説明

ナノファイバーの合糸方法及び装置

【課題】電荷誘導紡糸法により製造したナノファイバーから成る高強度でかつ均質な糸条を安定して生産性よく製造する方法及び装置を提供する。
【解決手段】所定の芯糸移動経路7に芯糸8を供給し、芯糸移動経路7の周囲に配置した少なくとも1つの小穴12から原料溶液を流出させるとともに流出する原料溶液に電荷を帯電させ、静電爆発にて延伸させてナノファイバー2を生成し、芯糸移動経路7の回りに複数の凸部22が配置された収集電極6に帯電したナノファイバー2が向かうように電界を形成するとともに、小穴12と収集電極6とを芯糸移動経路7の回りに相対的に回転させ、ナノファイバー2を芯糸8に絡ませ、芯糸8にナノファイバー2が絡まった糸条11を回収するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高分子物質から成るナノファイバーを製造してこれを糸条にするナノファイバーの合糸方法及び装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、高分子物質から成るサブミクロンスケールの直径を有するナノファイバーを製造する方法として、電荷誘導紡糸法(エレクトロスピニング法とも称される)が知られている。従来の電荷誘導紡糸法は、高電圧を印加した針状のノズルに高分子溶液を供給し、この針状のノズルから線状に流出する高分子溶液に電荷を帯電させることで、この電荷を帯電された線状の高分子溶液中の溶媒が蒸発するのに伴って帯電電荷間の距離が小さくなり、帯電電荷間に作用するクーロン力が大きくなり、そのクーロン力が線状の高分子溶液の表面張力より勝った時点で線状の高分子溶液が爆発的に延伸される現象が生じ、この静電爆発と称する現象が、一次、二次、場合によっては三次等と繰り返されることで、サブミクロンの直径の高分子から成るナノファイバーが製造されるものである。
【0003】
従来の電荷誘導紡糸法では、1本ノズルの先から1〜数本のナノファイバーしか製造されないので、生産性が上がらないという問題があった。そこで、ナノファイバーを多量に製造する方法として、複数のノズルを用いる方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。この特許文献1には、バレルに貯蔵された高分子溶液をポンプにて帯電された多数のニードル状のノズルに供給して吐出させることで多量のナノファイバーを作り出し、これをノズルと異なる極性に帯電されたコレクタにて回収し積層しながら搬送することで、ナノファイバーが3次元のネットワーク構造に積層した空隙率が非常に高い高多孔性の高分子ウエブを製造する技術が開示され、従来の実験的レベルから実用性レベルに高められている。
【0004】
また、従来、電荷誘導紡糸法によるナノファイバーがウエブとして製造され、人造皮革、フィルター、おむつ、生理用ナプキン、癒着紡糸剤、ワイピングクロス、人造血管、骨固定器具など多様に活用されているが、10MPa以上の力学物性を得るのが困難で広範囲な用途への利用に限界があること、このように製造されたナノファイバーのウエブを連続した糸条にして力学物性を高めようとすると、ウエブを一定長さに切断して短繊維を製造し、この短繊維から紡績糸を製造する別途の紡績工程を経なければならない問題があることを指摘した上で、電子紡糸法にて製造されたナノファイバーのウエブを用いて連続的に糸条を製造する技術が提案されている(例えば、特許文献2参照)。この特許文献2では、列をなして帯電されたノズルからノズルと逆極性に帯電されたコレクタ内の水または有機溶媒の静的な表面上にナノファイバーを紡糸してウエブをなすように堆積させ、この堆積するウエブを、ノズルの列方向で見た一方の末端側より1cm以上離れた地点から一定の線速度で回転する回転ローラによって引き上げて連続した糸条とし、圧搾、延伸、乾燥および巻取りを行って連続した糸条を得ている。また、連続した糸条は撚糸することもできるとしている。
【特許文献1】特開2002−201559号公報
【特許文献2】特表2006−507428号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献2に記載の技術は、各ノズルから真下にナノファイバーを生成してコレクタ上のノズルに対応した位置へ静的に堆積させながら、その堆積域の広がりにより各ノズルから生成されたナノファイバー同士を絡み合わせて細帯状のウエブを形成し、このウエブの一端からナノファイバー群を引出すことでウエブの他端側に連続しているナノファイバー群を順次引き出し、連続した糸条に集束させるものであり、そのため各ノズルから紡糸されたナノファイバーの堆積が静的でほぼ同等であるのに対し、引き出し作用が引き出し側に近い堆積域に集中しやすくなる関係から、引き出し側に近い堆積域と遠い堆積域とでナノファイバーの引出し量とに差が生じる恐れがあり、その場合引出し量の差が堆積量の差を来たし、堆積量に差を生じた状態で引き出されることで連続した糸条の太さや力学物性を適正に制御するのは困難で安定しないという問題がある。さらに、引出し作用が引き出し側から遠い側の堆積域にも均等に及ぶようにするのに引出し速度を抑える必要があり大量に製造するのも困難であるという問題がある。
【0006】
