説明

ナノバブル循環型研磨装置

【課題】 研磨後のウェハの厚みばらつきを軽減する。
【解決手段】 固定台とこの固定台を囲み密閉空間を形成する箱型躯体とからなる加工装置と、溶液にナノバブルを発生するナノバブル発生装置と、溶液を高速で噴射する高速水流発生装置と、加工装置内の溶液を高速で排水する高速排水装置と、排水した溶液を安定させる攪拌部と、ナノバブル発生装置と高速水流発生装置とを接続する第一配管部と、高速水流発生装置と加工装置とを接続する第二配管部と、加工装置と高速排水装置とを接続する第三配管部と、高速排水装置と攪拌部とを接続する第四配管部と、攪拌部とナノバブル発生装置とを接続する第五配管部と、第二配管部の加工装置側の端部に設けられる噴射ノズルと、を備え、第二配管部の中心軸線と第三配管部の中心軸線とが同一直線上に位置し、噴射ノズルの噴射範囲内に加工装置の固定台が位置して構成されることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナノバブルを用いてウェハを所定の厚さまで研磨するナノバブル循環型研磨装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ウェハは、いわゆる研磨装置を用いて所定の厚さまで研磨されている。
かかる研磨装置は、研磨方式として、研磨剤による研磨方式を採用する。この研磨剤による研磨方式では、回転する下定盤上に載置された水晶片の表面及び裏面付近に、研磨剤及び水を含む混合液であるスラリーを供給しながら、回転する上定盤を下定盤方向に移動させることにより、ウェハの表面及び裏面を研磨する(例えば、特許文献1参照)。
所定の厚さまで研磨されたウェハは、例えば、そのウェハが水晶である場合、水晶発振器や水晶振動子に用いられる水晶片の製造に用いられる。
【0003】
スラリーは、研磨剤と分散剤とが混合されて用いられている。
研磨剤に用いられる砥粒は、例えば、ダイヤモンド、アルミナ、ジルコニウム、炭化ケイ素、窒化ホウ素、酸化セリウム、酸化マンガン、シリカ系(コロイダルシリカ、フュ−ムドシリカ)材料が用いられている。
分散剤は、例えば、各種アミン、グリコール、が用いられている。
化学反応を伴う加工方法には、例えば、塩基(水酸化ナトリウム、水酸化カリウム)、酸(フッ酸、塩酸、硝酸等)、各種金属の塩(硫酸銅、フェリシアン化カリウム等)、キレート剤(グリシン、EDAT等)、酸化還元剤(過酸化水素、クロム酸、シュウ酸等)が用いられる。
なお、研磨剤とともにナノバブルを用いた研磨も提案されている(例えば、特許文献2、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−188678号公報
【特許文献2】特開2009−111094号公報
【特許文献3】特開2008−171965号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の研磨装置では、上定盤や下定盤など、溶液と接触する部分は金属で形成されているので、研磨で使用するスラリーで研磨装置の表面がすり減ってしまい、研磨後のウェハの厚みに狂いが生じる恐れがあった。
また、砥粒を用いた研磨では、砥粒の粒径によってウェハに変質層が形成されてしまう。この変質層がウェハに存在することによって、ウェハが欠けたり、割れたりすることがあった。また、研磨剤に用いられる砥粒は、資源の枯渇により入手が困難になる恐れがある。そのため、ウェハを研磨することができなくなり、ウェハより生産される部品を製造できなくなる恐れもある。
【0006】
