説明

ナノ構造の化合物及びエレクトロルミネセント素子に用いられるポリマー

【課題】ナノ構造でドープされた、種々の有機ポリマーを有する放出層を用いることにより、EL素子の寿命及び性能を改良する製造方法を提供する。
【解決手段】0.001重量%〜10重量%のナノ構造及びポリフルオレンを含有する、エレクトロルミネセント素子に用いられる化合物。該化合物は、陰極、陽極、及び陰極と陽極との間に配置される光放出層を含むEL素子の光放出層として用いることができる。EL素子は、基板を供給し、基板上に陽極および陰極を供給し、および基板上に光放出層を蒸着することにより製造することができる。前記化合物は、ナノ構造を超音波的に切断し、当該ナノ構造をポリフルオレンポリマーなどのポリマーと混合することにより製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自己発光素子等のエレクトロルミネセント(EL)素子に関する。特には、本発明は、EL素子に用いられる材料に関する。
【背景技術】
【0002】
EL素子は、用途のためのフラットタイプの自己発光ディプレイ装置の光源として用いることができる。例えば、フラットタイプ自己発光素子は、自動車用計器ディスプレイパネルにおいて用いることができる。一般に、EL素子は、電極間に供給される無機又は有機層に電子及び正孔(すなわち、キャリア)を注入し、発光層中の電子及び正孔を再結合することにより特徴づけられる、自発的な発光素子である。電子及び正孔が再結合する時に光が生成される。
【0003】
EL素子は、いくつかの実用的な使用を果たすが、所要の電圧の駆動、寿命、輝度又は発光効率、及び生産技術に関して改良する余地がある。発光効率は、出力光量に対する入力電流の量の比である。例えば、EL素子(すなわちキャリア)に対する電流の入力、全て可視光に変換される場合、内部効率は100%である。しかし、電子及び正孔の再結合は、実際に発光層の外部で起こるので、多くのキャリアは可視光以外の熱振動又はエネルギーに変換される。従って、ほとんどのEL素子の内部効率は、実際は約数%である。
【0004】
EL素子は広く2つのタイプ:無機及び有機に分けられる。有機EL素子中の劣化の主要な原因は、水の活性分子による有機発光層への浸透及び接着、及び有機発光層の性質の変化である。これらの問題を可決するため、発光ポリマーをカーボンナノ構造でドープして、EL素子を開発した。
【0005】
EL素子の発光層のカーボンナノ構造によるドーピングはいくつかの利点を与える。
第一に、EL素子層へのカーボンナノ構造のドーピングは必要な駆動電圧を低下させることができる。例えば、カーボンナノ構造は優れた導電率を有するので、
それらをEL素子の層にドープする場合、全体として、EL素子についての必要な駆動電圧が低下する。また、カーボンナノ構造は水の存在下に分解しないので(例えば、それらはその導電率を維持する。)、カーボンナノチューブは、全体として、EL素子の導電率の低下を減少させることができる。
【0006】
第二に、EL素子層へのカーボンナノ構造のドーピングは、EL素子の長い寿命をもたらす。例えば、カーボンナノ構造は、優れた導電率を有する所望の駆動電圧を減少するので、ナノ構造はEL素子中の抵抗加熱を減少する。これは、素子の寿命を増大させる。また、上昇した導電率のため、EL素子を製造するフィルムはより厚くなる。より厚くなったフィルムは透水、従ってEL素子の分解性に対する良好な抵抗性を有する。
【0007】
第三に、EL素子層へのカーボンナノ構造のドーピングは、EL素子の輝度を向上することができる。例えば、カーボンナノ構造の優れた導電率のため、ナノ構造は、全体としてEL素子の導電率において均質化された硬化を有する。この均質化された導電率は、EL素子の輝度を向上させる。
【0008】
更に、カーボンナノ構造は正孔トラップ成分として作用し、それらがEL素子中に(特に放出層中に)存在する場合、それらは発光層中の正孔及び電子の重要な再結合を引き起こすことにより、発光効率を上昇させる。すなわち、放出層中のカーボンナノ構造なしでは、発光層中の正孔に関する低い再結合頻度のために放出層への電子の供給は阻害される
