説明

ニトリルオキシドで変性した変性高分子材料及びその製造方法

【課題】ニトリルオキシドで変性することにより有機溶媒に対する溶解性を変化させた変性高分子材料及びその製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】分子内にニトリルオキシドと反応する多重結合を有する高分子材料を変性した変性高分子材料の製造方法であって、芳香環にニトリルオキシド基が結合した芳香族ニトリルオキシドのニトリルオキシド基のオルト位に、フルオロ基(F)、ヒドロキシ基(OH)、アミノ基(NH)、ヒドロ基(H)以外の基、特にアルキル基又はアルコキシ基を有する芳香族ニトリルオキシド誘導体を高分子材料に反応させる反応過程を備えることを特徴とする変性高分子材料の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機溶媒に対する溶解性を変えた変性高分子材料及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
EPDM、NR、NBR等のように分子内に炭素−炭素二重結合を有する高分子材料は、太陽光(特に紫外線)やオゾンにより劣化し易いため、用途によっては耐候性に問題が生じることがあった。また、これらの高分子材料は、特定の有機溶媒等に対しては溶解することがあり、そのような有機溶媒等と接触するおそれがある部位にも用いることができなかった。そのため、これらの高分子材料の用途を広げる一策として、ニトリルオキシドでの変性(化学修飾)が考えられている。
【0003】
一方、代表的な1,3双極子の一つであるニトリルオキシドは、アルケン、アルキンのモノマーや、ニトリル化合物のモノマー等と温和な条件で反応することが古くから知られている。しかしながら、ニトリルオキシドはその反応性の高さから非極性溶媒中で徐々に二量化し、フロキサンとなるため、単離、保存することが困難となっていた。そのため、ニトリルオキシドによる変性を行うためには、その前駆体であるハロゲン化アルドキシムにトリエチルアミン等の塩基を作用させる等して、反応系中でニトリルオキシドを発生させて行う方法が一般的になっている。
【0004】
しかし、この方法でNBRやPANをはじめとする高分子材料にニトリルオキシドを反応させることを試みたところ、反応はほとんど進行せず、ニトリルオキシドにより変性された変性高分子材料を得ることは不可能であった。
【0005】
なお、特許文献1には、メシチレンジニトリルオキシド、メシチレンモノニトリルオキシド等のベンゾニトリルオキシド誘導体の合成方法については記載があるものの、ベンゾニトリルオキシド誘導体により変性された高分子材料については記載がない。
また、特許文献2には、4−(2−オキサゾリル)−フェニル−N−フェニルニトロン及び4−(2−オキサゾリル)−フェニル−N−メチルニトロン等の複素環を有する化合物を用いて、シクロヘキサン中でジエン系共重合ゴムを混練して反応させることの記載はあるものの、オルト位に置換基を有する芳香族ニトリルオキシドにより変性された高分子材料については記載がない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−180943号公報
【特許文献2】特開2008−163232号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明は、ニトリルオキシドで変性することにより有機溶媒に対する溶解性を変化させた変性高分子材料及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明の変性高分子材料の製造方法は、分子内にニトリルオキシドと反応する多重結合を有する高分子材料を変性した変性高分子材料の製造方法であって、芳香環にニトリルオキシド基が結合した芳香族ニトリルオキシドの前記ニトリルオキシド基のオルト位に置換基を有する芳香族ニトリルオキシド誘導体を前記高分子材料に反応させる反応過程を備えることを特徴とする。
【0009】
上記課題を解決するため、本発明の変性高分子材料は、分子内にニトリルオキシドと反応する多重結合を有する高分子材料が、芳香環にニトリルオキシド基が結合した芳香族ニトリルオキシドの前記ニトリルオキシド基のオルト位に置換基を有する芳香族ニトリルオキシド誘導体で変性されてなる。
【0010】
本発明における各要素の態様を以下に例示する。
【0011】
1.高分子材料
高分子材料の多重結合としては、特に限定はされないが、C=S、N=N、P(V)=C、C=P(III)、C=As、C=C、C=N、C=Se、B=N、C≡P、C≡C、P(V)=N、C≡N、C=O等が例示できる。
