説明

ニッケル鉱石とステンレス副生物成形体とを利用したニッケル冷銑の製造方法

【課題】ニッケル鉱石とステンレス副生物成形体とを利用したニッケル冷銑の製造方法に関する。
【解決手段】SAF電気炉にて、ニッケル鉱石、ステンレス副産物成形体、還元剤、スラグ調製材、及び再使用スラグを投入して溶解させるステップを有し、ニッケル鉱石の投入量が25重量%以下である、ニッケル鉱石とステンレス副産物成形体とを利用したニッケル冷銑の製造方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ニッケル鉱石とステンレス副生物成形体とを利用したニッケル冷銑の製造方法に関し、より具体的には、エスエイエフ(SAF)電気炉にて、未加工のニッケル鉱石と、ニッケルを含むステンレス副生物成形体である団鉱とを投入して溶解させる、ニッケル鉱石とステンレス副生物成形体とを利用したニッケル冷銑の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ニッケル冷銑の製造方法には、電気炉法、HPAL法、小型高炉法などがある。
【0003】
電気炉法では、ニッケル酸化鉱の1つであるサプロライトを破砕し、乾燥機にて乾燥させる。その後、ロータリーキルンにて結晶水を分解し、予備還元を行った後、SAF電気炉にて溶解させてフェロニッケル(FeNi)を製造する。
【0004】
他の方法であるHPAL法では、ニッケル酸化鉱の1つであるリモナイトを硫酸などで浸出させてニッケル溶液を製造する。その後、ニッケル溶液を硫化ニッケル(NiS)として製造し、酸素を入れて酸化ニッケル(NiO)として製造し、水素で還元させてニッケルメタルを製造する。
【0005】
さらに他の方法である小型高炉法では、リモナイトを焼結させた後、小型高炉にて多量のコークスを用いてニッケル冷銑を製造する。
【0006】
しかし、前述した方法によりニッケルを製造した場合、大規模な設備投資が要求され、かつニッケル鉱石に焼結のような前処理をしなければならないという問題があった。
【特許文献1】大韓民国特許公開第2006−0059277号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明は、前述した問題を解決するためになされたものであって、その目的は、SAF電気炉に投入されたステンレス副生物成形体にニッケル鉱石を投入して溶解させる、ニッケル鉱石とステンレス副生物成形体である団鉱とを利用したニッケル冷銑の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様によれば、本発明のニッケル鉱石とステンレス副生物成形体とを利用したニッケル冷銑の製造方法は、SAF電気炉にて、ニッケル鉱石、ステンレス副産物成形体、還元剤、スラグ調製材、及び再使用スラグを投入して溶解させるステップを有し、前記ニッケル鉱石の投入量が25重量%以下である。
【0009】
このとき、前記還元材は、コークスからなり、当該コークスは、ステンレス副生物成形体とニッケル鉱石との合計に基づき、当該合計の1トン重量あたり100kg〜200kgのコークスが添加され得る。また、前記スラグ調製材は、珪石からなり、当該珪石は、100kg〜180kgが添加され得る。さらに、前記ステンレス副生物は、ニッケルを含む団鉱またはペレットであり得る。また、前記SAF電気炉に投入される介在物の水分の重量は、15重量%以下に設定され得る。
【発明の効果】
【0010】
以上説明したように、本発明によれば、既存の合金鉄を製造するSAF電気炉にてステンレス副生物成形体を処理することができ、ステンレス副生物成形体の投入されたSAF電気炉内にニッケル鉱石を投入して溶融させることにより、ニッケル冷銑を生産することができる。また、SAF電気炉内に投入されるニッケル鉱石の投入量を調整してニッケル鉱石を加工せずに用いることにより、製造工程を単純化させ、かつ製造コストを低減することができる。さらには、電気炉にて発生する副生物とニッケル鉱石とを用いてニッケル冷銑を製造することにより、低価格のニッケル冷銑を生産することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下では、本発明の実施例を示す図面を参照して本発明をより具体的に説明する。
【0012】
図1は、本発明のニッケル鉱石と、ニッケルを含むステンレス副生物成形体とを利用したニッケル冷銑の製造方法を示すフローチャートである。
【0013】
同図に示すように、ニッケル冷銑12を製造するためには、まず、ニッケルを含むステンレス副生物1を熟成機2に投入する。ここで、ステンレス副生物1は、ステンレス製鋼ダスト、製鋼スケール、焼鈍スケール、及び焼鈍酸化鉄であって、ステンレスの製造過程で発生した副生物からなり得る。
【0014】
熟成機2は、製鋼ダストにある生石灰を水和して製造されたステンレス副生物成形体である団鉱6が、水和膨張によって割れないようにする。その後、ステンレス副生物1は、ミキサ4に移される。バインダー3は、ステンレス副生物成形体である団鉱6が、強度を維持しつつ、SAF電気炉11にて溶解作業の際に発生したCOガスが抜けやすくなるように、通気性を維持できるようにする。また、ミキサ4にてステンレス副生物1とバインダー3とを混合して、ブリケッター5またはペレタイザーにて均一な団鉱6またはペレットとして製造する。ブリケッター5にて形成されたステンレス副生物成形体である団鉱6は、SAF電気炉11に投入される。さらに、SAF電気炉11には、未加工のニッケル鉱石7、還元剤かつ熱源であるコークス8、スラグ調製材である珪石9及び再使用スラグ10がさらに投入される。