。正孔が、発光層の中を通って急速に移動する場合、正孔は陰極側の中に漏出する。これは、発光層の外側での再結合をもたらす。非常に多くの正孔が陰極の近くに蓄積した場合、電子の発光層への供給は減少する。しかし、カーボンナノ構造がEL素子、特に放出層中にドープされると、発光層を通る正孔の移動速度を遅くすることにより、及び/又は放出層への電子の供給を増やすことにより、正孔の陰極側への漏出が減少するため、EL素子の再結合頻度が向上する。この制御されたキャリアの移動性は、良好な素子性能を導く。特に、本発明は、向上した再結合動態のために、より高い輝度及び外部効率を達成する。
【0009】
第四に、EL素子の層へのカーボンナノ構造のドーピングは、簡略化された製造技術を導く。EL素子中のカーボンナノ構造−ドーピングフィルムは、上述したようにより厚く製造することができるので、フィルムは製造することが用意であり、より費用のかからない工程で製造することができる。
【0010】
EL素子の層にドーピングされたカーボンナノ構造は多くの利点を有するが、カーボンナノ構造が凝集すると、それらは電流漏出を導く。このような電流漏出は、全体として、EL素子の性能を低下させる。従って、ナノ構造は、好ましくは、EL素子の放出層を通じて均一に分散されている。
【0011】
引用により本明細書に組み込まれている特許文献1は、放出層が、カーボンナノ構造でドープされたポリ(フェニレン−ビニリデン)(PPV)誘導体を含むEL素子を開示している。
しかし、これらのEL素子の寿命及び性能には限界がある。
【0012】
【特許文献1】米国特許第6,833,201号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
従って、ナノ構造でドープされた、種々の有機ポリマーを有する放出層を用いることにより、EL素子の寿命及び性能を改良する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の第一の態様は、0.001重量%〜10重量%のナノ構造;及び ポリフルオレンポリマーを含有する、エレクトロルミネセント素子に用いられる化合物である。
【0015】
本発明の第二の態様は、陰極、陽極、及び陰極及び陽極の間に配置された光放出層を含むEL素子であって、前記光放出層が上記で議論した化合物であるEL素子である。
【0016】
本発明の第三の態様は、陰極及び陽極を含む基板を供給し、基板上に、ポリマー及びナノ構造を含む化合物の層を蒸着し、及び化合物上に陰極及び陽極を配置することを含む、EL素子の製造方法である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明の効果、本質および種々の追加の特徴は、添付の図面に図示される実施形態を考慮することにより、より明らかとなる。
本発明の議論は模範的な実施態様の説明でしかなく、本発明のより広い側面(より広い側面は模範的な構成において具体化される)を限定するものではないことが当業者に理解される。
【0018】
発光化合物
本発明の模範的な実施態様の発光材料は、ナノ構造にドープされたポリフルオレン(PFO)ポリマー母材の化合物である。該化合物は、EL素子の光放出層として用いることができる。
【0019】
母材として用いるのに適したPFOポロマーの具体例は、PFOG、PFOR及びPFOBである。特に、382nmに吸収、及び422nmに光ルミネッセンスを有するPFO:ポリ〔9,9−ジオクチルフルオレニル−2,7−ジイル〕、313nm又は443nmに吸収、及び535nmに光ルミネッセンスを有するPFOG:ポリ〔9,9−ジヘキシルフルオレニル−2,7−ジイル〕−コ−(1,4−ベンゾ−〔2,1’,3〕−タジドール)〕が適した構造である。しかし、本発明は、この点に限定されない。これらのポリマーの化学構造を図1に示す。
【0020】
PFOポリマーを用いたEL素子は、PPVポリマーを用いたEL素子と比べ、向上した性能及び伸びた寿命を有する。すなわち、PFOポリマーポリマーは、PPVポリマーと比べ、有利なHOMO−LUMO(最高被占分子軌道−最低空分子軌道))ギャップを有する。
【0021】