そこで、本発明では、前記の問題を解決し、資源の枯渇に影響されることがなく、研磨による表面のすり減を軽減するナノバブル循環型研磨装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のナノバブル循環型研磨装置は、回転軸の端部に固定されて回転可能に設けられ所定のウェハを固定する固定台とこの固定台を囲み密閉空間を形成する箱型躯体とからなる加工装置と、所定の溶液内にナノバブルを発生するナノバブル発生装置と、ナノバブルを含む所定の溶液を高速で噴射する高速水流発生装置と、前記加工装置内の前記所定の溶液を高速で排水する高速排水装置と、前記高速排水装置で排水した前記所定の溶液の流動状態を安定させる攪拌部と、前記ナノバブル発生装置と前記高速水流発生装置とを接続する第一配管部と、前記高速水流発生装置と前記加工装置とを接続する第二配管部と、前記加工装置と前記高速排水装置とを接続する第三配管部と、前記高速排水装置と前記攪拌部とを接続する第四配管部と、前記攪拌部と前記ナノバブル発生装置とを接続する第五配管部と、前記第二配管部の前記加工装置側の端部に設けられる噴射ノズルと、を備え、前記第二配管部の中心軸線と前記第三配管部の中心軸線とが同一直線上に位置し、前記噴射ノズルの噴射範囲内に前記加工装置の前記固定台が位置して構成されることを特徴とする。
【0008】
また、本発明のナノバブル循環型研磨装置は、前記加工装置の前記固定台において、所定のウェハを固定する固定面が、前記箱型躯体の底面と対向していることを特徴とする。
【0009】
また、本発明のナノバブル循環型研磨装置は、前記ナノバブル発生装置、前記高速水流発生装置、前記第一配管部、前記加工装置、前記第二配管部、前記高速排水装置、前記第三配管部、前記高速排水装置、前記第四配管部、前記第五配管部、前記噴射ノズル、がフッ素樹脂で形成されていることを特徴とする。
【0010】
また、本発明のナノバブル循環型研磨装置は、前記ナノバブル発生装置、前記高速水流発生装置、前記第一配管部、前記加工装置、前記第二配管部、前記高速排水装置、前記第三配管部、前記高速排水装置、前記第四配管部、前記第五配管部、前記噴射ノズル、の前記溶液が接触する表面に、フッ素樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンの何れか1つを設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
このような本発明のナノバブル循環型研磨装置は、ナノバブル発生装置で発生させたナノバブルを含む所定の溶液を、加工装置の固定台に固定されたウェハに高速で噴射させることができるので、この噴射で噴射された溶液中のナノバブルがウェハに衝突し、その衝突でウェハの表面にクラックを入れることができる。このクラックが、噴射される所定の溶液に含まれるナノバブルが継続して衝突させられて広がり、研磨された状態とすることができる。
これにより、ウェハにナノバブルが均等に衝突するためウェハの厚みが減少する際の厚みバラツキを軽減させることができる。
【0012】
また、本発明のナノバブル循環型研磨装置は、ナノバブル発生装置、高速水流発生装置、第一配管部、加工装置、第二配管部、高速排水装置、第三配管部、高速排水装置、第四配管部、第五配管部、噴射ノズル、がフッ素樹脂で形成されているので、耐溶液性が向上した装置となり、噴射する所定の溶液の噴射量が変化することが抑えられるので、ウェハに均一な所定の溶液を衝突させることができる。
【0013】
また、本発明のナノバブル循環型研磨装置は、ナノバブル発生装置、高速水流発生装置、第一配管部、加工装置、第二配管部、高速排水装置、第三配管部、高速排水装置、第四配管部、第五配管部、噴射ノズル、の溶液が接触する表面に、フッ素樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンの何れか1つを設けているので、耐溶液性が向上した装置となり、噴射する所定の溶液の噴射量が変化することが抑えられるので、ウェハに均一な所定の溶液を衝突させることができる。
【0014】
また、従来のような研磨を行うと、研磨剤の粒径によってウェハに変質層が形成されていたが、本発明のナノバブル循環型研磨装置によれば、ウェハに作用する研磨物、つまり、ナノバブルが従来の研磨剤の粒径より極めて小さいため、ウェハの変質層の形成が軽減され、品質の高いウェハを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の第一の実施形態に係るナノバブル循環型研磨装置の一例を示す概念図である。
