説明

ニューブラスチン(Neublastin)変異体

選択されたアミノ酸残基に置換を有している変異体ニューブラスチン(Neublastin)ポリペプチドが開示される。1つ以上の選択されたアミノ酸残基での置換によっては、ヘパリンの結合が減少し、そして変異体ニューブラスチンポリペプチドの血清暴露が増大する。哺乳動物の疾患を処置し、RET受容体を活性化させるために変異体ニューブラスチンポリペプチドを使用する方法もまた開示される。1つの局面において、本発明は、配列番号1の15位〜113位のアミノ酸に対して少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含むポリペプチドを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2004年8月19日に出願された仮特許出願番号60/602,825および2005年6月24日に出願された各特許出願番号60/694,067の優先権を主張する。これらの先行出願の各々の全内容は、その全体が本明細書に参考として援用される。
【0002】
(技術分野)
本発明は、タンパク質化学、分子生物学、および神経学に関する。
【背景技術】
【0003】
(背景)
ニューブラスチン(Neublastin)はアルテミン(Artemin)およびエノビン(Enovin)としても知られており、24kDaのホモ二量体の分泌タンパク質である。これは、ドーパミン作用性ニューロンのような末梢神経系および中枢神経系のニューロンの生存性を促進する(非特許文献1;非特許文献2)。ニューブラスチンをコードする遺伝子はクローニングされ、配列決定されている(非特許文献3)。
【0004】
ニューブラスチンは、グリア細胞株に由来する神経栄養因子(GDNF)リガンドファミリーのメンバーである。細胞レベルでは、GDNFメンバーは、受容体チロシンキナーゼRETを活性化させる。RETは、RETのリガンド特異性を提供するグリコシルホスファチジルイノシトール(GPI)結合膜タンパク質であるコレセプター、GNDFファミリー受容体α(GFRα)と会合する。4つのGFRαが公知である(GFRα1〜4)。ニューブラスチンはRETとともにGFRα3に結合して、3成分からなるシグナル伝達複合体を形成する(非特許文献3)。これは、侵害受容感覚ニューロンに主に局在化している(非特許文献4)。これらのニューロンは痛みと損傷を検出する。したがって、ニューブラスチンは、神経障害の通常の処置に、そしてより具体的には、神経障害の痛みの処置において臨床的に応用できる。
【0005】
ニューブラスチンおよび他のGDNFファミリーのメンバーは、トランスフォーミング増殖因子β(TGFβ)スーパーファミリーのメンバーであり、したがって、システインノットの構造を形成する同様の空間を有している7個の保存されているシステイン残基の存在を特徴とする(非特許文献5)。それぞれの単量体には2つのジスルフィド結合が含まれており、これらはきついノット構造を形成するように第3のジスルフィドを取り囲む閉環構造を形成する。個々の単量体形態の中に含まれる7個のシステインは分子間ジスルフィド結合を形成し、これによって、最終的な二量体産物を形成するように単量体が共有結合する。(非特許文献6)。
【0006】
TGFβファミリーのメンバーはプレプロタンパク質として合成され、これは最終的には、シグナルペプチドおよびプロドメインの切断後に成熟ホモ二量体として分泌される(例えば、非特許文献6;非特許文献7)。シグナルペプチドとプロドメインの両方が、TGFβファミリーのメンバーの適切な分泌を媒介する(非特許文献6;非特許文献8)。
【非特許文献1】Baudet et al.,2000、Development,127:4335
【非特許文献2】Rosenblad 2000,Mol.Cell Neurosci.,15(2):199;GenBank AF120274
【非特許文献3】Baloh et al.,Neuron,21:1291
【非特許文献4】Orozco et al.,2001、Eur.J.Neurosci.,13(11):2177
