説明

ナノ複合素材及びその製造方法並びにこれを含むエネルギ貯藏装置

【課題】本発明は、グラフェン及び該グラフェンの表面に形成されたリチウム入り金属酸化物を含むナノ複合素材及びその製造方法並びに、これを電極材料として含むエネルギ貯藏装置を提供する。
【解決手段】金属酸化物とグラフェンとを反応させて金属酸化物/グラフェン前駆体を製造し、該金属酸化物/グラフェン前駆体にリチウムイオン溶液を反応させて該グラフェンの表面にリチウム入り金属酸化物を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナノ複合素材及びその製造方法並びにこれを含むエネルギ貯藏装置に関し、詳しくは、エネルギ密度が高く、高出力特性を有する電極を製造するためのナノ複合素材及びその製造方法並びにこれを含むエネルギ貯藏装置に関する。
【背景技術】
【0002】
超高容量キャパシタは、スーパーキャパシタ(Super capacitor)またはウルトラキャパシタ(Ultra capacitor)として知られている。
【0003】
超高容量キャパシタは、瞬間的に多くの電気エネルギを充電した後、高電流を数秒または数分にわたって、瞬間的あるいは連続的に放電/供給するような長寿命高出力の電気エネルギ貯藏機器である。
【0004】
気候変動枠組条約(Framework Convention on Climate Change)、エコカー及びエコ住宅など、国際的な親環境政策及びエコ技術の進展に応じて、電気エネルギを効率的に貯藏する超高容量キャパシタ技術がリチウム二次電池技術と共に既存の産業を画期的に変えることができるディスラプティブ技術(disruptive technology)として知られている。
【0005】
このような超高容量キャパシタは、従来、家電及びポータブル通信機器のメモリバックアップ電源として限定的に使われてきている。ところで、最近では、そのエネルギ密度特性の向上に応じて、その応用が高出力特性を要求するIT、ユビキタス、輸送、機械、スマートグリッド(Smart Grid)のような多様な分野において、その分野が拡大されている。
【0006】
現在常用化された超高容量キャパシタは、電気二重層キャパシタ(Electric Double layer Capacitor:EDLC)であって、高い非表面積を有する活性炭(Activated Carbon)を電極素材として使う。電気二重層キャパシタは、活性炭/電解質界面に、電解質のうち陽イオンまたは陰イオンのelectrosorption/electrodesorptionの反応を用いて電荷を貯藏する。ここで、電荷貯藏能力を示す比蓄電容量(Specific capacitance)は、150F/g以下であることが報告されている。
【0007】
高出力特性の超高容量キャパシタの場合、高い比蓄電容量の電極素材の開発によるエネルギ密度の向上が要求されている。
【0008】
超高容量キャパシタのエネルギ密度は、電極素材の比蓄電容量に一次関数的に比例し、ユビキタス、輸送、機械、スマートグリド産業郡などに拡大適用を加速するためには、300F/g以上の比蓄電容量を保有した電極素材の研究開発が必要となる。
【0009】
電極素材の比蓄電容量の増加のために、電気二重層電荷貯藏特性の炭素とfaradaic反応による電荷貯藏特性を保有した転移金属酸化物を複合化して、2個以上の電荷貯藏反応が一つの電極素材で作動してシナジー効果を具現するようなナノ複合素材概念が核心である。
【0010】
一方、リチウム二次電池は、エネルギ密度は優秀であるが、出力特性が不足であるという短所がある。そのため、エネルギ密度の損失を最小化すると共に、出力密度を向上するための研究開発が、ナノ電極素材の適用によって試みされている。
【0011】
高出力特性の超高容量キャパシタの場合はエネルギ密度の向上が必要となり、高エネルギ密度を有するリチウム二次電池の場合は高出力特性の向上が必要となる。
【0012】
