説明

ナノカーボン材料製造用触媒粒子の製造方法、ナノカーボン材料製造用触媒粒子

【課題】連続的に大量生産を効率良く行うことができ且つ純度の高い単層のカーボン材料を製造することができるナノカーボン材料製造用触媒粒子の製造方法、ナノカーボン材料製造用触媒粒子及びナノカーボン材料製造システムを提供する。
【解決手段】一次粒子担体11を例えば加圧器12等の加圧装置によりプレス成形して一次粒子成形品13を得る成形工程と、前記一次粒子成形品13を焼結する焼結工程と、前記焼結後の一次粒子焼結体14を粉砕し、整粒して二次粒子担体15とする第1の粉砕・整粒工程と、整粒された二次粒子担体15を溶液槽16の触媒溶液17に浸漬させ、触媒を担持させる触媒担持工程と、触媒を担持した触媒粒子を乾燥する乾燥工程と、乾燥した触媒粒子乾燥体18を粉砕し、整粒してナノカーボン材料製造用触媒粒子19とする第2の粉砕・整粒工程とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナノカーボン材料を効率的にしかも純度良く製造することができるナノカーボン材料製造用触媒粒子の製造方法、ナノカーボン材料製造用触媒粒子及びナノカーボン材料製造システムに関する。
【背景技術】
【0002】
カーボンナノチューブは、黒鉛(グラファイト)シートが円筒状に閉じた構造を有するチューブ状の炭素多面体である。このカーボンナノチューブには、黒鉛シートが円筒状に閉じた多層構造を有する多層ナノチューブと、黒鉛シートが円筒状に閉じた単層構造を有する単層ナノチューブとがある。
【0003】
一方の多層ナノチューブは、1991年に飯島により発見された。すなわち、アーク放電法の陰極に堆積した炭素の塊の中に、多層ナノチューブが存在することが発見された(非特許文献1)。その後、多層ナノチューブの研究が積極的になされ、近年は多層ナノチューブを多量に合成できるまでにもなった。
【0004】
これに対して、単層ナノチューブは概ね0.4〜10ナノメータ(nm)程度の内径を有しており、その合成は、1993年に飯島とIBMのグループにより同時に報告された。単層ナノチューブの電子状態は理論的に予測されており、ラセンの巻き方により電子物性が金属的性質から半導体的性質まで変化すると考えられている。従って、このような単層ナノチューブは、未来の電子材料として有望視されている。
【0005】
単層ナノチューブのその他の用途としては、ナノエレクトロニクス材料、電界電子放出エミッタ、高指向性放射源、軟X線源、一次元伝導材、高熱伝導材、水素貯蔵材等が考えられている。また、表面の官能基化、金属被覆、異物質内包により、単層ナノチューブの用途はさらに広がると考えられている。
【0006】
従来、上述した単層ナノチューブは、鉄、コバルト、ニッケル、ランタン等の金属を陽極の炭素棒に混入し、アーク放電を行うことにより製造されている(特許文献1)。
しかし、この製造方法では、生成物中に、単層ナノチューブの他、多層ナノチューブ、黒鉛、アモルファスカーボンが混在し、収率が低いだけでなく、単層ナノチューブの糸径・糸長にもばらつきがあり、糸径・糸長の比較的揃った単層ナノチューブを高収率で製造することは困難であった。
【0007】
なお、カーボンナノチューブの製造方法としては、上述したアーク法の他、気相熱分解法、レーザー昇華法、凝縮相の電解法などが提案されている(特許文献2乃至4)。
【0008】
しかしながら、これらの文献等に開示する製造方法はいずれも実験室又は小規模レベルの製造方法であり、特に炭素材料の収率が低く、しかも純度が低い、という問題がある。
近年炭素材料の用途が拡大しており、このため、大量に効率良く製造することができると共に、純度が良好なカーボン材料を製造する装置の出現が望まれている。
【0009】
そこで、本発明者等は、カーボンナノファイバの製造を流動層で行うことを先に提案した(特許文献5)。
【0010】
【非特許文献1】S,Iijima,Nature,354,56(1991)
【特許文献1】特開平06−280116号公報
【特許文献2】特許第3100962号公報
【特許文献3】特表2001−520615号公報
【特許文献4】特開2001−139317号公報
