説明

ナノ物質、ナノコンポジット、ナノ分散液、その製造方法及び該分散液からなる各種剤

【課題】新規なナノ物質やナノコンポジットやナノ分散液、特に撥水・撥油効果や親水・撥油効果に優れるこれらのものを提供する。
【解決手段】
上記ナノ物質を、一般式
【化1】


[式中、Rfはパーフルオロアルキル基、パーフルオロオキサアルキル基または一般式
【化2】


(式中、Afはパーフルオロアルキレン基、Af′はAfと同一または異なるパーフルオロアルキレン基、mは1〜10である)
で示される基、Rはアルキル基、アルコキシアルキル基または水素原子、nは2〜100である。]
で表わされる含フッ素系化合物を含んでなるものとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、含フッ素系化合物を含むナノ物質、該含フッ素系化合物とシランカップリング剤とを含むナノコンポジット、ナノ分散液、その製造方法及び該分散液からなる各種剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年の環境問題という観点から、汚れがついたら洗剤で洗い流すということから、予め汚れをつきにくくするという目的で、ガラスをはじめとする様々な基材へのコーティング剤として、撥水・親水・撥油効果を有する防汚剤が研究・開発されている(例えば特許文献1および2参照)。それらコーティング剤はナノ物質やナノコンポジット、あるいはナノ分散液であることで、様々な機能が発現でき、特に溶液分散性に優れ、各種基材へコーティングした場合、透明性に優れており外観を損なうことが無い。ガラスなど透明基材へのコーティングで、問題視されているムラ、曇り、不透明性等を解消することが出来る。
【0003】
【特許文献1】特開2007−99793
【特許文献2】特開2008−40171
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、このような事情の下、新規なナノ物質やナノコンポジットやナノ分散液、特に撥水・撥油効果や親水・撥油効果に優れるこれらのものを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究したところ、含フッ素末端鎖基を有し、主鎖骨格に特定の親媒性基を有する含フッ素系化合物がそれ自体で分子集合体化し、ナノ物質を形成しうること、また、この含フッ素系化合物はシランカップリング剤とコンポジットを形成しうることを見出し、さらに、これらのナノ物質やコンポジットはナノサイズの粒子であって、含フッ素系化合物の親媒性に追従して水性溶媒、非水性溶媒や疎水性溶媒、或いはこれらの混合溶媒に親媒性であり、これらのナノ粒子をこれら溶媒中に分散させうることや、この分散液で硬表面を改質しうること、また、塗料や樹脂への添加でその表面を改質しうることを見出し、これらの知見に基づいて本発明をなすに至った。
【0006】
すなわち、本発明は以下に示すとおりのものである。
(1) 一般式(I)
【化1】

[式中、Rfはパーフルオロアルキル基、パーフルオロオキサアルキル基または一般式
【化2】

(式中、Afはパーフルオロアルキレン基、Af′はAfと同一または異なるパーフルオロアルキレン基、mは1〜10である)
で示される基、Rはアルキル基、アルコキシアルキル基または水素原子、nは2〜100である。]
で表わされる含フッ素系化合物を含んでなるナノ物質。
(2) 含フッ素系化合物が式(II)
【化3】

[式中、Rは−(CF)pFまたは−CF(CF)O(CFCFCFO)qC(pは1〜10、qは0〜5である)で示される基、R′はアルキル基、nは2〜3である。]
で表わされるものである前記(1)記載のナノ物質。
(3) 一般式(III)
【化4】