適当なナノ構造の具体例は以下に提供される。ナノ構造は、通常は、単一壁カーボンナノチューブ(SWCNT)又は多層カーボンナノチューブ(MWCNT)等のカーボンナノ構造である。カーボンナノチューブは短いか、又は長い。カーボンナノチューブは、純粋なカーボン、すなわちフラーレン、及びドープされた構造の両方の構造を含む。
【0022】
適当なフラーレンのいくつかの具体例は、例えば、C60、C70、C76、C78、C82、C84、C90、C96及びC140、によって表わされるカーボンクラスター化合物を含む。更に、適当なドープされた構造のいくつかの具体例は、例えば、ホウ素(B)又は窒素(N)でドープされたカーボンナノ構造である。B−ドープカーボンナノチューブ及びN−ドープカーボンチューブは、ナノチューブのイオン化電位(IP)を有するポリマーのエネルギーレベルと良く調和し得る。最終的に、カーボンナノチューブの代わりに、ホウ素−窒化物ナノ構造(例えば、ナノチューブ)等の他のナノ構造を用いることができる。
【0023】
EL素子の層にドープされるナノ構造の量はいくらか変化し得る。しかし、発光層へのガラス基板を含む層に、非常に多くのナノ構造がドープされる場合、ナノ構造は光を吸収するので、ナノ構造はEL素子の発光効率を光学的に阻害するだろう。一方、十分なナノ構造がない場合、十分な正孔トラップ効果がなく、その結果EL素子の発光効率は向上しない。
【0024】
更に、ナノ構造の量は、ナノ構造のタイプ、及びEL素子の発光色に依存して変化する。例えば、溶液中のフラーレンは、フラーレンがC60〜C140に変化するにつれて、7種の異なる色の間で変化するピークを有する吸収波長を有する。従って、適当なフラーレン及びその量は、EL発光の所望の色によって決まる。更に、EL素子の電気的効果についての適切なナノ構造の量が存在する。すなわち、発光材料の中で異なるバンドギャップは異なる発光色を有するので、EL素子の電気的性質を向上させるためのナノ構造ドーパントの最適な量は、発光色によって変わる。
【0025】
好ましくは、発光化合物中のナノ構造の濃度は0.001〜10重量%である。更に、30〜500nmのSWNTを用いることが良好に働くことが観察された。例えば、以下に議論する発光化合物の試験された具体例は、約500nmの長さを有するドーパントカーボンナノチューブを含む。しかし、本発明は試験された具体例に限定されず、上述したナノ構造等のタイプのナノ構造も用いることができる。
【0026】
EL素子
本発明の模範的な具体例のEL素子100を図2に示す。EL素子100は、ガラス基板2、及びガラス基板2上に配置された陽極4を含む。バッファー層6は陽極4上に位置し、放出層8はバッファー層6上に位置する。更に、陰極10が放出層8上に位置する。ガラスキャップ14がバッファー層6、放出層8及び陰極10を囲んでいる。チャンバー18がこれらの層の周囲に形成されている。ドライケミカル層16が、このチャンバー18の上端のガラスキャップ14の裏面に供給される。
【0027】
放出層8以外のEL素子100の部分の材料の具体例を以下に示す。陽極4は、イリジウム−チタン酸化物(ITO)層であってもよい。バッファー層6は、ポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT)を含んでいてもよい。また、バッファー層6がPEDOT層である場合、バッファー層6は正孔輸送層として作用する。しかし、分離バッファー層及び分離正孔輸送層も用いることができる。陰極10はフッ化リチウム(LiF)の層10bであってもよく、アルミニウム層10aはLiF層10b上に位置する。ドライケミカル層16は、ケイ素又は他の乾燥剤であってもよい。特定の材料がEL素子層について記載されているが、これらの材料は単に例示であり、他の適当な材料がそれらのために代用される。放出層8については、その組成は、上述したような化合物について記述されたように変化し得る。
【0028】
ガラスキャップ14は、封止剤12によって陽極4及び陰極10上に支持される。ガラスキャップ14は、EL素子100の層6、8及び10の周囲にチャンバー18を形成する。EL素子の操作の間、EL素子から放出される光Lを引き起こすために、電位20を陽極4及び陰極14の間に接続する。EL素子の操作の間、N等の冷却ガスGをチャンバー18中に導入してもよい。この冷却ガスGはEL素子を冷却する。
