説明

ナノスケールの鉄〜白金族金属粒子を含む金属酸化物支持材料

本発明は、粒度が0.5〜10nmであるナノスケールの鉄〜白金族金属粒子を含む金属酸化物支持材料であって、すべてのナノスケールの鉄〜白金族金属粒子のうち少なくとも70%が金属酸化物支持材料の外表面層上に位置し、該外表面層の平均体積が該金属酸化物支持材料の総体積の50%である金属酸化物支持材料に関する。
本発明はまた、このようなナノスケールの鉄〜白金族金属粒子を含む金属酸化物支持材料の製造方法に関する。本発明はさらに、ナノスケールの金属粒子を含む金属酸化物の触媒としての利用、例えばディーゼルエンジンからの排ガスの処理のためのディーゼル酸化触媒としての利用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粒度が0.5〜10nmの範囲のナノスケールの鉄〜白金族金属粒子を含む金属酸化物支持材料であって、すべてのナノスケールの鉄〜白金族金属粒子のうち少なくとも70%が金属酸化物支持材料の外表面層上に位置しており、この金属酸化物支持材料の総体積に対するこの外表面層の平均体積が50%である材料に関する。
【0002】
また本発明は、このようなナノスケールの鉄〜白金族金属粒子を含む金属酸化物支持材料の製造方法に関する。さらに本発明は、ナノスケールの金属粒子を含む金属酸化物の触媒としての、例えばディーゼルエンジンからの排ガスの処理のためのディーゼル酸化触媒としての利用に関する。
【背景技術】
【0003】
希薄燃焼エンジンの運転、例えばディーゼルエンジンや希薄燃焼ガソリンエンジンの運転は、利用者に優れた燃料効率を与え、燃料希薄条件下では高い空気/燃料比率での運転が可能であるため気相の炭化水素や一酸化炭素の排出が極めて少なくすることができる。特にディーゼルエンジンは、燃料効率や耐久性、低速での高トルク発生能力などの面でガソリンエンジンに優る大きな利点を有している。
【0004】
しかしながら排気ガスの面からは、ディーゼルエンジンはスパーク点火エンジンより厳しい問題を与える。排気ガスの問題は、粒子状物質と酸化窒素(NOx)、未燃焼炭化水素(HC)、一酸化炭素(CO)に関係する。NOxは、いろいろな化学種の酸化窒素を、特に一酸化窒素(NO)や二酸化窒素(NO2)を示すのに使われる用語である。
【0005】
耐火金属酸化物支持体上に分散した鉄〜白金族金属(PGM)などの貴金属を含む酸化触媒は、炭化水素と一酸化炭素からなるガス状汚染物質を、これらの二酸化炭素と水への酸化を触媒して変換するため、ディーゼルエンジンの排気処理の用途で知られている。このような触媒は、一般的にはディーゼル酸化触媒(DOC)と呼ばれる、より簡単には触媒コンバータと呼ばれる装置に含まれており、ディーゼルを動力とするエンジンからの排気流路に置かれて排気ガスを大気中に放出される前に処理する。通常、これらのディーゼル酸化触媒はセラミックまたは金属製の基材担体上に形成され、この上に一種以上の触媒塗布組成物が塗布されている。ガス状のHCとCOと粒子状物質の可溶性有機成分(SOF)の変換に加えて、鉄〜白金族金属(通常、耐火金属酸化物支持体上に分散している)を含む酸化触媒は、一酸化窒素(NO)のNO2への酸化も促進する。
【0006】
例えばUS5,491,120には、セリアとバルク状の第二の金属酸化物(これは、チタニアとジルコニア、セリア−ジルコニア、シリカ、アルミナ−シリカ、α−アルミナの一種以上であってよい)を含有する酸化触媒が開示されている。
【0007】
US5,627,124には、セリアとアルミナを含む酸化触媒が開示されている。それぞれの表面積は、少なくとも約10m2/gであるとされている。セリアとアルミナの重量比は、1.5:1〜1:1.5であるとされている。またこれは、必要ならさらに白金を含むとされている。このアルミナは、好ましくは活性アルミナであるとされている。US5,491,120には、セリアとバルクの第二の金属酸化物(これは、チタニアとジルコニア、セリア−ジルコニア、シリカ、アルミナ−シリカ、α−アルミナの一種以上であってよい)を含む酸化触媒が開示されている。
【0008】
この先行技術は、ゼオライト(金属でドープされたゼオライトを含む)のディーゼル排気処理への利用が、既知であることを示している。US2008/045405には、未燃焼炭化水素と一酸化炭素の酸化と酸化窒素の還元などの排ガス処理用のディーゼル酸化触媒が開示されている。特に、US2008/045405は、二つの明らかに異なるPt:Pd重量比を持つ二つの明確な薄膜層からなる薄膜組成物に関する。
【0009】
PGMは、DOC用途及び三元変換(TWC)用途に用いられる触媒活性種である。通常白金とパラジウムがディーゼル酸化触媒中の活性金属として使用され、白金とパラジウムとロジウムの組合せがTWC触媒中の活性金属として使用されている。COのCO2への酸化と炭化水素のCO2への酸化が、主に白金により触媒される。パラジウムの添加で、耐火金属酸化物支持体、例えばγ−Al23の表面上での白金の移動度が低下する。また、パラジウムの存在下では、高温での金属粒子の焼成を減らすことができる。TWC用途では、さらに酸化窒素の還元(2 NO + 2 CO → N2 + 2 CO2)を触媒するためにロジウムが使用される。
【0010】
