説明

ナノ粒子鉱物顔料

大表面積およびナノスケール領域の粒径を有する鉱物顔料(カオリン粘土等)が提供され、該鉱物顔料は紙コーティングおよび充填剤、インクジェットコーティング塗料および塗料組成物において、ならびにゴム類、プラスチック類およびポリマー類の充填剤として、有用である。これら顔料は鉱物組成物に高強度の湿式摩砕を行うことにより製造され、この湿式摩砕の前に乾燥摩砕を行ってもよく、また任意に、湿式摩砕した鉱物組成物に酸処理を行ってもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉱物顔料に関する。より詳細には、本発明は、大きな表面積を有し、粒子の大部分が200ナノメートル未満の粒径を有する鉱物顔料に関する。本発明はまた、これらの鉱物顔料を製造するための方法にも関する。
【0002】
本発明は、特に出発鉱物組成物としてのカオリン粘土に言及して詳細に説明される。しかし、本発明は他の出発鉱物組成物、例えば天然炭酸カルシウム、沈降炭酸カルシウム、ベントナイト、タルク、硫酸カルシウム(石膏とも呼ばれる)、ゼオライト、二酸化チタン、酸化鉄、水酸化鉄、酸化アルミニウムおよび水酸化アルミニウムに対しても適用できると理解される。
【背景技術】
【0003】
カオリンは、含水ケイ酸アルミニウム(Al・2SiO・2HO)として一般に記載することができる、天然の、比較的微細な、白色の粘土鉱物である。カオリンの構造は、基本的に1枚の八面体のAl(OH)シートが1枚の4面体SiOシートと共有結合して1:1の層を形成するものである。理想的には、この1:1の層は電気的に中性である。隣接する層は主に、前記四面体シート基底部の酸素原子と、隣接する前記八面体シートの平面のヒドロキシル基との間の水素結合によって互いに結合する。
【0004】
カオリンの理想構造式は、AlSi(OH)と表すことが出来る。精製および選鉱後、カオリンは、ゴムおよび樹脂といった各種材料、ならびに塗料および紙のコーティングといった各種コーティングにおいて、充填剤および顔料として広く用いられている。
【0005】
カオリンを紙コーティングに用いることは、コーティングされた紙の明度、色、光沢、滑らかさ、不透明性、印刷性および外観の均一性を改善するのに役立つ。製紙の充填剤として、カオリンは、繊維を伸ばし、コストを下げ、充填された紙製品の不透明性、明度および他の望ましい特性を改良するために用いられる。
【0006】
カオリン粘土は天然では含水物であり、水酸基の形態で構造内に13.95%もの水を含み得る。含水カオリン粘土の例としては、Thiele Kaolin Company(ジョージア州Sandersville)によりKofine90およびKaoluxの商標で販売される商品が挙げられる。これらの商品は焼成工程にはかけられていない。
【0007】
焼成カオリンは、他のタイプのカオリンであり、選鉱したカオリン粘土を、少なくとも550℃の温度で加熱(すなわち焼成)することによって得られる。焼成工程により、脱水酸化が行なわれ、カオリンは非結晶性アルミノシリケート相へ転化される。(「脱水酸化」という語は、カオリンから構造的な水酸基を水蒸気の形態で除去することを意味する。)供給粘土の小さな粒子は、焼成により凝集し、この凝集によってもとのカオリンの体積が増大し、焼成カオリンに「ふわふわした」外観を与える。粒子の凝集によりカオリンの光散乱特性が(非焼成カオリンに比較して)増大し、したがって、コーティング紙に高度の不透明性および絶縁性を付与する。
【0008】
さらに、焼成は、カオリンの明度を増大させる。焼成カオリン粘土の例として、Thiele Kaolin CompanyよりKAOCALの商標名で販売される商品が挙げられる。焼成粘土の明度が高いのは、部分的には有機物の除去によるものであり、また部分的には温度の上昇による非晶質ネットワークにおける不純物相の可動化によるものである。明度はまた、磁気分離、浮選、選択フロキュレーションおよび化学的浸出のような、焼成前の選鉱プロセスによっても改善することができる。
【0009】
含水および焼成カオリン粘土製品はともに、オフセット、輪転グラビア印刷、活版印刷およびフレキソ印刷のような従来の印刷用途のためのコーティング組成物として有用である。しかしながら、かなりの機械的および/または化学的修飾を行なわなければ、従来の含水および焼成カオリン粘土製品は、インクジェット印刷用途のためのコーティング組成物としては有用ではない。
【0010】
インクジェット印刷プロセスにおいては、均一に成形された、水性または溶剤系の染料溶液の小さな滴が、ノズルから基体上に放出される。インクジェット印刷には、2つの主なタイプがある。すなわち、連続的インクジェット印刷とオンデマンド型(DOD)インクジェット印刷である。連続的インクジェットは、宛名印刷、名入れ(personalization)、コーディング、校正刷りのような高解像度カラー印刷等の、高速印刷に用いられる。DODインクジェットは、主に家庭、オフィスにおいて、および大判印刷の際に、用いられる。
【0011】
一般的なDODインクジェットプリンターはサーマルインクジェットプリンターおよび圧電プリンターである。サーマル(またはバブルジェット(登録商標))プロセスにおいては、デジタルデータに接続された加熱部材で周期的にインクを加熱して気化させ、泡を生成させる。気化の過程においてインクの体積が増大するので、インクは滴の形態でノズルから押し出され、紙の上に被着される。
【0012】
圧電プロセスにおいては、サーマル法における熱の代わりに圧電結晶を用いて圧力により滴が生成する。圧電材料は「圧電効果」を示す。すなわち、電場を与えた際に材料に歪みが生ずる。電気パルスを与えるとノズル後方にマウントされた圧電結晶が伸長および収縮し、その後ノズルから滴が押し出される。圧電プリンターはサーマルプリンターに対し、いくつかの利点(より制御された高速な滴の生成、およびヘッド寿命が長いことなど)を有する。
【0013】
インクジェット印刷は、使用されるインクの性質およびプリンターヘッドのデザインが原因で、高品質な像を達成するためには特別な紙を必要とする。これらのインクの多くはアニオン性であり、主に水および水溶性溶剤から成る。インクは、一連の、それぞれ直径約10〜70μmの極めて小さな開口部から媒体上の特定の位置に向けて噴射され、像を形成する。多用途普通紙は良好な品質のインクジェット印刷には適していない。なぜなら、この種の紙ではフェザリング、ウィッキング、色泣き、低色濃度、裏抜け、および、しわ/カール等、多くの品質上の問題が発生するためである。そのため、インクジェット紙は一般的に、良好な印字品質と適切なインク乾燥/吸収とが提供されるように配合された、特別なインク受容層でコーティングされている。