一方、非水系キャパシタ及びリチウム二次電池の電極素材であるLiMnの場合、低価の素材として高い比蓄電容量を有して、電極素材応用のために多くの研究が行われている。LiMnを製造する方法では、リチウム塩とマングガン塩を固相粉末で混合し、これを高温熱処理(500℃以上)する方法が多用されており、マイクロメートル大きさの粉末状態で製造して使っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】韓国公開特許第10−2010−0060149号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかし、金属酸化物の電気化学的活用度を最大にするために、ナノサイズのリチウムマンガン酸化物の開発が求められる。そのため、ナノサイズのリチウムマンガン酸化物の合成に係わる多くの研究が行われて来た。相当数の研究は、ナノサイズのリチウムマンガン酸化物間の凝集(agglomeration)によってナノサイズ粒子の高い電気化学的活用度を達成するのに難しさが発生し、ナノ粒子の合成時に優秀な結晶性が確保されないという特徴が現われ、電気化学的特性の向上を大きく図ることができない。
【0015】
本発明は上記の問題点に鑑みて成されたものであって、その目的は、エネルギ密度が高く、且つ高出力特性を有する電極を製造するためのナノ複合素材を提供するのにある。
【0016】
また、本発明の他の目的は、ナノサイズの優秀な結晶性を有するナノ複合素材の製造方法を提供することにある。
【0017】
本発明のさらに他の目的は、ナノ複合素材を電極材料として含むエネルギ貯藏装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記目的を解決するために、本発明の好適な実施形態によるナノ複合素材は、グラフェンと、該グラフェンの表面に形成されるリチウム入り金属酸化物とを含む。
【0019】
前記グラフェンは、望ましくは、炭素原子がsp2結合によって形成された板状の形態を有し、その厚さは、0.34〜4.0nmである。
【0020】
前記グラフェンは、2次元の電子伝道経路(conduction path)を有する。
【0021】
前記リチウム入り金属酸化物は、下記の化学式1に表現されることができる。
【0022】
<化学式1>
LixMyOz
【0023】
上記式において、Mは、マンガン、ニッケル、マグネシウム、コバルト及び銅から成る郡より選られる少なくとも一つ以上の金属で、xは、0.01〜4.0、yは、0.9〜5.0、zは、1.9〜12.0である。
【0024】
前記グラフェンの表面に形成されるリチウム入り金属酸化物は、100nm以下の大きさを有する。
【0025】
前記ナノ複合素材は、前記グラフェンにリチウム入り金属酸化物が積層された3次元構造を有する。
【0026】
また、上記目的を解決するために、本発明の他の好適な実施形態によるナノ複合素材の製造方法は、金属酸化物とグラフェンとを反応させて金属酸化物/グラフェン前駆体を製造するステップと、前記金属酸化物/グラフェン前駆体にリチウムイオン溶液を反応させて前記グラフェンの表面にリチウム入り金属酸化物を形成するステップとを含む。
【0027】
前記金属酸化物/グラフェン前駆体において前記金属酸化物は、加水分解反応で金属イオン状態で維持される。
【0028】
前記加水分解された金属イオンは、リチウムイオン溶液でリチウム入り金属酸化物に還元されて前記グラフェンの表面に析出される。
【0029】
前記金属酸化物は、マンガン、ニッケル、マグネシウム、コバルト及び銅から成る郡より選られる少なくとも一つ以上の金属を含む。
【0030】
前記グラフェンは、粉末形態または水分散液形態である。
【0031】
前記金属酸化物/グラフェン前駆体は、20〜400℃の温度で製造される。
【0032】
前記金属酸化物とグラフェンとは、望ましくは、1:99〜99:1の範囲の重量比で混合される。
【0033】
前記リチウムイオンは、1価リチウムイオンである。
【0034】
前記リチウムイオン溶液は、リチウムイオンを含む水化物、窒化物、塩化物を及び酸化物から成る郡より選られる少なくとも一つである。
【0035】
前記グラフェンの表面へのリチウム入り金属酸化物の形成は、20〜500℃の温度で行われる。
【0036】
前記グラフェンの表面へのリチウム入り金属酸化物の形成は、望ましくは、マイクロ波水熱反応装置で行われる。
【0037】
また、上記目的を解決するために、本発明のさらに他の好適な実施形態によるエネルギ貯藏装置は、グラフェンと、前記グラフェンの表面に形成されたリチウム入り金属酸化物を含む電極材料としてのナノ複合素材とを含む。
【発明の効果】
【0038】
本発明によれば、優秀な結晶性を有するリチウム入り金属酸化物が数ナノメートル大きさのナノ粒子形態でグラフェンの表面にコートされたナノ複合素材を製造することができる。
