説明

ナノスケール分子合成

本発明はナノスケール分子合成に関し、3次元で利用可能な生体高分子性の核酸アレイ、及びこのようなアレイを製造するためのプロセスを含む。このようなアレイは相補的な化学反応性のプローブで官能性を持たせて、触媒性の酵素を提供できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はナノスケール分子合成に関し、3次元で利用可能な生体高分子性の核酸アレイ、及びこのようなアレイを製造するためのプロセスを含む。このようなアレイは相補的な化学反応性のプローブで官能性を持たせて、触媒性の酵素を提供できる。
【背景技術】
【0002】
本出願は、以下の出願:2007年3月15日提出の米国仮特許出願第60/918,144号;2007年8月30日提出の米国仮特許出願第60/969,154号;2007年11月6日提出の米国仮特許出願第60/985,961号;2007年11月6日提出の米国特許出願第11/936,045号;2008年2月28日提出の米国仮特許出願第61/032,118号;2008年3月14日提出の国際特許出願PCT/US08/57013号;2008日4月10日提出の米国仮特許出願第61/043,981号;2008年4月23日提出の米国仮特許出願第61/047,201号;2008年4月29日提出の米国仮特許出願第61/048,599号;2008年6月13日提出の米国仮特許出願第61/061,555号;2008年8月6日提出の米国仮特許出願第61/086,633号;2009年8月27日提出の米国仮特許出願第61/237,353号;に関連づけられ、その各々が引用によって本明細書に取り込まれる。
【0003】
広範で多様な産業の科学者及び技術者が近年多様な性能を生成するのにナノメートル又はナノメートル以下の構成プロセスを生成することに焦点を当てている。例えば、材料の科学者は構成がナノスケールで制御できる場合にのみ生成できる、特異的な特性を呈示する新規の材料を生成することを所望している。化学者及び医薬品の研究者はオングストロームの部分を含む、ベクトルで規定される分子間の相互作用を制御することに強く依存する新しい反応を探している。有効な医薬品に関する成功と失敗との間の差異は多くの場合、これらと同一計量で測定できる。半導体の技術者は電磁的な非共振を超える高い制御とともに、更にコンパクトな設計を探している。バイオ燃料産業においては、触媒のナノスケールでの製造は完全に新しい分類のプロセスの生成を可能にし、多様なバイオマス資源を燃料に変換できる。これらの用途の各々は、他の大多数とともに、特異的に要求される機能:3次元アレイにおける多様な分子の官能性の配置を制御し、ナノメートル以下又はオングストローム以下のスケールで正確に位置決めする能力;に依存している。
【発明の概要】
【0004】
本発明は、ポリ核酸塩基の生体高分子組織への更なる成分又は分子の結合を可能にするための方法であって、更なる化学結合を前記ポリ核酸塩基の生体高分子組織内に組み込むステップを具える方法を提供する。本発明は更に、少なくとも1の更なる化学結合がアミド結合、エステル結合、又はジスルフィド結合のうちの1以上を含むような方法を具える。本発明は更に、ポリ核酸塩基の生体高分子組織が核酸を含むような方法を具える。本発明は更に、核酸がPNA(ペプチド核酸)、DNA(デオキシリボ核酸)、RNA(リボ核酸)、LNA(ロックド核酸)、GNA(グリコール核酸)、又はTNA(トレオース核酸)のうちの少なくとも1つを含むような方法を具える。
【0005】
本発明は更に、ポリ核酸塩基の誘導体を生成する方法であって、ワトソン・クリック塩基対結合又は主鎖結合以外の更なる化学結合を提供するステップを具える方法を提供する。本発明は更に、ポリ核酸塩基がチミン、ウラシル、シトシン、グアニン、又はアデニンのうちの少なくとも1つを含むような方法を具える。
【0006】
本発明は更に、本明細書中に記載の方法のいずれかを用いて、約10ナノメートル未満の許容差で相互に関連づけて配置した分子配列を生成する方法を提供する。本発明は更に、触媒を生成する方法を提供し、既知の酵素変換反応を模倣するが、pH、温度、触媒作用を促進することで知られる添加剤の存在、又はその組合せに関し、同類の自然系よりも優れた特性を有する触媒を生成するために、本明細書中に記載の方法のいずれかを用いるステップを具える。本発明は更に、マイクロプロセッサといった電気回路を生成する方法を提供し、現行でフォトリソグラフィ技術による縮尺製造に供されうる形状の約1/16未満の形状を有する、3Dで利用可能なポリ核酸塩基のアセンブリを生成するために、本明細書中に記載の方法のいずれかを用いるステップを具える。
【0007】
本発明は「核酸−リンカー−触媒残基」といった形態の標的分子の剛性に関し:核酸はシチジン、ウリジン、アデノシン、グアノシン、及びチミジン、ならびにこの酸化、還元又はアルキル化された任意の誘導体を含み;リンカーは窒素、酸素、硫黄、炭素又はリンを含む規定長の有機的に係留する任意の構造を含み;触媒残基は、酸性、塩基性、求核性、求電子性、又はラジカル性の機構を通して、触媒作用を可能にする任意の有機的又は有機金属の成分を含む。
【0008】
本発明は限定しないが、アミド結合、付加環化、エステル結合、及びジスルフィド結合を含むいくつかの型の共通の方法を通して「核酸−リンカー−触媒残基」を結合する方法を提供する。主要な結合はアミド結合であり、アミドの方向、及びアミドの方向に対し可撓性の変異体を有する。
【0009】
本発明はアミド結合の生成用のペプチド化学の技術分野で既知の方法、すなわち:その構造中にカルボジイミド基、ベンゾトリアゾール基、ヒドロキシスクシンイミド基、あるいは任意の関連するカルボン酸の活性化因子を含む活性化した結合試薬の選択;溶剤、特にDMF、DCM、水、THFの選択;トリエチルアミン又はジイソプロピルエチルアミンと言った有機アミンの塩基の選択;を利用する。本発明は更に、アジ化物、酸塩化物、又は無水物を含むほとんど既知ではない結合方法を利用する。
【0010】
