説明

ナノファイバ製造装置および製造方法

【課題】高い生産効率を維持しつつ、品質の高いナノファイバを製造する。
【解決手段】環状のフランジ部232を備える流出体211と、流出体211と所定の間隔を隔てて配置される帯電電極221と、流出体211と帯電電極221との間に所定の電圧を印加する帯電電源222とを備えフランジ部232は、フランジ部232の内方を流通する原料液300を空間中に流出させる流出孔216が放射方向に設けられ、流出孔216の先端である開口部が並んで配置される先端部116と、先端部116から中央方向に向かって相互の間隔が徐々に広がるように配置され、流出孔216を挟むように先端部116から延設される二つの側面部117とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、静電延伸現象によりサブミクロンオーダーからナノオーダーの細さである繊維(ナノファイバ)を製造するナノファイバ製造装置、ナノファイバ製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂などから成り、サブミクロンスケールの直径を有する糸状(繊維状)物質を製造する方法として、静電延伸現象(エレクトロスピニング)を用いた方法が知られている。
【0003】
この静電延伸現象とは、溶媒中に樹脂などの溶質を分散または溶解させた原料液を空間中にノズルなどにより流出(噴射)させるとともに、原料液に電荷を付与して帯電させ、空間を飛行中の原料液を電気的に延伸させることにより、ナノファイバを得る方法である。
【0004】
より具体的に静電延伸現象を説明すると次のようになる。すなわち、帯電され空間中に流出された原料液は、空間を飛行中に徐々に溶媒が蒸発していく。これにより、飛行中の原料液の体積は、徐々に減少していくが、原料液に付与された電荷は、原料液に留まる。この結果として、空間を飛行中の原料液は、電荷密度が徐々に上昇することとなる。そして、溶媒は、継続して蒸発し続けるため、原料液の電荷密度がさらに高まり、原料液の中に発生する反発方向のクーロン力が原料液の表面張力より勝った時点で原料液が爆発的に線状に延伸される現象が生じる。これが静電延伸現象である。この静電延伸現象が、空間において次々と幾何級数的に発生することで、直径がサブミクロンオーダーの樹脂から成るナノファイバが製造される。
【0005】
以上のような静電延伸現象を用いてナノファイバを製造する装置の専らの課題として生産効率の向上が挙げられる。例えば、原料液を空間中に流出させる細い円筒形状のノズルをマトリクス状に配置し、単位時間あたり単位面積あたりのナノファイバの発生量を増加させ、ナノファイバの生産効率を向上させることが考えられる。しかし、単位面積あたりのナノファイバの発生量を増加させるためには、ノズルの配置間隔を狭めればよいが、間隔が狭まると隣接するノズル同士が電界干渉を起こして発生するナノファイバに不具合が発生する。そこで当該課題を解決するために特許文献1に記載の発明は、ノズルの間に格子状に隔離板を配置し、該隔離板に交流電圧を印加することで、電界干渉を防止している。
【0006】
また、特許文献2に記載の発明のように、円筒状の流出体の側面に多数の孔を放射状に設け、流出体をその軸周りで回転させることにより原料液を空間中に流出させる装置も提案されている。この発明では、滑らかな曲面(周面)に孔の開口を配置することで、前記隔離板を設けること事無く電界干渉を抑止することができ、開口を密に設ける事が可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002−201559号公報
【特許文献2】特開2008−150769号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところが、特許文献1の発明では、ノズルの間に隔離板を設ける必要があるため、その分ノズルの間隔が広くなり、生産効率低下を招くことになる。また、ノズルを隔離板で囲うことになるため、当該囲われた空間に帯電蒸気が滞りやすくなり、製造されるナノファイバに悪影響を及ぼすことが懸念される。また、各ノズルに供給される原料液の圧力を均一にするのは難しく、製造されるナノファイバの質にムラが発生することが考えられる。
【0009】
さらに、本願発明者らは、隔離板が設けられていたとしても、ノズルの外周壁などからイオン風が発生し、該イオン風が製造されるナノファイバに悪影響を及ぼすことを見いだすに至った。
【0010】
ここで、イオン風は、次のような現象で発生すると考えられている。すなわち、外周壁面のある部分に電荷が溜まると、該部分の周辺に存在する空気がイオン化する。そして、イオン化した空気が壁面の電荷に反発して飛び出すことで、イオンを含んだ空気の流れであるイオン風が発生する。特にイオン風は、例えば、突起部の先端や角の先端など、外周壁の形状の特異な部分で発生し易いという知見を得ている。
【0011】
また、当該イオン風が空間中を飛行している原料液と交差すると、原料液や製造されつつあるナノファイバの飛行経路を乱したり、原料液の耐電状態に悪影響を及ぼしたりして製造されるナノファイバの品質が低下していた。また、ナノファイバの生産効率の低下にもつながっていた。
【0012】
一方、特許文献2に記載の発明では、滑らかな曲面(周面)に開口が並んでいるため、原料液を帯電させるための電荷が開口に集まりにくく、原料液を強く帯電させる事ができない事を見出すに至った。原料液を強く帯電させることができないと、高い品質のナノファイバが製造しにくくなり、ナノファイバの生産量を増加させることができない。
【0013】
