説明

ナノ粒子を含む改善された三次元生体適合性骨格構造

本発明は、三次元生体適合性骨格構造及び生体適合性ナノ粒子を含む細胞培養系、細胞の培養方法、このような細胞培養系による細胞又は細胞産物及び組織の製造、並びに細胞又は細胞産物及び組織の標的化された製造に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、三次元生体適合性骨格構造及びナノ粒子を含む細胞培養系に関する。さらに本発明は、このような細胞培養系の製造方法及びこの細胞培養系による細胞培養方法に関する。
【背景技術】
【0002】
in vivoにおいて細胞は、特に細胞外基質(ECM)、増殖因子、サイトカイン及び隣接細胞からなる複雑な動的微小環境に取り囲まれる。細胞外基質は4つのすべての基本組織型、即ち上皮、筋、神経、並びに結合及び支持組織に存在する。ECMは長い間主要機能と見られた支持骨格としての機能のほかに、とりわけ細胞の膜貫通型受容体による相互作用的シグナル交換に利用される。この形のコミュニケーションによってECMは遺伝子発現の調節にも影響する。このことは必須細胞特性、例えば接着、増殖、分化、移動、アポトーシス及び再構成過程で重要な役割を果たす。ECMは静的系でなく、むしろECMの成分は「流動」平衡状態にある。ECMの成分は、細胞によって細胞間腔(細胞の間の空隙)に分泌され、合成されるが、同時に再び細胞によって分解される。細胞外基質は3つの主成分、即ちコラーゲン線維、アンカータンパク質及び空隙を満たす炭水化物からなる。基底膜は特殊細胞外基質とみなすことができるタンパク質層である。基底膜は安定化層であり、結合組織に対して表面上皮を画定する。それによってこの層の細胞が互いにずれることが防止される。
【0003】
細胞外基質の1つの成分をなすのが線維形成タンパク質である。その場合コラーゲンはECMの主要なタンパク質ファミリーである。コラーゲンは様々な種類の線維を形成し、ほとんどあらゆる組織に存在する。大部分のECMはI型の線維性コラーゲンからなり、一方、基底膜ではIV型コラーゲンが重要な役割を果たす。弾性線維はタンパク質のフィブリリン及びエラスチンからなる。ECMの内部で炭水化物は別の重要な成分をなす。グリコサミノグリカン(GAG)もこれに数えられる。グリコサミノグリカンは特定の個別ユニットの長鎖多糖と会合したタンパク質である。グリコサミノグリカンが集まって大きな高分子になると、プロテオグリカンが生じる。ECMの本質的な特徴と性質はタンパク質、グリコサミノグリカン及びプロテオグリカンの多様性と相互作用から生じる。ECMのその他の炭水化物成分はヒアルロン酸、硫酸ヘパラン、硫酸デルマタン、硫酸コンドロイチン及び硫酸ケラタンである。
【0004】
細胞外基質のもう一つの特徴的な成分は接着タンパク質である。接着タンパク質、アダプタータンパク質又はその他の接着タンパク質は特定の細胞レセプターへの接着により一方では基質の他の成分に、他方では他の細胞に組み込むことができる。接着タンパク質の一例はラミニン、ビトロネクチン及びフィブロネクチンのタンパク質ファミリーである。
【0005】
特殊細胞外基質としての基底膜は種々の重要な成分を含む。この場合第一に挙げられるのはI〜IV型コラーゲンであり、IV型は特に重要である。ラミニンは基底膜のもう一つの成分である。ラミニンは剣状の形を有する。その末端は主としてインテグリンに結合する細胞レセプターで占められる。ラミニン1は最も重要な接着タンパク質であり、さらにラミニン5が基底膜の決定的な成分として特に重要である。エンタクチン(ニドゲン)はコラーゲン層とラミニン層を結合するから、基底膜の別の成分として特に重要である。最後にプロテオグリカン、例えばパーリカンはその構造にコラーゲン、ラミニン、ニドゲン及びそれ自体に対する結合部位を有するから、プロテオグリカンによって基底膜の個々の成分が結合される。
【0006】
最後に細胞外基質の別の重要な要素として細胞レセプターが挙げられる。この点に関連して細胞膜タンパク質、例えばインテグリンファミリーは細胞接着に対して決定的な役割を果たす。インテグリンは種々のα及びβサブユニットで構成されるヘテロダイマータンパク質である。インテグリンのα又はβサブユニットの組成に応じて、インテグリンは細胞外基質、例えばラミニン、ビトロネクチン又はフィブロネクチンに結合することができる。
【0007】
細胞の培養のために、細胞の自然環境として細胞外基質を可能な限り正確に模擬することが1つの目標である。細胞外基質の成分のほかに、その他の生物学的に重要な物質、例えば増殖因子を適宜にECM構造に含めることが望ましい。
【0008】
これまで組織から単離された初代細胞の培養は、プラスチックで被覆した細胞培養容器で行われることが多い。しかしこの環境は細胞の自然の生理的条件に相当せず、このため機能喪失、細胞の脱分化、最悪の場合は細胞死を招くことが多い。従来知られている細胞培養容器の改善策は、細胞外基質の個々の天然成分、例えばコラーゲン線維又はフィブロネクチンでその表面を被覆するものである。ところがこれは細胞型に特異的に適合せず、しかも不規則に塗布されている。作用物質を含むゲル状構造での細胞培養も知られている。場合によって必要になる培地交換の際に作用物質が無秩序に洗い流されることが1つの欠点である。
【0009】
また作用物質がすでに溶解した形で存在する細胞培地で細胞を培養することが可能である。作用物質はこうして細胞に直接供給されるが、しかし作用物質が事情によっては急速に消費され、その濃度を培養細胞の当該の分化及び増殖段階に制御可能に調節することができないことが欠点である。
【0010】
ナノ粒子並びに同定及びスクリーニング方法のためのナノ粒子の応用がドイツ特許公開DE10144252A1及びDE10031859A1により公知である。この開示によればナノ粒子は特定の生物学的活性物質を識別し又は担持することができる。
【0011】
ナノ粒子の製造のための乳化重合は、非水溶性モノマーを乳化剤により水に乳化し、水溶性開始剤、例えば過硫酸カリウムを使用して重合する特殊な重合方法である。乳化重合で生じるポリマー分散液、例えばラテックス分散液は多数の用途に使用することができる。米国特許第4,521,317号及び同第4,021,364号は乳化重合の可能性と限界を示す。
【0012】
乳化重合の範囲内で基本的に2つのタイプの乳剤を使用することができる。即ち水中油型乳剤及び油中水型乳剤(逆乳剤ともいう)である。いずれの場合も攪拌しつつ乳化剤を加えることによって反応媒質に不溶のモノマーを分散させ、開始剤の添加によって反応を開始する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の根底にあるのは、一方では細胞の自然環境としての天然の細胞外基質に非常に近く、他方では細胞増殖及び細胞分化を意図的に制御し、商業的要求に適応させるために、増殖因子及びサイトカインの制御された供給を可能にする細胞培養系を提供するという技術的課題である。さらに本発明の根底にあるのは、移植に適した細胞、特に組織及び器官を提供するという技術的課題である。さらにいわゆる組織工学に関連して、かつ研究目的のために、特定の組織の要求がある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、三次元生体適合性骨格構造及び生体適合性ナノ粒子を含む細胞培養系を提供することにより、かつ細胞の培養方法により、また細胞又は細胞産物及び組織を提供することにより、並びにこのような細胞培養系による細胞又は細胞産物及び組織自体によりその根底にある技術的課題を解決する。
【0015】
そこで本発明は、細胞、特に真核細胞、特に好ましい実施形態では動物又はヒト細胞を
in vivo状況又は人工的に調整された所望の環境に相当する条件下で培養することを可能にする細胞培養系を提供する。
【0016】