そこで、このような問題を解決するため、図8に示すようなナノファイバー合糸装置51が考えられた。図8において、ナノファイバー合糸装置51は、ナノファイバー生成手段52と、収集電極53と、芯糸供給手段54と、回収手段55を備えている。ナノファイバー生成手段52は、垂直な軸芯周りに回転自在に支持され、周面に小穴57が多数形成されている円筒容器56と、円筒容器56内に高分子溶液を供給する高分子溶液供給手段(図示せず)と、円筒容器56に高電圧を印加する第1の高電圧発生手段58と、円筒容器56を矢印a方向に回転駆動する回転駆動手段(図示せず)と、円筒容器56の上部に配設された反射電極59と、反射電極59に円筒容器56と同極の高電圧を印加する第2の高電圧発生手段60とを備え、円筒容器56の小穴57から流出した高分子溶液を遠心力と静電爆発にて延伸させてナノファイバー61を生成し、生成されたナノファイバー61を反射電極59にて円筒容器56の下方に向けて旋回しつつ流動させるように構成されている。
【0007】
収集電極53は円板状で、円筒容器56の下方に間隔をあけて同軸状にかつ回転自在に配設され、その中心部に収束されたナノファイバー61が貫通する貫通孔62を有しており、第3の高電圧発生手段63にて円筒容器56や反射電極59とは逆極性の高電圧を印加するように構成され、かつ回転駆動手段(図示せず)にて収集電極53を矢印a方向とは逆の矢印b方向に回転駆動するように構成されている。芯糸供給手段54は、ナノファイバー生成手段52の上方に配設され、芯糸64を繰り出して円筒容器56の軸芯位置直上から下方に供給するように構成され、回収手段55は、収集電極53の下方に配設され、撚られて収束した糸条65を収集電極53の貫通孔62を貫通させて回収するように構成されている。
【0008】
以上の構成において、ナノファイバー生成手段52の円筒容器56内に高分子溶液を供給しつつ円筒容器56を高速で回転駆動すると、円筒容器56内の電荷を帯電された高分子溶液に遠心力が作用し、各小穴57から流出するとともに遠心力の作用で延伸されて細い高分子線状体が生成され、さらに一次〜三次等に至る静電爆発にて爆発的に延伸されてナノファイバー61が効率的に製造され、生成されたナノファイバー61は反射電極59にて円筒容器56の下方に向けて円筒容器56の軸芯回りに旋回しながら流動する。さらに、旋回しながら下方に向けて流動されたナノファイバー61は、下方に配設された収集電極53に向けて強く吸引され、かつその収集電極53がナノファイバー61の旋回流動方向とは逆方向に回転していることで、旋回流動しているナノファイバー61がより強く撚りをかけられて収束・合糸され、効率的に高強度の糸条65が形成される。形成された糸条65は、収集電極53の中心部の貫通孔62を通り、回収手段55にて回収される(特願2007−141907号参照。)。
【0009】
しかし、図8に示したような構成では、ナノファイバー生成手段52に対向させて大きな面積の平板状の収集電極53を配置しているので、ナノファイバー生成手段52と収集電極53間に発生する電気力線が収集電極53の全面に広がって形成され、この電気力線に沿ってナノファイバー61が流動しようとすることで、ナノファイバー61が芯糸64 に巻き付く位置が一定せず、そのため生成される糸条65の太さが一定せず、糸条65の太さにばらつきが発生するという問題のあることが判明した。
【0010】
そこで、生成されたナノファイバーを、帯電したナノファイバーに対して電位差を有するとともに、軸芯部に貫通孔を有しかつ最大外径が紡糸ヘッドとの間の距離の1/10以下の収集電極にて吸引しつつ旋回させて集束することで撚りをかけ、撚られたナノファイバーを、収集電極の貫通孔を通して回収するようにし、紡糸ヘッドから収集電極の軸芯部の周囲に収束する電気力線を安定して形成し、それによって旋回して流動するすべてのナノファイバーをこの電気力線に沿って流動させて収集電極の軸芯部に安定して集束させ、太さにばらつきのない均質な糸条を安定して生産性よく低コストにて合糸する方法が提案されている(特願2007−234762号参照)。
【0011】
ところが、このような合糸方法においても、生成されたナノファイバーが、紡糸ヘッドとの間の距離の1/10以下の最大外径の収集電極に向けて集束しつつ流動しても、集束箇所が面状ないし線状に連続しているために集束点が安定せず、その結果ナノファイバーの集束状態が不安定となって芯糸への絡みつきにばらつきが発生し、均質な糸条を安定して生産性よく製造することができないという問題のあることが判明した。
【0012】
本発明は、上記従来の課題を解決するもので、電荷誘導紡糸法により製造したナノファイバーから成る高強度でかつ均質な糸条を安定して生産性よく製造することができるナノファイバーの合糸方法と装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明のナノファイバーの合糸方法は、芯糸を所定の芯糸移動経路に供給する芯糸供給工程と、芯糸移動経路の周囲に配置した少なくとも1つの小穴から原料溶液を流出させるとともに流出する原料溶液に電荷を帯電させ、静電爆発にて延伸させてナノファイバーを生成するナノファイバー生成工程と、芯糸移動経路の回りに複数の凸部が配置された収集電極に帯電したナノファイバーが向かうように電界を形成するとともに、小穴と収集電極とを芯糸移動経路の回りに相対的に回転させ、ナノファイバーを芯糸に絡ませる合糸工程と、芯糸にナノファイバーが絡まった糸条を回収する回収工程とを有するものである。
【0014】
