説明

ナノファイバーを用いたフィルター製造方法

【課題】
ナノファイバーの生成部のユニットを小さくして大量生産するナノファイバーの製造方法を提供する。
【解決手段】
長分子配列を有する高分子材料を紡出ノズルから紡出する紡出ノズルを設け、金属球と前記紡出ノズル開口との間に高電圧を印加し、金属球と紡出ノズル開口との経路に直交するように高速気流噴射ノズルを設け、紡出ノズルから紡出するナノファイバーを前記高速気流噴射ノズルの高速気流によって進路を変更し、ナノファイバー捕集部に向けて飛散させるナノファイバー生成部であって、金属球の直径を放電しない直前付近、或いは、液滴・液粒にならない直前付近まで小さくして、金属球と紡出ノズル開口との距離を小さくするとともに、高電圧の電圧を小さくして、金属球と紡出ノズルのユニットを複数並列に並べて、複数のユニットの該紡出ノズルからの飛散するナノファイバーを集約して捕集するナノファイバー捕集部の捕集面で捕集する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナノファイバーを用いたフィルター製造方法に関し、特に、ナノファイバーを用いて、その性能を効率良く発揮するフィルターを大量生産することができるナノファイバーを用いたフィルター製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近時、一般的に直径が1ミクロン(=1,000nm)以下の太さの繊維であると定義されるナノファイバーが開発され、ナノファイバーの製造法としては、ESD(Electro−Spray Deposition)法、或いは、エレクトロ・スピンニング法と呼ばれる技法が最も注目され、その技術が開発されている(例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3参照)。
このESD法によるナノファイバーの製造は、先ず溶剤で溶解し、または溶融した各種生体高分子やポリマー(以下、単に「高分子」ということもある。)溶液をシリンジに充填し、シリンジに装着されているニードル型電極と、ナノ繊維を堆積させるコレクター電極との間に、高圧直流電源から数kV〜数十kVの直流高電圧を印加して、ニードル型電極とコレクター電極との間に強い電界場を発生させる。
この環境下で、ニードル型電極から紡糸溶液をコレクター電極に向けて放出すると、高分子を溶解していた溶剤等は電界場中で瞬間的に蒸発し、高分子は凝固しながらクーロン力で延伸され、ナノオーダーのファイバーが、室温、大気圧下というおだやかな条件で形成される。
【0003】
ナノファイバーにおいては、ナノ構造による特異な機能発現が期待でき、例えば、ナノファイバーは、同一体積での表面積が通常の繊維に比べ非常に大きいことから、従来の繊維が持つポリマー固有の性質の他に、吸着特性や接着特性などの新機能が発現し、従来にない新素材の開発が期待できる。警察官、消防士、医師、看護師が着用する多機能な特殊な防護服の研究が始められており、軍需用途は、従来より軽量で従来にない機能を持つ軍服、ナノメートル単位の集まりで、異なる機能をもつ積層新素材の開発が進んでいる。さらに、特許文献4に示すように、ナノファイバーで作ったフィルターは、繊維の占有面積が小さい割に空間を大きくすることができるので、低圧力損失で高捕集効率が良い特性が期待できることから、エアフィルターやマスク等が開発され、また、ナノファイバーを応用したバイオケミカルハザード防御用超軽量高機能防御服やナノファイバーを培地にした再生医療の開発も活発に行なわれている。
そのほか、可視光に対して透明であること、ナノオーダーで空孔サイズを制御できること、高度な分子組織化が可能なこと、生体がナノファイバーを異物として感じず生体適合性が良いこと等が挙げられる。
【0004】
しかしながら、ESD法でのナノファイバーの製造方法或いは装置は、1本のノズルからのスプレー量が非常に少ないため、大量生産に向かないという欠点がある。ESD法では、化合物やスプレー条件によって異なるが、通常1本のノズルからのスプレー速度は、約毎分数μρ程度であるので、大量生産をする場合には、ノズルを多数配置して、この多数のノズルから静電噴霧するという方法が採用されている。このような多数のノズルを使用するESDのナノファイバーの製造方法は、ノズルの数が多数必要とすることから、品質的に不十分であり、保守も困難であり、製造コストが高いものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−249966
【特許文献2】特開2004−68161
【特許文献3】特開2008−274487
【特許文献4】特開2006−289209
【特許文献5】特願2010−258324
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したように、従来からナノファイバーを用いたフィルターも開発されているが、ナノファイバーが高価であることやナノファイバーを基材で挟んで保持する為、ナノファイバーの固定に問題が有る等の不都合があり普及されない等の問題点があった。