【0029】
EL素子の製造
本発明の模範的な具体例のEL素子の製造を以下に説明する。図3のフローチャートに示すように、最初に、陽極4を有するガラス基板2を製造し(工程1)、次いで前記基板を洗浄し(工程2)、及びバッファー層6を基板2及び陽極4上にコーティングし(工程3)、放出層8をバッファー層6上にコーティングし(工程4)、及び陰極10を放出層8上に蒸着する(工程5)。次いで、製造されたEL素子を評価し(工程A)及びガスキャップ14、又は他の封止剤で密封する(工程B)。
【0030】
EL素子の製造の模範的な具体例の詳細を以下に示す。ガラス基板2及び陽極4を、ソーダ石灰ガラスの25.4mm(1インチ)×25.4mm×0.7mm厚みのガラス基板を供給することによって調整する。表面粗さが5nm未満になるように、ガラス基板2を予め研磨加工する。
【0031】
次いで、ITOの陽極4をガラス基板2上に供給する。陽極は25.4mm×15.9mm×150nmである。陽極4は、図4A及び4Bに示すように基板上に位置する。表面粗さが3nm未満になるように陽極を研磨する。陽極の電気抵抗は10Ω/m未満である。結合した陽極及びガラスの透明性は555nmの周波数で95%より大きい。
【0032】
次に、図5に示すように、結合した陽極及びガラス基板を洗浄する。最初に、工程2−1において、超音波洗浄を実施する前に、結合した陽極及び陰極上に窒素(N)ガスを吹きつける。種々の溶媒で満たされたガラス皿中に、結合した陽極及び陰極を供給する。
【0033】
次いで、工程2−2において、超音波洗浄装置中にガラス皿を供給し、超音波洗浄を実施する。超音波洗浄を、溶媒としてアセトンを用いて15分間、溶媒としてメタノールを
用いて更に15分間、次いで高速液体クロマトグラフィー(HPLC)グレードのイソプロピルアルコール(IPA)を用いて15分間行なう。
【0034】
次いで、工程2−3において、IPA洗浄後に窒素ガスの流れを用いて基板を乾燥させる。窒素ガスは99.99%の純度、及び30psiの圧力を有する。最後に、工程2−4において、結合した基板及び陽極をUV−Ozoneクリーナー上に上向きに置く。UV−Ozone洗浄を60分間実施する。
【0035】
次に、図6に示すような方法で、バッファー層8を、結合した基板及び陽極上にコーティングする。最初に、工程3−1において、6容量部のPEDOT、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン):ポリ(スチレンサルフェート)(PSS)(例えば、Baytron#8000)、及び4容量部の脱イオン水(例えば、18Mオーム以上)のバッファー層溶液。バッファー層溶液を、0.2μmの孔を有するナイロンシリンジフィルターによってろ過する。
【0036】
次いで、工程3−2において、結合した基板及び陽極上に、層の厚みが40nmになるまでバッファー層をスピンコーティングする。スピン速度は4000rpmであり、スピン時間は15秒である。
【0037】
工程3−3において、バッファー層でコーティングされた基板及び陽極をペトリ皿62に供給し、大気圧下、200℃のホットプレート上で5分間、硬化させる。次いで、バッファー層でコーティングされた基板及び陽極を乾燥器中でアニーリングする。
【0038】
最後に、工程3−4において、バッファー層でコーティングされた基板及び陽極を、バッファー層でコーティングされた基板及び陽極が室温になるまで乾燥窒素ガスを用いて冷却する。
【0039】
次いで、図7のフローチャートに示すように、バッファー層6上に放出層をコーティングする。最初に、工程4−1において、放出層溶液を調製する。
【0040】
次いで、工程4−2において、既に形成されているバッファー層上に放出層溶液を、放出層が80nmの厚みを有するようになるまで、スピンコーティングする。また、スピン速度は4000rpmであり、スピン時間は15秒である。スピンコーティングは、窒素雰囲気下で実施される。
【0041】
