説明

ナノチューブ、及び該ナノチューブを有する電気装置

【課題】ナノチューブ装置のような複合物質構造体を制御された方法により合成する効果的な形態を提供する。
【解決手段】ナノチューブ断片は少なくとも2つの位置エネルギー結合面を有し、それらは、ナノチューブ断片を結合させるために使用される。該結合面は、水素結合による結合位置エネルギー及び共有結合による第2のより低い結合位置エネルギーからなる2つの異なるレベルを有する。前記方法は次のステップにより構成される。(a)ナノチューブ断片の溶液を集める。(b)水素結合は分離するが、共有結合の特性を変化させるに十分ではない温度に該溶液を加熱する。(c)前記溶液を攪拌し、水素結合が安定する温度までゆっくりと温度を下げて(アニール化して)、好ましい形態を生成する。(d)前記溶液に試薬を加え、環閉鎖を生じさせる。(e)形成されたナノチューブ・マトリクス物質の精製及び脱水素のための触媒要素を導入する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合物質及び/又は電子構造の形成に関するものであり、特にナノチューブ・マトリクス物質の形成を開示するものである。
【背景技術】
【0002】
力学的及び電子的に物質を使用することが一般的には基本である。重量特性に対する力学的強度の点で、スチール・ファイバやカーボン・ファイバといった異なる物質の需要が高い。更に、新たに向上した性質をもつ新たな物質が常に要望されている。また、独特な電気的性質をもつ物質も、これらが高度な有効性をもつ分野で強く望まれている。
【0003】
更に、近年、シリコン・ウェーハ等へのIC型装置の製造において巨大な産業が形成されてきている。電子回路の更なる小型化や、半導体ウェーハ上に積層させて複合三次元構造を構築することに莫大な研究投資が続けられている。
【0004】
1991年には、スミオ・イイジマが、カーボン・ナノチューブ型装置の発見を報告した。カーボン・ナノチューブの発見は、ナノメータの寸法を有し、カーボン化学及び物理学における興味深い新たな領域を約束してくれる新たな魅力的な物質であると見なされている。
【0005】
カーボン・ナノチューブ型装置の適用における一連の背景技術については、エンドウ、イイジマ、ドレッセル・ハウスにより編集され、エルセヴィア・サイエンス・リミテッドにより1996年に出版された文献「カーボン・ナノチューブ」を参照する。この刊行物は当該分野をカバーする多くの調査記事を含んでいる。
【0006】
残念ながら、ナノチューブ型装置の構築は、やや行き当たりばったりで、統制のない方法により進められている。ナノチューブは、DCアーク放電又は、多様に維持された遷移金属触媒が存在する中でのアセチレンの触媒構造において形成されることが知られている。
【0007】
残念ながら、このような構成では無秩序な形態のカーボン・ナノチューブになりやすく、このカーボン・ナノチューブでは、複雑な機構をナノチューブより構成する能力が制限されているため、その有用性が制限されたものとなっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、ナノチューブ装置のような複合物質構造体を、制御された方法により合成する効果的な形態を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の形態において、中間部から構造体を構築する方法が提供されている。この方法は、前記各中間物は、少なくとも2つの位置エネルギー結合表面を含んでおり、各表面は、別の対応する中間物と結合するための少なくとも2つのレベルの結合位置エネルギーを有しており、前記結合エネルギーは、第1の中間結合位置エネルギーと第2のより低い結合位置エネルギーとを含んでおり、(a)中間物を突き合わせる際に、1連の中間物を集め、(b)前記突き合わされた中間物を、前記中間結合エネルギーを超える平均エネルギーまで攪拌し、(c)前記平均エネルギーを、実質的に前記第1の中間結合位置エネルギーのレベルまでゆっくりと低下させ、(d)触媒要素を前記突き合わされた中間物に導入することにより、実質的に前記第2の低位置エネルギーにおいて前記中間物の結合を生じさせて、前記構造体を構成する、以上ステップにより構成した方法である。
【0010】
更に前記方法は、他の構造体を形成する形で、ステップ(a)乃至(d)を反復繰り返すステップにより構成することができる。
【0011】
前記中間物は分子により構成可能であり、前記第1の中間結合位置エネルギーは実質的に前記中間物の水素結合により構成可能であり、前記第2のより低い位置エネルギーは前記中間物の共有結合により構成することができる。
【0012】
前記攪拌のステップは、前記突き合わされた中間物の加熱又は超音波攪拌により構成可能である。