本願発明は、前記問題点や知見に基づくものであり、電界干渉を抑制して単位時間あたり単位面積あたりのナノファイバの生産量を高い状態に維持し、イオン風の影響を抑制してナノファイバの質の向上と均一化を図るナノファイバ製造装置、ナノファイバ製造方法の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するために、本願発明にかかるナノファイバ製造装置は、原料液を空間中で電気的に延伸させて、ナノファイバを製造するナノファイバ製造装置であって、内方に原料液が流通する環状のフランジ部を備える流出体と、前記流出体と所定の間隔を隔てて配置される帯電電極と、前記流出体と前記帯電電極との間に所定の電圧を印加する帯電電源とを備え、前記フランジ部は、内方を流通する原料液を空間中に流出させ、放射方向に設けられる流出孔と、前記流出孔の先端である開口部が並んで配置される先端部と、前記先端部から中央方向に向かって相互の間隔が徐々に広がるように配置され、前記流出孔を挟むように先端部から延設される二つの側面部とを備えることを特徴としている。
【0015】
これにより、所定間隔で放射状に配置される流出孔の開口部について、隣り合う開口部と開口部との間が先端部によって埋め尽くされた状態となるため、電界干渉が発生しにくい状態となる。したがって、原料液が流出する開口部の間隔を可及的に狭めることができ、単位面積あたりのナノファイバの生産量を増加させることが可能となる。また、フランジ部は、先端部の幅が最も狭く、開口部から中心に向かうに従って徐々に広がるように側面部を備えているため、たとえ側面部からイオン風が発生したとしても、該イオン風が製造されるナノファイバに悪影響を与える方向に飛翔し難い構造となっている。さらに、側面部は環状に広く延びる面であるため、イオン風が発生しにくい。従って、流出体はイオン風がナノファイバに与える影響を抑制することが可能となる。さらに、開口部が配置される先端部は、流出体の筒部から放射方向全周にわたって突出した状態で配置されているため、先端部に電荷を集中させることが容易にでき、先端部に設けられる開口部から流出する原料液に高密度の電荷を付与することが可能となる。
【0016】
前記先端部は、前記先端部に配置される前記開口部の径よりも広い幅を軸方向に有する環状面であることが好ましい。
【0017】
これによれば開口部の周囲に発生する液溜まり(液溜まりについては実施の形態の項参照)を先端部により充分に保持することが可能となる。そして、液溜まりから原料液が空間中に細く流出し、そこから静電延伸現象が発生する。以上によって、開口部を原料液が覆い隠すため、イオン風の発生を抑制することが可能となる。
【0018】
さらに、空間中で製造されるナノファイバを収集する収集手段と、前記収集手段にナノファイバを誘引する誘引手段とを備えることが好ましい。
【0019】
これにより、製造されたナノファイバを堆積する対象を限定して、機能的な材料などを製造することが可能となる。
【0020】
また、上記目的を達成するために、本願発明にかかるナノファイバ製造方法は、原料液を空間中で電気的に延伸させて、ナノファイバを製造するナノファイバ製造方法であって、内方に原料液が流通する筒形状の筒部と、前記筒部から全周にわたって放射方向に突出するフランジ部とを備える流出体であって、内方を流通する原料液を空間中に流出させ、放射方向に設けられる流出孔と、前記流出孔の先端である開口部が並んで配置される先端部と、前記先端部から中央方向に向かって相互の間隔が徐々に広がるように配置され、前記流出孔を挟むように先端部から延設される二つの側面部とを備える前記フランジ部を備える流出体から原料液を流出させる流出工程と、前記流出体と所定の間隔を隔てて配置される帯電電極と、前記流出体との間に所定の電圧を印加する帯電工程とを含むことを特徴としている。
【0021】
これにより、所定間隔で放射状に配置される流出孔の開口部について、隣り合う開口部と開口部との間が先端部によって埋め尽くされた状態となるため、電界干渉が発生しにくい状態となる。したがって、原料液が流出する開口部の間隔を可及的に狭めることができ、単位面積あたりのナノファイバの生産量を増加させることが可能となる。また、フランジ部は、先端部の幅が最も狭く、開口部から中心に向かうに従って徐々に広がるように側面部を備えているため、たとえ側面部からイオン風が発生したとしても、該イオン風が製造されるナノファイバに悪影響を与える方向に飛翔し難い構造となっている。さらに、側面部は環状に広く延びる面であるため、イオン風が発生しにくい。従って、流出体はイオン風がナノファイバに与える影響を抑制することが可能となる。さらに、開口部が配置される先端部は、流出体の筒部から放射方向全周にわたって突出した状態で配置されているため、先端部に電荷を集中させることが容易にでき、先端部に設けられる開口部から流出する原料液に高密度の電荷を付与することが可能となる。
【発明の効果】
【0022】
本願発明によれば、ナノファイバの生産効率を向上させると共に、製造されるナノファイバの品質の向上を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】ナノファイバ製造装置を模式的に一部を切り欠いて正面から示す平面図である。
【図2】ナノファイバ製造装置を模式的に一部を切り欠いて上面から示す平面図である。
【図3】放出手段を切り欠いて示す正面から示す平面図である。
【図4】放出手段を示す斜視図である。
【図5】流出体を示す図であり、(a)は外観を正面から示す平面図、(b)は一部を切り欠いて正面から示す平面図である。
【図6】液溜まりの形成状態を模式的に示す斜視図である。
【図7】先端部の形状のバリエーションを示す斜視図である。
