説明

ニアネットシェイプ鍛造のためのシステムと方法

【課題】ダイ温度がα−β温度範囲付近である必要がない、α−β温度範囲でのチタン及びチタン合金のニアネットシェイプ鍛造のための改良された方法を提供する。
【解決手段】チタンビレット12をα−β温度範囲内の温度に加熱し、チタンビレットの温度より約500°F低い温度を有する第1のダイ18中にチタンビレットを押し出す。チタン部品をニアネットシェイプ鍛造するためのシステム10は、α−β温度範囲内の温度を有するチタンビレット、及びチタンビレットと接触しているパンチ14を含んでいる。チタンビレットと近接してチタンビレットを受容する第1のダイは、チタンビレットの温度より約500°F低い温度を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、ニアネットシェイプ鍛造のためのシステムと方法に関する。特に、本発明の実施形態は、α−β温度範囲でチタン部品をニアネットシェイプ鍛造するためのシステムとプロセスを提供する。
【背景技術】
【0002】
商業用機器はチタン又はチタン合金から作成された部品を含むことが多い。例えば、コンプレッサー及びタービンは通例静翼と動翼の交互の段を含んでいる。航空機エンジン及びガスタービンにおいて、コンプレッサー及びタービン動翼は高強度で軽量のチタン又はチタン合金から鍛造された比較的複雑で湾曲した輪郭を有することが多い。特に、動翼はα−β温度範囲でチタン合金から鍛造し得る。
【0003】
ニアネットシェイプ鍛造は、対象物品の最初の形状が最終の(「ネット」)形状に極めて近い(「ニア」)技術である。例えば、ニアネットシェイプ鍛造では、最終の形状を達成するのに表面機械加工又は研磨を殆ど又は全く必要としない初期の形状にビレットを変形する。しかしながら、α−β温度範囲におけるチタン合金のニアネットシェイプ鍛造では、通例、α−β温度範囲の高い鍛造温度に耐えることができる高価なダイ材料が必要とされる。具体的にいうと、ダイ温度は通例、特定のチタン合金に応じて、α−β温度範囲でのチタン合金のニアネットシェイプ鍛造の間、この鍛造プロセス中のチタンビレットの冷却を最小にするために約1600°F〜1800°Fのビレット温度又はその付近に維持される。ニアネットシェイプ鍛造プロセスは、通例、鍛造プロセス中ダイとビレットとの間のほぼ等温の条件を維持するために真空中で実施される。このダイと関連機器の高価格のため、ニアネットシェイプ鍛造は、α−β温度範囲でチタン部品を鍛造するための費用効果的な選択となることが妨げられることが多い。その結果、チタン及びチタン合金から作成されるコンプレッサー及びタービン動翼は、開放ダイ鍛造、閉鎖ダイ鍛造、1以上の熱処理、及び高価な仕上げ処理を含む多段階プロセスで鍛造されることが多い。この多段階プロセスの結果、大量の材料が消耗し、余分な仕上げ処理コストがかかり、しかも最終製品の粒子組織は最適とはいえない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第5964120号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
現在のところ、α−β温度範囲付近の高いダイ温度を必要としないでα−β温度範囲においてチタン又はチタン合金をニアネットシェイプ鍛造する鍛造技術は存在しない。従って、ダイ温度がα−β温度範囲付近である必要がない、α−β温度範囲でのチタン及びチタン合金のニアネットシェイプ鍛造のための改良された方法があれば有用であろう。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の態様及び利点については、以下に記載されているが、以下の記載から自明であるか、本発明の実施を通じて確認することもできる。
【0007】
本発明の一実施形態はチタン部品をニアネットシェイプ鍛造する方法である。この方法は、チタンビレットをα−β温度範囲内の温度に加熱し、このチタンビレットを、チタンビレットの温度より約500°F低い温度を有する第1のダイ中に押し出すことを含んでいる。
【0008】