【非特許文献5】Saarma,1999,Microsc.Res.Tech.,45:292
【非特許文献6】Rattenholl et al.,2000,J.Mol.Biol.,305:523
【非特許文献7】Fairlic et al.,2001,J.Biol.Chem.276(20):16911
【非特許文献8】Fairlic et al.,2001,J.Biol.Chem.276(20):16911
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0007】
(要旨)
本発明は、ニューブラスチンがヘパリン硫酸に結合すること、およびニューブラスチンポリペプチドの中の特定のアミノ酸残基がこの結合事象に寄与していることの発見に、少なくとも一部基づく。選択されたアミノ酸残基の置換は、変異体ニューブラスチンポリペプチドによるヘパリン結合を減少させ、そして変異体の生体活性および生体利用性を増大させることが明らかにされた。
【0008】
1つの態様においては、本発明は、配列番号1の15位〜113位のアミノ酸に対して少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含むポリペプチドを特徴とする。ここでは、アミノ酸配列には、以下からなる群より選択される、配列番号1と比較して少なくとも1つのアミノ酸置換が含まれる:(i)配列番号1の48位に相当する位置にアルギニン以外のアミノ酸(例えば、アルギニンは、グルタミン酸のような非保存的アミノ酸残基で置換される);(ii)配列番号1の49位に相当する位置にアルギニン以外のアミノ酸(例えば、アルギニンは、グルタミン酸のような非保存的アミノ酸残基で置換される);および(iii)配列番号1の51位に相当する位置にアルギニン以外のアミノ酸(例えば、アルギニンは、グルタミン酸のような非保存的アミノ酸残基で置換される)。このポリペプチドは、二量体化すると、GFRα3とRETを含む複合体に結合する。
【0009】
いくつかの実施例においては、アミノ酸配列には、配列番号1の48位と49位に相当する位置にアルギニン以外のアミノ酸が含まれる。例えば、配列番号1の48位のアルギニン残基と49位のアルギニン残基は、非保存的アミノ酸残基(例えば、グルタミン酸)で置換することができる。
【0010】
いくつかの実施形態においては、アミノ酸配列は、配列番号1の15位〜113位のアミノ酸に対して少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも98%同一である。
【0011】
配列番号2の15位〜113位のアミノ酸、配列番号3の15位〜113位のアミノ酸、配列番号4の15位〜113位のアミノ酸、配列番号5の15位〜113位のアミノ酸、配列番号8の15位〜113位のアミノ酸、または配列番号9の15位〜113位のアミノ酸を含むポリペプチドも開示される。いくつかの実施形態においては、ポリペプチドには、配列番号2の10位〜113位のアミノ酸、配列番号3の10位〜113位のアミノ酸、配列番号4の10位〜113位のアミノ酸、配列番号5の10位〜113位のアミノ酸、配列番号8の10位〜113位のアミノ酸、または配列番号9の10位〜113位のアミノ酸が含まれる。いくつかの実施例においては、ポリペプチドには、配列番号2のアミノ酸配列、配列番号3のアミノ酸配列、配列番号4のアミノ酸配列、配列番号5のアミノ酸配列、配列番号8のアミノ酸配列、または配列番号9のアミノ酸配列が含まれる。
【0012】
