ナノ複合体
本発明は、銀塩を含む表面を有するナノ粒子と、該表面上にある金属金の少なくとも1つの領域とを含む、ナノ複合粒子を記載する。本発明はまた、前記粒子を含むナノ複合材料を提供する。本発明はまた、銀塩をその表面上に有するナノ粒子における金が銀塩を通じて少なくとも部分的に拡散することを可能にして、該表面上に金属金の少なくとも1つの領域を形成するか、または銀塩をその表面上に有するナノ粒子の該表面上に金属金を堆積させるかのいずれかにより、前記ナノ複合材料を作製するための方法を提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナノ複合体およびそれらを作製する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
多機能性ナノ複合系の合成は大きな関心の対象である。特に、貴金属と半導体とからなるヘテロダイマーは種々の用途に非常に有用であると考えられる。半導体CdSeロッドの先端上でのAuチップの成長が最近報告された。CdSeドットおよびロッド上で金チップを成長させる方法も存在する。これらの構造について、成長機構はオストワルド熟成により説明された。有機媒体または水性媒体中の球状硫化鉛量子ドット(QD)上に金を不均一に堆積させることで生物学的用途に好適な材料を生成するアプローチも開発された。これらの戦略にもかかわらず、硫化金銀系などの特定の系において困難に直面した。
【発明の概要】
【0003】
発明の目的
上記の困難のうちの1つまたは複数を実質的に克服するかまたは少なくとも改善することが本発明の目的である。
【0004】
発明の概要
本発明の第1の局面では、
・銀塩を含む表面を有するナノ粒子と、
・該表面上にある金属金の少なくとも1つの領域と
を含むナノ複合粒子が提供される。
【0005】
以下の選択肢を個々にまたは任意の好適な組み合わせで第1の局面とあわせて使用することができる。
【0006】
ナノ粒子は本質的に銀塩からなり得る。ナノ粒子はコア-シェル構造を有し得る(すなわち、コアと該コアを取り囲むシェルとを含み得る)ものであり、シェル(または1つより多いシェルを有するナノ粒子の場合は最外側のシェル)は本質的に銀塩からなる。
【0007】
銀塩は、その表面上での金属金の堆積を触媒することが可能であり得る。それは、金属金を生成するように、金塩(例えばAu(III)塩)の還元を触媒することが可能であり得る。それは銀カルコゲニドであり得る。カルコゲニドは硫化物、セレン化物またはテルル化物であり得る。銀塩は硫化銀であり得る。それはセレン化銀であり得る。それはテルル化銀であり得る。それはこれらのうち任意の2つ以上の混合物であり得る。
【0008】
ナノ粒子は実質的に球状であり得る。ナノ複合粒子は実質的に球状であり得る。
【0009】
金属金の領域はほぼ円形であり得る。金属金の領域は、または金属金の各領域は独立して、約1〜約8nmの直径を有し得る。
【0010】
一態様では、
・硫化銀を含む表面を有する実質的に球状のナノ粒子と、
・該表面上にある金属金のほぼ円形の領域と
を含むナノ複合粒子が提供される。
【0011】
別の態様では、
・コア-シェル構造を有する実質的に球状のナノ粒子であって、シェルが本質的に硫化銀からなるナノ粒子と、
・該シェル上の金属金のほぼ円形の領域と
を含むナノ複合粒子が提供される。
【0012】
本発明の第2の局面では、複数のナノ複合粒子を含むナノ複合材料が提供され、該複数のナノ複合粒子の各々は、第1の局面に記載のものである。
【0013】
ナノ複合材料は本質的に前記ナノ複合粒子からなり得る。ナノ複合粒子は約5〜約25nmの平均直径を有し得る。それらは実質的に単分散であり得る。それらは狭い粒径分布を有し得る。
【0014】
本発明の第3の局面では、
・金属金を含む表面を各々有する複数の前駆体ナノ粒子を提供する工程;
・金の上に銀塩の層を形成し、それによりコーティングナノ粒子を形成する工程; および
・各コーティングナノ粒子の金が銀塩の層を通じて該コーティングナノ粒子の表面に少なくとも部分的に拡散することを可能にし、該表面上に金属金の少なくとも1つの領域を形成するように、コーティングナノ粒子をエージングする工程
を含む、ナノ複合材料を作製するための方法が提供される。
【0015】
以下の選択肢を個々にまたは任意の好適な組み合わせで第3の局面とあわせて使用することができる。
【0016】
前駆体ナノ粒子は本質的に金属金からなり得る。前駆体ナノ粒子を提供する工程は、ナノ粒子を形成するように、Au(III)塩を還元剤に曝露する工程を含み得る。還元剤はホウ水素化物(borohydride)または何らかの他の還元剤であり得る。本方法はまた、金の上に銀塩の層を形成する工程の前に、金前駆体ナノ粒子を有機溶媒中へと移動させる工程を含んでいてもよい。
【0017】
前駆体ナノ粒子は、その表面上に金を有するコアを各々含み得る。コアは、金ではない材料を含み得る。前駆体ナノ粒子を提供する工程は、コアの表面上に金属金を堆積させるように、Au(III)およびアミンの存在下でコアを加熱することを含み得る。コアは、金属白金を、任意には微量の銀と合わせて含み得るか、または本質的にそれらからなり得る。本方法は、コアを生成するように、アミンおよび微量の銀の存在下でPt(acac)2を加熱する工程を含み得る。
【0018】
銀塩は硫化銀であり得る。硫化銀の層を形成する工程は、前駆体ナノ粒子をAg(I)および元素硫黄に曝露することを含み得る。曝露工程はアルキルアミンの存在下であり得る。それは有機溶媒中で行うことができる。
【0019】
エージング工程は、各コーティングナノ粒子の金が銀塩の層を通じて該コーティングナノ粒子の表面に拡散するのに十分な時間、コーティングナノ粒子を溶媒、例えば有機溶媒中に維持することを含み得る。
【0020】
前駆体ナノ粒子は約3〜約25nmの平均直径を有し得る。それらは実質的に単分散であり得る。それらは狭い粒径分布を有し得る。
【0021】
一態様では、
・複数の金前駆体ナノ粒子を形成するように、Au(III)塩を還元剤で還元する工程;
・金前駆体ナノ粒子を有機溶媒中に移動させる工程;
・金の上に硫化銀の層を形成し、それによりコーティングナノ粒子を形成する工程; および
・各コーティングナノ粒子の金が硫化銀の層を通じて該コーティングナノ粒子の表面に少なくとも部分的に拡散することを可能にし、該表面上に金属金の少なくとも1つの領域を形成するように、コーティングナノ粒子をエージングする工程
を含む、ナノ複合材料を作製するための方法が提供される。
【0022】
別の態様では、
・コアの表面上に金属金を堆積させるように、Au(III)およびアミンの存在下で複数の白金コアを加熱し、それにより、金属金を含む表面を各々有する複数のコア-シェル前駆体ナノ粒子を生成する工程;
・金の上に硫化銀の層を形成し、それによりコーティングナノ粒子を形成する工程; および
・各コーティングナノ粒子の金が硫化銀の層を通じて該コーティングナノ粒子の表面に少なくとも部分的に拡散することを可能にし、該表面上に金属金の少なくとも1つの領域を形成するように、コーティングナノ粒子をエージングする工程
を含む、ナノ複合材料を作製するための方法が提供される。
【0023】
別の態様では、
・複数のコアを生成するように、アミンおよび微量の銀の存在下でPt(acac)2を加熱する工程;
・コアの表面上に金属金を堆積させるように、Au(III)およびアミンの存在下でコアを加熱し、それにより、金属金を含む表面を各々有する複数のコア-シェル前駆体ナノ粒子を生成する工程;
・金の上に硫化銀の層を形成し、それによりコーティングナノ粒子を形成する工程; および
・各コーティングナノ粒子の金が硫化銀の層を通じて該コーティングナノ粒子の表面に少なくとも部分的に拡散することを可能にし、該表面上に金属金の少なくとも1つの領域を形成するように、コーティングナノ粒子をエージングする工程
を含む、ナノ複合材料を作製するための方法が提供される。
【0024】
本発明の第4の局面では、
・銀塩を含む表面を各々有する複数のナノ粒子を提供する工程; および
・該ナノ粒子の表面上に金属金を堆積させる工程
を含む、ナノ複合材料を作製するための方法が提供される。
【0025】
以下の選択肢を個々にまたは任意の好適な組み合わせで第4の局面とあわせて使用することができる。
【0026】
銀塩は硫化銀であり得る。ナノ粒子を提供する工程は、ナノ粒子を形成するように、Ag(I)塩と元素硫黄とを反応させることを含み得る。曝露はアミンの存在下であり得る。ナノ粒子は有機溶媒中に提供することができる。それらは有機溶媒中で生成することができる。
【0027】
金属金を堆積させる工程はアミンの存在下でナノ粒子をAu(III)の溶液に曝露することを含み得る。この工程は有機溶媒中で行うことができる。
【0028】
一態様では、
・硫化銀を含む表面を各々有する複数のナノ粒子を形成するように、Ag(I)塩と元素硫黄とを反応させる工程; および
・該ナノ粒子の表面上に金属金を堆積させるように、アミンの存在下でナノ粒子をAu(III)の溶液に曝露する工程
を含む、ナノ複合材料を作製するための方法が提供される。
【0029】
本発明はまた、本発明の第3または第4のいずれかの局面に記載の方法により作製されるナノ複合材料を提供する。
【0030】
本発明の第5の局面では、第1の局面に記載のナノ複合粒子を含むナノ複合材料、または第2の局面に記載のナノ複合材料、または第3もしくは第4の局面に記載の方法により作製されるナノ複合材料の、触媒としての、または光学装置もしくは電子装置を作製するための使用が提供される。
【0031】
本発明の第6の局面では、
・銀塩およびアルキルアミンを含む水溶液を提供する工程;
・銀塩を有機溶媒中に抽出して、銀イオンを含む有機溶液を形成する工程; ならびに
・有機溶液中の銀イオンを銀化合物のナノ粒子として析出させる工程
を含む、銀化合物のナノ粒子を生成するための方法が提供される。
【0032】
以下の選択肢を個々にまたは任意の好適な組み合わせで第6の局面とあわせて使用することができる。
【0033】
水溶液はアルコールを含み得る。それは水混和性アルコール、例えばエタノールを含み得る。水溶液を提供する工程は、銀塩の水溶液とアルキルアミンのアルコール溶液とを組み合わせることを含み得る。
【0034】
アルキルアミンは一級アルキルアミンであり得る。それは長鎖アルキルアミンであり得る。それはC8〜C18アルキルアミン、例えばドデシルアミンであってもよく、またはC8〜C18アルキルアミンの混合物であってもよい。
【0035】
銀塩は硝酸銀であり得る。
【0036】
有機溶媒は水との低い混和性を有し得る。それは炭化水素溶媒であり得る。それは芳香族溶媒であり得る。それは例えばベンゼン、トルエン、またはキシレンであり得る。それは個々の溶媒の混合物であり得る。
【0037】
銀化合物は硫化銀であり得る。この場合、析出工程は、有機溶液を元素硫黄に曝露することを含み得る。これは有機溶液と硫黄の有機溶液とを組み合わせることを含み得る。硫黄の有機溶液の溶媒は、有機溶液の有機溶媒と混和性があり得る。それは有機溶液の有機溶媒と同一でもよく、異なっていてもよい。
【0038】
銀化合物は懸濁液または分散液として析出し得る。分散液または懸濁液は安定であり得る。
【0039】
本方法は室温で行うことができる。それは約15〜約25℃で行うことができる。
【0040】
抽出工程により、水溶液からの銀イオンの少なくとも約95%の移動が生じ得る。
【図面の簡単な説明】
【0041】
本発明の好ましい態様を、以下に記載する通りの添付の図面を参照して、例示のみを目的としてここで説明する。
【図1】Ag2Sナノ結晶の(a,b) TEM画像、(c) HRTEM画像、および(d) SAEDパターンを示す。
【図2】Au/Ag2S不均一ナノ構造の(a) TEM画像および(b) HRTEM画像、Ag2S-Auシェル-コアナノ粒子(Ag2S:Auモル比 = 2:1)の(c) TEM画像および(d) HRTEM画像、Ag2S-Auシェル-コアナノ粒子(Ag2S:Auモル比各1:2および1:1)の(e,f) TEM画像、108時間のエージング後のAg2S-Auシェル-コアナノ粒子(Ag2S:Auモル比 = 2:1)の(g) TEM画像および(h) HRTEM画像を示す。
【図3】Ag2S、Au、およびAg2S対Auの異なるモル比を有するコア-シェルAu@Ag2Sナノ結晶の紫外可視スペクトルを示す。
【図4】硫化銀/金ナノ複合体の形成の図表示である。
【図5】調製された状態のAg2Sナノ結晶のXRDパターンを示す。
【図6】水からトルエンに移動された13nm Auナノ粒子の(a) TEM (バー = 50nm)画像および(b) HRTEM (バー = 2nm)画像を示す。
【図7】Au/Ag2SヘテロダイマーのEDX分析を示す。
【図8】Au/Ag2SヘテロダイマーのXPSスペクトルを示す。
【図9】コア-シェルAu@Ag2Sナノ結晶のコアから表面へのAuの拡散を図示する。72時間のエージングの(a,b)前および(c,d)後のAu@Ag2Sナノ結晶の(a,c)TEM画像および(b,d) HRTEM画像。
【図10】Ag2S中のAuの拡散に基づく半導体-金属ナノ複合体の合成の模式図である。
【図11】(a,b)コア-シェル-シェルPt@Au@Ag2Sナノ粒子および(c,d)Ag2S中のAuの表面への拡散により得られたPt@Ag2S-Auナノ複合体の(a,c) TEM画像および(b,d) HRTEM画像を示す。
【図12】Ag2S中のAuの拡散中に観察されたオストワルド熟成を図示する。Auは最初にAg2S中で全方向に均一に拡散するが、次にオストワルド熟成が理由でAg2S表面上で成長するナノ結晶として発達する。
【図13】水からトルエンに移動された5nm Auシードの(a) TEM画像および(b) HRTEM画像を示す。
【図14】オレイルアミン中で合成された4nm Ptナノ粒子の(a) TEM画像および(b) HRTEM画像を示す。
【図15】シード媒介成長法によりオレイルアミン中で合成されたコア-シェルPt@Auナノ粒子の(a) TEM画像および(b) HRTEM画像を示す。
【図16】Ptシード(より暗色の影)の存在下で合成されたAg2Sナノ結晶(灰色の色調)のTEM画像を示す。Ag2Sは既存のPtシード上では成長しないが、代わりにコロイド中で別々の粒子を形成する。
【図17】Pt@Ag2S-Auナノ複合体のコア中および表面上のそれぞれのPtおよびAuの局限(confinement)を示すSTEM分析を示す。
【発明を実施するための形態】
【0042】
発明の詳細な説明
本明細書において、A@Bという用語法は、コアが本質的にAからなりかつシェルが本質的にBからなる、コア-シェル構造を示す。したがって、A@B@Cという用語法は、本質的にAからなるコアが本質的にBからなるシェルに取り囲まれ、このシェルが本質的にCからなるさらなるシェルに取り囲まれる、コア-シェル-シェル構造を示す。
【0043】
本発明は、銀塩を含む表面を有するナノ粒子と、該表面上にある金属金の少なくとも1つの領域とを含む、ナノ複合粒子を提供する。ナノ粒子およびナノ複合粒子は約5〜約25nmまたは約5〜20、5〜15、10〜25、15〜25もしくは10〜20nm、例えば約5、10、15、20もしくは25nmの直径を各々独立して有し得るものであり、但し、ナノ粒子の直径はナノ複合粒子のそれと等しいかまたはそれ未満である。ナノ粒子およびナノ複合粒子は独立して球状、ほぼ球状、扁球状、卵形状、多面体状または何らかの他の形状であり得る。金属金の領域が1つ存在してもよく、または2つ以上のそのような領域、例えば2つ、3つ、4つもしくは5つの領域が存在してもよい。この領域は、または各領域は独立して、円形、楕円形、多角形もしくは不規則形または何らかの他の形状であり得る。それは(それらは独立して)直径約1〜約8nmまたは直径約1〜5、1〜3、3〜8、5〜8もしくは2〜6nm、例えば約1、2、3、4、5、6、7もしくは8nmであり得る。その領域または各領域の直径はナノ粒子のそれより小さくあるべきである。いくつかの態様では、ナノ粒子は金で完全にコーティングされており(すなわち、ナノ複合粒子の表面全体が金からなる)、一方、他の粒子では、ナノ複合粒子は銀塩を含むその表面の領域を有する(すなわち、ナノ複合粒子の表面の一部のみが金からなる)。金の領域の厚さは約2nm未満または1、0.5もしくは0.2nm未満であり得るか、あるいは約0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、1.5または2nmの厚さであり得る。それは約1〜20個の原子の厚さまたは1〜10個、1〜5個、5〜20個、10〜20個もしくは5〜10個の原子の厚さ、例えば約1、2、5、10、15もしくは20個の原子の厚さであり得るか、あるいは20個を超える原子の厚さ、例えば約25、30、35、40、45もしくは50個の原子の厚さであり得る。金は少なくとも約90%純粋(モル基準)または少なくとも約95、99、99.5もしくは99.9%純粋であり得る。