【0039】
したがって、優秀な結晶性を有するナノサイズのリチウム入り金属酸化物が高比表面積及び高電気伝導度のグラフェンと結合されたナノ複合素材は、高出力及び高エネルギ密度を有する超高容量キャパシタ及び高エネルギ密度のリチウム二次電池のようなエネルギ貯藏装置の優秀な高効率充放電特性を発現することができるという効果が奏する。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明によるナノ複合素材の製造方法を示す流れ図である。
【図2】本発明の一実施形態によるリチウムマンガン酸化物がコートされたグラフェンのTEM写真である。
【図3】本発明の一実施形態によるリチウムマンガン酸化物/グラフェン複合素材のCレイト(C−rate)別の放電曲線を示すグラフである。
【図4】本発明の一実施形態によるリチウムマンガン酸化物/グラフェン複合素材の比蓄電容量のCレイト依存度を示すグラフである。
【図5】本発明の一実施形態によるリチウムマンガン酸化物/グラフェン複合素材の寿命特性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下、本発明の好適な実施の形態は図面を参考にして詳細に説明する。次に示される各実施の形態は当業者にとって本発明の思想が十分に伝達されることができるようにするために例として挙げられるものである。従って、本発明は以下示している各実施の形態に限定されることなく他の形態で具体化されることができる。そして、図面において、装置の大きさ及び厚さなどは便宜上誇張して表現されることができる。明細書全体に渡って同一の参照符号は同一の構成要素を示している。
【0042】
本明細書で使われた用語は、実施形態を説明するためのものであって、本発明を制限しようとするものではない。本明細書において、単数形は文句で特別に言及しない限り複数形も含む。明細書で使われる「含む」とは、言及された構成要素、ステップ、動作及び/又は素子は、一つ以上の他の構成要素、ステップ、動作及び/又は素子の存在または追加を排除しないことに理解されたい。
【0043】
本発明は、ナノ複合素材及びその製造方法並びにこれを電極材料として含むエネルギ貯藏装置に関するものである。
【0044】
本発明によるナノ複合素材は、グラフェンと、該グラフェンの表面に形成されたリチウム入り金属酸化物とを含む構造を有する。
【0045】
グラフェン(graphene)は、炭素原子がsp2結合によって形成された板状の形状を有し、原子一層位の厚さ、約0.34〜4.0nmである2次元形状の炭素ナノシート(nano sheet)である。
【0046】
既存の炭素材料である炭素ナノチューブ、炭素ナノ繊維に比較して化学的/構造的な安定性、電気伝導度(>100S/m)、比表面積(2600m/g)側面で優秀な特性を有する。
【0047】
炭素ナノシート形態のグラフェンは、2次元の電子伝道経路を有する。そのため、該グラフェンの優秀な電気伝導度及び非常に高い比表面積を用いて多様なエネルギ貯藏装置の電極素材として理想的と言える。
【0048】
したがって、このような優秀な物理的・化学的特性によってグラフェン系素材の合成及び応用技術は、既存炭素素材の限界を飛び越えることができる技術(即ち、Break Through Technology)として評価される。
【0049】
該グラフェンの表面に形成されるリチウム入り金属酸化物は、下記の化学式1で表現されることができる
【0050】
<化学式1>
LixMyOz
【0051】
上記式において、Mは、マンガン、ニッケル、マグネシウム、コバルト及び銅から成る郡より選られる少なくとも一つ以上の金属で、xは、0.01〜4.0、yは、0.9〜5.0、zは、1.9〜12.0である。
【0052】
詳しくは、リチウム二次電池及びリチウムイオンキャパシタのような電極活物質として使われるリチウム入り材料なら、その種類に限定されるのではなく、いかなるものであってもよい。
【0053】
また、前記リチウム入り材料には、マンガン、ニッケル、マグネシウム、コバルト及び銅から成る郡より選られる少なくとも一つ以上の多様な金属が置換されたリチウム入り金属酸化物が望ましい。
【0054】
前記グラフェンの表面に形成されるリチウム入り金属酸化物は、100nm以下の大きさを有するのが、金属酸化物内のリチウムの拡散距離を減らすことができ、高率充放電特性を向上させることができるという点で望ましい。