なお、原料溶液としては、各種の合成樹脂材料や核酸や蛋白質などの生体高分子などの高分子物質(本発明では、分子量が10000以上の一般的な高分子物質に限らず、分子量が1000〜10000の準高分子物質も含める)を溶媒に溶解したものが好適に適用される。また、上記高分子物質は単体物に限らず、各種高分子物質の混合物であっても良い。さらに、原料溶液に無機質固体材料を混入することも可能である。
【0015】
上記構成によれば、供給される芯糸の回りの小穴から原料溶液が帯電して流出することで静電爆発が生じてナノファイバーが生成され、生成したナノファイバーが、小穴と収集電極の間に形成されている電界によって収集電極に向けて流動するとともに、収集電極に複数の凸部が設けられていることで流動するナノファイバーの集束点がこれらの凸部に集中し、かつ小穴と収集電極とが芯糸移動経路の回りに相対的に回転していることで、複数の凸部に向けて安定して集束されたナノファイバーが芯糸の全周に均等に絡まり、芯糸にナノファイバーが均等に絡んだ糸条を合糸することができるので、この糸条を回収することで、ナノファイバーから成る高強度で均質な糸条を安定して生産性よく製造することができる。
【0016】
また、ナノファイバー生成工程において、小穴を芯糸移動経路の回りに回転させ、合糸工程において収集電極を小穴とは逆方向に回転させると、ナノファイバーが芯糸により強く巻き付いて絡まり、より強度の高い芯糸を合糸することができる。
【0017】
また、回収工程において、収集電極の軸芯部に形成された芯糸移動経路が貫通する貫通孔を通して吸引すると、貫通孔を通る吸引気流によっても収集電極の軸芯に向けてナノファイバーが寄せられ、芯糸にナノファイバーがより強く絡んだより強度の高い糸条を合糸できるとともに、貫通孔を通してそのまま回収することができる。
【0018】
また、本発明のナノファイバーの合糸装置は、芯糸を所定の芯糸移動経路に供給する芯糸供給手段と、芯糸移動経路の周囲に配置されて原料溶液を流出させる少なくとも1つの小穴を有し、流出する原料溶液に電荷を帯電させて静電爆発にて延伸させてナノファイバーを生成するナノファイバー生成手段と、原料溶液の帯電電荷とは逆極性の電圧を印加され若しくは接地され、ナノファイバー生成手段に対向する面の芯糸移動経路の回りに複数の凸部が配置された収集電極と、ナノファアバー生成手段の小穴と収集電極を芯糸移動経路の回りに相対的に回転させる回転手段と、芯糸にナノファイバーが絡まった糸条を回収する回収手段とを備えたものである。
【0019】
この構成によると、芯糸供給手段にて芯糸を供給し、ナノファイバー生成手段にて芯糸の回りの小穴から原料溶液を帯電して流出させることで静電爆発が生じてナノファイバーが生成され、生成したナノファイバーが、その帯電電荷とは逆極性の電圧を印加され若しくは接地されている収集電極に向けて流動するとともに、収集電極に複数の凸部が設けられていることで流動するナノファイバーの集束点がこれらの凸部に集中し、かつ回転手段にて小穴と収集電極とが芯糸移動経路の回りに相対的に回転していることで、複数の凸部に向けて安定して集束されたナノファイバーが芯糸の全周に均等に絡まり、芯糸にナノファイバーが均等に絡んだ糸条が合糸され、この糸条を回収手段にて回収することで、ナノファイバーから成る高強度で均質な糸条を安定して生産性よく製造することができる。
【0020】
また、回転手段は、少なくとも小穴を芯糸移動経路の回りに回転させる小穴回転手段若しくは収集電極を芯糸移動経路の回りに回転させる電極回転手段を備えているのが好適である。
【0021】
また、回転手段は、小穴回転手段と電極回転手段の両方を備え、かつ両方の回転手段は互いに回転方向が逆であると、収集電極と小穴が逆方向に回転することでナノファイバーが芯糸により強く巻き付いて絡まるため、より強度の高い芯糸を合糸することができて好適である。
【0022】
また、収集電極の軸芯部に形成された芯糸移動経路が貫通する貫通孔を通して吸引する吸引手段を設けると、貫通孔を通して吸引することで貫通孔を通して吸引気流が形成され、この吸引気流によっても収集電極の軸芯に向けてナノファイバーが寄せられ、芯糸にナノファイバーがより強く絡んだより強度の高い糸条を合糸できるとともに、貫通孔を通してそのまま回収することができる野で好適である。
【発明の効果】
【0023】
本発明のナノファイバーの合糸方法及び装置によれば、芯糸の回りの小穴から流出した原料溶液が静電爆発して生成されたナノファイバーが収集電極に向けて流動するとともに、収集電極に複数の凸部が設けられていることで流動するナノファイバーの集束点がこれらの凸部に集中し、かつ小穴と収集電極とが芯糸移動経路の回りに相対的に回転していることで、複数の凸部に向けて安定して集束されたナノファイバーが芯糸の全周に均等に絡まって合糸されるので、ナノファイバーから成る高強度で均質な糸条を安定して生産性よく製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明のナノファイバーの合糸方法及び装置の各実施形態について、図1〜図7を参照しながら説明する。
【0025】
(第1の実施形態)
まず、本発明のナノファイバー合糸装置の第1の実施形態について、図1〜図4を参照して説明する。
【0026】