高分子材料としては、特に限定はされないが、分子内にニトリル基(C≡N)を有するPAN(ポリアクリロニトリル)、分子内に炭素−炭素二重結合(C=C)を有するNR(天然ゴム)、EPDM(エチレン−プロピレン−ジエン共重合ゴム)、分子内にニトリル基及び炭素−炭素二重結合を有するNBR(ニトリルゴム)等が例示できる。
【0012】
2.芳香族ニトリルオキシド誘導体
芳香族ニトリルオキシド誘導体としては、特に限定はされないが、芳香族ニトリルオキシドのニトリルオキシド基の全てのオルト位に置換基を有することが好ましい。
芳香環にニトリルオキシド基が結合した芳香族ニトリルオキシドとしては、特に限定はされないが、ベンゾニトリルオキシド又はナフチルニトリルオキシドが好ましい。
芳香族ニトリルオキシド誘導体の置換基としては、特に限定はされないが、フルオロ基(F)、ヒドロキシ基(OH)、アミノ基(NH)、ヒドロ基(H)以外の置換基であることが好ましく、より好ましくは、アルキル基又はアルコキシ基である。
芳香族ニトリルオキシド誘導体のアルキル基としては、特に限定はされないが、炭素数が1〜20の直鎖状又は分岐状のものが好ましく、より好ましくは、炭素数が1〜4の直鎖状又は分岐状のものである、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、iso−ブチル基、tert−ブチル基である。
芳香族ニトリルオキシド誘導体のアルコキシ基としては、特に限定はされないが、炭素数が1〜4の直鎖状又は分岐状のものが好ましく、より好ましくは、炭素数が1〜3の直鎖状又は分岐状のものである、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、iso−プロポキシ基である。
高分子材料に対する芳香族ニトリルオキシド誘導体の添加量としては、特に限定はされないが、0.01〜10当量であることが好ましい。
【0013】
3.反応過程
反応過程としては、特に限定はされないが、有機溶媒中又は無溶媒で行うことが好ましい。
有機溶媒としては、特に限定はされないが、高分子材料及び芳香族ニトリルオキシド誘導体が共に溶解し易いものであることが好ましい。具体的には、クロロホルム、DMF(N,N−ジメチルホルムアミド)等が例示できる。
無溶媒で行う場合には、空気下で行ってもよいし、不活性ガスが充填された雰囲気下で行ってもよい。
不活性ガスとしては、特に限定はされないが、アルゴン、窒素等が例示できる。
反応過程が無溶媒で行われる場合には、反応過程を、混練装置で行うことが好ましい。
混練装置としては、特に限定はされないが、二軸混練機、密閉式混練機、バンバリーミキサー、インターミックス等の混練機や二軸押出機、単軸押出機、多軸押出機等の押出機等が例示できる。
反応過程の温度としては、芳香族ニトリルオキシド誘導体が高分子材料と反応する温度であれば、特に限定はされない。敢えていうならば、化学反応であることから温度が高ければ反応が促進され、また加熱等の温度調節を行わなければ製造工程の管理が容易になることから、0〜150℃であることが好ましい。さらにいうならば、高分子材料がNBR、NR、EPDM等のように、多重結合として少なくとも炭素−炭素二重結合を有するものである場合には、20〜100℃であることがより好ましく、PAN等のように、多重結合として三重結合のみを有するものである場合には、60〜150℃であることがより好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、ニトリルオキシドで変性することにより有機溶媒に対する溶解性を変化させた変性高分子材料を製造し、提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0015】
本発明の実施例としてPAN、NBR、NR及びEPDMの4種類の高分子材料を以下に示す3種類の芳香族ニトリルオキシド誘導体を用いて変性した変性高分子材料を製造した。
また、比較例として、PAN及びNBRの2種類の高分子材料をニトリルオキシドの前駆体であるハロゲン化アルドキシムに塩基等を作用させる方法(比較例1〜5)、及びPANに芳香族ニトリルオキシド誘導体を室温で作用させる方法(比較例6)を用いた。
【0016】
それぞれの実施例及び比較例の製造(反応)条件と収率及び修飾率を次の表1に示す。なお、表1の試薬の欄は、反応に用いた芳香族ニトリルオキシド誘導体等を示し、括弧内の数字は、それぞれの試薬の添加量(高分子材料に対する当量)である。また、NBRの修飾率は、炭素−炭素二重結合(diene)及びニトリル基(CN)のそれぞれについて表記している。
【0017】
【表1】