【図8】圧力により原料液を流出させる流出体の断面を正面から示す平面図である。
【図9】流出体の他の実施の形態を正面から示す平面図である。
【図10】流出体の他の実施の形態を正面から示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
(実施の形態1)
次に、本願発明に係るナノファイバ製造装置、ナノファイバ製造方法を、図面を参照しつつ説明する。
【0025】
図1は、ナノファイバ製造装置を模式的に一部を切り欠いて正面から示す平面図である。
【0026】
図2は、ナノファイバ製造装置を模式的に一部を切り欠いて上面から示す平面図である。
【0027】
これらの図に示すように、ナノファイバ製造装置100は、放出手段200と、収集手段110と、誘引手段120とを備えている。
【0028】
ここで、ナノファイバを製造するための原料液については、原料液300と記し、製造されたナノファイバについてはナノファイバ301と記すが、製造に際しては原料液300が電気的に延伸しながらナノファイバ301に変化していくため、原料液300とナノファイバ301との境界は曖昧であり、明確に区別できるものではない。
【0029】
図3は、放出手段を切り欠いて示す正面から示す平面図である。
【0030】
図4は、放出手段を示す斜視図である。
【0031】
これらの図に示すように、放出手段200は、帯電した原料液300や製造されるナノファイバ301を気体流に乗せて放出することができるユニットであり、流出手段201と、帯電手段202と、風洞体209と、気体流発生手段203、供給路217とを備えている。なお、本願発明のナノファイバ製造装置100は、本実施の形態で説明する放出手段200単体で実現することが可能である。
【0032】
帯電手段202は、原料液300に電荷を付与して帯電させる装置である。本実施の形態の場合、帯電手段202は、帯電電極221と、帯電電源222と、接地手段223とを備えている。
【0033】
帯電電極221は、自身がアースに対し高い電圧もしくは低い電圧となることで、接地されている流出体211(流出手段201の構成部材で後述)に電荷を誘導するための部材である。本実施の形態の場合、帯電電極221は、流出体211の周囲を取り囲むように配置される円環状の部材である。また、図1〜図4に示すように、帯電電極221の断面は円形となっている。帯電電極221に正の電圧が印加されると流出体211には、負の電荷が誘導され、帯電電極221に負の電圧が印加されると流出体211には、正の電荷が誘導される。
【0034】
なお、帯電電極221の形状は、円環状に限ったものではなく、流出体211の形状との関係によって、多角形の環状や平板状などであってもよい。
【0035】
また、帯電電極221は、流出体211の周囲に配置されていなくともよい。例えば、後述の誘引電極121を帯電電極221として機能させてもよい。
【0036】
接地手段223は、流出体211と電気的に接続され、流出体211を接地電位に維持することができる部材である。接地手段223の一端は、流出体211が回転状態であっても電気的な接続状態を維持することができるようにブラシとして機能するものであり、他端は大地と接続されている。
【0037】
帯電電源222は、帯電電極221に高電圧を印加することのできる電源である。帯電電源222は、一般には、直流電源が好ましい。特に、発生させるナノファイバ301の帯電極性に影響を受けないような場合、生成したナノファイバ301の帯電を利用して、電極上に回収するような場合には、直流電源が好ましい。また、帯電電源222が直流電源である場合、帯電電源222が帯電電極221に印加する電圧は、10KV以上、200KV以下の範囲の値から設定されるのが好適である。帯電電源222に負の電圧が印加される場合には、前記の印加する電圧の極性は、負になる。特に、流出体211と帯電電極との間の電界強度が重要であり、帯電電極221と流出体211との距離が最も近い空間において1KV/cm以上の電界強度になるように印加電圧を調整するのが好ましい。
【0038】
本実施の形態のように帯電手段202に誘導方式を採用すれば、流出体211を接地電位に維持したまま原料液300に電荷を付与することができる。流出体211が接地電位の状態であれば、流出体211に接続される回転軸体212や駆動源としてのモータ213などの部材を流出体211から電気的に絶縁する必要が無くなり、流出手段201として簡単な構造を採用しうることになり好ましい。
【0039】
なお、帯電手段202として、流出体211に電源を接続し、流出体211を高電圧に維持し、帯電電極221を接地することで原料液300に電荷を付与してもよい。また、流出体211を絶縁体で形成すると共に、流出体211に貯留される原料液300に直接接触する電極を流出体211内部に配置し、当該電極を用いて原料液300に電荷を付与するものでもよい。このような流出体211に直接もしくは原料液に直接電極を配置する場合には、原料液に帯電する電荷の極性は、印加する電圧の極性と同じ極性になる。
【0040】
流出手段201は、原料液300を空間中に流出させる装置であり、本実施の形態では、原料液300を遠心力により放射状に流出させ、帯電電極221の内方に原料液を流出させる装置である。流出手段201は、流出体211と、回転軸体212と、駆動源としてのモータ213とを備えている。回転軸体212は、ベアリング215を介して支持体(図示せず)に回転可能に支持されている。
【0041】
図5は、流出体を示す図であり、(a)は外観を正面から示す平面図、(b)は断面を正面から示す平面図である。
【0042】