【0055】
したがって、本発明によるナノ複合素材は、グラフェンにリチウム入り金属酸化物が積層された3次元構造を有することができる。本発明のグラフェンは、2次元構造を有し、該グラフェンの表面にリチウム入り金属酸化物を積層することによって、3次元構造を有するようにしたのである。
【0056】
このような構造的な特徴によって、前記ナノ複合素材をリチウム二次電池及びリチウムイオンキャパシタのような超高容量キャパシタを含むエネルギ貯藏装置の電極材料として使用すると、高効率の放電特性、寿命特性及び比蓄電容量を有することができる。
【0057】
以下、本発明によるナノ複合素材の製造方法を詳しく説明する。
【0058】
まず、第1のステップは、金属酸化物とグラフェンとを反応させて、金属酸化物/グラフェン前駆体を製造する。
【0059】
前記金属酸化物は、本発明によるリチウム入り金属酸化物に含まれる金属酸化物を意味し、マンガン、ニッケル、マグネシウム、コバルト及び銅から成る郡より選られる少なくとも一つ以上の金属を含む。
【0060】
上記のような金属がリチウムに置換されて多様な形態のリチウム入り金属酸化物構造を有する。例えば、リチウムマンガン酸化物(LiMn)、リチウムコバルト酸化物(LiCoO)、リチウムニッケル酸化物(LiNiO)、リチウムマングガンコバルト複合酸化物(Li(NiMnCo)O)などのような多様な形態のリチウム入り金属酸化物及びリチウム入り金属複合酸化物を含むことができる。
【0061】
例えば、金属がマンガン(Mn)の場合、該金属酸化物は、Mn7+溶液であるKMnO、NaMnO、あるいはMn6+溶液であるKMnOが使われてもよい。
【0062】
本発明によるグラフェンは、粉末形態で使われるか、または該粉末を水に分散させた水分散液形態で使われてもよい。
【0063】
前記金属酸化物とグラフェンとを混合し、約20〜400℃の温度で反応させると、金属酸化物/グラフェン前駆体が製造される。還元反応温度があまり低ければ、還元反応が非常に遅いか、または溶解度の減少によって塩が析出されるという問題点が発生することがある。また、温度があまり高ければ転移金属酸化物が溶液上で析出されるという難しさがあり得る。
【0064】
また、前記金属酸化物とグラフェンとは、1:99〜99:1の範囲の重量比で混合するのが、次のステップであるリチウム金属酸化物/グラフェン複合素材の金属酸化物の粒子形成、大きさ及び組成を制御し、電極素材への適用の際、高率充放電特性の向上に有利である。
【0065】
第二のステップは、前記金属酸化物/グラフェン前駆体にリチウムイオン溶液を混合して、該グラフェンの表面にリチウム入り金属酸化物を形成する。
【0066】
前記リチウムイオンは、1価リチウムイオンであってもよい。
【0067】
前記リチウムイオン溶液は、リチウムイオンを含む水化物、窒化物、塩化物及び酸化物から成る郡より選られる少なくとも一つである。
【0068】
グラフェンの表面へのリチウム入り金属酸化物の形成は、20〜500℃の温度で行われる。
【0069】
前記グラフェンの表面へのリチウム入り金属酸化物の形成は、マイクロ波水熱反応装置で行われることが望ましい。
【0070】
図1は、本発明によるナノ複合素材の製造過程を示す流れ図である。以下、図1を参照して、各過程別で詳らかに説明する。
【0071】
まず、本発明では、グラフェンの表面に形成されるリチウム入り金属酸化物として、リチウムマンガン酸化物が挙げられる。
【0072】
第1のステップでは、マンガンイオン溶液とグラフェンとを混合して一定の温度で維持しつつ反応させれば、マンガン酸化物/グラフェン前駆体を製造することができる。該前駆体でのマンガン酸化物(MnO)は、グラフェン上でそのまま存在するようになる。
【0073】
続いて、前記マンガン酸化物/グラフェン前駆体をリチウムイオン溶液に混合した後、一定の温度で保持させれば、グラフェンの表面にリチウムマンガン酸化物が形成されたナノ複合素材を得ることができる。
【0074】
このステップでは、前記マンガン酸化物/グラフェン前駆体中のマンガン酸化物(MnO)は加水分解反応して、Mn4+のイオン状態で存在してから、該リチウムイオン溶液によって再びリチウムマンガン酸化物に還元されて該グラフェンの表面に析出されるようになる。
【0075】