【0044】
いくつかの態様では、ナノ粒子は本質的に銀塩からなる。銀塩はモル基準で少なくとも約90%純粋または少なくとも約95もしくは99%純粋であり得る。それは本質的に銀塩の混合物からなり得るものであり、この場合、モル基準で混合物の金属含有量の少なくとも約90%(または少なくとも約95もしくは99%)が銀であり得る。銀塩は低いまたは無視できる水溶性を有し得る。それは有機溶媒中での、特にそれを作製する上でまたはナノ複合粒子を作製するためにそれを使用する上で使用される有機溶媒(例えばトルエン)中での、低いまたは無視できる溶解性を有し得る。
【0045】
いくつかの態様では、ナノ粒子はコア-シェル構造を有する。この場合、シェルは本質的に銀塩からなり得るかまたはそれを含み得る。コアは約1〜約10nmまたは約1〜5、5〜10、2〜10、2〜5もしくは3〜5nm、例えば約1、2、3、4、5、6、7、8、9もしくは10nmの直径を有し得る。それは、金属白金もしくは金属パラジウムまたはこれらの混合物を含み得るか、または本質的にそれらからなり得る。したがって、ナノ粒子はPt@Ag2Sナノ粒子であり得る。複数のコア(本明細書に記載のナノ複合材料を作製するために使用)は、粒径について先に記載の平均粒径を有し得る。コアは狭い粒径分布を有し得る。それらは実質的に単分散であり得る。コアシェル粒子のシェルは約1〜約10nmの厚さまたは約1〜5、1〜2、2〜10、5〜10、2〜8もしくは2〜5nm、例えば約1、2、3、4、5、6、7、8、9もしくは10nmであり得る。複数のコアの場合、これらは平均値であり得る。
【0046】
本発明者らは、金属金(Au(0))が銀塩の層を通じてその表面に拡散可能であることを発見した。本発明者らは、先に記載のナノ複合粒子を含むナノ複合材料を作製するためにこの驚くべき現象を使用した。本方法は、複数の前駆体ナノ粒子の、金属金を含む表面上に、銀塩の層を形成する工程を含む。得られたコーティングナノ粒子のエージングは、金が銀塩の層を通じて該コーティングナノ粒子の表面に少なくとも部分的に拡散することを可能にし、該表面上に金属金の1つまたは複数の領域を形成する。本発明者らは、ナノ粒子の表面上にある金のより大きい領域がより小さい領域を犠牲にして経時的に成長し得るように、オストワルド熟成現象が生じることをさらに発見した。最終的に、これにより単一の金領域のみを表面上に有するナノ複合粒子を得ることができる。しかし、この最終状態に到達するこの成熟の前に、2つ以上の金領域が表面上に存在することがあり、これらは異なるサイズを有し得るかまたはほぼ同一のサイズを有し得る。ナノ複合材料中の異なるナノ複合粒子は、それらの表面上に、異なる数および/またはサイズの金領域を有し得る。
【0047】
ナノ複合材料を作製する上で使用する前駆体ナノ粒子は、約3〜約25nmまたは約3〜15、3〜10、3〜5、5〜25、5〜20、5〜15、10〜25、15〜25もしくは10〜20nm、例えば約3、4、5、6、7、8、9、10、15、20もしくは25nmの平均直径を有し得る。前駆体ナノ粒子の表面上に形成される銀塩の層は、約1〜約10nmの厚さまたは約1〜5、1〜2、2〜10、5〜10、2〜8もしくは2〜5nm、例えば約1、2、3、4、5、6、7、8、9もしくは10nmであり得る。
【0048】
本方法で使用する前駆体ナノ粒子は本質的に金属金からなり得る。それらは少なくとも約90%純粋(モル基準)または少なくとも約95、99、99.5もしくは99.9%の純度を有し得る。あるいは、それらは金合金または何らかの他の金含有混合物を含み得る。本方法における使用のための好適な金前駆体ナノ粒子は、前駆体ナノ粒子を形成するように、Au(III)塩を還元剤で還元することにより作製することができる。これは水性媒体中で行うことができ、この場合、還元剤はホウ水素化物などの水相溶性還元剤であるべきである。この場合でも、Au(III)塩は水溶性であるべきである。それは例えばAuCl3であり得る。金前駆体ナノ粒子用の安定化剤も存在し得る。好適な安定化剤としてはクエン酸塩、PVP(ポリビニルピロリドン)または界面活性剤が挙げられる。好適な界面活性剤はTriton X-100 (t-オクチルフェノキシポリエトキシエタノール)などの非イオン性界面活性剤であり得る。
【0049】
一般に、安定化剤は、表面上に吸着することにより、静電相互作用によるナノ粒子の凝集を防止または阻害するようにして、ナノ粒子を安定化させる。金前駆体ナノ粒子を水性媒体中で生成する場合、本方法は、金の上に銀塩の層を形成する工程の前に、金前駆体ナノ粒子を有機溶媒中に移動させる工程を含んでいてもよい。移動は、金前駆体ナノ粒子を含有する水性混合物と、移動剤(transfer agent)を含有する水混和性有機溶媒とを混合することを包含し得る。移動剤はアルキルアミンを含み得る。水混和性有機溶媒は、好適にはエタノールもしくはメタノールなどの短鎖アルコール、またはアセトンなどの他の極性溶媒であり得る。アルキルアミンは長鎖アルキルアミンであり得る。それは一級アミンであり得る。アミン上のアルキル基は約C6〜約C20または約C6〜C12、C12〜C20、C12〜C16、C8〜C14もしくはC10〜C14、例えばC6、C7、C8、C9、C10、C11、C12、C13、C14、C15、C16、C17、C18、C19もしくはC20であり得る。アルキル基は直鎖であり得る。それは飽和であり得る。それは不飽和であり得る。それは1つまたは複数の二重結合および/または三重結合を含み得る(すなわち、それはアルケニル基またはアルキニル基もしくはアルケニニル基であり得る)。それはそのようなアルキルアミンの混合物であり得る。アミンは二級アミンもしくは三級アミンであり得るか、または四級アンモニウム塩であり得る。アミン(またはアンモニウム塩)は、ナノ粒子に結合する(またはそれと会合する)ことが可能なアミン基と、非極性溶媒中での粒子の分散を容易にする非極性尾部とを有するべきである。したがって、二級アミンもしくは三級アミンまたはアンモニウム塩上のアルキル基は、各々独立して先に記載の通りであり得る。先に記載のアミンおよび/またはアンモニウム塩の混合物を使用することができる。代替の移動剤はジカリウムビス(p-スルホナトフェニル)フェニルホスファン二水和物(BSPP)を含む。得られる水性/有機混合物を好適な有機抽出剤により抽出することにより、金前駆体ナノ粒子は有機抽出剤に移動する。有機抽出剤は低極性または非極性有機溶媒であり得る。それはベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族溶媒であり得る。それはこれらのうちの1つまたは複数を含む溶媒の混合物であり得る。
【0050】
先に記載の金前駆体ナノ粒子の代わりに、シェルが金を含むコア-シェル前駆体ナノ粒子を使用することができる。この選択肢では、前駆体ナノ粒子は、その表面上に金を有するコアを各々含む。したがって、コアは、金ではない材料を含み得る。それは白金もしくはパラジウムまたはこれらの混合物を例えば含み得る。コアを作製するための好適な方法は、金属の塩または錯体を還元する工程を含む。先に記したように、コアに好適な金属は白金である。この場合、金属コアの前駆体はPt(acac)2であり得る。アミンの存在下で(任意にさらなる溶媒の非存在下で)加熱することで、これをナノサイズコアの形態のナノ粒子状白金金属に還元することができる。所望の球状コアを生成するために、微量の銀塩を一般に加える。好適なアミンは、金前駆体ナノ粒子の合成において先に記載の通りである。反応は不活性雰囲気、例えばヘリウム、ネオン、アルゴン、窒素またはこれらの混合物下で行うことが好ましい。好適な温度は約120〜200℃または約140〜200、160〜200、120〜160もしくは140〜180℃、例えば約120、130、140、150、160、170、180、190もしくは200℃である。コアが形成された後で、コア-シェル前駆体ナノ粒子を形成するために、金のシェルをコアの表面上に堆積させることができる。コアを分離または精製せずにこれを行うことができる。したがって、先に記載の白金の例では、コア上に金シェルを形成するように、アミン中の白金コアを金化合物で処理することができ、それによりコア-シェル前駆体ナノ粒子Pt@Auを形成する。アミンは、金化合物を金属金(Au(0))に変換(還元)するのに十分であり得る。金化合物は、金(III)塩、例えばAuCl3またはAuBr3などの金塩であり得る。好適には、コアの形成について先に記載の不活性雰囲気下で反応を行う。シェルを形成するためのコア上での金の堆積に好適な反応温度は、約80〜120℃または約80〜100、100〜120もしくは90〜110℃、例えば約80、85、90、95、100、105、110、115もしくは120℃である。したがって、コアの形成後に、反応混合物を所望のシェル形成温度に、混合物全体に同一雰囲気を維持しながら冷却して、金化合物を加えることができる。いったん形成すれば、コア-シェル前駆体ナノ粒子は精製することができる。これは例えば析出、洗浄、遠心分離または他の好適な技術のうちの1つまたは複数を含み得る。次にそれらをさらなる加工のために有機溶媒に懸濁させることができる。有機溶媒は低極性または非極性有機溶媒であり得る。それはベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族溶媒であり得る。それはこれらのうちの1つまたは複数を含む溶媒の混合物であり得る。
【0051】
本方法は次に銀塩の層を前駆体ナノ粒子の表面上に形成することを含み得る。これは、溶液中の銀イオンを、反応媒体(一般的にトルエンなどの有機溶媒である)にそれらが実質的に不溶性である形態に変換することを含み得る。したがってそれは、反応媒体に不溶性である不溶性銀塩の層を前駆体ナノ粒子の表面上に形成することを含み得る。それは不溶性銀塩の層を前駆体ナノ粒子の表面上に析出させることを含み得る。例示的な態様では、銀塩は硫化銀である。硫化銀の層を形成する工程は前駆体ナノ粒子をAg(I)および元素硫黄に曝露することを含み得る。これは、先に記載の低極性溶媒などの有機溶媒中で好都合に行われる。先に記載のように、前駆体ナノ粒子を有機溶媒中に移動させることが必要なことがある。この場合、Ag(I)を有機溶媒(任意には、前駆体ナノ粒子がその中に提供されるものと同一の有機溶媒)中に提供することも必要である。これは、有機溶媒中への金前駆体ナノ粒子の移動について先に記載したものと同様の様式で達成することができる。したがって、Ag(I)水溶液を水混和性有機溶媒(例えばエタノール)およびアミン(以前に記載の通り)と混合することができる。次に、得られた溶液は、Ag(I)の抽出剤溶液(すなわち有機Ag(I)溶液)を提供するように、有機抽出剤で抽出することができる。好ましくは、有機抽出剤は、金前駆体ナノ粒子がその中に提供される有機溶媒と同一であるかまたは少なくともそれと混和性があるべきである。有機溶媒中の金前駆体ナノ粒子を有機Ag(I)溶液と組み合わせて、かつ得られた混合物を元素硫黄により処理することによって、Ag(I)をAg2Sに変換し、これを前駆体ナノ粒子上の層として形成して、コーティングナノ粒子を発生させるようにする。Ag(I)および/または金前駆体ナノ粒子の有機媒体中に対する移動の結果として存在するアミンが元素硫黄をS2-に還元するかまたはその還元を触媒することができ、次にS2-をAg(I)イオンと組み合わせることでAg2Sを形成することができると考えられる。すべての試薬の互いに対する曝露を確実にし、かつ層形成を阻害する凝集を防止するために、激しく攪拌しながら反応を行うことが好ましい。層形成は室温で、あるいは何らかの他の好適な温度、例えば約0〜約100℃または約0〜50、0〜25、0〜10、10〜100、20〜100、50〜100、15〜50、15〜30もしくは20〜25℃、例えば約0、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95もしくは100℃で行うことができる。温度に部分的に依存しかつ形成される層の厚さに部分的に依存して、それは約2〜約12時間または約2〜8、2〜4、4〜12、6〜12もしくは6〜10時間、例えば約2、3、4、5、6、7、8、9、10、11もしくは12時間を要し得る。
【0052】
先に記載のように、得られたコーティングナノ粒子のエージングは、ナノ複合粒子を形成するべく、金属金が銀化合物を通じて拡散または移動することを可能にし得る。エージング工程は、各コーティングナノ粒子の金が銀塩の層を通じて該コーティングナノ粒子の表面に拡散するのに十分な時間、コーティングナノ粒子を溶媒中に維持することを単に含み得る。これは約6〜約48時間または約6〜24、6〜12、12〜48、24〜48、12〜36もしくは18〜30時間、例えば約6、12、18、24、30、36、42もしくは48時間を要し得る。時間は、コーティングナノ粒子中の金の上の銀化合物の層の厚さに依存し得るものであり、エージングの温度にも依存し得る。エージングは室温で、あるいは何らかの他の好適な温度、例えば約0〜約100℃または約0〜50、0〜25、0〜10、10〜100、20〜100、50〜100、15〜50、15〜30もしくは20〜25℃、例えば約0、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95もしくは100℃で行うことができる。
【0053】
ナノ複合粒子を作製するための第2の方法は、それらの表面上に銀塩を有するナノ粒子上に金属金を直接堆積させる工程を包含する。好適な銀塩はやはり硫化銀である。ナノ粒子は、Ag(I)塩と元素硫黄とを反応させることでナノ粒子を形成することにより作製することができる。Ag2Sナノ粒子を作製するための方法は、金前駆体ナノ粒子の表面上での硫化銀の層の堆積について先に記載の方法と同様であり得るが、この場合では金前駆体ナノ粒子を省略する。したがって、水混和性有機溶媒およびアミンを有するAg(I)水溶液を有機抽出剤中に抽出し、得られた有機Ag(I)溶液を元素硫黄で処理する。条件は本明細書の他の箇所に記載の通りである。ナノ粒子は銀塩を含み得るかまたは本質的にそれからなり得る。あるいは、それらは銀塩ではないコアを、コアを取り囲む銀塩のシェルと共に含み得る。白金コアの表面上での硫化銀の層の堆積(先に記載のコア上での金の堆積と同様の)が、白金コアの存在下での硫黄と銀(I)との反応により実現されない可能性があるということに留意すべきである。
【0054】
銀塩表面を有するナノ粒子上に金属金を堆積させる工程は、アミンの存在下でナノ粒子をAu(III)の溶液に曝露することを含み得る。前の反応と同様に、これを有機媒体中で行うことが好ましい。したがって、Ag(I)および金前駆体ナノ粒子の移動について先に記載のものと同様の様式で、Au(III)を有機抽出剤中に移動させる可能性がある。有機Au(III)溶液およびナノ粒子を有機溶媒中で単に組み合わせることで、ナノ粒子表面上に金属金が形成され、ナノ複合粒子が直接得られる。アミン(先に詳細に説明)は、ナノ粒子表面上に金属金を形成するように、Au(III)をAu(0)に還元するかまたはその還元を触媒するのに十分であると考えられる。反応は室温で、あるいは何らかの他の好適な温度、例えば約0〜約100℃または約0〜50、0〜25、0〜10、10〜100、20〜100、50〜100、15〜50、15〜30もしくは20〜25℃、例えば約0、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95もしくは100℃で行うことができる。それは約0.5〜約2時間または約0.5〜1、1〜2もしくは0.7〜1.5時間、例えば約30もしくは45分間または約1、1.25、1.5、1.75もしくは2時間を要し得る。時間は、使用される温度に部分的に依存し得る。ナノ粒子の表面上の銀塩が金(III)のアミン還元を触媒することでナノ粒子表面上に優先的に金を形成することができると考えられる。