本発明は特に、三次元生体適合性骨格構造と共在する生体適合性ナノ粒子を有する細胞培養系を提供することに基づいている。このような系はそこで培養される細胞に、ナノ粒子の存在によって特異的に提供される影響及び条件を作用させ、培養の目的に応じて細胞の生物学的挙動、例えば増殖又は分化挙動を調節することができる。特に好ましい実施形態では、ナノ粒子は例えばその表面上の又はナノ粒子自体の中に封入した作用物質を含むことによって、作用物質を含むことができる。作用物質がナノ粒子の表面にも内部にも存在するようにすることももちろん可能である。このようにしてナノ粒子と結合された作用物質は、細胞培養系によって行われる細胞培養方法の過程で制御及び/又は調節されて、特に時間的に遅らせて放出され、こうしてある量で、長期間にわたり制御されて細胞に供給される。ナノ粒子を例えば増殖因子と結合することによって、この増殖因子の所定の期間にわたる制御放出が保証される。
【0017】
例えばポリマー材料からなるナノ粒子は、例えば増殖因子の担体として意外な利点を有することを示すことができた。担体としてのナノ粒子、特にポリマーナノ粒子は制御放出、即ち所定の、通常遅延放出動力学により行われる作用物質、例えばサイトカインの放出を制御する。この効果は放出制御(controlled release)とも呼ばれる。本発明の好ましい実施形態では、作用物質の放出が予定に従って時間に応じて調節され、こうして所望の決まった作用物質放出動力学が与えられるようにする。本発明に基づきナノ粒子材料の選択により作用物質の放出が細胞特異的に行われるように、所望の作用物質放出動力学を構成することができる。例えば放出時間全体に関係する一定の作用物質放出率を生じることができる。例えば最初の段階でまず初めに僅かな作用物質放出率、そして所定の時期の後に始まる高い放出率を設定することももちろん可能である。また本発明の別の好ましい実施形態は、初期の第1段階で比較的高い作用物質放出率を定め、所定の時期の後に低い放出率に交替するようにする。また本発明に基づきナノ粒子の製造に適したポリマー材料を使用することによって、細胞培養方法の範囲内で所定の時期にナノ粒子から所望の高い濃度の作用物質をバースト効果の形で放出することも可能である。好ましい実施形態では、ナノ粒子は放出の後に作用物質濃度が1ng/ml〜10μg/mlの好ましい範囲内であるような作用物質負荷量を有することができる。
【0018】
その場合、作用物質の放出はナノ粒子からの若しくはナノ粒子による作用物質の拡散によっても、又は例えばポリマーの加水分解によるナノ粒子自体の分解によっても生じることができる。
【0019】
特に作用物質を負荷したナノ粒子と特に細胞外基質の成分からなる骨格構造との組合せは別の意外な利点を示した。即ち特に所定のサイトカイン負荷量のナノ粒子を有する骨格構造で細胞を培養することによって、幹細胞の制御されかつ方向付けられた分化を達成することが可能である。
【0020】
さらに特異的増殖因子と結合したナノ粒子を含む基質で培養することによって、特に初代細胞が著しく高い生存率を有し、こうしてこの感受性の細胞の長時間培養が可能になることを示すことができた。
【0021】
意外なことに、本発明に基づく細胞培養系で培養することによって制御されかつ方向付けられた細胞移動が誘起されることを示すことができた。
【0022】
研究が示したところでは、特に本発明に基づく細胞培養系で培養した初代細胞は、意外なことに増殖の顕著な増大を示す。さらに本発明に基づき修飾された表面、即ち細胞培養系で、在来の細胞培養容器と比較して著しく改善された接着性を確認することができた。しかも細胞は数日の培養の後でもその典型的な形態的性質を保持する。こうして初代細胞の望ましくない脱分化が本発明に基づく細胞培養系によってほとんど防止される。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】生分解性ナノ粒子の走査型電子顕微鏡(REM)写真を示す。
【図2】実施例1の8%BSA負荷PLGA粒子の放出結果を示す。
【図3】PAH+カルボキシ・ナノ粒子で被覆したスライドガラス上の第1日の細胞を示す。A)は試験1、B)は試験2を示す。
【図4】対照のために細胞培養フラスコで培養した試験2の細胞を示す。A)第1日、B)第3日。
【図5】アミノ官能化し、続いて平面状及び球面状表面を有するカルボキシ・ナノ粒子で被覆したナノ粒子付きの表面で培養した細胞を示す。A)PAA、第1日、試験1、B)PAH+カルボキシ・ナノ粒子、第1日、試験1、C)PAA、第3日、試験2、D)PAH+カルボキシ・ナノ粒子、第3日、試験2。
【図6】アミノ官能化し、続いて平面状及び球面状表面を有するカルボキシ・ナノ粒子で被覆したナノ粒子付きの表面で培養した細胞を示す。A)PAH、第1日、バッチ3、B)PAA+アミノ・ナノ粒子、第1日、バッチ3、C)PAH、第3日、バッチ2、D)PAA+アミノ・ナノ粒子、第3日、バッチ2。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の範囲内で「細胞培養系」の用語は、培養する細胞のための接着場所を例えば基質又はヒドロゲルとしてとりわけ三次元構造で構成した、特にそれに含まれる骨格構造の形で提供する細胞培養系を意味する。通常このような細胞培養系は使用時、とりわけin vitro使用時に人工容器の中に配置され、容器は細胞培養系自体を介して培養細胞及び培地も収容することができる。
【0025】
従って本発明の細胞培養系は、特にin vitroで細胞を培養するための系である。本発明に基づく細胞培養系は、在来の細胞培養容器、例えばペトリ皿又は細胞培養フラスコ又は任意の他の形での細胞の培養に適用することができる。本発明の好ましい実施形態では細胞培養系は初代細胞の培養のために使用される。別の実施形態では本発明に基づく細胞培養系をin vivoで、例えば動物実験で使用するものとする。
【0026】
本発明に関連して「骨格構造」とは、細胞の接着のための構造を意味する。特に好ましい実施形態では、本発明の範囲内で骨格構造は、細胞の表面接着又は接着だけでなく、さらに特に骨格構造自体への細胞の増殖又は組み込みを生じさせる構造である。骨格構造はとりわけ細孔又は間隙を有する基質であることが好ましい。本発明の好ましい実施形態では、この基質は細胞外基質の単数又は複数の成分、例えば基底膜の成分、接着タンパク質、線維形成タンパク質、炭水化物、プロテオグリカン又は細胞レセプターを含む。
【0027】
本発明に関連して「初代細胞」は器官又は胚から得られるヒト又は動物起源の真核細胞である。特に胚幹細胞、とりわけ臍帯血から得られる細胞を初代細胞として取り上げることが好ましい。しかし本発明に関連してヒト胚幹細胞の使用を取り上げないことが好ましい。本発明に基づき使用される幹細胞は全能性、万能性又は多能性細胞であることが可能である。さらに初代細胞は成体幹細胞、例えば動物又はヒト成体幹細胞であることが好ましい。
【0028】
このようにして本発明に関連して「初代細胞」はヒト又は動物起源の真核細胞を意味する。初代細胞は器官、例えば皮膚、腎臓若しくは肝臓、又は全胚から得ることができる。本発明に基づき使用される初代細胞の一例は線維芽細胞である。初代細胞は全能性又は多能性であることが好ましい。また初代細胞は成体幹細胞であることも可能である。細胞はトリプシン処理により又はその他のプロテアーゼによって処理され、こうして組織から単離され、また(細胞間結合、例えば密着結合を分解することにより)分離される。上皮細胞の初代細胞培養は初代細胞のもう一つの例である。一般に上皮は組織及び器官の内外の表面を被覆する。上皮細胞は非常に高い分化度を有する。それは頂端側及び基底側表面を有する細胞の分極にはっきり現れる。種々の表面が異なる機能を受け持つ。例えば腸の上皮細胞の頂端側表面は栄養素の摂取に利用され、一方、基底側表面はこの栄養素を血液に転送し、隣接細胞及び基底膜との結合を形成する。血液、骨髄又は脾臓の初代細胞はほとんど接着しないが、それでも懸濁させて培養することができる。トリプシンによる処理の後にさらに単離された初代細胞から所望の亜型を引き続き選別する方法がある。例えば磁気細胞分離法又は蛍光活性化セルソーティング(FACS)により、例えば骨髄からB細胞を初代細胞として単離することが可能である。