流出体211は、原料液300を空間中に流出させるための部材であり、同図に示すように、筒部231と、フランジ部232とを備えている。また、流出体211は、流出する原料液300に電荷を供給する電極としても機能しており、原料液300と接触する部分の少なくとも一部は導電性を備えた部材で形成される。本実施の形態の場合、流出体211全体が金属で形成されている。なお、金属の種類は導電性を備えておれば、特に限定されるものではなく、黄銅やステンレス鋼など任意の材料を選定しうる。
【0043】
筒部231は、内方に原料液300が流通する筒形状の部材であり、流出体211の胴体となる部分である。本実施の形態の場合、流出体211は、回転による遠心力により原料液300を流出させるものであり、筒部231は、流出体211の回転軸体としても機能している。
【0044】
フランジ部232は、筒部231を通過する原料液300を空間中に流出させる流出孔216が放射方向に設けられる部材であり、流出孔216の先端である開口部233が並んで配置される先端部116と、先端部116から中央方向に向かって相互の間隔が徐々に広がるように配置され、先端部116から流出孔216を挟むように延設される二つの側面部117とを備える。
【0045】
本実施の形態の場合、フランジ部232は、外に向かって厚みが徐々に薄くなる断面三角形状の円板である。具体的には、フランジ部232の直径は、10mm以上、300mm以下の範囲から採用されることが好適である。あまり大きすぎると、流出体211の回転軸が偏心するなど、重量バランスが少しでも偏ると大きな振動が発生してしまい、当該振動を抑制するために流出体211を強固に支持する構造が必要となるからである。一方、小さすぎると遠心力により原料液300を流出させるための回転を高めなければならず、駆動源の負荷や振動など問題が発生するためである。
【0046】
本実施の形態の場合、流出孔216は、開口部233が同一平面内の円周上に並ぶように配置されている。
【0047】
流出孔216の孔長や孔径は、特に限定されるものではなく、原料液300の粘度などにより適した形状を選定すれば良い。具体的には、孔長は、1mm以上、5mm以下の範囲から選定されるのが好ましい。孔径は、0.1mm以上、2mm以下の範囲から選定されるのが好ましい。また、流出孔216の形状は、円筒形状に限定されるわけではなく、任意の形状を選定しうる。特に開口部233の形状は、円形に限定されるわけではなく、三角形や四角形などの多角形、星形など内側に突出する部分のある形状などでもかまわない。
【0048】
なお、開口部233が配置される部分(先端部116)は、面が放射方向に向くように帯を環状とした形状となる。この部分の形状において、開口部233は、ジグザグに配置されてもよく、サインカーブなどの波を描くように配置されてもよい。
【0049】
先端部116は、流出孔216の開口部233が配置されるフランジ部232の部分であり、所定の間隔で配置される開口部233の間を滑らかな面で接続する部分である。本実施の形態の場合、先端部116は、細長い矩形の平面の面を放射方向に向くように配置される環状の曲面を備え、その幅(軸方向)は、対応する開口部233の径よりも広くなるように設定されている。本実施の形態の場合、先端部116は、円環状となっている。
【0050】
なお、本願発明に係る流出体211は、フランジ部232を備えれば良く、筒部231は必須の構成要素ではない。つまり、流出体211は、フランジ部232のみからなるものでもよく、この場合、供給路217から原料液300が直接フランジ部232の内方に供給されることになる。また、原料液300は、ポンプなどにより加圧状態で供給されてもよい。
【0051】
図6に示すように、開口部233の周囲の全てにわたって滑らかな曲面の先端部116が存在することにより、開口部233の周りに液溜まり303が発生する。この液溜まり303は、テイラーコーンと称されるものであり、原料液300の粘性により発生すると考えられ、開口部233よりも大きな円形の底面を備える円錐形状となっている。液溜まり303は、開口部233を覆うように流出体211の先端部116に付着する。そして、円錐状の液溜まり303から原料液300が空間中に細く流出するものとなっている。これにより開口部233が空気と直接接触しないので、開口部233から発生するイオン風を抑制することが可能となる。
【0052】
なお、先端部116は、滑らかな曲面を備えるものに限定されるわけではなく、また、放射方向に向いた面ではなくとも液溜まり303が発生する場合もある。例えば図7(a)に示すように、先端部116は曲面を備えてもよく、また、図7(b)に示すように、端部がつきあわされた二つの平面を備えていてもよい。
【0053】
以上のように、先端部116は、複数存在する開口部233の間を滑らかな面でつなげている(図7(b)では、上記のように二つの平面でつなげている)ため、複数のノズルを並べたときに発生する電界干渉を抑制することが可能となる。また、開口部233と開口部233との間の領域で発生するイオン風を抑制することができる。従って、開口部233の間隔を狭めた状態で配置しても、良好にナノファイバ301を製造することができるため、単位時間、単位面積あたりのナノファイバ301の生産量を向上させることが可能となる。
【0054】
また、先端部116により液溜まり303を良好な状態で保持することが可能であるため、イオン風の発生を抑制し、ナノファイバ301の品質向上や生産効率の向上が図れると考えられる。
【0055】