配列番号1の15位〜113位のアミノ酸に対して少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含むポリペプチドも開示される。ここでは、アミノ酸配列には、以下からなる群より選択される、配列番号1と比較して少なくとも1つのアミノ酸置換が含まれる:(i)配列番号1の20位に相当する位置にセリン以外のアミノ酸(例えば、セリンは非保存的アミノ酸残基で置換される);(ii)配列番号1の21位に相当する位置にグルタミン以外のアミノ酸(例えば、グルタミンは非保存的アミノ酸残基で置換される);(iii)配列番号1の32位に相当する位置にヒスチジン以外のアミノ酸(例えば、ヒスチジンは非保存的アミノ酸残基で置換される);(iv)配列番号1の33位に相当する位置にアルギニン以外のアミノ酸(例えば、アルギニンは非保存的アミノ酸残基で置換される);(v)配列番号1の39位に相当する位置にアルギニン以外のアミノ酸(例えば、アルギニンは非保存的アミノ酸残基で置換される);(vi)配列番号1の46位に相当する位置にセリン以外のアミノ酸(例えば、セリンは非保存的アミノ酸残基で置換される);(vii)配列番号1の68位に相当する位置にアルギニン以外のアミノ酸(例えば、アルギニンは非保存的アミノ酸残基で置換される);(viii)配列番号1の72位に相当する位置にグリシン以外のアミノ酸(例えば、グリシンは非保存的アミノ酸残基で置換される);(ix)配列番号1の73位に相当する位置にセリン以外のアミノ酸(例えば、セリンは非保存的アミノ酸残基で置換される);および(x)配列番号1の94位に相当する位置にバリン以外のアミノ酸(例えば、バリンは非保存的アミノ酸残基で置換される)。このポリペプチドは、二量体化すると、GFRα3とRETを含む複合体に結合する。いくつかの実施形態においては、アミノ酸配列は、配列番号1の15位〜113位のアミノ酸に対して少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも98%同一である。
【0013】
配列番号1に対して少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含むポリペプチドも開示される。ここでは、アミノ酸配列には、以下からなる群より選択される、配列番号1と比較して少なくとも1つのアミノ酸置換が含まれる:(i)配列番号1の7位に相当する位置にアルギニン以外のアミノ酸(例えば、アルギニンはグルタミン酸のような非保存的アミノ酸残基で置換される);(ii)配列番号1の9位に相当する位置にアルギニン以外のアミノ酸(例えば、アルギニンはグルタミン酸のような非保存的アミノ酸残基で置換される);および(iii)配列番号1の14位に相当する位置にアルギニン以外のアミノ酸(例えば、アルギニンはグルタミン酸のような非保存的アミノ酸残基で置換される)。このポリペプチドは、二量体化すると、GFRα3とRETを含む複合体に結合する。いくつかの実施形態においては、アミノ酸配列は、配列番号1に対して少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも98%同一である。
【0014】
本発明はまた、自然界には存在しないポリマーに結合した本明細書中に記載されるポリペプチドを含む結合体を特徴とする。例示的なポリマーは、水溶性の合成ポリマー(例えば、ポリアルキレングリコール(例えば、ポリエチレングリコール))である。
【0015】
本発明はまた、本明細書中に記載されるポリペプチドと異種アミノ酸配列を含む融合タンパク質を特徴とする。
【0016】
本発明はまた、本明細書中に記載されるポリペプチド、結合体、または融合タンパク質の2つを含む二量体を特徴とする。
【0017】
本発明はまた、本明細書中に記載されるポリペプチド、二量体、結合体、または融合タンパク質と、薬学的に許容される担体または賦形剤を含む薬学的組成物を特徴とする。
【0018】
本明細書中に記載されるポリペプチドをコードする配列を含む核酸、この核酸を含む発現ベクター、および発現ベクターを含む細胞もまた開示される。
【0019】
ポリペプチドを作製する方法もまた開示される。この方法には:(i)本明細書中に記載されるポリペプチドをコードする核酸を含む発現ベクターを含む細胞を提供する工程、および(ii)核酸の発現が可能な条件下で上記細胞を培養する工程が含まれる。
【0020】
本発明はまた、哺乳動物の神経系の障害を処置または予防する方法を特徴とする。この方法は、哺乳動物に治療有効量の本明細書中に記載されるポリペプチド、二量体、結合体、融合タンパク質、または薬学的組成物を投与する工程による。
