説明

ナノチューブ支援自己清浄材料

【課題】光への露出に応答する自己清浄材料を提供する。
【解決手段】概して、第1の表面を有する基材を含み得る自己清浄材料が説明される。整列されたナノチューブ構造の自己清浄層は、基材の第1の表面上に形成されてもよく、ナノチューブ構造による光の吸収は、光の入射角度及び整列されたナノチューブ構造の層に対応する配向ベクトルに基づいて、自己清浄材料の状態の変化をもたらし得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、その開示全体が参照により本明細書に組込まれる、2009年5月14日に出願され、「Nanotube Assisted Self−cleaning Material」という名称の米国特許出願第12/465,717号の利益を主張する。
【0002】
本出願は、2009年5月14日に出願され、「Diffraction Grating Assisted Self−cleaning Material」という名称の米国特許出願第12/465,711号に関連する。
【0003】
本開示は、自己清浄材料に関し、より具体的には、整列されたナノチューブの自己清浄層を利用する材料に関する。
【背景技術】
【0004】
自己清浄材料は、長期間にわたって製品及び表面を清浄に維持するのに効果的である。自己清浄材料は、建築エクステリア、バスルーム、窓、及び種々の表面用のコーティングを含むいくつかの用途のために益々利用されている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示は、光への露出に応答する自己清浄材料を説明する。一部の例示的な自己清浄材料は、第1の表面を有する基材、及び/又は、基材の第1の表面上に形成された整列されたナノチューブ構造の自己清浄層を含み得る。自己清浄材料が、基材の第1の表面に対する光の入射角度に少なくとも部分的に基づいて光への露出に応答して状態を変化させるよう、ナノチューブ構造は、配向ベクトルに従って整列されている。
【0006】
本開示は、光への露出に応答する自己清浄材料を説明する。一部の例示的な自己清浄材料は、第1の表面及び第2の表面を有する基材、基材の第1の表面上に形成された整列されたナノチューブ構造の第1の自己清浄層、及び/又は、基材の第2の表面上に形成された整列されたナノチューブ構造の第2の自己清浄層を含み得る。第1の自己清浄層のナノチューブ構造は、第1の配向ベクトルに従って整列され、第1の自己清浄層が第1の配向ベクトルに少なくとも部分的に基づいて光への露出に応答して状態を変化させるように配列されている。第2の自己清浄層のナノチューブ構造は、第2の配向ベクトルに従って整列され、第2の自己清浄層が第2の配向ベクトルに少なくとも部分的に基づいて光への露出に応答して状態を変化させるように配列されている。
【0007】
本開示は、光への露出に応答する自己清浄材料を説明する。一部の例示的な自己清浄材料は、ガラス基材の第1の表面上に形成された整列された二酸化チタンナノチューブ構造の自己清浄層を含み得る。自己清浄層の二酸化チタンナノチューブ構造は、自己清浄層の二酸化チタンナノチューブ構造による光の吸収が、ガラス基材の第1の表面に対する光の第1の入射角度に少なくとも部分的に基づいて、整列された二酸化チタンナノチューブ構造の自己清浄層の光誘起親水性状態を誘発するように配向ベクトルに従って整列されている。
【0008】
先の要約は、例証的であるだけであり、決して限定的であることを意図されない。上述した例証的な態様、実施形態、及び特徴に加えて、さらなる態様、実施形態、及び特徴が、図面及び以下の詳細な説明を参照して明らかになる。
【0009】
以下の詳細な説明は、本開示の複数の実施形態の1つ又は複数がそこに示される添付の図面と共に理解される、以下の説明及び添付の特許請求の範囲と共に読まれると、よりよく理解されるであろう。しかしながら、本開示の種々の実施形態は、図面に示された具体的な構成及び手段(instrumentality)に限定されないことが理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】例示的な自己清浄材料を示す断面図である。