触媒活性種表面への接近が容易であることが触媒活性には必須である。既知のディーゼル酸化触媒の製造方法は、(i)水中での白金塩とパラジウム塩の混合と、(ii)γ−Al23と他の添加物を(i)の溶液に添加する水性スラリー(いわゆる塗布液)の調整からなる。このPGM含有塗布液は特定粘度に調整される。浸漬塗装により、ハニカムコージェライトをPGM含有塗布液で塗布して焼成する。この間にPGMイオンの還元が起こる。上記の方法で、平均直径が1〜2nmの非常に小さな金属PGMナノ粒子が得られる。この貴金属溶液がアルミナの気孔中に深くまで、さらにはアルミナの最内層にまで移動するため、後者が還元したPGMナノ粒子の上にも析出する。したがって、得られたPGM含有アルミナは、PGMが一様に分布している。しかしながら、アルミナの最内層にあるPGMは、触媒として接近できない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】US5,491,120
【特許文献2】US5,627,124
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
したがって、本発明の目的はまた、接近容易性/有用性を最適化するため、またディーゼル酸化触媒の性能を改善するために金属酸化物支持材料上の活性金属の位置を制御することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
したがって、本発明は、粒度が0.5〜10nmの範囲のナノスケールの鉄〜白金族金属粒子を含む金属酸化物支持材料であって、すべてのナノスケールの鉄〜白金族金属粒子のうち少なくとも70%が金属酸化物支持材料の外表面層上に位置し、この金属酸化物支持材料の総体積に対するこの外表面層の平均体積が50%であるものに関する。
【0014】
特記しない場合、本明細書と添付の請求項中においては、単数形の表現は、複数のものを含んでいるものとする。したがって、例えば、「ある鉄〜白金族金属」は、鉄〜白金族の2つ以上の金属の混合物等を含む。
【0015】
本明細書と添付の請求項中においては、「鉄〜白金族」は、鉄族とコバルト族、白金族のすべての金属を含む。したがって、鉄〜白金族は、鉄とコバルト、ニッケル、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム、白金、ハッシウム、マイトネリウム、ダームスタチウムを含む。
【0016】
金属酸化物:
適当な金属酸化物支持材料は当業界の熟練者には既知である。この金属酸化物支持材料は、好ましくは、シリカやアルミナ、ジルコニア、チタニアの化合物やこれらの混合物からなる群から選ばれる卑金属酸化物及び/または遷移金属酸化物である。特に好ましい支持体は、アルミナとジルコニア、シリカ、チタニア、シリカ−アルミナ、ジルコニア−アルミナ、チタニア−アルミナ、ランタナ−アルミナ、ランタナ−ジルコニア−アルミナ、バリア−アルミナ、バリア−ランタナ−アルミナ、バリア−ランタナ−ネオジミア−アルミナ、ジルコニア−シリカ、チタニア−シリカ、ジルコニア−チタニアからなる群から選ばれる活性化された高表面積化合物である。
【0017】
ディーゼル酸化触媒には、アルミナ支持体が、必要なら希土類金属でドープされたものが好ましい。市販のアルミナ支持材料には、SBA−150(γ−Al23、一次粒子径:5〜75nm、BET:137m2/g)や、TM(100/150)(γ−Al23、一次粒子径:5〜90nm、BET:約150m2/g)、SBA−70(γ−Al23、一次粒子径:5〜70nm(非常に稀に370nm)、BET:85.5m2/g)、シラロック1,5/00(δ−Al23、一次粒子径:5〜50nm、BET:102m2/g)、KR70(γ−Al23、一次粒子径:5〜90nm、BET:155m2/g)がある。
【0018】
ドーピング:
この金属酸化物は、他の金属でドープされていてもよく、好ましくはセリア及び/又はジルコニアでドープされていてもよい。好ましいドーピング条件は用途により変わり、当分野の熟練者には公知である。
【0019】
気孔率:
DIN66131により求めた金属酸化物支持材料のBET表面積が約30〜約160m2/gであることが好ましい。気孔率は特定用途に応じて調整される。
【0020】
孔径:
好ましくは、金属酸化物材料の示す孔径が、約0.3〜約5nmであり、好ましくは約0.5〜約4nm、より好ましくは約0.5〜約2nmである。この金属酸化物材料の平均孔径が約70Å〜約150Åであることが好ましい。
【0021】
粒度:
好ましくは、金属酸化物支持材料の粒度が約5〜約200nmであり、より好ましくは約5〜約100nmである。この粒度が約30nm〜約90nmの範囲であることがより好ましい。
【0022】
凝集物:
必要なら、この金属酸化物支持材料は、凝集物として存在していてもよく、好ましくは平均直径が約100nm〜約20μmの、より好まししくは約500nm〜約15μmの凝集物として存在していてもよい。
【0023】
この金属酸化物が凝集物として存在している場合、上記ナノスケールの粒子の規格や位置は、この凝集物に関するものとなる。従ってこの金属酸化物が凝集物として存在している場合、すべてのナノスケールの鉄〜白金族金属粒子のうち少なくとも70%が金属酸化物支持材料凝集物の外表面層に位置している。なお、この凝集物の外表面層は、凝集物の総量に対して50%未満の平均体積を持っている。
【0024】
ナノスケールの鉄〜白金族金属粒子:
適当な鉄〜白金族金属粒子は当業界の熟練者には既知である。必要なら、この鉄〜白金族金属または鉄〜白金族金属の組合せは、他の併用金属でドープされていてもよい。
【0025】
DOC用途には、酸化触媒用に白金を活性金属して使用することが好ましい。白金とパラジウムの組合せの使用がより好ましい。白金とパラジウムの重量比は、好ましくは約10:1〜約0.5:1であり、より好ましくは約5:1〜約0.5:1、さらに好ましくは約2:1〜約1:1である。組合せの場合、この金属粒子は、合金粒子、芯鞘粒子、二相または三相粒子またはこれらの混合物として存在していてもよい。