本発明は更に、安定した3次元ナノスケール生成の構築基盤の構成を可能にする本発明者が「生体ナノ格子(bionanolattice)」と称するものを生成する技術に関する。生体ナノ格子によって、原子スケールで測定される誤差の限度で、制御可能で予測可能な多様な分子官能基の配置を可能にする。このような構造は、無数の産業において、広範で多様な新規の製品の生成を可能にする新規のナノスケールの生成方法として供されうる。実施例としては、生体ナノ格子は固有の3次元方向にアミノ酸の側鎖の官能基を特異的に配置するのに用いられて、触媒作用を可能にし、酵素の官能性を模倣する。これらの合成酵素は生体ナノ格子上で構築され、天然酵素よりも高い活性を呈示し、良好な工業上の応力への耐性があり、燃料を生成するのに広範で多様なバイオマス型(生体廃棄物のような)の変換に適用できる。本発明は生体ナノ格子の使用可能性として、特に、MEMS/NEMSの構築から治療性能、ワクチン供給、物質構成までの範囲の広範で多様な用途を意図する。
【0011】
本発明は更に、安定した3次元ナノスケールの構築基盤に関する方法及び機構を提供し、この構築基盤、この構築基盤の生成方法、及びこの構築基盤の使用方法を含む。前述のいずれも本明細書中では「DNA Interweave Dimensional Array」、「DIDA」と称され、その双方がIncitor LLC社の商標である。DIDAによって、ナノメートル未満の許容差でこれらの3次元構築基盤上に多様な分子、化合物、及び/又は物質を配置できるため、DIDAの構築基盤に官能性を持たせて、広範で多様な作業を実行することができる。例えば、主要アミノ酸残基をDIDAに一体化し、その残基を相互に好適な3次元方向に配置することによって、DIDAの構築基盤は酵素と同様の触媒活性を呈示することができる。DIDAは更に複雑な化学化合物の構築を可能にし、DIDAの構築基盤は所定の位置で関連する化合物を「維持(hold)」して、生産される収量を改善できる。他のDIDAの用途はMEMS/NEMSの構築、診断性能、ワクチン供給等を含む。
【0012】
本発明は更に、エネルギー、半導体、医薬品、化学物質、食物及び薬剤を含む多数の産業に適用可能な廉価なナノスケール生成方法を提供する。実施例としては、本発明はほとんどの任意の現存の植物に見出されるセルロースのバイオ燃料への変換に有用な酵素を提供できる。本発明は、金属化した3次元組織に硬化した合成DNAらせんを用いて、広範な範囲のナノスケール構造を開発及び製造でき、治療用分子、工業化学用の触媒、及びタンパク質ワクチンを含んでいる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
添付の図面は本明細書の一部に取り込まれてそれを形成し、本発明を例示し、本記載と共に本発明を説明する。図面においては同様の要素は同様の番号が付される。
【0014】
【図1】図1は、ペプチド合成を経た標的分子の合成の概略図である。
【図2】図2は、ペプチド合成を経た標的分子の合成の概略図である。
【図3】図3は、DNAで構成された3次元立方体の概略図であり、3の異なる単鎖が立方体の各々の角に結合している(往々にして、「Chun/Seeman DNA Cube」と称される)。
【図4】図4は、線維束状のストランドの組み込みによって所望の方向に形成される骨格ストランドの概念の概略図である。
【図5】図5A(等角投影図)及び5B(正面図及び側面図)は、実施例の構造の概略的な例示であり、最初に発明者によって開発され、酵素様触媒のための塩基として用いることができる。
【図6】図6は、実施例のチミジン類似体の単量体の概略図であり、3の異なる側鎖型式を有する。
【図7】図7は、構造の実施例の全体図であり、酵素様触媒のための塩基として用いられる。
【図8】図8は、サンプルのセリン類似体のPNA前駆体の概略図である。
【図9】図9は、最終的な実施例のPNA単量体の概略図である。
【図10】図10は、DNAとPNAとの間の相違性と類似性の概略図である。
【図11】図11は、原子間力顕微鏡のDNA組織の画像である。
【図12】図12は、折り畳まれたDNA/PNA組織の概略図である。
【図13】図13は、DNA/PNA組織の金属化の概略図である。
【図14】図14は、本発明のある実施形態による実施例のエタノール生成プロセスの概略的な例示である。
【図15】図15は、本発明のある実施形態による改良した酵素でのセルロース性エタノールの生成の概略的な例示である。
【図16】図16は、本発明のある実施形態による改良した酵素でのコーンエタノール生成の概略的な例示である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1はペプチド合成を経た標的分子の合成の概略図である。図1に示すような機構1においては、標的化合物1は標準的なペプチド結合状態(HOBt、EDCI、DIPEA)を経て符号2及び3から生成できる。機構1における実験は明らかに困難であったが、注意深いクロマトグラフ法と反応条件を経てその解決がなされた。代替的な保護基の処置はこれらの問題を軽減することを示した。代替的なアプローチは以下の文章及び図面に示す。
【0016】
図2はペプチド合成を経た標的分子の合成の概略図である。青色のアミドを転化することによって、符号4に示すように、符号1に示すようなイミダゾールとチミジンとの間で同じ距離が維持できる。異性体化合物5も更に可能であり、その合成におけるレトロンとして天然物のヒスタミン10を有するという利点があり、イミダゾール酢酸2より実質的に廉価である。符号4及び5は符号1を生成するのに現行で用いられている同一で共通の中間体のアミンを利用するが、これは無水物7又は9と反応しうる。このことで各々がカルボン酸を生成し(図示せず)、次いで5−(メチルアミノ)−イミダゾール8又はヒスタミン10と反応しうる。このアプローチは更に保護基を必要としない。
【0017】
[生体ナノ格子]
生体ナノ格子の構築は5のステップで記載できる。
・架橋結合された、デオキシリボ核酸(DNA)といった生体高分子のストランドで構成された3次元構造(本明細書中では「生体ナノ格子(bionanolattice)」と称される)を生成するステップ
・化学結合可能な官能基を呈示する共有結合された側鎖を含む、DNA又はペプチド核酸(PNA)といった生体高分子の複合型単量体(本明細書中では「単量体スタッド(monomer stud)」と称される)を生成するステップ
・合成されるか、あるいは商業上取得され、ナノスケールで間隔、方向、静電特性、立体科学的な運動制御の範囲を提供する化学的なリンカーを、単量体スタッドの側鎖に結合する(本明細書中では「リンカー(linker)」と称される)ステップ