【0021】
本発明はまた、哺乳動物の神経障害の痛みを処置する方法を特徴とする。この方法は、哺乳動物に治療有効量の本明細書中に記載されるポリペプチド、二量体、結合体、融合タンパク質、または薬学的組成物を投与する工程による。
【0022】
本発明はまた、哺乳動物の中でRET受容体を活性化させる方法を特徴とする。この方法は、哺乳動物に、有効量の本明細書中に記載されるポリペプチド、二量体、結合体、融合タンパク質、または薬学的組成物を投与する工程による。
【0023】
本明細書中に記載される選択された変異体ニューブラスチンポリペプチドの利点は、これらが野生型ニューブラスチンと比較して低い結合能力を有していることである。ヘパリン結合の低下によって、変異体ポリペプチドのインビボでのクリアランスの減少が生じる。
【0024】
48位および49位のアミノ酸位置に置換を有している変異体ニューブラスチンポリペプチドは、1変異アミノ酸変異体および/または野生型ニューブラスチンと比較して、大幅に低いヘパリン結合能力と、大幅に大きい効力および生体利用性を有していることが思いがけず見出された。例えば、二重変異体は、野生型ニューブラスチンと比較して、血清暴露においておよそ185倍の増大を示すことが見出された。加えて、この二重変異体は、野生型ニューブラスチンと比較してインビトロでの5倍以上の発現の増大を示し、それによって、タンパク質の大規模な生産が容易になることが見出された。
【0025】
変異体ニューブラスチンポリペプチドの利点および予想以上の特性によって、より低用量のタンパク質を使用する被験体の処置が可能であり、そして/またはより長い投与間隔が可能である(野生型タンパク質での処置と比較して)。
【0026】
他の場所で明記されていない限りは、本明細書中で使用される全ての技術的および科学的用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されている意味と同じ意味を有する。本明細書中に記載されるものと同様または同等の方法および材料を本発明の実施または試験に使用することができるが、例示的な方法および材料が以下に記載される。本明細書中に言及される全ての刊行物、特許、および他の参考文献は、それらの全体が引用により本明細書中に組み入れられる。矛盾する場合、定義を含めて、本願が優先する。材料、方法、および実施例は例示にすぎず、限定するようには意図されない。
【0027】
本発明の他の特徴および利点は、以下の詳細な説明から、そして特許請求の範囲から明らかであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
本発明により、選択されたアミノ酸残基に置換を有している変異体ニューブラスチンポリペプチドが提供される。添付される実施例に開示されるように、野生型ニューブラスチンポリペプチドの中の特異的な残基は、ヘパリン結合に重要であることが明らかにされている。ヘパリン結合がインビボでのニューブラスチンのクリアランスに寄与していると考えられているので、これらの特異的残基の1つ以上での置換は、ヘパリン結合を減少させ、それによって変異体ポリペプチドの血清暴露が増大すると予想される。
【0029】
変異体ニューブラスチンポリペプチド
成熟した野生型ヒトニューブラスチンは113アミノ酸の長さであり、以下のアミノ酸配列を有している:
【0030】
【化1】

ニューブラスチンポリペプチドの1つ以上の選択されたアミノ酸残基に置換を有しているポリペプチドが本明細書中に開示される。これらの残基の1つ以上での変異は、野生型ニューブラスチンと比較して、低いヘパリン結合能力を有しているかまたはヘパリン結合能力を有していない変異体ニューブラスチンを生じると予想される。変異体ニューブラスチンポリペプチドには、配列番号1と比較して、(i)48位、49位、または51位の1つ以上に相当するアルギニン残基、および/または(ii)Ser46、Ser73、Gly72、Arg39、Gln21、Ser20、Arg68、Arg33、His32、Val94、Arg7、Arg9,もしくはArg14の1つ以上に、アミノ酸置換が含まれる。他の場所に明記されていなければ、位置番号によるニューブラスチンのアミノ酸残基についての本明細書中での全ての言及は、配列番号1に関する残基の番号を意味する。