本発明の別の実施形態は、チタンビレットをα−β温度範囲内の温度に加熱し、チタンビレットと第1のダイとの間に約500°Fの温度差を創成することを含む、チタン部品をニアネットシェイプ鍛造する方法である。
【0009】
本発明はまた、チタン部品をニアネットシェイプ鍛造するためのシステムも包含する。このシステムは、α−β温度範囲内の温度を有するチタンビレットと、このチタンビレットと接触するパンチとを含んでいる。チタンビレットと近接してチタンビレットを受容する第1のダイはチタンビレットの温度より約500°F低い温度を有する。
【0010】
本明細書を参照することによって、当業者はこれらの実施形態の特徴及び態様などについて理解を深めることができるであろう。
【0011】
添付の図面を含めて以下の明細書では、最良の態様を含めて本発明の十分で実施可能な開示をより具体的に当業者に示す。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に従ってニアネットシェイプ鍛造するための図解する。
【図2】図2は、本発明の一実施形態に従ってニアネットシェイプ鍛造するための図解する。
【図3】図3は、本発明の一実施形態に従ってニアネットシェイプ鍛造するための図解する。
【図4】図4は、本発明の第2の実施形態に従ってニアネットシェイプ鍛造するためのシステムを図解する。
【図5】図5は、本発明の第2の実施形態に従ってニアネットシェイプ鍛造するためのシステムを図解する。
【図6】図6は、本発明の第3の実施形態に従ってニアネットシェイプ鍛造するためのシステムを図解する。
【図7】図7は、本発明の第3の実施形態に従ってニアネットシェイプ鍛造するためのシステムを図解する。
【図8】図8は、本発明の第3の実施形態に従ってニアネットシェイプ鍛造するためのシステムを図解する。
【図9】図9は、本発明の第4の実施形態に従ってニアネットシェイプ鍛造するためのシステムを図解する。
【図10】図10は、本発明の第4の実施形態に従ってニアネットシェイプ鍛造するためのシステムを図解する。
【発明を実施するための形態】
【0013】
ここで、本発明の現在の実施形態を詳細に参照するが、その1以上の実例を添付の図面に示す。以下の詳細な説明では、参照数字及び文字を用いて図面中の特徴を引用する。図面及び説明中では、同様又は類似の符号を用いて本発明の同様又は類似の部分を参照する。
【0014】
各例は本発明の説明のためのものであって、本発明を限定するものではない。実際、当業者には明らかなように、本発明の範囲又は思想から逸脱することなく本発明の修正及び変形が可能である。例えば、一実施形態の一部として例示又は記載された特徴を別の実施形態で使用してさらに別の実施形態を実現することができる。従って、本発明は、特許請求の範囲及びその均等の範囲内に入るものとして、かかる修正及び変形を包含するものである。
【0015】
本発明の様々な実施形態は、チタン合金を含めてチタンを、α−β温度範囲内でニアネットシェイプ鍛造するためのシステムと方法を提供する。特定の実施形態において、α−β温度範囲のチタンビレットが、ダイを通して、又はダイ中に放射状に、順次押し出されるが、この間ダイの温度はチタンに対するα−β温度範囲より十分低く維持される。押出の速度を制御して、ビレット内に生じる断熱加熱の量が、失われる又はより低い温度のダイに移される熱の量とほぼ等しくなるように調節することができる。加えて、押出プロセスの速度と順序を制御して、変形されたビレット内に所望の結晶粒度並びに流れ及び/又は残留圧縮応力を付与し得る。結晶粒度及び流れは変形したビレットのサイクル疲労特性に直接影響し、残留圧縮応力は変形したビレットの亀裂成長耐性を高める。こうして、順次の押出プロセスは組み合わせて、単一の変形したビレットが、いろいろな大きさ及び配向の結晶粒子と、変形したビレット内の異なる位置において残留圧縮応力を有することを可能にする。本発明の様々な実施形態はコンプレッサー又はタービン翼の蟻継ぎ又は翼に鍛造されたチタンビレットに関連して記載され例証されているが、特許請求の範囲に具体的に記載されていない限り、本発明が特定のビレット材料又は最終生成物に限定されないということは当業者には容易に理解されよう。