図1において、1はナノファイバー合糸装置であって、ナノファイバー2の原料溶液を線状に流出する紡糸ヘッド3と、紡糸ヘッド3の周囲に配設されて紡糸ヘッド3との間に電界を生成する電界生成電極4とから成るナノファイバー生成手段5を備えている。また、生成されたナノファイバー2を収集する収集電極6と、紡糸ヘッド3及び収集電極6の軸芯部を通る所定の芯糸移動経路7に芯糸8を供給する芯糸供給手段9と、芯糸8にナノファイバー2を絡ませて生成された糸条11を回収する回収手段10とを備えている。
【0027】
紡糸ヘッド3は、図1及び図2に示すように、垂直な軸芯周りに回転自在に支持され、周面に直径が0.1〜2mm程度の小穴12が数mmピッチ間隔で多数形成されている円筒容器からなる回転容器13を備え、この回転容器13を小穴回転手段14にて矢印a方向に回転駆動するように構成されている。小穴回転手段14としては、中空軸からなる出力軸を貫通して配設したDCモータが好適に適用され、その出力軸又はそれに同一軸芯状に連結された中空回転軸15に回転容器13が取付けられている。
【0028】
原料溶液は、高分子物質を溶媒に溶解したものであり、その高分子物質としては、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリエチレンオキサイド、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリ−m−フェニレンテレフタレート、ポリ−p−フェニレンイソフラテート、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン−アクリレート共重合体、ポリアクリロニトリル、ポリアクリロニトリル−メタクリレート共重合体、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリエステルカーボネート、ナイロン、アラミド、ポリカプロラクトン、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリヒドロキシ酪酸、ポリ酢酸ビニル、ポリペプチド等が好適なものとして例示でき、これらより選ばれる少なくとも一種が用いられるが、特にこれらに限定されるものではない。
【0029】
また、使用できる溶媒としては、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、ヘキサフルオロイソプロパノール、テトラエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジベンジルアルコール、1,3−ジオキソラン、1,4−ジオキサン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチル−n−ヘキシルケトン、メチル−n−プロピルケトン、ジイソプロピルケトン、ジイソブチルケトン、アセトン、ヘキサフルオロアセトン、フェノール、ギ酸、ギ酸メチル、ギ酸エチル、ギ酸プロピル、安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸プロピル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジプロピル、塩化メチル、塩化エチル、塩化メチレン、クロロホルム、o−クロロトルエン、p−クロロトルエン、四塩化炭素、1,1−ジクロロエタン、1,2−ジクロロエタン、トリクロロエタン、ジクロロプロパン、ジブロモエタン、ジブロモプロパン、臭化メチル、臭化エチル、臭化プロピル、酢酸、ベンゼン、トルエン、ヘキサン、シクロヘキサン、シクロヘキサノン、シクロペンタン、o−キシレン、p−キシレン、m−キシレン、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、N,N−ジメチルホルムアミド、ピリジン、水等を例示でき、これらより選ばれる少なくとも一種が用いられるが、特にこれらに限定されるものではない。また、溶媒と高分子物質との混合比率は、溶媒と高分子物質により異なるが、溶媒量が約60%から98%の間が望ましい。
【0030】
また、原料溶液には、高分子物質と溶媒のほかに無機質固体材料を混入することも可能である。この無機質固体材料としては、酸化物、炭化物、窒化物、ホウ化物、珪化物、弗化物、硫化物等を挙げることができるが、耐熱性、加工性などの観点からは酸化物を用いるのが好ましい。酸化物としては、Al2O3、SiO2、TiO2、Li2O、Na2O、MgO、CaO、SrO、BaO、B2O3、P2O5、SnO2、ZrO2、K2O、Cs2O、ZnO、Sb2O3、As2O3、CeO2、V2O5、Cr2O3、MnO、Fe2O3、CoO、NiO、Y2O3、Lu2O3、Yb2O3、HfO2、Nb2O5等を例示でき、これらより選ばれる少なくとも一種が用いられるが、特にこれらに限定されるものではない。このようにTiO2などの無機質固体材料を混入することで、防臭・抗菌機能や各種触媒機能を奏する機能性ナノファイバーから成る糸条11を製造することができ、衣類やその他の繊維製品に有用である。
【0031】