・酸、塩基、求電子剤、求核剤、又は単一の電子受容体若しくはドナーとして作用する対象の触媒活性の官能基を各々のリンカーに共有結合するステップ。非触媒活性の官能基は更に水素結合、πスタッキング、又は他の非結合性相互作用を支持するか、あるいは支持しないように用いてもよい。
・結合した対象のリンカー及び触媒分子を含んだ各々の単量体スタッドを生体ナノ格子に組み込む(本明細書中では「装填型の生体ナノ格子(loaded bionanolattice)」と称される)ステップ
【0018】
本記載のために、酵素と類似する機能を呈示する触媒を構成するサンプル処理が用いられる。更に、用語「分子(molecule)」は一般的な意味での分子、化合物又は他の物質を参照するように用いられる。しかしながら、この酵素処理は生体ナノ格子の広範な適用性の実施例にすぎない。
【0019】
[生体ナノ格子の生成]
生体ナノ格子の構成は、DNAといった特定の生体高分子の天然特性に基づいており、生体高分子は各々のらせん体内の核酸塩基のワトソン・クリック塩基対によって説明される最低エネルギーの熱力学的な考察に基づいて二重らせん(又は他の多重らせん)を形成する。この塩基対の特性は異なるらせん領域(単一の二重らせん又は多重らせんのストランドを意味する)間の接合部及び架橋結合を生成するのに利用して、複雑な幾何学的設計を形成する。多数の接合型が発見されており、ホリデイ接合部(4の単鎖DNA配列が正方形の架橋結合を形成する)のように、異なる数のDNAの単鎖が予測可能な方法で結合することが可能であり、3次元構造設計のための構成ブロックを形成する(通常「組織化する(weaving)」と称される)。図3は実施例として、DNAで構成された3次元立方体を示し、3の異なる単鎖が立方体の各々の角に結合して、「Chen/Seeman DNA Cube」と称される構造を形成する(J.Chen and N.C.Seeman,The Synthesis from DNA of a Molecule with the Connectivity of a Cube,Nature 350,631−633(1991))。
【0020】
DNA折り紙と称される生体高分子組織の修飾の概念は、カリフォルニア工科大学のPaul Rothemundによって一般化された(P.W.K.Rothemund,Folding DNA to create nanoscale shapes and patterns,Nature,440,297−302(2006))。DNA折り紙は生体高分子の組織化の基本概念に従うが、二重らせん内の2のらせんのうちの1つが対応する合成由来の「線維束状のストランド(staple strand)」によって、多様な形状に「折り畳まれる(folded)」単一の長いDNAの単鎖(「骨格ストランド(scaffold strand)」と称される)であるとの概念を組み込んでいる。図4は、線維束状のストランドの組み込みによって所望の方向に形成される骨格ストランドの概念を示す。
【0021】
図4における黒色のストランドは、7又は8の塩基対配列にわたって反復されないヌクレオチド配列からなる単一の長い骨格ストランドである。青色及び赤色のストランドは線維束状のストランドである。固有の塩基対配列のために、線維束状のストランドは、骨格ストランドを採択された所望の形状に強制する。この概念は3次元に拡張され、対費用効果の高い、複雑な3次元構造を構成できる。しかしながら、3次元の生体高分子組織の単体はわずかな有用性しかないため、これまでは生産規模では商業上の用途にあまり適用されなかった。
【0022】
本発明は3次元のDNA組織及びDNA折り紙の概念上に構築され、それらに官能性を持たせて多様な対象の分子を構造内の多様な位置に結合する性能が付加される。発明者によって最初に開発された、酵素様触媒のための塩基として用いるためのこのような構造の一実施例は、図5A及び5Bに示される。
【0023】
図5A及び5Bに例示されたDNA設計は、単鎖で雄性特異的な糸状のDNAバクテリオファージM13によるM13mp18ウイルスゲノム由来の立体構造的なDNA鎖を含み、立体構造のストランドを所望の構成に結合する多数の合成された200塩基長の線維束状のストランドを有する。その設計は、立体構造のストランド及び線維束状のストランドが溶液中に置かれたときに、その構造は平衡熱力学の結果として採用されるように最適化される。図5A及び5Bによる構造の実施例は2の重要な特性:剛性及び予測性;を組み込む。二重壁型の設計は形状が広範な周囲条件の範囲内で静的状態を維持するのを保証する。DNA配列が既知である場合に構造は予測可能であり、3次元構造内の任意の配列位置は総ての3軸上でナノメートル単位で既知である。構造は、正面図で50ナノメートル未満の幅及び30nmの奥行きであり、側面図で40nmの長さである。
【0024】
リンカー及び生体模倣型の官能基でその設計の内部を支持することによって、本発明は酵素活性部位の触媒性能を模倣可能であると予測する。更なる生体ナノ格子の構築基盤設計を生成するか、あるいはサンプル設計上の分子の型又は位置を変更することによって、限定しないが広範で多様な酵素模倣性、診断液、医薬品、電磁材料、又は他の新規の用途を含む、異なる機能が得られうる。その概念は生体高分子としてのDNAを必要としないが、DNAは現行では比較的廉価であるため、一般的な可能性の実施例として用いられる。
【0025】
[単量体スタッドの生成]
生体ナノ格子の構築基盤は、組織化された生体高分子に基づくものであり、ナノ単位で正確な所望の分子の3次元配置を可能にするのに必要な予測性及び安定性を提供する。構造の性質が予測可能である場合、正確なアミノ酸の側鎖の官能基の位置はコンピュータによる設計及び分子モデリングによって大きく補助されうる。しかしながら更なる性能が要求されうる。対象の分子を生体ナノ格子に結合し、これによって所望の機能を得るために、元の生体高分子構造は側鎖を含む単量体の外側に構成して、対象の官能基を結合するための位置を提供しうるか、あるいは生体高分子構造の一部が側鎖の官能基を含む単量体と置換されうる。必要な側鎖を含むPNA類似体を用いることは選択的である。しかしながら、PNA鎖を合成することは一般的にはDNAといった代替物よりも高価である。
【0026】