【0031】
置換について指名されたニューブラスチンのアミノ酸残基(例えば、48位、49位、および/または51位のアルギニン残基)は、非保存的アミノ酸残基(例えば、グルタミン酸)または保存的アミノ酸残基で置換することができる。添付される実施例に詳細に記載されるように、Arg48、Arg49、および/またはArg51の非保存的アミノ酸での置換によっては、ヘパリン結合活性が低下しているが、ニューブラスチンの生物学的活性は維持している(または増強されている)変異体ニューブラスチンポリペプチドが生じ得る。本明細書中で同定されたアミノ酸残基(例えば、48位、49位、および/または51位のアルギニン残基)を置換することができる例示的なアミノ酸としては、グルタミン酸、アスパラギン酸、およびアラニンが挙げられる。
【0032】
生物学的に活性な変異体ニューブラスチンポリペプチドは、二量体化すると、GFRα3とRETを含む3成分複合体に結合する。この複合体に対する結合を検出するための任意の方法を、変異体ニューブラスチンポリペプチドの生物学的活性を評価するために使用することができる。変異体ニューブラスチンポリペプチドの3成分複合体結合能力を検出するための例示的なアッセイは、WO00/01815および実施例7に記載されている。
【0033】
変異体ニューブラスチンポリペプチドはまた、ニューブラスチンによるシグナル伝達カスケードを誘発するその能力を評価するために評価することもできる。例えば、実施例6に記載されているキナーゼ受容体活性化(Kinase Receptor Activation)(KIRA)アッセイを、RETの自己リン酸化を誘導する変異体ニューブラスチンポリペプチドの能力を評価するために使用することができる(例えば、Sadick et al.,1996,Anal.Biochem.,235(2):207もまた参照のこと)。
【0034】
本明細書中で同定された特異的なアミノ酸置換に加えて、変異体ニューブラスチンポリペプチドにはまた、以下のセクションに詳細に記載されるように、他のアミノ酸位置での1つ以上の付加、置換、および/または欠失も含まれ得る。
【0035】
変異体ニューブラスチンポリペプチドは、本明細書中に記載される1つ以上のアミノ酸置換に加えて、長さも異なる場合がある。成熟ヒトニューブラスチンポリペプチド(配列番号1)は、プレプロニューブラスチンのカルボキシ末端の113個のアミノ酸から構成されているが、113個のアミノ酸の全てがニューブラスチンの有用な生物学的活性を得るために必要であるわけではない。アミノ末端の短縮は許容される。したがって、変異体ニューブラスチンポリペプチドには、配列番号1のカルボキシ末端の99個、100個、101個、102個、103個、104個、105個、106個、107個、108個、109個、110個、111個、112個、または113個のアミノ酸の状況で(すなわち、その長さは、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、109、110、111、112、または113アミノ酸である)で、本明細書中に記載されるアミノ酸置換の1つ以上が含まれる場合がある。
【0036】
変異体ニューブラスチンポリペプチドは、本明細書中に記載される1つ以上のアミノ酸置換(および、状況に応じて、本明細書中に記載される短縮を有している)に加えて、配列も異なる場合がある。具体的には、特定のアミノ酸置換を、ニューブラスチンの生物学的活性の感知できるほどの消失を伴うことなく、ニューブラスチン配列に導入することができる。例示的な実施形態においては、ポリペプチドは、(i)本明細書中に記載されるアミノ酸置換の1つ以上を含み、そして、(ii)配列番号1に対して少なくとも70%、80%、85%、90%、95%、98%、または99%同一である(あるいは、配列番号1の15位〜113位のアミノ酸に対して、70%、80%、85%、90%、95%、98%、または99%同一である)。配列番号1とは配列が異なる(または、配列番号1の15位〜113位のアミノ酸とは配列が異なる)変異体ニューブラスチンポリペプチドには、1つ以上の保存的アミノ酸置換、1つ以上の非保存的アミノ酸置換、および/または1つ以上の欠失もしくは挿入が含まれる場合がある。