【0016】
図1、2、及び3は、本発明の一実施形態に従ってニアネットシェイプ鍛造するためのシステム10と方法を図解する。図に示されているように、システム10は、一般に、ビレット12、パンチ14、押出容器16、及びダイ18を含んでいる。ビレット12は、当業者に公知の任意の熱源を用いてα−β温度範囲内の温度に加熱されたチタン又はチタン合金からなり得る。α−β温度範囲の実際の温度は使用する特定のチタン合金に依存し、使用する特定のチタン合金に応じて約1600−1800°Fであり得る。パンチ14はビレット12と接触しており、所望の力又は歪みをパンチ14に供給して、ビレット12を押出容器16を介してダイ18中に、又はこれを通して押し出すために当技術分野で知られている任意の適切なプレス(図には示してない)に接続し得る。押出容器16は、押出前のビレット12を保持する容積を提供し、使用する特定のチタン合金のα−β温度範囲内の温度に耐えることができる任意の適切な構造体からなり得る。ダイ18はビレット12を受容するようにビレット12に近接しており、鍛造されたビレット12のための所望の形状を提供し得る。ダイ18は約500−1300°Fまでの温度に耐えることができる任意の適切な構造体からなり得る。
【0017】
図1に示されているように、ビレット12は押出容器16内に収容し得る。パンチ14は第1の開口部20に位置し得、ダイ18は押出容器16の第2の開口部22に位置し得る。こうして、パンチ14にかけられる力は、押出容器16及びダイ18に対してパンチ14を移動させて、図2及び3に順に示されているようにビレット12をダイ18中に、又はダイ18を通して押し出し得る。
【0018】
ダイ18はビレット12の温度より実質的に低い温度を有し得、ダイ18に必要とされる材料のコストを低減し得る。例えば、ダイ18はビレット12の温度より約500°F、600°F、1000°F、又はそれ以上低い温度を有し得、これに対応して、ダイ18とビレット12との間に約500°F、600°F、1000°F、又はそれ以上の温度差を創成し得る。このダイ18とビレット12との間の温度差の結果、ビレット12の伝導及び/又は対流冷却が起こる。システム10のプロセスパラメーターを制御又は調整して、押出プロセスの間にビレット12内に生じる断熱加熱の量を調節し得る。例えば、押出容器16の大きさ又は直径及び/又はパンチ14によりかけられる歪み速度を制御又は調整して、押出プロセス中にビレット12内に生じる断熱加熱の量を変化させて、ダイ18に移される熱をほぼ釣り合わせ得る。特定のシステム、チタン合金、ダイ18の大きさ、及び様々なその他のプロセスパラメーターに応じて、断熱加熱はビレット12の温度を50°F、70°F、又はそれ以上上昇させ得る。その結果、システム10は押出プロセス中ビレット12の温度をα−β温度範囲内に維持し、所望の結晶粒度と方向を有し、研磨又はその他の最終加工プロセスを殆ど又は全く必要としない、図3に見られるニアネットシェイプのチタン蟻継ぎ24を生成する。
【0019】
図4及び5並びに6、7、及び8は、本発明の代わりの実施形態による中間鍛造のためのシステム30と方法を図解する。図4及び5並びに図6、7、及び8に示したシステム30は、既に記載し図1、2、及び3に関して図解したシステム10と共に、又は独立に使用し得る。例えば、図1、2、及び3に関して記載し図解したシステム10を用いて生成したチタン蟻継ぎ24は、図4及び5又は図6、7、及び8に図解したいずれかの実施形態を使用してさらに鍛造し得る。或いは、図4及び5又は図6、7、及び8に図解したシステム30は、中間のチタンビレットを鍛造するために独立のシステムとして使用してもよい。
【0020】
図4及び5並びに図6、7、及び8に示したシステム30は、一般に、図1、2、及び3に関して既に記載したようなビレット32を含んでいる。具体的には、ビレット32は、当業者に知られている任意の熱源を用いてα−β温度範囲内の温度に加熱されたチタン又はチタン合金からなり得る。さらに、システム30は固定パンチ34及びダイ36を含んでいる。固定パンチ34はビレット32と接触してそれを正しい位置に保持する。