【0014】
非晶質シリカ(シリカゲル等)は、マットグレードのインクジェットコーティングの用途において一般的に用いられる顔料である。大きな表面積および多孔質のシリカ顔料により、インク溶剤を速やかに吸収し、インク乾燥時間を短くするための高度多孔性コーティングが提供される。しかし、シリカゲルは高価であり、極めて低い固形分濃度でしか製造できない。例えば多くのシリカゲルは15〜18%の固形分濃度でしか製造できず、その結果コーティング固形分が少なくなる場合がある。
【0015】
インクジェット紙コーティング用途のための非シリカ系顔料が業界内でいくつか知られている。例えば、Doniganらの米国特許第5,643,631号には、熱熟成沈降炭酸カルシウムが開示されている。
【0016】
ChenらのPCT国際公開公報WO98/36029およびChenらの米国特許第6,150,289号には、焼成粘土、カチオン性ポリマー、ポリビニルアルコール、ラテックスバインダーおよび任意に架橋剤を含む、コーティング組成物が開示されている。
【0017】
Londoらの米国特許第5,997,625号には、微粒状含水粘土、苛性抽出焼成粘土および多孔性鉱物(ゼオライト)を含むコーティング組成物が開示されている。
【0018】
MallaおよびDevisettiの米国特許第6,610,136号には、大きな表面積と低い光散乱性とを有する、インクジェット印刷媒体のためのコーティングおよび充填組成物として有用な、凝集鉱物顔料が開示されている。
【0019】
上記の非シリカ系顔料は全て、主にマットグレードのインクジェットコーティング紙のためにデザインされたものである。しかし、写真およびハイエンドなインクジェット印刷用途のほとんどにおいては光沢コーティング紙が好まれる。現在、光沢コーティングには、(1)膨潤性ポリマーコーティング;および(2)微孔性コーティング;の2種類がある。
【0020】
膨潤性ポリマーコーティングでは、インクの乾燥は遅く、水分子のポリマーマトリクスへの拡散、およびポリマーマトリクスの膨潤が伴う。多糖類(セルロース誘導体)、ゼラチン類、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(ビニルピロリドン)およびポリ(エチレンオキシド)等のポリマーが膨潤性コーティイングに用いられる。一方、微孔性コーティングにおいては、インクの乾燥は、コーティングの細孔構造および原紙への毛細管作用による水の吸収によって起こるため、比較的速やかである。アルミナ、水酸化アルミニウム、ヒュームドシリカ、およびコロイドシリカ等の、大きな表面積を持った微細粒子顔料が光沢コーティングにおいて好まれる。
【0021】
Berubeほかの米国特許第6,585,822号においては、含水カオリン粘土、苛性抽出焼成カオリン粘土およびゼオライト分子ふるいの混合物を含有する微孔性インクジェットコーティング顔料の層であらかじめコーティングされた紙に対し、光沢コーティングとして微粒状カオリン粘土を使用することが開示されている。光沢顔料コーティングのためには、紙があらかじめ高度に吸収性のコーティング層でコーティングされていることが必要である。
【0022】
上述の顔料は極めて高価で、取り扱いが困難であり、または性能要件が満たされない可能性がある。従って、当該産業においては、光沢インクジェット印刷用途の性能要件を満たす、費用対効果の高い鉱物顔料に対する需要が存在する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明は、大きな表面積を有し、粒子の大部分が200ナノメートル未満の粒径を有する鉱物顔料を提供する。
【0024】
本発明はまた、これら鉱物顔料の製造のためのプロセスを提供し、該プロセスは、選鉱された未摩砕の鉱物組成物を得、高強度条件下で該鉱物組成物を湿式摩砕して鉱物顔料を製造する工程をこの順序で含み、それによって、出発原料と比較して該鉱物顔料の粒子の表面積が増加し、粒径が減少する。
【0025】
本願において、次の語は以下に示す定義を有する:
「ナノ粒子」−200ナノメートル未満の粒径を有する粒子
「高強度条件」−未摩砕の出発原料と比較して表面積が実質的に増加し、粒径が実質的に減少した粒子を生成する条件下で湿式摩砕すること;「強い」湿式摩砕とも呼ぶ。
【0026】
本発明のプロセスは、選鉱された未摩砕の鉱物組成物を、湿式摩砕に先立って高強度条件化で乾燥摩砕にかける工程を含むように変更することができる。該乾燥摩砕工程は摩砕の過程で粒子を凝集させる役割を果たし、それによって、改善されたインクジェット印刷性を提供し、かつ、より大きな表面積とより低い光散乱係数(開始原料である選鉱された未摩砕の鉱物組成物のそれらの特徴と比較して)を有する鉱物顔料を生成する。この態様において、湿式摩砕工程は、凝集した粒子を分離して200ナノメートル未満の粒径を有する粒子の大部分を生成する役割を果たす。
【0027】
本発明のプロセスはさらに、乾燥摩砕および湿式摩砕された粒子を酸処理にかける工程を含むように変更することができる。この態様において、酸処理は、湿式摩砕された粒子の表面積を、酸処理以前の湿式摩砕粒子のものよりも大きくする役割を果たす。この本発明のプロセスはさらに、乾燥摩砕後、ただし湿式摩砕の前に、酸処理を含むように変更することが出来る。この本発明のプロセスにおいて用いられる場合、酸処理工程(湿式摩砕の前または後のいずれかであってよい)は、乾燥摩砕後に行われる。前記酸処理に使用され得る酸の例として、硫酸、塩酸および硝酸が挙げられる。
【0028】
現在のインクジェットインクの多くは本来アニオン性であり、アニオン性インクジェットインク染料が表面上に固定または不動化するためにはカチオン性の被覆表面が必要である。しかし、従来の紙コーティングは本来アニオン性であり、アニオン性分散剤を用いて顔料を分散する必要がある。適したアニオン性分散剤の例としてポリアクリレート、シリケートおよびホスフェートが挙げられる。アニオン的に分散した本発明の湿式摩砕ナノ粒子カオリンスラリーがインクジェットコーティングに使用される際、カチオン性染料固着剤の前記アニオン性コーティングへの添加は、肥厚および粗粒形成によって該コーティングに「ショックを与える」。
【0029】
