説明

ナノ粒子組成物及びその製造方法

本発明は、粒度分布d90が10μm以下であるナノ粒子及び任意の界面活性剤を含むナノ粒子組成物に関する。また、本発明は本ナノ粒子組成物の製造方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナノ粒子組成物及びその製造方法に関する。本発明はまた、電池材料を製造するためのナノ粒子組成物の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
ナノ粒子(すなわち、粉体として又は液体媒体中に分散させて製造される固体であって、個々の粒子は、少なくとも2カ所における寸法が通常1000nm未満であり、かつ、単体、有機/無機化合物又は有機/無機複合体からなる)は、従来より、多くの用途において使用されている。例えば、多くの場合、ナノ粒子のBET表面積は大きいため、触媒の原料物質として使用されている。
【0003】
通常、いわゆる前駆体化合物からナノ結晶粉体又はナノ粒子を製造する湿式合成法と呼ばれるプロセスでは、有機金属化合物の析出反応又は加水分解等の化学反応により、粉体が形成される。ナノ粒子の最終構造は、通常、析出後に行われる焼成後又は焼成中に決まる。
【0004】
結晶化プロセスのターゲット制御は原料物質の組成の影響を受けうる。重要な要素は、特に前記ナノ粒子を触媒として使用する場合、結晶サイズである(非特許文献1)。しかしながら、湿式合成法、特にいわゆるアルカリ水酸化物析出法では、所望のナノ粒子及びナノ粒子物性を得るために(特に所望の平均粒度分布とするために)、析出法を最適化することはほぼ不可能であった。
【0005】
したがって、機械的製造方法によるナノ粒子の製造も検討されている。これは、例えば、不均質粒子を細かく粉砕して均質粒子とすることにより行われるが、粒子にかかる圧力により、粒子の非晶質化が起こる程度の相変化が発生してしまうことが多い。
【0006】
また、前記製造方法で形成される粒子は、微細粒子の再凝集傾向が著しいため均一な粒度分布を有さない。
【0007】
他のナノ粒子製造方法としては、例えば、特許文献1に記載されている熱物理的方法による製造方法があり、固体、液体又は気体状の原料物質へ熱エネルギーを導入することにより通常行われる。原料物質を酸水素炎内に噴霧して分解させる特許文献1に記載のいわゆるプラズマ熱分解スプレー法(plasmapyrolytic spraying process (PSP))が特に広く用いられている。PSP法は、易揮発生有機シリコン化合物を酸水素炎内に噴霧することによるナノ結晶二酸化シリコンの製造に典型的に応用されている。
【0008】
さらに、ナノ粒子の製造では、原料物質を最大6000Kのプラズマ内で蒸発させるいわゆるプラズマ合成法が多用されている。本発明の技術分野で知られている他の方法としては、例えば、気体状の原料物質を反応させるCVD法が挙げられ、本方法では、非酸化物の粉体や、様々な相構造を有する酸化化合物の混合物も形成される。
【0009】
また、特許文献2等に記載されているように、二次電池用電極材料の製造等にナノ粒子組成物が広く使用されている。特許文献2では、特にリン酸鉄リチウムの製造について記載されており;リン酸鉄リチウムは粒径1μm超の凝集体を形成している。特にカソード材料として使用する場合は、できるだけ微細に分散させた粒子も望ましい。
【0010】
同様な課題から、フローリアクター内でのレーザー照射により製造されるナノ粒径及びサブミクロン粒径の粒子が開示されており(特許文献3)、本文献では、酸化窒化リンリチウム、リン酸リチウム鉄マンガン、リン酸カルシウム、リン酸アルミニウム等の複合酸化物も形成される。特許文献3によれば、このナノ粒子も電池用材料として使用される。ナノ粒子を得ることを目的として、特にリン酸鉄リチウムの水系合成法が特許文献4に開示されているが、リン酸鉄リチウムの場合は、水酸化物による析出は行わないことが推奨されており、原料物質に対していわゆる炭酸塩析出法を使用することが推奨されている。
【0011】
リン酸鉄リチウム(LiFePO)の製造は、特に特許文献5において知られており、二次リチウムイオン電池用材料として現在最も有望視されている化合物である。さらに、特許文献6及び7には、原料物質であるリン酸鉄を一酸化炭素雰囲気下で炭酸リチウムと反応させて、LiFePOを製造することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】国際公開第2004/005184号
【特許文献2】欧州特許出願公開第1553647A1号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2002/0192137号明細書
【特許文献4】国際公開第2006/116251号
【特許文献5】米国特許第5,910,382号明細書(Goodenough et al.)