【0026】
TWC用途には、白金とパラジウムとロジウムの組合せを、活性金属として使用することが好ましい。好ましい白金とパラジウムとロジウムの重量比は、当業界の熟練者には公知である。組合せの場合、この金属粒子は、合金粒子、芯鞘粒子、二相または三相粒子またはこれらの混合物として存在していてもよい。
【0027】
水素化用途では、ロジウムとニッケルの組合せを活性金属として使用することが好ましい。
【0028】
燃料電池用途では、白金を活性金属とすることが好ましい。
【0029】
NOx還元用途では、パラジウムを活性金属として使用することが好ましい。
【0030】
スチーム脱アルキル化用途では、イリジウムを活性金属として使用することが好ましい。
【0031】
本発明と同様に、ホルムアルデヒド合成では、鉄〜白金族金属に属す活性金属に加えて銀を用いてもよい。
【0032】
粒度:
好ましくは、このナノスケールの鉄〜白金族金属粒子の粒度(d50)は、約0.5〜約5nmである。粒度が約0.5〜2nmであることが好ましい。
【0033】
量: この金属酸化物支持材料は、ナノスケールの鉄〜白金族金属粒子を、金属酸化物支持材料の重量に対して約0.1〜約10重量%の量で、より好ましくは約1〜約5重量%の量で含んでいることが好ましい。
【0034】
比率:
すべてのナノスケールの鉄〜白金族金属粒子のうち好ましくは少なくとも80%が、金属酸化物支持材料またはその凝集物の外表面層の位置していることが好ましい。なお、この外表面層の平均体積は元の支持材料粒子の総体積に対して50%となっている。すべてのナノスケールの鉄〜白金族金属粒子のうち少なくとも90%が外表面層に位置していることがより好ましい。すべてのナノスケールの鉄〜白金族金属粒子のうち少なくとも95%が外表面層に位置していることがさらに好ましい。
【0035】
すべてのナノスケールの鉄〜白金族金属粒子のうち80〜100%が外表面層に位置していることがより好ましい。さらに好ましくはすべてのナノスケールの鉄〜白金族金属粒子のうち90〜100%が、さらに好ましくはすべてのナノスケールの鉄〜白金族金属粒子のうち95〜100%が外表面層に位置している。なお、この外表面層の平均体積は、元の支持材料粒子の総体積に対して50%である。
【0036】
外表面層の大きさ:
この外表面層が、金属酸化物支持材料またはその凝集物の体積に対して、40%の平均体積を持つことが好ましい。この外表面層の平均体積は、金属酸化物支持材料またはその凝集物の総量に対して、より好ましくは30%であり、さらに好ましくは20%、さらに好ましくは10%である。
【0037】
ナノスケールの鉄〜白金族金属粒子の金属酸化物の外表面層上での濃度/添加量は、本発明のナノスケールの鉄〜白金族金属粒子を含む金属酸化物支持材料を外側表面からその内側の層へ徐々に削り取り、単位重量の削り取られたナノスケールの鉄〜白金族金属粒子を含む金属酸化物支持材料当りのナノスケールの鉄〜白金族金属粒子の含量(重量)を測定することで決めることができる。
【0038】
外表面層の比率と大きさの組合せ:
すべてのナノスケールの鉄〜白金族金属粒子のうち少なくとも80%が金属酸化物支持材料またはその凝集物の外表面層上に位置していることが好ましく、この外表面層の、金属酸化物支持材料またはその凝集物の総量に対する平均体積は30%であることが好ましい。すべてのナノスケールの鉄〜白金族金属粒子のうち少なくとも90%が金属酸化物の外表面層支持材料上に位置し、この外表面層の、金属酸化物支持材料またはその凝集物の総量に対する平均体積が20%であることがさらに好ましい。
【0039】
このようなナノスケールの金属粒子を含む金属酸化物の製造方法
本発明はまた、ナノスケールの鉄〜白金族金属を含む金属酸化物支持材料の製造方法であって、
(i)鉄〜白金族金属の前駆体とポリマーを水及び/又は有機溶媒中に溶解し、
(ii)必要なら還元剤を添加して鉄〜白金族金属の前駆体を還元し、
(iii)(ii)で得られる溶液を金属酸化物支持材料と混合するか
(i)鉄〜白金族金属の前駆体とポリマーを、金属酸化物支持材料を含む水及び/又は有機溶媒に溶解し、
(ii)(i)の溶液を還元する
ことからなる方法に関する。
【0040】
鉄〜白金族金属の前駆体:
一般的には、当分野の熟練者に既知の鉄〜白金族金属の前駆体の適当な供給源はすべて使用可能である。例えばこの前駆体は、アセチルアセトネート塩や硝酸塩、酢酸塩などの相当する鉄〜白金族金属の塩であり、あるいは硝酸塩またはヒドロキシル塩中で結合しているアミン錯体である。相当する酸も使用できる。これらの金属は、酸化物、硝酸塩、リン酸塩、硫酸塩、亜硫酸塩、亜ホスホン酸塩、亜硝酸塩、ホウ酸塩、アルミン酸塩、ケイ酸塩、シアン化物、イソシアネート、チオイソシアネート、過塩素酸塩、過ヨウ素酸塩、過臭素酸塩、塩素酸塩、ヨウ素酸塩、臭素酸塩、次亜塩素酸塩、または錯化合物の形で存在していてもよい。白金、パラジウム及び/又はロジウムの硝酸塩とアミノ錯体を使用することが好ましい。
【0041】
ポリマー:
適当なポリマーは一個以上の官能基をもつ。好ましい官能基は、カルボン酸イオン、カルボン酸、グルコン酸、アミン、イミン、アミド、ピロリドン、イミダゾール、カプロラクタム、エステル、ウレタン、尿素誘導体、及び/又はアミンエーテルである。これらのポリマーは金属表面に結合して金属粒子の大きさをコントロールする。また、これらのポリマーは金属酸化物支持材料に結合する能力を持ち、このため、金属粒子の支持材料内部への移動を抑えて金属酸化物支持体表面上で触媒活性種を濃縮させる。