【特許文献5】特開2004−76197号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、特許文献5の流動層方式で流動材に活性金属を担持した担体を用いて単層のカーボン材料を製造するに際し、触媒の粒径が100μm以下と極微粒であるので、流動層の流動材と担体とを併用する場合には、造粒して所定の粒径とする必要がある。
【0012】
そこで、従来では、図10に示すように、担体(一次粒子)1を触媒溶液2に含浸させて、触媒を担体表面に担持して触媒粒子3を形成し、その後加圧器4で加圧し、その後整粒することで、二次粒子の造粒体5を形成している。
【0013】
この造粒体5をナノカーボン材料製造用の触媒粒子とする場合、加圧されて密となっているので、原料ガスの流れが阻害され、原料ガスの拡散が造粒した粒子の内部まで到達することができない、という問題がある。
【0014】
このため、所定量の原料ガスを供給しているにもかかわらず、造粒体の内部に原料が入ることができず、活性成分と接触することができない結果、ナノカーボン材料の生成量が低減するという問題がある。また、反応後の水素の排出も困難となるので、反応が良好に進行することができない、という問題がある。
また、加圧処理されているので、流動層内で触媒粒子同士が接触することで粉化する場合がある。
【0015】
本発明は、上記の事情に鑑み、連続的に大量生産を効率よく行うことができ且つ純度の高い単層のカーボン材料を製造することができるナノカーボン材料製造用触媒粒子の製造方法、ナノカーボン材料製造用触媒粒子及びナノカーボン材料製造システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上述した課題を解決するための本発明の第1の発明は、一次粒子担体を成形して一次粒子成形品を得る成形工程と、前記一次粒子成形品を焼結する焼結工程と、前記焼結後の一次粒子焼結体を粉砕し、整粒して二次粒子担体とする第1の粉砕・整粒工程と、整粒された二次粒子担体を触媒溶液に浸漬させ、触媒を担持させる触媒担持工程と、触媒を担持した触媒粒子を乾燥する乾燥工程と、乾燥した触媒粒子乾燥体を粉砕し、整粒してナノカーボン材料製造用触媒粒子とする第2の粉砕・整粒工程とを含むものであることを特徴とするナノカーボン材料製造用触媒粒子の製造方法にある。
【0017】
第2の発明は、一次粒子担体を成形して一次粒子成形品を得る第1の成形工程と、前記一次粒子成形品を焼結する第1の焼結工程と、前記焼結後の一次粒子焼結体を粉砕し、整粒して二次粒子担体とする第1の粉砕・整粒工程と、二次粒子担体を成形して二次粒子成形品を得る第2の成形工程と、前記二次粒子成形品を焼結する第2の焼結工程と、前記焼結後の二次粒子焼結体を粉砕し、整粒して三次粒子担体とする第2の粉砕・整粒工程と、整粒された三次粒子担体を触媒溶液に浸漬させ、触媒を担持させる触媒担持工程と、触媒を担持した触媒粒子を乾燥する乾燥工程と、乾燥した触媒粒子乾燥体を粉砕し、整粒してナノカーボン材料製造用触媒粒子とする第3の粉砕・整粒工程とを含むものであることを特徴とするナノカーボン材料製造用触媒粒子の製造方法にある。
【0018】
第3の発明は、一次粒子担体を触媒溶液に浸漬させ、触媒を担持させる触媒担持工程と、触媒を一次粒子担体に担持した触媒粒子を乾燥する乾燥工程と、前記乾燥した触媒粒子乾燥体を粉砕・整粒して触媒粒子とする第1の粉砕・整粒工程と、得られた触媒粒子を加圧器で成形する成形工程と、前記成形後の触媒粒子成形品を焼結する焼結工程と、前記焼結後の粒子焼結体を粉砕し、整粒してナノカーボン材料製造用触媒粒子とする第2の粉砕・整粒工程とを含むことを特徴とするナノカーボン材料製造用触媒粒子の製造方法にある。
【0019】
第4の発明は、第1又は3の発明において、前記成形工程において、気孔材を一次粒子担体に混入することを特徴とするナノカーボン材料製造用触媒粒子の製造方法にある。
【0020】
第5の発明は、第2の発明において、前記第1成形工程又は第2成形工程において、気孔材を粒子担体に混入することを特徴とするナノカーボン材料製造用触媒粒子の製造方法にある。
【0021】
第6の発明は、第4又は5において、前記気孔材が樹脂であることを特徴とするナノカーボン材料製造用触媒粒子の製造方法にある。
【0022】