【図2】シード層を有する例示的な自己清浄材料を示す断面図である。
【図3】入射光の例を示す例示的な自己清浄材料を示す拡大断面図である。
【図4】ほぼ垂直の入射暴露についての配向ベクトルを有する例示的な自己清浄材料を示す断面図である。
【図5】グランシング(glancing)入射暴露についての配向ベクトルを有する例示的な自己清浄材料を示す断面図である。
【図6】基材の複数の表面が自己清浄層を含む例示的な自己清浄材料を示す断面図である。
【図7】基材の複数の表面が、異なる配向ベクトルを有する自己清浄層を含み、全ての自己清浄層が本開示の少なくとも一部の実施形態に従って配列される例示的な自己清浄材料を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下の詳細な説明では、詳細な説明の一部を形成する添付の図面が参照される。図面では、同様の符合は、文脈が別途指示しない限り、通常、同様の構成要素を特定する。詳細な説明、図面、及び特許請求の範囲に記載される例証的な実施形態は、限定的であることを意味されない。本明細書で提示される主題の趣旨又は範囲から逸脱することなく、他の実施形態が使用されてもよく、また、他の変更が行われてもよい。本明細書で一般的に述べられ、図に示される本開示の態様は、様々な異なる構成で配列され、置換され、結合され、設計され、それら全てが明示的に想定され、本開示の一部を構成していることが、容易に理解されるであろう。
【0012】
簡潔に説明すると、本開示の複数の実施形態は、第1の表面を有する基材を含む自己清浄材料を含む。整列されたナノチューブ構造の自己清浄層は、基材の第1の表面上に形成されてもよく、ナノチューブ構造による光の吸収は、整列されたナノチューブ構造の層に対応する配向ベクトルに基づいて自己清浄材料の状態の変化をもたらし得る。
【0013】
基材上にナノチューブの層を含む自己清浄材料が開示される。図1は、本開示の少なくとも一部の実施形態に従って配列された、例示的な自己清浄材料10を示す断面図である。自己清浄材料10は、基材100及びナノチューブ105の自己清浄層110を含む。ナノチューブ105は、以下でさらに詳細に論じるように、基材100の表面上に堆積されてもよく又は表面上で成長されてもよい。ナノチューブ105は、適切な波長の光に暴露されると、あるタイプの自己清浄特性を示す材料を使用して形成されてもよい。すなわち、ナノチューブ105は、一般にたとえば、自己清浄層110に入射する適切な波長の光に対応する光子の吸収のために、光触媒性、光誘起親水性、又は光誘起疎水性特性を示してもよい。たとえば、二酸化チタン(TiO2)などの一部の自己清浄材料の自己清浄特性は、紫外スペクトル領域内の光に応答して増大されるか、あるいは活性化され、一方、ニッケルドープタンタル酸インジウム(In(1-x)NixTaO4)などの他の自己清浄材料は、可視スペクトル領域内の光に応答してもよい。自己清浄層110の光触媒性、光誘起親水性、又は光誘起疎水性自己清浄特性の活性化又は増大はまた、自己清浄層110の状態の変化と呼ばれてもよい。状態の変化はまた、自己清浄特性の1つの特性から異なる自己清浄特性へ切り換えることを含み得る。光への露出、及びその結果生じる光の吸収はまた、ナノチューブ105に、これらの特性の2つ以上を示させ得る。たとえば、ナノチューブ105は、本開示に照らして理解されるように、光触媒性になると共に親水性になってもよい。一部の実施形態では、ナノチューブ105は、ナノチューブ105による光吸収を増大させるように基材100の表面に対して配向してもよく、これによって、自己清浄特性を増大させるか、あるいは活性化してもよい。一部の実施形態では、ナノチューブ105は、互いに対して実質的に平行であり得る。基材100の表面に関するナノチューブ105の配向は、以下でより詳細に述べられる、配向ベクトル(図1に示されない)を使用して述べられてもよい。
【0014】