【0029】
また初代細胞はとりわけ非ヒト胚幹細胞、特に好ましい実施形態では臍帯血から得た胚幹細胞であることが可能である。好ましい実施形態では、胚幹細胞は、8細胞までの段階の胚から単離された細胞である。この8細胞段階の胚幹細胞は全能性細胞であり、主要な組織型のすべての細胞形態、即ち内胚葉(例えば消化管の周壁細胞)、中胚葉(例えば筋、骨、血球)及び外胚葉(例えば皮膚細胞及び神経組織)に分化し得る。別の好ましい実施形態では胚幹細胞は、胚盤胞の段階の胚から単離された細胞である。胚盤胞段階のこの胚幹細胞は多能性細胞であり、もはや形成することができない胎盤組織の形成を除き、主要な組織型のすべての種類の体細胞、即ち内胚葉及び外胚葉に分化し得る。幹細胞の特徴は、この細胞が一方では細胞分裂の際に自己複製し、こうして幹細胞のプールを維持し、同時に分化能力の低い分化細胞を産出することができることである。幹細胞はいわゆるマーカーによって分化細胞から区別される。マーカーは幹細胞によって増幅され、又は程度は低いが発現される特殊なタンパク質である。ネズミの胚幹細胞に対してマーカーとしてSSEA-1(段階特異的胚抗原-1)、AP活性(アルカリ性ホスファターゼ活性)及び転写因子Oct-3/4の発現が記述される。マーカータンパク質の発現は幹細胞の由来に依存する。
【0030】
また本発明は、非胚幹細胞に関し、特にこれを使用する細胞培養方法及びその実施のための手段に関する。成体幹細胞は、胚段階の後に生じる細胞である。成体幹細胞は器官及び組織、例えば骨髄、皮膚、脂肪組織、臍帯、臍帯血、脳、肝臓又は膵臓から単離することができ、通常予め決定されており、即ち低い分化能力を有し、多能性又は単能性である。胚又は成体哺乳動物から単離された初代細胞はごく限られた増殖能力しか持たないのが普通である。ヒト胎児細胞では単離及び培養の後に、まず良好な細胞増殖が行われる。また腫瘍からも初代細胞を単離し、培養することができる。遺伝子変異、腫瘍原性形質転換によって調節機構、例えばアポトーシスが無効化され、又は正の増殖シグナル、例えば増殖レセプターの過剰発現が増幅される。従って多くの、特に初代の腫瘍細胞は無制限な増殖を示すことが多い。腫瘍細胞の中で初代細胞の特殊な亜群をなすのがいわゆる腫瘍幹細胞である。特定の腫瘍の内部でごく小さな細胞分画としてこれを確認することができた。乳癌腫瘍から腫瘍幹細胞が単離され、培養されている。この乳癌幹細胞の特徴的なマーカータンパク質は高いCD44発現、全くないか又は僅かなCD24発現及びいわゆるラインマーカーの不在である。
【0031】
本発明に関連して「成体幹細胞」とは、胚段階の後に発生し、完全に分化した細胞と比較して分化能力がまだ消尽せず、予め決定されており、特に上皮細胞、内皮細胞、樹状細胞、間葉細胞、脂肪細胞又は特に心臓、骨格筋、脂肪組織、皮膚及び脳の当該の前駆細胞から単離される細胞を意味する。
【0032】
本発明に関連して「三次元」とは、3つのすべての空間座標での立体的な広がりを意味する。広がりはこの3つの方向でおおむね均等であり、例えば円筒形、柱状、直方体状、又は立方体状の基質構造をなす。しかし、例えば広がりが2つの方向で大きく現れるが、第3の方向では僅かに過ぎず、このため三次元構造が平面的に作用し、例えば膜又は層をなすことも可能である。
【0033】
本発明の範囲内で「生体適合性」の用語は、骨格構造とナノ粒子が材料組成についても、その構造についても、細胞、組織又は生物、特に実験動物に毒性、アポトーシス、望ましくない免疫学的及びその他の望ましくない反応を引き起こさず、ナノ粒子の可能な内部移行又はナノ粒子及び/若しくは骨格構造の分解の後も細胞及び分子プロセスを全く又はほとんど妨げないことを意味する。
【0034】
とりわけ本発明の特定の実施形態は、ナノ粒子が生分解性又は生体吸収可能であり、即ち生物学的影響、特に培養細胞の影響により継続的に分解され、その際、特に含まれる作用物質を放出することができるようにしている。
【0035】
本発明の範囲内でナノ粒子とは、1〜1000nmの直径を有する粒子を意味する。このようなナノ粒子は様々な材料、例えば無機物又は有機物から形成することができる。好ましい実施形態では、その表面が化学反応性官能基を含み、この官能基は結合させようとする作用物質の相補官能基と親和性結合、即ち共有及び/又は非共有結合を生じ、こうして作用物質をその表面に安定的に固定することができる。本発明の別の好ましい実施形態は、ナノ粒子が骨格構造とも結合しうるようにしている。このような結合はとりわけ静電気相互作用である。
【0036】
本発明の好ましい実施形態は、ナノ粒子が50〜1000nm、とりわけ50〜900nm、好ましくは60〜600nmの直径を有する細胞培養系を提供する。本発明の別の好ましい実施形態は、ナノ粒子が80〜150nm、とりわけ50〜150nmの直径を有する細胞培養系を提供する。
【0037】
別の実施形態では、本発明に基づく細胞培養系は、無機物、例えば金若しくはその他の貴金属、又は金属若しくは金属酸化物、リン酸カルシウム及びリン酸水素カルシウム又はその他の混合リン酸塩、ケイ素ベースの酸化物材料、例えばケイ酸塩、酸化ケイ素、例えば二酸化ケイ素で構成されたナノ粒子を含むものとする。好ましい実施形態では、ナノ粒子がDynaBeadsであることも可能である。
【0038】
好ましい実施形態において、本発明に基づく細胞培養系は、有機物、特に有機ポリマーで構成されたナノ粒子を含むものとする。ナノ粒子は乳化重合法で製造することが好ましい。
【0039】
生分解性ポリマーで構成されたナノ粒子を本発明に基づく細胞培養系で使用することが好ましい。さらに50nmの直径と生分解性基質を有するナノ粒子を使用することが好ましい。
【0040】
別の好ましい実施形態では、本発明に基づく細胞培養系は、ポリラクチド(PLA)、乳酸グリコール酸共重合体(PLGA)、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリグリコリド、二及び三ブロックポリマー、例えばPCL/PGA二ブロック系、ポリオルトエステル(POE)、高分子無水物、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)、ポリピロール(PPy)、ポリプロピレンカーボネート、ポリエチレンカーボネート、ポリアルキルシアノニトリル又はポリエチレングリコールで構成されたナノ粒子を含むものとする。
【0041】
本発明では、作用物質の所望の放出プロフィールに応じて、ナノ粒子が様々な分子量と可変の極性のポリマーを有するようにすることが好ましい。好ましい実施形態では、作用物質をどのような形態及び動力学で放出させるかに従って、ナノ粒子の形成のために使用される材料の選択を行うことができる。
【0042】
特に本発明は、放出される作用物質の放出プロフィールの制御において特に高い変動性を得るために、ナノ粒子が種々の材料、特に種々のポリマーで構成される好ましい実施形態を提供する。別の実施形態において、本発明に基づく細胞培養系が種々の材料からなるナノ粒子を有し、さらに別の実施形態でこのナノ粒子がやはり様々な作用物質を有するようにすることももちろん可能である。このようにして作用物質の時間的及び/又は空間的に特に所定の放出を行うこともできる。
【0043】