電界生成電極4は、紡糸ヘッド3を構成する回転容器13の周面から所定間隔をあけてリング状に配設され、回転容器13の小穴12と電界生成電極4との間に高い電位差が印加されている。本実施形態では、回転容器13の少なくとも周面あるいは小穴12の近傍が導電性を有して接地電位とされるとともに、電界生成電極4に対して第1の高電圧発生手段16にて発生された負極の高電圧が印加されている。かくして、回転容器13の少なくとも小穴12の近傍と電界生成電極4との間に電界が生成して小穴12に正極の電荷が誘導され、その電荷が小穴12から流出する原料溶液に帯電され、原料溶液中の溶媒の蒸発に伴って1次〜3次、場合によってはそれ以上の次数の静電爆発が発生してナノファイバー2が生成される。なお、第1の高電圧発生手段16にて回転容器13に正極又は負極の高電圧を印加し、電界生成電極4を接地電位としても良いが、小穴回転手段14に連結されている回転容器13を接地電位にした方が絶縁構成が簡単となるので好ましい。
【0032】
小穴回転手段14の回転容器13とは反対側の上部には、生成されたナノファイバー2を収集電極6側に向けて偏向流動させる偏向流動手段としての送風手段17が配設され、回転容器13の周面と電界生成電極4の間の空間に向けて気体流18を送風するように構成されている。偏向流動手段としては、この送風手段17に代えて、若しくは送風手段17と併用してナノファイバー2の帯電極性と同極性の高電圧を印加した反射電極を配設しても良い。
【0033】
芯糸供給手段9は、送風手段17のさらに上部に配設されている。芯糸供給手段9は、芯糸8を繰り出し可能に巻回した芯糸供給リール9aと、繰り出した芯糸8を芯糸移動経路7の上端に供給するようにガイドするガイドローラ9bとを備えている。この芯糸供給手段9から繰り出された芯糸8が、芯糸移動経路7を通り、送風手段17の軸芯位置に形成された貫通孔17a、小穴回転手段14の中空出力軸及び中空回転軸15の中空部、及び回転容器13の貫通孔を経て収集電極6の軸芯位置に向けて移動する。
【0034】
収集電極6は、紡糸ヘッド3の回転容器13に対してその軸芯方向に適当距離だけ離れた位置に回転容器13の回転軸芯と同一軸芯状に配設されている。回転容器13と収集電極6の間の距離は、回転容器13の小穴12から線状に流出した原料溶液に一次〜三次ないしそれ以上の次数の静電爆発が生じてナノファイバー2を生成されるのに必要な所要の距離である。収集電極6は、図1、図2に示すように、軸芯部に貫通孔20を有する中空軸体19にて構成され、紡糸ヘッド3側の一端部に環状の拡大頭部21を有するとともに、拡大頭部21の紡糸ヘッド3に対向する面に複数、図示例では一対の上端が半球状の凸部22が配設されている。収集電極6は、その中空軸体19が軸受23にてその軸芯回りに回転自在に支持され、かつ他端部を電極回転手段24にて回転容器13の回転方向aとは逆の矢印b方向に回転駆動するように構成されている。この電極回転手段24としては、収集電極6を構成する中空軸体19自体が出力軸であるDCモータが好適に適用される 。なお、収集電極6は、少なくともその拡大頭部21の凸部22が導電性を有するものであれば良く、他の部分は必ずしも導電性を有する必要はない。
【0035】
収集電極6の少なくとも凸部22は、1kV〜100kV、好適には10kV〜100kVの負(図示例では負の電圧を印加しているが、これは、ナノファイバー2が正の電荷を有するように帯電している為で、負の電荷を有するように帯電している場合には、収集電極6の印加電圧は、正の電圧が印加される。)の高電圧を発生する第2の高電圧発生手段25に接続され、回転容器13の少なくとも小穴12の近傍と収集電極6の間に電界を発生させている。この回転容器13の少なくとも小穴12の近傍と収集電極6の凸部22間の電界を発生させるように構成され、第2の高電圧発生手段25が小穴12と凸部22間の電界発生手段を構成している。この電界によって発生する電気力線26は、図2に示すように、回転容器11の小穴10の近傍から電界発生電極4に向かった後、収集電極6の拡大頭部21の凸部22に向けて偏向され、一対の凸部22に収束するように形成される。
【0036】
電極回転手段24の外周部は筒体27に結合され、筒体27の下端に吸引手段28が配設されており、吸引手段28を作動させると、筒体27内の空間を介して収集電極6の貫通孔20を通して気体流が吸引されるように構成されている。
【0037】
以上の構成において、紡糸ヘッド3の回転容器13内に原料溶液を供給しつつ回転容器13を回転駆動する。すると、回転容器13内の原料溶液が各小穴12で電荷を帯電され、電界生成電極4との間の電界の作用と遠心力の作用によって原料溶液が電界生成電極4に向けて確実に線状に流出するとともに遠心力の作用で延伸される。その後、線状に流出した原料溶液中の溶媒が蒸発することでその線状体の径が細くなり、その結果帯電されていた電荷が集中し、そのクーロン力が原料溶液の表面張力を超えた時点で一次静電爆発が生じて爆発的に延伸され、その後さらに溶媒が蒸発して同様に二次静電爆発が生じて爆発的に延伸され、場合によってはさらに三次静電爆発等が生じて延伸されることで、サブミクロンの直径を有する高分子物質から成るナノファイバー2が効率的に製造される。
【0038】