【0021】
図4及び6に示されているように、ダイ36はビレット32に近接していてビレット32を受容し、鍛造されたビレット32の所望の形状を提供する。ダイ36は約500−1300°Fまでの温度に耐えることができる任意の適切な構造体からなり得、互いに独立して連続的及び/又は徐々に移動し得る複数の部分を含んでいてもよい。例えば、図4及び5並びに6、7、及び8に示されているように、ダイ36は第1の部分38と第2の部分40を含み得る。プレス(図には示してない)が第1と第2の部分38、40を固定パンチ34に対して徐々に及び/又は連続的に動かしてビレット32をダイ36中に、又はこれを通して次第に押し出すことができる。ダイ36の複数の部分に徐々に及び/又は連続的に圧力をかけることによって、ダイ36とビレット32との間の接触点が低減する。その結果、ビレット32を鍛造するのに必要とされる歪み速度が低減し、より小さい能力のプレスでビレット32を鍛造するための所望の歪み速度を提供することが可能になる。加えて、ダイ36の複数の部分の徐々に増加する及び/又は連続的な移動により、鍛造されたビレット32の亀裂成長耐性を高める望ましい残留圧縮応力がビレット32内に生じる。
【0022】
第1の実施形態に関して記載したダイ18と同様に、図4及び5並びに6、7、及び8に示したダイ36はビレット32の温度より実質的に低い温度を有し得、ダイ36に必要とされる材料のコストを低減し得る。例えば、ダイ36はビレット32温度より約500°F、600°F、1000°F、又はそれ以上低い温度を有し得、対応してダイ36とビレット32との間に約500°F、600°F、1000°F、又はそれ以上の温度差を生じさせ得る。このダイ36とビレット32との温度差により、ここでも結果としてビレット32の伝導及び/又は対流冷却が得られる。その結果、ここでもシステム30のプロセスパラメーターを制御又は調整して、押出プロセス中にビレット32内に生じる断熱加熱の量を調節し得る。例えば、プレスにより交互に及び/又は連続的に第1及び第2の部分38、40にかけられる歪み速度を制御又は調整して、押出プロセス中にビレット32内に生じる断熱加熱の量を変化させ得る。特定のシステム、チタン合金、ダイ36の部分38、40の大きさと数、及びその他様々なプロセスパラメーターに応じて、断熱加熱はビレット32の温度を必要に応じて上昇させて、ダイ36に移される熱をほぼ釣り合わせさせ得る。その結果、ここでもシステム30は押出プロセスの間ビレット32の温度をα−β温度範囲内に維持し、図5及び8に示した中間のビレット32を生成する。
【0023】
図9及び10は、本発明の第4の実施形態に従ってニアネットシェイプ鍛造するためのシステム50を図解する。先の実施形態と同様に、図9及び10に示したシステム50は既に記載し図解したシステム10、30と共に又は独立に使用し得る。例えば、図4及び5又は6、7、及び8に関して記載し図解したシステム30を用いて生成した中間のビレット32を、図9及び10に図解した実施形態を使用してさらに鍛造してニアネットシェイプ部品を製造し得る。
【0024】
図9及び10に示したシステム50は、一般に、図4及び5並びに6、7、及び8に示した実施形態に関して既に記載したようなビレット52、固定パンチ54、及びダイ56を含んでいる。具体的には、ビレット52は当業者に公知の任意の熱源を用いてα−β温度範囲内の温度に加熱されたチタン又はチタン合金からなり得る。さらに、固定パンチ54はビレット52と接触してこれを正しい位置に保持し、ダイ56はここでもビレット52を受容するためにビレット52に近接している。
【0025】