側面部117は、図5に示すように、流出孔216を挟むように配置される二つの面であり、先端部116から連続的に延びるフランジ部232の部分である。また、側面部117は、筒部231から外側に突出する状態で設けられており、全ての流出孔216を二つの側面部117で挟むように設けられている。また、側面部117は、先端部116から離れるに従い相互の間隔が広がるように配置されている。
【0056】
なお、図7(a)、図7(b)に示すように先端部116と側面部117との境界は曖昧である。側面部117や先端部116は、全体にわたって滑らかな表面を備えており、できる限り特異な部分を設けることなく(開口部233は除く)イオン風の発生を抑制する形状とすることが望ましい。
【0057】
流出体211は、上記フランジ部232を備えることで、イオン風の発生を抑制し、安定した状態でナノファイバ301を製造することが可能となる。また、側面部117は先端部116に向かって徐々に細くなるように配置されているため、先端部116に電荷を集中させやすく、原料液300に効率的に電荷を供給することができる。
【0058】
本実施の形態の場合、流出体211は、図3に示すように、原料液300が内方に注入されながら自身の回転による遠心力により空間中に原料液300を流出させることのできる容器であり、流出体211は、ベアリング215により回転可能に支持されている。また、フランジ部232は、図5に示すように、内部形状において、凹部255を備えている。凹部255は、流出体211が回転する際に発生する遠心力の方向に窪んでおり、流出体211が回転している状態においては原料液300が溜まる槽として機能している。凹部255の遠心力方向の先端には流出孔216が設けられている。このようにフランジ部に凹部255を設ける事で、原料液300を均等に空間に流出させることができる。
【0059】
なお、流出体211は、自身の回転による遠心力により原料液300を空間中に流出させる部材ばかりでなく、図8に示すように、自身は静止しており、筒部231に貯留する原料液300を筒部231の内部に配置されるピストン235に力Aを加えることにより、原料液300の圧力のみで流出させるものでもよい。また、ピストン235に与える力をエアーにより与えると共に、流出体211を回転させ、圧力と遠心力とにより原料液300を流出させてもよい。 また、遠心力により原料液300を流出させる流出体211の形状は、円筒形状に限定するものではなく、断面が多角形状の多角筒形状のようなものでもよい。また、原料液300を供給圧力(供給ポンプ)により流出体211に供給し、当該供給圧力により原料液300を流出させるものでもよい。
【0060】
次に、流出体211を回転させる回転機構について説明する。
【0061】
回転軸体212は、図3に示すように、流出体211を回転させ遠心力により原料液300を流出させるための駆動力を伝達するための軸体であり、流出体211の他端から流出体211の内部に挿通され、流出体211の閉塞部と一端部が接合される棒状体である。また、他端はモータ213の回転軸と接合されている。
【0062】
モータ213は、遠心力により原料液300を流出孔216から流出させるために、回転軸体212を介して流出体211に回転駆動力を付与する装置である。
【0063】
次に、本願発明に必須の構成ではないが、原料液300の飛行経路を制御する気体流発生手段203等について説明する。
【0064】
気体流発生手段203は、図3に示すように、流出体211から流出される原料液300の飛行方向を所定の方向に変更するための気体流を発生させる装置である。気体流発生手段203は、モータ213の背部に備えられ、モータ213から流出体211の先端に向かう気体流を発生させる。本実施の形態の場合、気体流発生手段203は、流出体211から径方向に流出される原料液300を軸方向に変更することができる風力を発生させることができるものとなっている。図3において、気体流は矢印で示している。本実施の形態の場合、気体流発生手段203として、放出手段200の周囲にある雰囲気を強制的に送風する軸流ファンを備える送風機が採用されている。
【0065】
風洞体209は、気体流発生手段203で発生した気体流を帯電電極221から流出体211の流出孔216近傍に案内する導管である。本実施の形態の場合、風洞体209により案内された気体流は、帯電電極221の内側を通過した後、流出体211の流出孔216から流出された原料液300と交差し、原料液300の飛行方向を変更する。
【0066】
さらにまた、放出手段200は、気体流制御手段204と、加熱手段205とを備えている。
【0067】
気体流制御手段204は、気体流発生手段203により発生する気体流が流出孔216の開口部233に直接当たらないよう気体流を制御する機能を有するものである。本実施の形態の場合、気体流制御手段204として、気体流を所定の領域に流れるように案内する風路体が採用されている。気体流制御手段204により、気体流が直接流出孔216に当たらないため、流出孔216から流出される原料液300が早期に蒸発して流出孔216を塞ぐことを可及的に防止し、原料液300を安定させて流出させ続けることが可能となる。
【0068】
加熱手段205は、気体流発生手段203が発生させる気体流を構成する気体を加熱する加熱源である。本実施の形態の場合、加熱手段205は、風洞体209の内方に配置される円環状のヒータであり、加熱手段205を通過する気体を加熱することができるものとなっている。加熱手段205により気体流を加熱することにより、空間中に流出される原料液300は、蒸発が促進され効率よくナノファイバを製造することが可能となる。
【0069】
次に、ナノファイバ製造装置100が備える収集手段110、誘引手段120について説明する。
【0070】