【0013】
前記中間物はナノチューブ断片を含んでもよく、該ナノチューブ断片は、抵抗、ダイオード又はトランジスタのうち1つの部分を有する。
【0014】
前記構造体はナノチューブ断片の三次元結合構造を有してもよく、またナノチューブ・ハブ要素と結合した1連のナノチューブ・ロッドを含んでもよい。前記ナノチューブ断片はその外部の非反応面に形成された1連の突起を含んでもよく、これによりファンデルワールス作用を低減させる。
【0015】
本発明の更なる形態において、結合された四面体又は立方体のナノチューブ結合のマトリクスにより構成されるナノチューブ構造体が提供される。前記結合はナノチューブの筋交い部により構成され得る。
【0016】
本発明の更なる形態において、フラレーン(fullerene)又はその他のハブ要素に結合されたナノチューブ要素を構築する方法が提供される。
【0017】
本発明の更なる形態において、多数のナノチューブ要素を結合させるためのハブ要素を構築する方法が提供される。
【0018】
本発明の更なる形態において、低密度ナノチューブ結晶を構築する方法が提供される。
【0019】
本発明の更なる形態において、アームチェア型の2つのナノチューブ間に結合された、所定長さのジグザグ型の中央ナノチューブにより構成された、制御された抵抗特性を有する電気装置が提供される。
【0020】
本発明の更なる形態において、アームチェア型の2つのナノチューブ間に結合されたジグザグ型の中央ナノチューブと、前記中央ナノチューブに電場を作用させ、これにより前記アームチェア型ナノチューブ間の導電経路を変更するための電場作用手段と、により構成された、信号増幅特性を有する電気装置が提供される。
【0021】
本発明の更なる形態において、アームチェア型の2つのナノチューブ間に結合されたジグザグ型の中央ナノチューブと、前記中央ナノチューブに結合されたジグザグ型の制御ナノチューブを有し、前記ナノチューブは前記中央ナノチューブに電場を作用させるための電場作用手段に結合され、これにより前記アームチェア型ナノチューブ間の導電経路を変更するように構成した、信号増幅特性を有する電気装置が提供される。
【0022】
本発明の更なる形態において、共有結合部で結合された1連のナノチューブを備え、前記結合部において、前記ナノチューブは、ジグザグのナノチューブを有し、電気装置の操作特性を提供するためにアームチェア型ナノチューブに対する周辺の結合部を有する所定数のナノチューブを設けて構成した電気装置が提供される。
【0023】
好ましくは、少なくとも1つの前記アームチェア型ナノチューブが、更にアームチェア型ナノチューブの共有結合部に結合されている。
【0024】
本発明の更なる形態において、共有結合部で結合された1連のナノチューブを備え、前記結合部において、前記ナノチューブは、ジグザグのナノチューブを有し、電気装置の操作特性を提供するためにアームチェア型ナノチューブに対する周辺の結合部を有する所定数の前記ナノチューブを設けて構成した電気装置が提供される。
【0025】
本発明の更なる形態において、共有結合部で結合された1連のアームチェア型ナノチューブを備えて構成した電気装置が提供される。
【0026】
本発明の更なる形態において、共有結合を経由してナノチューブ装置のラビリンスの結合を備え、前記装置は、異なる大きさのナノチューブの結合により形成された1連のダイオード要素を有して構成した電気装置が提供される。
【0027】
本発明の更なる形態において、半導体ナノチューブに取付けられた1連の金属型ナノチューブ構造体の結合部を有し、電子が実質的に前記結合部に捕捉される量子井戸状構造体を備えて構成した電気装置が提供される。
【0028】
本発明の更なる形態において、ナノチューブ結合部を有する衝撃電子ナノチューブ装置を備え、該衝撃電子ナノチューブ装置は前記結合部に隣接した少なくとも1つの量子井戸状構造体を有する電気装置が提供される。
【0029】
本発明の更なる形態において、ナノチューブ断片を形成するための前駆合成要素を構築する方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0030】
本発明の範囲には他の形態も入るが、以下では、本発明の好ましい実施形態を説明する。この説明は、単なる例示として添付された以下の図面を参照する。
【0031】
図1は、アームチェアとジグザグ・ナノチューブの線状結合により形成されたカーボン・ナノチューブ・ダイオードを示している。
図2及び図3は、ナノチューブ抵抗要素を示している。
図4は、ナノチューブ二極型要素を示している。
図5乃至図7は、立方体ナノチューブ構造体を構築するための核構築ブロックの様々な図である。
図8は、四面体構造体を構築するための核構築ブロックを示している。