本発明はまた、カチオン性鉱物顔料スラリーの製造にも関する。カチオン性湿式摩砕ナノ粒子カオリンスラリーを製造するため、未摩砕でも乾燥摩砕済みでもよい出発カオリンを、湿式摩砕の前にカチオン性ポリマーで分散させる。適したカチオン性分散剤の例としては、ポリアミン類およびポリジアルキルジアリル−アンモニウムハライド、例えばジメチルジアリルアンモニウムクロリドが挙げられる。
【0030】
本発明の湿式摩砕プロセスは、所望の粒径または表面積、およびスラリー固形分が達成されるように注意深く制御されるべきである。スラリーは、湿式摩砕の際、粒径の減少および付随する表面積の増加が原因で増粘する傾向がある。この増粘は、湿式摩砕の時間に依存する適量の分散剤および希釈剤を添加することによって最小限に抑えることができる。湿式摩砕時間が長くなるほど、より多くの分散剤および希釈剤が必要であろう。あるいは、所定の量の過剰な分散剤を湿式摩砕の前に添加することができ、この場合、湿式摩砕の間は追加の分散剤は不要である。スラリーの稠度を、その後、制御された希釈によって調節し、最大限の湿式摩砕を達成することができる。
【0031】
従来の微粒状カオリン顔料コーティングは高度な紙光沢を提供するが、これらのコーティングは、高い色濃度および迅速なインク吸収のための十分な多孔性を提供せず、それがパドリング、インクスメアリングおよび全体として低品質な印字につながり得る。しかし、本願発明者らは、含水または焼成カオリン粘土のいずれにおいても、粒径の制御された減少のあと、高光沢が付与され、インク乾燥、イメージ形成(イメージ鮮明度とも呼ばれる)および色濃度が元の出発含水または焼成カオリン粘土よりも改善されることを見出した。
【0032】
通常、紙コーティング組成物は1または複数種の顔料、結合剤(接着剤)および添加剤を含む。これら成分の種類および量が、該組成物の光学的、機械的特性および液体吸収特性に影響することが知られている。結合剤は、コーティングを被覆基材(紙など)に接着させ、紙の取り扱いや印刷プロセスの最中のダスティングを防止するために不可欠なものである。適した結合剤の例としては天然材料(デンプンのよびタンパク質等)および合成材料(ラテックス等)が挙げられる。
【0033】
本発明の鉱物顔料は単独の顔料として用いられる場合には結合剤を必要とせず、他の大きな表面積を有する顔料と組み合わせて用いられる場合にも極めて少量の結合剤しか必要としない。本発明の顔料は基材に自己接着する能力を有するため、該顔料は、コーティングのコストが最小限に抑えられることに加え、興味深い特性が提供される点において独自性を有する。本発明の産物の自己接着特性は、ナノスケール領域のその粒径に由来するものであると信じられる。
【0034】
本発明の実施の方法を当業者に教示し、また本発明を実施するにあたって最良と考えられる形態を示すことを意図した特定の態様の例示である、以下の実施例により、本発明をさらに説明する。
【実施例1】
【0035】
Thiele Kaolin CompanyよりKaofine90の商標で市販される高明度微粒状No.1粘土を出発原料として使用した。この粘土のアニオン性スラリーを、70%の固形分で、ポリアクリル酸ナトリウムを分散剤として使用して調製した。該スラリーを、湿式摩砕の前に約50%の固形分にまで希釈した。Koafine90カオリン粘土のアニオン性スラリーを、実験室用高強度湿式摩砕機(Model QC100,Union Process Inc.,オハイオ州Akron)を使用し、循環式プロセスにより各種の処理時間で湿式摩砕した。QC100摩砕機を用いた湿式摩砕プロセスは、摩砕室に媒体を投入し、粘土スラリーを特定の時間(処理時間)循環させることを含む。粘土スラリーの循環が長くなるほど、処理時間が長くなる。0.15mmの排出スクリーンン(100%開放)を具備した摩砕室に260mlの0.4mmサイズのイットリウム安定化ジルコニア(YTZ)媒体を投入した。任意の媒体投入において、処理時間の増加または粘土投入量の減少のいずれかにより、湿式摩砕強度が増加する。5ポンドの乾燥材料に相当するKaofine90カオリン粘土のアニオン性スラリーを、60分間または120分間の処理時間で湿式摩砕した。湿式摩砕の前後の産物の特性を表Aに提供する。
【0036】
湿式摩砕が進むにつれ、粘土粒子は超微細粒子に崩壊し、スラリーが増粘した。一定時間後、さらなる湿式摩砕が困難になった。さらなる分散剤を必要に応じて添加し、スラリーの流動を促進した。スラリーの流動を促進するための第2の選択肢として、水を使用した。表Aに提供されたBET表面積およびSedigraph粒径分布データは、湿式摩砕プロセスに伴い、出発投入材料と比較して粒径が減少し、表面積が増加したことを示している。表面積は、処理時間の増加に伴い、粒径のさらなる減少によって、さらに増加した。
【実施例2】
【0037】
Thiele Kaolin CompanyよりKaoluxの商標で市販される高明度含水カオリン製品を出発原料として使用した。Kaoluxカオリン粘土のアニオン性スラリーを、65%の固形分で、ポリアクリル酸ナトリウムを分散剤として使用して調製した。該スラリーを、湿式摩砕の前に約50%の固形分にまで希釈した。実施例1の手順に従い、5ポンドの乾燥材料に相当するアニオン性スラリーを、60分間または120分間の処理時間で湿式摩砕した。未摩砕および湿式摩砕後のKaoluxカオリン粘土供給物の産物特性を表Aに提供する。
【0038】
表Aのデータは、表面積の増加および粒径の減少が湿式摩砕によるものであることを示す。表面積は、処理時間の増加に伴い、粒径のさらなる減少によって、さらに増加した。処理時間および粘土投入量が同一の場合、実施例1に記載されたKaofine90カオリン粘土供給物から得られた湿式摩砕産物はKaoluxカオリン粘土供給物の湿式摩砕産物よりもはるかに微細であった。
【0039】
【表A】

【実施例3】
【0040】
Kaojetの商標で市販される大表面積凝集カオリン製品を出発原料として使用した。Kaojetカオリン粘土のアニオン性スラリーを、59.5%の固形分で、ポリアクリル酸ナトリウムを分散剤として使用して調製した。該スラリーを、湿式摩砕の前に約50%の固形分にまで希釈した。実施例1の手順に従い、5ポンドの乾燥材料に相当するKaojetカオリン粘土のアニオン性スラリーを、60分間、120分間または180分間の処理時間で湿式摩砕した。もとの、および湿式摩砕後のKaojetカオリン粘土の産物特性を表Bに提供する。
【0041】