[式中、Xはビニル基、エポキシ基、スチルリ基、メタクリロキシ基、アクリロキシ基、アミノ基、四級アンモニウム基、ウレイド基、メルカプト基、スルフィド基、イソシアナート基、アルコキシ基、アルキル基、スルホ基およびリン酸基等からなる群から選ばれる官能基であり、Aは二価の炭化水素基であり、酸素原子、窒素原子、硫黄原子を含んでいてもよく、Rは一価炭化水素基または水酸基であり、Rはアルキル基、アルコキシアルキル基または水素原子であり、mは0,1または2である。]
で表されるシランカップリング剤と前記(1)または(2)に記載の含フッ素系化合物とを含んでなるナノコンポジット。
(4) 前記(1)または(2)に記載のナノ物質、あるいは前記(3)に記載のナノコンポジットが溶媒に分散されてなるナノ分散液。
(5) 溶媒が非水性溶媒、疎水性溶媒である前記(4)に記載のナノ分散液。
(6) 前記(1)または(2)に記載の含フッ素系化合物と前記(3)に記載のシランカップリング剤とを溶媒中で混合させることを特徴とする前記(4)または(5)に記載のナノ分散液の製造方法。
(7) 前記(4)または(5)に記載のナノ分散液からなる撥水剤。
(8) 前記(4)または(5)に記載のナノ分散液からなる親水剤。
(9) 前記(4)または(5)に記載のナノ分散液からなる撥油剤。
(10) 前記(4)または(5)に記載のナノ分散液からなる防汚剤。
(11) 前記(4)または(5)に記載のナノ分散液からなるコーティング剤。
(12) 前記(4)または(5)に記載のナノ分散液からなる添加剤。
【0007】
以下、本発明を具体的に説明する。
本発明のナノ物質は、上記式(I)の含フッ素系化合物を含んでなり、好ましくは含フッ素系化合物のみからなるナノ体であり、また、本発明のナノコンポジットは、上記式(I)の含フッ素系化合物と上記式(III)のシランカップリング剤とのナノ粒子複合体を含んでなり、好ましくは該ナノ粒子複合体のみからなるものである。
【0008】
式(I)中、Rのアルキル基としてはメチル基またはエチル基が好ましく、nは1〜20であるのが好ましい。また、Rf基については、パーフルオロアルキル基の例としてはC、C13、C15などが挙げられ、パーフルオロオキサアルキル基の例としては−CF(CF)OCが挙げられ、両末端のRf基は互いに異なっていてもよく、また分子間で互いにRf基が異なっていてもよい。
上記含フッ素系化合物としては、特に上記式(II)で表わされるものが好ましい。具体的には、Rで示されるフルオロアルキル基は−CF(CF)OCで表される基が特に好ましく、Rで示される基はメチル基、つまり−Si(OCHが特に好ましい。
【0009】
上記含フッ素化合物の製法は特に制限されないが、好ましくは、該目的物に相応するオレフィン系モノマーを、上記Rf基を含む有機過酸化物の存在下で反応させる方法、例えば該過酸化物をラジカル重合開始剤として、該モノマーの重合や共重合反応によればよい。
Rf基を含む有機過酸化物としては、上記に例示するような対応するRf基を両末端に有する過酸化物が好ましく、このような過酸化物にはRf−CO−OO−OC−Rfで示される化合物(式中のRf基は、互いに同一でもよいし、また異なっていてもよい)が挙げられる。
含フッ素化合物は、全末端に上記Rf基が導入された化合物とともに、片末端のみに上記Rf基が導入された化合物を含んでいてもよく、さらに、ラジカルの連鎖移動により溶媒などに由来する基や不均化反応によるラジカル停止反応に由来する基が片末端に導入されたものを含んでいてもよい。
【0010】
式(III)のシランカップリング剤は、ビニル基、エポキシ基、スチリル基、メタクリロキシ基、アクリロキシ基、アミノ基、四級アンモニウム基、ウレイド基、メルカプト基、スルフィド基、イソシアナート基、アルコキシ基、アルキル基、スルホ基、リン酸基などからなる群から選択される官能基を有し、例えば下記化学式に示すようなスルホン酸基を有するシランカップリング剤が好ましい。
【0011】
式(IV)
【化5】