【図2】ナノバブルを含む溶液でウェハを研磨した状態にしている一例を示す概念図である。
【図3】ナノバブルを含む所定の溶液がウェハに衝突する状態の一例を示す概念図である。
【図4】ナノバブルとウェハの状態を示す概念図である。
【図5】本発明の第二の実施形態に係るナノバブル循環型研磨装置の一例を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明を実施するための最良の形態(以下、「実施形態」という。)について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。なお、ウェハは、水晶が用いられた水晶ウェハとして説明する。また、説明を明確にするために、発明の構成を誇張して図示している。
【0017】
(第一の実施形態)
本発明の第一の実施形態に係るナノバブル循環型研磨装置100は、図1に示すように、ナノバブル発生装置10、高速水流発生装置20、加工装置30、高速排水装置40、攪拌部50、第一配管部61、第二配管部62、第三配管部64、第四配管部65、第五配管部66、噴射ノズル63、とから主に構成されている。
【0018】
(ウェハ)
ウェハについて説明する。
ウェハWは、例えば、水晶が用いられ図示しないが円盤形に形成されている。このウェハWは、X軸、Y軸、Z軸からなる水晶の結晶軸のうちの所定の1方向と直交する方向に切り欠きが設けられた状態となっている。
なお、ウェハWの形状は、四角い板状に形成されていても良い。
また、ウェハWは、Si,SiO,C(ダイヤモンド),GaN,AlN,SiC,Cu,W,セラミックスのいずれか1つを用いることができる。
【0019】
(ナノバブル)
次に、ナノバブルNBは、フッ化物の塩,強塩基性試薬,水酸化ナトリウムと炭酸ナトリウムとの混合溶液の何れか1つの溶液(以下、これらを単に「溶液」という。)Yで発生させられた気泡であって、0.1μm以下の直径で形成されている。このナノバブルNBは、従来周知のナノバブル発生装置21を用いて溶液Yを所定の気体雰囲気中で発生させられる。
なお、フッ化物の塩としてはフッ化カリウム水溶液を用いることができ、強塩基性試薬としては水酸化カリウム溶液を用いることができる。
また、ここでは、気体を空気として説明するが、気体は空気以外に、O,O,N,CO,又はこれらの混合物のいずれかを用いることができる。
【0020】
ナノバブル発生装置10は、所定の溶液内にナノバブルNBを発生させる役割を果たす。
【0021】
ナノバブル発生装置10は、従来周知のナノバブル発生装置を用いる。このナノバブル発生装置10は、図示しないが、ナノバブルよりも大きい気泡を生成するマイクロバブル生成装置とこのマイクロバブルをナノバブルに変える気泡縮小装置とで構成されている。
ここで、ナノバブルの生成について説明する。
ナノバブルの生成には主に3種類の方法がある。まず、1つ目の方法は、マイクロバブル発生装置により最初からナノバブルとして生成する方法である。このひとつめの方法は、マイクロバブル生成装置でマイクロバブルを生成したときと同時にナノバブルが生成される。しかし、生成されるマイクロバブルは、研磨で用いられるほど多くない。
【0022】
次に、2つ目の方法は、マイクロバブル生成装置で発生させたマイクロバブルの自己加圧効果によってバブルサイズを縮小させてナノバブルを発生させる方法である。
これは、ナノバブルも同様であるが、マイクロバブルは中心の気体の体積に対して表面積が大きく、周囲から大きな圧力、つまりマイクロバブル界面に生じる周囲の液相の表面張力を受けている。そのため、マイクロバブル内の気体は圧力をかけられるほど液体に対しての溶解度を増す(ヘンリーの法則)。これによりマイクロバブルは、内部の気体が周囲の液相に溶解してその径を小さくしていき、さらに、気泡の径が小さくなることにより、気泡にかかる圧力はさらに大きなものとなるため、さらに気泡の径は小さくなる。このように、気泡径の縮小により、気泡内の圧力の上昇と気泡内の気体の溶解度の上昇、気泡内の気体のモル数の低下と気泡径の縮小の連鎖が起こる。したがって、気泡が小さくなればなるほど、気泡径の縮小速度は増加し、最終的には気泡は完全に溶液中に溶解し消滅してしまうことになる。