【0015】
このとき、SAF電気炉11に投入される原料の水分含有量は、重要な要素として作用し、原料中の水分の重量(%)は、15重量%以下に設定される。
【0016】
これにより、本実施例では、水分を含むニッケル鉱石7の配合比を調整して、SAF電気炉11内の水分含有量を15重量%以下に設定する。図2はニッケル鉱石の配合比によるSAF電気炉内の水分含有量を示すグラフである。図2に示すように、一般的に、SAF電気炉11に投入される原料の水分の限界値は15重量%である。このように、SAF電気炉11に投入される原料の水分の限界値が15重量%を超えないようにするためには、ニッケル鉱石7の投入比を25重量%以下に設定しなければならない。すなわち、ニッケル鉱石7の投入比が原料の25重量%を超えた場合、水分含有量が高くなる。これにより、ニッケル鉱石7に含まれる水分と耐火物とが反応して寿命を短縮させ、電力源の単位が増加する。これにより、SAF電気炉11に投入される原料中のニッケル鉱石7の割合は、25重量%以下になるようにする。
【0017】
また、SAF電気炉には、重量が20%以下のニッケル鉱石、50%以上のステンレス副生物、7%〜13%の還元剤、7%〜12%のスラグ調製材、及び10%以下の再使用スラグを投入して溶解させることが好ましい。
還元剤8のコークスは、ステンレス副生物成形体である団鉱6とニッケル鉱石7との1トン重量に基づき、100kg/トン〜200kg/トン(ステンレス副生物成形体である団鉱とニッケル鉱石との合計)が添加される。
【0018】
これは、1トンのステンレス副生物成形体である団鉱6とニッケル鉱石7との合計に、100kg未満のコークスが添加されると、ステンレス副生物成形体である団鉱6とニッケル鉱石7との還元が円滑に行われず、200kgを超えて添加されると、製造コストが増加し、硫黄含有量が高くなるからである。
【0019】
さらに、スラグ調製材9である珪石の添加量は、100kg〜180kgが好ましい。これは、珪石の添加量が100kg未満または180kg超過になると、原料中の塩基度が合わないために耐火物の寿命が短縮し、スラグの融点が異なるためにニッケル冷銑12の製造が困難になるからである。
【0020】
また、再使用スラグ10は、150kg以下を投入することが好ましいが、これは、再使用スラグ10を150kgを超えて投入すると、スラグが増加し、ニッケル冷銑12の実収率及び生産性が低下するからである。
【0021】
このように、SAF電気炉11に、ステンレス副生物成形体である団鉱6、ニッケル鉱石7、還元剤かつ熱源であるコークス8、スラグ調製材である珪石9及び再使用スラグ10が投入されると、上記副生物成形体を溶解させてニッケル冷銑12を製造する。これにより、ニッケル冷銑12は、既存の合金鉄を製造するSAF電気炉11にてステンレス副生物成形体を処理することができ、粒度が均一でなく、水分及び結晶水を多量に含むニッケル鉱石7を加工せずに用いることができる。すなわち、ニッケル鉱石7は、微粉から塊体にいたるまで、その大きさが一定でなく、水分含有量が35%と高く、結晶水も15%程度含んでいるため、前処理を行わずに用いることは困難であったが、本発明では、SAF電気炉11内に適正量のニッケル鉱石7を投入することにより、SAF電気炉11の生産性や還元性に支障をきたさないようにした。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】図1は、本発明のニッケル鉱石と、ニッケルを含むステンレス副生物成形体とを利用したニッケル冷銑の製造方法を示すフローチャートである。
【図2】図2は、SAF電気炉内に投入されたニッケル鉱石の配合比に応じたSAF電気炉内の水分含有量を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
SAF電気炉にて、ニッケル鉱石、ステンレス副産物成形体、還元剤、スラグ調製材、及び再使用スラグを投入して溶解させるステップを有し、前記ニッケル鉱石の投入量が25重量%以下である、ニッケル鉱石とステンレス副産物成形体とを利用したニッケル冷銑の製造方法。
【請求項2】
前記還元剤は、コークスからなり、当該コークスは、前記ステンレス副生物成形体と前記ニッケル鉱石との合計に基づき、当該合計の1トン重量あたり100kg〜200kgのコークスが添加される、請求項1に記載のニッケル鉱石とステンレス副生物成形体とを利用したニッケル冷銑の製造方法。
【請求項3】
前記スラグ調製材は、珪石からなり、当該珪石は、100kg〜180kgが添加される、請求項1又は2に記載のニッケル鉱石とステンレス副生物成形体とを利用したニッケル冷銑の製造方法。
【請求項4】
前記ステンレス副生物成形体は、ニッケルを含む団鉱またはペレットである、請求項1から3のいずれか1項に記載のニッケル鉱石とステンレス副生物成形体とを利用したニッケル冷銑の製造方法。
【請求項5】
前記SAF電気炉に投入される介在物の水分の重量は、15重量%以下に設定される、請求項1から4のいずれか1項に記載のニッケル鉱石とステンレス副生物成形体とを利用したニッケル冷銑の製造方法。

【図1】
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【図2】
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