本開示では、自己清浄材料10は、組み合わされた、基材100の構造及びナノチューブ105の自己清浄層110を含み得る。基材100のみが必ずしも清浄特性を示すわけではないが、便宜上、本明細書で自己清浄と呼ばれる特定の基材100は、自己清浄層110と結合されていると理解され、結合した構造が自己清浄特性を示す。たとえば、TiO2ナノチューブの層を有するガラス基材は、本明細書で単に自己清浄ガラスと呼ばれてもよい。一部の実施形態では、ナノチューブ105の自己清浄層110が存在しない基材100は、ある状況下で、自己清浄特性を示し得る。(すなわち、基材は、それ自身、自己清浄材料であり得る)。ナノチューブ105の自己清浄層110は、基材100の自己清浄特性を増大させるか又は変化させるために使用される。
【0015】
基材100は、自己清浄特性がそれについて所望される任意の基礎材料であってよい。基材の一部の例は、ガラス、セラミック、金属、複合物、又は他の建築材料を含む。ナノチューブ105は、二酸化チタン(TiO2又はチタニアとしても知られる)又はニッケルドープタンタル酸インジウム(In(1-x)NixTaO4)などの当技術分野で一般に知られている自己清浄特性を示す任意の材料であってよい。化学気相堆積(CVD)及びプリカーソルテンプレーティング(pre-cursor templating)などのナノチューブ形成法が利用されてもよいが、その詳細な説明は、便宜だけのためにここでは省略されており、限定的であると解釈されるべきでない。さらに、ラングミュアブロジェット(Langmuir-Blodgett)堆積、自己組立てプロセス、及び電磁場内でのスパッタリングなどの、表面上にナノチューブの整列された層を堆積させる技法もまた、便宜だけのためにここでは省略されており、限定的であると考えられるべきでない。一部の実施形態では、ナノチューブ105は、一般に、単一壁の整列された構造であってよいが、本明細書で説明する自己清浄材料10は、こうした配置構成に限定されない。ナノチューブ105の自己清浄層110は、基材100に対して透明であってよく、また、ナノチューブ105の自己清浄層110が基材100に対して大部分が識別不可能であるように基材100の輪郭に一致してもよい。さらに、基材100は、基材の1つ又は複数の表面上にナノチューブの自己清浄層を含み得る。
【0016】
本開示の実施形態では、自己清浄材料10は、制御された環境、あるいは制御されていない環境で使用されてもよい。制御された環境は、一般に、環境パラメータが制御され安定化される空間(たとえば、室内又はその他の閉囲エリア)を指してもよく、また一般に、天候又は他の揮発性条件に対する暴露がなくてもよい。環境パラメータは、温度、湿度、及び照明を含み得るが、それに限定されない。対照的に、制御されていない環境は、一般に、環境パラメータが容易に制御されず(たとえば、室外)、表面が天候条件に暴露され得る空間を指してもよい。一部の実施形態では、自己清浄材料10の1つの表面は、制御された環境に暴露されてもよく、また、自己清浄材料10の別の表面は、制御されていない環境に暴露されてもよい。一例は、窓の1つの表面が外側表面であり、窓の他の表面が内側表面であり得る自己清浄窓(図示せず)である。
【0017】
入射光、又は単に光は、自己清浄材料10の表面上に衝当する(impinge)電磁スペクトルの可視、紫外、及び赤外領域内の電磁放射を指してもよい。光に対する表面の暴露はまた、本明細書で、問題の表面を照明すること又は問題の表面の照明と呼ばれてもよい。表面の照明特性は、入射光の入射角度、入射光の輝度、入射光の波長分布、及び/又は、波長の関数としての強度分布の1つ又は複数を含み得る。
【0018】
入射光の入射角度は、自己清浄材料の表面の垂直な(すなわち、直角の)軸から測定されてもよい。ゼロの入射角度(すなわち、直角入射)は、入射光が、自己清浄材料10の表面上で表面に実質的に垂直に衝当する照明条件を指してもよい。グランシング入射は、入射角度が90°に(すなわち、自己清浄材料の表面にほぼ平行に)近づく自己清浄材料の照明を指してもよい。自己清浄材料上に衝当する光が、厳密にコリメーションされていないか又は共線状でないため、入射角度は、表面を照明する光の最大総輝度を有する角度を指してもよい。たとえば、直射日光による表面の照明は、他の物体からの表面上に散乱した太陽光よりも高い総輝度を有する傾向があり、したがって、入射角度は、太陽からの入射光を使用して測定されてもよい。