工程4−3において、今やコーティングされた放出層を含む基板をペトリ皿に供給し、窒素雰囲気下で、90℃の温度でホットプレート上で60分間、硬化させる。
【0042】
試験された、放出層の模範的な実施態様は、PFOポリマーの化合物及び0.1重量%のSWCNTである。この化合物を製造するため、最初にSWCNTを精製する。
SWCNTの精製は、水素結合及び物理吸着一酸化炭素(HiPco)SWCNTの基礎材料から金属触媒を除去し、SWCNTの長さを制御することを含む。純粋なHiPco
SWCNT基礎材料の使用は、放出層の性能を向上させる。
【0043】
図8は、基礎材料から金属触媒を除去する工程のフローチャートである。最初に、工程4a−1−1において、SWCNTを酸溶液中で混合する。SWCNT−酸溶液は、200mlの70重量%硝酸、400mlの脱イオン水(例えば、18Mオームを超える)、100mgのHiPco SWCNT、及び0.05mlの界面活性剤(例えば、Triton X−100)を含む。
【0044】
次いで、工程4a−1−2において、SWCNT−酸溶液のフラスコを、還流タワーの中で6時間沸騰させる(「A6」)。
【0045】
次いで、工程4a−1−3において、溶液に400mlの脱イオン水を加え、該溶液をできるだけ早く冷蔵ユニットに供給する。溶液を室温に冷却する。次いで、冷却した溶液を、0.2μmの孔を有するポリテトラフルオロエチレン(PTFE)(例えばテフロン)フィルターを有する、真空ろ過ユニットによりろ過し、精製されたSWCNTのマット、又はバッキーペーパーを製造する。次いで、SWCNTのマットを1000mlの脱イオン水で洗浄する。
【0046】
最後に、工程4a−1−4において、SWCNTのマットを乾燥させる。SWCNTのマットを、真空ろ過ユニットのフィルター中で70℃の温度で240分間、予め乾燥させる。次いで、A6−SWCNTのマットをフィルターから除去し、100℃で60分間乾燥させる。
【0047】
次に、精製されたA6−SWCNTを適当な長さに切断する。図9は、この工程のフローチャートである。工程4a−2−1において、SWCNTを、他の酸溶液と混合する。最初に、5mgのA6−SWCNT及び10mlの脱イオン水(例えば、18Mオームを超える)を一緒に混合する。次いで、A6−SWCNT−水を20mlの硝酸(例えば、70重量%)及び60mlの硫酸(例えば98重量%)と混合する。
【0048】
工程4a−2−2において、SWCNTを超音波的に、30〜40℃で12時間切断する(24C)。SWCNTを、長時間の超音波振動及び/又は強力な超音波振動にかける場合、SWCNTの長さが減少する。切断工程の間、SWCNT−酸溶液のフラスコを水流により連続的に冷却する。
【0049】
次いで、工程4a−2−3において、SWCNT−酸溶液中の非晶質カーボンの量が減少する。SWCNT溶液を撹拌プレート(stirplate)上の平底フラスコに移行する。12mlのH(30重量%)を、撹拌溶液の底に加える。溶液及びHを20分間撹拌する。
【0050】
工程4a−1−3において、溶液及びHをろ過する。
【0051】
工程4a−2−4において、フィルター中で、SWNTを70℃の温度で240分以上予め乾燥させる。
【0052】
工程4a−2−5において、20mgのSWCNTを1000mlの脱イオン水と、20分間超音波的に混合する。SWCNTを、0.2μmの孔を有するPTFEフィルターによりろ過する。
【0053】
最後に、工程4a−1−4において、精製したA6C24−SWCNTを乾燥する。
【0054】
図10は、PFOポリマー及びナノ構造の発光化合物の製造のフローチャートである。最初に、工程4−1−1において、精製したA6C24−SWCNTからSWCNT溶液を調製する。該溶液は、HPLCグレードの1,2−ジクロロベンゼン(DCB)、0.015重量%のPFO、及び0.0015重量%の精製したSWCNTを含む。該溶液を60分間混合する。
【0055】
次いで、工程4−1−2において、1.5重量%のPFOポリマーを含む、他の溶液を加える。混合物をマグネチックスターバーを用いて、50℃で30分間撹拌し、次いで、
室温に冷却する。
【0056】