表Bのデータは、もとの出発原料と比較した際の表面積の増加および粒径の減少が湿式摩砕によるものであることを示す。表面積は、処理時間の増加に伴い、粒径のさらなる減少によって、さらに増加した。処理時間および粘土投入量が同一の場合、Kaojetカオリン粘土供給物は、前記Kaofine90カオリン粘土供給物の湿式摩砕から得られた産物よりもはるかに微細な粒径とはるかに大きな表面積とを有する結果となり、湿式摩砕プロセスがKaojetカオリン粘土供給物に対してより効果的であることが示された。
【実施例4】
【0042】
Kaoluxカオリン粘土製品を乾燥摩砕して生成した大表面積凝集カオリン産物を出発原料として使用した。乾燥摩砕したKaoluxカオリン粘土製品のアニオン性スラリーを、59%の固形分で、ポリアクリル酸ナトリウムを分散剤として使用して調製した。該スラリーを、湿式摩砕の前に約50%の固形分にまで希釈した。実施例1の手順に従い、5ポンドの乾燥材料に相当するもとの(乾燥摩砕した)Kaoluxカオリン粘土のアニオン性スラリーを、60分間または120分間の処理時間で湿式摩砕した。乾燥摩砕Kaoluxカオリン粘土供給物について、もとの(乾燥摩砕した)、および湿式摩砕後の材料の産物特性を表Bに提供する。
【0043】
表Bのデータは、もとの出発原料と比較した際の表面積の増加および粒径の減少が湿式摩砕によるものであることを示す。表面積は、処理時間の増加に伴い、粒径のさらなる減少によって、さらに増加した。類似の湿式摩砕条件下では、乾燥摩砕したKaoluxカオリン粘土供給物は、標準的なKaoluxカオリン粘土供給物(実施例2に記載)と比較してはるかに微細な粒径を有する結果となり、湿式摩砕プロセスは前記供給物が湿式摩砕の前に乾燥摩砕された場合により効果的であることが示された。
【0044】
【表B】

【実施例5】
【0045】
本実施例5においては、カチオン的に分散した粘土材料の湿式摩砕について記載する。
【0046】
Kaojetカオリン粘土のカチオン性スラリーを出発原料として使用した。カチオン性スラリーを、59%の固形分で、低分子量高電荷密度ポリ−ジアリルジメチルアンモニウムクロリドカチオン性ポリマー(ポリ−DADMAC)を分散剤として使用して調製した。Nalco Chemical CompanyからNalkat2020の商標で市販されるポリ−DADMACを使用した。該スラリーを、湿式摩砕の前に約50%の固形分にまで希釈した。カチオン性ポリマーを湿式摩砕中に使用して流動特性を維持した以外は実施例1と同様の手順に従い、前記のカチオン的に分散したKaojetカオリン粘土を湿式摩砕した。5ポンドの乾燥材料に相当するKaojetカオリン粘土のカチオン性スラリーを75分間の処理時間で湿式摩砕した。2.5ポンドの乾燥材料に相当する該スラリーも75分間の処理時間で湿式摩砕した。湿式摩砕が進むにつれ、粘土粒子は超微細粒子に崩壊し、スラリーが増粘した。一定時間後、さらなる湿式摩砕が困難になった。さらなるカチオン性ポリマーを必要に応じて分散剤として添加し、スラリーの流動を促進した。スラリーの流動を促進するための第2の選択肢として、水を使用した。
【0047】
実施例1〜4に記載したアニオン性分散物と比較して、カチオン性分散材料は湿式摩砕が困難であった。カチオン性分散剤の追加を行った際、スラリーは瞬間的な顔料ショック(pigment shock)を受け、湿式摩砕プロセスの最中に多少の希釈水がすぐに必要となった。湿式摩砕の前後の産物特性を、表Cに提供する。
【0048】
表Cのデータは、表面積の増加および粒径の減少が湿式摩砕によるものであることを示す。粒径データは、%<0.2ミクロンが、12.9%(もとの材料)から95.0%にまで、湿式摩砕の強度に依存して増加したことを示す。
【実施例6】
【0049】
実施例5の手順に従い、5ポンドの乾燥材料に相当するカチオン性Kaojetカオリン粘土スラリーを、異なる処理時間(10、20、30、40、50または60分間)で湿式摩砕した。ただし、湿式摩砕に必要な分散剤の全量を、このプロセスの開始時に添加した。言い換えると、湿式摩砕プロセスに先立ち、供給材料を過剰量のカチオン性分散剤と混合した(過剰分散(over dispersion))。湿式摩砕の前後の産物特性を、表Dに提供する。
【0050】
表Dのデータは、もとの出発原料と比較した際の表面積の増加および粒径の減少が湿式摩砕によるものであることを示す。表Dの粒径データは、%<0.2ミクロンが7.7(もとの材料)から、10分間の湿式摩砕後に59.9にまで、20分間の湿式摩砕後に71.2にまで、30分間の湿式摩砕後に78.4にまで、および40〜60分間の湿式摩砕後に87.4〜88.5にまで、増加したことを示す。40〜60分間の処理時間で生産された産物の粒径データは、実施例5に記載の75分間の産物と類似していた。カチオン性スラリーの湿式摩砕プロセスの容易さは、実施例5で湿式摩砕プロセス中に過剰量の添加を行った場合と比べ、過剰量のカチオン性分散剤を供給物に添加すること(過剰分散(over dispersion))により改善した。
【0051】
本実施例6は、供給物の過剰分散が産物の高固形分を維持し、処理時間を減少させ、処理量(1時間あたりに生成される材料の量)を増大させるのに役立つことを示す。また本実施例6は、最終的な産物の品質を、処理時間、産物中の固形分および分散剤の添加のタイミングによって注意深く制御することができることを示す。
【0052】
【表C】

【0053】
【表D】

【実施例7】
【0054】
Kaofine90カオリン粘土のカチオン性スラリーを出発原料として使用した。カチオン性Kaofine90カオリン粘土スラリーを1.5%(乾燥/乾燥粘土ベース)のNalkat2020ポリマーを用いて調製した。実施例5の手順に従い、5ポンドの乾燥材料に相当するカチオン性Kaofine90カオリン粘土スラリーを60分間の処理時間で湿式摩砕した。湿式摩砕が進むにつれ、粘土粒子は超微細粒子に崩壊し、スラリーが増粘した。さらに2.5%の分散剤(Nalkat2020)を添加し、スラリーの流動を促進した。スラリーの流動を促進するための第2の選択肢として、水を使用した。湿式摩砕の前後の産物特性を、表Eに提供する。
【0055】
表Eのデータは、湿式摩砕により表面積が増加し、粒径が減少したことを示す。粒径データは、%<0.2ミクロンが8.2(もとの材料)から湿式摩砕後に85.4にまで増加したことを示す。
【実施例8】
【0056】