【0012】
本発明のナノ物質またはナノコンポジットは、通常数nmから数百nm、好ましくは10〜500nmの平均粒径を有し、種々の溶媒にナノ粒子として分散させることができ、このようにしてナノ分散液を調製しうる。
【0013】
本発明のナノ物質またはナノコンポジットは、次のようにして製造することができる。
本発明のナノ物質は上記式(I)の含フッ素系化合物のみを、酸性またはアルカリ性下で溶媒に分散させてナノ分散液を調製し、ナノ分散液から溶媒を除去することによって得ることができる。
本発明のナノコンポジットは、上記式(I)の含フッ素系化合物と上記式(III)のシランカップリング剤を、溶媒中、酸性またはアルカリ性下で混合させ、ナノ分散液を調製し、ナノ分散液から溶媒を除去することによって得ることができる。
これらの製造法に用いられる溶媒としては水と有機溶媒との混合溶媒が好ましく、このような溶媒は酢酸、塩酸、硫酸、硝酸等の酸などでpHを酸性に、アンモニア、水酸化ナトリウムなどの無機塩基、トリエチルアミン、トリエタノールアミンなどの有機塩基でpHをアルカリ性に調製され、有機溶媒として、好ましくはメタノール、エタノール、プロピルアルコール等のアルコール系溶媒、エチレングリコールやプロピレングリコールなどのグリコール系溶媒、テトラヒドロフラン、ジオキサン、アセトン、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、3−メトキシ−3−メチルブタノールなどの親水性溶媒が挙げられるが、操作性、安全性等からpH調製には塩酸、アンモニア水を、有機溶媒にはイソプロピルアルコールを用いるのが好ましい。
なお、上記式(III)のシランカップリング剤は、それ自身が酸性を示すため、酸性下での混合の場合は、上記酸を用いなくてもよい。
溶媒のpHは、酸性側で1〜6、アルカリ性側で8〜14が好ましく、2〜4および9〜12がより好ましい。
水と有機溶媒との混合比率は、任意に変更できるが、水:有機溶媒=0.1:9.9〜5:5が好ましく、含フッ素化合物の溶解性などを考慮すると水:有機溶媒=1:9〜3:7(w/w)がより好ましい。
含フッ素化合物とシランカップリング剤との混合割合は任意に決定できるが、目的の撥油性および親水性を示すためには、シランカップリング剤は含フッ素化合物の2〜100倍重量が好ましく、2〜10倍がより好ましい。
混合は、通常5℃から溶媒の沸点未満の該沸点付近までの温度、好ましくは常温、常圧で行われる。
ナノ分散液から溶媒を除去するには、例えば溶媒を留去したり、蒸発させるなどすればよい。
本発明のナノ分散液は、上記ナノ物質またはナノコンポジットの製造法において、溶媒を除去する最終工程の前の段階までで止めることによって得られ、また、ナノ物質またはナノコンポジットを溶媒に分散させることによっても調製される。
【0014】
ナノ分散液は、硬表面に塗布し、乾燥させて、該表面に被膜を形成させることができ、また、塗料や樹脂へ添加することで、その乾燥表面にナノ物質またはナノコンポジットが配向した被膜を形成させることができ、この被膜はドデカン等の有機系媒体に対する接触角が大きく、撥油性を示し、また、コンポジット化させる対象を選択することで水に対する接触角をコントロールでき、撥水性および親水性を示す。これら防汚性を示すことから、ナノ分散液は、撥水・撥油剤や防汚剤やコーティング剤、添加剤等として利用しうる。
【発明の効果】
【0015】
本発明のナノ物質またはナノコンポジットは、分散性に優れ、有機溶媒に分散させた分散液として使用することができ、この分散液は、ドデカンのような高級炭化水素に対する接触角が高く、撥油性を示すとともに、コンポジット化させる対象を選択することで水に対する接触角をコントロールでき、撥水性および親水性を示す。
【0016】
本発明のナノ分散液は、硬表面、例えばガラス、金属、セラミックス、プラスチック、車体等の塗装板等に撥水・撥油性、親水・撥油性を付与することができ、高い防汚効果を示すコーティング剤等として利用しうる。また、塗料や樹脂へ添加することで、その乾燥表面にナノ物質またはナノコンポジットを配向させることが出来るため、乾燥後の塗膜や樹脂表面に撥水・撥油、親水・撥油性を付与することができ、高い防汚効果を示す添加剤等として利用しうる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
次に実施例により本発明を実施するための最良の形態を説明するが、本発明はこれらの例により何ら限定されるものではない。
なお、実施例、比較例における平均粒径は、ダイナミック光散乱光度計(大塚電子株式会社製「DLS−7000H」)を用いて測定した。
【0018】
(実施例1)
含フッ素系化合物[上記式(II)において、Rf=CF(CF)OC、n=2である化合物を0.1(wt)%になるようにイソプロパノールと水の混合溶媒に溶解させ、室温で1日攪拌することで、ナノ物質の透明分散液を得た。なお、混合溶媒はイソプロパノール:水=8:2(w/w)である。
【0019】
(実施例2)
実施例1において、混合溶媒の水を0.1N塩酸でpH2に調製した水に置き換えて同様の操作を行った。
【0020】
(実施例3)
実施例1において、混合溶媒の水を28%アンモニア水でpH10に調製した水に置き換えて同様の操作を行った。
【0021】
(比較例1〜3)
実施例1〜3において、含フッ素系化合物をトリフルオロプロピルトリメトキシシランに代えて同様の操作を行った。
【0022】
<接触角測定>
上記実施例および比較例の透明分散液に、表面をイソプロパノールで脱脂したプレパラート(76mm×26mm)をディップ処理したのち、室温で1日乾燥させ、水およびドデカンに対する接触角を、協和界面科学社製のDM700型全自動接触角計を用い測定した。
測定結果を表1に示す。
【0023】
【表1】