代替例は合成するのが廉価なDNAといった生体高分子の外側に生体ナノ格子を構成し、次いでDNAの一部を短いPNA鎖で置換することである。それでも、より小さいものであるにも拘わらず、PNA合成の要求による費用の懸念がまだ存在する。更に、PNAのらせん構造は天然で1回転につき15の塩基対で形成される一方、DNAは天然で1回転につき10.5の塩基対で形成される。この差異は生体ナノ格子構造の全体に応力をかけ、その一体性を低減する可能性がある。本発明者はセリンによってPNA単量体を生成して、側鎖を提供することを調査し、本発明者はDNAのヌクレオチド誘導体を生成し、必要な側鎖をチミジンに付加した。これによって1回転に対する塩基対の問題を解消し、活性化した生体ナノ格子の費用を強力に劇的に低くすることができる。
【0027】
このアプローチは線維束状のストランド内の選択したチミジンのヌクレオチドを、設計した合成チミジン誘導体で置換する。このことによって、任意のチミジンの位置がスタッド型の単量体として作用でき、リンカー及び対象の分子が結合できる。合成酵素の実施例の場合においては、対象の分子はアミノ酸又は金属イオンにできる。
【0028】
図6は、実施例のチミジン類似体の単量体の概略図であり、3の異なる側鎖型式を有する。黒色の各々の分子区画は核となるチミジン成分を示す。青色の区画は必要なリンカーの型によって変化しうる。緑色の成分は新規の側鎖の官能基を示し、チミジン類似体で構成され、次いで所望される触媒活性の官能基を含む所望の分子成分に結合される。生体ナノ格子内の各々のチミジンの位置が既知の場合、リンカーのパラメータ(長さ、可撓性等)を変えることによって、所望の官能基は生体ナノ格子の構造に関連する3次元空間における特定の位置に配置される。対象の官能基は生体ナノ格子への挿入前に、あるいは後に側鎖に付加できる。前である場合、スタッド型の単量体は分子及びリンカーが結合されて、DNAの単鎖で合成して、生体ナノ格子内の配置においては選択的に提供できる。代替的に、異なる保護基はスタッド型の単量体(チミジン)の側鎖に適用されて、生体ナノ格子への挿入後の脱保護と分子の側鎖への合成を可能にする。意すれの場合においても、その技術は:
1)多様な官能基が結合する生体ナノ格子内の位置;
2)位置の予測性;
3)位置の選択性;
を提供する。
【0029】
PNA又はチミジン類似体のいずれのアプローチも、単量体の側鎖を有する他の生体高分子にとともにこの結果を実現できるか、あるいは単量体の側鎖を有するように誘導体化できるかである。DNAを用いる場合、側鎖を付加するアプローチはチミジンに限定されるのではなく、必要に応じてアデノシン(又はデオキシアデノシン)、グアノシン(又はデオキシグアノシン)、シチジン(又はデオキシシチジン)、あるいはウリジン(デオキシウリジン)に適用できる。上述のチミジンの記載は単なる実施例として用いられる。
【0030】
次いで、予測可能な生体ナノ格子内の分子の配置が生じうる位置を生成する概念は3通りで記載できる:
1)側鎖を含む修飾型の生体高分子の単量体(スタッド型の単量体)を生成する;
2)化学的なリンカー及び対象の分子を側鎖に結合する;
3)生体ナノ格子の線維束状のストランド(又は、一部の場合における立体構造のストランド)の区画をスタッド型の単量体で置換する
【0031】
スタッド型の単量体はPNA、DNA、又は他の生体高分子上で合成された変異体にできる。生体ナノ格子内のスタッド型の単量体の配置の選択は、合成中のスタッド型の単量体の線維束状のストランドへの挿入を介して実現できる。コード化された線維束状のストランドのの配列の固有性によって、スタッド型の単量体が生体ナノ格子に予測可能に配置されることが保証される。位置決めの詳細はコンピュータによる分子設計プログラムを用いて容易に補助されうる。各々のスタッド型の単量体に結合した分子の選択性は、線維束状のストランドの合成前に分子をスタッド型の単量体に結合するか、あるいは問題となっているスタッド型の単量体のために固有の保護型を生成するかのいずれかによって実現できる。
【0032】
DNA架橋結合型構造内でDNAをPNAと置換する概念は、NYUのNed Seeman博士によって成功裏に調査され、このアプローチの可能性を強調している。P.S.Lukeman,A.Mittal,& N.C.Seeman,Two Dimensional PNA/DNA Arrays:Estimating the Helicity of Unusual Nucleic Acid Polymers,Chemical Communications,1694−1695(2004)。多数の官能基が由来のヌクレオチドのバージョンを生成した。U.Asseline,V.Roag,Oligo−2’−deoxyribonucleotides containing uracil modified at the 5−position with linkers ending with guanidinium groups,Journal of the American Chemical Society,125,4416−4417(2003)。
【0033】
[組合せ化学の開発]
塩分、pH、及び/又は温度における極端例といった周囲の応力により耐性のある構造に由来する商業上の生成物の利益とは別に、連続的な所望の機能の改善に関連する特定の利益が出現する。活性化した生体ナノ格子によって、3次元空間内の各々の分子の配置で特定の制御を可能にすることで、研究者が新しい機能をより迅速に生成することができる。合成酵素の実施例を用いた場合、研究者は定方向の、あるいは無作為化した塩基上で、生体ナノ格子内のアミノ酸の3D方向、選択又は他の特性を容易に変更して、改良した触媒特性を呈示できる新規の酵素を生成できる。更には、生体ナノ格子は微生物で産生される選択で必要な天然のアミノ酸に限定されないため、新規の合成酵素、金属イオン、又は他の触媒性の転写促進因子は最初に、商業上実行可能な酵素に組み込むことができる。
【0034】
[3次元ナノスケールの構築基盤]
本発明は更に、安定した3次元ナノスケールの構築基盤に関する方法及び機構を提供し、この構築基盤、この構築基盤の生成方法、及びこの構築基盤の使用方法を含む。前述のいずれも本明細書中では「DNA Interweave Dimensional Array」、「DIDA」と称され、その双方がIncitor LLC社の商標である。DIDAによって、ナノメートル未満の許容差でこれらの3次元構築基盤上に多様な分子、化合物、及び/又は物質を配置できるため、DIDAの構築基盤に官能性を持たせて、広範で多様な作業を実行することができる。例えば、主要アミノ酸残基をDIDAに一体化し、その残基を相互に好適な3次元方向に配置することによって、DIDAの構築基盤は酵素と同様の触媒活性を呈示することができる。DIDAは更に複雑な化学化合物の構築を可能にし、DIDAの構築基盤は所定の位置で関連する化合物を「保持(hold)」して、生産される収量を改善できる。他のDIDAの用途はMEMS/NEMSの構築、診断性能、ワクチン供給等を含む。