【特許文献6】国際公開第02/27823号
【特許文献7】国際公開第02/27824号
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】R. Schlogel et al., Angewandte Chemie 116, 1628-1637, 2004
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
したがって、本発明の目的は、凝集塊すなわち大型凝集物を形成しない超分散ナノ粒子組成物を提供することである。ここで「ナノ粒子」とは、通常、平均粒径が500nm以下の粒子をいい;ナノ粒子の粒径範囲は、多くの場合、1〜100nmである(Paschen, H., Coenen, C., Fleischer, T., Grunwald, R., Oertel, D., Revermann, C.; Nanotechnologie - Forschung, Entwicklung, Anwendung; Springer-Verlag; Berlin, Heidelberg, New York 2004等を参照)。
【課題を解決するための手段】
【0015】
前記課題は、粒度分布d90が10μm以下、特に好ましくは5μm以下である遷移金属化合物の非凝集ナノ粒子を含むナノ粒子組成物により解決される。本発明において、前記遷移金属化合物は、純粋な「二元系」遷移金属化合物(すなわち単一のアニオン又はカチオンから構成される)及び複数種の遷移金属カチオン及び/又はアニオンを含みうる混合型(「多元系」)すなわち「ドープ型」遷移金属化合物である。
【0016】
本明細書において、「非凝集」とは、独立した数個の粒子からなる粒子、すなわち、いわゆる凝集塊(二次粒子)を形成して粒径が15μm超となる粒子がナノ粒子組成物に存在しないことをいう。言い換えると、本発明の組成物は、いわゆる一次粒子のみからなる。
【0017】
本発明の組成物の粒度分布は単一ピークであることが好ましく、d50値が0.2〜1μmであることが特に好ましい。驚くべきことに、本発明のナノ粒子組成物は、ほぼ微細結晶性ナノ粒子のみを含み、非晶質粒子が存在しないことがわかった。
【0018】
本発明のナノ粒子組成物は、チタン、鉄、ニッケル、モリブデン、タングステン、ジルコニウム、ハフニウム、タンタル、ニオブ、セリウム、バナジウム、その組み合わせの酸化物、リン酸塩、硫酸塩から選ばれる物質を含むことが好ましい。FePO・2HO(リン酸鉄(III))やFe(PO(リン酸鉄(II))等のリン酸鉄、二酸化チタン(TiO)、LiTi12、LiFePO、及びそのドープ化合物が特に好ましい具体例として挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0019】
リン酸鉄(III)は従来から知られており、その製造方法は、例えば英国特許第962182号明細書に記載されている。しかしながら、従来のリン酸鉄(III)(FePO・2HO)の平均粒径d50は、小さくても10〜20μm程度であった。現時点で、更に微細な粒径は達成されていないか、達成されていても、製造方法や高濃度の硫酸塩の混在のため困難を伴っていた。
【0020】
特に好適な具体的実施形態において、上記材料から製造した本発明のナノ粒子の粒度分布は単一のピークを有する。特に、FePO粒子及びFe(PO粒子の特に好ましい平均粒度分布(d50)は0.3〜0.8μmであり、さらに好ましくは0.4〜0.7μmである。これは、従来公知のリン酸鉄(III)及びリン酸鉄(II)の粒度分布(d50)よりもかなり低い値である。
【0021】
現在ほとんどの場合に使用されている硫酸塩含有リン酸鉄(III)(原料物質として硫酸鉄を使用するためほぼ必然的に使用されている)とは異なり、FePO・2HOを含む本発明のナノ粒子組成物は、ほぼ硫酸塩を含まない。本明細書において「ほぼ」とは、通常使用される分析方法によって測定精度限界内で硫酸塩が検出されないことを意味する。
【0022】
FePO・2HO又はFe(PO、TiO又はLiFeOを含む本発明の組成物の更に重要な側面は、上述したように、当該組成物の粒子は微細かつ結晶性を有し非晶質状態で存在しないこと、すなわち、従来の他のFePO、Fe(PO、TiO、LiFeOのナノ粒子の大部分において通常生成するような非晶質粒子を有さないことである。
【0023】
本発明の有利な態様において、本発明の組成物は界面活性剤を更に含む。
【0024】
驚くべきことに、界面活性剤が存在することにより、組成物における個々のナノ粒子が互いに分散し続ける(すなわち、最終乾燥後に分散し続ける)ため、高周囲湿度等の典型的な凝集形成条件下においても凝集しない粉体として本発明の組成物を使用できることがわかった。周囲湿度は、特に金属リン酸塩系、遷移金属リン酸塩系、酸化物系、炭酸塩系、及び硫酸塩系のナノ粒子に影響を及ぼす。
【0025】
前記界面活性剤はイオン性であることが好ましく、ナノ粒子の化学構造や化学的性質に応じてカチオン性またはアニオン性とすることができる。
【0026】
また、前記界面活性剤は、組成物全重量に対して0.01〜2重量%で添加可能であることがわかった。0.01重量%未満であると、ナノ粒子同士が分散し続け、凝集体を形成しないことが保証できない。また、2重量%を超えると、界面活性剤の量が多いため凝集塊が同様に形成してしまう。しかしながら、ろ過が困難になるため1重量%未満とすることが好ましい。
【0027】
特に、TiO、Fe(PO、LiFeO、FePOを含む本発明の組成物の場合は、前記界面活性剤は、例えばPraestol(R)凝集剤シリーズ(Stockhausen GmbH & Co社製)のように、弱カチオン性であることが好ましい。
【0028】