本発明の課題は、このような問題点に鑑みてなされたもので、このナノファイバーを用いたフィルターは、ナノファイバー自体が未だ高価なため特殊な用途に限られており、また、大きなエアフィルターとなると強度も問題となり、一般のフィルターとしては普及していないのが現状である。
そこで、本発明者は、前記特許文献5に開示するように、1つのノズルからの紡(吐)出量を大幅に増やし、ナノファイバーのフィルターを一度に簡単な製造方法で接着剤もナノファイバーの特性を生かすように散布して、十分な強度を有するナノファイバーを用いたフィルターの製造方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、請求項1の発明は、ナノファイバー生成部の金属球の直径を放電しない直前付近、或いは、液滴・液粒にならない直前付近まで小さくして、前記金属球と紡出ノズル開口との距離を短くするとともに、高電圧の電圧を低くして、前記金属球と前記紡出ノズルのユニットを複数並列に並べるとともに、粗い隙間を有する基材面に、ナノファイバー状の接着剤を吹き付け、その上に前記ナノファイバー生成部の紡出ノズルから紡出するナノファイバーを均一の厚さになるように吹き付け、その後に基材とナノファイバーと接着剤を加熱及び加圧して接着するとともに、該加熱及び加圧は接着剤がナノファイバーの目をフィルム状になって塞がないような所定の温度及び圧力にして一体とすることを特徴とするナノファイバーを用いたフィルターの製造方法である。
【発明の効果】
【0008】
本発明のナノファイバーを用いたフィルターの製造方法によれば、電極である金属球の直径を小さくすることによって、両電極である金属球と紡出ノズル開口との距離を短くでき、また、加える高電圧も低くできるので、必要とするナノファイバーのフィルター層を簡単に製造することができ、ナノファイバー生成部のユニットを小型にすることができるとともに、複数のユニットを集約して幅広のナノファイバーの不織布を製造でき、安定的に大量のナノファイバーが製造できる。
更に、粗い目を有する基材面に、ナノファイバー状の接着剤を吹き付け、ナノファイバーを基材に加熱及び加圧し、接着剤がナノファイバーの目をフィルム状になって塞がないように接着したので、簡単な方法で接着剤がナノファイバーの特性を阻害せず、ナノファイバーを用いた高捕集率と低圧力損失を兼ね備え、かつ、基材からナノファイバーがずれることがない強度のあるナノファイバーを用いたフィルターを製造できる。
このように、ナノファイバーを用いた安価なフィルターの大量生産が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施例のナノファイバーを用いたフィルターの製造方法の概念概略図、
【図2】本発明の金属球と紡出ノズルとの電気力線を示す説明図、
【図3】図3(a)は図1での金属球、高速気流噴射ノズル、紡出ノズルの関係を示す説明図、図3(b)は図3(a)の側面からの説明図、
【図4】ナノファイバーの生成部の金属球と前記紡出ノズルのユニットを複数並べて1つのナノファイバー製造装置とした説明図、
【図5】高速気流噴射ノズルと紡出ノズルとの距離Cとナノファイバー生成状態との関係の[表1]の図、
【図6】紡出ノズルと金属球との軸線と高速気流噴射ノズルとの距離Dとナノファイバー生成状態との関係の[表2]の図、
【図7】電極間の距離B及び電圧と金属球(電極)の大きさによるナノファイバー生成状態との関係の[表3]の図、
【図8】接着剤を噴出するノズル部の概略断面図、
【図9】図8のノズル部の先端の拡大断面図、
【図10】実施例1の加熱ローラを70℃にした場合で製造したポリエーテルサルホン(PES)のナノファイバーと接着剤(EVA)との千倍率の顕微鏡写真の図、
【図11】実施例1の加熱ローラを71℃にした場合で製造したポリエーテルサルホン(PES)のナノファイバーと接着剤(EVA)との千倍率の顕微鏡写真の図、
【図12】実施例1の加熱ローラを75℃にした場合で製造したポリエーテルサルホン(PES)のナノファイバーと接着剤(EVA)との千倍率の顕微鏡写真の図、である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の特徴は、ナノファイバー生成部のユニットを小さくして複数を必要なナノファイバーのフィルター層を形成し、同時に、強度のある基材に接着し、その接着の形態がフィルター機能を低下させないようにしたものである。
以下に、本発明のナノファイバー製造方法の好適な実施例を図面を参照して説明する。
【実施例1】
【0011】
本発明の実施例1のナノファイバー製造方法を説明するが、図1の概略を示した概念説明図に示すように、基本的にはESD(Electro−Spray Deposition)と高速噴出気流(ジェット)を組み合わせたジェットESD法を採用したものであり、ナノファイバー生成部Jとナノファイバー接着剤生成部Kとナノファイバー捕集部L1及びフィルター形成部L2の捕集部Lとから構成されている。
[ナノファイバー生成部J]
本発明の長分子配列を有する高分子材料としては、たんぱく質などの生体高分子溶液・有機高分子溶液、或いはポリマー溶液などであるが、本実施例1のナノファイバー製造装置(製造方法)では高分子材料としてポリエーテルサルホン(PES)を用いている。