【0019】
本開示の観点から、自己清浄材料10の表面の照明(暴露とも呼ばれる)は、環境に依存し得ることが明らかである。室外などの制御されていない環境では、照明特性は、時刻、季節、近接する自然のまた人工の物体、及び緯度に応じて、可変であり得る。その理由は、地球の表面に達する太陽からの電磁放射が、これらの変数の1つ又は複数に依存し得るからである。逆に、一定照明を有する内部空間などの制御された環境では、照明特性は、一般に、照明器具のタイプ及び配置に依存し得るが、照明をオン/オフすること、調光器を使用すること、又は電球のタイプ又はワット数を変更することなど以外の変動がほとんどない。
【0020】
図2は、本開示の少なくとも一部の実施形態に従って配列された、シード層120を含む例示的な自己清浄材料12を示す断面図である。一部の実施形態では、シード層120は、ナノチューブ105が成長する前に、基材100上に堆積される。シード層120は、自己清浄層110を形成するナノチューブ105の成長のためのテンプレートとして働く薄フィルムである。基材100上への整列されたナノチューブ構造105の層110の成長は、当技術分野でよく知られており、その詳細な説明は、便宜だけのためにここでは省略されており、限定的であると考えられるべきでない。
【0021】
図3は、本開示の少なくとも一部の実施形態に従って配列された、入射光の例を示す例示的な自己清浄材料10の拡大断面図である。図1の例と同様に、自己清浄材料10は、基材100及びナノチューブ105の層を含み得る。ナノチューブ105は、基材100の表面320上で、表面320に対して配向角度20で配設されてもよい(便宜だけのために、単一ナノチューブ105が図3に示される)。配向ベクトル310は、整列されたナノチューブ105の側壁107に実質的に平行な軸(図示せず)に沿って規定されてもよい。配向角度20は、基材100の表面320に直角な軸330と配向ベクトル310によって形成される角度であってよい。(軸330に対して測定された)入射角度30を有する、ナノチューブ105上に入射する光130は、ナノチューブ105によって吸収されて、自己清浄層110の自己清浄特性を活性化し得る(図1参照)。一部の実施形態では、自己清浄層110の自己清浄特性は、入射角度30が配向角度20に近づくにつれて(すなわち、入射光130が配向ベクトル310によりほぼ平行になるにつれて)増大し得る。一部の実施形態では、入射角度20が配向角度30に一致(match)しない場合、ナノチューブ105による入射光130の吸収は、自己清浄材料10の光誘起自己清浄特性を活性化するのに不十分であり得る。
【0022】
図4は、本開示の少なくとも一部の実施形態に従って配列された、光のほぼ直角の入射暴露130について選択された配向ベクトル310を有する例示的な自己清浄材料10を示す断面図である。配向ベクトル310は、図3に関して上述したように、基材10の表面320に対するナノチューブ105の配向に対応してもよい。入射光130が表面320に垂直(すなわち、直角入射)である、又は、表面320にほぼ垂直(すなわち、低い入射角度)であり得る照明条件の場合、自己清浄層110の自己清浄特性は、配向ベクトル310が表面320に垂直であるか又はほぼ垂直(すなわち、低い配向角度)であり、配向ベクトル310が入射光130にほぼ平行であるときに増大され得る。たとえば、自己清浄セラミックタイルは、床又は他の水平表面などの上で水平配向で使用されてもよい。室外の太陽又は室内の天井照明器具などの光源の場合、タイルの表面を照明する光の入射角度は、表面にほぼ直角であり得る。そのため、小さな配向角度20を有するナノチューブ105用の配向ベクトル310を有する自己清浄材料10(図3参照)は、効率的な自己清浄特性を提供し得る。
【0023】