弱カチオン性の界面活性剤は、組成物全体の重量に対して0.01〜1重量%で添加することが有利であることがわかった。これにより、組成物中に対応する物質、特にTiO、LiFeO、Fe(PO、FePO・2HOの結晶子が微細に分散する。1重量%を超えると、後述する本発明の方法による生成物のろ過が不可能になり、ほぼ凝集塊だけが生じてしまう。
【0029】
チタン(IV)化合物の加水分解によるTiOの製造において、カチオン性多価電解質を添加することも既に知られているが(欧州特許出願公開第260664A2号明細書)、組成物全量に対して4重量%超、より好ましくは5.5重量%超の量が要求される。本発明のように界面活性剤を少量使用する前例はない。
【0030】
さらに、本発明の前記目的は、ナノ粒子を溶液内に析出させたあと界面活性剤を添加する工程を含む、ナノ粒子組成物の製造方法により達成される。
【0031】
遷移金属化合物の酸化物、炭酸塩、硫酸塩又はリン酸塩を含むナノ粒子組成物の製造方法は、
(a)遷移金属原料化合物の酸水溶液を準備するステップと、
(b)任意で、アルカリ水酸化物溶液を添加するステップと、
(b)好適なアニオンを含む酸を添加するステップと、
(c)析出物の析出開始後に界面活性剤を添加するステップと、
(d)前記析出物をろ取するステップと、を含む。
【0032】
本明細書において「アルカリ水酸化物溶液」とは、KOH溶液又はNaOH溶液をいう。
【0033】
本明細書において「好適なアニオン」とは、遷移金属原料化合物と共に、使用する溶媒に不溶な析出物を形成するアニオンをいう。
【0034】
例えば、TiOナノ粒子の製造では水による加水分解のみが必要とされる。つまり、水は「酸」として機能する。
【0035】
ステップ(b)は任意である。例えばTiO粒子の場合、加水分解により既にTiOが形成されているので塩基の添加が不要だからである。
【0036】
本発明の製造方法により得られるナノ粒子は、二元系又は多元系化合物として析出する。したがって、本発明の製造方法により、ほぼ無限数の化合物を製造することができる。
【0037】
前記製造ステップ(a)〜(d)のうちの少なくとも1つのステップ、好ましくは最初のステップ(a)(残りのステップは室温で行われる)、より好ましくはステップ(a)〜(c)の全てのステップが、60〜170℃、より好ましくは60〜150℃、特に好ましくは60〜110℃の温度範囲で行われる。
【0038】
ステップ(c)における界面活性剤の添加は、通常、析出開始後、特に好ましくは析出終了後に行う。これにより、界面活性剤の添加前は超微細分散したサスペンションとして存在していた析出物が、はっきりと認識できる程度に凝析する。その結果、遠心処理等を行わなくても、市販のフィルターで簡単にろ取することができる。
【0039】
ろ取後、ナノ粒子組成物を250℃以下の温度で乾燥させることができる。
【0040】
正確な化学量論組成及び取扱い性の観点から、二元系又は多元系ナノ粒子の原料化合物は水溶性とすることが好ましい。
【0041】
驚くべきことに、本発明の製造方法を用いる結果、特に析出開始後に界面活性剤を添加することによって、粒径が0.3〜0.8μm、特に好ましくは0.4〜0.7μmである、微細な結晶性の非凝集ナノ粒子が得られることがわかった。これは、水酸化物析出法に基づく製法では予期されなかったものであり、特に、FePO・2HO、Fe(PO、LiFeO、TiO等の場合に当てはまる。本明細書において「析出開始後」とは、上述したとおり、析出プロセスの終了後の界面活性剤の添加を含む。
【0042】
例えばFePO・2HOの場合、0.009mol/LのFeCl・HO及び0.0027mol/LのHPOを用いて、FeClからリン酸鉄が得られることが知られており(P. Reale and B. Scrosati Chem. Mater. 5051 2003)、化学式FePO・2HOで表される構造の異なる3種類の相、すなわち、ストレンジャイト、メタストレンジャイトI、メタストレンジャイトIIが、それぞれ異なるpHで析出・形成される。
【0043】
本文献によれば、0.04M NaOHの添加によりストレンジャイトが形成され(pH=3〜4);何も添加しない場合はメタストレンジャイトIが形成され(pH=1〜2);0.5M HClの添加によりメタストレンジャイトIIが形成される(pH=0〜1)。単一相となるまで必要とする反応時間は、ストレンジャイトの2日、メタストレンジャイトIの7日、メタストレンジャイトIIの12日の順で大きくなる。著者はまた、強酸条件下(pH=0〜1)において混合相が形成され、前記反応時間は12日よりも短いと述べている。ストレンジャイト相はまた、同名の天然ミネラルとしても存在し、メタストレンジャイトIIは、天然のミネラルであるフォスフォシデライトと同等であると考えられている。メタストレンジャイトIは、天然及び合成のいずれの相としても記載されていない。
【0044】
生成物の低ろ過性により、また様々な相が生じる結果、問題が発生する。
【0045】
驚くべきことに、本発明の製造方法では、前記文献(Reale and Scrosati)とは異なり、「ストレンジャイトFePOが最初に形成された後、メタストレンジャイトI相及びメタストレンジャイトII相が長時間反応後に形成されること」は観察されなかった。
【0046】
本発明の製造方法では、通常、メタストレンジャイトIが直ちに形成される。FeCl溶液、好ましくはNaOH又はKOH溶液も60〜170℃、より好ましくは60〜150℃、特に好ましくは60〜110℃に加熱され、かつ、当該FeCl溶液の濃度の30〜50%である本発明のFePO・2HOの製造方法の収率は90%超と高く、凝集塊(二次粒子)の無い、一次粒子の超微細分散結晶性物質が形成される。
【0047】
塩化鉄(III)を使用する場合の欠点は、原料物質の塩化物含有量が高くなることである。塩化物は、製造中及び後に使用するときに強い腐食性を示すからである。製造中は通常の金属製容器を使用することはできないため、例えば、少なくとも内側面に酸耐性塗膜を設ける。さらに、生成物を激しく洗浄して、低塩化物濃度としなければならないと考えられている。