【0055】
本明細書に記載のナノ複合材料は、触媒としての、または光学装置もしくは電子装置を作製するための用途を見出すことができる。
【0056】
ナノ複合材料を三成分カップリング反応における触媒として試験し、これらは優れた触媒活性を示した。代表的な反応を以下に示す。
【0057】
また、Ag2Sシェルを使用してナノ粒子状の金の光学特性を調節することができる。したがって、本明細書に記載のナノ複合材料を光学装置または電子装置に使用することができる。
【0058】
本発明はまた、銀化合物のナノ粒子を生成するための方法を提供する。特に、本方法は有機媒体における銀化合物の懸濁液または分散液を提供する。本方法では、銀塩およびアルキルアミンを含む水溶液を有機溶媒で抽出することで、銀塩を有機溶媒に移動させる。得られた有機溶液は銀イオンを含有しており、次に銀イオンを有機溶液中で銀化合物のナノ粒子として析出させる。
【0059】
水溶液はアルコールまたは何らかの他の水混和性有機溶媒、例えば水混和性アルコールを含み得る。好適な例としてはメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、アセトンおよびテトラヒドロフランが挙げられる。したがって、銀塩の水溶液をアルキルアミンおよびアルコールと組み合わせて、本方法で使用する水溶液を提供することができる。
【0060】
アルキルアミンは一級アルキルアミンであり得る。それは長鎖アルキルアミンであり得る。それはC8〜C18アルキルアミン、例えばドデシルアミンであってもよく、またはC8〜C18アルキルアミンの混合物であってもよい。好適なアミンは、金粒子を有機媒体に移動させる際に使用するものと同一であり、本明細書において先に記載されている。
【0061】
銀塩は任意の水溶性銀塩であり得る。それは銀(I)塩であり得る。それは硝酸銀であり得るか、またはそれはフッ化銀であり得るか、またはそれは酢酸銀であり得るか、またはそれは可溶性銀塩の混合物であり得る。
【0062】
有機溶媒は水との低い混和性を有し得る。それは炭化水素溶媒であり得る。それは芳香族溶媒であり得る。それは例えばベンゼン、トルエンまたはキシレンであり得る。それはこれらのうち任意の2つ以上の混合物であってもよく、またはそれはこれらのうちの任意の1つと、何らかの他の溶媒、例えば低い水混和性を有する1つもしくは複数の他の溶媒との混合物であってもよい。水性媒体から有機媒体への銀イオンの移動はアルキルアミンの存在により容易にすることができる。したがって、アミンは銀イオンと会合し得るものであり、アミンの疎水性尾部は、得られた銀イオン-アミン会合物(association)が有機溶媒へと移動するのを容易にすることができる。有機溶液中のアルコールなどの有機溶媒の存在は、抽出前の水溶液中のアミン(またはアミン-銀イオン会合物)の溶解を容易にすることができる。水性媒体から有機媒体への銀の移動は効率的なものであり得る。それは少なくとも約90%効率的または少なくとも約95、96、97、98もしくは99%効率的であり得る。上記方法は、アミンと会合するかまたはそれと錯体を形成することが可能な種を水性媒体から有機媒体へと移動させる目的に、好都合に使用できるということは自明である。本明細書では、銀イオンおよび金ナノ粒子の移動の例が提示されているが、他の種も類似のプロトコールを使用して室温で移動させることができる。したがって、先に記載の抽出工程により、銀塩、特に水溶性銀塩の有機溶液が得られる。前記有機溶液中の銀はアミンと会合し得る。
【0063】
水、水混和性有機溶媒、および水との低い混和性を有する有機溶媒の比率は、上記方法の抽出工程中に水相と銀イオンの大部分を含有する非水相とが分離するようなものにすべきである。
【0064】
有機溶媒中の銀イオンより形成される銀化合物は、硫化銀であり得るか、または有機溶媒に実質的に不溶性である(任意には、水に実質的に不溶性でもある)何らかの他の銀塩(例えば銀(I)塩)であり得る。有機溶媒中の銀イオンと銀イオンを不溶性銀化合物に変換する好適な対イオンとの組み合わせにより、銀化合物を形成することができる。銀化合物が硫化銀である場合、析出工程は有機溶液を元素硫黄に曝露することを含み得る。この反応が硫黄の硫化物イオンへの還元により進行し、次に硫化物イオンが銀イオンと縮合することで硫化銀ナノ粒子を形成することができると考えられる。還元はアミンとの反応またはそれによる触媒作用を包含し得る。
【0065】
銀化合物は懸濁液または分散液として析出し得る。したがって、本方法により生成される銀化合物の粒子は、約3〜約25nmまたは約3〜15、3〜10、3〜5、5〜25、5〜20、5〜15、10〜25、15〜25もしくは10〜20nm、例えば約3、4、5、6、7、8、9、10、15、20もしくは25nmの平均直径を有し得る。
【0066】
本方法は室温で行うことができる。それは約15〜約25℃または約15〜20、20〜25もしくは18〜23℃、例えば約15、16、17、18、19、20、21、22、23、24もしくは25℃で行うことができる。いくつかの場合では、それは何らかの他の温度で行うことができる。
【0067】
本発明はまた、有機溶媒における銀化合物のナノ粒子の懸濁液または分散液を提供する。懸濁液または分散液は先に記載の方法で作製することができる。銀化合物および有機溶媒は先に記載の通りであり得る。懸濁液または分散液は安定であり得る。それは少なくとも約1日間または少なくとも約2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13もしくは14日間安定であり得る。粒子がその期間にわたって沈殿しないという点でそれは安定であり得る。
【0068】
特定の態様では、本開示はトルエン中でAg2Sナノ結晶(ナノ粒子)を合成する室温アプローチを記載する。このプロトコールは、最初にエタノールおよびドデシルアミンが媒介する方法を使用して水溶液からトルエン中にAg(I)イオンを移動させ、次にトルエン中室温で元素硫黄と反応させて、Ag2Sナノ結晶を形成することを包含した。次に、Ag2Sナノ結晶上での金の不均一な堆積を通じてまたはAuナノ結晶上でのAg2Sの均一な成長によって、金とAg2Sとの間でナノ複合体が形成された。後者のアプローチによりAg2S-Auシェル-コア構造が生成され、これは金ナノ結晶の表面プラズモン共鳴(SPR)の赤色シフトを誘導した。金シード(コア)を発生させるために、ジカリウムビス(p-スルホナトフェニル)フェニルホスファン二水和物(BSPP)を使用して水からトルエンに10nm超のAuナノ結晶を移動させた。本アプローチは、狭いサイズ分布を有するAg2Sナノ結晶の室温での合成を可能にする。Ag2Sナノ結晶上での金の不均一な堆積および金ナノ結晶上でのAg2Sの均一な成長を含む、水からトルエンにAg(I)イオンを移動させるために使用するプロトコールを、Ag2Sおよび金ナノ複合体を合成するために拡張することができる。後者はAg2S-Auシェル-コア構造を生成した。
【0069】
この技術は、Ag2Sナノ結晶およびそれらの金とのナノ複合体を調製する簡単かつ好都合な経路を提供する。得られた材料は光学用途、電子用途、エネルギー用途、触媒用途および生物学的用途について関心の対象となる。
【0070】
本開示はまた、新規Ag2S-Auヘテロダイマー(ナノ複合体)を生じさせる、コアシェルナノ粒子のコアから表面へのAg2Sを通じた金の拡散を記載する。この現象は、直接合成では得られない可能性がある複合半導体-金属ナノ複合体を合成するために使用可能である。具体的には、コア-シェル-シェルPt@Au@Ag2Sナノ粒子中でのAg2S中のAuの拡散に基づく、コア-シェルPt@Ag2SとAuナノ粒子との不均一ナノ複合体の合成が記載される。
【0071】
この合成では、金がナノ粒子のコアから表面に拡散することで、Ag2S-Auヘテロダイマーが生じる。Auのこの逆拡散も、直接合成では実現できない可能性がある複合半導体-金属ナノ複合体を合成するために使用可能である。
【0072】
この拡散プロセスは、半導体-金属ハイブリッドを合成するためのまたは半導体ナノ結晶中での金属ドーピングのための新規戦略を提供する。得られた材料は光学用途、電子用途、電気化学用途、エネルギー用途、触媒用途および生物学的用途について関心の対象となる。
【実施例】
【0073】
実施例1: ナノ結晶硫化銀およびその金とのナノ複合体の室温合成
本開示は、Ag2Sナノ結晶上での金の不均一な堆積および金ナノ結晶上でのAg2Sの均一な成長によって金とAg2Sとの間で形成されるナノ複合体を記載する。後者はシェル-コアAg2S-Auナノ構造を生成し、この構造はAuナノ結晶の表面プラズモン共鳴(SPR)の赤色シフトを誘導した。
【0074】
この実施例の実験ではすべての反応をトルエン中で行った。ナノ複合体の半導体成分(Ag2S)を合成するために、本発明者らは、エタノールおよびドデシルアミンが媒介する方法を使用した水からトルエンへのAg(I)イオンの移動、ならびにトルエン中での元素硫黄との反応を包含する容易な室温アプローチを開発した。このエタノール媒介方法は、ナノ複合体の形成のために水からトルエンにAu(III)イオンおよび金ナノ結晶を移動させるためにも使用した。
【0075】
透過型電子顕微鏡観察(TEM)は、硫化銀ナノ結晶が球状かつ単分散であり、平均サイズが約15nmであることを示した(図1a)。興味深いことに、これらのナノ結晶は、自己組織化六方晶上部構造(self-assembled hexagonal suprastructure)を形成する強力な傾向を有する。TEMグリッド上でナノ結晶の1層または2層の最密超格子を得ることは実現可能であった(図1aおよびb)。この室温アプローチ、および得られたナノ構造の自己組織化傾向は、化学、光学、磁気および電子ナノ装置用の新規上部構造の製作に有用であると考えられる。高分解能TEM (HRTEM)画像はこれらのナノ結晶中の格子面を図示し、これによりこれらの粒子が高い結晶性を有することを確認した(図1c)。選択領域電子線回折(SAED)パターンは、単斜晶Ag2Sの指標となり得る回折リングを示し(図1d)、これは試料のX線回折(XRD)パターン(図5)と一致していた。
【0076】
Ag2SおよびHAuCl4の混合物をトルエン中で1時間エージングした後、Au/Ag2Sヘテロダイマーが主要な生成物であるとわかった。さらなる還元剤は必要ではなかった。ドデシルアミンはAg2Sナノ結晶の存在下でAu(III)イオンを十分に還元することができた。単離Auナノ結晶は観察されなかった。このことは、実験条件下で貴金属が均一にではなく既存のAg2Sナノ結晶上で優先的に核形成することを示唆した。Ag2Sナノ結晶の非存在下で、ドデシルアミンによるAu(III)イオンの還元が数日を要することは注目に値した。このことは、還元プロセスがAg2S半導体の存在下で触媒されることを示唆した。金が強力な画像コントラストを有するため、不均一Au/Ag2Sハイブリッドが容易に同定される可能性がある(図2a)。大部分の場合、Auは各Ag2Sナノ結晶上の単一部位においてのみ堆積した。堆積した金ナノ結晶の直径は約3nmであった。エネルギー分散X線(EDX)分析およびX線光電子分光測定(XPS)(図7および8)により、不均一構造がAg2SおよびAuから構成されることを確認した。また、HRTEM画像は、Auの結晶面が各ヘテロダイマーナノ結晶中のAg2Sのそれと平行ではないことを明らかにした(図2b)。2つのナノ結晶間の角度はハイブリッド粒子毎に変動しており、このことは金の成長が異なる配向で起こることを示した。この結果は、CdSe-Auナノ複合体に関する報告と同様であったが、PbSの(200)結晶面が金の(111)結晶面と平行になるピーナツ形のPbS-Auナノ複合体に関する報告とは異なっていた。
【0077】
ナノ結晶合成の順序を逆転させる、すなわちAuナノ結晶の存在下でAg2Sナノ結晶を発生させる場合、Ag2Sは既存のAuナノ結晶上で均一に成長し、これによりAg2S-Auシェル-コア構造が得られた(図2c、Ag2S:Au = 2:1)。さらなる構造上の詳細は図2dのHRTEM画像により明らかになる。Au/Ag2Sヘテロダイマーの場合と同様、Auコアの結晶面はAg2S-Auナノ粒子中のAg2Sシェルのそれと平行ではなかった。
【0078】
Ag2Sシェルの厚さは、合成中にAg2S:Auモル比を変動させることで制御される可能性がある。図2eおよびfは、1:2および1:1のAg2S:Auモル比で合成したAg2S-Auシェル-コアナノ結晶を図示する。図2c、eおよびfの比較が示すようにAg2Sシェルの厚さが変動する可能性がある。
【0079】
Ag2S-Auシェル-コアナノ粒子は、Ag2Sシェルの存在にもかかわらずAuナノ結晶の光学特性を保持した(図3参照)。567nm、576nmおよび593nmでの吸収ピークは金コアの表面プラズモン共鳴(SPR)に起因した。純粋な金ナノ結晶に対するこれらのシェル-コアナノ結晶の金表面プラズモンバンドの大きい赤色シフトは、Ag2Sシェルの存在に起因する可能性がある。さらに、金コアのSPRピークはAg2Sシェルの厚さにより調節される可能性がある。
【0080】
金が粒子のコアから表面に拡散することでAu/Ag2Sヘテロダイマーが生じるという興味深い現象がAg2S-Auナノ粒子で注目された。図2gおよびhは、Ag2S-Auシェル-コアナノ粒子(Ag2S:Auモル比 = 2:1)が室温で108時間のエージング後にAu/Ag2Sヘテロダイマーとなったことを図示する。この現象は実施例2でさらに調査する。
【0081】
要するに、本発明者らはAg2Sナノ結晶およびそれらの金とのナノ複合体の室温合成を実証した。金は各Ag2Sシードナノ結晶上の単一部位においてのみ堆積される可能性がある。対照的に、Ag2SはAuシードナノ結晶上に均一に成長する可能性があり、これによりAuナノ結晶の光学特性を依然として有するシェル-コアAg2S-Auナノ粒子が得られる。この容易な合成は、興味深い構造と目的に合わせた機能性とを有する種々のナノ複合体の製作に向けて使用される可能性がある。ナノ複合体の形成を図4に図示する。
【0082】
実験
使用したすべての試薬はSigma-Aldrichより購入した。
【0083】
水からトルエンへの貴金属イオンの相移動
典型的な実験では、1mM金属塩水溶液(AgNO3またはHAuCl4) 50mLをドデシルアミン1mLを含有するエタノール50mLと混合した。3分間の攪拌後、トルエン50mLを加え、さらに1分間攪拌した。水相の色の完全な退色が示すように、水からトルエンへの金属イオンの相移動は速やかにかつ完全に生じた。水からのイオンの完全な移動が想定されるトルエン中の金属イオン濃度を1mMとした。トルエン中の金属イオンを水相より分離し、さらなる実験用に保持した。誘導結合プラズマ発光分光分析(ICP-AES)は、Ag(I)およびAu(III)イオンの移動効率が98%を超えることを示した。
【0084】
Ag2Sナノ結晶の合成
50mL平底フラスコ中のAg(I)イオンのトルエン溶液20mLに元素硫黄3mgを加えた。混合物を室温で3時間攪拌した。溶液は無色から暗褐色になり、これはAg2Sナノ粒子の形成を示した。調製された状態のAg2Sナノ結晶のXRDピーク(図5)は単斜晶Ag2S相の指標となる可能性がある。
【0085】
13nm Auナノ粒子の合成および相移動