生成途中ないし生成されたナノファイバー2は、送風手段17にて送風される気体流18にて回転容器13の外周から収集電極6に向けて、かつ回転容器13の回転により回転容器13の軸芯回りに旋回しながら流動することになる。なお、気体流18を温風にすると、溶媒の蒸発を促進するので、ナノファイバー2の生成を促進できて好ましい。気体流18に乗って旋回しながら流動するナノファイバー2は、電気力線26に沿って収集電極6に向けて強く吸引される。ここで、上記のように収集電極6に設けられた一対の凸部22に電気力線26が集束していることで、図3に示すように、流動してきたナノファイバー2の集束点がこれらの凸部22に集中することになり、かつその収集電極6がナノファイバー2の旋回流動方向とは逆方向に回転しており、さらに吸引手段28を作動させると収集電極6の貫通孔20に向かって流れる吸引気流が形成され、この吸引気流によっても収集電極6の軸芯に向けてナノファイバー2が寄せられることで、複数の凸部22に向けて安定して集束されたナノファイバー2が芯糸8に確実に絡み付いて一挙に集束され、芯糸8にナノファイバー2が均等に絡んだ糸条11が合糸される。かくして、すべてのナノファイバー2が均一に撚りをかけられて芯糸8に絡み付いた太さにばらつきのない均質な糸条11が生成され、高強度の糸条11が安定して生産性よく形成される。形成された糸条11は、収集電極6の貫通孔20、筒体27内の空間及び吸引手段28の軸芯部を貫通して回収手段10にて回収される。
【0039】
なお、以上の説明では、収集電極6の拡大頭部21に一対の凸部22を設けた例を示したが、これに限定されるものではなく、図4(a)、(b)に示すように、3つ若しくは4つ、あるいはそれ以上の凸部22を周方向に等間隔に配設しても良い。
【0040】
なお、図1、図2の図示例では、周面に小穴12を形成した回転容器13を適用した例を示したが、回転容器13の周面に適当なピッチ間隔で多数の短寸のノズル部材を配設し 、そのノズル部材に形成されているノズル穴を小穴12として機能させるようにした構成としても良い。
【0041】
また、本実施形態においては、紡糸ヘッド3の回転容器13を矢印a方向に回転させ、収集電極6をa方向とは逆の矢印b方向に回転させるようにした例を示したが、紡糸ヘッド3は回転せずに、収集電極6側のみを回転させても、逆に収集電極6は回転させずに紡糸ヘッド3側のみを回転させても良い。また、前記回転容器13と前記収集電極6をどう方向に回転させる場合においても、回転数を異なるようにすることで、前記回転容器13と前記収集電極6とを相対的に回転させるようにしてもよい。回転容器13と収集電極6との回転方向については、本実施形態に限定するものではなく、以下の実施例においても同じように考えられる。
【0042】
(第2の実施形態)
次に、本発明のナノファイバー合糸装置の第2の実施形態について、図5を参照して説明する。なお、以下の実施形態の説明においては、先行する実施形態の構成要素と同一の構成要素について同じ参照符号を付して説明を省略し、主として相違点についてのみ説明する。
【0043】
本実施形態では、電界生成電極4と収集電極6との間の空間の周囲を取り囲む絶縁材料から成る風洞30を配設している。風洞30は、電界生成電極4の下縁から収集電極6の拡大頭部21の下部の高さ位置まで延びる円筒部30aとその下端開口を閉鎖する端板30bとを備え、その端板30bの軸芯部を収集電極6の中空軸体19が回転自在に貫通している。
【0044】
本実施形態の構成によれば、生成されたナノファイバー2が気体流18に乗って旋回流動する際に、その旋回範囲が風洞30によって確実に規制されているので、ナノファイバー2を確実に芯糸8に絡ませることができて一層安定して糸条11を製造することができる。特に、本実施形態においては、上記のように収集電極6の軸芯部の貫通孔20を通して吸引手段28にて吸引するようにしているので、生成されたナノファイバー2が気体流18に乗って旋回流動し、さらにその気体流18が収集電極6の軸芯部で吸引されることで、その旋回半径が小さくなり、ナノファイバー2がより強く撚りを掛けられて芯糸8に絡まり、一層高強度の糸条11を製造することができる。
【0045】
さらに、以上の第1、第2の実施形態の説明では、送風手段17は紡糸ヘッド3の軸芯方向と略平行に送風するものとして説明したが、送風手段17を紡糸ヘッド3側から収集電極6側に向けて旋回して流動する旋回気体流を送風するように構成しても良く、その場合生成されたナノファイバー2を旋回気体流に乗せて収集電極6側に向けて旋回流動させることができるとともに、その旋回気体流が収集電極6の軸芯部の貫通孔20を通して吸引されることで旋回気体流の旋回半径が小さくなってより強い旋回気体流となるため、この旋回気体流に乗って旋回流動して来たナノファイバー2をより強く芯糸8に絡ませて強度の高い糸条11を製造することができる。さらに、第2の実施形態のように風洞30を設けて送風手段17にて旋回気体流を送風し、収集電極6の軸芯部で吸引する構成した場合には、紡糸ヘッド3と収集電極6の何れか一方、若しくは両方共、回転させなくてもナノファイバー2を芯糸8に絡ませて糸条11を製造することができる。
【0046】
また、以上の第1、第2の実施形態のナノファアバー生成手段5では、回転容器13の外周面の小穴12に対向して電界生成電極4を配設した構成例を示したが、小穴12と収集電極6間の電界にて、小穴12から流出した原料溶液に静電爆発を発生させるようにすることもでき、その場合には電界生成電極4は必ずしも配設する必要はない。
【0047】
(第3の実施形態)
次に、本発明のナノファイバー合糸装置の第3の実施形態について、図6を参照して説明する。
【0048】
上記実施形態では、紡糸ヘッド3として外周面に小穴12を形成した回転容器13から成り、回転容器13の回転により発生する遠心力で回転容器13内に収容された原料溶液を流出・延伸させるようにした例を示したが、本実施形態では、図6に示すように、紡糸ヘッド3を回転容器31の下面に複数のノズル部材32を配設し、そのノズル穴にて原料溶液を流出させる小穴33を構成している。また、収集電極6は、中空軸体19の上端部に断面ハート型の回転体形状の拡大頭部21を設けた構成で、その拡大頭部21の上端に複数の凸部22が突設されている。