【0024】
<平均粒子径測定>
実施例1から3において、透明分散液について、その中の微細粒子の平均粒径を動的光散乱法によって測定した。その結果、該平均粒径は約180〜670nmであり、含フッ素系化合物のナノ粒子の生成が確認された。
【0025】
(実施例4)
含フッ素系化合物[上記式(II)において、Rf=CF(CF)OC、n=2である化合物]0.02gをイソプロパノール2mlに溶解させ、そこにシランカップリング剤[上記式(III)において、XがSOH、AがC、RがOH、RがH、mが1である化合物]0.18gを溶解させ、室温で1日攪拌することで、ナノコンポジットの透明分散液を得た。
このナノコンポジット分散液でコーティング処理されたガラスに対する拡張・収縮法による水の接触角の測定写真(収縮後)を図1に示す。
これより、一旦基材表面に水滴を作成しておき、シリンジから水を吸い上げたときに、基材表面が親水性であるため、表面が濡れている状態を呈することが分かる。
【0026】
(比較例4)
実施例4において、シランカップリング剤の添加分をイソプロパノールに置き換えて同様の操作を行った。
得られた分散液でコーティング処理されたガラスに対する拡張・収縮法による水の接触角の測定写真(収縮後)を図2に示す。
これより、基材表面が撥水性であるため、シリンジから水を吸い上げても表面が濡れていない状態を呈することが分かる。
【0027】
<接触角測定>
上記実施例および比較例の透明分散液に、表面をイソプロパノールで脱脂したプレパラート(76mm×26mm)をディップ処理したのち、室温で1日乾燥させ、ドデカンに対する接触角を、協和界面科学社製のDM700型全自動接触角計を用い測定した。また、水に対する接触角を拡張・収縮法により測定した。
測定結果を表3に示す。
【0028】
【表2】

【0029】
<平均粒子径測定>
実施例4の透明分散液について、その中の微細粒子の平均粒径を動的光散乱法によって測定した。その結果、該平均粒径は約225nmであり、含フッ素系化合物ナノコンポジットの生成が確認された。
【0030】
(実施例5)
実施例4で得られたナノコンポジット透明分散液1gをウレタン塗料(RETAN PG80IIIBASE)1gに添加し、さらに硬化促進剤0.1g(RETAN PG80III HARDENER)を添加した後、ポリプロピレンプレートに塗布し、105℃で20分間乾燥させた。20分後室温になるまで放冷し、ナノコンポジットが施された塗膜を得た。
【0031】
(実施例6)
実施例5において実施例4のシランカップリング剤の添加分をイソプロパノールに置き換えて得られた分散液を使用すること以外は、同様の操作を行った。
【0032】
(比較例5)
実施例5においてナノコンポジット1gをイソプロパノール1gに置き換えて同様の操作を行った。
【0033】
<接触角測定>
上記実施例および比較例で得られた乾燥塗膜表面の水およびドデカンに対する接触角を、協和界面科学社製のDM700型全自動接触角計を用い測定した。また、乾燥塗膜をセロテープでポリプロピレン樹脂から剥がし、プレート側(乾燥塗膜裏面)についても同様に水およびドデカンの接触角を測定した。
【0034】
【表3】

【0035】
(実施例7)
実施例4で得られたナノコンポジット透明分散液1gをアクリル樹脂(S−744)0.5gと蒸留水0.5gの混合溶液に添加した後、ポリプロピレンプレートに塗布し、105℃で50分間乾燥させた。50分後室温になるまで放冷し、ナノコンポジットが施された樹脂被膜を得た。
【0036】
(実施例8)
実施例7において実施例4のシランカップリング剤の添加分をイソプロパノールに置き換えて得られた分散液を使用すること以外は、同様の操作を行った。
【0037】
(比較例6)
実施例7においてナノコンポジット1gをイソプロパノール1gに置き換えて同様の操作を行った。
【0038】
<接触角測定>
上記実施例および比較例で得られた樹脂被膜表面のドデカンに対する接触角を、協和界面科学社製のDM700型全自動接触角計を用い測定した。また、樹脂被膜をセロテープでポリプロピレン樹脂から剥がし、プレート側(樹脂被膜裏面)についても同様にドデカンの接触角を測定した。水に対する接触角は拡張・収縮法により測定した。
【0039】
【表4】