13nmクエン酸安定化Auナノ粒子を確立された手順に従って調製した((a) Grabar, K. C; Freeman, R. G.; Hommer, M. B.; Natan, M. J. Anal. Chem. 1995, 67, 735-743. (b) Gearheart, L. A.; Ploehn, H. J.; Murphy, C. J. J. Phys. Chem. B 2001, 105, 12609-12615)。HAuCl4の攪拌水溶液(1mM、20mL)をシリコーンオイル浴中110℃で還流させた。40mMクエン酸三ナトリウム水溶液2mLを速やかに加えたところ、一連の色変化が生じ、その後赤色になった。混合物をさらに15分間還流させ、室温に冷却した。10nmより大きい金ナノ粒子の相移動用に、固体ジカリウムビス(p-スルホナトフェニル)フェニルホスファン二水和物(BSPP)50mgを金ヒドロゾルに加え、混合物を30分間エージングした。次に、Ag(I)およびAu(III)イオンの相移動に使用したアプローチに従って、金ナノ粒子を水からトルエンに移動させた。典型的には、BSPP安定化Auヒドロゾルを、ドデシルアミン0.4mLを含有するエタノール20mLと混合した。3分間の攪拌後、トルエン20mLを加え、さらに1分間攪拌した。ICP-AES分析は、この相移動効率が約100%であることを示した。相移動後のAuナノ粒子のTEMおよびHRTEM画像を図6に示す。
【0086】
不均一Au/Ag2Sハイブリッドの合成
Au/Ag2Sヘテロダイマーの調製用に、トルエン中Ag2Sオルガノゾル10mLをトルエン中Au(III)溶液10mLと混合した。混合物を1時間エージングして反応を完了させた。さらなる還元剤は必要ではなかった。ドデシルアミンはAg2Sの存在下でトルエン中のAu(III)イオンを有効に還元することができた。Au/Ag2SヘテロダイマーのEDX分析およびXPSを図7および図8にそれぞれ示す。
【0087】
シェル-コアAg2S-Auナノ粒子の合成
トルエン中Ag(I)イオン10mLとトルエン中13nm金オルガノゾル10mLとを混合した。次に元素硫黄2mgを激しい攪拌下で加え、攪拌をさらに8時間続けた。異なる体積のAg(I)イオンおよびAuオルガノゾルをトルエン中で混合することで、Ag2S:Auモル比を制御した。
【0088】
実施例2: Ag2Sナノ結晶中のAuのコアから表面への拡散に基づく複合半導体-金属ナノ複合体の合成
この試験では、金がナノ粒子のコアから表面に拡散することで、Ag2S-Auヘテロダイマーが生じる。金のこの逆拡散は、科学的な意義があるというだけではなく、直接合成では得られない可能性がある複合半導体-金属ナノ複合体の合成に使用される可能性もある。具体的には、この実施例は、Ag2Sナノ結晶中の金の拡散に基づく、コア-シェルPt@Ag2Sと金ナノ粒子との不均一ナノ複合体の合成を詳述する。透過型電子顕微鏡観察(TEM)によるナノ複合体の特徴づけ中にオストワルド熟成が観察された。これにより、Ag2Sナノ結晶中の金拡散の結果としての半導体-金属ヘテロ構造の形成の機構が解明された。
【0089】
コア-シェルAu@Ag2Sナノ結晶の合成はシード媒介成長法に従った。調製された状態のコア-シェルAu@Ag2Sナノ粒子のTEMおよび高分解能TEM (HRTEM)画像を図9(a)および(b)にそれぞれ示すものであり、それによりコア成分とシェル成分とを輝度コントラストで容易に識別することができる。コアから表面へのAg2S中のAuの拡散は72時間のエージング後に完了した(図9(c)および(d))。得られたAg2S-Auヘテロダイマーは出発コア-シェルAu@Ag2Sナノ結晶とは明らかに異なっていた。
【0090】
コアから表面へのAg2S中のAuの拡散の原動力は、過去に中空粒子の形成に使用されたカーケンドール効果の根底にあるそれと同様である可能性がある。比較的高い表面対体積比が理由で、コア-シェルAu@Ag2Sナノ結晶中のAuのコアから表面への拡散は、系がその化学ポテンシャルを低下させかつそのギブズ自由エネルギーを減少させるように実現される可能性がある。
【0091】
この拡散現象を採用することで、複合度のより高い半導体-金属ナノ複合体を合成する可能性がある。コア-シェルPt@Auナノ粒子を、シード媒介成長法を使用して調製し、次にAg2Sでコーティングした(図10参照)。次に金をAg2Sの表面に拡散させて、コア-シェルPt@Ag2SとAuナノ粒子との不均一ハイブリッドを得、Pt@Ag2S-Auと名付けた(図11参照)。コア-シェルPt@Ag2Sナノ粒子が直接合成されない可能性があるということに留意すべきである。Ag2Sナノ結晶をPtシードの存在下で溶液中で独立して形成した(図16)。
【0092】
コア-シェル-シェルPt@Au@Ag2SのTEMおよびHRTEM画像を図11aおよび11bにそれぞれ示す。24時間のエージング後、金属金を白金コアより分離し、Ag2Sシェルの表面に拡散させることで、Pt@Ag2S-Auナノ複合粒子が形成される。TEM画像(図11c)の輝度コントラストは、各ナノ複合体における3つの異なるドメインを示し、HRTEM画像(図11d)は、ナノ複合体の表面上の暗色パッチの格子配向がコア位置に位置するそれと異なることをさらに明らかにする。分析用走査TEM (STEM)試験(図17)は異なる領域における各成分の局限を示し、これにより表面上の暗色パッチおよびコア位置におけるそれが金および白金よりそれぞれ構成されることを確認する。
【0093】
ヘテロ構造化ナノ複合体の特徴づけ中にオストワルド熟成が観察された。オストワルド熟成とは、臨界サイズよりも大きい粒子が表面エネルギー項によるそれらの相対的安定化を理由としてより小さい粒子を犠牲にして成長するという現象のことである。図12は、20秒間にわたって撮影した4つのナノ複合体のTEM画像を示す。ナノ複合体の表面上の金パッチまたは金領域の発達が明らかに観察された。TEMにおいて観察された成熟は、電子線がプロセスに影響を与えた可能性があるため、溶液中の場合を正確に表していない可能性がある。しかし、この観察は、拡散プロセスにより粒子表面上での金の均一な分布が得られなかった理由を示唆した。最初に、金原子がAg2S内の全方向に拡散した可能性がある。しかし、次に金のナノ粒子がAg2S表面上に形成され、オストワルド熟成が理由で着実に成長した。
【0094】
要するに、コアから表面へのAg2S中の金の拡散を報告する。第1段階では、金原子がAg2S中でコアから表面に均一に拡散し得る。次に金領域がAg2Sの表面上でオストワルド熟成を理由として発達する。この拡散現象の適用として、コア-シェルPt@Ag2Sと金との複合ナノ複合体を合成する。この拡散プロセスは、半導体-金属ハイブリッドの合成および半導体ナノ結晶中での金属ドーピングのための新規戦略を提供する。
【0095】
実験
一般
使用したすべての試薬はSigma-Aldrichより購入した。
【0096】
水からトルエンへのAg(I)イオンの相移動
典型的な実験では、AgNO3水溶液(1mM) 50mlをドデシルアミン1mlを含有するエタノール50mlと混合した。3分間の攪拌後、トルエン50mLを加え、さらに1分間攪拌した。水からのイオンの完全な移動が想定されるトルエン中のAg(I)イオン濃度を1mMとした。トルエン中のAg(I)イオンを水相より分離し、さらなる実験用に保持した。誘導結合プラズマ発光分光分析(ICP-AES)は、Ag(I)イオンの移動効率が99%を超えることを示した。
【0097】
5nm Auシードナノ粒子の合成および相移動
HAuCl4のNaBH4還元により5nmクエン酸保護Auナノ粒子を調製した。最初に、HAuCl4水溶液(1mM) 20mlをクエン酸ナトリウム水溶液(40mM) 1.6mlと混合した。次に、NaBH4水溶液(100mM) 0.5mlを激しい攪拌下で滴下して赤色Auヒドロゾルを得た。24時間のエージング後に金ヒドロゾルを使用して残留NaBH4を分解した。Ag(I)イオンの相移動に使用したアプローチに従って、金ナノ粒子を水からトルエンに移動させた。典型的には、クエン酸安定化金ヒドロゾルを、ドデシルアミン0.4mlを含有するエタノール20mlと混合した。3分間の攪拌後、トルエン20mlを加え、さらに1分間攪拌した。ICP-AES分析は、相移動効率が約100%であることを示した。相移動後の金ナノ粒子のTEMおよびHRTEM画像を図13に示す。
【0098】
コア-シェルAu@Ag2Sナノ結晶の合成およびAg2S中の金の拡散
トルエン中Ag(I)イオン10mlをトルエン中5nm金オルガノゾル4mlと混合した。次に元素硫黄2mgを激しい攪拌下で加え、攪拌をさらに8時間続けた。次にトルエン中コア-シェルAu@Ag2Sオルガノゾルを72時間エージングすることで、コアから表面へのAg2S中の金の拡散を完了した。
【0099】
4nm Ptシードおよびコア-シェルPt@Auナノ粒子の合成
Pt(acac)2 60mgおよびAgNO3 5mgをオレイルアミン20mlに加えた。微量の銀を使用して球状白金シードを形成した。銀の非存在下では白金ナノテトラポッドが代わりに得られると考えられる。混合物をアルゴン流および攪拌下160℃で3時間加熱した。次にオレイルアミン中白金シード(コア)10mlをメタノールでの析出、遠心分離、メタノールでの洗浄およびトルエン10ml中での再分散により精製した。白金シードのTEMおよびHRTEM画像を図14に示す。
【0100】
次に別のオレイルアミン中白金シード10mlの温度を100℃に低下させ、AuCl3 100mgを加えた。アルゴン流下100℃でさらに2時間攪拌を続けることで、白金シードの存在下でAu(III)をAu(0)に完全に還元した。得られたコア-シェルPt@Auナノ粒子をメタノールでの析出、遠心分離、メタノールでの洗浄およびトルエン10ml中での再分散により精製した。コア-シェルPt@Auナノ粒子のTEMおよびHRTEM画像を図15に示す。
【0101】
コア-シェル-シェルPt@Au@Ag2Sナノ粒子の合成およびコアから表面へのAuの拡散
トルエン中Ag(I)イオン5mlをトルエン中コア-シェルPt@Auオルガノゾル40μlと混合した。次に元素硫黄2mgを激しい攪拌下で加え、攪拌をさらに8時間続けた。次にトルエン中コア-シェル-シェルPt@Au@Ag2Sオルガノゾルを24時間エージングすることで、コアから表面へのAg2S中の金の拡散を完了した。
【0102】
4nm白金シードの存在下でのAg2Sナノ結晶の合成
トルエン中Ag(I)イオン5mlとトルエン中白金オルガノゾル40μlとを混合した。次に元素硫黄2mgを激しい攪拌下で加え、攪拌をさらに8時間続けた。TEMはコア-シェルPt@Ag2Sナノ結晶の形成を示さなかった(図16)。Ag2Sは既存のPtシード上では成長しないと考えられるが、代わりにコロイド中で別々のナノ粒子を形成した。
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナノ複合体およびそれらを作製する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
多機能性ナノ複合系の合成は大きな関心の対象である。特に、貴金属と半導体とからなるヘテロダイマーは種々の用途に非常に有用であると考えられる。半導体CdSeロッドの先端上でのAuチップの成長が最近報告された。CdSeドットおよびロッド上で金チップを成長させる方法も存在する。これらの構造について、成長機構はオストワルド熟成により説明された。有機媒体または水性媒体中の球状硫化鉛量子ドット(QD)上に金を不均一に堆積させることで生物学的用途に好適な材料を生成するアプローチも開発された。これらの戦略にもかかわらず、硫化金銀系などの特定の系において困難に直面した。
【発明の概要】
【0003】
発明の目的
上記の困難のうちの1つまたは複数を実質的に克服するかまたは少なくとも改善することが本発明の目的である。
【0004】
発明の概要
本発明の第1の局面では、
・銀塩を含む表面を有するナノ粒子と、
・該表面上にある金属金の少なくとも1つの領域と
を含むナノ複合粒子が提供される。
【0005】
以下の選択肢を個々にまたは任意の好適な組み合わせで第1の局面とあわせて使用することができる。
【0006】
ナノ粒子は本質的に銀塩からなり得る。ナノ粒子はコア-シェル構造を有し得る(すなわち、コアと該コアを取り囲むシェルとを含み得る)ものであり、シェル(または1つより多いシェルを有するナノ粒子の場合は最外側のシェル)は本質的に銀塩からなる。
【0007】
銀塩は、その表面上での金属金の堆積を触媒することが可能であり得る。それは、金属金を生成するように、金塩(例えばAu(III)塩)の還元を触媒することが可能であり得る。それは銀カルコゲニドであり得る。カルコゲニドは硫化物、セレン化物またはテルル化物であり得る。銀塩は硫化銀であり得る。それはセレン化銀であり得る。それはテルル化銀であり得る。それはこれらのうち任意の2つ以上の混合物であり得る。
【0008】
ナノ粒子は実質的に球状であり得る。ナノ複合粒子は実質的に球状であり得る。
【0009】
金属金の領域はほぼ円形であり得る。金属金の領域は、または金属金の各領域は独立して、約1〜約8nmの直径を有し得る。
【0010】
一態様では、
・硫化銀を含む表面を有する実質的に球状のナノ粒子と、
・該表面上にある金属金のほぼ円形の領域と
を含むナノ複合粒子が提供される。
【0011】
別の態様では、
・コア-シェル構造を有する実質的に球状のナノ粒子であって、シェルが本質的に硫化銀からなるナノ粒子と、
・該シェル上の金属金のほぼ円形の領域と
を含むナノ複合粒子が提供される。
【0012】
本発明の第2の局面では、複数のナノ複合粒子を含むナノ複合材料が提供され、該複数のナノ複合粒子の各々は、第1の局面に記載のものである。
【0013】
ナノ複合材料は本質的に前記ナノ複合粒子からなり得る。ナノ複合粒子は約5〜約25nmの平均直径を有し得る。それらは実質的に単分散であり得る。それらは狭い粒径分布を有し得る。
【0014】
本発明の第3の局面では、
・金属金を含む表面を各々有する複数の前駆体ナノ粒子を提供する工程;
・金の上に銀塩の層を形成し、それによりコーティングナノ粒子を形成する工程; および
・各コーティングナノ粒子の金が銀塩の層を通じて該コーティングナノ粒子の表面に少なくとも部分的に拡散することを可能にし、該表面上に金属金の少なくとも1つの領域を形成するように、コーティングナノ粒子をエージングする工程
を含む、ナノ複合材料を作製するための方法が提供される。
【0015】
以下の選択肢を個々にまたは任意の好適な組み合わせで第3の局面とあわせて使用することができる。
【0016】
前駆体ナノ粒子は本質的に金属金からなり得る。前駆体ナノ粒子を提供する工程は、ナノ粒子を形成するように、Au(III)塩を還元剤に曝露する工程を含み得る。還元剤はホウ水素化物(borohydride)または何らかの他の還元剤であり得る。本方法はまた、金の上に銀塩の層を形成する工程の前に、金前駆体ナノ粒子を有機溶媒中へと移動させる工程を含んでいてもよい。
【0017】
前駆体ナノ粒子は、その表面上に金を有するコアを各々含み得る。コアは、金ではない材料を含み得る。前駆体ナノ粒子を提供する工程は、コアの表面上に金属金を堆積させるように、Au(III)およびアミンの存在下でコアを加熱することを含み得る。コアは、金属白金を、任意には微量の銀と合わせて含み得るか、または本質的にそれらからなり得る。本方法は、コアを生成するように、アミンおよび微量の銀の存在下でPt(acac)2を加熱する工程を含み得る。
【0018】
銀塩は硫化銀であり得る。硫化銀の層を形成する工程は、前駆体ナノ粒子をAg(I)および元素硫黄に曝露することを含み得る。曝露工程はアルキルアミンの存在下であり得る。それは有機溶媒中で行うことができる。
【0019】
エージング工程は、各コーティングナノ粒子の金が銀塩の層を通じて該コーティングナノ粒子の表面に拡散するのに十分な時間、コーティングナノ粒子を溶媒、例えば有機溶媒中に維持することを含み得る。
【0020】
前駆体ナノ粒子は約3〜約25nmの平均直径を有し得る。それらは実質的に単分散であり得る。それらは狭い粒径分布を有し得る。
【0021】
一態様では、
・複数の金前駆体ナノ粒子を形成するように、Au(III)塩を還元剤で還元する工程;
・金前駆体ナノ粒子を有機溶媒中に移動させる工程;
・金の上に硫化銀の層を形成し、それによりコーティングナノ粒子を形成する工程; および