【0037】
図1は、野生型のヒト、マウス、およびラットのプレプロニューブラスチンポリペプチドのアラインメントである。図1の垂直の線は、それぞれ、ニューブラスチンの成熟形態の113アミノ酸(左の垂直の線)と104アミノ酸の形態(右の垂直の線)開始部位を示す。RRXRヘパリン結合モチーフを四角で囲って示す。自然界に存在している生物学的に活性な形態のニューブラスチンのこのアラインメントは、生体活性を損なうことなく置換することができる特異的な例示的な残基(すなわち、ヒト、マウス、およびラットの形態の間で保存されていない残基)を示している。
【0038】
アミノ酸配列の間での同一性の割合(%)は、BLAST 2.0プログラムを使用して決定することができる。配列比較は、ギャップを含まないアラインメントを使用し、そしてデフォルトパラメーター(Blossom 62マトリックス、11のギャップ伸張コスト、1の残基あたりのギャップコスト、および0.85のラムダ比)を使用して行うことができる。BLASTプログラムにおいて使用される数学的アルゴリズムは、Altschul et al.,1997,Nucleic Acids Research 25:3389−3402に記載されている。
【0039】
保存的置換は、1つのアミノ酸の類似する特性を有している別のアミノ酸での置換である。保存的置換としては、以下のグループの中での置換が含まれる:バリン、アラニン、およびグリシン;ロイシン、バリン、およびイソロイシン;アスパラギン酸およびグルタミン酸;アスパラギンおよびグルタミン;セリン、システイン、およびスレオニン;リジンおよびアルギニン;ならびに、フェニルアラニンおよびチロシン。非極性の疎水性アミノ酸には、アラニン、ロイシン、イソロイシン、バリン、プロリン、フェニルアラニン、トリプトファン、およびメチオニンが含まれる。極性の中性アミノ酸としては、グリシン、セリン、スレオニン、システイン、チロシン、アスパラギン、およびグルタミンが含まれる。正電荷を有している(塩基性)アミノ酸には、アルギニン、リジン、およびヒスチジンが含まれる。負電荷を有している(酸性)アミノ酸には、アスパラギン酸およびグルタミン酸が含まれる。同じグループの別のメンバーによる上記の極性の塩基性または酸性のグループの1つのメンバーの任意の置換は保存的置換と考えることができる。
【0040】
非保存的置換としては、以下が挙げられる:(i)電気的陽性側鎖を有している残基(例えば、Arg、His、またはLys)は、電気的陰性残基(例えば、GluまたはAsp)を置換する、またはそれらで置換される、(ii)親水性残基(例えば、SerまたはThr)は、疎水性残基(例えば、Ala、Leu、Ile、Phe、またはVal)を置換する、またはそれらで置換される、(iii)システインまたはプロリンは、任意の他の残基を置換する、またはそれらで置換される、あるいは、(iv)かさ高い疎水性または芳香族側鎖を有している残基(例えば、Val、Ile、Phe、またはTrp)は、小さい側鎖を有している残基(例えば、Ala、Ser)または側鎖を有していない残基(例えば、Gly)を置換する、またはそれらで置換される。
【0041】
例示的な変異体ニューブラスチンポリペプチドは表1に開示される。対応する野生型の位置と比較して変異している変異体ニューブラスチンポリペプチドのアミノ酸残基は太字で示し、下線が付けられている。加えて、置換のバックグラウンドとして使用されるニューブラスチンポリペプチド(113、99、または104アミノ酸の長さ)が表1に示される。
【0042】
【化2】