【0048】
従来より、遷移金属化合物の製造に苛性ソーダ溶液又は苛性カリ溶液を析出剤として使用しないことが推奨されていた。非ろ過性生成物が生じ、所定以上の苛性ソーダ溶液濃度又は苛性カリ溶液濃度で高度に凝集してしまうからである。
【0049】
本発明によれば、特に、苛性ソーダ溶液又は苛性カリ溶液を塩酸鉄(III)溶液に添加することにより、発熱した反応溶液内に水酸化鉄(III)を中間生成物として析出させ更にリン酸と反応させてリン酸鉄(III)を得た場合に、本発明の粒度分布を有するナノ結晶性リン酸鉄(III)が得られる。水酸化鉄(III)を中間析出させないと、形成される凝縮核が少なすぎるため、大粒径となってしまう。
【0050】
NaOH溶液又はKOH溶液は、鉄1モルに対して約2モルの濃度で使用することが好ましく、これにより、水酸化鉄の中間析出において良好な結果が得られる。
【0051】
本発明の製造方法で得られるFePO・2HO又はFe(POは、例えば、従来公知の固相法や、同様に広く公知であるいわゆる熱水法によるリン酸鉄リチウム又は混合型(ドープ型)リン酸遷移金属リチウムの製造に特に好適である。
【0052】
さらに、本発明の前記目的は、
(a)FePO・2HOを含む本発明のナノ粒子組成物を、
(b)LiOH、LiO、酢酸リチウム、シュウ酸リチウム、LiCOから選ばれる化学量論等量のリチウム化合物と、熱分解条件下、すなわち、固相反応により反応させる、LiFePOナノ粒子の製造方法によって達成される。好ましい実施形態において、Co、Ti、Ni、V、W、Pd、Ru、Cu、Mn、Ba、Sr、Nd、Mgから選ばれる遷移金属Mの遷移金属化合物を更に添加する。
【0053】
典型的な化合物は、そのリン酸塩、炭酸塩、シュウ酸塩、硝酸塩、酢酸塩、水酸化物、カルボン酸塩、酸化物である。以上により、対応するドープ型リン酸鉄リチウムLiFe1−xPO(x<1)が得られる。式中、Mは、欧州特許出願公開第1,325,525A1号明細書、欧州特許第904607号明細書、及び米国特許出願公開第2003/0082454号明細書に記載されているように、前述の遷移金属元素元素の組み合わせであってもよい。本文献は、その内容全体を本明細書に援用する。
【0054】
本発明によれば、ドープ型又は非ドープ型のリン酸鉄リチウムの製造方法はまた、熱水的、すなわち溶液(通常は水溶液)中で行うことができる。具体的には、
(a)Fe(POを含む本発明のナノ粒子組成物を、
(b)LiOH、LiO、酢酸リチウム、シュウ酸リチウム、LiCOから選ばれる化学量論等量のリチウム化合物及びリン酸塩源と、熱水反応させる。
【0055】
水溶性遷移金属化合物(遷移金属Mは、Co、Ti、Ni、V、W、Pd、Ru、Cu、Mn、Ba、Sr、Nd、Mgから選ばれる)を添加することによって、対応するドープ型リン酸鉄リチウムLiFe1−xPO(x<1)も当該合成ルートによって得ることができる。遷移金属Mは、前述の遷移金属の組み合わせであってもよい。典型的な可溶性化合物としては、前述の遷移金属の硝酸塩、酢酸塩、塩化物、カルボン酸塩、臭化物、硫酸塩、水酸化物、リン酸塩が挙げられる(国際公開第2005/051840A1号を参照)。また、例えば、リン酸(特に非ドープ型LiFePO製造の場合)又はドープ型混合金属のリン酸塩が、本発明におけるリン酸塩源として使用される。
【0056】
前記熱水的製造法におけるステップ(a)〜(c)は、60〜170℃、特に好ましくは100〜150℃の温度範囲で行うと有利である。析出反応の全収率が室温で行った場合と比較して向上するからである。
【0057】
同様に、本発明によれば、LiTi12を熱分解及び熱水プロセスの両方で製造することができる。熱水プロセスでは、TiOを含む本発明のナノ粒子組成物と、LiOH、LiO、酢酸リチウム、シュウ酸リチウム、LiCOから選ばれる化学量論等量のリチウム化合物とを、500〜750℃の温度範囲で熱水反応させる。
【0058】
驚くべきことに、FePO・2HO、Fe(PO、TiO等を含む本発明の組成物は、焼成後、本発明の方法によりLiFePO又はLiTi12或いはそのドープ型誘導体とした場合においてもナノ粒子の粒度を維持しており;原料物質への界面活性剤の添加は、LiFePO又はLiTi12或いはそのドープ型誘導体の合成中における粒子の凝集抑制に効果をもたらしていることがわかった。つまり、本発明に従って界面活性剤と共に析出させたFePO、Fe(PO又はTiOから、LiFePO又はLiTi12の純粋又はドープ型超微細分散結晶性ナノ粒子が得られる。
【0059】
したがって、本発明によれば、更に反応させて生成物を得た場合でも、その微細分散性を維持する超微細分散材料を得ることができる。
【0060】
好適な実施形態において、欧州特許出願公開第1049182A1号明細書等に記載されているように、炭素源存在下で前記合成を行う。本文献は、その内容全体を本明細書に援用する。
【0061】
特に好適な実施形態において、本発明の好適な組成物(未焼成)に含有させた界面活性剤を炭素源とする。これにより、別途の炭素源添加を省略することができるため、LiFePO、LiTi12又はそのドープ型誘導体の炭素被覆ナノ粒子の更なる製造手段が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】リン酸鉄を含む本発明の組成物から得たLiFePOのSEM写真を示す図である。
【図2】従来の界面活性剤を添加しないで製造したFePOから得たLiFePOのSEM写真を示す図である。
【図3】FePO・2HOから得たLiFePOのSEM写真を示す図である。
【図4】様々な原料物質から得たLiFePOの容量と放電レートとの関係を示す図である。
【図5】本発明のFePO・2HOを前駆体として使用して得たLiFePOについて、充放電を35サイクル行ったときの電圧特性を示す図である。