・各コーティングナノ粒子の金が硫化銀の層を通じて該コーティングナノ粒子の表面に少なくとも部分的に拡散することを可能にし、該表面上に金属金の少なくとも1つの領域を形成するように、コーティングナノ粒子をエージングする工程
を含む、ナノ複合材料を作製するための方法が提供される。
【0022】
別の態様では、
・コアの表面上に金属金を堆積させるように、Au(III)およびアミンの存在下で複数の白金コアを加熱し、それにより、金属金を含む表面を各々有する複数のコア-シェル前駆体ナノ粒子を生成する工程;
・金の上に硫化銀の層を形成し、それによりコーティングナノ粒子を形成する工程; および
・各コーティングナノ粒子の金が硫化銀の層を通じて該コーティングナノ粒子の表面に少なくとも部分的に拡散することを可能にし、該表面上に金属金の少なくとも1つの領域を形成するように、コーティングナノ粒子をエージングする工程
を含む、ナノ複合材料を作製するための方法が提供される。
【0023】
別の態様では、
・複数のコアを生成するように、アミンおよび微量の銀の存在下でPt(acac)2を加熱する工程;
・コアの表面上に金属金を堆積させるように、Au(III)およびアミンの存在下でコアを加熱し、それにより、金属金を含む表面を各々有する複数のコア-シェル前駆体ナノ粒子を生成する工程;
・金の上に硫化銀の層を形成し、それによりコーティングナノ粒子を形成する工程; および
・各コーティングナノ粒子の金が硫化銀の層を通じて該コーティングナノ粒子の表面に少なくとも部分的に拡散することを可能にし、該表面上に金属金の少なくとも1つの領域を形成するように、コーティングナノ粒子をエージングする工程
を含む、ナノ複合材料を作製するための方法が提供される。
【0024】
本発明の第4の局面では、
・銀塩を含む表面を各々有する複数のナノ粒子を提供する工程; および
・該ナノ粒子の表面上に金属金を堆積させる工程
を含む、ナノ複合材料を作製するための方法が提供される。
【0025】
以下の選択肢を個々にまたは任意の好適な組み合わせで第4の局面とあわせて使用することができる。
【0026】
銀塩は硫化銀であり得る。ナノ粒子を提供する工程は、ナノ粒子を形成するように、Ag(I)塩と元素硫黄とを反応させることを含み得る。曝露はアミンの存在下であり得る。ナノ粒子は有機溶媒中に提供することができる。それらは有機溶媒中で生成することができる。
【0027】
金属金を堆積させる工程はアミンの存在下でナノ粒子をAu(III)の溶液に曝露することを含み得る。この工程は有機溶媒中で行うことができる。
【0028】
一態様では、
・硫化銀を含む表面を各々有する複数のナノ粒子を形成するように、Ag(I)塩と元素硫黄とを反応させる工程; および
・該ナノ粒子の表面上に金属金を堆積させるように、アミンの存在下でナノ粒子をAu(III)の溶液に曝露する工程
を含む、ナノ複合材料を作製するための方法が提供される。
【0029】
本発明はまた、本発明の第3または第4のいずれかの局面に記載の方法により作製されるナノ複合材料を提供する。
【0030】
本発明の第5の局面では、第1の局面に記載のナノ複合粒子を含むナノ複合材料、または第2の局面に記載のナノ複合材料、または第3もしくは第4の局面に記載の方法により作製されるナノ複合材料の、触媒としての、または光学装置もしくは電子装置を作製するための使用が提供される。
【0031】
本発明の第6の局面では、
・銀塩およびアルキルアミンを含む水溶液を提供する工程;
・銀塩を有機溶媒中に抽出して、銀イオンを含む有機溶液を形成する工程; ならびに
・有機溶液中の銀イオンを銀化合物のナノ粒子として析出させる工程
を含む、銀化合物のナノ粒子を生成するための方法が提供される。
【0032】
以下の選択肢を個々にまたは任意の好適な組み合わせで第6の局面とあわせて使用することができる。
【0033】
水溶液はアルコールを含み得る。それは水混和性アルコール、例えばエタノールを含み得る。水溶液を提供する工程は、銀塩の水溶液とアルキルアミンのアルコール溶液とを組み合わせることを含み得る。
【0034】
アルキルアミンは一級アルキルアミンであり得る。それは長鎖アルキルアミンであり得る。それはC8〜C18アルキルアミン、例えばドデシルアミンであってもよく、またはC8〜C18アルキルアミンの混合物であってもよい。
【0035】
銀塩は硝酸銀であり得る。
【0036】
有機溶媒は水との低い混和性を有し得る。それは炭化水素溶媒であり得る。それは芳香族溶媒であり得る。それは例えばベンゼン、トルエン、またはキシレンであり得る。それは個々の溶媒の混合物であり得る。
【0037】
銀化合物は硫化銀であり得る。この場合、析出工程は、有機溶液を元素硫黄に曝露することを含み得る。これは有機溶液と硫黄の有機溶液とを組み合わせることを含み得る。硫黄の有機溶液の溶媒は、有機溶液の有機溶媒と混和性があり得る。それは有機溶液の有機溶媒と同一でもよく、異なっていてもよい。
【0038】
銀化合物は懸濁液または分散液として析出し得る。分散液または懸濁液は安定であり得る。
【0039】
本方法は室温で行うことができる。それは約15〜約25℃で行うことができる。
【0040】
抽出工程により、水溶液からの銀イオンの少なくとも約95%の移動が生じ得る。
【図面の簡単な説明】
【0041】
本発明の好ましい態様を、以下に記載する通りの添付の図面を参照して、例示のみを目的としてここで説明する。
【図1】Ag2Sナノ結晶の(a,b) TEM画像、(c) HRTEM画像、および(d) SAEDパターンを示す。
【図2】Au/Ag2S不均一ナノ構造の(a) TEM画像および(b) HRTEM画像、Ag2S-Auシェル-コアナノ粒子(Ag2S:Auモル比 = 2:1)の(c) TEM画像および(d) HRTEM画像、Ag2S-Auシェル-コアナノ粒子(Ag2S:Auモル比各1:2および1:1)の(e,f) TEM画像、108時間のエージング後のAg2S-Auシェル-コアナノ粒子(Ag2S:Auモル比 = 2:1)の(g) TEM画像および(h) HRTEM画像を示す。
【図3】Ag2S、Au、およびAg2S対Auの異なるモル比を有するコア-シェルAu@Ag2Sナノ結晶の紫外可視スペクトルを示す。
【図4】硫化銀/金ナノ複合体の形成の図表示である。
【図5】調製された状態のAg2Sナノ結晶のXRDパターンを示す。
【図6】水からトルエンに移動された13nm Auナノ粒子の(a) TEM (バー = 50nm)画像および(b) HRTEM (バー = 2nm)画像を示す。
【図7】Au/Ag2SヘテロダイマーのEDX分析を示す。
【図8】Au/Ag2SヘテロダイマーのXPSスペクトルを示す。
【図9】コア-シェルAu@Ag2Sナノ結晶のコアから表面へのAuの拡散を図示する。72時間のエージングの(a,b)前および(c,d)後のAu@Ag2Sナノ結晶の(a,c)TEM画像および(b,d) HRTEM画像。
【図10】Ag2S中のAuの拡散に基づく半導体-金属ナノ複合体の合成の模式図である。
【図11】(a,b)コア-シェル-シェルPt@Au@Ag2Sナノ粒子および(c,d)Ag2S中のAuの表面への拡散により得られたPt@Ag2S-Auナノ複合体の(a,c) TEM画像および(b,d) HRTEM画像を示す。
【図12】Ag2S中のAuの拡散中に観察されたオストワルド熟成を図示する。Auは最初にAg2S中で全方向に均一に拡散するが、次にオストワルド熟成が理由でAg2S表面上で成長するナノ結晶として発達する。
【図13】水からトルエンに移動された5nm Auシードの(a) TEM画像および(b) HRTEM画像を示す。
【図14】オレイルアミン中で合成された4nm Ptナノ粒子の(a) TEM画像および(b) HRTEM画像を示す。
【図15】シード媒介成長法によりオレイルアミン中で合成されたコア-シェルPt@Auナノ粒子の(a) TEM画像および(b) HRTEM画像を示す。
【図16】Ptシード(より暗色の影)の存在下で合成されたAg2Sナノ結晶(灰色の色調)のTEM画像を示す。Ag2Sは既存のPtシード上では成長しないが、代わりにコロイド中で別々の粒子を形成する。
【図17】Pt@Ag2S-Auナノ複合体のコア中および表面上のそれぞれのPtおよびAuの局限(confinement)を示すSTEM分析を示す。
【発明を実施するための形態】
【0042】
発明の詳細な説明
本明細書において、A@Bという用語法は、コアが本質的にAからなりかつシェルが本質的にBからなる、コア-シェル構造を示す。したがって、A@B@Cという用語法は、本質的にAからなるコアが本質的にBからなるシェルに取り囲まれ、このシェルが本質的にCからなるさらなるシェルに取り囲まれる、コア-シェル-シェル構造を示す。
【0043】
本発明は、銀塩を含む表面を有するナノ粒子と、該表面上にある金属金の少なくとも1つの領域とを含む、ナノ複合粒子を提供する。ナノ粒子およびナノ複合粒子は約5〜約25nmまたは約5〜20、5〜15、10〜25、15〜25もしくは10〜20nm、例えば約5、10、15、20もしくは25nmの直径を各々独立して有し得るものであり、但し、ナノ粒子の直径はナノ複合粒子のそれと等しいかまたはそれ未満である。ナノ粒子およびナノ複合粒子は独立して球状、ほぼ球状、扁球状、卵形状、多面体状または何らかの他の形状であり得る。金属金の領域が1つ存在してもよく、または2つ以上のそのような領域、例えば2つ、3つ、4つもしくは5つの領域が存在してもよい。この領域は、または各領域は独立して、円形、楕円形、多角形もしくは不規則形または何らかの他の形状であり得る。それは(それらは独立して)直径約1〜約8nmまたは直径約1〜5、1〜3、3〜8、5〜8もしくは2〜6nm、例えば約1、2、3、4、5、6、7もしくは8nmであり得る。その領域または各領域の直径はナノ粒子のそれより小さくあるべきである。いくつかの態様では、ナノ粒子は金で完全にコーティングされており(すなわち、ナノ複合粒子の表面全体が金からなる)、一方、他の粒子では、ナノ複合粒子は銀塩を含むその表面の領域を有する(すなわち、ナノ複合粒子の表面の一部のみが金からなる)。金の領域の厚さは約2nm未満または1、0.5もしくは0.2nm未満であり得るか、あるいは約0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、1.5または2nmの厚さであり得る。それは約1〜20個の原子の厚さまたは1〜10個、1〜5個、5〜20個、10〜20個もしくは5〜10個の原子の厚さ、例えば約1、2、5、10、15もしくは20個の原子の厚さであり得るか、あるいは20個を超える原子の厚さ、例えば約25、30、35、40、45もしくは50個の原子の厚さであり得る。金は少なくとも約90%純粋(モル基準)または少なくとも約95、99、99.5もしくは99.9%純粋であり得る。
【0044】
いくつかの態様では、ナノ粒子は本質的に銀塩からなる。銀塩はモル基準で少なくとも約90%純粋または少なくとも約95もしくは99%純粋であり得る。それは本質的に銀塩の混合物からなり得るものであり、この場合、モル基準で混合物の金属含有量の少なくとも約90%(または少なくとも約95もしくは99%)が銀であり得る。銀塩は低いまたは無視できる水溶性を有し得る。それは有機溶媒中での、特にそれを作製する上でまたはナノ複合粒子を作製するためにそれを使用する上で使用される有機溶媒(例えばトルエン)中での、低いまたは無視できる溶解性を有し得る。
【0045】
いくつかの態様では、ナノ粒子はコア-シェル構造を有する。この場合、シェルは本質的に銀塩からなり得るかまたはそれを含み得る。コアは約1〜約10nmまたは約1〜5、5〜10、2〜10、2〜5もしくは3〜5nm、例えば約1、2、3、4、5、6、7、8、9もしくは10nmの直径を有し得る。それは、金属白金もしくは金属パラジウムまたはこれらの混合物を含み得るか、または本質的にそれらからなり得る。したがって、ナノ粒子はPt@Ag2Sナノ粒子であり得る。複数のコア(本明細書に記載のナノ複合材料を作製するために使用)は、粒径について先に記載の平均粒径を有し得る。コアは狭い粒径分布を有し得る。それらは実質的に単分散であり得る。コアシェル粒子のシェルは約1〜約10nmの厚さまたは約1〜5、1〜2、2〜10、5〜10、2〜8もしくは2〜5nm、例えば約1、2、3、4、5、6、7、8、9もしくは10nmであり得る。複数のコアの場合、これらは平均値であり得る。
【0046】
本発明者らは、金属金(Au(0))が銀塩の層を通じてその表面に拡散可能であることを発見した。本発明者らは、先に記載のナノ複合粒子を含むナノ複合材料を作製するためにこの驚くべき現象を使用した。本方法は、複数の前駆体ナノ粒子の、金属金を含む表面上に、銀塩の層を形成する工程を含む。得られたコーティングナノ粒子のエージングは、金が銀塩の層を通じて該コーティングナノ粒子の表面に少なくとも部分的に拡散することを可能にし、該表面上に金属金の1つまたは複数の領域を形成する。本発明者らは、ナノ粒子の表面上にある金のより大きい領域がより小さい領域を犠牲にして経時的に成長し得るように、オストワルド熟成現象が生じることをさらに発見した。最終的に、これにより単一の金領域のみを表面上に有するナノ複合粒子を得ることができる。しかし、この最終状態に到達するこの成熟の前に、2つ以上の金領域が表面上に存在することがあり、これらは異なるサイズを有し得るかまたはほぼ同一のサイズを有し得る。ナノ複合材料中の異なるナノ複合粒子は、それらの表面上に、異なる数および/またはサイズの金領域を有し得る。
【0047】
ナノ複合材料を作製する上で使用する前駆体ナノ粒子は、約3〜約25nmまたは約3〜15、3〜10、3〜5、5〜25、5〜20、5〜15、10〜25、15〜25もしくは10〜20nm、例えば約3、4、5、6、7、8、9、10、15、20もしくは25nmの平均直径を有し得る。前駆体ナノ粒子の表面上に形成される銀塩の層は、約1〜約10nmの厚さまたは約1〜5、1〜2、2〜10、5〜10、2〜8もしくは2〜5nm、例えば約1、2、3、4、5、6、7、8、9もしくは10nmであり得る。
【0048】
本方法で使用する前駆体ナノ粒子は本質的に金属金からなり得る。それらは少なくとも約90%純粋(モル基準)または少なくとも約95、99、99.5もしくは99.9%の純度を有し得る。あるいは、それらは金合金または何らかの他の金含有混合物を含み得る。本方法における使用のための好適な金前駆体ナノ粒子は、前駆体ナノ粒子を形成するように、Au(III)塩を還元剤で還元することにより作製することができる。これは水性媒体中で行うことができ、この場合、還元剤はホウ水素化物などの水相溶性還元剤であるべきである。この場合でも、Au(III)塩は水溶性であるべきである。それは例えばAuCl3であり得る。金前駆体ナノ粒子用の安定化剤も存在し得る。好適な安定化剤としてはクエン酸塩、PVP(ポリビニルピロリドン)または界面活性剤が挙げられる。好適な界面活性剤はTriton X-100 (t-オクチルフェノキシポリエトキシエタノール)などの非イオン性界面活性剤であり得る。
【0049】
一般に、安定化剤は、表面上に吸着することにより、静電相互作用によるナノ粒子の凝集を防止または阻害するようにして、ナノ粒子を安定化させる。金前駆体ナノ粒子を水性媒体中で生成する場合、本方法は、金の上に銀塩の層を形成する工程の前に、金前駆体ナノ粒子を有機溶媒中に移動させる工程を含んでいてもよい。移動は、金前駆体ナノ粒子を含有する水性混合物と、移動剤(transfer agent)を含有する水混和性有機溶媒とを混合することを包含し得る。移動剤はアルキルアミンを含み得る。水混和性有機溶媒は、好適にはエタノールもしくはメタノールなどの短鎖アルコール、またはアセトンなどの他の極性溶媒であり得る。アルキルアミンは長鎖アルキルアミンであり得る。それは一級アミンであり得る。アミン上のアルキル基は約C6〜約C20または約C6〜C12、C12〜C20、C12〜C16、C8〜C14もしくはC10〜C14、例えばC6、C7、C8、C9、C10、C11、C12、C13、C14、C15、C16、C17、C18、C19もしくはC20であり得る。アルキル基は直鎖であり得る。それは飽和であり得る。それは不飽和であり得る。それは1つまたは複数の二重結合および/または三重結合を含み得る(すなわち、それはアルケニル基またはアルキニル基もしくはアルケニニル基であり得る)。それはそのようなアルキルアミンの混合物であり得る。アミンは二級アミンもしくは三級アミンであり得るか、または四級アンモニウム塩であり得る。アミン(またはアンモニウム塩)は、ナノ粒子に結合する(またはそれと会合する)ことが可能なアミン基と、非極性溶媒中での粒子の分散を容易にする非極性尾部とを有するべきである。したがって、二級アミンもしくは三級アミンまたはアンモニウム塩上のアルキル基は、各々独立して先に記載の通りであり得る。先に記載のアミンおよび/またはアンモニウム塩の混合物を使用することができる。代替の移動剤はジカリウムビス(p-スルホナトフェニル)フェニルホスファン二水和物(BSPP)を含む。得られる水性/有機混合物を好適な有機抽出剤により抽出することにより、金前駆体ナノ粒子は有機抽出剤に移動する。有機抽出剤は低極性または非極性有機溶媒であり得る。それはベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族溶媒であり得る。それはこれらのうちの1つまたは複数を含む溶媒の混合物であり得る。