収集手段110は、図1、図2に示すように、放出手段200から放出されるナノファイバ301を収集するための装置であり、被堆積部材101と、移送手段104と、供給手段111とを備えている。
【0071】
被堆積部材101は、静電延伸現象により製造され飛来するナノファイバ301を堆積させる部材である。本実施の形態の場合、被堆積部材101は、堆積したナノファイバ301と容易に分離可能な材質で構成された薄く柔軟性のある長尺のシート状の部材である。
【0072】
移送手段104は、被堆積部材101を移送することができる装置である。本実施の形態の場合、長尺の被堆積部材101を巻き取りながら供給手段111から引き出し、堆積するナノファイバ301と共に被堆積部材101を搬送するものとなっている。移送手段104は、不織布状に堆積しているナノファイバ301を被堆積部材101とともに巻き取ることができるものとなっている。
【0073】
誘引手段120は、空間中を飛行するナノファイバ301を所定の場所に誘引するための装置である。ナノファイバ301を誘引する方法としては、気体流を吸引することでナノファイバ301を誘引する方法と、帯電しているナノファイバ301を電界(電場)により誘引する方法とを例示することができる。本実施の形態の場合、誘引手段120は、気体流を吸引する方式と電界で誘引する方式とを選択的に、また、同時に実施することができる装置が採用されており、吸引手段102と、誘引電極121と誘引電源122とを備えている。
【0074】
吸引手段102は、被堆積部材101を通過する気体流を強制的に吸引する装置である。本実施の形態では、吸引手段102は、漏斗状のフード103と送風機105とを備えている。送風機105は、シロッコファンや軸流ファンなどの送風機であって、被堆積部材101から送風機105に向かう気体流を発生させることができる装置である。
【0075】
また、吸引手段102は、原料液300から蒸発した溶媒が混ざったほとんどの気体流を吸引し、吸引手段102に接続される溶剤回収装置106まで前記気体流を搬送することができるものとなっている。
【0076】
誘引電極121は、帯電したナノファイバ301を誘引するための電界を発生させるための電極である。本実施の形態の場合、気体流を通過させることのできる金属製の網が採用されている。
【0077】
誘引電源122は、誘引電極121を所定の電圧及び極性に維持することができる直流電源である。本実施の形態の場合、誘引電源122は、0V(接地状態)から200KV以下の範囲で自由に電圧と極性を変更することができる直流電源である。
【0078】
次に、上記構成のナノファイバ製造装置100を用いたナノファイバ301の製造方法を説明する。
【0079】
まず、気体流発生手段203により、流出体211から収集手段110に向かう気体流を発生させる(気体流発生工程)。一方、吸引手段102により、気体流を吸引する。以上の状態で、風量が30m3/分となるよう調整した。
【0080】
次に、流出体211の内方に原料液300を供給する(原料液供給工程)。原料液300は、別途タンク(図示せず)に蓄えられており、供給路217(図3参照)を通過して流出体211の他端部から流出体211内部に供給される。供給路217の端部から吐出される原料液300は、流出体211の内側に設けられる凹部255に貯留される。
【0081】
ここで、ナノファイバ301を構成する樹脂であって、原料液300に溶解、または、分散する溶質としては、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリエチレンオキサイド、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリ−m−フェニレンテレフタレート、ポリ−p−フェニレンイソフタレート、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン−アクリレート共重合体、ポリアクリロニトリル、ポリアクリロニトリル−メタクリレート共重合体、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリエステルカーボネート、ポリアミド、アラミド、ポリイミド、ポリカプロラクトン、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリヒドロキシ酪酸、ポリ酢酸ビニル、ポリペプチド等およびこれらの共重合体等の高分子物質を例示できる。また、上記より選ばれる一種でもよく、また、複数種類が混在してもかまわない。なお、上記は例示であり、本願発明は、上記樹脂に限定されるものではない。
【0082】
原料液300に使用される溶媒としては、揮発性のある有機溶剤などを例示することができる。具体的に例示すると、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、ヘキサフルオロイソプロパノール、テトラエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジベンジルアルコール、1,3−ジオキソラン、1,4−ジオキサン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチル−n−ヘキシルケトン、メチル−n−プロピルケトン、ジイソプロピルケトン、ジイソブチルケトン、アセトン、ヘキサフルオロアセトン、フェノール、ギ酸、ギ酸メチル、ギ酸エチル、ギ酸プロピル、安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸プロピル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジプロピル、塩化メチル、塩化エチル、塩化メチレン、クロロホルム、o−クロロトルエン、p−クロロトルエン、四塩化炭素、1,1−ジクロロエタン、1,2−ジクロロエタン、トリクロロエタン、ジクロロプロパン、ジブロモエタン、ジブロモプロパン、臭化メチル、臭化エチル、臭化プロピル、酢酸、ベンゼン、トルエン、ヘキサン、シクロヘキサン、シクロヘキサノン、シクロペンタン、o−キシレン、p−キシレン、m−キシレン、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホオキシド、ピリジン、水等を挙示することができる。また、上記より選ばれる一種でもよく、また、複数種類が混在してもかまわない。なお、上記は例示であり、本願発明に用いられる原料液300は上記溶媒を採用することに限定されるものではない。