【0023】
しかし、マイクロバブルを発生させる溶液Y中に電解質(NaCl、KF、KOH、NaCO等)が存在する場合、マイクロバブル界面のOHイオンに引き寄せられ、陽電荷をもつイオンが集まることでOHの負の電荷を打ち消すとともに、マイクロバブル界面のイオンの濃度が高まり、その結果、気体の溶解が抑えられ、マイクロバブルが消滅しにくくなる。しかし、マイクロバブルの径の縮小が止まるわけではない。
【0024】
このような気泡は、気泡径の縮小がさらに進み、ナノサイズとなると、気泡径の急速な縮小とともに、急激にイオン濃度が上昇し、さらにイオンを引き寄せるようになる。この段階では、イオンの各層の電荷により(中心はOHの負電荷、その周りの正電荷)、電場が形成され、バブルは電気的に安定する。電場が形成されない場合、イオンは溶液中へと拡散してしまうため、ナノバブルは安定しなくなる。つまり、バブル径の急激な縮小とバブル界面のイオン濃度の急激な上昇がナノバブル生成に必要となる。また、高濃度のイオンのため、ガスの溶解は止まり、バブルの縮小は止まる。こうして、ナノバブルNBは、溶液Y中のイオンの影響により安定して存在することが可能になる。また、電解質の濃度調整により、マイクロバブルからナノバブルへの変化を促進することができる。
【0025】
次に、3つ目の方法は、2つ目の方法に加えてさらに、外的刺激によってマイクロバブルを粉砕する方法である。マイクロバブルは、前記の状態でさらに、外的刺激により気泡径を急速にナノサイズへと近づけられることで、気泡界面へのイオンの濃縮が急激に起こり、結果、ナノバブルNBが多く生成される。
したがって、本発明は、この3つ目の方法を用いてナノバブルNBを発生させている。
【0026】
ナノバブルの発生の方式としては、例えば、加圧溶解型、または二層流旋回型を用いることができる。加圧溶解型のナノバブル発生装置は、ナノバブル発生装置に溶液と空気を供給し、ナノバブル発生装置内で空気に高圧を加えてながら溶液に気泡状になった空気を溶解させて、その溶液を大気圧中に送出することで、過飽和になった空気をナノバブルとして生成させて用いる。二層流旋回型のナノバブル発生装置は、取り込んだ溶液と空気を送出するときに非常に強い水流を加えることで空気をせん断し、ナノバブルを生成させて用いる。
また、ナノバブル発生装置21の溶液を溜める部分および、溶液が接触する部分はフッ素樹脂で形成されている。また、ナノバブルを発生させるのに使用する駆動系を除いて全体をフッ素樹脂で形成されている。
【0027】
このようにして発生したナノバブルNBは、溶液Y中で消滅することなく溶液Y中を漂い続ける性質がある。例えば、ナノバブルNBは、所定の条件により1日以上、溶液Y中に存在し続けることができる。また、このナノバブルNBは、直径が0.1μm以下の気泡となっている。そのため、ナノバブルNB内部の空気は、その周囲の液相の表面張力により高圧になっている。したがって、このようなナノバブルNBは、形状が外側からの応力により変形しない剛体とみなすことができる。
【0028】
また、ナノバブルNBは、内部の空気と液体との界面において溶液Y中の各種イオン(具体的には後述する実施例にて説明する)が高密度に集まった状態となっており、高いエネルギーを持っていると考えられる。したがって、研磨の際に前記イオンとウェハWとの反応を高めること、つまり、研磨効率が高いと考えられる。
【0029】
さらにナノバブルNBは、直径が0.1μm以下という大きさから、それ自体でブラウン運動をしている。このブラウン運動により、ナノバブルNBは、溶液中に均一に分散するため、研磨面に対して均一にナノバブルを供給することが可能であり、均一にウェハを研磨することができる。