図9は、四面体構造体の一部を示している。
図11及び図12は、4結合ナノチューブ構造体を示している。
図13乃至図15は、図11及び図12に示す要素から構築された様々なナノチューブ配列を示している。
図16は、異なる長さの筋交いベンジン・ユニットに対するナノチューブ・メッシュの密度を示している。
図17は、衝撃電子流トランジスタ構造体を示している。
図18は、ジグザグ前駆合成のプロセスを示している。
図19は、アームチェア(8,8)前駆合成のプロセスを示している。
図20は、両端ジグザグ前駆合成のプロセスを示している。
図21は、両端ジグザグ・ナノチューブ合成のプロセスを示している。
図22は、ジグザグ・ナノチューブ合成のプロセスを示している。
図23は、ナノチューブ断片の一端に対する機能化及び保護のプロセスを示している。
図24は、ナノチューブ線状ダイオード合成のプロセスを示している。
図25は、アームチェア・ナノチューブの長さを増加させるプロセスを示している。
図26は、アームチェア・ナノチューブの長さを更に増加させるプロセスを示している。
図27は、ナノチューブ・ロッドの合成プロセスを示している。
図28は、端部結合部を有するナノチューブ・ロッドの合成プロセスを示している。
図29は、「ボール」をナノチューブ・ロッドに結合させる第1の方法を示している。
図30は、低密度ナノチューブ結晶の合成プロセスを示している。
図31は、低密度ナノチューブ結晶を示している。
図32は、ナノチューブ結晶配列ハブ要素開始物質の形成における別の形態を示している。
図33は、ハブ要素を形成するプロセスを示している。
図34は、「ダンベル」合成プロセスを示している。
図35は、ナノチューブ結晶を形成するための別のプロセスを示している。
図36は、ナノチューブ−ナノチューブの引力における問題を示している。
図37は、ナノチューブの変形例を示している。
[好ましい実施形態及びその他の実施形態]
【0032】
好ましい実施形態では、中間要素から複合ナノチューブ・マトリクス配列を製造する方法を開示している。詳細な説明を行うが、該好ましい実施形態の示唆が、任意の要素配置により構成された任意のナノチューブ型装置の構築にまで及び得ることは当業者にとって明白である。
【0033】
電気装置には、三次元形態の、ダイオード、トランジスタ、抵抗等を含むことができる。以下、いくつかのこれら装置を、図1乃至図17を参照して説明する。
【0034】
図1においてナノチューブ断片1が図示されており、該ナノチューブ断片1は、ジグザグ型のナノチューブと結合した「アームチェア」ナノチューブ2を含んでおり、その結合部4にはダイオード構造が形成されている。このように、結合部4の周りの不均一な配置による結果、該装置はダイオードとして作用し得るようになっている。
【0035】
図2及び3にはトンネル抵抗(tunnelling resistor)型装置が図示されており、該装置は、2つのアームチェア型のナノチューブ6,8から形成され得る。このナノチューブ6,8は、様々な長さの中央のジグザグ型のナノチューブ7,9を包囲している。カーボン・ナノチューブが利用される場合、図2及び3の構成の降服電圧は約2ボルトである。窒化ホウ素ナノチューブが利用される場合は約6ボルトである。
【0036】
図4では、二極型トランジスタ11が図示されており、これは第3アーム10を有すること以外は図3の構成に類似している。該第3アーム10は、他のアーム12,13に沿った電流を制御するために電気的に駆動自在となっている。
【0037】
図4の二極型トランジスタ11は、バンドギャップ(band gap)の不整合により、通常では衝撃トランジスタ(ballistic transistor)の非導電となる。結合部10を介した電位付与により、衝撃移送(ballistic
transport)を生じさせるバンドギャップ整合を起こすバンドシフト(band shifting)が生じる。アーム10を介した電位付与によると、漏れ電流も発生する。
【0038】
図4のトランジスタ複合体はネットワーク複合体にまで拡大することができる。図5乃至図7では、ネットワーク複合体の基本要素が示されており、該ネットワーク複合体は、互いに背向した6つのダイオードからなる組合せを有している。勿論、直接結合、ダイオード、量子ドット(quantum dot)等を提供する形で、アームのその他の形態も形成可能である。図5乃至図7において異なる図示がなされている該ネットワーク要素は、立方体ネットワーク・マトリクス(cubic
network matrix)において利用可能である。勿論、他のネットワーク・マトリクスも可能である。例えば図8において、四面体型要素20〜22が示されており、これらは図9に示すように、対応マトリクス23(corresponding