【0049】
本実施形態の構成においては、小穴33から原料溶液が流出して生成されたナノファイバー2は、最も近い凸部22に向かう電気力線に従って流動するとともに、回転容器31がa方向に回転し、収集電極6が逆方向のb方向に回転しているので、凸部22に向かって流動するナノファイバー2は回転体31及び収集電極6の軸芯を通る芯糸移動経路7に沿って移動している芯糸8に絡んで確実にかつ安定して巻き付き、均質で高強度の糸条11が形成される。なお、回転容器31と収集電極6は、少なくとも何れか一方を回転させれば良い。
【0050】
(第4の実施形態)
次に、本発明のナノファイバー合糸装置の第4の実施形態について、図7を参照して説明する。
【0051】
本実施形態は、上記第3の実施形態と基本構成は同じであるが、細部構成の異なった具体的な構成例を例示するものである。図7において、回転容器31の上壁には、電気絶縁性を有する回転筒体34の下端部が一体的に固定され、その回転筒体34の中間部が上部支持フレーム35にて軸受36を介して回転自在に支持されるとともに、回転筒体34の上部は小穴回転手段14に接続されている。回転容器31又は少なくともノズル部材32は導電性を有し、回転筒体34に設けた導電部材34aと軸受36を介してノズル部材32が電気的に接地されている。なお、軸受36を介して接地する場合には、その間に抵抗値を有する場合には、導電部材34aに直接ブラシ等を介して接続させるように構成してもよい。
【0052】
回転容器31の中心部の貫通開口を形成する内側筒壁37は、その上部が全周にわたって開口され、回転容器31の外周壁と内側筒壁37との間の環状収容空間に原料溶液供給手段38にて供給された原料溶液を収容し、ノズル部材32を通して小穴33から流出させるように構成されている。原料溶液供給手段38は、貯留容器39内の原料溶液を供給ポンプ40にて取り出し、回転筒体34を貫通させて回転容器31内に挿入配置された溶液供給管41の先端のL字屈曲部41aから環状収容空間内に原料溶液を供給するように構成されている。図示例では、原料溶液に作用する重力と回転容器31の回転による遠心力と小穴33と収集電極6間の電界の作用で、小穴33から原料溶液を流出させるようにしているが、環状収容空間内を加圧可能な構成として、原料溶液を圧力で押し出して流出させるようにしても良い。
【0053】
収集電極6は、上記実施形態と同様に凸部22を配設した環状の拡大頭部21を上端に有する中空軸体19の中間部が軸受23を介して下部支持フレーム42にて回転自在に支持され、中空軸体19の下部が電極回転手段24に接続されている。凸部22には、拡大頭部21と中空軸体19に設けられた導電部材19aと軸受23を介して第2の高電圧発生手段25にて発生された高電圧が印加されている。芯糸供給手段9は、上部支持フレーム35に配設されている。回収手段10は、下部支持フレーム42に配設され、製造された糸条11を巻き取って回収する糸条巻取リール10aと、芯糸移動経路7の下端を位置決めし、製造された糸条11を芯糸移動経路7から側方に取り出すためのガイドローラ10bにて構成されている。
【0054】
本実施形態においても、上記第3の実施形態と同様に、原料溶液供給手段38にて回転 容器31内に供給された原料溶液が小穴33から流出し、静電爆発によって生成されたナノファイバー2は、最も近い凸部22に向かう電気力線に従って流動するとともに、回転容器31がa方向に回転し、収集電極6が逆方向のb方向に回転しているので、凸部22に向かって流動するナノファイバー2は回転体31及び収集電極6の軸芯を通る芯糸移動経路7に沿って移動している芯糸8に絡んで確実にかつ安定して巻き付き、均質で高強度の糸条11が形成され、回収手段10にて回収される。なお、回転容器31と収集電極6は、少なくとも何れか一方を回転させれば良い。
【0055】
なお、以上の実施形態においては、紡糸ヘッド3を接地し、電界生成電極4と収集電極6若しくは収集電極6に高電圧を印加して紡糸ヘッド3と電界生成電極4との間及び紡糸ヘッド3と収集電極6との間、若しくは紡糸ヘッド3と収集電極6との間に電界を発生させるようにした例を示したが、紡糸ヘッド3に高電圧を印加して電界生成電極4や収集電極6を接地電位にしたり、紡糸ヘッド3と電界生成電極4や収集電極6に互いに逆極性や同極性の高電圧を印加するようにしても良く、要するに紡糸ヘッド3と電界生成電極4や収集電極6との間に高い電位差を印加してそれらの間に電界を発生するように構成すれば良い。
【0056】
なお、以上の実施形態においては、軸受を介して接続を行っている場合があるが、軸受が抵抗分を有する場合には、回転している軸に直接ブラシ等を介して接続するようにしてもよい。
【0057】