第7の発明は、第1乃至6のいずれか一つの発明において、活性金属が、V,Cr,Mn,Fe,Co,Ni,Cu,Znのいずれか一種又はこれらの組合せであり、担体がアルミナ、アルミン酸ナトリウム、ミョウバン、リン酸アルミニウム、酸化カルシウム、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、硫酸マグネシウム、リン酸カルシウム、又はリン酸マグネシウムのいずれか一種又はこれらの組合せであることを特徴とするナノカーボン材料製造用触媒粒子の製造方法にある。
【0023】
第8の発明は、第7の発明において、前記活性金属にMo又はWのいずれか一種又は両方の助触媒を含むことを特徴とするナノカーボン材料製造用触媒粒子の製造方法にある。
【0024】
第9の発明は、第1乃至8のいずれか一つの発明において、前記ナノカーボン材料が単層ナノカーボンチューブであることを特徴とするナノカーボン材料製造用触媒粒子の製造方法にある。
【0025】
第10の発明は、第1乃至9のいずれか一つのナノカーボン材料製造用触媒粒子の製造方法により得られたことを特徴とするナノカーボン材料製造用触媒粒子にある。
【0026】
第11の発明は、第1乃至9のいずれか一つのナノカーボン材料製造用触媒粒子の製造方法により得られたナノカーボン製造用触媒粒子を用い、カーボン原料からナノカーボン材料を製造する製造装置と、前記カーボン材料を製造装置から回収する回収装置と、該回収されたナノカーボン材料から担体を分離するナノカーボン材料精製装置と、を具備することを特徴とするナノカーボン材料の製造システムにある。
【0027】
第12の発明は、第11の発明において、前記ナノカーボン材料を製造する製造装置が流動層反応装置であることを特徴とするナノカーボン材料の製造システムにある。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、担体が焼結工程により処理されているので、担体内部の空隙率が向上し、原料ガスの拡散が速やかに行うことができ、ナノカーボン材料の製造効率が増大する。また、焼結処理により、粉化を防止することができ、例えば流動層反応装置の流動材を兼用した触媒粒子として長期間に亙って安定してナノカーボン材料を製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、この発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
【0030】
[第1実施形態]
図1は第1実施形態にかかるナノカーボン材料製造用触媒粒子の製造方法の工程模式図であり、図2はその工程図である。
これらの図面に示すように、本発明の実施形態のナノカーボン材料製造用触媒粒子の製造方法は、一次粒子担体11を例えば加圧器12等の加圧装置によりプレス成形して一次粒子成形品13を得る成形工程S−11と、前記一次粒子成形品13を焼結する焼結工程S−12と、前記焼結後の一次粒子焼結体14を粉砕し、整粒して二次粒子担体15とする第1の粉砕・整粒工程S−13と、整粒された二次粒子担体15を溶液槽16の触媒溶液17に浸漬させ、触媒を担持させる触媒担持工程S−14と、触媒を担持した触媒粒子を乾燥する乾燥工程S−15と、乾燥した触媒粒子乾燥体18を粉砕し、整粒してナノカーボン材料製造用触媒粒子19とする第2の粉砕・整粒工程S−16とを含むものである。
【0031】
本方法によれば、前記焼結工程S−12で焼結することにより担体内部の細孔が拡大し、さらに整粒することで粒が揃った担体とすることができる。この結果、原料ガスの拡散が良好となると共に、原料ガスが分解して生成する水素(H2)が速やかに排出されることになり、ナノカーボン材料生成反応が良好に進行することになる。
【0032】
すなわち、一次粒子は1μm以下の微細な粒子であるので、この粒子を加圧器12により加圧成形させ、一次粒子成形品13を後焼成することにより、担体同士が一体となった焼結体を形成する。この焼結の際に、担体内部に空隙が形成されることになる。
この一次粒子焼結体は粉砕、整粒され、数μm〜数100μmの二次粒子担体15とする。この二次粒子担体15は活性成分が担持されていないので、触媒活性はない。
その後、触媒溶液17に二次粒子担体15を浸漬させ、活性金属を担持させる。その後、触媒溶液を蒸発乾固させ、触媒粒子乾燥体18を形成する。この触媒粒子乾燥体18は数μm〜数100μmの粉体からなる塊である。
この触媒粒子乾燥体18を粉砕し、整粒することで所定粒径のナノカーボン材料製造用触媒粒子19とする。