matrix)を形成する形で利用可能である。該マトリクス構成は、導電経路24,25及びトランジスタ要素26を含む。図9の構成23は更に回路要求に応じた四面体メッシュに形成されている。
【0039】
他の構成も可能である。次に図10では、ジグザグ型ナノチューブ・アーム31等により包囲されている「金属」核ナノチューブ部30をもつ四面体格子における量子ドット配列が示されている。集束核30に押し入れられた電子はそこで順次格納される。
【0040】
次に図11及び12では、別の四面体結合部35が示されており、該四面体結合部35は、各結合部においてsp炭素を有するように形成されている。該構成は、別のものであり、sp構成から形成されているので、固有の電荷を有していない。図13乃至図15に示すように、要素33は、様々な構成配列をもつ構成要素として利用可能である。該構成配列は、多くの重要な有利な特徴を有している。例えば図16には、基本要素が異なる支柱(strut)長さを有する場合に、その密度が変化する状態を示すグラフが示されている。(支柱長さはグラフに示された長さの2倍である。)図16のグラフは(18,0)型のナノチューブについてのものである。よって、図13乃至図15で図示されたものと同様の構造における機械的性質は、極めて強度が高く、弾性が高く、伸縮性が高く、圧縮性が高く、ねじれ性が高いことが含まれる。しかしながら、該構成は低いせん断抵抗をもつようである。これから説明する構成はより高いせん断抵抗をもつようにすることも出来る。
【0041】
次に図17では、変更されたトランジスタ型の結合要素50が図示されている。この場合、アーム52,53が変更されて、窒化ホウ素バンド(Boron Nitride bands)54,55及び58,59等を含んでいる。これらはアーム56,57等の各側で量子ドット・トラップ(quantum
dot trap)として作用し、該量子ドット・トラップは衝撃電子流を許容することができる。この衝撃電子流は、各側の量子ドット・トラップによって影響され、そのため量子ドット・トラップは、衝撃電子流チャンネル56,57に沿った電子流の反射を制御する。図17の構成は、量子ドット構造の利用により、図4の構成と比べて、ゲート電流を劇的に削減したようである。図17の構成50はマルチレベルメモリとして利用可能であり、アーム52,53,56,57等は、多くの異なる性能を発揮する異なる機能を介して、異なる多様な組合せで構成可能である。
【0042】
所定の構成における上記装置を含む複合三次元マトリクスの形成方法について説明する。まず図18では、ジグザグ・ナノチューブ前駆体要素を形成するステップを説明する。第1ステップは2つの分子60,61を準備する。これら分子は、標準的な有機化学技術を用いて合成可能である。両分子は4つの側部をもつものと見なされる。これら側部のうち3つは水素結合部を有し、これら結合部は合成の後の段階で使用される。これらは3つの直交した保護基、即ち記号A,B,Cが付された基により保護されている。4番目の側部は水素結合パターンを有しており、これは2分子間で相補的である。このパターンは、逆結合を防止するために非対称でなければならない。
【0043】
2つの要素60,61は混合されアニール化されて結合体63が生成され、これは後で閉鎖体64となり、最終生成物65を形成する。これは、脱水素及び精製により可能である。脱水素は、例えばパラジウム触媒を使用することにより起こすことができる。なお、脱水素は全ての主な段階で示される。大部分の場合、全合成の最終段階まで脱水素は必要ない。
【0044】
生成物を精製することにより、残留した未結合片及び環閉鎖試薬から分離する。試薬と生成物との間での分子の質量には基本的な差異があり、様々な形態の精製が採用可能である。
【0045】
次に図19では、アームチェア(8,8)の前駆合成のプロセスが図示されている。この第1ステップは2つの分子70,71を準備することであり、標準的な有機化学技術によりこれらは合成可能である。両分子は4つの側部をもつものと見なされる。この側部のうち3つは水素結合部を有しており、該水素結合部は後の合成段階において使用される。これらは3つの直交する保護基、即ち記号A,B,Cが付された基により保護されている。4番目の側部は水素結合パターンを有し、この水素結合パターンは、2分子間で相補的である。逆付着を防止するため、このパターンは非対称でなければならない。
【0046】
その結果、混合72され、アニール化73され、試薬が加えられ、環が閉じられて前駆片74が形成される。
【0047】