Thiele Kaolin CompanyよりKaocalの商標名で販売されている焼成カオリンを出発原料として用いた。Kaocalカオリン粘土のカチオン性スラリーを1.0%(乾燥/乾燥粘土ベース)のNalkat2020ポリマーを用いて調製した。実施例5の手順に従い、5ポンドの乾燥材料に相当するカチオン性Kaocalカオリン粘土スラリーを60分間の処理時間で湿式摩砕した。湿式摩砕が進むにつれ、嵩密度が低く孔容積が大きい、焼成粘土のもとの凝集物が崩壊し、微細粒子になった。Kaocalカオリン粘土の湿式摩砕においては、水や、顔料の分散の最中に添加されるもの以外の追加の分散剤は不要である。湿式摩砕産物はもとの材料と比較して流動特性が改善されていた。湿式摩砕前後の産物特性を表Eに提供する。
【0057】
表Eのデータは、もとの出発原料と比較した際の表面積の増加および粒径の減少が湿式摩砕によるものであることを示す。粒径データは、%<0.2ミクロンが、8.7(もとの材料)から、湿式摩砕後に47.7にまで増加したことを示す。
【0058】
【表E】

【実施例9】
【0059】
アニオン性Kaofine90カオリン粘土を60および120分間湿式摩砕した試料(すなわち、実施例1に記載の産物)の、インクジェットコーティングおよび印刷性を評価した。コーティング塗料、コーティングされたシートの特性およびインクジェット印刷性のデータを表Fに提供する。
【0060】
コーティング塗料は、約45%の固形分、7.0のpH値で、100部あたり3部のエチレン酢酸ビニル共重合体ラテックスバインダーを顔料スラリーに添加することにより調製した。もとの未摩砕の産物のコーティング塗料は、49.5%の固形分、7.0のpH値で、100部あたり5部のエチレン酢酸ビニル結合剤を顔料スラリーに添加することにより調製した。カチオン性コーティングは、インクジェット用途において、インクジェット着色剤を、コーティングされたシートの表面に固定し、耐水性を高めるために必要である。該コーティングは、カチオン的に分散した顔料を用いることにより、またはポリ−DADMAC等のカチオン性染料固着剤を、アニオン的に分散した顔料から調製したコーティングに添加することにより、カチオン性にすることができる。しかし、本発明の湿式摩砕超微細アニオン性スラリー産物は、カチオン性染料固着剤(ポリ−DADMAC等)に適合せず、コーティング色の深刻なフロキュレーションを生じ得る。
【0061】
コーティング塗料を、目付重量〜72g/mの基材の片面に、実験室用ドローダウン機(drawdown machine)を用いて、約10〜11g/mの被覆重量で塗布した。標準TAPPI条件に従い、コーティングされたシートをヒートガンにより乾燥し、一定の温度と湿度の部屋で24時間調整した後で評価を行った。次いで、このコーティングされたシートを、実験室用カレンダーを用いてソフトニップカレンダー処理(1パス/面、圧力163PLI、温度300゜F)にかけた。調整後のコーティングされたシートについて、シート光沢(75度光沢)および粗さ(Parker Print−Surf粗さ)を、カレンダー処理の前および後の両方で測定した。カレンダー処理したシートに、社内の印刷対象を、Canon BJC8200およびHP990cxiプリンターを用いて印刷した。インク乾燥時間(インクの吸収にかかる時間)および像の鮮明さ(外観上のウィッキングおよびにじみ)について、目視により印刷物の観察を行った。印刷色(シアン、マゼンタ、イエローおよびブラック)濃度を、X−Rite418 色反射デンシトメーターを用いて測定した。
【0062】
表Fのコーティングされたシートのデータは、インクジェット色(シアン、マゼンタ、イエローおよびブラック)濃度および乾燥時間が、もとの未摩砕の材料と比較して、湿式摩砕されたKaofine90カオリン粘土において、シートの光沢を実質的に損なうことなく改善されていることを示している。色濃度がより高いことは、粒径がより細かく表面積が大きいことが、インクジェットインク中に存在する着色剤のより良い保持(hold−out)に役立つことを示している。もとのKaofine90カオリン粘土では、許容範囲外の像の品質となった;カラー印刷中のインクが集塊化し、貧弱なイメージが形成された。Kaofine90カオリン粘土を湿式摩砕した産物をその後カレンダー処理したシートの光沢は、もとの材料が65.0であったのに比べ、60〜63.0の範囲であった。湿式摩砕産物のシート光沢は低くなりがちであり、これは、もとの材料と比べ、顔料粒子の平坦さの程度が低いことによるものである。
【0063】
実施例9は、本発明のプロセスが、コーティングされたシートの高い光沢およびインクジェット色濃度を得るのに適した産物を生成するために使用できることを示している。本実施例9はまた、本発明の産物が、もとの未摩砕の材料よりも少ない結合剤しか必要としないであろうことを示している。
【0064】
【表F】

【実施例10】
【0065】
実施例9の手順に従い、60および120分間の処理時間で製造されたKaojetカオリン粘土の湿式摩砕試料(実施例3に記載の産物)を、インクジェットコーティングおよび印刷性について評価した。コーティング塗料、コーティングされたシートの特性およびインクジェット印刷性のデータを表Gに提供する。
【0066】
コーティング塗料は、約45%の固形分、7.0のpH値で、100部あたり3部のエチレン酢酸ビニル共重合体ラテックスバインダーを顔料スラリーに添加することにより調製した。もとの材料のコーティング塗料は、50.2%の固形分、7.0のpH値で、100部あたり5部のエチレン酢酸ビニル結合剤および100部あたり4部のポリ−DADMACを顔料スラリーに添加することにより調製した。コーティング塗料を、目付重量〜72g/mの基材の片面に、実験室用ドローダウン機(drawdown machine)を用いて、約10〜11g/mの被覆重量で塗布した。
【0067】
表Gのコーティングされたシートのデータは、粗さ、シート光沢、インクジェット色(シアン、マゼンタ、イエローおよびブラック)濃度および乾燥時間が、湿式摩砕したKaojetカオリン粘土において、もとの材料と比較して改善されていることを示している。色濃度がより高いことは、粒径がより細かく表面積が大きいことが、インクジェットインク中に存在する着色剤のより良い保持(hold−out)に役立つことを示している。これらの湿式摩砕試料の色濃度は、Kaofine90カオリン粘土の湿式摩砕試料(実施例9に記載)で得られた色濃度よりも高かった。シート光沢は、6〜8(処理前)から、湿式摩砕されたKaojetカオリン粘土において61にまで上昇した。湿式摩砕試料のシート光沢は、もとの供給物の、はるかに荒く凝集した粒子と比較して、粒径が減少していることによって改善される。120分間の産物のシート光沢は60分間の産物よりもやや貧弱であり、これは、はるかに微細な120分間の産物でコーティング膜にひび割れが生じたことによる。コーティング膜のひび割れは高光沢インクジェットコーティングに用いられるアルミナ水和物等のナノスケール顔料粒子においては一般的な現象である。