【0042】
より詳細にWO2009/115506に記載されているように、好適なポリマーは、エチレンイミン(アジリジン)ホモポリマー由来のポリエチレンイミンまたはポリビニルアミン誘導体、ポリアミドアミンのエチレンイミングラフトポリマー、ポリビニルアミンのエチレンイミングラフトポリマー、エチレンイミンの高級同族体のポリマー、少なくとも部分加水分解したN−ビニルカルボキサミドホモポリマーまたは少なくとも部分加水分解したN−ビニルカルボキサミドコポリマーである。
【0043】
WO2009/115506に記載のように、これらのベースポリマーは、α,β−不飽和カルボニル化合物への1,4−付加(マイケル付加)により官能化されていることが好ましい。適当なα,β−不飽和カルボニル化合物は、アクリル酸とアクリル酸エステル(例えば、アルキルアクリレートやヒドロキシアルキルアクリレート)、メタクリル酸とメタクリル酸エステル(例えば、アルキルメタクリレートやヒドロキシアルキルメタクリレート)、アクロレイン、アリールアミド、アクリロニトリルである。及び/又は、エポキシド、ジエポキシド、ハロヒドリンエーテル及び/又はビスハロヒドリンエーテルとの反応において;適当なジエポキシドは、例えば、1,6−ヘキサンジオールビスグリシジルエーテルと、オリゴ−及びポリ−エチレングリコールのビスグリシジルエーテル;ハロヒドリン、例えばエピクロロヒドリンと、アルキレングリコールと2〜100個のエチレンオキシドまたはプロピレンオキシド単位をもつポリアルキレングリコールとの反応生成物;及び/又はイソシアネートと、例えばジイソシアネート(例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン4,4’−ジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート)との反応生成物である。
【0044】
好ましいポリエチレンイミン(その誘導体がWO2009/115506で使用されている)は、エチレンイミンのホモポリマーとポリアミドアミンのエチレンイミングラフトポリマーである。好ましいポリエチレンイミンとポリアミドアミンのエチレンイミングラフトポリマーの分子量は、500〜2000000g/molの範囲にある、特に好ましくは1000〜100000g/mol、特に5000〜50000g/molの範囲にあるものである。
【0045】
ある特定の実施様態においては、これらのポリエチレンイミンがジエポキシド及び/又はビスクロロヒドリンエーテルと反応させられ、次いで一種以上のα,β−不飽和カルボニル化合物と反応させられる;例えば、これらは、1,6−ヘキサンジオールビスグリシジルエーテルまたはポリアルキレングリコールのビスグリシジルエーテルと反応させられ、次いで(メタ)アクリル酸、2−アクリルアミドグリコール酸、(メタ)アクリル酸アルキル(例えば、アクリル酸メチル)、及び/又はヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート(例えば、ヒドロキシエチルアクリレートまたは4−ヒドロキシブチルアクリレート)と反応させられる。
【0046】
また、より詳細に欧州出願09179279.6(出願日:15.12.2009)と欧州出願08172552.5(出願日:22.12.2008)に記載されているように、ビニルモノマー、ビニルコモノマー、また可能なら二官能性または多官能性ビニルモノマーからなる水溶性または水分散性のホモポリマー、コポリマー、グラフト−ホモ及びグラフトコポリマーが好ましい。
【0047】
これらのポリマーもまた、ジ−またはマルチ−ブロックコポリマーとして、星状、ブラシ状または多分岐状で、あるいはデンドリマーとして存在できる。
【0048】
好ましいモノマーは、N−ビニルピロリドンや3−メチル−N−ビニルピロリドン、4−メチル−N−ビニルピロリドン、5−メチル−N−ビニルピロリドン、N−ビニルピペリドン、N−ビニルカプロラクタムなどのビニルラクタム、酢酸ビニルとその重合後の加水分解生成物、ビニルアルコール、ビニルアミド、ビニルホルムアミドとその重合後の加水分解生成物、ビニルアミン、N−ビニルイミダゾール、イソプロピル−メタクリルアミド、ビニルメチルアミド、アクリルアミド、メタクリルアミド、2−ヒドロキシエチルアクリルアミドである。
【0049】
好ましいコポリマーは、N−ビニルピロリドン、3−メチル−N−ビニルピロリドン、4−メチル−N−ビニルピロリドン、5−メチル−N−ビニルピロリドン、N−ビニルピペリドン、N−ビニルカプロラクタムなどのN−ビニルラクタム、ビニルホルムアミドやその重合後の加水分解生成物ビニルアミンなどのビニルアミド、N−ビニルイミダゾール、イソプロピル−メタクリルアミド、ビニルメチルアミド、アクリルアミド、メタクリルアミド、2−ヒドロキシエチルアクリルアミド、2−ヒドロキシエチルメタクリルアミド、さらには1−ビニル−3−メチルイミダゾリウム塩化物、酢酸ビニルなどの脂肪族のC2−C18−カルボン酸のビニルエステルとその重合後の加水分解生成物ビニルアルコール、ビニルプロピオネート、ビニルブチレート、ビニルラウレート、ビニルステアレート、ビニルネオデカノエートvEOvA9とvEOvA10、さらにはジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートとジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミドおよびこれらの四級同族体、ジアリルジメチルアンモニウム塩化物である。