【図6】FePO・2HOナノ粒子を含む本発明の組成物のSEM写真を示す図である。
【図7】界面活性剤を添加せずに製造したFePO・2HOのSEM写真を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0063】
以下、本発明を図面及び実施形態に基づいて詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0064】
図1は、後述の実施例2に従って加国特許第2320661号明細書に記載の方法と同様に製造した、FePOナノ粒子からのLiFePO(サンプル番号:ALEP46_3)のSEM写真であり、微細分散結晶粒子だけでなく原料物質であるFePO・2HOがはっきりと示されている。このように、FePOの微細な結晶性がLiFePOに「移動」している。
【0065】
図2は、界面活性剤を添加しないで図1と同様にFePO・2HOから製造したLiFePO(サンプル番号:ALEP46_1)を示し、図1に示す分散した微細結晶粒子と異なり、粒子同士が凝集して大きな凝集塊が形成されている。
【0066】
図3は、市販のFePO・2HO(Budenheim社製)を用いて同様に製造したLiFePOであって、図1及び2と比較して、著しく大きくかつ粗い粒子が示されている。
【0067】
図4は、様々なFePO・2HO原料物質から製造した、実施例2のLiFePOの負荷特性を示す。図4から、粒子サイズがサンプルの容量と放電レートとの関係(loadability)に著しく影響していることがわかる。
【0068】
本発明に従って製造したFePO・2HOから製造したLiFePOサンプル(ALEP46_3)は、市販のFePO・2HO(Budenheim社製)から得た図3のサンプル(JM0700)よりも高容量である。
【0069】
国際公開第2005/051840A1に従って熱水プロセスにより製造したLiFePO(PD21;Sud-Chemie AG社から入手可能)はALEP46_3と同程度である。ALEP46_3は、放電レート8C以降のみにおいて、若干PD21よりも容量が悪い。
【0070】
また、図5から、実施例2の本発明の方法により製造したFePO・2HOから製造したLiFePOは、約3.5Vで電圧値が横ばいになるという良好なサイクル安定性を示すことがわかる。35サイクル以降は約4〜3%の容量低下が見られる。LiFePOサンプルの初期容量は理論値の98%であった。
【0071】
図7は、界面活性剤を添加しないで、水酸化物沈殿法により同様に製造したFePO・2HOのSEM写真を示す図である。図6に係る本発明のFePO・2HO組成物とは異なり、著しい凝集が観察される。対照的に、図6に示す本発明の組成物(界面活性剤を0.05%含有)では、凝集していない微細結晶粒子がはっきりと示されている。
【実施例】
【0072】
(実施例1)FePO・2HOの合成
FePO・2HOのプロセスを参照して、本発明のナノ粒子組成物の製造方法を詳細に説明する。
【0073】
熱水反応容器(Thale reactor 200L)内で本製造方法を実施した。通常、反応は以下のように行われる。146kgの40%FeCl溶液(FeCl:58.9kg(360モル))を反応容器に投入し、更に水125Lを加えた。混合液を約70℃に加熱した。56.2kgの50%NaOH溶液(NaOH:28.1kg(702モル))を添加・攪拌すると、約95℃に昇温した。直後に、43.2kgの80%HPO溶液(HPO:34.6kg(353モル))を添加した。温度は約95℃のままであった。HPOは、FeClに対して約2%の亜化学量論等量で使用した。得られた混合液を約100℃に加熱し、2時間30分攪拌した。温度は約100℃に維持した。
【0074】
本反応において、系中の鉄濃度は約0.9mol/Lであり、中和物量は約65%(1.95mol NaOH/1mol Fe)であった。攪拌後、溶液及び生じた黄色サスペンションを約30℃に冷却することにより、強酸溶液中の黄色サスペンションとしてリン酸鉄を得た。弱カチオン性界面活性剤(Praestol(R) 611 BC;Stockhausen GmbH & Co社製 ドイツ)の0.2%水溶液を以下のようにして冷却サスペンションに添加した。FePO・2HOサスペンションに、界面活性剤溶液(界面活性剤濃度:リン酸鉄二水和物の乾燥重量に対して0.05%)を数分かけてゆっくり添加した。次いで、生じた弱粘性のサスペンションをろ過し、洗浄水の伝導度が400μS/cm未満になるまでイオン水で洗浄した。d50値は0.4μmであり、生成物は凝集塊のない微細結晶であった(図6)。
【0075】
(実施例2)LiFePOの合成(熱分解反応)
実施例1で得たFePO・2HO及びLiCO(商品名:Lithiumcarbonat Special PC/US 250 AC Pharma & Chemie GmbH社から入手可能)を水素存在下で反応させてLiFePOを製造した。最初のステップにおいて、化学量論等量の当該2つの原料化合物をイソプロパノール溶媒中で粉砕し、8%の水素を含むアルゴンガス雰囲気下でオーブンにより段階的に加熱(6℃/分で700℃まで)した。当該温度を1時間維持した。40分以内に生成物を室温に冷却した。加熱処理中及び降温中にわたって還元ガスを絶えず供給した。全加熱時間は約3時間半とした。得られたLiFePOの結晶構造を粉末回折法により同定した。測定したスペクトルのピークは、純トリフィライトLiFePOのピークと一致した。d50値は0.5μmであった。生成物は凝集塊のない微細結晶であった(図1)。
【0076】
(実施例3)炭素被覆LiFePOの合成
実施例2で得たLiFePOを酢酸セルロースのアセトン溶液(アセチル含有量:39.7重量%、平均分子量:50000)に含浸した。酢酸セルロースの量は、処理対象であるLiFePOに対して約5重量%とした。アセトンを除去した後、得られた固形物を、加熱炉内でアルゴンガス雰囲気下で加熱速度6℃/分で700℃まで加熱した。当該温度を1時間維持した後、生成物を保護ガス存在下でゆっくり室温に冷却した。得られたサンプルの炭素含有量は1重量%であった。生成物の伝導度は1×10−8S/cm超であった。d50値は0.6μmであり、生成物は凝集塊のない微細結晶であった。