前記リチウムイオン溶液上でマンガン酸化物/グラフェン前駆体の反応によって、LiMnナノ粒子がグラフェン上に形成される過程は、下記の反応式1のようである。
【0076】
<反応式1>
MnO+2HO→Mn4++4OH
8Mn4++4Li++36OH−→4LiMn+18HO+O
【0077】
上記反応式1によれば、前駆体として使われたマンガン酸化物/グラフェン上のMnOは、加水分解反応によってMn4+イオン状態で存在するようになり、Mn4+イオンは、LiOHによってLiMnに還元されてグラフェン上に析出されて分布するようになる。
【0078】
前記反応は吸熱反応であって熱の供給が必要となり、本発明では、マイクロ波水熱反応装置を通じて熱を供給することができる
【0079】
一方、本発明は、グラフェンと、該グラフェンの表面に形成されたリチウム入り金属酸化物を含む電極材料としてのナノ複合素材とを含むエネルギ貯藏装置を提供する。
【0080】
前記本発明のナノ複合素材が電極材料として使われる場合、通常の電極材料に含まれるバインダ、導電剤、その他添加剤などを含んでもよく、その種類はこれに限定されない。
【0081】
前記エネルギ貯藏装置は、リチウム二次電池、電気二重層キャパシタ、超高容量キャパシタなどが挙げられ、これに限定されない。

実施形態1:リチウムマンガン酸化物/グラフェンナノ複合素材の製造
【0082】
0.1g粉末形態のグラフェンを200mLの0.03M KMnO溶液と混合し、70℃で8時間の間撹拌した。こうして製造された反応生成物を遠心分離によって回収した後、溶液内に残留するイオンを完璧にとり除くために、蒸留水で数回洗い、オーブンで80℃で24時間乾燥してマンガン酸化物/グラフェン前駆体を製造した。
【0083】
前記マンガン酸化物/グラフェン前駆体0.3gを40mLの0.1M LiOH水溶液に混合した後、マイクロ波水熱反応容器に入れ、マイクロ波を用いて200℃で30分間反応を行った。こうして製造された反応生成物を遠心式分離器によって回収し、蒸留水で数回洗淨した後、オーブンで100℃で24時間乾燥してリチウムマンガン酸化物/グラフェンナノ複合素材を得た。

実施形態2:電極製造
【0084】
リチウムマンガン酸化物/グラフェンナノ複合素材を電極物質として活用するために実施形態1で得られたリチウムマンガン酸化物/グラフェンナノ複合素材:導電剤:バインダを85:10:5の重量比で混合したスラリを製造した。
【0085】
この時、導電剤としてアセチレンブラック(acetylene black)、バインダとしてN−メチル−2−ピロリドン(NMP:N―methyl−2−Pyrrolidone)に溶かしたPVDFを使った。リチウムマンガン酸化物/グラフェンナノ複合素材粉末に導電剤を添加し、これを再びボールミル(ball mill)を用いて均一に混合した後、バインダとNMPとを添加し、またボールミルを用いて均一に混合した。
【0086】
この方法によって製造された均一なスラリをチタン(Ti)フォイル集電体に塗布して電極製造した後、オーブンで100℃で12時間の間乾燥した。

実験例1:ナノ複合素材の構造確認
【0087】
実施形態1によって得られたナノ複合素材の構造を透過電子顕微鏡(TEM)で測定し、その結果を図2に示した。
【0088】
図2に示すように、ナノ決定構造を有するグラフェンの表面にリチウムマンガン酸化物が均一にコートされたことが認められる。また、グラフェンの表面に形成されたリチウムマンガン酸化物は、10nm以下の非常に微細なナノ粒子サイズに形成されたことが分かる。よって、2次元的構造のグラフェン上に前記微細ナノ粒子のリチウムマンガン酸化物が形成された3次元的構造のナノ複合素材を有することを確認することができる。

実験例2:ナノ複合素材の電池特性測定
【0089】
上記実施形態2によって製造された電極を含むエネルギ貯藏装置を製造し、その特性を評価した。その結果は図3〜図5に示した。
【0090】
図3は、実施形態2によるリチウムマンガン酸化物/グラフェン複合素材のCレイト別の放電曲線を示すもので、優秀な比蓄電容量を表すのが分かる(137mAh/g at 1C rate)。また高いCレイト値でも電圧降下幅が遥かに少なく起きることが認められた。
【0091】
図4は、上記実施形態2によるリチウムマンガン酸化物/グラフェン複合素材の比蓄電容量のCレイト依存度を示すグラフであって、C rateが20で92%、C rateが50で85%であり、高率充放電特性が遥かに優秀であることが認められた。