図5は、本開示の少なくとも一部の実施形態に従って配列された、光のグランシング入射暴露130について選択された配向ベクトル310を有する例示的な自己清浄材料10を示す断面図である。配向ベクトル310は、図3に関して上述したように、基材10の表面320に対するナノチューブ105の配向に対応する。入射光130が表面320に実質的に平行(すなわち、グランシング入射又は高い入射角度)であり得る照明条件の場合、清浄層110の自己清浄特性は、配向ベクトル310が表面320にほぼ平行(すなわち、大きな配向角度20)であり、配向ベクトル310が入射光130にほぼ平行であるときに増大され得る。たとえば、図4の例に関して先に述べたのと同じ照明条件下で壁上に搭載されるような垂直配向で使用される自己清浄セラミックタイルの場合、表面を照明する光の入射角度30(図3参照)は、大きく、さらにグランシング入射に近づき得る。そのため、大きな配向角度20を有するナノチューブ105用の配向ベクトル310を有する自己清浄材料10は、垂直配向の自己清浄セラミックタイルについて効率的な自己清浄特性を提供し得る。
【0024】
図6は、本開示の少なくとも一部の実施形態による、基材100の複数の表面520、530がそれぞれ自己清浄層110、510を含む例示的な自己清浄材料10を示す断面図である。自己清浄層110は、基材100の第1の表面520上に形成されたナノチューブ105を含み得る。自己清浄層510は、基材100の第2の表面530上に形成されたナノチューブ505を含み得る。図6において基材100に平行であるか、対向する面上にあるとする表面520、530の説明は、限定的であるとして考えられるべきではない。たとえば、立方体基材(図示せず)の場合、立方体の2つの隣接表面が自己清浄層を有してもよい(たとえば、角の建築材料のブロックが、2つの隣接エクステリア面を有する)。同様に、一部の実施形態は、基材の3つ以上の表面が自己清浄層を有してもよい自己清浄材料10を含み得る。
【0025】
やはり図6を参照して、自己清浄層110、510のナノチューブ105、505は同じ材料であってよく、又は別法として、自己清浄層110のナノチューブ105は、自己清浄層510のナノチューブ505と異なる材料であってよい。一部の実施形態では、ナノチューブ105、505は、自己清浄材料10の各表面520、530について所望される環境のタイプ、あるいは自己清浄特性に基づいて選択されてもよい。たとえば、自己清浄材料10の1つの表面は、制御された環境に暴露されてもよく、一方、自己清浄材料の別の表面は、制御されていない環境に暴露されてもよい。制御された環境では、制御された環境の表面を殺菌するために使用される光触媒特性が重要であり得る。一方、制御されていない環境では、表面を汚れないようにするために親水特性がより重要であり得る。
【0026】
図7は、本開示の少なくとも一部の実施形態による、基材100の複数の表面630、640がそれぞれ異なる配向ベクトル615、620を有する自己清浄層110、610を含む例示的な自己清浄材料10を示す断面図である。自己清浄層110は、第1の配向ベクトル615を有する基材100の第1の表面630上に形成されたナノチューブ105を含む。自己清浄層610は、第2の配向ベクトル620を有する基材100の第2の表面640上に形成されたナノチューブ605を含み得る。図6に関して先に論じたように、図7において基材100に平行であるか、対向する面上にあるとする表面630、640の説明は、限定的であるとして考えられるべきではない。同様に、一部の実施形態は、基材の3つ以上の表面が自己清浄層を有してもよい自己清浄材料10を含み得る。
【0027】
やはり図7を参照して、自己清浄層110、610のナノチューブ105、605は同じ材料であってよく、又は別法として、自己清浄層110のナノチューブ105は、自己清浄層610のナノチューブ605と異なる材料であってよい。配向ベクトル615、620は、それぞれの表面630、640の予想されるか、あるいは最も可能性が高い照明条件に基づいて選択されてもよい。そのため、図7の実施形態では、たとえば、第1の配向ベクトル615に関連する配向角度20(図3参照)は、第2の配向ベクトル620に関連する配向角度20より著しく大きい可能性がある。図7では、自己清浄材料10の第2の表面640は、最も典型的には、直角入射の光130で照明される可能性があり、したがって、小さい配向角度20を有する配向ベクトル620が使用される。対照的に、自己清浄材料10の第1の表面630の場合、最も典型的な照明は、グランシング入射であってよく、大きな配向角度を有する配向ベクトル615が使用されてもよい。たとえば、垂直配向で使用される自己清浄材料(たとえば、窓で使用される自己清浄ガラス)の場合、太陽による窓の外側表面の直接照明が、グランシング照明(非常に大きな入射角度)と考えられてもよく、一方、内部照明器具による窓の内側の照明は、ずっと小さな入射角度を有し得る。