【0018】
本実施例及び比較例には、次のものを用いた。
高分子材料としては、PAN(ポリアクリロニトリル)、NBR(ニトリルゴム)、NR(天然ゴム)、EPDM(エチレン−プロピレン−ジエン共重合ゴム)を用いた。このうち、NBRはアクリロニトリルの質量比が33%のものを、EPDMはジエンの質量比が10%のものを用いた。
芳香族ニトリルオキシド誘導体としては、2,6−ジメトキシベンゾニトリルオキシド(B)、2,6−ジエトキシベンゾニトリルオキシド(C)、2−メトキシナフチル−1−ニトリルオキシド(D)を用いた。それぞれの化学式を次に示す。また、2−メトキシナフチル−1−ニトリルオキシドについては、その合成方法を示す。
【0019】
【化1】

【化2】

【化3】

【0020】
2−メトキシナフチル−1−ニトリルオキシドの合成は下記の化学式4のようにして行った。
先ず、市販の化合物1(2−ヒドロキシ−1−ナフトアルデヒド)80.0g(0.46 mol)をアセトン500mLに溶解させた。これに、KCO76.5g(0.56mol)を加えた後、0℃で(CHO)SO61.7g(0.49mol)をゆっくりと加え、そのまま30分攪拌した後、一晩還流した。しかし、反応が未完了であったため、KCO76.5g(0.56mol)、(CHO)SO61.7g(0.49mol)を追加して4時間還流した。そして、室温まで放冷した後、ろ過により塩を除去し、ろ液を回収した。このろ液を減圧濃縮によりアセトンを除去した後、クロロホルム−NaHCO水溶液で抽出した。抽出した有機層をMgSOで水分除去した後、減圧濃縮することによりgreen solid(緑色固体)の化合物2(2−メトキシ−1−ナフトアルデヒド)を85.2g(収率99%)得た。
化合物2(2−メトキシ−1−ナフトアルデヒド)85.2g(0.46 mol)にエタノール260mL、水260mL、NaOH49.0g(1.23mol)を加えた後、NHOH−HCl37.5g(0.54mol)をゆっくりと加えた。そして、室温で1時間攪拌した後、ろ過によりyellow powder(黄色粉末)の化合物3(2−メトキシ−1−ナフトアルデヒドオキシム)を90.5g(収率92%)得た。
化合物3(2−メトキシ−1−ナフトアルデヒドオキシム)2.00g(9.94mmol)に水20mL、NaOH1.19g(29.8mmol)クロロホルム20mLを加えた後、0℃でBr2.38g(14.9mmol)をゆっくり滴下した。そして、室温で30分攪拌した後、この反応溶液をクロロホルム−水で抽出した。抽出した有機層をMgSOで水分除去した後、減圧濃縮することによりbrown solid(茶色固体)の化合物4(2−メトキシナフチル−1−ニトリルオキシド)を903mg(収率46%)得た。
【0021】
【化4】

【0022】
比較例に用いたハロゲン化アルドキシムとしては、次の化学式で表されるα−塩化ベンゾアルドキシム(A)を用いた。
【0023】
【化5】

【0024】
次に各実施例について説明する。
実施例1は、DMF(N,N−ジメチルホルムアミド)の溶媒中にPANを溶解させ、そこに芳香族ニトリルオキシド誘導体として2,6−ジメトキシベンゾニトリルオキシド(以下Bと省略することがある)を2.0当量添加し、100℃の温度で48時間攪拌して反応を行った。
実施例2は、反応が行われる温度(以下反応温度ということがある)を150℃に変更した以外は実施例1と同じ条件で反応を行った。
実施例3は、反応温度を70℃に変更した以外は実施例1と同じ条件で反応を行った。
実施例4は、芳香族ニトリルオキシド誘導体として2,6−ジエトキシベンゾニトリルオキシド(以下Cと省略することがある)を用いた以外は実施例3と同じ条件で反応を行った。
実施例5は、芳香族ニトリルオキシド誘導体として2−メトキシナフチル−1−ニトリルオキシド(以下Dと省略することがある)を用いた以外は実施例3と同じ条件で反応を行った。
【0025】
実施例6は、CHCl(クロロホルム)の溶媒中にNBRを溶解させ、そこにBを1.2当量添加し、70℃の温度で24時間攪拌して反応を行った。また、この反応を下記の化学式6に示す。
実施例7は、攪拌又は混合して反応を行う時間(以下反応時間ということがある)を2時間に変更した以外は実施例6と同じ条件で反応を行った。
実施例8は、Bの添加量を0.67当量に、反応時間を48時間にそれぞれ変更した以外は実施例6と同じ条件で反応を行った。
実施例9は、Bの添加量を0.33当量に変更した以外は実施例8と同じ条件で反応を行った。
実施例10は、溶媒を用いず空気下において、乳鉢中でNBRにBを1.2当量添加し、70℃の温度で2時間加圧混合して反応を行った。
実施例11は、反応温度を100℃に変更した以外は実施例10と同じ条件で反応を行った。
実施例12は、芳香族ニトリルオキシド誘導体としてCを用い、反応時間を48時間に変更した以外は実施例6と同じ条件で反応を行った。
実施例13は、芳香族ニトリルオキシド誘導体としてCを用いた以外は実施例10と同じ条件で反応を行った。
実施例14は、芳香族ニトリルオキシド誘導体としてDを用いた以外は実施例12と同じ条件で反応を行った。
【0026】
【化6】