【0033】
図3に得られたナノカーボン材料製造用触媒粒子19の模式概略図を示す。なお、図3中一点鎖線は、担体1が集合して焼結体6を構成している部分である。この焼結体の表面に触媒2aが担持されることになる。
このナノカーボン材料製造用触媒粒子19はそのまま用いることもできるが、必要に応じて100μm〜10mm、好ましくは400μm〜0.5mm程度に造粒するようにしてもよい。
【0034】
前記成形工程での加圧条件は、50kg/cm2〜10t/cm2程度とするのが好ましい。
【0035】
前記焼結工程での燃焼条件は、例えば800℃以上とするのが望ましい。
【0036】
また、前記成形工程S−11において、気孔材を一次粒子担体に混入すると共に、焼結工程S−12において、当該気孔材を燃焼させることにより、例えば図4に示すように、担体1が密接に集合している内部に気孔材があった場所が結果として空隙を形成したナノカーボン材料製造用触媒粒子20を形成するようになる。この結果、より高い空隙率とすることができる。
ここで、前記気孔材としては、例えばポリエチレングリコール(PEG)等の樹脂を挙げることができる。得られた気孔径は数nm〜数10nm程度とするのが好ましい。なお、樹脂としては、PEGの他にPVA等を用いることができる。
【0037】
前記触媒溶液の活性金属としては、V,Cr,Mn,Fe,Co,Ni,Cu,Znのいずれか一種又はこれらの組合せである。
【0038】
また、前記担体としては,例えばアルミナ、アルミン酸ナトリウム、ミョウバン、リン酸アルミニウム等のアルミニウム化合物、酸化カルシウム、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム等のカルシウム化合物、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、硫酸マグネシウム等のマグネシウム化合物、リン酸カルシウム、リン酸マグネシウム等のアパタイト系とするのが好ましい。
ここで、アパタイトとは、M102+(Z5-4)62-の組成をもつ鉱物でM、ZO4、Xに対して次のような各元素が単独あるいは2種類以上の固溶状態で入るものをいう。
M:Ca,Pb,Ba,Sr,Cd,Zn,Ni,Mg,Na,K,Fe,Alその他、
ZO4:PO4,AsO4,VO4,SO4,SiO4,CO3
X:F,OH,Cl,Br,O,I
【0039】
また、前記活性金属にMo又はWのいずれか一種又は両方の助触媒を含むようにしてもよい。これは、前記Mo等の助触媒を少量添加することにより、炭素原料の分解を促進させると共に、炭素の鉄等の活性金属への取込みを促進し、カーボン材料の生成を促進させるからである。
【0040】
[第2実施形態]
図5は第2実施形態にかかるナノカーボン材料製造用触媒粒子の製造方法の工程模式図であり、図6はその工程図である。
本発明の実施形態のナノカーボン材料製造用触媒粒子の製造方法は、一次粒子担体11を例えば加圧器12等の加圧装置によりプレス成形して一次粒子成形品13を得る第1の成形工程S−21と、前記一次粒子成形品13を焼結する第1の焼結工程S−22と、
前記焼結後の一次粒子焼結体14を粉砕し、整粒して二次粒子担体15とする第1の粉砕・整粒工程S−23と、二次粒子担体15を例えば加圧器12等の加圧装置によりプレス成形して二次粒子成形品21を得る第2の成形工程S−24と、前記二次粒子成形品21を焼結する第2の焼結工程S−25と、前記焼結後の二次粒子焼結体22を粉砕し、整粒して三次粒子担体23とする第2の粉砕・整粒工程S−26と、整粒された三次粒子担体23を溶液槽16の触媒溶液17に浸漬させ、触媒を担持させる触媒担持工程S−27と、触媒を担持した触媒粒子を乾燥する乾燥工程S−28と、乾燥した触媒粒子乾燥体24を粉砕し、整粒してナノカーボン材料製造用触媒粒子25とする第3の粉砕・整粒工程S−29とを含むものである。
【0041】
本方法によれば、焼結工程で焼結することにより細孔が拡大し、さらに整粒することで粒が揃った担体とすることができ、原料ガスの拡散が良好となると共に、原料ガスが分解して生成する水素(H2)が速やかに排出されることになり、ナノカーボン材料生成反応が良好に進行することになる。さらに本方法では、2回の焼成工程S−22,S−25を経ているので、焼結がさらに進行して高強度化を実現することとなる。この結果、例えば流動層反応装置に用いる場合における流動触媒の粉化を防ぐことができる。