変異体ニューブラスチンポリペプチドは、状況に応じて、ポリマー(例えば、ポリエチレングリコール部分のようなポリアルキレングリコール部分)に対して結合させることができる。いくつかの実施形態においては、ポリマーは、ニューブラスチンポリペプチド上のそのN末端である部位でポリペプチドに結合させられる。いくつかの実施形態においては、変異体ニューブラスチンポリペプチドには、配列番号1に対して(または配列番号1の15位〜113位のアミノ酸に対して)少なくとも1つのアミノ酸置換が含まれる。これによって、ポリマーを結合させることができる内部ポリマー結合部位が提供される。いくつかの実施形態においては、ポリマーは、14位、39位、68位、および95位からなる群より選択される残基(配列番号1の配列にしたがって番号を付けた)で、変異体ニューブラスチンポリペプチドに対して結合させられる。内部ポリマー結合部位を提供する例示的なニューブラスチン変異体は、WO02/060929およびWO04/069176(それらの内容は引用により本明細書中に組み入れられる)に記載されている。
【0043】
ポリペプチドには、状況に応じて、変異体ニューブラスチンポリペプチドに加えて異種アミノ酸配列が含まれ得る。「異種」は、アミノ酸配列について言う場合には、特定の宿主細胞に対して外来である供給源に由来する配列、または同じ宿主に由来する場合には、そのもとの形態から修飾された配列を意味する。例示的な異種配列としては、異種シグナル配列(例えば、自然界に存在しているラットのアルブミンシグナル配列、修飾されたラットのシグナル配列、またはヒト成長ホルモンシグナル配列)、あるいは、変異体ニューブラスチンポリペプチドの精製に使用される配列(例えば、ヒスチジンタグ)が挙げられる。
【0044】
ニューブラスチンポリペプチドは、当該分野で公知の方法を使用して単離することができる。自然界に存在しているニューブラスチンポリペプチドは、標準的なタンパク質精製技術を使用して細胞または組織供給源から単離することができる。あるいは、変異したニューブラスチンポリペプチドを、標準的なペプチド合成技術を使用して化学的に合成することができる。短いアミノ酸配列の合成は、ペプチドの分野で十分に確立されている。例えば、Stewart,et al.,Solid Phase Peptide Synthesis(2nd ed.,1984)を参照のこと。
【0045】
いくつかの実施形態においては、変異体ニューブラスチンポリペプチドは、組み換えDNA技術によって生産される。例えば、変異体ニューブラスチンポリペプチドをコードする核酸分子は、ベクター(例えば、発現ベクター)に挿入することができ、そして核酸を細胞に導入することができる。適切な細胞としては、例えば、哺乳動物細胞(例えば、ヒト細胞またはCHO細胞)、真菌細胞、酵母細胞、昆虫細胞、および細菌細胞が挙げられる。組み換え体細胞の中で発現させられる場合には、細胞は変異体ニューブラスチンポリペプチドの発現が可能な条件下で培養されることが好ましい。変異体ニューブラスチンポリペプチドは、所望される場合には、細胞懸濁液から回収することができる。本明細書中で使用される場合は、「回収」は、変異したポリペプチドが回収プロセスの前にそれが存在している細胞または培養培地のそのような成分から取り出されることを意味する。回収プロセスには、1回以上の再折り畳みまたは精製工程が含まれる場合がある。
【0046】
変異体ニューブラスチンポリペプチドは、当該分野で公知のいくつかの方法を使用して構築することができる。1つのこのような方法は部位特異的変異誘発であり、ここでは、1つの特異的なヌクレオチド(または所望される場合には、少数の特異的なヌクレオチド)が、コードされる変異体ニューブラスチンポリペプチドの中の1つのアミノ酸(または所望される場合には、少数の予め決定されたアミノ酸残基)を変化させるために変化させられる。多くの部位特異的突然変異誘発用のキットが市販されている。1つのこのようなキットは、Clontech Laboratories(Palo Alto,CA)から販売されている「Transformer Site Directed Mutagenesis Kit」である。