【0077】
(実施例4)炭素被覆LiFePOの合成
実施例1で得たFePO・2HO及びLiCO(商品名:Lithiumcarbonat Special PC/US 250 ACU Pharma & Chemie GmbH社から入手可能)並びに炭素源から、炭素で被覆したLiFePOを製造した。炭素源は、実施例3と同様の酢酸セルロース(アセチル含有量:39.7重量%、平均分子量:50000)とし、酢酸セルロースの量はFePO・2HO重量に対して約5重量%とした。全体としての酢酸セルロース量は、FePO・2HO及びLiCOの混合物の重量に対して4.2重量%であった。混合物をイソプロパノール溶媒中で攪拌した。溶媒を除去した後、実施例2及び3に記載した熱処理を行った。還元性雰囲気は8%の水素を含むアルゴンガスとした。生成物の結晶構造を粉末回折法により同定した。ピークは、純LiFePOのものと一致した。製造したサンプルは、粒径1μmの非常に微細な分散粒子であり、薄い炭素層により被覆されていた。生成物の伝導度は1×10−8S/cm超であった。d50値は0.6μmであり、生成物は凝集塊のない微細結晶であった。
【0078】
(実施例5)炭素被覆LiFePOの合成
実施例1で得たFePO・2HOの量は、LiCO(商品名:Lithiumcarbonat Special PC/US 250 ACU Pharma & Chemie GmbH社から入手可能)と化学量論等量であって、FePO・2HO、LiCO及び炭素源ポリマーであるポリエチレン−ブロック−ポリエチレングリコール(50%ポリエチレン)(Aldrich社製)の混合物の全量に対して5%とした。混合物をイソプロパノール溶媒中で攪拌した。オーブンで乾燥後、実施例2及び3に記載した熱処理を行った。生成物の伝導度は1×10−8S/cm超であった。d50値は0.5μmであり、生成物は凝集塊のない微細結晶であった。
【0079】
(実施例6)電気化学的測定
実施例5の炭素被覆LiFePOに対して電気化学的測定を行った。第一サイクルの容量を測定したところ、理論値の95〜97.5%であった。実施例5のLiFePOは、−3.5Vで電圧値が横ばいになるという良好なサイクル安定性を示した(図5)。35サイクル後、容量は約2%しか低下していなかった。
【0080】
(実施例7)TiOの合成
13.2mLのHSO(96%)及び11.2mLのTiCl(98%)を、100.2mLのHCl(37%)に攪拌しながら添加した。蒸留水500mLを添加し、更に、透明無色の溶液となるまで蒸留水を添加した。得られたTiCl強酸液を約108℃に加熱した。100℃で約10分間保持すると淡オパール色の析出物が形成され、乳白色のサスペンションとなった。析出物の沈降時にPraestol(R) 611 BC(Stockhausen GmbH & Co社製)の0.2%溶液を添加し、更に約100℃で2時間保持した。析出物をろ取し、蒸留水で洗浄後、120℃で乾燥した。また、乾燥後1200℃で焼成した。アナターゼ型TiOが約6.54g得られた。d50値は0.5μmであり、生成物は凝集塊のない微細結晶であった。
【0081】
(実施例8)LiTi12の製造
147.8gのLiCO(2モル)と、399.4gの実施例7のTiOとを混合した。LiCOの使用量は約2〜5%過剰量とした。当該炭酸リチウムは、商品名:Lithiumcarbonat Special PC/US 250 ACとしてPharma & Chemie GmbH社から入手可能である。蒸留水を加え、均質な粘性混合液となるまで攪拌した。得られた混合液を室温で乾燥し、ギャップ幅0.25mmのFritsh社製ディスク・ミル等で乾燥混合物を微細粉砕処理した。次いで、Navatherm−Ceramotherm N45040オーブン内で約950℃で4時間焼成した。得られた生成物を粉末回折法により分析したところ、ピークは、純チタン酸リチウムLiTi12のものと一致した。また、ルチル型のものは検出されなかった。d50値は0.7μmであり、生成物は凝集塊のない微細結晶であった。
【0082】
(実施例9)炭素被覆LiTi12の合成
実施例8のチタン酸リチウムをエアージェット(AFG100 エアージェット型ミル)で更に粉砕し、冷却した高濃度ラクトース溶液に添加・攪拌し粘性サスペンションを得た。100℃で12時間乾燥し、任意でギャップ幅0.25mmのFritsh社製ディスク・ミルで粉砕処理した。いわゆるLinn furnace内で、粉砕物を保護ガス雰囲気下で750℃に加熱し、750℃で3時間焼成した。0.8mmスクリーンを用いたFritsh社製ミルで最終粉砕処理した。生成物は、粒度分布が0.3〜0.8μmの凝集塊のない微細粒子であったこと以外は、国際公開第02/46101に記載の炭素被覆粒子と同じであった。
【0083】
また、凝析剤を添加することにより、当初のTiOの微細結晶性が最終生成物である炭素被覆型及び炭素未被覆型のLiTi12においても維持されていることが本実施例で観察された。また、言うまでもなく、国際公開第02/46101に記載されている他の炭素源をラクトースの代わりに使用できる。d50値は0.7μmであり、生成物は凝集塊のない微細結晶であった。
【0084】
(実施例10)LiFePOの合成(熱水反応)
1.前駆体サスペンションの製造