フィルターの素材としてポリエーテルサルホン(PES)を用いたのは、耐熱性が優れていることに加え、本発明で開示した製造装置でもより細い、100nm〜50nmのナノファイバーが製造できるからである。
図1の材料供給部1には、材料であるポリエーテルサルホン(PES)を有機溶媒であるDMF(ジメチルホルムアミド)で溶かして液状化した高分子溶液N1を収納している。
この材料供給部1内の高分子溶液N1はギヤポンプ11で押し出しの圧力を受けている。高分子溶液N1は所定量を正確に送り出すことが可能なギヤポンプ11により、所定量を供給配管12を介して、紡出ノズル21に押し出すように供給される。高分子溶液N1は供給配管12によって金属製の紡出ノズル部2に導入し、紡出ノズル部2には紡出ノズル21の先端の開口211から紡出される。ここで、高分子溶液N1を紡出する速度を調整する前述のギヤポンプ11を適宜調整することにより、後述するように複数紡出ノズル21から均等にナノファイバーが生成されるように、適切な吐出速度に調整する。
【0012】
ところで、ESD法の原理は、ポリエーテルサルホン(PES)等の長分子配列を有する高分子材料が引火性有機溶媒で膨潤状態になってバラバラ状態に存在し、この状態で紡出ノズルから紡出されると、表面積が大きいため溶媒が急速に蒸発して、横方向に縮み高分子の分子鎖の長手方向に整列していく。そして、溶媒の蒸発とそれに伴うクーロン力の増加により高分子が伸びることになる。これを繰り返すことにより徐々に伸長してナノファイバーに成長していくのである。高分子が伸長するにしたがってバラバラであった高分子は絡み合いながら整列していくものと考えられる。なお、材料が低分子の場合は、分子の長さ自体が短いため、絡み合うことがなく、ナノ粒子が生成される。
したがって、高分子溶液N1の吐出速度の調整によって、過剰な速度で形成されるウェットなデポジットではなく、乾燥したデポジットを得ることが可能となる。即ち、ウェットなデポジットが生じないような、限界の吐出速度に調整することが必要である。
【0013】
図1において、生成部装置枠体Mには、紡出ノズル21と紡出ノズルの開口211の開口方向に対向して球状の電極部3を形成する金属製の金属球31を配置し、開口211と金属球31の最短表面距離とは所定間隔を隔てて設置される。
そして、紡出ノズル21も導電性の金属製として、この紡出ノズル21と前記金属球31とには高電圧電源33が印加され、金属球31には高電圧電源33のマイナス側の電圧がリード線を介して供給され、プラス側はリード線を介して接地Gされている。
高電圧電源33により高電圧を印加することで、紡出ノズル21を経由して高分子溶液N1にはプラスの電圧が印加され、紡出される高分子溶液N1中の高分子はプラスに帯電される。なお、このプラス及びマイナスは上記の実施例1に限定されることはなく、高分子材料に電荷を付与すればよく、逆に、高分子溶液N1に与える電圧の極性はマイナスであってもよい。
また、紡出ノズル部2の紡出ノズル21までの金属の誘導筒22は、ポリエーテルサルホン(PES)の粘度をなるべく下げるためにヒーター等の加熱器23で誘導筒22及び紡出ノズル21を約80℃にまで加熱している。
【0014】
上記プラス側の電極を金属球31としたのは、図2に示すように、電気力線Eが紡出ノズル21の先端部の開口211に最大に集中するからであり、帯電した高分子溶液中の高分子材料N1は金属球31に向かって直線的に飛び出すことになる。 したがって、金属球31の直径は、最も効率よく電気力線Eが紡出ノズル21に集中するようにすればよいが、先行技術では球の直径は帯電状態が生じることを想定して直径25mmとして、高電圧を30Kvとしたが、前記の紡出ノズル21と金属球31の間隔も、高圧電源の電圧等によっても最適値は異なるが、放電しない程度の55mm〜65mm とした。ところで、この金属球の直径が余り小さいく針のようにすると放電を起こしてショートしてしまい、紡出ノズル21と金属球31との間が帯電の状態とはならない。
また、紡出ノズル21と金属球31との中間に位置する高速気流噴射ノズル部4は、帯電しないように金属ではなく、絶縁物質の合成樹脂製等にしておく必要がある。
【0015】
ここで、電荷を有するナノファイバーが紡出ノズル21から浮遊する途中で静電誘導され、紡出ノズル21の開口211の+電荷の量が中和されていくので、付与する電荷が不十分な場合は液滴のまま浮遊することになりますが、後述する高速気流の噴射ノズル41(図1参照)によって、紡出するナノファイバーの進路を変更して紡出ノズル21と金属球31の間から除去することで、両者が依然としてコンデンサー結合を保つことができ、かつ、生産量が増大することもでき、これも本発明の重要な特徴の1つでもある。
また、本実施例では、金属球31と紡出ノズル21の間を高電圧電源33で印加し、紡出ノズル21を接地Gとしているので、金属球31の印加によって紡出ノズル21(接地G)からの電荷が静電誘導され、ナノファイバーの高分子に電荷が供給されているが、基本的には金属球31は静電誘導しているだけで、電流は接地側から供給され消費電力は零である。このことも本発明の重要な特徴の1つで、紡出ノズル21の数を十分増やして並列にしても小型の高電圧電源だけで十分である。したがって、金属球31と高速気流の噴射ノズル41の生成ユニットYを小型にして単位面積あたりの生成ユニットYを密集させて生産量を大幅に向上させることができる。