そこで本発明の特に好ましい実施形態では、ナノ粒子は少なくとも1つの作用物質の担体である。本発明に関連して作用物質とは、培養する細胞に作用を働かせる物質を意味する。このような作用物質として、培養する細胞の増殖及び分化過程の調節に関与し、特に増殖及び分化過程を制御、調節、決定、開始及び終結する作用物質が好ましい。このような作用物質は移動、浸潤、再分化又は分裂過程に関与することもできる。特に好ましい実施形態では、作用物質は、希望する所定の特殊な適用動力学で培養細胞に供給される物質である。
【0044】
本発明の別の好ましい実施形態では、細胞培養系は骨格構造に封入され又はその表面に被着された作用物質を有するナノ粒子を含むものとする。
【0045】
本発明の別の好ましい実施形態では、作用物質例えば増殖因子の封入のために、作用物質を負荷したナノ粒子、特にPLA及びPLGA粒子の好ましい製造方法として、水中油中水技術を使用するものとする。
【0046】
さらに本発明は、ナノ粒子に封入された作用物質が増殖因子、サイトカイン、細胞接着タンパク質、例えばインテグリン、色素例えばフルオレセインアミン、ケモカイン、ビタミン、鉱物質、脂肪、タンパク質、栄養素、線維形成タンパク質、炭水化物、接着タンパク質、細胞レセプター、薬物、DNA、RNA、アプタマー、脈管形成因子、レクチン、抗体、抗体フラグメント又はインヒビターである細胞培養系を提供する。
【0047】
本発明の好ましい実施形態では、細胞培養系は安定剤を有するナノ粒子を含むものとする。その場合、安定剤は炭水化物、例えばトレハロース、タンパク質、ポリエチレングリコール又は界面活性剤であることが好ましい。
【0048】
本発明の別の好ましい実施形態では、細胞培養系が官能基との結合によって官能化されたナノ粒子を含むものとする。特に好ましい実施形態では、ナノ粒子自体がその表面に官能基を有するものとする。
【0049】
本発明は、特にナノ粒子の表面に第1の官能基1Aが被着されており、第1の官能基1Aは固定化される作用物質の相補基2Aと親和性結合、とりわけ共有結合することができるものとする。
【0050】
本発明に基づき第1の官能基1Aは、アミノ基、カルボキシ基、エポキシ基、マレイミド基、アルキルケトン基、アルデヒド基、ヒドラジン基、ヒドラジド基、チオール基及びチオエステル基からなる群より選択される。
【0051】
本発明に基づき作用物質の官能基2Aは、アミノ基、カルボキシ基、エポキシ基、マレイミド基、アルキルケトン基、アルデヒド基、ヒドラジン基、ヒドラジド基、チオール基及びチオエステル基からなる群より選択される。こうして本発明に基づくナノ粒子は、その表面に第1の官能基1Aを有し、第1の官能基1Aは固定化される作用物質の官能基2Aと共有結合しており、その場合、表面官能基1Aはタンパク質官能基2Aと異なる基である。互いに結合する2つの基1A及び2Aは互いに相補的であり、即ち互いに共有結合を形成することができるものである必要がある。
【0052】
本発明の別の好ましい実施形態では、本発明に基づくナノ粒子の表面は官能基1Bを、固定化される作用物質は官能基1Bと結合する相補基2Bを有し、官能基1B及び2Bは本発明に基づき特に非共有結合を生じることができる。
【0053】
本発明の好ましい実施形態では、ナノ粒子の表面の第2の官能基1Bは、オリゴヒスチジン基、Strep-Tag I、Strep Tag II、デスチオビオチン、ビオチン、キチン、キチン誘導体、キチン結合ドメイン、金属イオンキレート錯体、ストレプトアビジン、ストレプトアクチン、アビジン及びニュートラビジンからなる群より選択される。
【0054】
本発明によれば、固定化される作用物質の官能基2Bは、オリゴヒスチジン基、Strep- Tag I、Strep Tag II、デスチオビオチン、ビオチン、キチン、キチン誘導体、キチン結合ドメイン、金属イオンキレート錯体、ストレプトアビジン、ストレプトアクチン、アビジン及びニュートラビジンからなる群より選択される。こうして本発明に基づくナノ粒子は、その表面に分子の官能基2Bと非共有結合した官能基1Bを有し、その場合、ナノ粒子の表面官能基1Bは分子の官能基2Bと異なる基である。互いに非共有結合する2つの基は相補的であり、即ち互いに非共有結合することができるものである必要がある。
【0055】
本発明に基づくナノ粒子の表面と固定化される作用物質が場合によっては官能基1A及び1Bも2A及び2Bも有するようにすることももちろん可能である。
【0056】
本発明の特に好ましい実施形態では、三次元骨格構造が、下記の成分、即ち線維形成タンパク質、例えばコラーゲン、弾性線維を形成するフィブリリン及び/又はエラスチン、炭水化物、例えばグルコサミノグリカン、長鎖多糖、特にヒアルロン酸、硫酸ヘパラン、硫酸デルマタン、硫酸コンドロイチン、硫酸ケラタン、並びに接着タンパク質、例えばアダプタータンパク質又はその他の接着タンパク質、例えばラミニン、ビトロネクチン及びフィブロネクチン、基底膜の成分、例えばラミニン、エンタクチン及びプロテオグリカン、並びにECM成分に対する細胞レセプター、例えば細胞膜タンパク質のいずれか1つ又は複数を含むものとする。
【0057】
本発明の好ましい実施形態では、三次元骨格構造は、ラミニン、グリコサミノグリカン(GAG)、プロテオグリカン、エラスチン、I、II、III及びIV型コラーゲン、エンタクチン(ニドゲン)、ビトロネクチン、ヒアルロン酸、硫酸ヘパラン、硫酸デルマタン、硫酸コンドロイチン、硫酸ケラタン、パーリカン、接着タンパク質及びフィブロネクチンからなる群より選択される細胞外基質の成分を含み又はこれからなるものとする。本発明の好ましい実施形態では、骨格構造は、骨格基本構造、例えばコラーゲン、特にコラーゲン線維で構成され、その際この骨格基本構造は骨格構造を形成する成分の上記のグループの別の成分で構成されていることが有利でありかつ最適である。即ち骨格構造、特にコラーゲン骨格構造は、例えば接着及び増殖といった細胞の性質を促進する成分、例えばアンカータンパク質及び/又は炭水化物をさらに備えることができる。
【0058】
本発明に基づく細胞培養系の好ましい実施形態では、特にコラーゲンからなる骨格構造は線維状及び/又は網状である。
【0059】
別の好ましい実施形態では、特にコラーゲンからなる骨格構造は三次元に網状に枝分かれした形である。好ましい実施形態では、骨格構造はヒドロゲル状又はスポンジ状であることができる。
【0060】
本発明に基づく細胞培養系で三次元生体適合性骨格構造は細胞外基質であることが好ましい。
【0061】
好ましい実施形態では、ナノ粒子中の作用物質の濃度は1ng/ml〜10μg/mlの範囲とする。
【0062】
本発明の別の好ましい実施形態では、細胞培養系は骨格構造と一体をなして細胞培養系に分布したナノ粒子を含むものとする。好ましい実施形態では、ナノ粒子が骨格構造に均質に分布している。しかし好ましい実施形態では、ナノ粒子が不均質、不均等に分布していることも可能である。別の好ましい実施形態では、ナノ粒子は少なくとも1つの層の形で骨格構造の上及び/又は下にある。別の好ましい実施形態では、ナノ粒子は少なくとも1つの層の形で骨格構造の上にある。
【0063】
本発明に基づく細胞培養系のナノ粒子を複数の層として骨格構造の下に配置することが好ましい。
【0064】
本発明に基づく細胞培養系のナノ粒子を複数の層として骨格構造の上に配置することが好ましい。
【0065】
本発明の好ましい実施形態では、ナノ粒子の平均直径は常に骨格構造の平均厚さより小さい又はそれに等しい。別の好ましい実施形態では、すべてのナノ粒子の平均直径は常に骨格構造の平均厚さより小さい。好ましい実施形態では、すべてのナノ粒子が骨格構造にとりわけほとんど又は完全に埋め込まれていることが好ましい。ナノ粒子の寸法と骨格構造の厚さの比は1:1以下、好ましくは1:10以下、さらに好ましくは1:100以下、さらに好ましくは1:1000以下であることが好ましい。
【0066】
本発明の好ましい実施形態では、本発明に基づく細胞培養系のナノ粒子は骨格構造の内部で勾配をなすものとする。
【0067】