ダイ56は約500−1300°Fまでの温度に耐えることができる任意の適切な構造体からなり得、互いに独立して連続的及び/又は徐々に動き得る複数の部分を含んでいてもよい。例えば、図9及び10に示されているように、ダイ56は第1の部分58と第2の部分60を含み得る。プレス(図には示してない)が第1と第2の部分58、60を固定パンチ54に対して徐々に及び/又は連続的に動かして、ビレット52をダイ56中に次第に押し出し得る。ダイ56の複数の部分に徐々に及び/又は連続的に圧力をかけることによって、ダイ56の複数の部分とビレット52との間の接触点が低減する。その結果、ビレット52を鍛造するのに必要とされる歪み速度が低減し、より小さい能力のプレスで、ビレット52を鍛造する所望の歪み速度が得られるようになる。加えて、ダイ56の複数の部分の徐々に増加する及び/又は連続的な動きによって、鍛造されたビレット52の亀裂成長耐性を高める望ましい残留圧縮応力がビレット56内に生じる。
【0026】
先の実施形態と同様に、ダイ56はビレット52の温度より実質的に低い温度を有し得、ダイ56に必要な材料のコストを低減し得る。例えば、ダイ56はビレット52の温度より約500°F、600°F、1000°F、又はそれ以上低い温度を有し得、それに対応してダイ56とビレット52との間に約500°F、600°F、1000°F、又はそれ以上の温度差を創成し得る。このダイ56とビレット52との間の温度差により、ここでも結果としてビレット52の伝導及び/又は対流冷却が得られる。その結果、ここでもシステム50のプロセスパラメーターを制御又は調整して、押出プロセス中にビレット52に生じる断熱加熱の量を調節し得る。例えば、プレスにより交互に及び/又は連続的に第1と第2の部分58、60にかけられる歪み速度を制御又は調整して、押出プロセス中にビレット52内に生成する断熱加熱の量を変化させ得る。特定のシステム、チタン合金、ダイ56の部分58、60の大きさと数、及びその他様々なプロセスパラメーターに応じて、断熱加熱はビレット52の温度を必要に応じて上昇させ、ダイ56に移される熱とほぼ適合させ得る。結果として、システム50はここでも押出プロセスの間ビレット52の温度をα−β温度範囲内に維持し、その結果図10に示され、所望の結晶粒度及び配向及び残留圧縮応力を有し、また研磨又はその他の最終加工プロセスを殆ど又は全く必要としないニアネットシェイプビレット52が生成する。
【0027】
当業者には容易に理解されるように、既に記載した実施形態を任意の順序で順次組み合わせて、複雑な曲線を有するニアネットシェイプチタン部品を鍛造するためのシステムと方法を提供し得る。例えば、図1、2、及び3に関して記載し図解した第1のダイ18を用いて鍛造されたチタンビレット12はその後図4及び5又は6、7、及び8に関して記載した第2のダイ36を用いて鍛造し得、また、中間のチタンビレット32はその後図9及び10に関して記載した第3のダイ56を用いて鍛造し得る。既に記載したように、順序、量、及び各ダイ18、36、56にかけられる歪み速度を調整又は制御して、鍛造されたビレット内に生じる断熱加熱の量を調節することができ、こうしてあまり高価でないダイを使用してもビレットの温度をα−β温度範囲内に維持することが可能になる。加えて、順序、量、及び各ダイ18、36、56にかけられる歪み速度を調整又は制御して、様々なチタンビレット12、32、52内に粒子組織の所望の大きさ、位置、及び配向及び/又は残留圧縮応力を生成し得る。その結果、既に記載し図解した実施形態の組合せで、追加の仕上げ処理又は加工処理を必要とすることなく、異なる結晶粒子を有する複数のゾーンと圧縮応力特性をもつチタン製品を製造し得る。最後に、ダイの徐々に増大する及び/又は引き続く動きの結果、ダイとビレットとの間の接触点が低減し、プレスが増大した歪み能力を有する必要性が回避される。
【0028】
本明細書の記載では例を用いて、最良の態様を含めて本発明を開示し、また、当業者が本発明を実施する、例えば、あらゆる装置又はシステムを作成し使用し、またあらゆる組み込まれた方法を実行することができるようにした。本発明の特許可能な範囲は特許請求の範囲に定義されており、当業者には自明の他の例を包含し得る。かかる例及びその他の例は、特許請求の範囲の文言と異ならない構造要素を含むか、又は特許請求の範囲の文言と実質的でない差を有する等価な構造要素を含む場合、これらは特許請求の範囲内に包含されるものと考えられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a.チタンビレット(12)をα−β温度範囲内の温度に加熱し、