【0050】
先に記載の金前駆体ナノ粒子の代わりに、シェルが金を含むコア-シェル前駆体ナノ粒子を使用することができる。この選択肢では、前駆体ナノ粒子は、その表面上に金を有するコアを各々含む。したがって、コアは、金ではない材料を含み得る。それは白金もしくはパラジウムまたはこれらの混合物を例えば含み得る。コアを作製するための好適な方法は、金属の塩または錯体を還元する工程を含む。先に記したように、コアに好適な金属は白金である。この場合、金属コアの前駆体はPt(acac)2であり得る。アミンの存在下で(任意にさらなる溶媒の非存在下で)加熱することで、これをナノサイズコアの形態のナノ粒子状白金金属に還元することができる。所望の球状コアを生成するために、微量の銀塩を一般に加える。好適なアミンは、金前駆体ナノ粒子の合成において先に記載の通りである。反応は不活性雰囲気、例えばヘリウム、ネオン、アルゴン、窒素またはこれらの混合物下で行うことが好ましい。好適な温度は約120〜200℃または約140〜200、160〜200、120〜160もしくは140〜180℃、例えば約120、130、140、150、160、170、180、190もしくは200℃である。コアが形成された後で、コア-シェル前駆体ナノ粒子を形成するために、金のシェルをコアの表面上に堆積させることができる。コアを分離または精製せずにこれを行うことができる。したがって、先に記載の白金の例では、コア上に金シェルを形成するように、アミン中の白金コアを金化合物で処理することができ、それによりコア-シェル前駆体ナノ粒子Pt@Auを形成する。アミンは、金化合物を金属金(Au(0))に変換(還元)するのに十分であり得る。金化合物は、金(III)塩、例えばAuCl3またはAuBr3などの金塩であり得る。好適には、コアの形成について先に記載の不活性雰囲気下で反応を行う。シェルを形成するためのコア上での金の堆積に好適な反応温度は、約80〜120℃または約80〜100、100〜120もしくは90〜110℃、例えば約80、85、90、95、100、105、110、115もしくは120℃である。したがって、コアの形成後に、反応混合物を所望のシェル形成温度に、混合物全体に同一雰囲気を維持しながら冷却して、金化合物を加えることができる。いったん形成すれば、コア-シェル前駆体ナノ粒子は精製することができる。これは例えば析出、洗浄、遠心分離または他の好適な技術のうちの1つまたは複数を含み得る。次にそれらをさらなる加工のために有機溶媒に懸濁させることができる。有機溶媒は低極性または非極性有機溶媒であり得る。それはベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族溶媒であり得る。それはこれらのうちの1つまたは複数を含む溶媒の混合物であり得る。
【0051】
本方法は次に銀塩の層を前駆体ナノ粒子の表面上に形成することを含み得る。これは、溶液中の銀イオンを、反応媒体(一般的にトルエンなどの有機溶媒である)にそれらが実質的に不溶性である形態に変換することを含み得る。したがってそれは、反応媒体に不溶性である不溶性銀塩の層を前駆体ナノ粒子の表面上に形成することを含み得る。それは不溶性銀塩の層を前駆体ナノ粒子の表面上に析出させることを含み得る。例示的な態様では、銀塩は硫化銀である。硫化銀の層を形成する工程は前駆体ナノ粒子をAg(I)および元素硫黄に曝露することを含み得る。これは、先に記載の低極性溶媒などの有機溶媒中で好都合に行われる。先に記載のように、前駆体ナノ粒子を有機溶媒中に移動させることが必要なことがある。この場合、Ag(I)を有機溶媒(任意には、前駆体ナノ粒子がその中に提供されるものと同一の有機溶媒)中に提供することも必要である。これは、有機溶媒中への金前駆体ナノ粒子の移動について先に記載したものと同様の様式で達成することができる。したがって、Ag(I)水溶液を水混和性有機溶媒(例えばエタノール)およびアミン(以前に記載の通り)と混合することができる。次に、得られた溶液は、Ag(I)の抽出剤溶液(すなわち有機Ag(I)溶液)を提供するように、有機抽出剤で抽出することができる。好ましくは、有機抽出剤は、金前駆体ナノ粒子がその中に提供される有機溶媒と同一であるかまたは少なくともそれと混和性があるべきである。有機溶媒中の金前駆体ナノ粒子を有機Ag(I)溶液と組み合わせて、かつ得られた混合物を元素硫黄により処理することによって、Ag(I)をAg2Sに変換し、これを前駆体ナノ粒子上の層として形成して、コーティングナノ粒子を発生させるようにする。Ag(I)および/または金前駆体ナノ粒子の有機媒体中に対する移動の結果として存在するアミンが元素硫黄をS2-に還元するかまたはその還元を触媒することができ、次にS2-をAg(I)イオンと組み合わせることでAg2Sを形成することができると考えられる。すべての試薬の互いに対する曝露を確実にし、かつ層形成を阻害する凝集を防止するために、激しく攪拌しながら反応を行うことが好ましい。層形成は室温で、あるいは何らかの他の好適な温度、例えば約0〜約100℃または約0〜50、0〜25、0〜10、10〜100、20〜100、50〜100、15〜50、15〜30もしくは20〜25℃、例えば約0、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95もしくは100℃で行うことができる。温度に部分的に依存しかつ形成される層の厚さに部分的に依存して、それは約2〜約12時間または約2〜8、2〜4、4〜12、6〜12もしくは6〜10時間、例えば約2、3、4、5、6、7、8、9、10、11もしくは12時間を要し得る。
【0052】
先に記載のように、得られたコーティングナノ粒子のエージングは、ナノ複合粒子を形成するべく、金属金が銀化合物を通じて拡散または移動することを可能にし得る。エージング工程は、各コーティングナノ粒子の金が銀塩の層を通じて該コーティングナノ粒子の表面に拡散するのに十分な時間、コーティングナノ粒子を溶媒中に維持することを単に含み得る。これは約6〜約48時間または約6〜24、6〜12、12〜48、24〜48、12〜36もしくは18〜30時間、例えば約6、12、18、24、30、36、42もしくは48時間を要し得る。時間は、コーティングナノ粒子中の金の上の銀化合物の層の厚さに依存し得るものであり、エージングの温度にも依存し得る。エージングは室温で、あるいは何らかの他の好適な温度、例えば約0〜約100℃または約0〜50、0〜25、0〜10、10〜100、20〜100、50〜100、15〜50、15〜30もしくは20〜25℃、例えば約0、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95もしくは100℃で行うことができる。
【0053】
ナノ複合粒子を作製するための第2の方法は、それらの表面上に銀塩を有するナノ粒子上に金属金を直接堆積させる工程を包含する。好適な銀塩はやはり硫化銀である。ナノ粒子は、Ag(I)塩と元素硫黄とを反応させることでナノ粒子を形成することにより作製することができる。Ag2Sナノ粒子を作製するための方法は、金前駆体ナノ粒子の表面上での硫化銀の層の堆積について先に記載の方法と同様であり得るが、この場合では金前駆体ナノ粒子を省略する。したがって、水混和性有機溶媒およびアミンを有するAg(I)水溶液を有機抽出剤中に抽出し、得られた有機Ag(I)溶液を元素硫黄で処理する。条件は本明細書の他の箇所に記載の通りである。ナノ粒子は銀塩を含み得るかまたは本質的にそれからなり得る。あるいは、それらは銀塩ではないコアを、コアを取り囲む銀塩のシェルと共に含み得る。白金コアの表面上での硫化銀の層の堆積(先に記載のコア上での金の堆積と同様の)が、白金コアの存在下での硫黄と銀(I)との反応により実現されない可能性があるということに留意すべきである。
【0054】
銀塩表面を有するナノ粒子上に金属金を堆積させる工程は、アミンの存在下でナノ粒子をAu(III)の溶液に曝露することを含み得る。前の反応と同様に、これを有機媒体中で行うことが好ましい。したがって、Ag(I)および金前駆体ナノ粒子の移動について先に記載のものと同様の様式で、Au(III)を有機抽出剤中に移動させる可能性がある。有機Au(III)溶液およびナノ粒子を有機溶媒中で単に組み合わせることで、ナノ粒子表面上に金属金が形成され、ナノ複合粒子が直接得られる。アミン(先に詳細に説明)は、ナノ粒子表面上に金属金を形成するように、Au(III)をAu(0)に還元するかまたはその還元を触媒するのに十分であると考えられる。反応は室温で、あるいは何らかの他の好適な温度、例えば約0〜約100℃または約0〜50、0〜25、0〜10、10〜100、20〜100、50〜100、15〜50、15〜30もしくは20〜25℃、例えば約0、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95もしくは100℃で行うことができる。それは約0.5〜約2時間または約0.5〜1、1〜2もしくは0.7〜1.5時間、例えば約30もしくは45分間または約1、1.25、1.5、1.75もしくは2時間を要し得る。時間は、使用される温度に部分的に依存し得る。ナノ粒子の表面上の銀塩が金(III)のアミン還元を触媒することでナノ粒子表面上に優先的に金を形成することができると考えられる。
【0055】
本明細書に記載のナノ複合材料は、触媒としての、または光学装置もしくは電子装置を作製するための用途を見出すことができる。
【0056】
ナノ複合材料を三成分カップリング反応における触媒として試験し、これらは優れた触媒活性を示した。代表的な反応を以下に示す。
【0057】
また、Ag2Sシェルを使用してナノ粒子状の金の光学特性を調節することができる。したがって、本明細書に記載のナノ複合材料を光学装置または電子装置に使用することができる。
【0058】
本発明はまた、銀化合物のナノ粒子を生成するための方法を提供する。特に、本方法は有機媒体における銀化合物の懸濁液または分散液を提供する。本方法では、銀塩およびアルキルアミンを含む水溶液を有機溶媒で抽出することで、銀塩を有機溶媒に移動させる。得られた有機溶液は銀イオンを含有しており、次に銀イオンを有機溶液中で銀化合物のナノ粒子として析出させる。
【0059】
水溶液はアルコールまたは何らかの他の水混和性有機溶媒、例えば水混和性アルコールを含み得る。好適な例としてはメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、アセトンおよびテトラヒドロフランが挙げられる。したがって、銀塩の水溶液をアルキルアミンおよびアルコールと組み合わせて、本方法で使用する水溶液を提供することができる。
【0060】
アルキルアミンは一級アルキルアミンであり得る。それは長鎖アルキルアミンであり得る。それはC8〜C18アルキルアミン、例えばドデシルアミンであってもよく、またはC8〜C18アルキルアミンの混合物であってもよい。好適なアミンは、金粒子を有機媒体に移動させる際に使用するものと同一であり、本明細書において先に記載されている。
【0061】
銀塩は任意の水溶性銀塩であり得る。それは銀(I)塩であり得る。それは硝酸銀であり得るか、またはそれはフッ化銀であり得るか、またはそれは酢酸銀であり得るか、またはそれは可溶性銀塩の混合物であり得る。
【0062】
有機溶媒は水との低い混和性を有し得る。それは炭化水素溶媒であり得る。それは芳香族溶媒であり得る。それは例えばベンゼン、トルエンまたはキシレンであり得る。それはこれらのうち任意の2つ以上の混合物であってもよく、またはそれはこれらのうちの任意の1つと、何らかの他の溶媒、例えば低い水混和性を有する1つもしくは複数の他の溶媒との混合物であってもよい。水性媒体から有機媒体への銀イオンの移動はアルキルアミンの存在により容易にすることができる。したがって、アミンは銀イオンと会合し得るものであり、アミンの疎水性尾部は、得られた銀イオン-アミン会合物(association)が有機溶媒へと移動するのを容易にすることができる。有機溶液中のアルコールなどの有機溶媒の存在は、抽出前の水溶液中のアミン(またはアミン-銀イオン会合物)の溶解を容易にすることができる。水性媒体から有機媒体への銀の移動は効率的なものであり得る。それは少なくとも約90%効率的または少なくとも約95、96、97、98もしくは99%効率的であり得る。上記方法は、アミンと会合するかまたはそれと錯体を形成することが可能な種を水性媒体から有機媒体へと移動させる目的に、好都合に使用できるということは自明である。本明細書では、銀イオンおよび金ナノ粒子の移動の例が提示されているが、他の種も類似のプロトコールを使用して室温で移動させることができる。したがって、先に記載の抽出工程により、銀塩、特に水溶性銀塩の有機溶液が得られる。前記有機溶液中の銀はアミンと会合し得る。
【0063】
水、水混和性有機溶媒、および水との低い混和性を有する有機溶媒の比率は、上記方法の抽出工程中に水相と銀イオンの大部分を含有する非水相とが分離するようなものにすべきである。
【0064】
有機溶媒中の銀イオンより形成される銀化合物は、硫化銀であり得るか、または有機溶媒に実質的に不溶性である(任意には、水に実質的に不溶性でもある)何らかの他の銀塩(例えば銀(I)塩)であり得る。有機溶媒中の銀イオンと銀イオンを不溶性銀化合物に変換する好適な対イオンとの組み合わせにより、銀化合物を形成することができる。銀化合物が硫化銀である場合、析出工程は有機溶液を元素硫黄に曝露することを含み得る。この反応が硫黄の硫化物イオンへの還元により進行し、次に硫化物イオンが銀イオンと縮合することで硫化銀ナノ粒子を形成することができると考えられる。還元はアミンとの反応またはそれによる触媒作用を包含し得る。
【0065】
銀化合物は懸濁液または分散液として析出し得る。したがって、本方法により生成される銀化合物の粒子は、約3〜約25nmまたは約3〜15、3〜10、3〜5、5〜25、5〜20、5〜15、10〜25、15〜25もしくは10〜20nm、例えば約3、4、5、6、7、8、9、10、15、20もしくは25nmの平均直径を有し得る。
【0066】
本方法は室温で行うことができる。それは約15〜約25℃または約15〜20、20〜25もしくは18〜23℃、例えば約15、16、17、18、19、20、21、22、23、24もしくは25℃で行うことができる。いくつかの場合では、それは何らかの他の温度で行うことができる。
【0067】
本発明はまた、有機溶媒における銀化合物のナノ粒子の懸濁液または分散液を提供する。懸濁液または分散液は先に記載の方法で作製することができる。銀化合物および有機溶媒は先に記載の通りであり得る。懸濁液または分散液は安定であり得る。それは少なくとも約1日間または少なくとも約2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13もしくは14日間安定であり得る。粒子がその期間にわたって沈殿しないという点でそれは安定であり得る。
【0068】