図20には両端(16,0)が形成されたナノチューブ前駆合成のプロセスが示されている。この第1ステップは2つの分子80,81を準備することであり、標準的な有機化学技術によりこれらは合成可能である。両分子は4つの側部をもつものと見なされる。この側部のうち3つは水素結合部を有しており、該水素結合部は後の合成段階において使用される。これらは3つの直交する保護基、即ち記号A,B,Cが付された基により保護されている。4番目の側部は水素結合パターンを有し、この水素結合パターンは、2分子間で相補的である。逆付着を防止するため、このパターンは非対称でなければならない。
【0048】
その結果、混合83され、アニール化84され、試薬が加えられ、環が閉じられる85。
【0049】
そして、以下更に詳細に説明するように、様々なナノチューブ・セグメントを形成する際に上記断片は利用可能である。
【0050】
図21では、両端のジグザグ(16,0ナノチューブ断片)の形成プロセスが図示されている。機能化された端部92,93を有するベンゼン[G,H,I]ペリレン(peryelen)のような機能化されたPAH90,91から開始し、そのような要素93の溶液が、水素結合を崩壊するのに十分な温度で、しかしながら如何なる共有結合も変性させるほどではない温度まで加熱される。そして該溶液は、攪拌され、水素結合が高度に安定する温度までゆっくり温度を下げられる(即ち、アニール化される)。このプロセスにより、ループ要素を構成する最善の形状に断片をアニール化する。そして試薬が混合物に加えられ、リングの閉鎖95が生じる。次いで、例えば、パラジウム触媒を使用することにより脱水素が生じ得る。そして精製により、残留した未結合の断片及び試薬から生成物96を分離できる。
【0051】
次いで図22では、ここでジグザグ(16,0)ナノチューブ要素の形成プロセスを説明する。機能化された端部102−105を有するジグザグ前駆分子101から開始し、端部104,105が保護解除される106,107。要素の溶液108が、水素結合を崩壊するのに十分な温度で、しかしながら如何なる共有結合も変性させるほどではない温度まで加熱される。そしてアニール化温度が、水素結合が高度に安定する点までゆっくり下げられる。該プロセスにより、最善の形状109−112に断片をアニール化する。そして試薬が加えられ、リングの閉鎖113が生じる。最後に、例えば、パラジウム触媒を使用することにより要素113は脱水素される。そして精製ステップにより、残留した未結合の断片及び環閉鎖試薬から生成物を分離できる。
【0052】
上述した合成プロセスは、異なる対掌性をもつ他のナノチューブ断片にも適用され得ることは明らかである。
【0053】
図23では、ナノチューブ断片120の例がより詳細に図示されている。該断片は、よく反応する酸素層122が続いたグラファイト層121を構成し得るものであり、該酸素層はイソプロピル・ターミネーション層123によりマスクされている。上述したナノチューブ要素の構築技術は、ダイオード等のような他のナノチューブ構造に適用する形で拡張可能である。次に、多くの構造について説明する。
【0054】
ナノチューブ線状ダイオードの合成プロセスを示す図24から始める。開始物質は、別個に合成されたナノチューブ要素130,131を含んでもよい。このナノチューブ要素は、アームチェア・ナノチューブ断片である要素130及び、ジグザグ型ナノチューブ要素である要素131を有する。各要素130,131は保護された端部を有している。第1ステップは、アームチェア・ナノチューブ130の端部B及び、ジグザグナノチューブ131の端部Aを保護解除して、ナノチューブ要素132及び133を形成することである。そして、保護解除された端部を有するナノチューブは、溶液134内で混合される。該溶液は、水素結合を崩壊するのに十分な温度で、しかしながら如何なる共有結合も変性させるほどではない温度から始まって、水素結合が高度に安定する状態135の温度に至るまで、ゆっくりアニール化され得る。次に、試薬が加えられることにより、閉鎖136を確実にし、その結果、例えばパラジウム触媒を使って脱水素が行われる。そして該溶液は精製され、ダイオード生成物を、残留した未結合の断片及び環閉鎖試薬から分離することが可能である。
【0055】
次に図25では、ナノチューブ要素の長さを増加させる方法が図示されている。まず、ナノチューブ断片140の量から始めて、半分の断片によって、B端部が保護解除141され、他の半分の断片によって、A端部が保護解除される142。2つの半分は混合され143、水素結合を崩壊するのに十分な室温で、しかしながら如何なる共有結合も変性させるほどではない温度から始まって、水素結合が高度に安定145する温度に至るまで、ゆっくりアニール化される。次に、試薬が加えられることにより、リング閉鎖が生じ、その後、脱水素が行われる。
【0056】