【0016】
次に、前記金属球31と紡出ノズル開口211との経路に、直交するように高速気流を噴出する高速気流噴射ノズル部4が配置される。この高速気流噴射ノズル部4の噴射ノズル41からの高圧ポンプ42等により発生する高速気流Xは、紡出ノズル開口211において低気圧を発生させ、高分子溶液N1を開口211から吸い上げる力を発生させる。したがって、高速気流Xは金属球31と紡出ノズル開口211とを結ぶ線上(経路)である必要がある。
そこで、本実施例では図3(b)に示すように、高速気流の噴射ノズル41の開口411は水平に複数(図1では3個)設けて、空気流の層が水平方向に所定の幅を保つようにしたので、高速気流Xは金属球31と紡出ノズル開口211とを結ぶ線上(経路)に位置させることが容易である。
【0017】
また、この高速気流Xは、本実施例ではドライヤーによって湿度30%以下に乾燥させた空気で、かつ、ナノファイバーの状態が一定に維持されるように温度が一定に保たれ、風速が200m/sec以上として、ナノファイバーのアスペクト比が大きい状態にすることで溶媒の蒸発を促進させ、その結果、高分子材料が硬化するが、硬化するまでにクーロン力で引き伸ばすことができなくなるまで最大限伸びることになる。
したがって、ノズル開口211からナノファイバー捕集部L1の捕集面までの距離もナノファイバーが伸びきってナノ単位にするための距離が必要であり、実施例1では装置内の温度等にもよるが、その距離は1m程度以上である。実際にはこの距離を4m以上にして捕集面での積層状態を均一にしており、距離を長くすることで、基材の背面から空気を吸引させ、目の粗い箇所で吸引力が大きくなることを利用し、その箇所にナノファイバーが吸い寄せられるより均一に積層する。
また、本発明の重要な特徴の1つは、金属球31からのクーロン力と、前記高速気流噴射ノズル部4と噴射ノズル41の開口411によって、開口211の付近で発生する低気圧で電荷を有する高分子を直線的に飛び出させ、ナノファイバー生成に必要な一定温度で乾燥した200m/sec以上の高速気流を付与することである。
【0018】
ここで、高速気流の噴射ノズル41の開口411の配置について図3と図5の[表1]及び図6の[表2]を参照して説明する。
紡出ノズル21と金属球31を結ぶ線B上から、噴射ノズル41の開口411までの距離C(図3でのC)は、図5の[表1]に示すように、金属球31の直径に拘わらず、前記線上から直角に3mm〜4mm程度離れた位置Cでナノファイバーの生成が「良」で最適であるが、これは3mm以下の距離では繊維にならず液滴になってしまうからであり、これより離れると噴射噴射ノズル部4側に吸い寄せられて戻るような現象が起きたり、捕集部Lに飛散しないで金属球31に付着するからである。なお、噴射ノズル41の開口411から噴射する空気速度は3mm位置でも急速に減速するので200m/sec以上に大幅に速度を速めても効果が薄い。
【0019】
次に、高速気流噴射ノズル部4の噴射ノズルの開口411から距離Dは、図6の[表2]に示すように、金属球31の直径に拘わらず、前記線上紡出ノズル開口211から水平距離(距離D)で8.5mmから10mmでナノファイバーの生成が「良」で最適であるが、これは6.5mm以下の距離では繊維にならず液滴になったり、噴射ノズル41側に戻ったりするからであり、これより離れても液滴になってしまうからである。
これらを纏めると、高速気流噴射ノズルの開口411は、紡出ノズル開口211から水平距離(距離D)が8.5mmから10mmであり、かつ、開口411は金属球31の底面311と紡出ノズル開口211を結ぶ線Bと平行で、紡出ノズル開口211から垂直距離(距離C)で3mm〜4mm離れた位置に在ることが判る。なお、本ナノファイバーの製造方法は、1つの紡出ノズル21から生成されるナノファイバーは、生成される量に拘わらず、1本のナノファイバーであるが、高速空気で移送される際には、ランダムな綾振り作用により、捕集面には不織布状に集積される。
【0020】
ここで、大量にナノファイバーを生産するには、図4に示すように、図3に示す多くの紡出ノズル21の複数を並列して配置し、これを捕集部Lで集約して一括で捕集すれば良いが、問題となるのは、噴射ノズル41の開口411の紡出ノズル21と金属球31との距離Bが大きいと装置が大きく成るばかりか、噴射ノズル41と紡出ノズル21と高速気流の噴射ノズル41のユニットYと、隣り合うユニットYの距離が大きくなることにより捕集部Lでの不織布に斑が生じてしまう。
これを避けるためには、ナノファイバーの生成が「良」であることを条件に前記距離Bをできる限り短くする必要がある。
なお、本実施例の装置ではユニットYは横に6ユニットY、縦に平行に4ユニットYとし、最上位の横を6ユニットY+1ユニットYと配列したので、合計6×4+1=25ユニットを配列している。(図4は、その一部)
【0021】