次いで、工程4−1−3において、混合物を0.45μmの孔を有するPTFEフィルターによりろ過する。最終的な発光化合物はPFOポリマー及びSWCNTを含む。DCBは蒸発し、従って、最終化合物の一部でない。また、最終化合物は、Alq3(トリス(8−ヒドロキシキノリナート)アルミニウム)、ポルホリン又は重金属キレート、及び/又はクォンタムドット等のナノ粒子のいかなる組み合わせを含む。
【0057】
図11は、放出層上に金属陽極を蒸着する方法のフローチャートである。工程5−1において、フッ化リチウム(LiF)(例えば、99.999重量%を超える)及びアルミニウム(Al)(例えば、99.999重量%を超える)を、真空エバポレーター中にセットする。これらの材料は、同じ真空エバポレーター中に連続して供給されるか、又は別々の真空エバポレーター中に供給される。
【0058】
次いで、工程5−2において、LiFの層を放出層上に、5×10-5〜5×10-6トールの圧力下、0.02nm/sの蒸着速度で0.5nmの厚みまで蒸着する。
【0059】
次いで、工程5−3において、Alの層を放出層上に、5×10-5〜5×10-6トールの圧力下、0.7〜0.7nm/sの蒸着速度で150nmを超える厚みに蒸着する。
【0060】
放出層上に、いったん陽極層が供給されると、EL素子は評価の準備ができている。
【0061】
EL素子の評価
製造されたEL素子を、IVL(電流/電圧/発光)及びVLT(可視光透過)の両方に関して評価する。IVLの値は、EL素子の電流、電圧及び輝度特性から得られる。電流注入、最大輝度、放出効率、及び出力効率の量は、IVL値から得ることができる。VLTの値は、EL素子の特性を駆動する連続の寿命測定である。VLTの値は、定電流についての印加電圧及び放出された輝度を測定することにより得られる。VLT値は、窒素を豊富に含む環境中(すなわち、低湿度及び酸素)で室温で測定される。
【0062】
製造されたEL素子の試験は、大部分は、それぞれ、ドープされていないPFOG、PFOR、及びPFOBについてのIVL値と比較する場合に、SWCNTでドープされたPFOG,PFOR、及びPFOBについての最大輝度、放出効率、及び出力効率が向上することを示す。
【0063】
更に、酸化された、SWCNTでドープされたPFOGは、酸化された、ドープされていないPFOGよりもはるかに失敗に抵抗する。すなわち、酸化されたドープされていないPFOGは、酸化されていないPFOGと比較して、電流注入、放出効率、及び出力効率が有意に減少するが、酸化されドープされたPFOGは、これらの領域における有意に減少しない。酸化に対するこの抵抗性は、SWCNTでドープされたPFOについての長い寿命を引き起こす。
【0064】
本発明のこれらの及び他の修飾及び変化は、添付した請求の範囲に示された、本発明の精神及び範囲から逸脱せずに、当業者によって実施される。更に、種々の実施態様の側面は、全て又は部分的に置き換えられることが理解されるべきである。更に、当業者は、前述の記載が具体例のみだけであって、請求項中にそれほど更に記載されている本発明を制限することを目的としないと従来技術において認められている。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明の模範的な実施態様の発光化合物の母材として用いるのに適したPFOポリマーの具体例の化学構造である。
【図2】模範的な実施態様のEL素子である。
【図3】模範的な実施態様のEL素子の製造工程のフローチャートである。
【図4A】基板上に配置された陽極の上面図である。
【図4B】基板上に配置された陽極の断面図である。
【図5】結合した陽極及びガラス基板の洗浄のフローチャートである。
【図6】結合した基板及び陽極上のバッファー層のコーティングのフローチャートである。
【図7】バッファー層上の光放出層のコーティングのフローチャートである。
【図8】単一壁カーボンナノチューブから金属触媒の除去のフローチャートである。
【図9】単一壁カーボンナノチューブを適当な長さへの切断のフローチャートである。
【図10】PFOポリマー及びナノ構造の発光化合物の調製のフローチャートである。