次に図26では、ナノチューブ断片の長さを延長するプロセスが図示されている。まず、空いた水素結合端部を備え、両端部が保護されたナノチューブ断片150の量からの開始であった。半分の断片について、端部Bが保護解除151され、他の半分の断片について、端部Aが保護解除される152。2つの半分は混合され153、水素結合を崩壊するのに十分な温度で、しかしながら如何なる共有結合も変性させるほどではない温度から始まって、水素結合が高度に安定155する温度に至るまで、ゆっくりアニール化154される。次に、試薬が加えられることにより、リング閉鎖156が生じる。
【0057】
図27では、ナノチューブ断片の長さを延長するプロセスが図示されている。このプロセスでは、2つのナノチューブ断片161及び162が保護解除されて164,165、互いに混合される166。この混合物はゆっくりアニール化され167、試薬が加えられ168、リング閉鎖が起こされ、その結果169、最善の脱水素及び精製となる。上述したプロセスは、ナノチューブ型要素による任意の三次元メッシュを構築するのに利用可能である。次いで図28では、キャップされた端部をもつナノチューブ・ロッドの合成プロセスが図示されている。
【0058】
はじめに、ナノチューブ断片170の量が、相補的な水素結合端部及び両側部が保護された形で利用される。断片170の半分は保護解除された第1の端部171を有しており、断片の他の半分は保護解除された第2の端部を有している。キャッピングユニット173,174は、始めのナノチューブ・セグメント合成、対応する混合173,174、アニール化された混合と類似の方法を使用して合成可能である。次の閉鎖175,176では通常の方法で処理される。そして、図28で説明されたプロセスにより形成されたロッドは、対応する「ボール」に合わせられ、全体的なマトリクスが形成される。「ボール」及びロッドの一形成形態を図29に基づいて説明する。続けて、他端が保護解除等177,178行われ、2つの混合物が互いに加えられアニール化179されて、緩く結合した構造179を形成する。そしてこの構造は閉鎖され、脱水素180される。
【0059】
次に図29では、マトリクス形成時の要素構築の一方法における処理ステップを示している。第1のステップは、水素結合部を、バキボールの12個の5部分リングそれぞれに引き寄せることにより、バキボール(buckyball)182を機能化181させることである。そして、ナノチューブ要素(図28の180)は機能化されたバキボール181と混合される。バキボールの濃度は、ナノチューブの倍の濃度よりもさらに大きくなければならず、これにより1つ以上のロッドが単一のバキボールに付着することを最小限におえる。水素結合は完了183され、試薬が加えられて水素結合を共有結合184に変更する。最後に、ロッドが精製185され、1つ以上のロッドを含む分子を排除する。これと共に、個々の残留バキボール及び結合試薬を排除する。
【0060】
次に図30に示すように、ナノチューブ180の混合及び、端部185において共有結合され機能化されたバキボールを有するナノチューブが設けられている。好ましくは、混合比率において正確に8.33%のナノチューブ120が設けられる。ナノチューブ・ロッドの希釈溶液が、バキボール終端をもたない11/12のロッドと、両端部にバキボール終端を有する残りのロッドの形で用意される。溶液の量は、好ましくは、所望する拡大されたナノチューブ・メッシュの量よりも多い。そしてナノチューブ・メッシュは非常にゆっくりとアニール化され、図31に示すようにメッシュ187を形成する。バキボールとの間の水素結合相互作用は、マトリクス187が自己形成できるほどに強力でなければならない。ゆっくりとしたアニール化により水素結合エネルギーがより小さくて済む。アニール化の後、試薬が加えられ、水素結合を共有結合に転換する。最後に前記溶液が排水され、構造187が不活性ガスで満たされる。
【0061】
図29で示した、バキボールハブ181要素に代るハブ要素を利用して異なるメッシュが形成されてもよい。代りの構成は、図32に示すようにハブ断片の合成から開始される。ハブ断片190は、有機合成技術を利用して合成され得る。断片は、PAHの2つの側部の水素結合部の相補的なパターンにより機能化され得る。
【0062】
第3側部上には水素結合部のパターンがあり、これは相溶性のナノチューブ断片の1つの端部上で使用されるものと相補的である。これはBで保護されているのが示されている。4番目の側部は、水素結合部の循環の自己相補的パターンを有している。これらは直交した保護基Aにより保護されている。そして要素191の溶液は、水素結合を崩壊するのに十分な温度で、しかしながら如何なる共有結合も変性させるほどではない温度に加熱される。該温度は水素結合が高度に安定する温度にゆっくりと下げられる。この結果、断片192が形成される。そして試薬が加えられることにより、最終的なハブ断片193が形成される。