別の実施形態では、とりわけ本発明に基づく細胞培養系に供給される作用物質は骨格構造の内部で勾配をなすものとする。
【0068】
本発明に関連して「勾配」の用語は、本発明に基づく細胞培養系、特に骨格構造の内部にナノ粒子及び/又は作用物質の様々な濃度、特にナノ粒子及び/又は作用物質の空間的に段階づけられた増加又は減少する濃度を形成することを意味する。
【0069】
本発明の好ましい実施形態では、様々な作用物質濃度を有するナノ粒子を使用することによって作用物質勾配が形成される。この好ましい実施形態では、作用物質を様々な濃度でナノ粒子に封入又は被着することができる。また官能基により結合することによって作用物質を様々な濃度でナノ粒子に被着することもできる。こうして様々な濃度を有するこのナノ粒子の骨格構造内の配置、例えば均質な分布に応じて、細胞培養系内の作用物質の濃度の上昇又は濃度の低下が得られる。そこで本発明の好ましい実施形態では、ナノ粒子を骨格構造の内部に均質に分布し、その際ナノ粒子が様々な作用物質濃度を有し、作用物質勾配が生じるように配置されることによって、作用物質勾配を形成するようにする。また好ましい実施形態では、様々な作用物質濃度を有するナノ粒子を空間的に不均等な形で、即ち不均質に骨格構造に分布し、特にこのようなナノ粒子をナノ粒子勾配の形で骨格構造に導入するようにする。
【0070】
本発明の別の好ましい実施形態では、ナノ粒子勾配を形成することによって、即ち所定の濃度の、使用するナノ粒子で一様な濃度の作用物質を封入し又はその表面に被着したナノ粒子を空間的に不均質に、即ち様々に骨格構造に分布することによって、細胞培養系に作用物質勾配が形成されるようにする。こうして例えば骨格構造の上側区域の少数のナノ粒子に続いて、その下側の骨格構造区域に多数のナノ粒子があって、骨格構造の内部に下向きに濃度増加が生じる。逆に骨格構造の上側区域の多数のナノ粒子とその下側の骨格構造区域の少数のナノ粒子が骨格構造内の下向きの濃度減少をもたらす。
【0071】
本発明の別の好ましい実施形態では、特に生分解性ナノ粒子を使用することにより、細胞培養系で作用物質の制御された遅延放出が行われるようにする。また付加的に又は代案として、ナノ粒子から周囲の細胞培養系へ、特に線維状又は網状骨格構造への拡散によって、本発明に基づく作用物質のとりわけ制御された放出を保証することができる。
【0072】
本発明の別の好ましい実施形態では、ナノ粒子と骨格構造が結合される。好ましい実施形態では、培地交換が骨格構造からナノ粒子の分離を生じないように結合が行われている。好ましい実施形態では、結合が洗浄に対して安定であり、即ち培地の交換及び場合によって慣用の洗浄剤、例えば緩衝液を用いて行われる洗浄ステップの際もナノ粒子が骨格構造から分離しない。
【0073】
ナノ粒子は、静電気相互作用、特にイオン結合により骨格構造と結合されるようにすることが好ましい。
【0074】
本発明の別の好ましい実施形態では、ナノ粒子が紫外線架橋により骨格構造と結合される。
【0075】
本発明の別の好ましい実施形態では、移動試験、特にin vivo移動試験を行うために細胞培養系を使用する。
【0076】
さらに本発明は、三次元生体適合性骨格構造及び生体適合性ナノ粒子を含む細胞培養系の製造方法において、骨格構造とナノ粒子を、例えば下記の方法の1つにより接触させる製造方法に関する。
【0077】
本学説の好ましい実施形態では、細胞培養系を「無接触プリンティング法」によって製造する。
【0078】
本発明に関連して「無接触プリンティング法」の用語は、表面と接触せずにナノ粒子を基質に転移する方法を意味する。これを達成するために様々なやり方がある。第1の好ましい実施形態ではインクジェット法によるいわゆるドロップオンデマンド(Drop on Demand)がある。第2の実施形態ではプリントヘッド(push button)又は個々のニードルによる方法がある。いずれの実施形態でも懸濁液の1又は複数の液滴が所望の場所に転移される。インクジェット法のためのDimatix(富士フィルム)の市販の機械を使用することが好ましい。また個々のニードルを有し、液滴を正確なポイントに排出するようにコンピューターで制御することができるmicrodrop technologies、MicroFab TECHNOLOGIES、Scienion AG及びGeSIM mbHの各社の機械も好ましい。本方法に関連して「正確なポイントに」とは、すべての方法で+/−25μm以下の位置決め精度が示されることを意味する。位置決め精度に関連して滴容積も考慮される。これはDimatix DMC-11601装置では少なくとも1pL、GeSIMのNano-Plotter NP1.2装置では少なくとも100pLで調整することができる。本発明の範囲内で、ナノ粒子懸濁液の排出は空気圧法、真空法又は圧電法で行われるようにすることが好ましい。本発明に基づく方法のそれぞれの実施形態で、基質、特に細胞培養系の骨格構造へのナノ粒子の進入深さを滴容積又は滴速度により制御することが特に好ましい。無接触プリンティング法は骨格構造内にとりわけナノ粒子の層状の被着を生じる。
【0079】
本出願の別の好ましい実施形態では、含浸により、特に骨格構造にナノ粒子含有懸濁液をしみ込ませることにより、例えばナノ粒子含有懸濁液に漬すことにより製造される細胞培養系を提供する。
【0080】
本発明の別の好ましい実施形態では、レーザー誘起前方伝達(Laser Induced Forward Transfer)(LIFT)法により製造される細胞培養系を提供する。そのために特に輸送される材料、特に細胞外基質の1又は複数の成分がレーザーエネルギーによって切り取られ、標的材料に被着される。
【0081】
本発明の別の好ましい実施形態は、細胞培養系をエレクトロスピニング(スピンコーティング)により製造するものである。エレクトロスピニングによって細胞の自然環境、即ち細胞外基質の自然環境によく似た、とりわけ2〜20μmの線維径を有する重合構造を作ることが好ましい。
【0082】
そこで本発明は、特に好ましい実施形態において、生体適合性ナノ粒子を例えば自発乳化溶媒拡散(Spontaneous Emulsification Solvent Diffusion)(SESD)法の溶媒蒸発、塩析、噴霧乾燥又は相分離により製造するようにした細胞培養系の製造方法に関する。
【0083】
特に好ましい実施形態では、ナノ粒子を溶媒蒸発、特に水中油中水技術により製造する。本発明に基づきこの方法により多種多様な親水性作用物質をナノ粒子に組み込むことがとりわけ可能である。その場合、水中の作用物質がポリマー含有油相に乳化される。この混合物を別の水相に乳化し、例えば減圧することによって有機溶媒を除去する。別の実施形態によれば、特に疎水性作用物質を組み込むために、油/水型乳液(O/W)を使用することも可能である。この実施形態では、油相がいわばポリマーのための溶媒として、例えば作用物質として作用する。
【0084】
別の実施形態では、本発明に基づくナノ粒子を特に溶媒蒸発に基づく自発乳化溶媒拡散(SESD)法により製造する。そのためにポリマーも作用物質も有機混合物、とりわけジクロロメタン又はアセトンに溶解し、この溶液を安定剤を含む水相に移し、攪拌することによって乳化する。その場合、特に親水性溶媒、とりわけアセトンを周囲の水相に拡散させ、低圧下で攪拌することによって本発明のナノ粒子を生じさせる。好ましい実施形態では、水に混合可能な溶媒の割合を増加することによって粒子のサイズを減少させる。
【0085】
別の実施形態では、本発明に基づくナノ粒子を特に塩析によって製造するものとする。特にこの製造においては溶媒の使用を省略する。製造のためにポリマー、とりわけPVAを、特に塩化マグネシウム又は酢酸マグネシウムの飽和溶液に加えて、水相として粘性ゲルを得る。さらに特に作用物質を有する生分解性ポリマーをとりわけ有機相としてのアセトンに溶解させる。水相と有機相を混合することによって、生じる2相系の有機相が攪拌によりゲルに乳化される。十分な量の水を加え、とりわけアセトンを水相に拡散した後、本発明に基づくナノ粒子を水相中に沈殿させることが好ましい。