【0035】
DIDAアレイの構築ステップは3のステップを含む:
・架橋結合されたDNA鎖で構成され3次元構造を生成するステップ;
・化学的なリンカーに結合され、次いで多様な対象の分子、化合物、又は物質に結合されるペプチド核酸(PNA)の単量体を生成するステップ;
・PNA鎖を3Dに組織化されたDNA構造に組み込むステップ
【0036】
本記載のために、酵素のものと類似する機能を呈示する触媒を構成するサンプル処理が用いられる。更に、用語「分子」は一般的な意味での分子、化合物又は他の物質を参照するように用いられる。しかしながら、この酵素処理はDIDAの広範な適用性の実施例にすぎず、本明細書中に記載の1以上の本発明は、記載の方法、記載の構築基盤、この構築基盤の使用、及び当該技術分野の当業者が本開示を読むことで理解する前述の任意のものに対する総ての部分集合、変形物、及び外延を含む。
【0037】
[3DのDNA構造の生成]
DIDA技術はDNAの天然特性を用いており、特定のDNA配列は天然に接合部及び架橋結合を呈示して、複雑な幾何学的設計を形成する。多数の接合型が発見されており、ホリデイ接合部(4の単鎖DNA配列が正方形の架橋結合を形成する)のように、異なる数のDNAの単鎖が予測可能な方法で結合することが可能であり、3次元構造設計のための構成ブロックを形成する。図3は実施例として、DNAで構成された3次元立方体を示し、3の異なる単鎖が立方体の各々の角に結合している。
【0038】
DNAから3次元構造を生成するための技術は既存であるが、今日まで商業上の用途にあまり適用されなかった。DIDAは3次元のDNA組織又はDNA折り紙の一般概念を用いて、それらを多様な官能性のための骨格として作用しうる構造の生成に適用する。酵素様触媒のための塩基として用いるべきこのような構造の一実施例は図7の全体図に示されている。
【0039】
図7のDNA設計は、単鎖で雄性特異的な糸状のDNAバクテリオファージM13によるM13mp18ウイルスゲノム由来の立体構造的なDNA鎖を含み、立体構造のストランドを所望の構成に結合する多数の合成された200塩基長の「線維束状のストランド」を有する。その設計は、立体構造のストランド及び線維束状のストランドが溶液中に置かれたときに、その構造は天然に形成される。図2による構造の実施例は2の重要な特性:剛性及び予測性;を組み込む。二重壁型の設計は形状が広範な周囲条件の範囲内で静的状態を維持するのを保証する。DNA配列が既知である場合に構造は予測可能であり、3次元構造内の任意の配列位置は総ての3軸上でナノメートル単位で既知である。構造は、正面図で50ナノメートル未満の幅及び30nmの奥行きであり、頂面図で40nmの長さである。
【0040】
アミノ酸及び化学的なリンカーでその設計の内部を「支持(stud)」することによって、その構造は酵素活性部位の官能性を模倣して用いることができる。更なるDIDAの構築基盤設計によって、あるいはサンプル設計上の「支持」された分子の型又は位置を変更することによって、広範で多様な酵素模倣性、診断液、医薬品、又は他の新規の用途を含む、異なる機能を提供できる。
【0041】
[PNA単量体の生成]
DIDAの構築基盤内でのDNAの使用は、ナノ単位で正確な所望の分子の3次元配置を可能にするのに所望される予測性及び安定性を提供する。しかしながら実際には、これらの対象の分子を結合するステップはDNA配列の一部の修飾を要求する。実施例は特化されたDNA単量体を修飾された主鎖で生成して、化学反応のための「自由な(free)」結合開口部を提供するステップか、あるいは特に、特定のDNA配列の代わりにペプチド核酸の特化した単量体を導入するステップを含む。
【0042】
PNAはDNAの官能基を模倣し、更に広範なpHにわたる大きな安定性を有し、更には配列特異的な結合剤である。有用性は病気に関連する遺伝子の修飾で発見され、グリシンによるPNAが通常の使途である。本文書の実施例にあるような触媒設計の場合においては、化学的な安定性が所望されるが、アミノ酸の側鎖から得られるPNAの一部は主要な分子特性において決定的役割を採用している。
【0043】
DIDAは更なるヒドロキシル基を含む2の保護された側鎖を有する特化したセリン類似体のPNA前駆体を構成するのに用いることができる(故に類似体としてのセリンの使用)。更なるヒドロキシル基は分子が単量体に結合するのを可能にし、単量体は「標準的(standard)」な側鎖を用いてDIDAの構築基盤内の特異的な位置に配置される。サンプルの単量体の前駆体は図8に示される。
【0044】
3の側鎖を有する特化したPNA単量体を生成することによって、DNA/PNA組織自体と必ずしも関連しない分子に結合されうる、DIDAの構築基盤内の予測可能な位置を提供する。例えば、保護されないヒドロキシルの側鎖は長さ、角度、可撓性及び他の特性を変更する化学的なリンカーに結合できる。これらの化学的なリンカーは次いで対象の分子に結合しうる。リンカーは間隔及び方向を提供して、対象の分子が所望の方法で反応し、必要に応じて相互に空間的定位を維持することを保証できる。酵素模倣性の実施例においては、分子は所定の酵素活性部位内のアミノ酸と等価なアミノ酸にできる。リンカーは相互にアミノ酸の3次元方向を好適に維持すべくステロイド性にでき、代替的な合成酵素設計に固有の「折り畳み(folding)」の問題を解決する。改良した酵素はリンカー、リンカーに結合されるアミノ酸、あるいは核となる構築基盤上のヒドロキシル基の位置を変更することによって生成できる。
【0045】
引き続きの合成酵素の構成の実施例においては、リンカー及び触媒残基は遊離ヒドロキシルに結合されるとすぐに、前駆体は保護されずに、図9に示すような最終的なPNA単量体を形成できる。これらの単量体はPNAの単鎖に合成され、その一部の単量体は更に従来のグリシン類似体のPNAになり、その一部は対象の分子が事前結合された上述のセリン類似体のPNAになりうる。
【0046】
従って、DIDAは位置の生成を可能にし、DIDA構造内の予測可能な分子の配置が3ステップで生じうる:
1)更なる側鎖を含む、修飾型の核酸の単量体を生成する;
2)化学的なリンカー及び対象の分子を側鎖に結合する;
3)DIDA構造の線維束状のストランド(又は、一部の場合における立体構造のストランド)の区画を対象の分子が結合した修飾型の単量体を含む単鎖PNAで置換する。DIDAの構築基盤内のPNA単量体の位置は化学的なリンカーの特性を有し、3次元空間内の対象の分子の配置を規定する。
【0047】
DNA架橋結合型構造内のDNAをPNAで置換する概念はNYUのNed Seeman博士によって成功裏に調査された。
【0048】
[PNAのDIDAの構築基盤への組み込み]
最初のDIDAの構築基盤のDNA設計は、長さが18ないし20塩基長のPNA鎖で置換されるように計画された位置を組み込む。官能性を有するDIDA構造全体を完成するために、PNA単量体は対象の分子(合成酵素の実施例においては、これらの分子はアミノ酸にできる)に結合されるとすぐに、グリシン又は他の類似体のPNA単量体を有する単量体からなるPNA鎖は、業界標準の方法を用いて合成できる。これらのPNA鎖はDNAの線維束状及び立体構造のストランドを有する溶液中に配置できる。設計の性質はストランドが所望の構成に天然に自己形成されることである。官能性のあるDIDA構造が構築された。
【0049】
[組合せ化学の開発]
塩分、pH、及び/又は温度における極端例といった周囲の応力により耐性のある構造に由来する商業上の生成物の利益とは別に、連続的な所望の機能の改善に関連する特定の利益がDIDAによって可能になる。DIDAによって、3次元空間内の各々の分子の配置で特定の制御を可能にすることで、研究者が新しい機能をより迅速に生成することができる。合成酵素の実施例を用いた場合、研究者は定方向の、あるいは無作為化した塩基上で、DIDA構造内のアミノ酸の3D方向、選択又は他の特性を容易に変更して、改良した触媒特性を呈示できる新規の酵素を生成できる。更には、DIDAは微生物で産生される選択で必要な天然のアミノ酸に限定されないため、新規の合成酵素、金属イオン、又は他の触媒性の転写促進因子は最初に、商業上実行可能な酵素に組み込むことができる。DIDAは広範で多様な産業に影響を与えうるナノスケールでの調査、開発、及び大量生産の方法を提供する。
【0050】
以下の文献:J.Chen and N.C.Seeman,The Synthesis from DNA of a Molecule with the Connectivity of a Cube,Nature 350,631−633(1991);Rothemund,P.W.K.,Folding DNA to create nanoscale shapes and patterns,Nature,440,297−302(2006);Nielsen,P.E.;Haaima,G.,Peptide nucleic acid(PNA).A DNA mimic with a pseudopeptide backbone,Chem.Soc.Rev.,26,73−78(1997);Venkatesan,N.;Kim,B.H.,Peptide conjugates of oligonucleotides:Synthesis and applications,Chem.Rev.,106,3712−3761(2006);Porcheddu,A.;Giacomelli,G.,Peptide Nucleic Acids(PNAs),A Chemical Overview,Curr.Med.Chem.,12,2561−2599 2005);P.S.Lukeman,A.Mittal,& N.C.Seeman,Two Dimensional PNA/DNA Arrays:Estimating the Helicity of Unusual Nucleic Acid Polymers,Chemical Communications 2004,1694−1695(2004);は各々が引用によって本明細書中に組み込まれ、前述の記載の理解を容易にしよう。
【0051】
[DNA組織でのナノスケール生成]
本発明は更に、エネルギー、半導体、医薬品、化学物質、食物及び薬剤を含む多数の産業に適用可能な廉価なナノスケール生成方法を提供する。実施例としては、本発明はほとんどの任意の現存の植物に見出されるセルロースのバイオ燃料への変換に有用な酵素を提供できる。本発明は、金属化した3次元組織に硬化した合成DNAらせんを用いて、広範な範囲のナノスケール構造を開発及び製造でき、治療用分子、工業化学用の触媒、及びタンパク質ワクチンを含んでいる。
【0052】
本発明のいくつかの実施形態においては、酵素の構築ブロックであるアミノ酸は組織化されたDNA構造内の特異的な位置に結合される。これらの組織は3次元形態に影響を与えるように化学修飾され、次いでDNAに結合する金属イオンの適用で硬化される。金属化したDNA組織はその形状を保持し、特異的な3次元方向にアミノ酸を保持して、酵素の触媒構造を模倣する。生成時に、1兆の酵素が数時間で本方法を用いて同時に生成されうる。無作為な又は定方向のアミノ酸の変異体は組織に付加できる。
【0053】
酵素を合成的に構築することで提供される生成費用及び良好な活性の双方における可能性に利益があるため、多くの主体は合成酵素を生成するために異なる方法で実験してきた。誰も以下の3の原理的な難題のために(いくつかの特異的な小さな酵素は生成されてきたものの)高レベルの触媒活性を呈示する合成酵素を生成するための一般的な技術を提供できなかった:
・配列構造:酵素は特異的な配列内に最大数千のアミノ酸を含む。アミノ酸を結合する現行の合成方法(Merryfieldのペプチド合成)は配列において、100のアミノ酸を超える商業上の量を生成できない。
・折り畳み:触媒活性を呈示するため、アミノ酸配列は「折り畳む(fold)」か、3次元方向に配置しなければならない。誰もこれまで必要な長さのアミノ酸配列の折り畳みを制御できなかった。
・運動:アミノ酸配列が折り畳まれた場合でさえも、方向は触媒反応の間に変化する。誰もこれまで折り畳みの難題を解決できなかったため、合成アミノ酸でこれを研究できなかった。
【0054】