本発明の特徴の1つは、ナノファイバーが生成されることを条件に、金属球31の直径を小さくすると、金属球31の底面311と紡出ノズル開口211との距離B(図3)が小さくできること、及び、高電圧の電圧も低くなることを発見したことに基づくものである。
ただし、金属球31の直径をあまり小さくして針状に近づけると、(1)付近を帯電するのではなく、放電によるショートが起こってしまい、図2のような帯電した雰囲気にはならず、ナノファイバーは生成しない現象、及び、(2)液滴や液粒になってしまい、この場合もナノファイバーは生成しない現象となることが判った。
【0022】
これを実験で検証したのが、図7の[表3]である。
[表3]において、図3での金属球31の直径Aを25mm、15mm、10mm、8mm、6mm、5mm、4mm、1mmを用意し、それぞれの金属球31毎に、金属球31の底面311と紡出ノズル開口211との距離Bを11.5mm、16.5mm、22mm、28mm、35mm、先行技術の55mmから65mmに、それぞれにナノファイバーが生成可能な範囲と思われる電圧3kv、8kv、13kv、18kv、23kvをそれぞれに印加し、ナノファイバーの生成状態を検証した。また、これを5回繰り返して実験したが、ナノファイバーの生成状態について、紡出材料がナノファイバーに生成されて良好の状態を「◎」、良好ではないが生成可能な状態を「可」、紡出材料が繊維ではなく液滴になってしまう状態を「a」、液滴ではないが細かな液つぶになってしまう状態を「b」、金属球に付着してしまう状態を「c」、放電してショートしてしまう状態を「d」、捕集部に飛散しないで高速気流噴射ノズル側に戻ってしまう状態を「e」で表している。
【0023】
そこで説明すると、[表3]の右上欄は前掲の特許文献4での実施例であるが、球径25mmで電圧が30kv〜40kvであったが、この状態でナノファイバーは良好に生成するが、金属球31の底面311と紡出ノズル開口211との距離Bは55mmから65mmと大きかった。
この[表3]において、ナノファイバーの生成が可能の「可」、及び、良好の「良」の状態を太線の点鎖線で囲むと、左下方向の矢印Zの領域であることが判る。このことは、金属球31の直径Aを小さくすると、金属球31の底面311と紡出ノズル開口211との距離B(図3)が小さくできること、及び、高電圧の電圧も低くなることが判り、逆に、球径Aが1mm以下となると、針状で13kvの電圧では放電が起こって生成不能であり、電圧を8kv以下にすると、液滴・液粒になってしまいナノファイバーを生成することはできない。
【0024】
図7の[表3]において、ナノファイバーの生成が良好で、距離Bが比較的短く、電圧が比較的低いのは、(1)金属球31の直径Aが6mmの場合で、距離Bが22mmで電圧13kvの場合であり、(2)金属球31の直径Aが5mmの場合で、距離Bが22mmで電圧13kvの場合と距離Bが16.5mmで電圧8kvの場合であり、(3)金属球31の直径Aが4mmの場合で、距離Bが22mmで電圧13kvの場合である。
良好ではなく「可能」で場合(放電dが起こる場合は、不安定な状態であるので全て不可とする。)を含めると、金属球31の直径は8mmから4mmにすることによって、金属球31と紡出ノズル開口211との距離を11.5mmから22mmにすることができ、高電圧は3kvから13kvにすることができる。更に、作動が安定する条件を考慮すると、必ず「良好」である場合を含むようにするには、金属球31の直径は6mmから4mmにすることによって、金属球31の底面311と紡出ノズル開口211との距離を11.5mmから22mmにし、高電圧は3kvから13kvにすることができる。ただし、金属球31の底面311と紡出ノズル開口211との距離が11.5mmの時は、金属球31の直径Aを6mm又は5mmとする方が良い。
このように、 安定してナノファイバーが生成できる範囲で、ナノファイバー生成部の金属球31の直径を、放電(ショート)しない直前付近、或いは、液滴・液粒にならない直前付近まで小さくして、金属球31と紡出ノズル開口211との距離Bを小さくするとともに、高電圧の電圧を小さくしてこれらの生成ユニットYを小型にしたものである。このことにより、単位面積に当たりの紡出ノズル開口211の数を多くすることが可能となり、結果として数多くの生成ユニットYを複数並列に並べることが可能となり、ナノファイバー及びその不織布を大量に生産することができる。なお、上述したように、本実施例の装置では合計6×4+1=25ユニットを配列している。
【0025】
[実施例1のジェットESD法の条件]
図1に示す実施例1では、安定してナノファイバーが良好に生成できる条件は、表3から金属球の直径が5mmであることも判ることから、直径Aを5mmとし、距離Bを16mmとし、電圧を13kvに設定した。
設定条件
材料:ポリエーテルサルホン(PES)
溶媒:DMF(ジメチルホルムアミド)
ファイバー生成部電圧:−13kv
高速気流の圧力:0.4MPa
紡出量(吐出量):0.5mL/min
金属球の直径:5mm
紡出ノズルと金属球の距離:16mm
ノズル開口から捕集面までの距離:3m
捕集面での吸収負圧:200Pa
【0026】