【0028】
本明細書で説明する主題は、異なる他のコンポーネント内に含まれるか又は異なる他のコンポーネントに接続された異なるコンポーネントを示すことがある。このように示されたアーキテクチャは、例示に過ぎないこと、及び、実際には、同じ機能を達成する他の多くのアーキテクチャが実装されうることが理解されるべきである。概念的な意味で、同じ機能を達成するためのコンポーネントの任意の配置構成が、所望の機能が達成されるように、効果的に「関連付けされる(associated)」。したがって、特定の機能を達成するために本明細書で組合される任意の2つのコンポーネントは、アーキテクチャ又は中間コンポーネントによらずに所望の機能が達成されるように、互いに「関連付けされている(associated with)」と見なされうる。同様に、そのように関連付けられた任意の2つのコンポーネントは、所望の機能を達成するために、互いに「動作可能に接続(operably connected)」又は「動作可能に結合(operably coupled)」されていると見なされ、そのように関連付けられることが可能な任意の2つのコンポーネントは、所望の機能を達成するために、互いに「動作可能に結合可能である(operably couplable)」と見なされうる。動作可能に結合可能の特定の例は、物理的に係合可能なかつ/又は物理的に相互作用するコンポーネント、及び/又は、無線で相互作用可能なかつ/又は無線で相互作用するコンポーネント、及び/又は、論理的に相互作用するかつ/又は論理的に相互作用可能なコンポーネントを含むが、それに限定されない。
【0029】
本明細書の実質的に任意の複数の用語及び/又は単数の用語の使用に関して、当業者は、文脈及び/又は用途にとって適切であるように、複数から単数へ、かつ/又は、単数から複数へ変換しうる。種々の単数/複数置換が、明確にするために本明細書で明示的に述べられてもよい。
【0030】
概して、本明細書で、特に添付の特許請求の範囲(添付の特許請求の範囲の本体部分)で使用される用語は、一般に、「オープンな(open)」用語として意図されることが当業者によって理解されるであろう(たとえば、用語「含む(including)」は、「限定はしないが含む(including but not limited to)」として解釈されるべきであり、用語「有する(having)」は、「少なくとも有する(having at least)」として解釈されるべきであり、用語「含む(includes)」は、「限定はしないが含む(includes but is not limited to)」として解釈されるべきであるなどである)。特定の数の導入される特許請求項の記載が意図される場合、こうした意図は、特許請求項に明示的に記載されることになり、こうした記載がない場合、こうした意図は存在しないことが当業者によってさらに理解されるであろう。たとえば、理解の助けとして、添付の特許請求の範囲は、特許請求項の記載を導入するために、導入的な句「少なくとも1つ(at least one )」及び「1つ又は複数(one or more)」の使用を含み得る。しかし、こうした句の使用は、不定冠詞「ある(a)」又は「ある(an)」による特許請求項の記載の導入が、導入されるこうした特許請求項の記載を含む任意の特定の特許請求項を、同じ特許請求項が導入的句「1つ又は複数(one or more)」又は「少なくとも1つ(at least one )」及び「ある(a)」又は「ある(an)」(たとえば、「ある(a)」及び/又は「ある(an)」は、通常、「少なくとも1つ(at least one )」又は「1つ又は複数(one or more)」を意味すると解釈されるべきである)などの不定冠詞を含むときでも、1つだけのこうした記載を含む発明に限定することを意味すると解釈されるべきでない。