【0083】
さらに、原料液300に無機質固体材料を添加してもよい。当該無機質固体材料としては、酸化物、炭化物、窒化物、ホウ化物、珪化物、弗化物、硫化物等を挙げることができるが、製造されるナノファイバ301の耐熱性、加工性などの観点から酸化物を用いることが好ましい。当該酸化物としては、Al23、SiO2、TiO2、Li2O、Na2O、MgO、CaO、SrO、BaO、B23、P25、SnO2、ZrO2、K2O、Cs2O、ZnO、Sb23、As23、CeO2、V25、Cr23、MnO、Fe23、CoO、NiO、Y23、Lu23、Yb23、HfO2、Nb25等を例示することができる。また、上記より選ばれる一種でもよく、また、複数種類が混在してもかまわない。なお、上記は例示であり、本願発明の原料液300に添加される物質は、上記添加剤に限定されるものではない。
【0084】
原料液300における溶媒と溶質との混合比率は、選定される溶媒の種類と溶質の種類とにより異なるが、溶媒量は、約60重量%から98重量%の間が望ましい。好適には溶質が5〜30重量%となる。
【0085】
本実施の形態の場合、ナノファイバ301の材質はPVA(ポリビニルアルコール)を選定し、原料液300は、溶媒を水とし、水にPVAを10重量%で溶解したものを用いた。
【0086】
次に、帯電電源222により帯電電極221を正または負の高電圧とする。これにより先端部116に電荷が集中し、当該電荷が流出孔216を通過する原料液300に転移し、原料液300が帯電する(帯電工程)。このように、先端部116に電荷が集中し、当該電荷で原料液300が帯電するため、原料液300は強い帯電状態(高い電荷密度)で空間中に流出することとなる。
【0087】
前記帯電工程と同時期に流出体211をモータ213により回転させて、遠心力により流出孔216から帯電した原料液300を流出する(流出工程)。
【0088】
具体的には、フランジ部232の外径がΦ60mmの流出体211を用いた。フランジ部232の遠心力方向の先端に設けられる流出孔216は、周方向等間隔に24個設けられており、孔径は0.3mmであった。また、原料液300は、流出体211を2000rpmで回転させることにより流出させた。一方、帯電電極221は内径Φ600mmのものを用い、帯電電源222により帯電電極221を接地電位に対して負の60KVとした。これにより、流出体211には正の電荷が誘導され、正に帯電した原料液300が流出することとなる。
【0089】
流出体211の径方向放射状に流出された原料液300は、気体流により飛行方向が変更され、気体流により案内される。ここで、原料液300の帯電状態と帯電電極221とは逆極性であるため、クーロン力により引きつけられて帯電電極221の方向に向いて飛行しようとするが、帯電電極221に向かうほとんどの原料液300が気体流により押し戻され、被堆積部材101に向かって飛行することとなる。
【0090】
原料液300は静電延伸現象によりナノファイバ301を製造しつつ(ナノファイバ製造工程)放出手段200から放出される。ここで、原料液300は、強い帯電状態(高い電荷密度)で流出しているため、静電延伸現象が容易に発生し、流出した原料液300のほとんどがナノファイバ301に変化していく。また、原料液300は、強い帯電状態(高い電荷密度)で流出しているため、静電延伸現象が何次にもわたって発生し、線径の細いナノファイバ301を大量に製造される。
【0091】
また、前記気体流は、加熱手段205により加熱されており、原料液300の飛行を案内しつつ、原料液300に熱を与えて溶媒の蒸発を促進し静電延伸現象を促進している。
【0092】
この状態において、被堆積部材101の背方に配置される吸引手段102は、蒸発した蒸発成分である溶媒と共に気体流を吸引し、ナノファイバ301を被堆積部材101上に誘引する(誘引工程)。また、電圧が印加された誘引電極121により電界が発生し、当該電界によってもナノファイバ301が誘引される(誘引工程)。
【0093】
以上により、被堆積部材101上にナノファイバ301が堆積していく(堆積工程)。被堆積部材101は、移送手段104によりゆっくり移送されているため、ナノファイバ301も移送方向に延びた長尺の帯状部材として回収される。
【0094】
以上のような構成のナノファイバ製造装置100を用いてナノファイバ301を製造することによって、ナノファイバ301を高い効率で製造し収集することができ、ナノファイバ301の高い生産効率を得ることが可能となる。また、イオン風などに影響されることなく、品質の高いナノファイバ301を高密度で製造することが可能となる。
【0095】