上記実施例での設定条件での実験装置では、直径が50nm〜100nmのナノファイバーが製造できるが、これは、後述する図10〜12での電子顕微鏡写真での下側の細い繊維がポリエーテルサルホン(PES)のナノファイバーである。
図1の紡出ノズル21からは1本のナノファイバーだけしか紡出しない場合のものであるが、ランダムな綾振り作用等によって、ポリエーテルサルホン(PES)のナノファイバーが不織布(ウェブ)状に積層する状態が判る。
なお、実施例1での材料のポリエーテルサルホン(PES)に代えて、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリウレタン(PU)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)でもほぼ同様の結果が得られた。
【0027】
ところで、実施例1では、ポリエーテルサルホン(PES)の溶剤としては、DMF(ジメチルホルムアミド)を使用したが、他のジメチルアセトアミド(DMAc)でも同様の結果が得られる。
また、他の高分子と溶媒との組み合わせとしては、ポリビニールアルコール(polyvinyl alcohol, PVA)と水、ポリフッ化ビニリデン(PolyVinylidene DiFluoride; PVDF)やポリアクリロニトリル(polyacrylonitrile,PAN) やポリエーテルサルホン(Poly Ether Sulphone,PES)とジメチルアセトアミド(DMAc)もしくはDMF(ジメチルホルムアミド)、ナイロン(Nylon)と蟻酸、キトサンと酢酸もしくはクエン酸等の弱酸、アクリル(polymethyl methacrylate, PMMA)とメタノール、ポリ乳酸とクロロホルムの組み合わせなどがナノファイバーの製造として可能である。
【0028】
[ナノファイバー接着剤生成部K]
次に、ナノファイバー接着剤生成部Kは、図1に示すように、ナノファイバー生成部Jと接着剤とナノファイバーの捕集部Lとの間に位置し、ポリプロピレン(或いはポリプロエチレン)の目の粗い不織布(或いは織又は網)で本実施例のフィルターの基材N3となる表面に、ナノファイバー状の接着剤N2を吹き付けるものである。
基本的には接着剤N2は、ナノファイバーが基材N3に捕集される直前に、図8、図9に示すように、ノズル部61からナノファイバー状にして基材N3に吹き付けるが、この接着剤N1がフィルム状になってナノファイバーの隙間を埋めてしまうと、折角のナノファイバーの良好な通気性が阻害されてしまう。したがって、接着剤N1はできるだけ細く、なるべくフィルム状にならないように、かつ、基材N3に確実に接着することが必要である。
図1において、ナノファイバー接着剤生成部Kの接着剤吹き付け部6は、中央の下部に配置され、上下に2個のノズル部61が一緒に基材移動部72の基材N3の面に対して平行に距離110cm(ナノファイバー生成幅)を往復移動させている。これは、接着剤N2はナノファイバー層のように積層させる必要がなく、強固にナノファイバーN1が基材N3に固着されるのであれば、むしろ少ないほうが良いからである。
【0029】
本実施例では、接着剤としてEVA系ホットメルト接着剤(株式会社MORESCOモレスコメルトTN-111)を使用した。
この接着剤の組成は以下のようなものである。

エチレン−酸ビニル共重合体・・・15〜25%重量
粘着付与剤 ・・・53〜63%
固形パラフィン ・・・5 〜15%
鉱油 ・・・5 〜15%
オレフィン系共重合体 ・・・5%以下
添加剤 ・・・2%以下
【0030】
上記接着剤の高温の方が粘度が低くなり、180℃での粘度は300(mPa・s)であるので、この状態で使用できるようにするため、ノズル部61には加熱器62を設けてある。
ここで、接着剤吹き付け部6とノズル部61の詳細を、図1、図8及び図9に沿って説明するが、180℃程度に加熱した接着剤供給部612から供給ポンプ614によって、接着剤供給管613から先端ノズル直径が0.15mmの中心ノズル611に供給される。この中心ノズル611の先端の外筒を包むように筒状空気吹出ノズル615を設け、この筒状空気吹出ノズル615から高速空気を噴射して中心ノズル611から接着剤を引き抜くように基材N3に向かって噴射する。このとき空気を送風するエアポンプ617で50リットル/分で空気供給管616を介して噴出面積約1mm2から、ノズル部61全体を約200℃に加熱器62で加熱し、噴出空気も約180℃程度に加熱して噴出し、接着剤がノズル先端でも180℃を維持するようにしている。
このような構成により、特にESD法を用いなくても、この方法よりは多少太くはなるが、直径200nm〜400nmの2本のナノファイバー状の接着剤が生成されることが判明し、このナノファイバー状に溶融した接着剤がポリプロピレンの基材N3にジグザグ状に貼り付くよう吹き付けられ、全体に均一に塗布される。
【0031】
[ナノファイバー捕集部L1及びフィルター形成部L2(捕集部L)]
次に、ナノファイバーの捕集部Lを説明する。