【0050】
好ましい二官能性または多官能性ビニルモノマーとしては、ペンタエリトリットトリアリルエーテル、メチレンビスアクリルアミド、N,N’−ジビニルエチレンウレア、ジビニルベンゾール、エチレン−ビス−N−ビニルピロリドン、3−ビニル−N−ビニルピロリドン、4−ビニル−N−ビニルピロリドン、5−ビニル−N−ビニルピロリドン、アリル(メタ)アクリレート、トリアリルアミンと、グリコールやブタンジオール、トリメチロールプロパンまたはグリセリンのアクリルエステル、またエチレンオキシドのアクリルエステル及び/またはエピクロロヒドリン変性のグリコール、ブタンジオール、トリメチロールプロパンまたはグリセリンがあげられる。
【0051】
これらのモノマーの構成成分量は、ポリマーの総重量に対して好ましくは約20〜約100重量%であり、より好ましくは約30〜約100重量%、特に好ましくは約50〜約100重量%、特に好ましくは約60〜約100重量%である。
【0052】
コモノマーの構成成分量は、ポリマーの総量に対して好ましくは約0〜約80重量%であり、より好ましくは約0〜約70重量%、特に好ましくは約0〜約50重量%、特に好ましくは約0〜約40重量%である。
【0053】
二官能性または多官能性ビニルモノマーの構成成分量は、ポリマーの総量に対して好ましくは約0〜約20重量%であり、より好ましくは約0〜約10重量%、特に好ましくは約0〜約5重量%、特に好ましくは約0〜約1重量%である。
【0054】
ポリエーテルと、一種以上のN−ビニルピロリドンやN−ビニルカプロラクタムなどのビニルラクタムのビニルモノマー、N−ビニルイミダゾールやN−ビニルホルムアミドなどのビニルアミンとその重合後の加水分解生成物ビニルアミンとからなる、ポリエーテルを含有するプロプフポリマー(グラフトポリマーとも呼ばれる)もまた好ましい。
【0055】
また本発明において、上記のポリマーの混合物も好ましい。
【0056】
同様に好適なのは、酸性基を有する線状または架橋した水溶性または水分散性ポリマーである。例えば、(メタ)アクリル酸ホモポリマーと、(メタ)アクリル酸と、マレイン酸、イタコン酸及び/又はビニルホスホン酸などの他の酸性モノマーとのコポリマーである。WO2006/134116、WO2006/021308、WO2008/012248に記載のように、このコポリマーは、必要ならさらに酸含有基を持たない他のモノマーを含んでいてもよい。
【0057】
水あるいは有機溶媒:
還元は、有機溶媒中で、例えばアルコールやポリオール、エステル、塩素系炭化水素、フェノール、DMSO、DMF、NMP、あるいはTHFやジオキサン、ジオキソランなどのエーテル中で行うことができる。他の反応媒体も、例えば溶融塩またはイオン流体も考えられる。水、水性有機溶媒混合物、グリコール、あるいはジエチレングリコールが好ましい溶媒であり、水と水性有機溶媒混合物が特に好ましい。
【0058】
還元剤:
工程(ii)では、必要に応じて還元剤が添加される。
【0059】
上記の鉄〜白金族金属の前駆体とポリマーが水またはアルコール以外の有機溶媒またはポリオールに溶解されている場合、還元剤を添加することが好ましい。一般に当分野の熟練者に既知のすべての適当な還元剤が使用可能である。好適な還元剤は、有機還元剤であっても無機還元剤であってもよい。例としては、メタノールやエタノールなどのアルコール、1,2−アミノエタノールやジエタノールアミンなどのアミノアルコール、ホルムアルデヒドやアセトアルデヒドなどのアルデヒド、ケトン、ギ酸や酢酸、シュウ酸などのカルボン酸、5−ペンテン酸などのアルケン酸、ヒドラジンまたはヒドラジン誘導体、AIBN(アゾビスイソブチロニトリル)などのアゾ化合物、カルボン酸無水物、アミド、アミン、エーテル、エステル、アルケン、ジエン、チオ化合物、単糖または多糖、炭素の水素化または酸化物があげられる。好適な無機還元剤は、水素、亜鉛やカルシウム、マグネシウムなどの金属、水素化ホウ素ナトリウムなどの金属水素化物、Fe(II)塩、チオ硫酸塩、チオ亜硫酸塩、スルフイド、ジスルフィドである。
【0060】
ギ酸やホルムアルデヒド、ジエタノールアミン、メタノール、エタノール、5−ペンテン酸、アスコルビン酸、クエン酸、乳酸、シュウ酸、グルコース、フルクトース、水素化ホウ素ナトリウムが好ましい。特に好ましい有機還元剤は、ジエタノールアミンと5−ペンテン酸、アスコルビン酸グルコース、クエン酸である。またギ酸やホルムアルデヒドが特に好ましい。これにより二酸化炭素が発生するが、二酸化炭素は容易に反応混合物から除くことができる。例えば空気でのストリッピングで二酸化炭素を反応混合物から除くことができる。
【0061】
好ましい無機還元剤は、水素化ホウ素ナトリウム、Sn(II)塩、Fe(II)塩、チオ硫酸塩、チオ亜硫酸塩、ホスフィット、ホスファン、スルフイド、ジスルフィドである。
【0062】
還元剤の不使用:
本発明のある実施様態においては、アルコールが溶媒として、また還元剤として用いられる。従って、アルコール系媒体中で反応を行うと、他の還元剤を添加する必要がなくなる。
【0063】
溶媒と還元剤の両方としてポリオールを使用することが好ましい。好ましいポリオールは、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、エチレングリコール及び/又はグリセリンである。これらのポリオールは安定剤として働く。複数のOH基が非常に早い段階から、できてくるPGMナノ粒子に配位して制御不能な成長を抑える。しかしこの方法は、非常に細かなナノ粒子を形成する。