【0027】
実施例15は、CHClの溶媒中にNRを溶解させ、そこにBを2.0当量添加し、70℃の温度で48時間攪拌して反応を行った。
【0028】
実施例16は、CHClの溶媒中にEPDMを溶解させ、そこにBを1.0当量添加し、70℃の温度で84時間攪拌して反応を行った。
実施例17は、溶媒を用いずアルゴンガス(Ar)下において、乳鉢中でEPDMにBを2.0当量添加し、加熱を行わず室温(RT:約25℃)で2時間加圧混合して反応を行った。
実施例18は、溶媒を用いず窒素ガス(N)下で、EPDMにBを0.95当量添加し、槽内温度が70℃の二軸混練機(槽内も窒素ガス充填)を用いて1時間攪拌して反応を行った。
実施例19は、芳香族ニトリルオキシド誘導体としてDを10当量添加し、反応時間を48時間に変更した以外は実施例16と同じ条件で反応を行った。
【0029】
次に各比較例について説明する。
比較例1は、DMFの溶媒中にPANを溶解させ、そこにニトリルオキシドの前駆体としてα−塩化ベンゾアルドキシム(以下Aと省略することがある)を2.0当量添加するとともに添加剤としてEtN(トリエチルアミン)を添加し、加熱を行わず室温(RT:約25℃)で48時間攪拌して反応を行った。
比較例2は、反応温度を100℃に変更した以外は比較例1と同じ条件で反応を行った。
比較例3は、添加剤としてMS4A(モレキュラーシープ4A)を用いた以外は比較例1と同じ条件で反応を行った。
比較例4は、添加剤としてMS4Aを用いた以外は比較例2と同じ条件で反応を行った。
比較例5は、CHClの溶媒中にNBRを溶解させ、そこにAを2.0当量添加するとともに添加剤としてEtNを添加し、70℃の温度で48時間攪拌して反応を行った。
比較例6は、反応温度が室温(RT:約25℃)である以外は実施例1と同じ条件で反応を行った。
【0030】
(1)修飾率
修飾率、即ち、高分子材料中の炭素−炭素二重結合及びニトリル基にニトリルオキシドが付加した割合を、IR測定、1HNMR測定及び13CNMR測定により算出した。従って、修飾率が100%であると高分子材料中の全ての炭素−炭素二重結合及びニトリル基にニトリルオキシドが付加したことになり、50%であると高分子材料中の半数の炭素−炭素二重結合及びニトリル基にニトリルオキシドが付加したことになる。
【0031】
(2)収率
上記のようにして求められた修飾率による理論収量を求め、その理論収量に対する実際の収量の割合を次の式により算出した。
【数1】

【0032】
表1に示すように、全ての実施例は、修飾率が0%ではない、即ち、高分子材料にニトリルオキシドが付加していることから、高分子材料をニトリルオキシドで変性することができ、変性高分子材料を得ることができた。また、反応条件を変えることで、修飾率を変えることができた。
実施例10,11,13,17,18は、溶媒を用いない(無溶媒)条件においてもニトリルオキシドによる変性を行うことができた。
一方、比較例は、全て、修飾率が0%であることから、高分子材料にニトリルオキシドを反応させる(付加させる)ことができなかった。
【0033】
次に上記実施例3,5,6,14〜16,19で得られたそれぞれの変性高分子材料について、7種類の有機溶媒に対する溶解性を調べ、その結果を表2に示す。7種類の有機溶媒は、アセトン、クロロホルム、ジエチルエーテル、トルエン、メタノール、ヘキサン及びDMF(N,N−ジメチルホルムアミド)である。なお、比較のため、変性前の各高分子材料についても有機溶媒に対する溶解性を調べ、その結果も併せて表2に示す。
【0034】
【表2】