まず、8.746kgのLiOH・HOを、約50Lの脱イオン水に容器内で溶解して得た溶液を、スターラーを備えた200Lオートクレーブへモノポンプで導入し、40〜80rpmで攪拌した。次いで、18.61kgのFeSO・7HOを30〜35Lの脱イオン水に反応容器内で溶解した後、7.8kgの85%リン酸をゆっくり添加し、攪拌した。得られた酸性溶液をモノポンプで前記オートクレーブへ導入した。Fe(PO・8HO及びLiPOの混合物がオートクレーブ内に直ちに析出した。生じたサスペンションを約30℃まで冷却し、弱カチオン性界面活性剤(Praestol(R) 611 BC;Stockhausen GmbH & Co社製 ドイツ)の0.2%水溶液を添加した。添加は、2〜3分、好ましくは約5〜10分かけて滴下することで行った。界面活性剤を添加しない合成と異なり、国際公開第2005/051840A1に記載されているような従来のプリン状サスペンションではなく、微細結晶性サスペンションが形成した。
【0085】
本発明の製造方法によれば、本明細書に記載の国際特許出願で要求される分散処理や粉砕処理、並びに高粘性固体ペーストのポンプ循環が不要となる。析出後、Fe(PO・8HO/LiPOサスペンションを更に約時間ポンプ循環させた。以上により、析出した前駆物質であるFe(PO・8HO/LiPOの理想的な混合液を得た。通常、いわゆる遠心ポンプを使用することができる。
【0086】
ポンプ循環により前記2種類の前駆物質をよく混合した後、オートクレーブを高圧密封した。90〜100rpmの速度で攪拌しながら、160℃で2時間加熱した後、10時間160℃で保持した。3〜4時間で反応混合液を室温に冷却し、生じた微細結晶性LiFePOのサスペンションをろ過し、洗浄水の伝導度が4μS/cm未満になるまでイオン水で洗浄した。d50値は0.5μmであり、生成物は凝集塊のない微細結晶であった。
【0087】
(実施例11)炭素被覆LiFePOの合成
実施例3と同様に、実施例10のLiFePOを炭素被覆した。炭素源として、酢酸セルロースに代えて同量のラクトース一水和物を用いた。350gの脱イオン水に90gのラクトース一水和物を溶解した溶液を用いて、乾燥LiFePO 1kgに対して2%の炭素被膜を微細結晶性粒子上に形成した。生成物の伝導度は1×10−8cm超であった。また、当該サンプルの炭素含有量は約2.2重量%であった。d50値は0.6μmであり、生成物は凝集塊のない微細結晶であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒度分布d90が10μm以下である遷移金属化合物の非凝集ナノ粒子を含む、ナノ粒子組成物。
【請求項2】
前記ナノ粒子の粒度分布d50は0.2〜1μmである、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記ナノ粒子は結晶状態である、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記ナノ粒子は、クロム、チタン、鉄、ニッケル、モリブデン、タングステン、ジルコニウム、ハフニウム、タンタル、ニオブ、セリウム、バナジウム、その組み合わせの酸化物、リン酸塩、硫酸塩を含む成分から構成される、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
前記成分はFePO・2HO、Fe(PO、又はTiOである、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
前記成分はLiFePO又はそのドープ型構造アナログである、請求項4に記載の組成物。
【請求項7】
前記成分はLiTi12又はそのドープ型構造アナログである、請求項4に記載の組成物。
【請求項8】
前記ナノ粒子は炭素含有被膜を有する、請求項1〜7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
前記ナノ粒子の平均粒度分布d50は0.3〜0.8μmである、請求項4〜8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
前記ナノ粒子の成分は硫酸塩を含まない、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
界面活性剤を更に含む、請求項1〜10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
前記界面活性剤はイオン性である、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
前記界面活性剤は弱イオン性である、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
前記界面活性剤の含有量は、組成物全量に対して0.01〜1重量%である、請求項11に記載の組成物。
【請求項15】
(a)遷移金属原料化合物の酸水溶液を準備するステップと、
(b)好適なアニオンを含む酸を添加するステップと、
(c)析出物の析出開始後に界面活性剤を添加するステップと、
(d)前記析出物をろ取するステップとを含む、請求項1〜14のいずれか一項に記載のナノ粒子組成物の製造方法。
【請求項16】
前記ステップ(b)の前に、アルカリ水酸化物溶液を添加するステップ(b)を更に含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記アルカリ水酸化物溶液は2〜10分間かけて滴下される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記遷移金属原料化合物の全てを反応させるために必要な量に対して40〜90%の前記アルカリ水酸化物を提供する、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記アルカリ水酸化物は、遷移金属1モルあたり約2モル使用される、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記酸水溶液における前記遷移金属原料化合物の濃度は10〜50体積%である、請求項15〜19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記遷移金属原料化合物の溶液は60〜70℃に加熱される、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記酸の好適なアニオンは、前記遷移金属原料化合物と不溶性析出物を形成する、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記酸は、遷移金属1モルあたり約0.5〜3モル使用される、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記界面活性剤はカチオン性である、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