なお、上記実施の形態では、流出体211に径方向に延びたフランジ部232を1つ備えたものとしたが、本願発明はこれに限定されるわけではない。例えば、図9に示すように、流出体211は、フランジ部232を回転軸方向に複数個並べて備えるものでもかまわない。また、図10に示すように、フランジ部232は、径方向に傾いた方向に突出した形状であってもかまわない。
【0096】
また、本願発明は、上記実施の形態に限定されるものではない。例えば、本明細書において記載した構成要素を任意に組み合わせて実現される別の実施の形態を本願発明としてもよい。また、上記実施の形態に対して本願発明の主旨、すなわち、特許請求の範囲に
記載される文言が示す意味を逸脱しない範囲で当業者が思いつく各種変形を施して得られる変形例も本願発明に含まれる。例えば、図面には放出手段に対し収集手段を左右方向に記載しているが、これは単なる本願発明を実現しうる態様の一つを例示したに過ぎない。すなわち、特許請求の範囲において原料液を放出する方向や、製造されたナノファイバを収集する方向を限定する文言は記載していないが、これは図面の記載に限定する意図を示しているのではなく、本願発明にとって前記方向は本質的な要素ではないことを示している。従って、原料液を放出する方向は全球方向のいずれであっても本願発明の範囲内であり、ナノファイバを収集する方向は全球方向のいずれであっても本願発明の範囲内である。また、放出手段と収集手段との位置関係も本願発明の本質的な要素ではない。よって、放出手段が収集手段の上方に配置されても、放出手段が収集手段の下方に配置されていても、放出手段と収集手段とを仮想的に結ぶ線が鉛直方向に交差していてもかまわない。この意味において、本願発明は上下の概念のない無重力空間でも実現可能である。
【産業上の利用可能性】
【0097】
本願発明は、ナノファイバを用いた不織布の製造、特に膜厚の厚い不織布の製造に利用可能である。
【符号の説明】
【0098】
100 ナノファイバ製造装置
101 被堆積部材
102 吸引手段
103 フード
104 移送手段
105 送風機
106 溶剤回収装置
110 収集手段
111 供給手段
116 先端部
117 側面部
120 誘引手段
121 誘引電極
122 誘引電源
200 放出手段
201 流出手段
202 帯電手段
203 気体流発生手段
204 気体流制御手段
205 加熱手段
209 風洞体
211 流出体
212 回転軸体
213 モータ
215 ベアリング
216 流出孔
217 供給路
221 帯電電極
222 帯電電源
223 接地手段
231 筒部
232 フランジ部
233 開口部
235 ピストン
255 凹部
300 原料液
301 ナノファイバ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料液を空間中で電気的に延伸させて、ナノファイバを製造するナノファイバ製造装置であって、
内方に原料液が流通する環状のフランジ部を備える流出体と、
前記流出体と所定の間隔を隔てて配置される帯電電極と、
前記流出体と前記帯電電極との間に所定の電圧を印加する帯電電源とを備え、
前記フランジ部は、
内方を流通する原料液を空間中に流出させ、放射方向に設けられる流出孔と、
前記流出孔の先端である開口部が並んで配置される先端部と、
前記先端部から中央方向に向かって相互の間隔が徐々に広がるように配置され、前記流出孔を挟むように先端部から延設される二つの側面部とを備える
ナノファイバ製造装置。
【請求項2】
前記先端部は、前記先端部に配置される前記開口部の径よりも広い幅を軸方向に有する環状面
を備える請求項1に記載のナノファイバ製造装置。
【請求項3】
前記先端部は、環状の稜線を形成するように放射方向に向かって尖っている請求項1に記載のナノファイバ製造装置。
【請求項4】
さらに、
空間中で製造されるナノファイバを収集する収集手段と、
前記収集手段にナノファイバを誘引する誘引手段と
を備える請求項1に記載のナノファイバ製造装置。
【請求項5】
さらに、
軸を中心に回転する回転力を前記流出体に付与する駆動源を備える
請求項1に記載のナノファイバ製造装置。
【請求項6】
原料液を空間中で電気的に延伸させて、ナノファイバを製造するナノファイバ製造方法であって、
内方に原料液が流通する環状のフランジ部を備える流出体であって、内方を流通する原料液を空間中に流出させ、放射方向に設けられる流出孔と、前記流出孔の先端である開口部が並んで配置される先端部と、前記先端部から中央方向に向かって相互の間隔が徐々に広がるように配置され、前記流出孔を挟むように先端部から延設される二つの側面部とを備える前記フランジ部を備える流出体から原料液を流出させる流出工程と、
前記流出体と所定の間隔を隔てて配置される帯電電極と、前記流出体との間に所定の電圧を印加する帯電工程と
を含むナノファイバ製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−140725(P2011−140725A)
【公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−1515(P2010−1515)
【出願日】平成22年1月6日(2010.1.6)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成21年度、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「革新的部材産業創出プログラム/新産業創造高度部材基盤技術開発/先端機能発現型新構造繊維部材基盤技術の開発」にかかる委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【出願人】(304021417)国立大学法人東京工業大学 (1,821)
【Fターム(参考)】