【図11】放出層上への陰極の蒸着のフローチャートである。
【符号の説明】
【0066】
2 ガラス基板
4 陽極
6 バッファー層
8 放出層
10 陰極
14 ガラスキャップ
16 ドライケミカル層
18 チャンバー
100 EL 素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
0.001重量%〜10重量%のナノ構造;及び
ポリフルオレンポリマーを含有する、エレクトロルミネセント素子に用いられる化合物。
【請求項2】
前記ナノ構造がカーボンナノ構造を含む、請求項1記載の化合物。
【請求項3】
前記カーボンナノ構造がカーボンナノチューブを含む、請求項2記載の化合物。
【請求項4】
前記ナノ構造の量が、化合物の約0.1重量%である、請求項1記載の化合物。
【請求項5】
前記ポリフルオレンポリマーの量が、化合物の約1.5重量%である、請求項4記載の化合物。
【請求項6】
前記ナノ構造の長さが30〜500nmである、請求項5記載の化合物。
【請求項7】
前記ナノ構造の長さが約500nmである、請求項6記載の化合物。
【請求項8】
前記カーボンナノチューブが、単一壁ナノチューブを含む、請求項3記載の化合物。
【請求項9】
前記ポリフルオレンポリマーが、PFOG、PFOR及びPFOBの少なくとも1種を含む、請求項1記載の化合物
【請求項10】
陰極;
陽極;及び
陰極及び陽極の間に配置された光放出層を含み、
前記光放出層が請求項1記載の化合物を含むエレクトロルミネセント素子。
【請求項11】
更に基板を含み、陽極及び陰極の1つが基板上に供給される、請求項10記載のエレクトロルミネセント素子。
【請求項12】
陰極及び陽極及び光放出層の1つの間に配置されたバッファー層を更に含む、請求項11記載のエレクトロルミネセント素子。
【請求項13】
基板を供給し;
前記基板上に陽極及び陰極を供給し;
前記陽極及び陰極上に、光放出層を供給し(前記光放出層が請求項1の化合物であり);及び
前記光放出層上に他の陰極及び陽極を供給することを含む、エレクトロルミネセント素子の製造方法。
【請求項14】
陽極又は陰極上にバッファー層を供給することを更に含み、陽極又は陰極上に光放出層を供給する工程が、バッファー層上に光放出層を供給することを含む、請求項13記載のエレクトロルミネセント素子の製造方法。
【請求項15】
前記光放出層を供給する工程が、
酸及びナノ構造の溶液を供給し、
前記ナノ構造を超音波的に切断し、及び
前記切断されたナノ構造と前記ポロフルオレンポリマーとを混合することを含む、請求
項13記載のエレクトロルミネセント素子の製造方法。
【請求項16】
前記光放出層を供給する工程が、
酸及びナノ構造の溶液を供給し、
前記ナノ構造を超音波的に切断し、及び
前記切断されたナノ構造と前記ポロフルオレンポリマーとを混合することを含む、
請求項14記載のエレクトロルミネセント素子の製造方法。
【請求項17】
酸及びナノ構造の溶液を供給し、
前記ナノ構造を超音波的に切断し、及び
前記切断されたナノ構造と前記ポリマーとを混合することにより光放出層を供給し、
陽極又は陰極を供給し、及び
前記陽極又は陰極上に光放出層の層を供給することを含む、エレクトロルミネセント素子の製造方法。
【請求項18】
基板上に陽極又は陰極を供給することを更に含む、請求項17記載のエレクトロルミネセント素子の製造方法。
【請求項19】
陽極又は陰極上にバッファー層を供給することを更に含み、陽極又は陰極上の光放出層の供給が、バッファー層上の放出層を供給することを含む、請求項18記載のエレクトロルミネセント素子の製造方法。
【請求項20】
前記ナノ構造が、カーボンナノ構造を含む、請求項17記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2008−19415(P2008−19415A)
【公開日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−29022(P2007−29022)
【出願日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】