b.チタンビレット(12)を、チタンビレット(12)の温度より約500°F低い温度を有する第1のダイ(18)中に押し出す
ことを含んでなる、チタン部品をニアネットシェイプ鍛造する方法。
【請求項2】
さらに、チタンビレット(12)を、チタンビレット(12)の温度より約600°F低い温度を有する第1のダイ(18)中に押し出すことを含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
さらに、チタンビレット(12)を断熱加熱することを含む、請求項1又は請求項2記載の方法。
【請求項4】
さらに、チタンビレット(12)の温度をα−β温度範囲内に維持することを含む、請求項1乃至請求項3のいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
さらに、第1のダイ(18)の第1の部分(38)をチタンビレット(12)に対して徐々に移動させることを含む、請求項1乃至請求項4のいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
さらに、第1のダイ(18)の第2の部分(40)をチタンビレット(12)に対して徐々に移動させることを含む、請求項5記載の方法。
【請求項7】
さらに、チタンビレット(12)を第2のダイ(36)中に押し出すことを含んでおり、第2のダイ(36)がチタンビレット(12)の温度より約500°F低い温度を有する、請求項1乃至請求項6のいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
さらに、第2のダイ(36)の第1の部分(38)をチタンビレット(12)に対して徐々に移動させる、請求項7記載の方法。
【請求項9】
さらに、第2のダイ(36)の第2の部分(40)をチタンビレット(12)に対して徐々に移動させる、請求項8記載の方法。
【請求項10】
a.α−β温度範囲内の温度を有するチタンビレット(12)、
b.チタンビレット(12)と接触しているパンチ(14)、及び
c.チタンビレット(12)に近接していてチタンビレット(12)を受容するための第1のダイ(18)であって、チタンビレット(12)の温度より約500°F低い温度を有する前記第1のダイ(18)
を含んでなる、チタン部品をニアネットシェイプ鍛造するためのシステム(10)。
【請求項11】
第1のダイ(18)がチタンビレット(12)の温度より約600°F低い温度を有する、請求項10記載のシステム(10)。
【請求項12】
第1のダイ(18)がパンチ(14)に対して移動するように構成されている、請求項10又は請求項11記載のシステム(10)。
【請求項13】
第1のダイ(18)が第1の部分(38)及び第2の部分(40)を含んでいる、請求項10乃至請求項12のいずれか1項記載のシステム(10)。
【請求項14】
第1のダイ(18)の第1の部分(38)が第1のダイ(18)の第2の部分(40)と独立して移動するように構成されている、請求項13記載のシステム(10)。
【請求項15】
第1のダイ(18)の一部分のみが一時にチタンビレット(12)と接触している、請求項13又は請求項14記載のシステム(10)。
【請求項16】
さらに、第1のダイ(18)からのチタンビレット(12)を受容する第2のダイ(36)を含んでいる、請求項10乃至請求項13のいずれか1項記載のシステム(10)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−91230(P2012−91230A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−231206(P2011−231206)
【出願日】平成23年10月21日(2011.10.21)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【Fターム(参考)】