ナノウェブが少なくとも約2g/m2の坪量を有する、請求項1に記載の濾材。
【請求項3】
前記予備濾過層が帯電した不織布を含む、請求項1に記載の濾材。
【請求項4】
前記帯電した不織布が、メルトブローンウェブである、請求項3に記載の濾材。
【請求項5】
前記帯電したメルトブローンウェブが少なくとも約30g/m2の坪量を有する、請求項4に記載の濾材。
【請求項6】
請求項1に記載の濾材を含むフィルタ。

【公表番号】特表2012−512731(P2012−512731A)
【公表日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−539771(P2011−539771)
【出願日】平成21年12月7日(2009.12.7)
【国際出願番号】PCT/US2009/066936
【国際公開番号】WO2010/065949
【国際公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】