なお、ブラウン運動とは、溶媒中の微粒子が不規則な運動をすることをいう。
【0030】
したがって、ナノバブルNBが0.1μmよりも大きいと、ブラウン運動が起こりにくくなり、また、溶液Y中で存在できる時間が短くなってしまい、ウェハWの研磨の効率が悪くなる。
【0031】
図1及び図2に示すように、このナノバブル発生装置10は、第一配管部61を介して高速水流発生装置20と接続しており、第一配管部61を介して高速水流発生装置20へナノバブルNBを含む溶液Yを供給している。なお、これらナノバブル発生装置10と第一配管部61とはフッ素樹脂で形成されている。
【0032】
図1及び図2に示すように、高速水流発生装置20は、ナノバブルNBを含む所定の溶液Yを高速で噴射する役割を果たす。ここで、第二配管部62の加工装置30側の端部には噴射ノズル63が設けられている。
高速水流発生装置20は、ナノバブル発生装置10に第一配管部61を介して接続され、先端に噴射ノズル63が設けられた第二配管部62を介して加工装置30と接続されている。この高速水流発生装置20は、第一配管部61を介してナノバブル発生装置10から供給されたナノバブルNBを含む所定の溶液Yを定常気圧より高い高圧状態に加圧し、第二配管部62を介して噴射ノズル63から加工装置30へ前記所定の溶液Yを噴射するようになっている。
なお、第二配管部62は、中空状に形成されており、この中空内部の長さ方向の中心を中心軸線とする。
【0033】
図1及び図2に示すように、加工装置30は、回転軸31の端部に固定されて回転可能に設けられ所定のウェハWを固定する固定台32とこの固定台32を囲み密閉空間を形成する箱型躯体33とから主に構成されている。
まず、箱型躯体33は、四角形状の箱型に形成されており、内部が密閉できる構造となっている。この箱型躯体33の向かい合う2つの側面のうち、一方の側面に第二配管部62が設けられ、他方の側面に第三配管部64が設けられている。ここで、第二配管部62からは、噴射ノズル63が、箱型躯体33の内部に突出した状態となっている。
また、箱型躯体33の側面に設けられる第三配管部64の端部は、例えば、箱型躯体33の内部側に向かうにつれて拡径して形成されている。
【0034】
なお、第三配管部63は、中空状に形成されており、この中空内部の長さ方向の中心を中心軸線とする。
ここで、箱型躯体33に接続している第二配管部62と第三配管部63とは、第二配管部62の中心軸線と第三配管部63の中心軸線とが同一直線上に位置するように設けられている。
【0035】
このような状態において、図2及び図3に示すように、第二配管部62の加工装置30側の端部に設けられている噴射ノズル63は、第三配管部64の加工装置30と接続している端部側に向けてナノバブルNBを含む所定の溶液Yを噴射することができるようになっている。
【0036】
回転軸31は、箱型躯体33の天井部に回転軸方向を鉛直方向に並行とし、回転可能に設けられている。なお、この回転軸31は、図示しないが、駆動装置により回転することができるようになっている。
また、回転軸31は、一方の端部が箱型躯体33の天井部と接続し、他方の端部に固定台32が設けられている。
【0037】
固定台32は、例えば、所定の厚みを有する円盤形状で形成されており、円盤の一方の主面の平面中心が回転軸31と接続されている。
この固定台32は、他方の主面にウェハWを、例えば接着材を用いて固定して回転させた状態で用いる。
【0038】
また、図3に示すように、この固定台32は、噴射ノズル63の噴射範囲内に位置している。
これにより、噴射ノズル63から噴射されるナノバブルNBを含む所定の溶液Yが、固定台32に固定されたウェハWに高速で衝突させることができる。これにより、噴射された溶液中のナノバブルがウェハに衝突し、その衝突でウェハの表面にクラックを入れることができる。このクラックが、噴射される所定の溶液に含まれるナノバブルが継続して衝突させられて広がり、研磨された状態とすることができる。
【0039】
高速排水装置40は、加工装置30内の所定の溶液Yを高速で排水する役割を果たす。