【0035】
(3)溶解性
溶解性については、各試料を各溶媒に対し3mg/mLの割合になるように調整し、室温で約12時間静置した後に、肉眼で各試料の溶解性を調べ、次のように評価した。
○:溶解しない
△:少し溶解する
×:溶解する
【0036】
表2に示すように、ニトリルオキシドにより、分子内の炭素−炭素二重結合の部位がイソオキサゾリン基に、ニトリル基の部位がオキサジアゾールにそれぞれなることで、高分子材料が変性され、その影響で未変性の高分子材料と比較して各種溶媒に対する溶解性が著しく変化した。
【0037】
以上より、本実施例によれば、ニトリルオキシドによって変性(化学修飾)することで、高分子材料の各種溶媒に対する溶解性を変えることができた。
また、NBR、NR、EPDMは分子内の炭素−炭素二重結合が減少することで、太陽光やオゾンへの耐性がよくなり、耐候性を向上させることができた。
さらに、反応条件により修飾率をコントロールすることで、望みの耐候性、溶媒に対する溶解性を持った変性高分子材料を得ることができた。
【0038】
なお、本発明は前記実施例に限定されるものではなく、発明の趣旨から逸脱しない範囲で適宜変更して具体化することもできる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分子内にニトリルオキシドと反応する多重結合を有する高分子材料を変性した変性高分子材料の製造方法であって、
芳香環にニトリルオキシド基が結合した芳香族ニトリルオキシドの前記ニトリルオキシド基のオルト位に置換基を有する芳香族ニトリルオキシド誘導体を前記高分子材料に反応させる反応過程を備えることを特徴とする変性高分子材料の製造方法。
【請求項2】
前記芳香族ニトリルオキシドは、ベンゾニトリルオキシド又はナフチルニトリルオキシドである請求項1記載の変性高分子材料の製造方法。
【請求項3】
前記置換基は、アルキル基又はアルコキシ基である請求項1又は2記載の変性高分子材料の製造方法。
【請求項4】
前記高分子材料は、PAN、NBR、NR又はEPDMである請求項1〜3のいずれか一項に記載の変性高分子材料の製造方法。
【請求項5】
前記反応過程は、有機溶媒中又は無溶媒で行う請求項1〜4のいずれか一項に記載の変性高分子材料の製造方法。
【請求項6】
前記反応過程を混練装置で行う請求項1〜4のいずれか一項に記載の変性高分子材料の製造方法。
【請求項7】
分子内にニトリルオキシドと反応する多重結合を有する高分子材料が、芳香環にニトリルオキシド基が結合した芳香族ニトリルオキシドの前記ニトリルオキシド基のオルト位に置換基を有する芳香族ニトリルオキシド誘導体で変性されてなる変性高分子材料。
【請求項8】
前記芳香族ニトリルオキシドは、ベンゾニトリルオキシド又はナフチルニトリルオキシドである請求項7記載の変性高分子材料。
【請求項9】
前記置換基は、アルキル基又はアルコキシ基である請求項7又は8記載の変性高分子材料。
【請求項10】
前記高分子材料は、PAN、NBR、NR又はEPDMである請求項7〜9のいずれか一項に記載の変性高分子材料。

【公開番号】特開2011−52072(P2011−52072A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−200716(P2009−200716)
【出願日】平成21年8月31日(2009.8.31)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 発行者名 太田 暉人 発行所名 社団法人日本化学会 刊行物名 日本化学会第89春季年会講演予稿集DVD−ROM 発行日 平成21年3月13日 〔刊行物等〕 研究集会名 日本化学会第89春季年会(2009) 主催者名 社団法人日本化学会 開催日 平成21年3月27日〜30日 公開日 平成21年3月28日
【出願人】(000241463)豊田合成株式会社 (3,467)
【出願人】(304021417)国立大学法人東京工業大学 (1,821)
【Fターム(参考)】