【0068】
【表G】

【実施例11】
【0069】
カチオン性Kaojetカオリン粘土の湿式摩砕試料を75分間の処理時間で実施例5に記載のように製造し、実施例9の手順に従ってインクジェットコーティングおよび印刷性を評価した。コーティング塗料、コーティングされたシートの特性およびインクジェット印刷性のデータを表Hに提供する。コーティング塗料は、100部あたり3部のエチレン酢酸ビニル共重合体ラテックスバインダーを顔料スラリーに添加することにより調製した。もとの材料のコーティング塗料は、50.2%の固形分、5.0のpH値で、100部あたり5部のエチレン酢酸ビニル結合剤および100部あたり4部のポリ−DADMAC(分散剤の量を含む総量)を顔料スラリーに添加することにより調製した。カチオン性湿式摩砕産物のコーティング塗料は、さらなるポリ−DADMACを用いずに調製した。コーティング塗料を、目付重量〜72g/mの基材に、実験室用ドローダウン機(drawdown machine)を用いて、約10〜11g/mの被覆重量で塗布した。
【0070】
表Hのコーティングされたシートのデータは、湿式摩砕したKaojetカオリン粘土では、もとの材料と比較して、粗さが減少し、シート光沢が増加していることを示している。シート光沢は、もとのKaojetカオリン粘土で6〜8であったものが、湿式摩砕試料で56にまで増加した。湿式摩砕試料のシート光沢は、もとのKaojetカオリン粘土供給物のはるかに荒く凝集した粒子と比較して、粒径が減少していることによって改善された。湿式摩砕産物は、もとのKaojetカオリン粘土供給物と比較して、色(シアン、マゼンタ、イエローおよびブラック)濃度および乾燥時間が改善された。色濃度がより高いことは、粒径がより細かく表面積が大きいことが、インクジェットインク中に存在する着色剤のより良い保持(hold−out)に役立つことを示している。湿式摩砕において添加されたカチオン性ポリマーは染料固着剤として作用し、改善された像の鮮明さを提供する。
【0071】
本実施例11は、カチオン性Kaojetカオリン粘土の湿式摩砕試料が、もとの材料よりも少ない量の結合剤でコーティングできることを示している。さらに本実施例11は、本発明のプロセスを、本来カチオン性であって高光沢インクジェット用途に適した製品を製造するのに用いることができることを示している。
【実施例12】
【0072】
実施例11の手順に従い、異なる処理時間(10、30、40および50分間)で製造されたカチオン性Kaojetカオリン粘土の湿式摩砕試料(実施例6に記載の産物)を、インクジェットコーティングおよび印刷性について評価した。コーティング塗料、コーティングされたシートの特性およびインクジェット印刷性のデータを表Iに提供する。コーティング塗料は、顔料固形分に応じて37.4〜46.2%の固形分で、100部あたり3〜5部のエチレン酢酸ビニル結合剤を顔料スラリーに添加することにより調製した。もとの材料のコーティング塗料は、50.2%の固形分、5.0のpH値で、100部あたり5部のエチレン酢酸結合剤および100部あたり4部のポリ−DADMACを顔料スラリーに添加することにより調製した。コーティング塗料を、目付重量〜72g/mの基材に、実験室用ドローダウン機(drawdown machine)を用いて、約10〜11g/mの被覆重量で塗布した。
【0073】
表Iに提供されるコーティングされたシートのデータは、湿式摩砕したKaojetカオリン粘土では、もとのKaojetカオリン粘土供給物と比較して、粗さが減少し、シート光沢が増加していることを示している。シート光沢は、もとのKaojetカオリン粘土供給物で6〜8であったものが、湿式摩砕Kaojetカオリン粘土においては湿式摩砕処理時間に応じて57.5〜60にまで増加した。湿式摩砕試料のシート光沢は、もとのKaojetカオリン粘土供給物のはるかに荒く凝集した粒子と比較して、粒径が減少していることによって改善された。湿式摩砕産物は色(シアン、マゼンタ、イエローおよびブラック)濃度および乾燥時間において、もとのKaojetカオリン粘土供給物と比較して改善されていた。色濃度は、湿式摩砕した試料では30〜50分間の処理時間でおよそ同一であった。一方、10分間の処理時間で製造された湿式摩砕試料の色濃度はより低かったが、もとのKaojetカオリン粘土供給物よりも改善していた。また、30〜50分間の処理時間で製造された湿式摩砕産物の色濃度は、実施例11に議論される75分間の産物とほぼ同じであった。湿式摩砕において添加されたカチオン性ポリマーは染料固着剤として作用し、改善された像の鮮明さを提供した。
【0074】
本実施例12は、処理時間を減少させることによって湿式摩砕ユニットからの処理量を増加させることができ、また、本来カチオン性であって高光沢インクジェット用途に適した産物を製造することができることを示す。
【0075】
【表H】

【0076】
【表I】

【実施例13】
【0077】
実施例7で製造したカチオン性Kaofine90カオリン粘土の湿式摩砕試料を、実施例11に記載の手順に従ってインクジェットコーティングおよび印刷性について評価した。未摩砕および湿式摩砕試料に対する、コーティング塗料、コーティングされたシートの特性および印刷性のデータを表Jに提供する。コーティング塗料は、100部あたり5部のエチレン酢酸ビニル結合剤を、湿式摩砕した顔料スラリーに添加することにより調製した。もとの未摩砕Kaofine90カオリン粘土供給物のコーティング塗料は、100部あたり5部のエチレン酢酸ビニル結合剤および100部あたり4部のポリ−DADMACの添加により調製した。このコーティングを、目付重量〜72g/mの基材の片面に、実験室用ドローダウン機(drawdown machine)を用いて、約10〜11g/mの被覆重量で塗布した。
【0078】