【0064】
このプロセスに、短鎖の脂肪族ジオールを、例えば1,2−エタンジオール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブチンジオール、2,3−ブチンジオール、1,4−ブチンジオール、1,2−ペンタンジオール、2,4−ペンタンジオールを使用することが好ましい。
【0065】
OH基をもつポリエーテル−ホモポリマーも好ましい:その例としては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールとポリブチレングリコール、エチレングリコール/プロピレングリコールやエチレングリコール/ブチレングリコール−コポリマーなどの二元コポリマー、エチレングリコール/プロピレングリコール/エチレングリコールコポリマー、プロピレングリコール/エチレングリコール/プロピレングリコールコポリマー、エチレングリコール/ブチレングリコール/エチレングリコール−コポリマーなどの非分岐状の三元共重合体があげられる。好適なジオールは、OH官能基をもつポリエーテル−ブロックコポリマーであり、例えばポリエチレングリコール/ポリプロピレングリコールやポリ−エチレングリコール/ポリブチレングリコールなどの二元ブロックコポリマーや、ポリエチレングリコール/ポリプロピレングリコール/ポリエチレングリコールやポリプロピレングリコール/ポリエチレングリコール/ポリ−プロピレングリコール、ポリエチレングリコール/ポリブチレングリコール/ポリエチレングリコール三元重合体などの非分岐状アルキル鎖の三元ブロックコポリマーである。上記のポリエーテルは、置換されていても及び/又はOH末端基を有していてもよい[文献:DE10297544、段落[0039]〜[0046]]。
【0066】
反応条件:
この金属ナノ粒子は、一般的には、−30〜300℃の温度で10mbar〜100barの圧力での還元で、好ましくは0〜100℃の温度、特に好ましくは20〜95℃、さらに好ましい50〜85℃の温度での還元で製造される。特別な真空装置または加圧容器の必要がないため、大気圧を使用することが好ましい。
【0067】
塗布と後処理:
金属酸化物支持材料の塗布は、当分野の熟練者には公知である。通常、薄膜形成用スラリーを用いて、PGM含有金属酸化物支持材料を支持体上に、例えばコージェライトハニカム(モノリス)上に塗布する。この含浸後のモノリスを焼成するが、この焼成条件は公知である。焼成の間にポリマーが燃えて消失する。
【0068】
用途によっては、例えばDOCまたはTWC用途では、この基材に他の層(ゼオライトなど)を追加してもよい(例えば、US61/145367とUS61/145413を参照)。
【0069】
ナノスケールの金属粒子を含む金属酸化物の用途:
本発明はまた、ナノスケールの金属粒子を含む金属酸化物の触媒としての利用に関する。このナノスケールの金属粒子を含む金属酸化物が、水素化、脱水素反応、酸化、メタセシスまたは脱アルキル化反応を触媒することが好ましい。このナノスケールの鉄〜白金族金属粒子を含む金属酸化物を、自動車やトラックの排ガス流の浄化における触媒として使用することがさらに好ましい。なお、この排ガス流は通常、炭化水素と一酸化炭素、窒素酸化物を含んでいる。
【0070】
ディーゼル酸化触媒:
また、本発明はまた、ディーゼルエンジンからの排ガス処理のためのディーゼル酸化触媒であって、ナノスケールの金属粒子を含む金属酸化物が支持体基材上に形成されているものに関する。
【0071】
この基材は、触媒製造に通常用いられている材料のいずれであってもよく、好ましくはセラミック製または金属製のハニカム構造を持っている。いずれか適当な基材を、例えば基材の供給口または排出口から延びる微細な平行ガス流通路をもち、この通路が流体の流れに開放されているような種類のモノリス基材(ここではフロースルー基材と称す)を使用することができる。この通路、即ち流体供給口から流体排出口に向かって延びる実質的に直線状の通路は壁面で形成されており、この壁面上に上記触媒的材料を薄膜として塗布して、通路を流れるガスがこの触媒的材料に接触するようになっている。このモノリス基材の流体通路は薄壁の流路であり、その形状はいずれであってもよく、例えば台形、長方形、正方形、正弦波的、六角形、卵型、丸型などであってもよい。
【0072】
好適なセラミック基板は、いずれの適当な耐火性材料でできていても良く、例えばコージェライト、コージェライト−アルミナ、窒化ケイ素、炭化ケイ素、ジルコンムライト、リチア輝石、アルミナ−シリカマグネシア、ケイ酸ジルコニウム、ミリマイト、珪酸マグネシウム、ジルコン、ペタル石、アルミナ、アルミノケイ酸塩などでできていてもよい。本発明の触媒に有用な支持体基材は金属製であってよく、一種以上の金属からなっていても、あるいは金属合金製であってもよい。
【0073】
ディーゼルエンジン排ガス流の処理方法:
本発明はまた、未燃焼炭化水素(HC)と一酸化炭素(CO)を含むディーゼルエンジン排ガス流を処理するための方法に関する。ディーゼルエンジンからの排ガス流を、本発明のディーゼル酸化触媒を含む排ガス処理装置中で処理することができる。
【0074】