【0042】
また、触媒の活性成分として、例えば炭素源としてメタノール等のアルコールを用いる場合には、鉄以外の活性成分(例えばコバルト)が好ましい。このような際に、活性成分の機能を発揮させるものとしてではなく、造粒補強機能を発揮するように鉄等の造粒補強材も同時に担持させることで、造粒強度の向上を図るようにしてもよい。
【0043】
[第3実施形態]
図7は第3実施形態にかかるナノカーボン材料製造用触媒粒子の製造方法の工程模式図であり、図8はその工程図である。
本発明の実施形態のナノカーボン材料製造用触媒粒子の製造方法は、一次粒子担体11を触媒溶液17に浸漬させ、触媒を担持させる触媒担持工程S−31と、触媒を一次粒子担体に担持した触媒粒子を乾燥する乾燥工程S−32と、前記乾燥した触媒粒子乾燥体30を粉砕・整粒して触媒粒子31とする第1の粉砕・整粒工程S−33と、得られた触媒粒子31を加圧器12で成形する成形工程S−34と、前記成形後の触媒粒子成形品32を焼結する焼結工程S−35と、前記焼結後の触媒粒子焼結体33を粉砕し、整粒してナノカーボン材料製造用触媒粒子34とする第2の粉砕・整粒工程S−36とを含むことである。
【0044】
前述した第1及び第2実施形態では、触媒の担持は焼結工程の後に行っていたが、本実施形態では、焼結工程の前において触媒を担持させている。
この触媒を予め担持させることにより、融点が下がるので焼結性が向上することになる。
【0045】
[第4実施形態]
次に、反応器として流動層反応器を用いた場合の一例について図9を参照しつつ説明する。
本実施形態では、前述した所定粒径の触媒を流動材と兼用するものであり、流動触媒としている。図9に示すように、本実施形態にかかるナノカーボン材料の製造システムは、ナノカーボン材料の製造装置100と、前記ナノカーボン材料を製造装置から回収する分離・回収装置101と、該回収されたナノカーボン材料から触媒を分離する精製装置102とを具備するものである。
【0046】
具体的には、ナノカーボン材料の製造システムは、内部に流動材である流動触媒110を充填した流動層反応部111−1と、原料ガスである炭素源112を前記流動層反応部111−1内に供給する原料供給装置113と、流動触媒110を前記流動層反応部111−1内に供給する流動触媒供給装置114と、前記流動層反応部111−1内の流動材である流動触媒110が飛散及び流下する空間を有するフリーボード部111−2と、前記流動層反応部111−1に導入し、内部の流動触媒110を流動させる流動ガス115を供給する流動ガス供給装置116と、流動層反応部111−1を加熱する加熱部111−3と、該フリーボード部111−2から飛散されたナノカーボン材料生成物(微粒)120−1を回収する第1回収ライン121−1と、第1回収ライン121−1で回収された流動触媒110及びナノカーボン材料生成物(微粒)120−1から排ガス123を分離・回収する分離・回収装置101と、流動層反応部111−1から流動触媒110及びナノカーボン材料生成物(粗粒)120−2を抜き出す第2回収ライン121−2と、抜き出された流動触媒110及びナノカーボン材料生成物(粗粒)120−2と、分離・回収装置101からのナノカーボン材料生成物(微粒)120−1とを回収する回収装置122と、回収装置122で回収されたナノカーボン材料生成物(微粒)120−1及びナノカーボン材料生成物(粗粒)120−2に付着している触媒を除去し、ナノカーボン材料純品122とする精製装置102と、前記分離・回収装置101で分離された排ガス123を処理する排ガス処理装置124とを具備するものである。
【0047】
前記流動層反応部111−1の流動層反応形式には気泡型流動層型と噴流型流動層型とがあるが、本発明ではいずれのものを用いてもよい。
本実施形態では、流動層反応部111−1とフリーボード部111−2と加熱部111−3とから流動層反応器111を構成している。また、フリーボード部111−2は、流動層反応部111−1よりもその流路断面積の大きいものが好ましい。
【0048】