なお、第三配管部64は、加工装置30と高速排水装置40とを接続している。
高速排水装置40は、例えば、ポンプを用いて加工装置30内に充満している粒状状態のナノバブルNBを含む所定の溶液Yを吸引し、第三配管部64を介して攪拌部50へ排水する。
【0040】
攪拌部50は、図1及び図2に示すように、高速排水装置40で排水した所定の溶液Yの流動状態を安定させる役割を果たす。第四配管部65は、高速排水装置40と攪拌部50とを接続している。
この攪拌部50は、ナノバブル発生装置10と接続しており、攪拌部50内の所定の溶液Yをナノバブル発生装置10へ第五配管部66を介して供給することができる。
第五配管部66は、攪拌部50とナノバブル発生装置10とを接続している。
高速排水装置40から第四配管部65を介して排水される所定の溶液Yには、圧力がかかっており、乱流状態となることも想定される。そのため、攪拌部50は、乱流状態となっていても安定して所定の溶液Yをナノバブル発生装置10へ供給することができる。
【0041】
ここで、本発明の第一の実施形態に係るナノバブル循環型研磨装置100は、ナノバブル発生装置10、高速水流発生装置20、加工装置30、高速排水装置40、攪拌部50、第一配管部61、第二配管部62、第三配管部64、第四配管部65、第五配管部66、噴射ノズル63、とをフッ素樹脂で形成しても良い。
このように、ナノバブル発生装置、高速水流発生装置、第一配管部、加工装置、第二配管部、高速排水装置、第三配管部、高速排水装置、第四配管部、第五配管部、噴射ノズル、をフッ素樹脂で形成したことで、耐溶液性が向上した装置となり、溶液で、例えば、各配管部や噴射ノズルの厚みが減少して、所定の溶液の吐出量が変化するのを軽減させることができる。これにより、噴射する所定の溶液の噴射量が変化することが抑えられるので、ウェハに均一な所定の溶液を衝突させることができる。
【0042】
次に、ウェハWに対するナノバブルNBの作用について説明する。
図3及び図4に示すように、ウェハWは、溶液Yに含まれるナノバブルNBの界面に密集したイオンにより表面が変性(水和層)されるとともに、噴射より圧力を受けたナノバブルから圧力を加えられることで表面に微小のクラックWCを生じさせられる。または、ナノバブルから圧力を受けたウェハ表面に生じる微小のクラックWCに対してナノバブルNBが選択的に作用し、クラックWC部よりナノバブルNBの界面に密集したイオンにより溶解させられる。
そのため、ナノバブルNBは、ウェハWの表面に衝突し、クラックWCが入ったウェハWの変質部分を容易に除去することができる。つまり、ナノバブルNBの周囲のイオンとウェハWとが化学反応し、その後、ナノバブルNBがウェハWを破砕することで研磨が進行する。
【0043】
このようにして、空気を気泡化したナノバブルNBを含ませた、フッ化物の塩,強塩基性試薬,水酸化ナトリウムと炭酸ナトリウムとの混合溶液の何れか1つの溶液Yを介在させて研磨対象のウェハWの表面を衝突させることにより、ウェハWの厚さを薄くしていく。かかる衝突は、ウェハの表面を研磨した状態とすることができる。
【0044】
(第二の実施形態)
本発明の第二の実施形態に係るナノバブル循環型研磨装置101は、図5に示すように、ナノバブル発生装置10、高速水流発生装置20、加工装置30、高速排水装置40、攪拌部50、第一配管部61、第二配管部62、第三配管部64、第四配管部65、第五配管部66、噴射ノズル63から主に構成され、各構成要素のそれぞれの表面にフッ素樹脂40が設けられている点で第一の実施形態と異なる。
なお、同一の構成要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
第二の実施形態に係るナノバブル循環型研磨装置101の各構成要素は、フッ素樹脂で形成されていても良いし、金属で形成されていても良い。
【0045】
ナノバブル発生装置10は、金属部分全面にフッ素樹脂が設けられている(図示せず)。フッ素樹脂は、コーティングやラミネートにより設けることができる。