本発明のディーゼル酸化触媒(DOC)は、一個以上の他のディーゼル排ガス処理部を含む一体型排ガス処理システム中で使用することができる。例えば、この排ガス処理システムは、さらにすすフィルター部(粒子状物質の除去に使用)及び/又は選択的触媒的還元(SCR)部(NOx成分の還元に使用)を含んでいてもよい。このディーゼル酸化触媒は、このすすフィルター部及び/又は選択的触媒的還元部の上流に位置していても下流に位置していてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】2.2重量%のPtを有するTM100/150の粉末試験:CO2の検出(AMUレスポンス)と温度(試料No DT_A_058)
【図2】1.4重量%のPdと0.16重量%のPtを有するTM100/150の粉末試験:CO2の検出(AMUレスポンス)と温度
【図3】TEM(HAADF−STEM)、解像度:100E6: 試料DT_A_058の一つ:明るい領域がPGM粒子
【図4】TEM(HAADF−STEM)、解像度:100E6: 試料DT_A_060の一つ:明るい領域がPGM粒子
【図5】TEM(HAADF−STEM)、解像度100E6: アルミナSBA150上の試料LJ20080124/3の一つ:明るい点がPGM粒子
【図6】2重量%のPtを有するSBA150の粉末試験:CO2発生の検出(AMUレスポンス)と温度
【実施例】
【0076】
1.Pt触媒の製造
(TM100/150上に2.2重量%のPt)、CO→CO2の反応用(LJ No. DT_A_058)
0.21gのPtアセチルアセトネート(98% ACROS、ロット番号:A025558)と、0.050gのポリビニルビロリドンK30(シグマアルドリッチ、ロット番号:85,655−8)を、10gのジエチレングリコール(99%、シグマアルドリッチ、ロット番号:S46287−078)中に溶解した。平行して、ウルトラタラックスを用いて、43gのピュラロックス(SASOL、TM100/150、ロット:B25735)を45gのジエチレングリコール中に分散させ、80℃まで加熱した。次いで、上記のPt含有溶液をすばやく添加する。全体の懸濁液を2時間、激しく攪拌する。その後、真空(10mbar、100℃)でジエチレングリコールを除き、得られた粉末を1時間540℃(加熱速度:0.5℃/分、350℃まで;2℃/分、540℃まで;窒素雰囲気下)で焼成する。
【0077】
4に記載の高スループット反応器を用いて触媒試験を行った。その性能を5に記載の標準触媒と比較する。この触媒性能を図1に示す。
【0078】
2.Pd/Pt触媒の製造
(Pd負荷量:1.4重量%、Pt負荷量:0.16重量%)、CO→CO2の反応用(LJ No. DT_A_060)
0.0341gのPtアセチルアセトネート(98% ACROS、ロット番号:A0255558)と0.2003gのPdアセテート(47% Pd、フルカ、ロット番号:1338573)を、0.0563gのポリビニルピロリドンK30(シグマアルドリッチ、ロット番号:85,655−8)と共に5gのジエチレングリコール中に溶解した。平行して、ウルトラタラックスを用いて、5gのピュラロックス(SASOL、TM100/150、ロット番号:B25735)の懸濁液を50gのジエチレングリコールと混合した。この懸濁液を80℃まで加熱し、この温度で上記貴金属溶液を添加した。全体のスラリーを2時間80℃で加熱した。その後、真空(10mbar、100℃)下でジエチレングリコールを除き、得られた粉末を1時間540℃(加熱速度:0.5℃/分、350℃まで;2℃/分、540℃まで;窒素雰囲気下)で焼成する。
【0079】
4に記載の高スループット反応器を用いて触媒試験を行った。その性能を5に記載の標準触媒と比較する。この触媒性能を図2に示す。
【0080】
3.Pt触媒(LJ20080124/3)の製造
3.1.ポリマーAの製造:
150gの、濃度が24.9%のポリエチレンイミン(Mw=25000、4.55%の平均モル質量が2000のポリエチレングリコールビスグリシジルエーテルで架橋)の水溶液と202.3gの純水とを、まず強力攪拌器と還流冷却器を備えた四つ口フラスコに入れ、撹拌下で内温が95℃となるまで加熱する。この間に空気を連続的に通過させる。温度が95℃にまで達した後、66.5gのアクリル酸を2時間かけて滴下させる。その後、この混合物をさらに6時間95℃で攪拌する。生成物は明るい黄色の粘稠な溶液である。そのK値は21.97であり;収率:100%;SC:39.8%(減圧下120℃で2時間後)であった。
【0081】
3.2.Pt触媒の製造
17gのポリマーA(濃度:100g/l)、101.6gの濃度が4,366%の硝酸テトラアミンパラジウム(II)溶液と5.5mlの水を、オーバーヘッド攪拌器と還流冷却器と温度計を備えた500mlの四つ口フラスコ中で攪拌し、77℃まで加熱した。次いで、25.3gのアスコルビン酸溶液(濃度300g/l)を添加し、この反応を77℃で24時間継続して、暗い褐黒色の分散液を得た。
【0082】
TEM分析の結果、この製造で40nmと約3nmの大きさの結晶性粒子が得られた。
【0083】
3.3.アルミナSBA150の塗布(負荷量:2重量%のPd、Al23上)
このアルミナを開放ビーカーにとり、次いで上記パラジウムナノ粒子分散液をゆっくりと添加しながら徹底的に攪拌した。この結果、淡褐色懸濁液が得られ、これを90℃で16時間乾燥し、プレート振動装置でさらに30分間、均一化させた。次いでこの塗布後のアルミナを650℃で(25時間、10%スチーム)焼成養生させ、分析した。TEM分析の結果、図5に示すように、パラジウムナノ粒子を多く含む表面をもつ金属酸化物粒子が得られた。
【0084】
3.4.触媒測定用のサンプルの調整