カチオン性の前記界面活性剤は、ナノ粒子成分の理論収量に対して0.01〜2重量%で使用される、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記ステップ(a)〜(c)は全て、60〜170℃の温度範囲で行われる、請求項15〜25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記析出物を500〜1200℃の温度範囲で焼成する、請求項15〜26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記遷移金属原料化合物の酸溶液はFeCl酸溶液である、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記遷移金属原料化合物の酸溶液はTiCl酸溶液である、請求項27に記載の方法。
【請求項30】
前記遷移金属原料化合物の酸溶液はFeSO酸溶液である、請求項26又は27に記載の方法。
【請求項31】
請求項28に記載の方法により得られるFePO・2HOを含む、ナノ粒子組成物。
【請求項32】
請求項29に記載の方法により得られるTiOを含む、ナノ粒子組成物。
【請求項33】
請求項30に記載の方法により得られるFe(POを含む、ナノ粒子組成物。
【請求項34】
平均粒径d50は0.3〜0.8μmである、請求項30〜33のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項35】
リン酸鉄リチウム及び混合リン酸遷移金属リチウムを製造するための、請求項31に記載のFePO・2HO又は請求項33に記載のFe(POを含むナノ粒子組成物の使用。
【請求項36】
チタン酸リチウム及びそのドープ型誘導体を製造するための、請求項31に記載のTiOを含むナノ粒子組成物の使用。
【請求項37】
(a)請求項5、11又は31に記載のFe(POを含むナノ粒子組成物を、
(b)化学量論等量のLiOH、LiO、酢酸リチウム、シュウ酸リチウム、又はLiCOと熱分解反応させる、LiFePOナノ粒子の製造方法。
【請求項38】
Co、Ti、Ni、V、W、Pd、Ru、Cu、Mn、Ba、Sr、Nd、Mgから選ばれる遷移金属の遷移金属化合物を更に添加する、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
(a)請求項5、11又は33に記載のFe(POを含むナノ粒子組成物を、
(b)化学量論等量のLiOH、LiO、酢酸リチウム、シュウ酸リチウム、又はLiCO並びにリン酸塩源と熱水反応させる、LiFePOナノ粒子の製造方法。
【請求項40】
Co、Ti、Ni、V、W、Pd、Ru、Cu、Mn、Ba、Sr、Nd、Mgから選ばれる遷移金属の水溶性遷移金属化合物を更に添加する、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
炭素源と共に反応させる、請求項37〜40のいずれか一項に記載の方法。
【請求項42】
請求項11に記載のナノ粒子組成物の界面活性剤を炭素源とする、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
請求項37〜42のいずれか一項に記載の方法により得られるLiFePO
【請求項44】
(a)LiOH、LiO、酢酸リチウム、シュウ酸リチウム、LiCOから選ばれる化学量論等量のリチウム化合物を、
(b)請求項5、11又は32に記載のTiOを含むナノ粒子組成物と熱分解反応又は熱水反応させる、LiTi12ナノ粒子の製造方法。
【請求項45】
炭素源と共に反応させる、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
請求項11に記載のナノ粒子組成物の界面活性剤を炭素源とする、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
請求項44〜46のいずれか一項に記載の方法により得られるLiTi12


【図4】
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【図5】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2011−505332(P2011−505332A)
【公表日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−536381(P2010−536381)
【出願日】平成20年12月8日(2008.12.8)
【国際出願番号】PCT/EP2008/010399
【国際公開番号】WO2009/071332
【国際公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【出願人】(591056237)ジュート−ヒェミー アクチェンゲゼルシャフト (33)
【氏名又は名称原語表記】Sued−Chemie AG
【住所又は居所原語表記】Lenbachplatz 6, D−80333 Muenchen,Germany
【Fターム(参考)】