特定の態様では、本開示はトルエン中でAg2Sナノ結晶(ナノ粒子)を合成する室温アプローチを記載する。このプロトコールは、最初にエタノールおよびドデシルアミンが媒介する方法を使用して水溶液からトルエン中にAg(I)イオンを移動させ、次にトルエン中室温で元素硫黄と反応させて、Ag2Sナノ結晶を形成することを包含した。次に、Ag2Sナノ結晶上での金の不均一な堆積を通じてまたはAuナノ結晶上でのAg2Sの均一な成長によって、金とAg2Sとの間でナノ複合体が形成された。後者のアプローチによりAg2S-Auシェル-コア構造が生成され、これは金ナノ結晶の表面プラズモン共鳴(SPR)の赤色シフトを誘導した。金シード(コア)を発生させるために、ジカリウムビス(p-スルホナトフェニル)フェニルホスファン二水和物(BSPP)を使用して水からトルエンに10nm超のAuナノ結晶を移動させた。本アプローチは、狭いサイズ分布を有するAg2Sナノ結晶の室温での合成を可能にする。Ag2Sナノ結晶上での金の不均一な堆積および金ナノ結晶上でのAg2Sの均一な成長を含む、水からトルエンにAg(I)イオンを移動させるために使用するプロトコールを、Ag2Sおよび金ナノ複合体を合成するために拡張することができる。後者はAg2S-Auシェル-コア構造を生成した。
【0069】
この技術は、Ag2Sナノ結晶およびそれらの金とのナノ複合体を調製する簡単かつ好都合な経路を提供する。得られた材料は光学用途、電子用途、エネルギー用途、触媒用途および生物学的用途について関心の対象となる。
【0070】
本開示はまた、新規Ag2S-Auヘテロダイマー(ナノ複合体)を生じさせる、コアシェルナノ粒子のコアから表面へのAg2Sを通じた金の拡散を記載する。この現象は、直接合成では得られない可能性がある複合半導体-金属ナノ複合体を合成するために使用可能である。具体的には、コア-シェル-シェルPt@Au@Ag2Sナノ粒子中でのAg2S中のAuの拡散に基づく、コア-シェルPt@Ag2SとAuナノ粒子との不均一ナノ複合体の合成が記載される。
【0071】
この合成では、金がナノ粒子のコアから表面に拡散することで、Ag2S-Auヘテロダイマーが生じる。Auのこの逆拡散も、直接合成では実現できない可能性がある複合半導体-金属ナノ複合体を合成するために使用可能である。
【0072】
この拡散プロセスは、半導体-金属ハイブリッドを合成するためのまたは半導体ナノ結晶中での金属ドーピングのための新規戦略を提供する。得られた材料は光学用途、電子用途、電気化学用途、エネルギー用途、触媒用途および生物学的用途について関心の対象となる。
【実施例】
【0073】
実施例1: ナノ結晶硫化銀およびその金とのナノ複合体の室温合成
本開示は、Ag2Sナノ結晶上での金の不均一な堆積および金ナノ結晶上でのAg2Sの均一な成長によって金とAg2Sとの間で形成されるナノ複合体を記載する。後者はシェル-コアAg2S-Auナノ構造を生成し、この構造はAuナノ結晶の表面プラズモン共鳴(SPR)の赤色シフトを誘導した。
【0074】
この実施例の実験ではすべての反応をトルエン中で行った。ナノ複合体の半導体成分(Ag2S)を合成するために、本発明者らは、エタノールおよびドデシルアミンが媒介する方法を使用した水からトルエンへのAg(I)イオンの移動、ならびにトルエン中での元素硫黄との反応を包含する容易な室温アプローチを開発した。このエタノール媒介方法は、ナノ複合体の形成のために水からトルエンにAu(III)イオンおよび金ナノ結晶を移動させるためにも使用した。
【0075】
透過型電子顕微鏡観察(TEM)は、硫化銀ナノ結晶が球状かつ単分散であり、平均サイズが約15nmであることを示した(図1a)。興味深いことに、これらのナノ結晶は、自己組織化六方晶上部構造(self-assembled hexagonal suprastructure)を形成する強力な傾向を有する。TEMグリッド上でナノ結晶の1層または2層の最密超格子を得ることは実現可能であった(図1aおよびb)。この室温アプローチ、および得られたナノ構造の自己組織化傾向は、化学、光学、磁気および電子ナノ装置用の新規上部構造の製作に有用であると考えられる。高分解能TEM (HRTEM)画像はこれらのナノ結晶中の格子面を図示し、これによりこれらの粒子が高い結晶性を有することを確認した(図1c)。選択領域電子線回折(SAED)パターンは、単斜晶Ag2Sの指標となり得る回折リングを示し(図1d)、これは試料のX線回折(XRD)パターン(図5)と一致していた。
【0076】
Ag2SおよびHAuCl4の混合物をトルエン中で1時間エージングした後、Au/Ag2Sヘテロダイマーが主要な生成物であるとわかった。さらなる還元剤は必要ではなかった。ドデシルアミンはAg2Sナノ結晶の存在下でAu(III)イオンを十分に還元することができた。単離Auナノ結晶は観察されなかった。このことは、実験条件下で貴金属が均一にではなく既存のAg2Sナノ結晶上で優先的に核形成することを示唆した。Ag2Sナノ結晶の非存在下で、ドデシルアミンによるAu(III)イオンの還元が数日を要することは注目に値した。このことは、還元プロセスがAg2S半導体の存在下で触媒されることを示唆した。金が強力な画像コントラストを有するため、不均一Au/Ag2Sハイブリッドが容易に同定される可能性がある(図2a)。大部分の場合、Auは各Ag2Sナノ結晶上の単一部位においてのみ堆積した。堆積した金ナノ結晶の直径は約3nmであった。エネルギー分散X線(EDX)分析およびX線光電子分光測定(XPS)(図7および8)により、不均一構造がAg2SおよびAuから構成されることを確認した。また、HRTEM画像は、Auの結晶面が各ヘテロダイマーナノ結晶中のAg2Sのそれと平行ではないことを明らかにした(図2b)。2つのナノ結晶間の角度はハイブリッド粒子毎に変動しており、このことは金の成長が異なる配向で起こることを示した。この結果は、CdSe-Auナノ複合体に関する報告と同様であったが、PbSの(200)結晶面が金の(111)結晶面と平行になるピーナツ形のPbS-Auナノ複合体に関する報告とは異なっていた。
【0077】
ナノ結晶合成の順序を逆転させる、すなわちAuナノ結晶の存在下でAg2Sナノ結晶を発生させる場合、Ag2Sは既存のAuナノ結晶上で均一に成長し、これによりAg2S-Auシェル-コア構造が得られた(図2c、Ag2S:Au = 2:1)。さらなる構造上の詳細は図2dのHRTEM画像により明らかになる。Au/Ag2Sヘテロダイマーの場合と同様、Auコアの結晶面はAg2S-Auナノ粒子中のAg2Sシェルのそれと平行ではなかった。
【0078】
Ag2Sシェルの厚さは、合成中にAg2S:Auモル比を変動させることで制御される可能性がある。図2eおよびfは、1:2および1:1のAg2S:Auモル比で合成したAg2S-Auシェル-コアナノ結晶を図示する。図2c、eおよびfの比較が示すようにAg2Sシェルの厚さが変動する可能性がある。
【0079】
Ag2S-Auシェル-コアナノ粒子は、Ag2Sシェルの存在にもかかわらずAuナノ結晶の光学特性を保持した(図3参照)。567nm、576nmおよび593nmでの吸収ピークは金コアの表面プラズモン共鳴(SPR)に起因した。純粋な金ナノ結晶に対するこれらのシェル-コアナノ結晶の金表面プラズモンバンドの大きい赤色シフトは、Ag2Sシェルの存在に起因する可能性がある。さらに、金コアのSPRピークはAg2Sシェルの厚さにより調節される可能性がある。
【0080】
金が粒子のコアから表面に拡散することでAu/Ag2Sヘテロダイマーが生じるという興味深い現象がAg2S-Auナノ粒子で注目された。図2gおよびhは、Ag2S-Auシェル-コアナノ粒子(Ag2S:Auモル比 = 2:1)が室温で108時間のエージング後にAu/Ag2Sヘテロダイマーとなったことを図示する。この現象は実施例2でさらに調査する。
【0081】
要するに、本発明者らはAg2Sナノ結晶およびそれらの金とのナノ複合体の室温合成を実証した。金は各Ag2Sシードナノ結晶上の単一部位においてのみ堆積される可能性がある。対照的に、Ag2SはAuシードナノ結晶上に均一に成長する可能性があり、これによりAuナノ結晶の光学特性を依然として有するシェル-コアAg2S-Auナノ粒子が得られる。この容易な合成は、興味深い構造と目的に合わせた機能性とを有する種々のナノ複合体の製作に向けて使用される可能性がある。ナノ複合体の形成を図4に図示する。
【0082】
実験
使用したすべての試薬はSigma-Aldrichより購入した。
【0083】
水からトルエンへの貴金属イオンの相移動
典型的な実験では、1mM金属塩水溶液(AgNO3またはHAuCl4) 50mLをドデシルアミン1mLを含有するエタノール50mLと混合した。3分間の攪拌後、トルエン50mLを加え、さらに1分間攪拌した。水相の色の完全な退色が示すように、水からトルエンへの金属イオンの相移動は速やかにかつ完全に生じた。水からのイオンの完全な移動が想定されるトルエン中の金属イオン濃度を1mMとした。トルエン中の金属イオンを水相より分離し、さらなる実験用に保持した。誘導結合プラズマ発光分光分析(ICP-AES)は、Ag(I)およびAu(III)イオンの移動効率が98%を超えることを示した。
【0084】
Ag2Sナノ結晶の合成
50mL平底フラスコ中のAg(I)イオンのトルエン溶液20mLに元素硫黄3mgを加えた。混合物を室温で3時間攪拌した。溶液は無色から暗褐色になり、これはAg2Sナノ粒子の形成を示した。調製された状態のAg2Sナノ結晶のXRDピーク(図5)は単斜晶Ag2S相の指標となる可能性がある。
【0085】
13nm Auナノ粒子の合成および相移動
13nmクエン酸安定化Auナノ粒子を確立された手順に従って調製した((a) Grabar, K. C; Freeman, R. G.; Hommer, M. B.; Natan, M. J. Anal. Chem. 1995, 67, 735-743. (b) Gearheart, L. A.; Ploehn, H. J.; Murphy, C. J. J. Phys. Chem. B 2001, 105, 12609-12615)。HAuCl4の攪拌水溶液(1mM、20mL)をシリコーンオイル浴中110℃で還流させた。40mMクエン酸三ナトリウム水溶液2mLを速やかに加えたところ、一連の色変化が生じ、その後赤色になった。混合物をさらに15分間還流させ、室温に冷却した。10nmより大きい金ナノ粒子の相移動用に、固体ジカリウムビス(p-スルホナトフェニル)フェニルホスファン二水和物(BSPP)50mgを金ヒドロゾルに加え、混合物を30分間エージングした。次に、Ag(I)およびAu(III)イオンの相移動に使用したアプローチに従って、金ナノ粒子を水からトルエンに移動させた。典型的には、BSPP安定化Auヒドロゾルを、ドデシルアミン0.4mLを含有するエタノール20mLと混合した。3分間の攪拌後、トルエン20mLを加え、さらに1分間攪拌した。ICP-AES分析は、この相移動効率が約100%であることを示した。相移動後のAuナノ粒子のTEMおよびHRTEM画像を図6に示す。
【0086】
不均一Au/Ag2Sハイブリッドの合成
Au/Ag2Sヘテロダイマーの調製用に、トルエン中Ag2Sオルガノゾル10mLをトルエン中Au(III)溶液10mLと混合した。混合物を1時間エージングして反応を完了させた。さらなる還元剤は必要ではなかった。ドデシルアミンはAg2Sの存在下でトルエン中のAu(III)イオンを有効に還元することができた。Au/Ag2SヘテロダイマーのEDX分析およびXPSを図7および図8にそれぞれ示す。
【0087】
シェル-コアAg2S-Auナノ粒子の合成
トルエン中Ag(I)イオン10mLとトルエン中13nm金オルガノゾル10mLとを混合した。次に元素硫黄2mgを激しい攪拌下で加え、攪拌をさらに8時間続けた。異なる体積のAg(I)イオンおよびAuオルガノゾルをトルエン中で混合することで、Ag2S:Auモル比を制御した。
【0088】
実施例2: Ag2Sナノ結晶中のAuのコアから表面への拡散に基づく複合半導体-金属ナノ複合体の合成
この試験では、金がナノ粒子のコアから表面に拡散することで、Ag2S-Auヘテロダイマーが生じる。金のこの逆拡散は、科学的な意義があるというだけではなく、直接合成では得られない可能性がある複合半導体-金属ナノ複合体の合成に使用される可能性もある。具体的には、この実施例は、Ag2Sナノ結晶中の金の拡散に基づく、コア-シェルPt@Ag2Sと金ナノ粒子との不均一ナノ複合体の合成を詳述する。透過型電子顕微鏡観察(TEM)によるナノ複合体の特徴づけ中にオストワルド熟成が観察された。これにより、Ag2Sナノ結晶中の金拡散の結果としての半導体-金属ヘテロ構造の形成の機構が解明された。
【0089】
コア-シェルAu@Ag2Sナノ結晶の合成はシード媒介成長法に従った。調製された状態のコア-シェルAu@Ag2Sナノ粒子のTEMおよび高分解能TEM (HRTEM)画像を図9(a)および(b)にそれぞれ示すものであり、それによりコア成分とシェル成分とを輝度コントラストで容易に識別することができる。コアから表面へのAg2S中のAuの拡散は72時間のエージング後に完了した(図9(c)および(d))。得られたAg2S-Auヘテロダイマーは出発コア-シェルAu@Ag2Sナノ結晶とは明らかに異なっていた。
【0090】
コアから表面へのAg2S中のAuの拡散の原動力は、過去に中空粒子の形成に使用されたカーケンドール効果の根底にあるそれと同様である可能性がある。比較的高い表面対体積比が理由で、コア-シェルAu@Ag2Sナノ結晶中のAuのコアから表面への拡散は、系がその化学ポテンシャルを低下させかつそのギブズ自由エネルギーを減少させるように実現される可能性がある。
【0091】
この拡散現象を採用することで、複合度のより高い半導体-金属ナノ複合体を合成する可能性がある。コア-シェルPt@Auナノ粒子を、シード媒介成長法を使用して調製し、次にAg2Sでコーティングした(図10参照)。次に金をAg2Sの表面に拡散させて、コア-シェルPt@Ag2SとAuナノ粒子との不均一ハイブリッドを得、Pt@Ag2S-Auと名付けた(図11参照)。コア-シェルPt@Ag2Sナノ粒子が直接合成されない可能性があるということに留意すべきである。Ag2Sナノ結晶をPtシードの存在下で溶液中で独立して形成した(図16)。
【0092】
コア-シェル-シェルPt@Au@Ag2SのTEMおよびHRTEM画像を図11aおよび11bにそれぞれ示す。24時間のエージング後、金属金を白金コアより分離し、Ag2Sシェルの表面に拡散させることで、Pt@Ag2S-Auナノ複合粒子が形成される。TEM画像(図11c)の輝度コントラストは、各ナノ複合体における3つの異なるドメインを示し、HRTEM画像(図11d)は、ナノ複合体の表面上の暗色パッチの格子配向がコア位置に位置するそれと異なることをさらに明らかにする。分析用走査TEM (STEM)試験(図17)は異なる領域における各成分の局限を示し、これにより表面上の暗色パッチおよびコア位置におけるそれが金および白金よりそれぞれ構成されることを確認する。
【0093】
ヘテロ構造化ナノ複合体の特徴づけ中にオストワルド熟成が観察された。オストワルド熟成とは、臨界サイズよりも大きい粒子が表面エネルギー項によるそれらの相対的安定化を理由としてより小さい粒子を犠牲にして成長するという現象のことである。図12は、20秒間にわたって撮影した4つのナノ複合体のTEM画像を示す。ナノ複合体の表面上の金パッチまたは金領域の発達が明らかに観察された。TEMにおいて観察された成熟は、電子線がプロセスに影響を与えた可能性があるため、溶液中の場合を正確に表していない可能性がある。しかし、この観察は、拡散プロセスにより粒子表面上での金の均一な分布が得られなかった理由を示唆した。最初に、金原子がAg2S内の全方向に拡散した可能性がある。しかし、次に金のナノ粒子がAg2S表面上に形成され、オストワルド熟成が理由で着実に成長した。
【0094】
要するに、コアから表面へのAg2S中の金の拡散を報告する。第1段階では、金原子がAg2S中でコアから表面に均一に拡散し得る。次に金領域がAg2Sの表面上でオストワルド熟成を理由として発達する。この拡散現象の適用として、コア-シェルPt@Ag2Sと金との複合ナノ複合体を合成する。この拡散プロセスは、半導体-金属ハイブリッドの合成および半導体ナノ結晶中での金属ドーピングのための新規戦略を提供する。