同じことが、特許請求項の記載を導入するために使用される定冠詞の使用についても当てはまる。さらに、たとえ特定の数の導入される特許請求項の記載が明示的に記載されても、こうした記載が、通常、少なくとも記載される数を意味すると解釈されるべきであることを当業者は認識するであろう(たとえば、他の修飾語なしの「2つの記載(two recitations)」のそれだけでの(bare)記載は、通常、少なくとも2つの記載又は2つ以上の記載を意味する)。さらに、「A、B、及びCなどの少なくとも1つ(at least one of A, B, and C,etc)」に類似する慣例が使用される事例では、概して、こうした構文(construction)は、当業者がその慣例を理解することになるという意味で意図される(たとえば、「A、B、及びCの少なくとも1つを有するシステム(a system having at least one of A, B, and C)」は、Aだけを、Bだけを、Cだけを、AとBを共に、AとCを共に、BとCを共に、かつ/又は、A、B、及びCとを全て有するシステムを含むが、それに限定されないことになる)。2つ以上の代替の用語を提示する実質的に任意の離接的単語及び/又は句は、説明においてであっても、特許請求の範囲においてであっても、又は図面においてであっても、用語の一方、用語のいずれか、又は両方の用語を含む可能性を想定するように理解されるべきであることが当業者によってさらに理解されるであろう。たとえば、句「A又はB(A or B)」は、「A」又は「B」又は「A及びB」の可能性を含むと理解されることになる。
【0031】
種々の態様及び実施形態が本明細書で述べられたが、他の態様及び実施形態が当業者に明らかになるであろう。本明細書で開示される種々の態様及び実施形態は、例証のためであり、限定的であることを意図されず、真の範囲及び趣旨は、添付の特許請求の範囲によって指示される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光への露出に応答する自己清浄材料であって、
第1の表面を有する基材と、
前記基材の前記第1の表面上に形成された整列されたナノチューブ構造の自己清浄層と、を備え、
前記ナノチューブ構造は、前記基材の前記第1の表面に対する光の入射角度に少なくとも部分的に基づいて、自己清浄材料が光への露出に応答して状態を変化させるように、配向ベクトルに従って整列されている、自己清浄材料。
【請求項2】
前記自己清浄層の前記ナノチューブ構造が、互いに対して実質的に平行な整列状態で配列されている請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記自己清浄層が、光の入射角度が前記配向ベクトルと平行になるにつれて、前記整列されたナノチューブ構造の自己清浄層による光の吸収が増加するように、さらに配列されている請求項1に記載の自己清浄材料。
【請求項4】
前記配向ベクトルが、前記基材の前記第1の表面に実質的に垂直である請求項1に記載の自己清浄材料。
【請求項5】
前記配向ベクトルが、前記基材の前記第1の表面にほぼ平行である請求項1に記載の自己清浄材料。
【請求項6】
前記整列されたナノチューブ構造の自己清浄層が、光への露出に応答して、光触媒性、疎水性、及び/又は親水性である請求項1に記載の自己清浄材料。
【請求項7】
前記光が紫外光である請求項6に記載の自己清浄材料。
【請求項8】
前記ナノチューブ構造が、少なくとも部分的に二酸化チタン構造を含む請求項1に記載の自己清浄材料。
【請求項9】
前記ナノチューブ構造が前記基材と異なる材料である請求項1に記載の自己清浄材料。
【請求項10】
光への露出に応答する自己清浄材料であって、
第1の表面及び第2の表面を有する基材と、
前記基材の前記第1の表面上に形成された整列されたナノチューブ構造の第1の自己清浄層であって、当該第1の自己清浄層のナノチューブ構造は、第1の配向ベクトルに従って整列され、前記第1の配向ベクトルに少なくとも部分的に基づいて光への露出に応答して当該第1の自己清浄層が状態を変化させるように配列されている、第1の自己清浄層と、