なお、実施形態においては、収集電極6の貫通孔20の周囲に複数の凸部を配置することで帯電したナノファイバーが確実に最も近い凸部に向かって収集されるために、安定して芯糸8の周囲にナノファイバーが絡みつくようになり、生成された糸条11の形状が安定し、かつ、生成されたナノファイバーの回収率も大きく向上する。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明のナノファイバーの合糸方法及び装置によれば、芯糸の回りの小穴から流出させた原料溶液が静電爆発して生成されたナノファイバーが収集電極に向けて流動するとともに、収集電極に複数の凸部が設けられていることで流動するナノファイバーの集束点がこれらの凸部に集中し、かつ小穴と収集電極とが芯糸移動経路の回りに相対的に回転していることで、複数の凸部に向けて安定して集束されたナノファイバーが芯糸の全周に均等に絡まって合糸されるので、ナノファイバーから成る高強度で均質な糸条を安定して生産性よく製造することができるので、ナノファイバーから成る高強度の糸条の生産に好適に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明の第1の実施形態におけるナノファイバー合糸装置の全体概略構成を示す部分断面正面図。
【図2】同実施形態における紡糸ヘッドと収集電極間の電気力線の発生状態を示す説明図。
【図3】同実施形態におけるナノファイバーに対する電気力線の作用状態を説明する平面図。
【図4】(a)、(b)は収集電極における凸部の他の配設例を示す平面図。
【図5】本発明の第2の実施形態におけるナノファイバー合糸装置の全体概略構成を示す斜視図。
【図6】本発明の第3の実施形態におけるナノファイバー合糸装置の要部構成を示す斜視図。
【図7】本発明の第4の実施形態におけるナノファイバー合糸装置の全体概略構成を示す縦断側面図。
【図8】本発明に先行するナノファイバー合糸装置の全体概略構成を示す斜視図。
【符号の説明】
【0060】
1 ナノファイバー合糸装置
2 ナノファイバー
5 ナノファイバー生成手段
6 収集電極
7 芯糸移動経路
8 芯糸
9 芯糸供給手段
10 回収手段
11 糸条
12、33 小穴
14 小穴回転手段
20 貫通孔
21 拡大頭部
22 凸部
24 電極回転手段
25 第2の高電圧発生手段(電界発生手段)
28 吸引手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
芯糸を所定の芯糸移動経路に供給する芯糸供給工程と、
芯糸移動経路の周囲に配置した少なくとも1つの小穴から原料溶液を流出させるとともに流出する原料溶液に電荷を帯電させ、静電爆発にて延伸させてナノファイバーを生成するナノファイバー生成工程と、
芯糸移動経路の回りに複数の凸部が配置された収集電極に帯電したナノファイバーが向かうように電界を形成するとともに、小穴と収集電極とを芯糸移動経路の回りに相対的に回転させ、ナノファイバーを芯糸に絡ませる合糸工程と、
芯糸にナノファイバーが絡まった糸条を回収する回収工程とを
有することを特徴とするナノファイバーの合糸方法。
【請求項2】
ナノファイバー生成工程において、小穴を芯糸移動経路の回りに回転させ、合糸工程において収集電極を小穴とは逆方向に回転させることを特徴とする請求項1記載のナノファイバーの合糸方法。
【請求項3】
回収工程において、収集電極の軸芯部に形成された芯糸移動経路が貫通する貫通孔を通して吸引することを特徴とする請求項1又は2記載のナノファイバーの合糸方法。
【請求項4】
芯糸を所定の芯糸移動経路に供給する芯糸供給手段と、
芯糸移動経路の周囲に配置されて原料溶液を流出させる少なくとも1つの小穴を有し、流出する原料溶液に電荷を帯電させて静電爆発にて延伸させてナノファイバーを生成するナノファイバー生成手段と、
原料溶液の帯電電荷とは逆極性の電圧を印加され若しくは接地され、ナノファイバー生成手段に対向する面の芯糸移動経路の回りに複数の凸部が配置された収集電極と、
ナノファアバー生成手段の小穴と収集電極を芯糸移動経路の回りに相対的に回転させる回転手段と、
芯糸にナノファイバーが絡まった糸条を回収する回収手段とを
備えたことを特徴とするナノファイバーの合糸装置。
【請求項5】
回転手段は、少なくとも小穴を芯糸移動経路の回りに回転させる小穴回転手段若しくは収集電極を芯糸移動経路の回りに回転させる電極回転手段を備えていることを特徴とする請求項4記載のナノファイバーの合糸装置。
【請求項6】
回転手段は、小穴回転手段と電極回転手段の両方を備え、かつ両方の回転手段は互いに回転方向が逆であることを特徴とする請求項5記載のナノファイバーの合糸装置。
【請求項7】
収集電極の軸芯部に形成された芯糸移動経路が貫通する貫通孔を通して吸引する吸引手段を設けたことを特徴とする請求項4〜6の何れか1つに記載のナノファイバーの合糸装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2010−31412(P2010−31412A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−192604(P2008−192604)
【出願日】平成20年7月25日(2008.7.25)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成20年度、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「革新的部材産業創出プログラム/新産業創造高度部材基盤技術開発/先端機能発現型構造繊維部材基盤技術の開発」にかかる委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【出願人】(304021417)国立大学法人東京工業大学 (1,821)
【Fターム(参考)】