次いで、得られた粉末をプレスしてペレットとし、その触媒活性を評価した(条件:1500ppmのCO、500ppmのプロペン、5%の水、10%の酸素)。標準品(PdとPtの初期塗布量が4重量%で、Pd/Pt比が1/2のもの)より改善された触媒性能が得られた。
【0085】
この触媒試験は、4に記載の高いスループット反応器を用いて行う。その性能を5に記載の標準触媒と比較する。その触媒性能を図6に示す。
【0086】
4.高スループット反応器
各々のセラミック製ペレットのトレイに入る流速がそれぞれ、1.500ppmのCO、500ppmのプロペン、5%の水、10%のO2なるように、この高スループット反応器を設定する。
【0087】
このガスは供給口に入り、混合用じゃま板を通過して、各試料の上を流れる。排出ガスを、いろいろな温度で次々と分析した。分析温度Tは、115、130、145、160、180、200、250、300、350℃である。標準品と較べての触媒の活性化を調べるのが目的である。
【0088】
5.標準触媒
比較のために用いた標準触媒は、金属負荷量が2.6%Pd、1.4%Pt、3.1%BaO/Al23(Pt:Pdモル比:1:1))のDOC−FS7−4であり、その試験番号は640989−2−17−4SCである。比較性能のために、この標準品をいろいろな温度で養生させた(650、750、850、900℃)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒度が0.5〜10nmであるナノスケールの鉄〜白金族金属粒子を含む金属酸化物支持材料であって、すべてのナノスケールの鉄〜白金族金属粒子のうち少なくとも70%が金属酸化物支持材料の外表面層上に位置し、該外表面層の平均体積が該金属酸化物支持材料の総体積の50%である金属酸化物支持材料。
【請求項2】
必要ならセリア及び/又はジルコニアでドープされたアルミナが上記金属酸化物支持材料として用いられる請求項1に記載の金属酸化物支持材料。
【請求項3】
白金とパラジウムの組合せまたは白金とパラジウムとロジウムの組合せが上記金属粒子として用いられる請求項1〜2のいずれか一項に記載の金属酸化物支持材料。
【請求項4】
上記鉄〜白金族金属粒子の粒度が0.5〜4nmである請求項1〜3のいずれか一項に記載の金属酸化物支持材料。
【請求項5】
すべてのナノスケールの鉄〜白金族金属粒子のうち少なくとも80%が金属酸化物支持材料の外表面層上に位置し、該外表面層の平均体積が金属酸化物支持材料の全体積の20%である請求項1〜4のいずれか一項に記載の金属酸化物支持材料。
【請求項6】
ナノスケールの鉄〜白金族金属を含む金属酸化物支持材料の製造方法であって、
(i)鉄〜白金族金属の前駆体とポリマーを水及び/又は有機溶媒中に溶解し、
(ii)必要なら還元剤を添加して、該鉄〜白金族金属の前駆体を還元し、
(iii)(ii)で得られる溶液と金属酸化物支持材料とを混合する、あるいは
(i)鉄〜白金族金属の前駆体とポリマーを、金属酸化物支持材料を含む水及び/又は有機溶媒に溶解し、
(ii)(i)の溶液を還元する、
ことを含む方法。
【請求項7】
硝酸塩、水酸化物、酸化物またはアミン錯体またはアセチルアセトネートまたは酢酸塩からなる群から選ばれる鉄〜白金金属の塩が上記金属粒子の前駆体として用いられる請求項6に記載の方法。
【請求項8】
ポリエチレンイミンまたはポリビニルアミンの誘導体、ビニルラクタム、ビニルイミダゾール、ビニルアセテートまたはビニルホルムアミドの線状または架橋したホモポリマー及び/又はコポリマー、ポリエーテル上にビニルラクタム、ビニルイミダゾール、ビニルアセテートまたはビニルホルムアミドがグラフトした線状または架橋したグラフト−ホモポリマー及び/又はグラフトコポリマー、線状または架橋した、カルボン酸、ホスホン酸またはスルホン酸基などの酸性基を有する水溶性または水分散性ポリマーが、上記ポリマーとして用いられる請求項6〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
請求項1〜5のいずれか一項に記載のナノスケールの金属粒子を含む金属酸化物支持材料の、水素化、脱水素、酸化、メタセシス及び/又は脱アルキル化反応の触媒としての利用。
【請求項10】
ディーゼルエンジンからの排ガスの処理のためのディーゼル酸化触媒であって、請求項1〜5のいずれか一項に記載のナノスケールの金属粒子を含む金属酸化物支持材料を支持体基材の上に設けたディーゼル酸化触媒。
【請求項11】
ディーゼルエンジン排ガス流の処理方法であって、請求項10に記載のディーゼル酸化触媒に排気流を接触させることからなる方法。

【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図1】
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【図2】
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【図6】
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【公表番号】特表2013−514161(P2013−514161A)
【公表日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−543646(P2012−543646)
【出願日】平成22年12月13日(2010.12.13)
【国際出願番号】PCT/EP2010/069469
【国際公開番号】WO2011/073120
【国際公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】