前記原料供給装置113より供給される原料ガスである炭素源112は、炭素を含有する化合物であれば、いずれのものでもよく、例えばCO、CO2の他、メタン,エタン,プロパン及びヘキサン等のアルカン類、エチレン,プロピレン及びアセチレン等の不飽和有機化合物、ベンゼン、トルエン等の芳香族化合物、アルコール類、エーテル類、カルボン酸類等の含酸素官能基を有する有機化合物、ポリエチレン、ポリプロピレン等の高分子材料、又は石油や石炭(石炭転換ガスを含む)等を挙げることができるが、本発明はこれらに限定されるものではない。また、酸素濃度制御のため、含酸素炭素源CO、CO2、アルコール類、エーテル類、カルボン酸類等と、酸素を含まない炭素源とを2つ以上組合わせて供給することもできる。
【0049】
この炭素源112は、流動層反応部111−1内にガス状態で供給し、流動材である流動触媒110による攪拌により均一な反応が行われ、ナノカーボン材料を生長させている。この際、所定の流動条件となるように、別途流動ガス115として流動ガス供給装置116により不活性ガスを流動層反応部111−1内に導入している。
【0050】
そして、300℃〜1300℃の温度範囲、より好ましくは400℃〜1200℃の温度範囲とし、例えばメタン等の炭素原料を不純物炭素分解物の共存環境下で一定時間触媒に接触することによってナノカーボン材料を合成している。
【0051】
前記分離・回収装置101としてサイクロン以外には、例えばバグフィルタ、セラミックフィルタ、篩等の公知の分離手段を用いることができる。
【0052】
また、分離・回収装置101で分離されたナノカーボン材料生成物(微粒)120−1は、付着した触媒を分離する精製装置102により、ナノ単位のナノカーボン材料(例えばカーボンナノチューブ、カーボンナノファイバ等)純品122として回収するようにしている。
本実施形態においては、流動触媒110の空隙率の増大したナノカーボン材料製造用触媒粒子を流動触媒110として用いてナノカーボン材料を製造するようにしているので、ナノカーボン材料の製造効率の増大を図ることができ、この結果製品として、純度が極めて高いナノカーボン材料の大量生産化を実現することができる。
【産業上の利用可能性】
【0053】
以上のように、本発明にかかるカーボン材料製造用触媒の製造方法は、焼成により空隙率を向上させているので、ナノカーボン材料の製造効率を増大することができ、大規模なカーボン材料の大量生産化を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】第1実施形態にかかるナノカーボン材料製造用触媒粒子の製造方法の工程模式図である。
【図2】第1実施形態にかかる工程図である。
【図3】ナノカーボン材料製造用触媒粒子の模式図である。
【図4】他のナノカーボン材料製造用触媒粒子の模式図である。
【図5】第2実施形態にかかるナノカーボン材料製造用触媒粒子の製造方法の工程模式図である。
【図6】第2実施形態にかかる工程図である。
【図7】第3実施形態にかかるナノカーボン材料製造用触媒粒子の製造方法の工程模式図である。
【図8】第3実施形態にかかる工程図である。
【図9】第4実施形態にかかるナノカーボン材料の製造装置の概略図である。
【図10】従来技術にかかるカーボン材料製造用触媒の製造方法の工程模式図である。
【符号の説明】
【0055】
11 一次粒子担体
12 加圧器
13 一次粒子成形品
14 一次粒子焼結体
15 二次粒子担体
16 溶液槽
17 触媒溶液
18 触媒粒子乾燥体
19 ナノカーボン材料製造用触媒粒子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一次粒子担体を成形して一次粒子成形品を得る成形工程と、
前記一次粒子成形品を焼結する焼結工程と、
前記焼結後の一次粒子焼結体を粉砕し、整粒して二次粒子担体とする第1の粉砕・整粒工程と、
整粒された二次粒子担体を触媒溶液に浸漬させ、触媒を担持させる触媒担持工程と、
触媒を担持した触媒粒子を乾燥する乾燥工程と、
乾燥した触媒粒子乾燥体を粉砕し、整粒してナノカーボン材料製造用触媒粒子とする第2の粉砕・整粒工程とを含むものであることを特徴とするナノカーボン材料製造用触媒粒子の製造方法。
【請求項2】
一次粒子担体を成形して一次粒子成形品を得る第1の成形工程と、
前記一次粒子成形品を焼結する第1の焼結工程と、
前記焼結後の一次粒子焼結体を粉砕し、整粒して二次粒子担体とする第1の粉砕・整粒工程と、