【0063】
そして、図33に示すように、ハブ断片がハブユニットに形成される。ハブユニット204は12個のハブ断片193から構築される。第1ステップ200は、多くのハブ断片の反応しやすい要素を保護解除し、これらを溶液201に加えることである。この溶液は、水素結合を崩壊するのに十分な温度で、しかしながら如何なる共有結合も変性させるほどではない温度に加熱される。断片はアニール化され、表面に均一に分散された断片により12のハブ断片がクラスタを形成する。類型的結合203が、同じく設けられている単一ハブの「立体図」204と共に図示されている。試薬が加えられることにより、リングの閉鎖が生じ、精製により任意の脱水素が実行される。
【0064】
別の合成方法では、機能化されたC60バキボールを、球状に群がった形のハブ形成体の内部に残して、ハブ形成に対する「ガイド」として使用してもよい。
【0065】
次いで、図34に示されたプロセスにより「ダンベル」ユニットが形成可能である。該ダンベルユニットは合成されたハブ204及び両端ロッド210の混合物を提供することにより、上記合成体を利用することにより形成される。ハブ及びロッドそれぞれの端部は保護解除される210,212。ハブ及びロッドの混合体が設けられ、このハブのモル濃度は、ロッドのモル濃度の2倍よりもかなり大きい。これにより、2つのロッドが同一のハブに結合する可能性を最小限にする。続いて、試薬が加えられることにより、リングを閉鎖させ、精製により任意の脱水素が実行される。これにより、精製されたダンベルユニット213の集合が提供される。
【0066】
次に図35では、ここには低密度高強度ナノチューブ結晶の合成において必要なステップが示されている。このナノチューブ結晶は、ダンベル要素213(図34)と保護解除221されてダブルユニット213と共に溶液に加えられた一連の両端ロッド220から合成可能である。ダンベル及びロッドの混合では、11個のロッドの各ダンベルに対するモル比率が正確に制御される。チョクラルスキの結晶成長(Czochralski crystal growing)に類似したプロセスにより、ナノチューブ格子の表面中央向けの立方体結晶が形成されてもよい。この場合、ナノチューブダンベル及びロッドは、チョクラルスキの結晶成長における原子に類似している。ナノチューブ溶液は、水素結合分離温度よりやや高い温度まで加熱される。種結晶がこの溶液中に落とされ、ゆっくりと取り出される。結晶を引き出すプロセスにおいて温度が融点に下降すると、ナノチューブは該種上で結晶化される。好ましくは前記種は回転されるので、互いに直交した方向のナノチューブが「溶解液」中において真っ先に消耗してしまうことはない。結晶が引き出されるにつれ、格子が溶媒から抽出される。別の例において、初期の種は、平らな表面を、スポットを結晶格子と同一ピッチに引き寄せるダンベルでパターニングすることにより生成できる。
【0067】
結晶が引き抜かれた後、これは、環閉鎖試薬と脱水素触媒を含むクリーンな溶媒中に落とされる。全ての水素結合は共有結合に置換されており、脱水素されているので、該構造は完全に芳香族で、完全な強度を達成する。最終構造は225に図示されている。
【0068】
本発明の思想及び範囲の中において、大型メッシュ構造の構築における上述した説明が、多様にかつ簡単に変更され得ることが明白である。
【0069】
例えば、所望の電気装置を有したマトリクス構造が、電気的要素を形成し、混合及びアニール化プロセスの所定のポイントで該要素を代替することにより、構築可能である。更に、アニール化プロセスも、他の複合結合構造の生成において利用可能であることが明白である。
【0070】
更に、構造形成において利用されたナノチューブ・ロッド要素は、多くの精製を包含可能である。特に、溶液におけるファンデルワールス引力の相互作用により、ナノチューブ要素それ自体は、要素間で高度の引力を呈するかもしれない。このような状態は図36に示されており、ナノチューブ断片230及び231が高い引力を呈することで、ナノチューブ要素がからみ合った部分が形成される。
【0071】
ファンデルワールス引力の効果の低減の一形態が図37に示されている。ここではナノチューブの外壁においてメタンのグループ235,236等が形成される。これによりチューブ237,238間におけるファンデルワールス引力が生じる機会の低減がなされる。
【0072】
広く説明される本発明の思想及び範囲から逸脱することなく、多くのバリエーション及び/又は変更が、実施形態で示されたような本発明に対してなされ得ることは、当業者により想到することができる。それゆえ本実施形態は、全ての点において例示的であって、限定的なものではない。