【0095】
実験
一般
使用したすべての試薬はSigma-Aldrichより購入した。
【0096】
水からトルエンへのAg(I)イオンの相移動
典型的な実験では、AgNO3水溶液(1mM) 50mlをドデシルアミン1mlを含有するエタノール50mlと混合した。3分間の攪拌後、トルエン50mLを加え、さらに1分間攪拌した。水からのイオンの完全な移動が想定されるトルエン中のAg(I)イオン濃度を1mMとした。トルエン中のAg(I)イオンを水相より分離し、さらなる実験用に保持した。誘導結合プラズマ発光分光分析(ICP-AES)は、Ag(I)イオンの移動効率が99%を超えることを示した。
【0097】
5nm Auシードナノ粒子の合成および相移動
HAuCl4のNaBH4還元により5nmクエン酸保護Auナノ粒子を調製した。最初に、HAuCl4水溶液(1mM) 20mlをクエン酸ナトリウム水溶液(40mM) 1.6mlと混合した。次に、NaBH4水溶液(100mM) 0.5mlを激しい攪拌下で滴下して赤色Auヒドロゾルを得た。24時間のエージング後に金ヒドロゾルを使用して残留NaBH4を分解した。Ag(I)イオンの相移動に使用したアプローチに従って、金ナノ粒子を水からトルエンに移動させた。典型的には、クエン酸安定化金ヒドロゾルを、ドデシルアミン0.4mlを含有するエタノール20mlと混合した。3分間の攪拌後、トルエン20mlを加え、さらに1分間攪拌した。ICP-AES分析は、相移動効率が約100%であることを示した。相移動後の金ナノ粒子のTEMおよびHRTEM画像を図13に示す。
【0098】
コア-シェルAu@Ag2Sナノ結晶の合成およびAg2S中の金の拡散
トルエン中Ag(I)イオン10mlをトルエン中5nm金オルガノゾル4mlと混合した。次に元素硫黄2mgを激しい攪拌下で加え、攪拌をさらに8時間続けた。次にトルエン中コア-シェルAu@Ag2Sオルガノゾルを72時間エージングすることで、コアから表面へのAg2S中の金の拡散を完了した。
【0099】
4nm Ptシードおよびコア-シェルPt@Auナノ粒子の合成
Pt(acac)2 60mgおよびAgNO3 5mgをオレイルアミン20mlに加えた。微量の銀を使用して球状白金シードを形成した。銀の非存在下では白金ナノテトラポッドが代わりに得られると考えられる。混合物をアルゴン流および攪拌下160℃で3時間加熱した。次にオレイルアミン中白金シード(コア)10mlをメタノールでの析出、遠心分離、メタノールでの洗浄およびトルエン10ml中での再分散により精製した。白金シードのTEMおよびHRTEM画像を図14に示す。
【0100】
次に別のオレイルアミン中白金シード10mlの温度を100℃に低下させ、AuCl3 100mgを加えた。アルゴン流下100℃でさらに2時間攪拌を続けることで、白金シードの存在下でAu(III)をAu(0)に完全に還元した。得られたコア-シェルPt@Auナノ粒子をメタノールでの析出、遠心分離、メタノールでの洗浄およびトルエン10ml中での再分散により精製した。コア-シェルPt@Auナノ粒子のTEMおよびHRTEM画像を図15に示す。
【0101】
コア-シェル-シェルPt@Au@Ag2Sナノ粒子の合成およびコアから表面へのAuの拡散
トルエン中Ag(I)イオン5mlをトルエン中コア-シェルPt@Auオルガノゾル40μlと混合した。次に元素硫黄2mgを激しい攪拌下で加え、攪拌をさらに8時間続けた。次にトルエン中コア-シェル-シェルPt@Au@Ag2Sオルガノゾルを24時間エージングすることで、コアから表面へのAg2S中の金の拡散を完了した。
【0102】
4nm白金シードの存在下でのAg2Sナノ結晶の合成
トルエン中Ag(I)イオン5mlとトルエン中白金オルガノゾル40μlとを混合した。次に元素硫黄2mgを激しい攪拌下で加え、攪拌をさらに8時間続けた。TEMはコア-シェルPt@Ag2Sナノ結晶の形成を示さなかった(図16)。Ag2Sは既存のPtシード上では成長しないと考えられるが、代わりにコロイド中で別々のナノ粒子を形成した。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
・銀塩を含む表面を有するナノ粒子と、
・該表面上にある金属金の少なくとも1つの領域と
を含むナノ複合粒子。
【請求項2】
ナノ粒子が本質的に銀塩からなる、請求項1記載のナノ複合粒子。
【請求項3】
ナノ粒子がコア-シェル構造を有し、シェルが本質的に銀塩からなる、請求項1記載のナノ複合粒子。
【請求項4】
銀塩が硫化銀である、請求項1〜3のいずれか一項記載のナノ複合粒子。
【請求項5】
ナノ粒子が実質的に球状である、請求項1〜4のいずれか一項記載のナノ複合粒子。
【請求項6】
金属金の領域がほぼ円形である、請求項1〜5のいずれか一項記載のナノ複合粒子。
【請求項7】
金属金の領域が約1〜約8nmの直径を有するか、または金属金の各領域が独立して約1〜約8nmの直径を有する、請求項1〜6のいずれか一項記載のナノ複合粒子。
【請求項8】
複数のナノ複合粒子を含むナノ複合材料であって、
該ナノ複合粒子の各々が、請求項1〜7のいずれか一項記載のものであり、かつ該ナノ複合粒子が、約5〜約25nmの平均直径を有する、
ナノ複合材料。
【請求項9】
ナノ複合粒子が実質的に単分散である、請求項8記載のナノ複合材料。
【請求項10】
・金属金を含む表面を各々有する複数の前駆体ナノ粒子を提供する工程;
・金の上に銀塩の層を形成し、それによりコーティングナノ粒子を形成する工程; および
・各コーティングナノ粒子の金が銀塩の層を通じて該コーティングナノ粒子の表面に少なくとも部分的に拡散することを可能にし、該表面上に金属金の少なくとも1つの領域を形成するように、コーティングナノ粒子をエージングする工程
を含む、ナノ複合材料を作製するための方法。
【請求項11】
前駆体ナノ粒子が本質的に金属金からなる、請求項10記載の方法。
【請求項12】
前駆体ナノ粒子を提供する工程が、前駆体ナノ粒子を形成するように、Au(III)塩を還元剤に曝露することを含む、請求項11記載の方法。
【請求項13】
前駆体ナノ粒子が、金をその表面上に有するコアを各々含み、該コアが、金ではない材料を含む、請求項10記載の方法。
【請求項14】
前駆体ナノ粒子を提供する工程が、コアの表面上に金属金を堆積させるように、Au(III)およびアミンの存在下でコアを加熱することを含む、請求項13記載の方法。
【請求項15】
コアが金属白金を含む、請求項13または14記載の方法。
【請求項16】
コアを生成するように、アミンおよび微量の銀の存在下でPt(acac)2を加熱することを含む、請求項15記載の方法。
【請求項17】
銀塩が硫化銀である、請求項10〜16のいずれか一項記載の方法。
【請求項18】
硫化銀の層を形成する工程が、前駆体ナノ粒子をAg(I)および元素硫黄に曝露することを含む、請求項17記載の方法。
【請求項19】
エージング工程が、各コーティングナノ粒子の金が銀塩の層を通じて該コーティングナノ粒子の表面に拡散するのに十分な時間、コーティングナノ粒子を溶媒中に維持することを含む、請求項10〜18のいずれか一項記載の方法。
【請求項20】
前駆体ナノ粒子が約3〜約25nmの平均直径を有する、請求項10〜19のいずれか一項記載の方法。
【請求項21】
・銀塩を含む表面を各々有する複数のナノ粒子を提供する工程; および
・該ナノ粒子の表面上に金属金を堆積させる工程
を含む、ナノ複合材料を作製するための方法。
【請求項22】
銀塩が硫化銀である、請求項21記載の方法。
【請求項23】
ナノ粒子を提供する工程が、ナノ粒子を形成するように、Ag(I)塩と元素硫黄とを反応させることを含む、請求項22記載の方法。
【請求項24】
金属金を堆積させる工程が、アミンの存在下でナノ粒子をAu(III)の溶液に曝露することを含む、請求項21または22記載の方法。
【請求項24】
請求項1〜10のいずれか一項記載のナノ複合粒子を含むナノ複合材料の、触媒としての、または光学装置もしくは電子装置を作製するための使用。
【請求項25】
・銀塩とアルキルアミンとを含む水溶液を提供する工程;
・銀塩を有機溶媒中に抽出して、銀イオンを含む有機溶液を形成する工程; および
・有機溶液中の銀イオンを銀化合物のナノ粒子として析出させる工程
を含む、銀化合物のナノ粒子を生成するための方法。
【請求項26】
水溶液を提供する工程が、銀塩の水溶液とアルキルアミンのアルコール溶液とを組み合わせることを含む、請求項25記載の方法。
【請求項27】
アルキルアミンが、C8〜C18アルキルアミンであるか、またはC8〜C18アルキルアミンの混合物である、請求項25または26記載の方法。
【請求項28】
銀塩が硝酸銀である、請求項25〜27のいずれか一項記載の方法。
【請求項29】
有機溶媒が、ベンゼン、トルエン、もしくはキシレンであるか、またはこれらのうちの任意の2つ以上の混合物である、請求項25〜28のいずれか一項記載の方法。
【請求項30】
銀化合物が硫化銀である、請求項25〜29のいずれか一項記載の方法。
【請求項31】
析出工程が、有機溶液を元素硫黄に曝露することを含む、請求項30記載の方法。
【請求項32】
銀化合物が懸濁液または分散液として析出する、請求項25〜31のいずれか一項記載の方法。
【請求項33】
約15〜約25℃で行われる、請求項25〜32のいずれか一項記載の方法。
【請求項34】
抽出工程により、水溶液からの銀イオンの少なくとも約95%の移動が生じる、請求項25〜33のいずれか一項記載の方法。
【請求項1】
・銀塩を含む表面を有するナノ粒子と、
・該表面上にある金属金の少なくとも1つの領域と
を含むナノ複合粒子。
【請求項2】
ナノ粒子が本質的に銀塩からなる、請求項1記載のナノ複合粒子。
【請求項3】
ナノ粒子がコア-シェル構造を有し、シェルが本質的に銀塩からなる、請求項1記載のナノ複合粒子。
【請求項4】
銀塩が硫化銀である、請求項1〜3のいずれか一項記載のナノ複合粒子。
【請求項5】
ナノ粒子が実質的に球状である、請求項1〜4のいずれか一項記載のナノ複合粒子。
【請求項6】
金属金の領域がほぼ円形である、請求項1〜5のいずれか一項記載のナノ複合粒子。
【請求項7】
金属金の領域が約1〜約8nmの直径を有するか、または金属金の各領域が独立して約1〜約8nmの直径を有する、請求項1〜6のいずれか一項記載のナノ複合粒子。
【請求項8】
複数のナノ複合粒子を含むナノ複合材料であって、
該ナノ複合粒子の各々が、請求項1〜7のいずれか一項記載のものであり、かつ該ナノ複合粒子が、約5〜約25nmの平均直径を有する、
ナノ複合材料。
【請求項9】
ナノ複合粒子が実質的に単分散である、請求項8記載のナノ複合材料。
【請求項10】
・金属金を含む表面を各々有する複数の前駆体ナノ粒子を提供する工程;
・金の上に銀塩の層を形成し、それによりコーティングナノ粒子を形成する工程; および
・各コーティングナノ粒子の金が銀塩の層を通じて該コーティングナノ粒子の表面に少なくとも部分的に拡散することを可能にし、該表面上に金属金の少なくとも1つの領域を形成するように、コーティングナノ粒子をエージングする工程
を含む、ナノ複合材料を作製するための方法。
【請求項11】
前駆体ナノ粒子が本質的に金属金からなる、請求項10記載の方法。
【請求項12】
前駆体ナノ粒子を提供する工程が、前駆体ナノ粒子を形成するように、Au(III)塩を還元剤に曝露することを含む、請求項11記載の方法。
【請求項13】
前駆体ナノ粒子が、金をその表面上に有するコアを各々含み、該コアが、金ではない材料を含む、請求項10記載の方法。
【請求項14】
前駆体ナノ粒子を提供する工程が、コアの表面上に金属金を堆積させるように、Au(III)およびアミンの存在下でコアを加熱することを含む、請求項13記載の方法。
【請求項15】
コアが金属白金を含む、請求項13または14記載の方法。
【請求項16】
コアを生成するように、アミンおよび微量の銀の存在下でPt(acac)2を加熱することを含む、請求項15記載の方法。
【請求項17】
銀塩が硫化銀である、請求項10〜16のいずれか一項記載の方法。
【請求項18】
硫化銀の層を形成する工程が、前駆体ナノ粒子をAg(I)および元素硫黄に曝露することを含む、請求項17記載の方法。
【請求項19】
エージング工程が、各コーティングナノ粒子の金が銀塩の層を通じて該コーティングナノ粒子の表面に拡散するのに十分な時間、コーティングナノ粒子を溶媒中に維持することを含む、請求項10〜18のいずれか一項記載の方法。
【請求項20】
前駆体ナノ粒子が約3〜約25nmの平均直径を有する、請求項10〜19のいずれか一項記載の方法。
【請求項21】
・銀塩を含む表面を各々有する複数のナノ粒子を提供する工程; および
・該ナノ粒子の表面上に金属金を堆積させる工程
を含む、ナノ複合材料を作製するための方法。
【請求項22】
銀塩が硫化銀である、請求項21記載の方法。
【請求項23】
ナノ粒子を提供する工程が、ナノ粒子を形成するように、Ag(I)塩と元素硫黄とを反応させることを含む、請求項22記載の方法。
【請求項24】
金属金を堆積させる工程が、アミンの存在下でナノ粒子をAu(III)の溶液に曝露することを含む、請求項21または22記載の方法。
【請求項24】
請求項1〜10のいずれか一項記載のナノ複合粒子を含むナノ複合材料の、触媒としての、または光学装置もしくは電子装置を作製するための使用。
【請求項25】
・銀塩とアルキルアミンとを含む水溶液を提供する工程;
・銀塩を有機溶媒中に抽出して、銀イオンを含む有機溶液を形成する工程; および
・有機溶液中の銀イオンを銀化合物のナノ粒子として析出させる工程
を含む、銀化合物のナノ粒子を生成するための方法。
【請求項26】
水溶液を提供する工程が、銀塩の水溶液とアルキルアミンのアルコール溶液とを組み合わせることを含む、請求項25記載の方法。
【請求項27】
アルキルアミンが、C8〜C18アルキルアミンであるか、またはC8〜C18アルキルアミンの混合物である、請求項25または26記載の方法。
【請求項28】
銀塩が硝酸銀である、請求項25〜27のいずれか一項記載の方法。
【請求項29】
有機溶媒が、ベンゼン、トルエン、もしくはキシレンであるか、またはこれらのうちの任意の2つ以上の混合物である、請求項25〜28のいずれか一項記載の方法。
【請求項30】
銀化合物が硫化銀である、請求項25〜29のいずれか一項記載の方法。
【請求項31】
析出工程が、有機溶液を元素硫黄に曝露することを含む、請求項30記載の方法。
【請求項32】
銀化合物が懸濁液または分散液として析出する、請求項25〜31のいずれか一項記載の方法。
【請求項33】
約15〜約25℃で行われる、請求項25〜32のいずれか一項記載の方法。
【請求項34】
抽出工程により、水溶液からの銀イオンの少なくとも約95%の移動が生じる、請求項25〜33のいずれか一項記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公表番号】特表2011−530651(P2011−530651A)
【公表日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−522027(P2011−522027)
【出願日】平成20年8月6日(2008.8.6)
【国際出願番号】PCT/SG2008/000289
【国際公開番号】WO2010/016798
【国際公開日】平成22年2月11日(2010.2.11)
【出願人】(508305029)エージェンシー フォー サイエンス, テクノロジー アンド リサーチ (36)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年8月6日(2008.8.6)
【国際出願番号】PCT/SG2008/000289
【国際公開番号】WO2010/016798
【国際公開日】平成22年2月11日(2010.2.11)
【出願人】(508305029)エージェンシー フォー サイエンス, テクノロジー アンド リサーチ (36)
【Fターム(参考)】
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