本発明はこれらの3の問題を核となる問題に単純化して、生化学的技術の代わりにナノ技術の物理的技術を用いることによって、これらの問題を解決できる。本発明は所定の酵素でアミノ酸のほとんどを除去でき、触媒に含まれるそのアミノ酸活性のみで濃縮され、長い配列を構築する必要性を除去する。本発明は、DNA及びPNA(ペプチド核酸)の硬化した組織を用いて3次元空間でこれらのアミノ酸の配置をナノメートル内で制御し、折り畳みの困難性を解決する。その技術はこれらの特異的なアミノ酸が予測可能な経路で運動するのを可能にし、運動の要求を解決する。
【0055】
本発明は例えばエタノール市場で新規の酵素を生成及び産生するのに用いられうる。本発明は更に、正確な分子配置を要求するナノスケールレベルで多くの3次元構造を生成するのに用いることができ、治療用の生体分子、工業化学用の触媒、微小の電子部品を含み、現行のプロセスよりも有効である。
【0056】
本発明はエタノール市場に以下の主要な利益を提供する:
・現行で利用可能な製品よりも数桁効果的な、有効性の高い酵素の迅速な開発を可能にする
・エタノール生成プロセスにおける多様な段階で酵素を導入するのを可能にし、生産効率を改善し、費用を低減する。
【0057】
本発明はいくつかの基本的な生物学的法則を利用する:
・酵素はアミノ酸の高分子(ポリペプチド)及び他の分子からなる
・アミノ酸はペプチド核酸又はPNAに結合できる
・PNAはDNAに結合できる
・特異的なDNA配列は天然にナノスケールで組織化された構造を形成する
・酵素性能を呈示するために、酵素高分子は特異的な3次元方向に「折り畳む」必要がある
【0058】
本発明はこれらの生物学的法則を利用する。このプロセスはペプチド核酸(PNA)配列の生成で開始する。PNAはDNAと同一のヌクレオチドからなる点でDNAと関連づけられるが、DNA内に存在するデオキシリボース(糖)の主鎖の代わりにペプチド(アミノ酸)の主鎖を有する。図10はDNAとPNAとの間の相違性(及び類似性)を示す。
【0059】
本発明の実施形態は図面で示されうるように、分子がPNAの量側に結合できるため、PNAを用いることができる。一方の側はヌクレオチド塩基を含み、DNA又は他のPNA分子に結合する。他方は多様な物質に化学結合でき、天然又は合成のアミノ酸、金属、又は他の有機又は無機化合物を含む。この固有の性能によって、本発明で触媒的に重要な分子を含むPNA配列を設計して、PNA配列に沿ったこれらの分子配置を正確に制御するのに用いることが可能になる。
【0060】
触媒分子が結合したPNAを構築するとすぐに、二本鎖DNAの組織を構成できる。PNAは組織内に埋込むことができ、DNA配列の一部を置換する。PNAのヌクレオチド配列を制御することによって、PNA配列は組織内の2次元空間内に正確に配置できる。対象の分子は既知の構成でPNAに結合するため、分子は更に2次元空間内に正確に配置される。図11は原子間力顕微鏡のDNA組織の画像を示す。例えば引用によって本明細書中に組み込まれる、2008年9月13日に訪問した、http://www.cs.duke.edu/reif/paper/SELFASSEMBLE/DNAlattice.Overview.ppt参照。
【0061】
3次元配置を集めるために、互いに引き合う化合物を含むPNAは、組織の外縁に配置でき、全体的な構造を半円筒状に折り畳む。図12はこの概念を示す。
【0062】
最終的な生成ステップは溶液中の金属イオンを組織に付加するステップを含み、それを持続的に半円筒状に硬化する。DNAの主鎖ならびにヌクレオチドは正味に負に帯電するため、アルミニウムイオンのような正に帯電した金属イオンと引き合い結合する。金属イオンはDNA格子を取り囲んで、剛性を付与する。図13はそのプロセスを示す。引用によって本明細書中に組み込まれる、2008年9月13日に訪問した、http://www.integratednano.com/tech−core−htbw.asp#参照。
【0063】
図13の上部は標準的なDNAの二本鎖を示す。図13の中間部はDNA鎖の異なる成分の負電荷に引きつけられる金属イオンを示す。図13の下部は更なる金属が初期の金属イオンにどのように化学結合するかを示し、剛性の金属化した覆いで元のDNA鎖を覆っている。
【0064】
本発明によるプロセスの実施形態は、生物学的プロセスと比べると、化学的/物理学的方法にできる。本発明で考慮されるような3次元組織は所定の3D構造を提供するためだけに存在する生物学的に生成された酵素を除外しうるが、好適な3D構造を提供する。本発明で用いたアミノ酸は、アミノ酸の運動性能を制御する化学的な化合物で、組織の正確な位置に自動的に結合できるため、本発明によって生成される構造は、酵素が必要なことを明らかにする。本プロセスは従来の方法よりも迅速で、かつ対費用効果を大きくできる。
【0065】
酵素を生成するために、迅速で、かつ対費用効果の高い方法を提供するのに加えて、本発明による非生物的な金属化プロセスは高い温度及び圧力、ならびに広範で極端なpH、塩、及びせん断応力に耐性があり、産業上のプロセスを特徴づける酵素を固有に生成できる。
【0066】
この生成方法の利益は広範である。本発明によって生成される酵素は:
・アミノ酸が物理的な金属化構成に持続的に固定されるため、一体性の損失なく触媒で多数回用いることができ;
・酵素を生成するのに細菌又は真菌を維持する必要性を排除し;
・わずかな時間でより活性のある酵素を生成し;
・工業上の応力に対し耐性のある酵素を生成し;
・任意の既知の酵素を生成及び改良でき、燃料生成に関連性のあるものに限定せず;
・現行のプロセス下で酵素を生成するのに必要なエネルギーコストを低減する
【0067】
遺伝子配列を組織内で制御する性能は更に、他の処理産業に到達する広範な調査及び開発の利益を提供する。単一プロセスにおける数百万の同一の酵素を生成する場合を除き、本発明は更に数百万の異なる酵素を同時に生成可能である。従って、本発明は新規で更に有効な酵素を生成するのに用いられうる。既知の酵素のアミノ酸のPNA結合に微量の無作為な変化を導入することによって、既知の酵素の数百万の軽微な変異体を自動的に生成できる。これらの新規の変異体の多くは所定の作業での元の酵素よりも更に有効である。変異体は業界標準の自動試験及び品質保証プロセスを通してより有効な酵素を同定でき、生成に移ることができる。新規の酵素のための開発プロセス全体は3ないし6月の期間で実現でき、酵素の複雑性に依存する。
【0068】
[エタノール生成の実施例]