表Jに提供されるコーティングされたシートのデータは、Kaofine90カオリン粘土の湿式摩砕産物において、もとの未摩砕の材料と比較して、色(シアン、マゼンタ、イエローおよびブラック)濃度および乾燥時間が、カレンダー処理シートの光沢および表面粗さを実質的に損なうことなく改善されたことを示している。扁平な粒子を有するもとの材料のシート光沢が66であったのに対し、湿式摩砕した産物のより丸みのある粒子は60というシート光沢となった。もとのKaofine90カオリン粘土材料は高いブラックインク色濃度をもたらしたが、色(シアン、マゼンタおよびイエロー)濃度は貧弱であり、許容範囲外の像の品質となった。カラー印刷においてインクが集塊化し、貧弱な像が形成された。
【0079】
本実施例13は、Kaofine90カオリン粘土を用いて、本来カチオン性であり高光沢インクジェット用途に適した湿式摩砕産物を製造できることを示す。
【実施例14】
【0080】
実施例8で製造した湿式摩砕カチオン性Kaocalカオリン粘土産物を、実施例11に記載のものと同様の手順に従って、インクジェットコーティングおよび印刷性について評価した。ただし、もとの供給原料に対しては、はるかに強い結合剤が必要であった。もとの未摩砕の、および湿式摩砕された試料の、コーティング塗料、コーティングされたシートの特性および印刷性のデータを表Jに示す。湿式摩砕産物のコーティング塗料は、51.2%の固形分で、100部あたり5部のエチレン酢酸ビニル結合剤を顔料スラリーに添加することにより調製した。もとのKaocalカオリン粘土供給物のコーティング塗料は、35%の固形分で、100部あたり7.5部の高分子量ポリビニルアルコール結合剤および4部のポリ−DADMACを顔料スラリーに添加することにより調製した。もとのKaocalカオリン粘土のコーティング固形分は、ポリビニルアルコール結合剤のはるかに低い固形分により、低くなった。このコーティングを、目付重量〜72g/mの基材の片面に、実験室用ドローダウン機(drawdown machine)を用いて、約10〜11g/mの被覆重量で塗布した。もとのKaocalカオリン粘土に必要とされる結合剤は、湿式摩砕したKaojetカオリン粘土と比較して非常に多く、深刻なダスティングを引き起こす。そのため、より強いポリビニルアルコール結合剤が使用された。
【0081】
カチオン性Kaocalカオリン粘土スラリーの湿式摩砕産物は、コーティングされたシートの粗さ、シート光沢、インクジェット色(シアン、マゼンタ、イエローおよびブラック)濃度および像形成において、もとの未摩砕の材料と比較して有意な改善を示した(表J)。インク乾燥時間は許容範囲内であったが、未摩砕材料は色濃度および像形成において極めて貧弱なインクジェット印刷性を示した。湿式摩砕プロセスは、もとの焼成粘土の低嵩密度、大孔容積及び高光散乱性の凝集物を破壊する。得られた微細粒子は、実質的に乾燥時間(インクを乾燥するための時間)を変化させることなく、コーティングされたシートの光沢、ならびに色濃度および像形成ついてインクジェット印刷性を改善した。
【0082】
本実施例14は、焼成粘土も、本来カチオン性であって高光沢インクジェット用途に適した湿式摩砕産物を製造することに用いることができることを示している。
【0083】
【表J】

【実施例15】
【0084】
本実施例15は、湿式摩砕カオリンの自己結合(バインダーレス)特性を証明するものである。実施例11の手順に従い、カチオン性Kaojetカオリン粘土の湿式摩砕産物(75分間で製造、実施例5の産物10)を、結合剤を用いない場合のインクジェットコーティングおよび印刷性について評価した。比較のため、コーティング塗料も、100部あたり3部のエチレン酢酸ビニル結合剤の添加により調製した。コーティングされたシートは、顔料スラリーを目付重量〜72g/mの基材の片面に、実験室用ドローダウン機(drawdown machine)を用いて、約10〜11g/mの被覆重量で直接塗布することにより調製した。この結合剤を用いないコーティングされたシートを、インクジェット印刷性について、実施例11の手順に従い評価した。コーティング塗料、コーティングされたシートの特性およびインクジェット印刷性のデータを表Kに提供する。
【0085】
結合剤無しの湿式摩砕したKaojetカオリン粘土顔料コーティングは、原紙に強く付着した。コーティングされたシートの強度を乾燥指摩擦(dry finger rub)およびテープ引張り試験(tape pull test)法により評価した。この結合剤無しでコーティングされたシートでは、有意なダスティングは発生せず、強度は、高カレンダー圧に耐え、大きな問題なくインクジェットプリンターを通すのに十分であった。また、前記バインダーレスコーティングは、3部の結合剤を使用して調製したシートと比較して、改善されたインク吸収(Canonプリンター)、ならびに、同様なシート光沢および光学密度をもたらした。
【0086】
【表K】

【0087】
本発明を特定の態様を参照して詳細に説明したが、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することのない変形や修飾を行なうことは可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
未摩砕の鉱物組成物を処理することによる、鉱物顔料の製造のための方法であって、
A.選鉱した、未摩砕の鉱物組成物を得ること;および
B.前記鉱物組成物を高強度条件下で湿式摩砕し、鉱物顔料を生成し、
これにより、前記未摩砕の鉱物組成物と比較して前記鉱物顔料の粒子の表面積を実質的に増加させ、かつ粒径を実質的に減少させること;
の工程をこの順序で含む方法。
【請求項2】
前記の選鉱した未摩砕の鉱物組成物が、含水カオリン粘土、焼成カオリン粘土、天然炭酸カルシウム、沈降炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム、水酸化鉄、酸化鉄、ベントナイト、ゼオライト、二酸化チタン、タルク、およびそれらの混合物より選択される、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記の選鉱した未摩砕の鉱物組成物が含水カオリン粘土である、請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記の選鉱した未摩砕の鉱物組成物が焼成カオリン粘土である、請求項1記載の方法。
【請求項5】
未摩砕の鉱物組成物を処理することによる、鉱物顔料の製造のための方法であって、
A.選鉱した、未摩砕の鉱物組成物を得ること;
B.前記鉱物組成物を、前記鉱物組成物の粒子が凝集するのに十分な高強度条件下で乾燥摩砕し、
これにより、凝集した粒子の表面積を、前記未摩砕の鉱物組成物の粒子の表面積よりも増加させること;および