【0092】
図5は、上記実施形態2によるリチウムマンガン酸化物/グラフェン複合素材の寿命特性を示すグラフであって、寿命特性評価も優秀なことが認められた。
【0093】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、前記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
グラフェンと、
前記グラフェンの表面に形成されたリチウム入り金属酸化物
とを含むナノ複合素材。
【請求項2】
前記グラフェンは、炭素原子がsp2結合によって形成された板状の形態を有し、その厚さは、0.34〜4.0nmである請求項1に記載のナノ複合素材。
【請求項3】
前記グラフェンは、2次元の電子伝道経路を有する請求項1に記載のナノ複合素材。
【請求項4】
前記リチウム入り金属酸化物は、下記の化学式
LixMyOz
(ここで、Mはマンガン、ニッケル、マグネシウム、コバルト及び銅から成る郡より選られる少なくとも一つ以上の金属で、xは0.01〜4.0、yは、0.9〜5.0、zは1.9〜12.0の範囲を有する)
で表現される請求項1に記載のナノ複合素材。
【請求項5】
前記グラフェンの表面に形成されるリチウム入り金属酸化物は、100nm以下の大きさを有する請求項1に記載のナノ複合素材。
【請求項6】
前記ナノ複合素材は、前記グラフェンにリチウム入り金属酸化物が積層された3次元構造を有する請求項1に記載のナノ複合素材。
【請求項7】
金属酸化物とグラフェンとを反応させて金属酸化物/グラフェン前駆体を製造するステップと、
前記金属酸化物/グラフェン前駆体にリチウムイオン溶液を反応させて前記グラフェンの表面にリチウム入り金属酸化物を形成するステップ
とを含むナノ複合素材の製造方法。
【請求項8】
前記金属酸化物/グラフェン前駆体での前記金属酸化物は、加水分解反応によって金属イオン状態で維持される請求項7に記載のナノ複合素材の製造方法。
【請求項9】
前記加水分解された金属イオンは、リチウムイオン溶液でリチウム入り金属酸化物に還元されて前記グラフェンの表面に析出される請求項8に記載のナノ複合素材の製造方法。
【請求項10】
前記金属酸化物は、マンガン、ニッケル、マグネシウム、コバルト及び銅から成る郡より選られる少なくとも一つ以上の金属を含む請求項7に記載のナノ複合素材の製造方法。
【請求項11】
前記グラフェンは、粉末形態または水分散液形態を有する請求項7に記載のナノ複合素材の製造方法。
【請求項12】
前記金属酸化物/グラフェン前駆体は、20〜400℃で製造される請求項7に記載のナノ複合素材の製造方法。
【請求項13】
前記金属酸化物と前記グラフェンとは、1:99〜99:1の範囲の重量比で反応する請求項7に記載のナノ複合素材の製造方法。
【請求項14】
前記リチウムイオンは、1価リチウムイオンである請求項7に記載のナノ複合素材の製造方法。
【請求項15】
前記リチウムイオン溶液は、リチウムイオンを含む水化物、窒化物、塩化物及び酸化物から成る郡より選られる少なくとも一つ以上である請求項7に記載のナノ複合素材の製造方法。
【請求項16】
前記グラフェンの表面への前記リチウム入り金属酸化物の形成は、20〜500℃で行われる請求項7に記載のナノ複合素材の製造方法。
【請求項17】
前記グラフェンの表面への前記リチウム入り金属酸化物の形成は、マイクロ波水熱反応装置によって行われる請求項7に記載のナノ複合素材の製造方法。
【請求項18】
請求項1に記載のナノ複合素材を電極材料として含むエネルギ貯藏装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−219010(P2012−219010A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−31364(P2012−31364)
【出願日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【出願人】(594023722)サムソン エレクトロ−メカニックス カンパニーリミテッド. (1,585)
【出願人】(510340861)ヨンセ・ユニバーシティ、インダストリー−アカデミック・コオペレイション・ファウンデーション (2)
【Fターム(参考)】