【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】

【図9】

【図10】

【図11】

【図12】

【図13】

【図14】

【図15】

【図16】

【図17】

【図18】

【図19】

【図20】

【図21】

【図22】

【図23】

【図24】

【図25】

【図26】

【図27】

【図28】

【図29】

【図30】

【図31】

【図32】

【図33】

【図34】

【図35】

【図36】

【図37】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
四面体又は立方体のナノチューブ結合が相互結合されたマトリクスにより構成されるナノチューブ構造体。
【請求項2】
前記相互結合はナノチューブの筋交い部により構成される請求項1記載のナノチューブ構造体。
【請求項3】
フラレーン相互結合要素と相互結合された1連のナノチューブにより構成されるナノチューブ構造体。
【請求項4】
バキボール(buckyball)又はその他のハブ要素に相互結合されたナノチューブ要素を構築する方法。
【請求項5】
多重のナノチューブ要素を相互結合させるためのハブ要素を構築する方法。
【請求項6】
低密度ナノチューブ結晶を構築する方法。
【請求項7】
アームチェア型の2つのナノチューブ間に相互結合された、所定長さのジグザグ型の中央ナノチューブにより構成された、
制御された抵抗特性を有する電気装置。
【請求項8】
アームチェア型の2つのナノチューブ間に相互結合されたジグザグ型の中央ナノチューブと、
前記中央ナノチューブに電場を作用させ、これにより前記アームチェア型ナノチューブ間の導電経路を変更するための電場作用手段と、により構成された、信号増幅特性を有する電気装置。
【請求項9】
アームチェア型の2つのナノチューブ間に相互結合されたジグザグ型の中央ナノチューブと、
前記中央ナノチューブに相互結合されたジグザグ型の制御ナノチューブとを有し、該制御ナノチューブには、前記中央ナノチューブに電圧を作用させるための電場作用手段が相互結合され、これにより前記アームチェア型ナノチューブ間の導電経路を変更することを特徴とする、信号増幅特性を有する電気装置。
【請求項10】
共有結合部で相互結合された1連のナノチューブを有し、前記結合部において、前記ナノチューブは、ジグザグのナノチューブを有し、所定数の前記ナノチューブは、アームチェア型ナノチューブに対する周囲結合部を有し、これにより電気装置の操作特性を提供する電気装置。
【請求項11】
少なくとも1つの前記アームチェア型ナノチューブが、更にアームチェア型ナノチューブの共有結合部に相互結合されている、請求項10記載の電気装置。
【請求項12】
共有結合部で相互結合された1連のナノチューブを備え、前記結合部において、前記ナノチューブは、ジグザグのナノチューブを有し、所定数の前記ナノチューブは、アームチェア型ナノチューブに対する周囲結合部を有し、これにより電気装置の操作特性を提供して構成した電気装置。
【請求項13】
共有結合部で結合された1連のアームチェア型ナノチューブを備えて構成した電気装置。
【請求項14】
共有結合によるナノチューブ装置のラビリンスの相互結合を備え、前記装置は、異なる大きさのナノチューブの相互結合により形成された1連のダイオード要素を有して構成した電気装置。
【請求項15】
半導体ナノチューブに取付けられた1連の金属型ナノチューブ構造体の結合部を有し、電子が実質的に前記結合部に捕捉される量子井戸状構造体を備えて構成した電気装置。
【請求項16】
ナノチューブ結合部を有する衝撃電子ナノチューブ装置を備え、該衝撃電子ナノチューブ装置は前記結合部に隣接した少なくとも1つの量子井戸状構造体を有する電気装置。
【請求項17】
実質的に上述したようなナノチューブ断片を形成するための前駆合成要素を構築する方法。

【公開番号】特開2010−100520(P2010−100520A)
【公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2009−275458(P2009−275458)
【出願日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【分割の表示】特願2000−537800(P2000−537800)の分割
【原出願日】平成11年3月24日(1999.3.24)
【出願人】(500142213)シルバーブルック リサーチ プロプライエタリイ、リミテッド (27)
【氏名又は名称原語表記】SILVERBROOK RESEARCH PTY.LIMITED
【Fターム(参考)】