C.前記の凝集した乾燥摩砕鉱物組成物を高強度条件下で湿式摩砕して鉱物顔料を生成し、
これにより、湿式摩砕前の前記乾燥摩砕鉱物組成物と比較して前記鉱物顔料の粒子の表面積を実質的に増加させ、かつ粒径を実質的に減少させること;
の工程をこの順序で含む方法。
【請求項6】
前記の選鉱した未摩砕の鉱物組成物が、含水カオリン粘土、焼成カオリン粘土、天然炭酸カルシウム、沈降炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム、水酸化鉄、酸化鉄、ベントナイト、ゼオライト、二酸化チタン、タルク、およびそれらの混合物より選択される、請求項5記載の方法。
【請求項7】
前記の選鉱した未摩砕の鉱物組成物が含水カオリン粘土である、請求項5記載の方法。
【請求項8】
前記の選鉱した未摩砕の鉱物組成物が焼成カオリン粘土である、請求項5記載の方法。
【請求項9】
前記の選鉱した未摩砕の鉱物組成物が天然炭酸カルシウムである、請求項5記載の方法。
【請求項10】
未摩砕の鉱物組成物を処理することによる、鉱物顔料の製造のための方法であって、
A.選鉱した、未摩砕の鉱物組成物を得ること;
B.前記鉱物組成物を、前記鉱物組成物の粒子が凝集するのに十分な高強度条件下で乾燥摩砕し、
これにより、凝集した粒子の表面積を、前記未摩砕の鉱物組成物の粒子の表面積よりも増加させること;
C.前記の摩砕鉱物組成物に酸処理を行い、
これにより、酸処理前の前記摩砕鉱物組成物の凝集粒子の表面積と比較して前記の酸処理した摩砕鉱物組成物の凝集粒子の表面積を増加させ;および
D.前記酸処理鉱物組成物を高強度条件で湿式摩砕して鉱物顔料を生成し、
これにより、湿式摩砕前の前記酸処理鉱物組成物と比較して前記の湿式摩砕した鉱物顔料の粒子の表面積を実質的に増加させ、かつ粒径を実質的に減少させること;
の工程をこの順序で含む方法。
【請求項11】
前記の選鉱した未摩砕の鉱物組成物が、含水カオリン粘土、焼成カオリン粘土、ベントナイト、ゼオライト、タルク、およびそれらの混合物より選択される、請求項10記載の方法。
【請求項12】
未摩砕の鉱物組成物を処理することによる、鉱物顔料の製造のための方法であって、
A.選鉱した、未摩砕の鉱物組成物を得ること;
B.前記鉱物組成物を、摩砕した鉱物組成物の粒子が凝集するのに十分な高強度条件下で乾燥摩砕し、
これにより、凝集した粒子の表面積を、前記未摩砕の鉱物組成物の粒子の表面積よりも増加させること;
C.前記の乾燥摩砕鉱物組成物の凝集粒子を高強度条件下で湿式摩砕して鉱物顔料を生成し、
これにより、湿式摩砕前の前記乾燥摩砕鉱物組成物と比較して前記の湿式摩砕した乾燥摩砕鉱物組成物の粒子の表面積を実質的に増加させ、かつ粒径を実質的に減少させること;および
D.前記の湿式摩砕した乾燥摩砕鉱物組成物に酸処理を行って鉱物顔料を生成し、
これにより、酸処理前の前記の湿式摩砕した乾燥摩砕鉱物組成物の粒子の表面積と比較して前記の湿式摩砕した酸処理鉱物顔料の粒子の表面積を実質的に増加させること;
の工程をこの順序で含む方法。
【請求項13】
前記の未摩砕の鉱物組成物が、含水カオリン粘土、焼成カオリン粘土、ベントナイト、タルク、ゼオライト、またはそれらの混合物である、請求項12記載の方法。
【請求項14】
増加した表面積を有するナノ粒子鉱物顔料であって、前記顔料が、
A.選鉱した、未摩砕の鉱物組成物を得ること;および
B.前記鉱物組成物を高強度条件下で湿式摩砕して鉱物顔料を生成し、
これにより、前記未摩砕の鉱物組成物と比較して前記の湿式摩砕した鉱物顔料の粒子の表面積を実質的に増加させ、かつ粒径を実質的に減少させること;
の工程をこの順序で含むプロセスにより製造される、ナノ粒子鉱物顔料。
【請求項15】
湿式摩砕に先立って、前記鉱物組成物を、摩砕した鉱物組成物の粒子が凝集するのに十分な高強度条件下で乾燥摩砕にかける、請求項14記載のナノ粒子鉱物顔料。
【請求項16】
乾燥摩砕の後、しかし湿式摩砕の前に、前記鉱物組成物に酸処理を行う、請求項15記載のナノ粒子鉱物顔料。
【請求項17】
乾燥摩砕および湿式摩砕した鉱物組成物に酸処理を行う、請求項15記載のナノ粒子鉱物顔料。
【請求項18】
コーティングおよび充填用鉱物顔料であって、
A.選鉱した、未摩砕の鉱物組成物を得ること;および、
B.前記鉱物組成物を高強度条件下で湿式摩砕してコーティングおよび充填用鉱物顔料を生成し、
これにより、前記未摩砕の鉱物組成物と比較して前記の鉱物顔料の粒子の表面積を実質的に増加させ、かつ粒径を実質的に減少させること;
の工程をこの順序で含む方法により製造される、コーティングおよび充填用鉱物顔料。
【請求項19】
湿式摩砕に先立って、前記鉱物組成物を、摩砕した鉱物組成物の粒子が凝集するのに十分な高強度条件下で乾燥摩砕にかける、請求項18記載のコーティングおよび充填用鉱物顔料。
【請求項20】
乾燥摩砕の後、しかし湿式摩砕の前に、前記鉱物組成物に酸処理を行う、請求項19記載のコーティングおよび充填用鉱物顔料。
【請求項21】
乾燥摩砕および湿式摩砕した鉱物組成物に酸処理を行う、請求項18記載のコーティングおよび充填用鉱物顔料。
【請求項22】
請求項14記載のナノ粒子鉱物顔料を含有する組成物でコーティングされた紙産物。
【請求項23】
請求項15記載のナノ粒子鉱物顔料を含有する組成物でコーティングされた紙産物。
【請求項24】
請求項16記載のナノ粒子鉱物顔料を含有する組成物でコーティングされた紙産物。
【請求項25】
請求項17記載のナノ粒子鉱物顔料を含有する組成物でコーティングされた紙産物。
【請求項26】
請求項18記載のナノ粒子鉱物顔料を含有する組成物でコーティングされた紙産物。
【請求項27】
請求項19記載のナノ粒子鉱物顔料を含有する組成物でコーティングされた紙産物。
【請求項28】
請求項20記載のナノ粒子鉱物顔料を含有する紙産物。
【請求項29】
請求項21記載のナノ粒子鉱物顔料を含有する紙産物。

【公表番号】特表2012−518714(P2012−518714A)
【公表日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−552023(P2011−552023)
【出願日】平成22年2月11日(2010.2.11)
【国際出願番号】PCT/US2010/000443
【国際公開番号】WO2010/098821
【国際公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【出願人】(504297489)シーレ カオリン カンパニー (2)
【Fターム(参考)】