図14は、本発明のある実施形態による実施例のエタノール生成プロセスの概略的な例示である。本発明で生成される酵素を用いることによって、図15に例示するような生成プロセスにいくつかの改良が可能となる。セルロースの加水分解の時間を低減することによって、加水分解ステップで必要な作業の数を低減し、主要な基盤の費用を劇的に低減する。リグニン除去のための酵素を用いることによって、更に主要なコストを低減し、特別なフィルタ又は管を必要としなくなる。酵素による発行プロセスに変更することによって、エネルギー、酵母、及び化学物質の運用経費を低減する。セルロースのエタノール生成酵素を改良することによって、更にコーンエタノール市場の現行の生産者に新規の機会を開放する。現行のコーンエタノールの生産者は、追加の供給材料として例えばトウモロコシ茎葉を用いて、セルロース生成の流れを強力に付加できる。このようなプロセスは図16に例示され、更なる主要な最小経費で実現できる。
【0069】
本発明の実施形態は更に、例としてワクチン又は薬剤送達の領域で用いることができる。ペプチドワクチンはDNA組織内のPNA分子に結合され、組織は構造の外側にペプチドを呈示するように反転される。これによって、体内への吸収率が増加して有効性を改善できる一方、製造費を低くし、医薬品会社に数億ドルの年間費用の節約を提供する。
【0070】
本発明は本明細書中に説明のように記載されている。上述の記載は本発明の原理の適用の単なる例示であり、その範囲は明細書に照らして考察される請求項によって決定すべきことは理解されよう。本発明の他の変形物及び変更物は当該技術分野の当業者に明らかである。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリ核酸塩基の生体高分子組織への更なる成分又は分子の結合を可能にするための方法であって、更なる化学結合を前記ポリ核酸塩基の生体高分子組織内に組み込むステップを具えることを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、少なくとも1の更なる化学結合がアミド結合を可能にすることを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項1に記載の方法において、少なくとも1の更なる化学結合が付加環化を可能にすることを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項1に記載の方法において、少なくとも1の更なる化学結合がエステル結合を可能にすることを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項1に記載の方法において、少なくとも1の更なる化学結合がジスルフィド結合を可能にすることを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項1に記載の方法において、前記ポリ核酸塩基の生体高分子組織が核酸を含むことを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項6に記載の方法において、前記核酸がPNA(ペプチド核酸)を含むことを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項6に記載の方法において、前記核酸がDNA(デオキシリボ核酸)を含むことを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項6に記載の方法において、前記核酸がRNA(リボ核酸)を含むことを特徴とする方法。
【請求項10】
請求項6に記載の方法において、前記核酸がLNA(ロックド核酸)を含むことを特徴とする方法。
【請求項11】
請求項6に記載の方法において、前記核酸がGNA(グリコール核酸)を含むことを特徴とする方法。
【請求項12】
請求項6に記載の方法において、前記核酸がTNA(トレオース核酸)を含むことを特徴とする方法。
【請求項13】
ポリ核酸塩基の誘導体を生成する方法であって、ワトソン・クリック塩基対結合又は主鎖結合以外の更なる化学結合を提供するステップを具えることを特徴とする方法。
【請求項14】
請求項13に記載の方法において、前記ポリ核酸塩基がチミンを含むことを特徴とする方法。
【請求項15】
請求項13に記載の方法において、前記ポリ核酸塩基がウラシルを含むことを特徴とする方法。
【請求項16】
請求項13に記載の方法において、前記ポリ核酸塩基がシトシンを含むことを特徴とする方法。
【請求項17】
請求項13に記載の方法において、前記ポリ核酸塩基がグアニンを含むことを特徴とする方法。
【請求項18】
請求項13に記載の方法において、前記ポリ核酸塩基がアデニンを含むことを特徴とする方法。
【請求項19】
約10ナノメートル未満の許容差で相互に関連づけて配置した分子配列を生成する方法であって、請求項1ないし18に記載の方法のいずれかを具えることを特徴とする方法。
【請求項20】
触媒を生成する方法であって、既知の酵素変換反応を模倣するが、pH、温度、触媒作用を促進することで知られる添加剤の存在、又はその組合せに関し、同類の自然系よりも優れた特性を有する触媒を生成するために、請求項1ないし18に記載の方法のいずれかを用いるステップを具えることを特徴とする方法。
【請求項21】
マイクロプロセッサといった電気回路を生成する方法であって、現行でフォトリソグラフィ技術による縮尺製造に供されうる形状の約1/16未満の形状を有する、3Dで利用可能なポリ核酸塩基のアセンブリを生成するために、請求項1ないし18に記載の方法のいずれかを用いるステップを具えることを特徴とする方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公表番号】特表2012−502911(P2012−502911A)
【公表日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−527029(P2011−527029)
【出願日】平成21年9月14日(2009.9.14)
【国際出願番号】PCT/US2009/056858
【国際公開番号】WO2010/031002
【国際公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【出願人】(510232577)インサイター インコーポレイテッド (2)
【氏名又は名称原語表記】INCITOR INCORPORATED
【Fターム(参考)】