ナノファイバーの捕集部Lのナノファイバー捕集部8(L1)は、図1に示すように、フィルターの基材7となる目が粗いが強度のあるポリプロピレンPPの不織布を、下から上にスクリーン状に移動させるための下フィードローラ81と上フードローラ82が設けられ、その両ローラの間には、ポリプロピレンの基材N3とナノファイバーN1を垂直に維持するために強度のある平面保持用金網83が設けられ、その背後にはナノファイバーN1を基材N3に吸い寄せるために吸引ダクト84が配置され、平面保持用金網83と基材N3の各素材の目を介してナノファイバーN1を吸引ポンプ(図示せず)による吸引空気(吸引負圧200Pa)を用いて吸い寄せ、かつ、下方位置の目の粗い箇所で吸引力が大きくなることを利用し、その箇所に上方位置でのナノファイバーが吸い寄せられ、その結果、ナノファイバー層の目の大きさが均一になり空気を通過する量も均一になるようにしている。
ここで、ナノファイバー捕集部L1とフィルター形成部L2(L)を動作を説明すると、基材7の基材供給部71には、目の粗いポリプロピレンPPの不織布であって、空気通過にほとんどが支障がない基材7(N3)が巻き取られている。この基材供給部71の軸が本装置の稼働時には基材7(N3)を巻き解くように回転し、フィードローラ81により所定量の基材7を基材移動部72の平面保持用金網83に送り出す。
フィードローラ81より送りだされた基材N3は、平面保持用金網83上で上方に移動するが、先ず、上述したナノファイバー状の接着剤N2が吹き付けられ塗布されるが、接着剤の温度は冷めており接着機能はなく、次に、接着剤N2の上に、ナノファイバー生成部Jで生成されたナノファイバーN1が積層される。
【0032】
次に、フィルター形成部L2について説明するが、一応、最下層がポリプロピレンの基材(N3)層、中間層が接着剤(N2)層、最上層がポリエーテルサルホン(PES)のナノファイバーN1の層となり、上フィードローラ82により方向を変えて送りだされるが、未だ完全に接着されていないので、再び接着剤N2を加熱ローラ85を通過させて加熱し接着機能を回復させ、加熱ローラ85では所定の温度に接着剤(EVA)N2を温めるともに、これら積層体を屈曲させることによって圧力を付与し、N1、N2、N3を一体に接着にしてフィルター巻き取部73で巻き取って製品を完成させる。
ここで、接着剤N2を加熱する加熱ローラ85の加熱温度が重要となる。すなわち、加熱温度が低いと接着が完全ではなく、ナノファイバーN1と基材N3とが簡単に剥がれてしまい、加熱温度を高くしすぎると接着力は強くなるが、エチレン−酸ビニル共重合体等の接着剤はフィルム状になってしまいポリエーテルサルホン(PES)のナノファイバーの隙間(目)を塞いでしまい、フィルターの空気通過を阻害してしまいフィルター機能が低下する。
本実施例では加熱ローラ85の加熱温度を71℃に設定した。これは70℃でのフィルターの図10の千倍率の顕微鏡写真に示すように、ナノファイバー状で溶融しておらず余り接着していないが、71℃ではフィルターの図11の千倍率の顕微鏡写真に示すように、多少溶融して接着機能を発揮しており、75℃ではフィルターの図12の千倍率の顕微鏡写真に示すようにフィルム状になって、隙間を塞いでしまい、空気通過を阻害するようになっている。
【0033】
ここで、本実施例で製造したナノファイバーを用いたフィルターの性能を、従来の市販のHEPAエアフィルターと比較した実験結果を示す。
[比較例フィルター]
日本無機(株)HEPAエアフィルター(アトモスGC(商標)捕集効率K)、
厚さ29mm:1層
[本実施例のナノファイバーフィルター]
基材+ナノファイバー:厚さ0.335mm〜0.42mm、1層
基材:ポリプロピレンの不織布,基材0.255mm〜0.36mm、目付0.007g/cm2
接着剤:エチレン−酸ビニル共重合体,直径200nm〜400nm,目付0.00036g/cm2
ナノファイバー素材:ポリエーテルサルホン(PES)
直径100nm〜50nm,目付0.0004g/cm2
[実験の前提条件]
実験の測定条件は、JIS B 9927:2000の「クリーンルーム用エアフィルター性能試験方法」に準じて行い、各試料を15cm×15cmの面積にして、風圧が65.67リットル/分とし、パーティクルカウンタ(測定器:日本カノマックス株式会社、MSP1000XP(粒子からの光の散乱の強さを測定))で、0.3μmの塵の数を入口と出口で測定した。
[実験結果]
比較例:圧損98Pa 捕集効率90%
実施例:圧損30Pa 捕集効率95%
このように、本実施例のナノファイバー使用のフィルターは、従来の比較例のHEPAフィルターの29mmに比べて、厚さ0.335mm〜0.42mm(0.16mm〜0.08mm:ナノファイバーのみ)と薄く、かつ、捕集率が従来の比較例の90%と比べて95%と高いにも拘わらず、空気の圧損は従来の98Pa に比べて30Paと低く、空調機に使用した場合にファンへの負担は著しく軽減される。
【0034】
以上説明したように、本発明の実施例のナノファイバー製造方法は、静電誘導のESD法と高速気流との組み合わせ、金属球を可能な限り小さくしたことにより、金属球31の底面311と紡出ノズル開口211との距離Bが短くできること、及び、高電圧の電圧13kvから3kvと低くすることができる。以下、本実施例の利点は以下のようなものである。