前記基材の前記第2の表面上に形成された整列されたナノチューブ構造の第2の自己清浄層であって、当該第2の自己清浄層のナノチューブ構造は、第2の配向ベクトルに従って整列され、前記第2の配向ベクトルに少なくとも部分的に基づいて光への露出に応答して当該第2の自己清浄層が状態を変化させるように配列されている、第2の自己清浄層と、
を備える自己清浄材料。
【請求項11】
前記第1の自己清浄層のナノチューブ構造と、前記第2の自己清浄層のナノチューブ構造と、が異なる材料である請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記第1及び第2の自己清浄層が、当該第1及び第2の自己清浄層による光の吸収によって、当該第1及び第2の自己清浄層が、それぞれ光触媒性、疎水性、及び/又は親水性のいずれかになるようにさらに配列されている請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記第2の自己清浄層が、前記第1の自己清浄層と異なる自己清浄特性を示す請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記第1及び第2の配向ベクトルが、それぞれ、前記第1及び第2の自己清浄層への最も可能性が高い光の入射角度に対応する請求項10に記載の方法。
【請求項15】
前記第1の配向ベクトルが、前記第1の自己清浄層が制御されない環境で利用されることに基づいて選択され、前記第2の配向ベクトルが、前記第2の自己清浄層が制御される環境で利用されることに基づいて選択される請求項10に記載の方法。
【請求項16】
光への露出に応答する自己清浄材料であって、
ガラス基材の第1の表面上に形成された整列された二酸化チタンナノチューブ構造の自己清浄層を備え、
前記自己清浄層の二酸化チタンナノチューブ構造は、前記自己清浄層の二酸化チタンナノチューブ構造による光の吸収が、前記ガラス基材の前記第1の表面に対する光の第1の入射角度に少なくとも部分的に基づいて、前記整列された二酸化チタンナノチューブ構造の自己清浄層の光誘起性親水性状態を誘発するように、配向ベクトルに従って整列されている自己清浄材料。
【請求項17】
前記自己清浄層が、光の入射角度が前記配向ベクトルに平行になるにつれて、前記整列された二酸化チタンナノチューブ構造の自己清浄層による光の吸収が増加するように、さらに配列されている請求項16に記載の自己清浄材料。
【請求項18】
前記自己清浄層が、前記自己清浄層の二酸化チタンナノチューブ構造による光の吸収が、前記自己清浄層に対応する前記配向ベクトル及び前記ガラス基材の前記第1の表面に関する光の入射角度に基づいて、前記自己清浄層の光触媒状態をさらに誘発するように配列されている請求項16に記載の自己清浄材料。
【請求項19】
前記光が紫外光である請求項18に記載の自己清浄材料。
【請求項20】
前記ガラス基材の第2の表面上に形成された整列された二酸化チタンナノチューブ構造の第2の自己清浄層をさらに備え、
前記第2の自己清浄層の二酸化チタンナノチューブ構造は、前記第2の自己清浄層の二酸化チタンナノチューブ構造による光の吸収が、前記ガラス基材の前記第2の表面に対する光の第2の入射角度に少なくとも部分的に基づいて、前記第2の自己清浄層の光誘起性親水性状態を誘発するように、第2の配向ベクトルに従って整列されている請求項16に記載の自己清浄材料。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2012−526656(P2012−526656A)
【公表日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−511005(P2012−511005)
【出願日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際出願番号】PCT/US2010/034688
【国際公開番号】WO2010/132652
【国際公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【出願人】(509348786)エンパイア テクノロジー ディベロップメント エルエルシー (117)
【Fターム(参考)】