【0086】
別の実施形態では、本発明に基づくナノ粒子を特に噴霧乾燥によって製造する。生分解性ポリマー及び作用物質が溶解した溶液及び乳液を、特に2成分ノズル(secondary nozzle)を用いて熱空気流に噴霧又は霧化することによって、本発明に基づくナノ粒子を製造することが好ましい。
【0087】
別の実施形態では、本発明に基づくナノ粒子を特に相分離(コアセルベーション)により製造する。そのために特に生分解性ポリマーをとりわけジクロロメタンに溶解し、作用物質をそれに拡散又は乳化する。また有機ポリマー相と混和しない、とりわけシリコンオイルを攪拌しつつ徐々に加えて、相分離を生じさせる。この混合物をとりわけヘプタンを加えながら引き続き攪拌すると、本発明に基づくナノ粒子を得ることができる。
【0088】
本発明に基づく細胞培養系の製造方法は、とりわけ無接触プリンティング法により製造される細胞培養系に関する。
【0089】
別の好ましい実施形態では、本発明は、含浸により製造される細胞培養系の製造方法に関する。
【0090】
別の好ましい実施形態では、本発明は、LIFT法により製造される細胞培養系の製造方法に関する。
【0091】
別の好ましい実施形態では、本発明は、細胞培養系をエレクトロスピニング(スピンコーティング)により製造する細胞培養系の製造方法に関する。
【0092】
さらに本発明は、本発明の細胞培養系と適当な培地を収容する細胞培養容器に細胞を入れ、そこで培養を可能にする適当な条件下で培養する細胞培養方法に関する。
【0093】
培養細胞は特にヒト又は動物起源の真核細胞であることが好ましい。さらに培養細胞は初代細胞であることが好ましい。
【0094】
本発明の別の実施形態では、培養する細胞は腫瘍細胞、特に腫瘍細胞系、例えばMCF-7、HeLa、HepG2、PC3、CT-26、A125、A549、MRC-5、CHO、MelJuso28、Nalm6又はJukatである。
【0095】
本発明の別の好ましい実施形態では、培養する細胞は接着細胞、特に樹立細胞系、例えばHUVEC又はHaCaTである。
【0096】
本発明の別の実施形態では、本発明は、本発明に基づく細胞培養系による細胞培養方法において、培養する細胞が完全に分化した細胞である培養方法に関する。
【0097】
別の好ましい実施形態では、本発明は、未分化細胞から分化した細胞又は細胞集団(united cell structure)を調製する方法、特に非治療的方法であって、未分化細胞を本発明に基づく細胞培養系で培養し、それによって分化した細胞又は細胞集団を得る方法に関する。
【0098】
別の好ましい実施形態では、本発明は、前分化又は分化細胞の分化段階の維持のための方法、特に非治療的方法であって、前分化又は分化細胞を本発明に基づく細胞培養系で培養する方法に関する。別の好ましい実施形態では、本発明は、未分化細胞を本発明に基づく細胞培養系で培養し、この未分化状態に保持する上記の方法、とりわけ非治療的方法に関する。
【0099】
細胞集団は移植体又は試験系であることが好ましい。
【0100】
さらに細胞集団は器官、器官の一部、特に気管又はその一部であることが好ましい。
【0101】
さらに本発明は、分化又は未分化の細胞又は細胞集団の本発明に基づく培養の後に得られる分化細胞及び細胞集団、例えば移植体、試験系、器官、器官の一部、特に気管又はその一部に関する。
【0102】
本発明、特に本細胞培養方法は、多様な使用分野のため、例えば移植体や試験系のために、さらには基礎研究でも使用することができる幹細胞及び前駆細胞の長時間培養を可能にする。
【0103】
本発明、特に本細胞培養方法は、機能性細胞、特に初代細胞の増殖を可能にする。
【0104】
本発明、特に本細胞培養方法は、例えば移植体の調製において、又は薬剤開発での試験系のために、機能性細胞及び組織の方向付けられた分化を可能にする。
【0105】
本発明、特に本細胞培養方法は、例えばナノ粒子が誘起する細胞移動による慢性/糖尿病性創傷の治癒ための移植体の調製を可能にする。
【0106】
さらに本発明は、細胞の発現産物の製造方法において、本発明に基づく細胞培養方法により細胞を培養し、この細胞培養物から発現産物を得る方法に関する。
【0107】
また本発明は、細胞を本発明の方法に従って培養して、その発現産物を得る、細胞の発現産物に関する。
【0108】
その他の実施形態は従属請求項で明かである。
【0109】
(実施例)
下記の実施例と図に基づき本発明を詳述する。実施例は限定的と解すべきでない。
(略称)
PLGA=乳酸グリコール酸共重合体
PLA =ポリラクチド
PCL =ポリカプロラクトン
PGA =ポリグリコリド
PAA =ポリアクリル酸
PAH =ポリアリルアミンヒドロクロリド
EGF =表皮増殖因子
BMP =骨形成タンパク質
SESD =自発乳化溶媒拡散法
MES =モルホリノエタンスルホン酸
【実施例1】
【0110】
水中油中水技術(W/O/W)によるBSA負荷生分解性PLGAナノ粒子の調製
まず120mgの乳酸グリコール酸共重合体を3.1mLのジクロロメタンに溶解する(O相)。この相に、封入されるタンパク質(ウシ血清アルブミン、BSA)の水溶液を超音波処理により乳化する(W/O)。そのために10mgのBSAを100μLのPBS緩衝液(pH7.4)に溶解した。作用物質の保護のために種々の安定剤、例えば糖、タンパク質、ポリエチレングリコール及びその他の界面活性剤を水溶液に組み込むことができる。調製されたW/O相を超音波により別の水相(100mL水+500mgポリビニルアルコール)に分散させると、W/O/W型乳液が生じる。ポリマー含有O相の有機溶媒を蒸発させて除き、それによってポリマーをナノ粒子として沈殿させる。粒子の大きさは約150〜350nmである。その場合、作用物質の封入は約5〜8重量%である。多量の作用物質を使用することによってより高い負荷を達成することもできる。
【実施例2】
【0111】
W/O/W技術によるBMP-2負荷生分解性PLAナノ粒子の調製
10mgのポリラクチドを300μLのジクロロメタンに溶解する。この相に0.05%のLutrol F68を含むBMP-2(骨形成タンパク質-2、c=200mg/mL)の水溶液10mLを加え、それに超音波で乳化する。
【0112】
このW1/O相を第2の水相(10mLの0.5%PVA溶液)に超音波で分散させる。真空蒸発によりW1/O/W2乳液のジクロロメタン/アセトン混合物を除去する。その際100〜250nmの大きさのナノ粒子が沈殿する。作用物質負荷量は約10〜15重量%である(図1)。
【実施例3】
【0113】
W/O/W法によるBSA負荷PLAナノ粒子の調製
まず120mgのポリラクチドを3.1mLのジクロロメタン/アセトン(8/2)に溶解する(O相)。この相に、封入されるタンパク質(ウシ血清アルブミン、BSA)の水溶液を超音波処理により乳化する(W/O)。そのために10mgのBSAを100μLの水に溶解する。調製したW/O相を別の水相(0.5%ポリビニルアルコールを含む水100mL)に超音波で分散させ、W/O/W型乳液が生じる。ポリマー含有O相の有機溶媒を蒸発により除去し、それによってポリマーがナノ粒子として沈殿する。粒子の大きさは約150〜300nmである。なお作用物質の封入は約7〜8重量%である。
【0114】
放出動力学の決定
50mgのBSA負荷乳酸グリコール酸共重合体粒子(Resomer(登録商標)502H)を5mLのPBS緩衝液(pH7.4)に懸濁させ、油浴で37℃で攪拌する。試験系列ごとにそれぞれ300μLを採取して遠心分離する。ペレットを再びPBS緩衝液に懸濁し、実験に戻した。
【0115】