同様に、高速水流発生装置20、高速排水装置40にも、溶液Yが接触する表面に、フッ素樹脂が設けられている。
また、第一配管部61、第二配管部62、第三配管部64、第四配管部65、第五配管部66、噴射ノズル63、の溶液Yが接触する表面に、フッ素樹脂が設けられている。
さらに、加工装置30の回転軸31、固定台32、箱型躯体33の溶液Yが接触する表面に、フッ素樹脂が設けられている。
【0046】
このように、本発明の第二の実施形態に係るナノバブル循環型研磨装置を構成したので、耐溶液性が向上した装置となり、噴射する所定の溶液の噴射量が変化することが抑えられるので、ウェハに均一な所定の溶液を衝突させることができる。
【符号の説明】
【0047】
100 ナノバブル循環型研磨装置
10 ナノバブル発生装置
20 高速水流発生装置
30 加工装置
31 回転軸
32 固定台
33 箱型躯体
40 高速排水装置
50 攪拌部
61 第一配管部
62 第二配管部
63 噴射ノズル
64 第三配管部
65 第四配管部
66 第四配管部
NB ナノバブル
Y 溶液

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸の端部に固定されて回転可能に設けられ所定のウェハを固定する固定台とこの固定台を囲み密閉空間を形成する箱型躯体とからなる加工装置と、
所定の溶液内にナノバブルを発生するナノバブル発生装置と、
ナノバブルを含む所定の溶液を高速で噴射する高速水流発生装置と、
前記加工装置内の前記所定の溶液を高速で排水する高速排水装置と、
前記高速排水装置で排水した前記所定の溶液の流動状態を安定させる攪拌部と、
前記ナノバブル発生装置と前記高速水流発生装置とを接続する第一配管部と、
前記高速水流発生装置と前記加工装置とを接続する第二配管部と、
前記加工装置と前記高速排水装置とを接続する第三配管部と、
前記高速排水装置と前記攪拌部とを接続する第四配管部と、
前記攪拌部と前記ナノバブル発生装置とを接続する第五配管部と、
前記第二配管部の前記加工装置側の端部に設けられる噴射ノズルと、
を備え、
前記第二配管部の中心軸線と前記第三配管部の中心軸線とが同一直線上に位置し、
前記噴射ノズルの噴射範囲内に前記加工装置の前記固定台が位置して構成されることを特徴とするナノバブル循環型研磨装置。
【請求項2】
前記加工装置の前記固定台において、
所定のウェハを固定する固定面が、前記箱型躯体の底面と対向していることを特徴とする請求項1に記載のナノバブル循環型研磨装置。
【請求項3】
前記ナノバブル発生装置、前記高速水流発生装置、前記第一配管部、前記加工装置、前記第二配管部、前記高速排水装置、前記第三配管部、前記高速排水装置、前記第四配管部、前記第五配管部、前記噴射ノズル、がフッ素樹脂で形成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のナノバブル循環型研磨装置。
【請求項4】
前記ナノバブル発生装置、前記高速水流発生装置、前記第一配管部、前記加工装置、前記第二配管部、前記高速排水装置、前記第三配管部、前記高速排水装置、前記第四配管部、前記第五配管部、前記噴射ノズル、の前記溶液が接触する表面に、フッ素樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンの何れか1つを設けたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のナノバブル循環型研磨装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−250302(P2012−250302A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−122923(P2011−122923)
【出願日】平成23年5月31日(2011.5.31)
【出願人】(000104722)京セラクリスタルデバイス株式会社 (870)
【Fターム(参考)】