二次粒子担体を成形して二次粒子成形品を得る第2の成形工程と、
前記二次粒子成形品を焼結する第2の焼結工程と、
前記焼結後の二次粒子焼結体を粉砕し、整粒して三次粒子担体とする第2の粉砕・整粒工程と、
整粒された三次粒子担体を触媒溶液に浸漬させ、触媒を担持させる触媒担持工程と、
触媒を担持した触媒粒子を乾燥する乾燥工程と、
乾燥した触媒粒子乾燥体を粉砕し、整粒してナノカーボン材料製造用触媒粒子とする第3の粉砕・整粒工程とを含むものであることを特徴とするナノカーボン材料製造用触媒粒子の製造方法。
【請求項3】
一次粒子担体を触媒溶液に浸漬させ、触媒を担持させる触媒担持工程と、
触媒を一次粒子担体に担持した触媒粒子を乾燥する乾燥工程と、
前記乾燥した触媒粒子乾燥体を粉砕・整粒して触媒粒子とする第1の粉砕・整粒工程と、
得られた触媒粒子を加圧器で成形する成形工程と、
前記成形後の触媒粒子成形品を焼結する焼結工程と、
前記焼結後の粒子焼結体を粉砕し、整粒してナノカーボン材料製造用触媒粒子とする第2の粉砕・整粒工程とを含むことを特徴とするナノカーボン材料製造用触媒粒子の製造方法。
【請求項4】
請求項1又は3において、
前記成形工程において、気孔材を一次粒子担体に混入することを特徴とするナノカーボン材料製造用触媒粒子の製造方法。
【請求項5】
請求項2において、
前記第1成形工程又は第2成形工程において、気孔材を粒子担体に混入することを特徴とするナノカーボン材料製造用触媒粒子の製造方法。
【請求項6】
請求項4又は5において、
前記気孔材が樹脂であることを特徴とするナノカーボン材料製造用触媒粒子の製造方法。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか一つにおいて、
活性金属が、V,Cr,Mn,Fe,Co,Ni,Cu,Znのいずれか一種又はこれらの組合せであり、
担体がアルミナ、アルミン酸ナトリウム、ミョウバン、リン酸アルミニウム、酸化カルシウム、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、硫酸マグネシウム、リン酸カルシウム、又はリン酸マグネシウムのいずれか一種又はこれらの組合せであることを特徴とするナノカーボン材料製造用触媒粒子の製造方法。
【請求項8】
請求項7において、
前記活性金属にMo又はWのいずれか一種又は両方の助触媒を含むことを特徴とするナノカーボン材料製造用触媒粒子の製造方法。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか一つにおいて、前記ナノカーボン材料が単層ナノカーボンチューブであることを特徴とするナノカーボン材料製造用触媒粒子の製造方法。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれか一つのナノカーボン材料製造用触媒粒子の製造方法により得られたことを特徴とするナノカーボン材料製造用触媒粒子。
【請求項11】
請求項1乃至9のいずれか一つのナノカーボン材料製造用触媒粒子の製造方法により得られたナノカーボンザ製造用触媒微子を用い、カーボン原料からナノカーボン材料を製造する製造装置と、
前記カーボン材料を製造装置から回収する回収装置と、
該回収されたナノカーボン材料から担体を分離するナノカーボン材料精製装置と、を具備することを特徴とするナノカーボン材料の製造システム。
【請求項12】
請求項11において、
前記ナノカーボン材料を製造する製造装置が流動層反応装置であることを特徴とするナノカーボン材料の製造システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−231172(P2006−231172A)
【公開日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−47841(P2005−47841)
【出願日】平成17年2月23日(2005.2.23)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成16年度新エネルギー・産業技術総合開発機構「ナノカーボン応用製品創製プロジェクト事業」委託研究、産業活力再生特別措置法第30条の適用を受ける特許出願
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】