粒子から遊離する作用物質の定量的決定は種々の方法、例えば高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)、示差的タンパク質アッセイ(Lowry又はBCAアッセイ)、電子スピン共鳴法(ESR)等によって行われる(図2)。
【実施例4】
【0116】
ナノ粒子表面への色素及びタンパク質の結合
10mgの調製した生分解性PLGAナノ粒子(実施例1)を0.4mLの0.1M MES緩衝液に懸濁する。これに300μLのフルオレセインアミン(3mg/mL)溶液を加える。タンパク質、例えばインテグリンを粒子表面に結合することもできる。160μLのEDC溶液(c=110mg/mL)を滴下して加え、室温で一晩振とうする。懸濁液を遠心分離し、ペレットを緩衝液で洗浄する。粒子1g当り3μmolのフルオレセインアミンを結合することができた。
【実施例5】
【0117】
続いて行われる細胞を用いた実施例のための表面修飾シリカナノ粒子の調製
シリカ粒子の合成
200mlのエタノールに12mmolのテトラエトキシシランと90mmolのNH3を加える。次に室温で24時間攪拌する。続いて数回遠心して粒子を精製する。平均粒度125nmの650mgのシリカ粒子が生じる。
【0118】
シリカ粒子のアミノ官能化
1重量%のシリカ粒子水性懸濁液を10容積%の25%アンモニア水と混合する。次に粒子に対して20重量%のアミノプロピルトリエトキシシランを加え、室温で1時間攪拌する。粒子は数回の遠心により精製し、その表面に官能性アミノ基を担持する(0.1M酢酸緩衝液中のゼータ電位:+35mV)。
【0119】
シリカ粒子のカルボキシ官能化
アミノ官能化ナノ粒子の2重量%懸濁液10mlをテトラヒドロフランに受ける。これに260mgの無水コハク酸を加える。超音波で5分間処理した後、室温で1時間攪拌する。粒子は数回の遠心により精製し、その表面に官能性カルボキシ基を担持する(0.1M酢酸緩衝液中のゼータ電位:−35mV)。平均粒度は170nmである。
【実施例6】
【0120】
ナノ粒子修飾表面により最適化された細胞培養条件
修飾した表面で初代表皮細胞の接着、増殖、移動及び分化について比較研究を行う。修飾した表面はナノ粒子のほかに線維状骨格構造も含む。この線維状骨格構造に接種ナノ粒子が10〜1000nm間隔で存在する。
【0121】
表面修飾のためにまずスライドガラス(OT)を40℃の水浴で2%(v/v)Hellmanex II溶液で洗浄する。続いて負電荷を生じるために、NH3(30%)とH2O2(25%)の3:1溶液中で70℃で表面のヒドロキシル化を行う。ヒドロキシル化の前又は後に、周知のように濃度0.1〜6mg/mlのコラーゲン溶液、例えばI型コラーゲンで被覆する。
【0122】
いわゆる多層(Layer-by-Layer)法により表面の高分子電解質被覆が生じる。この方法では精製したばかりの負荷電OTをまず陽イオン性ポリアリルアミンヒドロクロリド溶液(PAH溶液)(モノマーに対して0.01M)又はポリジアリルジメチルアンモニウムクロリド溶液(PDADMAC溶液)(モノマーに対して0.02M)の中に置き、室温で少なくとも20分インキュベートする。続いてカルボキシ・ナノ粒子で被覆するには、ただ1つの陽イオン性PE層で被覆すれば十分である。アミノ・ナノ粒子で被覆するには、OTをPAN被覆の後に陰イオン性ポリアクリル酸溶液(PAA溶液)(モノマーに対して0.01M)中で20分インキュベートすることが必要である。シリカ・ナノ粒子の結合は静電気引力によって行われる。カルボキシ・ナノ粒子は陽イオン性高分子電解質PAHにより、アミノ・ナノ粒子は陰イオン性高分子電解質PAAにより誘引される。続いて70%エタノールにより表面の滅菌を行う。
【0123】
種々の表面修飾についての結果が表1に詳しく示されている。表1はカルボキシ及びアミノ・ナノ粒子上のヒト角化細胞の形態についての観察を示す。修飾した表面についてそれぞれn=3の試料で3回繰り返して試験を行った。コロニー密度と細胞の接着量及び増殖も初代細胞の形態及び分化状態も評価した。線維状の骨格構造を有する修飾表面(図3)では、培養フラスコ(図4)と対照的に、角化細胞の著しく急速な接着と拡張が起こる。特にナノ粒子で修飾した表面は急速な拡張を誘起し、すでに数時間後にはっきり見える。
【0124】
この修飾した基質上の初代表皮細胞の形態は細胞培養フラスコと同等であった。またアミノ官能化表面(図6)では初代細胞の急速な分化が見られ、これに対してカルボキシ表面上の角化細胞の分化は対照のものに相当した(図5)。
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
三次元生体適合性骨格構造及び生体適合性ナノ粒子を含む細胞培養系。
【請求項2】
ナノ粒子が少なくとも1つの作用物質を含む請求項1に記載の細胞培養系。
【請求項3】
ナノ粒子が50〜1000nm、とりわけ60〜600nmの直径を有する請求項1又は2に記載の細胞培養系。
【請求項4】
ナノ粒子が80〜150nm、とりわけ50〜150nmの直径を有する請求項1、2又は3に記載の細胞培養系。
【請求項5】
ナノ粒子が無機ポリマー、金、貴金属、金属、金属酸化物、リン酸カルシウム、リン酸水素カルシウム、混合リン酸、ケイ素ベースの酸化物材料、例えばケイ酸塩、酸化ケイ素、二酸化ケイ素で構成されている請求項1〜4のいずれか1つに記載の細胞培養系。
【請求項6】
ナノ粒子が有機ポリマーで構成されている請求項1〜4のいずれか1つに記載の細胞培養系。
【請求項7】
ナノ粒子が生分解性ポリマーで構成されている請求項1〜6のいずれか1つに記載の細胞培養系。
【請求項8】
ナノ粒子がポリラクチド(PLA)、乳酸グリコール酸共重合体(PLGA)、ポリカプロラクトン、ポリグリコリド(PCL)、二及び三ブロックポリマー、例えばPCL/PGA二ブロック系、ポリオルトエステル(POE)、高分子無水物、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)又はポリピロール(PPy)、ポリプロピレンカーボネート、ポリエチレンカーボネート、ポリアルキルシアノニトリル又はポリエチレングリコールで構成されている請求項1〜7のいずれか1つに記載の細胞培養系。
【請求項9】
ナノ粒子が、封入された又は表面に被着された作用物質を有する請求項1〜8のいずれか1つに記載の細胞培養系。
【請求項10】
ナノ粒子が、ナノ粒子に封入された作用物質の所定の放出プロフィールを保証する種々の分子量及び種々の極性を有するポリマーで構成されている請求項1〜9のいずれか1つに記載の細胞培養系。
【請求項11】
ナノ粒子が乳化重合法によって調製されている請求項1〜10のいずれか1つに記載の細胞培養系。
【請求項12】
作用物質のナノ粒子への封入が水中油中水技術によって行われる請求項1〜11のいずれか1つに記載の細胞培養系。
【請求項13】
作用物質が増殖因子、サイトカイン、ケモカイン、ビタミン、鉱物質、脂肪、タンパク質、栄養素、線維形成タンパク質、炭水化物、接着タンパク質、インテグリン、細胞レセプター、薬物、DNA、RNA、アプタマー、脈管形成因子、レクチン、抗体、抗体フラグメント、色素、フルオレセインアミン又はインヒビターである請求項1〜12のいずれか1つに記載の細胞培養系。
【請求項14】
ナノ粒子が安定剤を含む請求項1〜13のいずれか1つに記載の細胞培養系。
【請求項15】
安定剤が炭水化物、タンパク質、ポリエチレングリコール又は界面活性剤である請求項1〜14のいずれか1つに記載の細胞培養系。
【請求項16】
ナノ粒子が官能基との結合により官能化されている請求項1〜15のいずれか1つに記載の細胞培養系。
【請求項17】
作用物質の相補基2Aと親和性結合、とりわけ共有結合を生じることができる第1の官能基1Aがナノ粒子の表面に被着されている請求項1〜16のいずれか1つに記載の細胞培養系。