1.紡出ノズル1本当たりの生産量は、従来の高速気流を用いない紡出ノズルの1000本から3000本相当の生産能力を有する。
2.金属球を小さくしたことにより、金属球31の底面311と紡出ノズル開口211との距離Bが短くできる。
3.高電圧の電圧13kvから3kvと低くすることができる。
4.金属球31と紡出ノズル21と高速気流の噴射ノズル41からなる生成ユニットYのスペースを小さくすることができ、複数の生成ユニットYを並列しても全体として小型になるので、装置1台当たりの紡出量を大幅に増やして大量生産が可能となる。
【0035】
5.ナノファイバー接着剤生成部Kは、接着剤を加熱して中心ノズルから噴射し、その周りから中心ノズルを包むように高温の高速空気を噴射したので、簡単な装置でナノファイバー状の接着剤を生成することができる。
6.基材N3とナノファイバーN1と接着には、接着剤がナノファイバーの目をフィルム状になって塞がないような所定の温度及び圧力にして一体としたので、ナノファイバーを用いた高捕集率と低圧力損失を兼ね備え、かつ、強度のあるフィルターを製造できる。
このことは、従来のナノファイバーを用いたフィルターのように単にナノファイバーを基材で挟んだだけのものとは異なり、ナノファイバーの位置は時が経てもずれることがなく、しかも基材の強度と同じになり、かつ、ナノファイバーを用いたフィルターの特性である高捕集率と低圧力損失を有する機能を極力損なわない状態で製造することができる。
7.ナノファイバー生成部Jと、ナノファイバー接着剤生成部Kと、接着剤とナノファイバーの捕集部Lが従来のように連携して荷電させる必要がないのでそれぞれ分離可能であり、装置が簡単で、メンテナンスも簡単となり、温度・湿度の管理が簡単でランニングコストが安価で、拡張性も高い。
8.ナノファイバー捕集部L1の装置内部をダクトで吸引して負圧にして、希釈した引火性有機溶媒をスクラバに回収し外部に漏れない。
9.ナノファイバー捕集部L1の平面保持用金網の背面をダクトで吸引して負圧にしているので、下方位置のナノファイバーの目の粗い箇所で吸引力が大きくなる。その箇所に上方位置のナノファイバーが吸い寄せられ、その結果、ナノファイバー層の目の大きさが均一になり空気を通過する量が均一になる。
なお、本発明の特徴を損うものでなければ、上記の実施例に限定されるものでないことは勿論である。
【符号の説明】
【0036】
J・・ナノファイバー生成部、K・・ナノファイバー接着剤生成部、
L・・捕集部、L1・・ナノファイバー捕集部、
L2・・フィルター形成部、
M・・生成部装置枠体、
E・・電気力線、G・・接地、
N1・・高分子溶液(PES)、N2・・接着剤(EVA)、
N3・・基材(PP不織布)
X・・ 高速気流、Y・・生成ユニット、
1・・材料供給部(材料容器)、11・・ギヤポンプ(吐出手段)、
12・・供給配管、
2・・ 紡出ノズル部、21・・紡出ノズル 、211・・紡出ノズル開口、
22・・誘導筒、23・・ヒーター(加熱器)、
3・・電極部、31・・金属球、311・・底面、33・・高電圧電源、
4・・高速気流噴射ノズル部、41・・噴射ノズル、411・・開口、
42・・高圧ポンプ
6・・接着剤吹き付け部、61・・ノズル部、
611・・中心ノズル(接着剤)、612・・接着剤供給部、
613・・接着剤供給管、614・・供給ポンプ、
615・・筒状空気吹出ノズル、616・・空気供給管、617・・エアポンプ、
62・・加熱器、
7・・基材、71・・基材供給部、72・・基材移動部、
73・・フィルター巻き取部、
8・・ナノファイバー捕集部
81・・下フィードローラ、82・・上フィードローラ、83・・平面保持用金網、
84・・吸引ダクト、85・・加熱ローラ、

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナノファイバー生成部の金属球の直径を放電しない直前付近、或いは、液滴・液粒にならない直前付近まで小さくして、前記金属球と紡出ノズル開口との距離を短くするとともに、高電圧の電圧を低くして、前記金属球と前記紡出ノズルのユニットを複数並列に並べるとともに、
粗い目を有する基材面に、ナノファイバー状の接着剤を吹き付け、その上に前記ナノファイバー生成部の紡出ノズルから紡出するナノファイバーを均一の厚さになるように吹き付け、その後に基材とナノファイバーと接着剤を加熱及び加圧して接着するとともに、該加熱及び加圧は接着剤がナノファイバーの目をフィルム状になって塞がないような所定の温度及び圧力にして一体とすることを特徴とするナノファイバーを用いたフィルターの製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate


【公開番号】特開2012−224946(P2012−224946A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−90534(P2011−90534)
【出願日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【出願人】(509345567)ナノファクトリージャパン株式会社 (5)
【Fターム(参考)】