【0040】
以上より、実施例では容易に所望のナノ物質またはナノコンポジットを生成させることができることが分かる。
また、本発明に係る含フッ素系化合物を用いてなる実施例1〜3の分散液は、ドデカンに対する接触角が比較例1〜3のそれよりも遥かに高く、撥油性に優れるうえに、水に対する接触角も高く、撥水性にも優れることが分かる。
また、上記含フッ素系化合物とシランカップリング剤とのナノコンポジットを用いてなる実施例4の分散液においては、親水性を付加させることが可能であることが分かる。さらに、本シランカップリング剤はスルホ基を有すため、例えばナトリウムイオン等を含む水溶液を用いてそのコーティング表面を処理することで、イオン交換が生じ親水性能をさらに向上させることができる。
これらより、本発明のナノ物質またはナノコンポジットを用いてなる分散液は、それで表面処理することで、硬表面、例えばガラス、金属、セラミックス、プラスチック、車体等の塗装板等に撥水・撥油性、親水・撥油性を付与することができ、高い防汚効果を奏することが分かる。
一方、実施例5および6において乾燥塗膜表面は裏面よりも撥油効果が高く、その効果は比較例5よりも遥かに高い。さらに、水に対しては実施例5では親水性、実施例では撥水性を示している。よって、ナノ物質またはナノコンポジットは塗膜表面側に効率よく配向していることが分かる。また、同様に実施例7および8において樹脂表面は裏面よりも撥油効果が高く、その効果は比較例6よりも遥かに高い。さらに、水に対しては実施例7で親水性、実施例8で撥水性を示している。よって、樹脂中においてもナノ物質またはナノコンポジットは表面側により多く配向している。
これらより、本発明のナノ物質またはナノコンポジットを用いてなる分散液は、塗料や樹脂等および骨再生・修復材料や歯科材料に添加することによって、それら乾燥被膜表面に撥水・撥油性、親水・撥油性を付与することが出来、高い防汚効果を奏することが分かる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】実施例4で得られたナノコンポジット分散液でコーティング処理されたガラスに対する拡張・収縮法による水の接触角の測定写真(収縮後)。
【図2】比較例4で得られたナノコンポジット分散液でコーティング処理されたガラスに対する拡張・収縮法による水の接触角の測定写真(収縮後)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I)
【化1】

[式中、Rfはパーフルオロアルキル基、パーフルオロオキサアルキル基または一般式
【化2】

(式中、Afはパーフルオロアルキレン基、Af′はAfと同一または異なるパーフルオロアルキレン基、mは1〜10である)
で示される基、Rはアルキル基、アルコキシアルキル基または水素原子、nは2〜100である。]
で表わされる含フッ素系化合物を含んでなるナノ物質。
【請求項2】
含フッ素系化合物が式(II)
【化3】

[式中、Rは−(CF)pFまたは−CF(CF)O(CFCFCFO)qC(pは1〜10、qは0〜5である)で示される基、R′はアルキル基、nは2〜3である。]
で表わされるものである請求項1記載のナノ物質。
【請求項3】
一般式(III)
【化4】

[式中、Xはビニル基、エポキシ基、スチルリ基、メタクリロキシ基、アクリロキシ基、アミノ基、四級アンモニウム基、ウレイド基、メルカプト基、スルフィド基、イソシアナート基、アルコキシ基、アルキル基、スルホ基およびリン酸基等からなる群から選ばれる官能基であり、Aは二価の炭化水素基であり、酸素原子、窒素原子、硫黄原子を含んでいてもよく、Rは一価炭化水素基または水酸基であり、Rはアルキル基、アルコキシアルキル基または水素原子であり、mは0,1または2である。]
で表されるシランカップリング剤と請求項1または2に記載の含フッ素系化合物とを含んでなるナノコンポジット。
【請求項4】
請求項1または2に記載のナノ物質、あるいは請求項3に記載のナノコンポジットが溶媒に分散されてなるナノ分散液。
【請求項5】
溶媒が非水性溶媒、疎水性溶媒である請求項4に記載のナノ分散液。
【請求項6】
請求項1または2に記載の含フッ素系化合物と請求項3に記載のシランカップリング剤とを溶媒中で混合させることを特徴とする請求項4または5に記載のナノ分散液の製造方法。
【請求項7】
請求項4または5に記載のナノ分散液からなる撥水剤。
【請求項8】
請求項4または5に記載のナノ分散液からなる親水剤。
【請求項9】
請求項4または5に記載のナノ分散液からなる撥油剤。
【請求項10】
請求項4または5に記載のナノ分散液からなる防汚剤。
【請求項11】
請求項4または5に記載のナノ分散液からなるコーティング剤。
【請求項12】
請求項4または5に記載のナノ分散液からなる添加剤。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−138156(P2010−138156A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−335984(P2008−335984)
【出願日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.セロテープ
【出願人】(504229284)国立大学法人弘前大学 (162)
【出願人】(000197975)石原薬品株式会社 (83)
【上記1名の代理人】
【識別番号】100095153
【弁理士】
【氏名又は名称】水口 崇敏
【Fターム(参考)】