【請求項18】
ナノ粒子の表面上の第1の官能基1A及び作用物質の相補基2Aがアミノ基、カルボキシ基、エポキシ基、マレイミド基、アルキルケトン基、アルデヒド基、ヒドラジン基、ヒドラジド基、チオール基及びチオエステル基からなる群より選択される請求項1〜17のいずれか1つに記載の細胞培養系。
【請求項19】
作用物質の相補基2Bと親和性結合、とりわけ非共有結合を生じることができる第2の官能基1Bがナノ粒子の表面に被着されている請求項1〜18のいずれか1つに記載の細胞培養系。
【請求項20】
ナノ粒子の表面上の第2の官能基1B及び作用物質の相補基2Bがオリゴヒスチジン基、Strep-Tag I、Strep-Tag II、デスチオビオチン、ビオチン、キチン、キチン誘導体、キチン結合ドメイン、金属イオンキレート錯体、ストレプトアビジン、ストレプトアクチン、アビジン及びニュートラビジンからなる群より選択される請求項1〜19のいずれか1つに記載の細胞培養系。
【請求項21】
三次元骨格構造がラミニン、グリコサミノグリカン(GAG)、プロテオグリカン、エラスチン、I〜IV型コラーゲン、エンタクチン(ニドゲン)、ビトロネクチン、ヒアルロン酸、硫酸ヘパラン、硫酸デルマタン、硫酸コンドロイチン、硫酸ケラタン、パーリカン、接着タンパク質及びフィブロネクチンからなる群より選択される請求項1〜20のいずれか1つに記載の細胞培養系。
【請求項22】
骨格構造が線維状である請求項1〜21のいずれか1つに記載の細胞培養系。
【請求項23】
骨格構造が三次元ヒドロゲル状又はスポンジ状である請求項1〜21のいずれか1つに記載の細胞培養系。
【請求項24】
三次元生体適合性骨格構造が細胞外基質である請求項1〜23のいずれか1つに記載の細胞培養系。
【請求項25】
ナノ粒子が細胞培養系の全体にわたって分布した状態又は層状である請求項1〜24のいずれか1つに記載の細胞培養系。
【請求項26】
層状のナノ粒子が骨格構造の下側に配置されている請求項1〜25のいずれか1つに記載の細胞培養系。
【請求項27】
ナノ粒子、特に作用物質を負荷したナノ粒子が、骨格構造の内部に勾配の形で量を増加又は減少して分布している請求項1〜26のいずれか1つに記載の細胞培養系。
【請求項28】
それぞれ等しい濃度の封入又は担持された作用物質を有するナノ粒子が骨格構造の内部の所定の区域に異なる量で存在することによって、骨格構造の内部の作用物質勾配が形成される請求項1〜27のいずれか1つに記載の細胞培養系。
【請求項29】
異なる濃度の封入又は担持された作用物質を有するナノ粒子が骨格構造の内部に均質に分布することによって、骨格構造の内部の作用物質勾配が形成される請求項1〜28のいずれか1つに記載の細胞培養系。
【請求項30】
異なる濃度の封入又は担持された作用物質を有するナノ粒子が骨格構造の内部の所定の区域に異なる量で存在することによって、骨格構造の内部の作用物質勾配が形成される請求項1〜29のいずれか1つに記載の細胞培養系。
【請求項31】
細胞培養系が、作用物質の制御された遅延放出を有する系である請求項1〜30のいずれか1つに記載の細胞培養系。
【請求項32】
ナノ粒子が骨格構造と結合されている請求項1〜31のいずれか1つに記載の細胞培養系。
【請求項33】
ナノ粒子が静電気相互作用によって骨格構造と結合されている請求項1〜32のいずれか1つに記載の細胞培養系。
【請求項34】
ナノ粒子がイオン結合により骨格構造と結合されている請求項1〜32のいずれか1つに記載の細胞培養系。
【請求項35】
ナノ粒子が紫外線架橋により骨格構造と結合されている請求項1〜32のいずれか1つに記載の細胞培養系。
【請求項36】
細胞培養系が移動試験、特にin vivo移動試験を行うために使用される請求項1〜35のいずれか1つに記載の細胞培養系。
【請求項37】
細胞培養系が無接触プリンティング法により製造される請求項1〜36のいずれか1つに記載の細胞培養系。
【請求項38】
細胞培養系が含浸により製造される請求項1〜36のいずれか1つに記載の細胞培養系。
【請求項39】
細胞培養系がLIFT法により製造される請求項1〜36のいずれか1つに記載の細胞培養系。
【請求項40】
細胞培養系がエレクトロスピニング(スピンコーティング)により製造される請求項1〜36のいずれか1つに記載の細胞培養系。
【請求項41】
生体適合性ナノ粒子を三次元生体適合性骨格構造と接触させる請求項1〜40のいずれか1つに記載の細胞培養系の製造方法。
【請求項42】
細胞培養系を無接触プリンティング法により製造する請求項41に記載の細胞培養系の製造方法。
【請求項43】
三次元骨格構造にナノ粒子を含浸することによって細胞培養系を製造する請求項41に記載の細胞培養系の製造方法。
【請求項44】
細胞培養系をLIFT法により製造する請求項41に記載の細胞培養系の製造方法。
【請求項45】
細胞培養系をエレクトロスピニング(スピンコーティング)により製造する請求項41に記載の細胞培養系の製造方法。
【請求項46】
細胞を、請求項1〜45のいずれか1つに記載の細胞培養系を含む細胞培養容器に入れ、細胞培地中で培養を可能にする適当な条件下で培養する、細胞培養方法。
【請求項47】
細胞が初代細胞である請求項46に記載の方法。
【請求項48】
初代細胞が胚幹細胞、特に臍帯血から得た万能性又は多能性幹細胞である請求項46又は47に記載の方法。
【請求項49】
初代細胞が成体幹細胞、特に上皮細胞、樹状細胞、間質細胞、脂肪細胞、間葉細胞又は骨髄細胞である請求項46又は47のいずれか1つに記載の方法。
【請求項50】
細胞が腫瘍細胞、特に腫瘍細胞系、例えばMCF-7、HeLa、HepG2、PC3、CT-26、A125、A549、MRC-5、CHO、MelJuso28、Nalm6又はJurkatである請求項46又は47のいずれか1つに記載の方法。
【請求項51】
細胞が接着細胞、とりわけ接着細胞系、例えばHUVEC又はHaCaTである請求項46又は47のいずれか1つに記載の方法。
【請求項52】
細胞が分化した細胞である請求項46又は47のいずれか1つに記載の方法。
【請求項53】
細胞を請求項46〜52のいずれか1つに記載の方法で培養して、発現産物を得る、細胞の発現産物の製造方法。
【請求項54】
未分化細胞を請求項46〜52のいずれか1つに記載の方法で培養して、分化した細胞又は細胞集団を得る、分化細胞又は細胞集団の製造方法。
【請求項55】
細胞集団が移植体又は試験系である請求項54に記載の方法。
【請求項56】
細胞集団が器官又は器官部分、特に気管である請求項54に記載の方法。
【請求項57】
請求項46〜56のいずれか1つに記載の方法で製造された細胞の発現産物。
【請求項58】
請求項46〜56のいずれか1つに記載の方法により製造された分化細胞又は細胞集団。
【請求項59】
請求項46〜56のいずれか1つに記載の方法で製造された移植体又は試験系。
【請求項60】
請求項46〜56のいずれか1つに記載の方法で製造された器官又は器官部分、特に気管。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2010−524442(P2010−524442A)
【公表日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−503415(P2010−503415)
【出願日】平成20年4月18日(2008.4.18)
【国際出願番号】PCT/EP2008/003130
【国際公開番号】WO2008/128717
【国際公開日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【出願人】(500242786)フラウンホファー ゲセルシャフト ツール フェールデルンク ダー アンゲヴァンテン フォルシュンク エー.ファオ. (47)
【Fターム(参考)】