【0047】
薬学的組成物
変異体ニューブラスチンポリペプチドは、治療有効量のポリペプチドと1つ以上のアジュバント、賦形剤、担体、および/または希釈剤を含む薬学的組成物へと配合することができる。許容される希釈剤、担体、および賦形剤は、通常、レシピエントの恒常性(例えば、電解質のバランス)に有害な影響を及ぼさない。許容される担体としては、生体適合性の不活性な、もしくは生体内で吸収される塩、緩衝物質、オリゴ糖もしくは多糖、ポリマー、増粘剤、保存剤などが挙げられる。1つの例示的な担体は生理食塩水(0.15MのNaCl、pH7.0〜7.4)である。別の例示的な担体は50mMのリン酸ナトリウム、100mMの塩化ナトリウムである。薬学的組成物の処方および投与のための技術のさらなる詳細は、例えば、REMINGTON’S PHARMACEUTICAL SCIENCES(Maack Publishing Co.,Easton,Pa.)に見ることができる。
【0048】
変異体ニューブラスチンポリペプチドを含む薬学的組成物の投与は、全身的に行うことも、また局所に行うこともできる。薬学的組成物は、それらが非経口投与および/または非経口ではない投与に適するように処方することができる。特異的な投与手法としては、皮下、静脈内、筋肉内、腹腔内、経皮、髄腔内、経口、直腸、舌下、局所、鼻腔、眼、関節内、動脈内、くも膜下、気管支、リンパ管、膣、および子宮内への投与が挙げられる。
【0049】
非経口投与に適している処方物には、通常、変異体ニューブラスチンポリペプチドの滅菌の水性調製物が含まれ、これは、好ましくは、レシピエントの血液と等張である(例えば、生理食塩溶液)。処方物は単位用量形態で提示される場合も、また、多用量形態で提示される場合もある。
【0050】
例示的な処方物には、本明細書中に記載される変異体ニューブラスチンポリペプチドと、以下の緩衝成分が含まれる:コハク酸ナトリウム(例えば、10mM)、;NaCl(例えば、75mM);およびL−アルギニン(例えば、100mM)。
【0051】
経口投与に適している処方物は、カプセル剤、カシェ剤、錠剤、またはトローチ剤(それぞれが、予め決定された量の変異体ニューブラスチンポリペプチドを含む)のような物理的に分離している単位として;あるいは、シロップ剤、エリキシル剤、乳濁液、もしくはドラフトのような水性の液体または非水性の液体中の懸濁液として、提示される場合がある。
【0052】
薬学的組成物の治療有効量を、当業者が確認することができる投与レジュメにおいて、それが必要な被験体に投与することがきる。例えば、組成物は、例えば、1回の投与について被験体の体重1kgあたり0.01μg/kgから1000μg/kgまでの投与量で投与することができる。別の実施例においては、投与量は、1回の投与について、被験体の体重1kgあたり1μg/kgから100μg/kg体重までである。別の実施例においては、投与量は、1回の投与について被験体の体重1kgあたり1μg/kgから30μg/kgまでであり、例えば、1回の投与について被験体の体重1kgあたり3μg/kgから10μg/kgまでである。
【0053】
治療効率を最適にするために、変異体ニューブラスチンポリペプチドは、最初に異なる投与レジュメで投与される。単位用量およびレジュメは、例えば、哺乳動物の種類、その免疫状態、哺乳動物の体重を含む複数の要因に応じて変化する。通常、組織の中のタンパク質レベルは、例えば、所定の処置レジュメの効率を決定するために、臨床的な試験手順の一部としての適切なスクリーニングアッセイを使用してモニターされる。
【0054】
変異体ニューブラスチンポリペプチドの投与頻度は、医師による技量および臨床的な判断の範囲である。通常、投与レジュメは、最適な投与パラメーターを確立することができる臨床試験によって確立される。しかし、開業医は、被験体の年齢、健康状態、体重、性別、および医学的状態にしたがってこのような投与レジュメを変えることができる。投与頻度もまた、神経障害についての急性期治療と長期治療との間で異なる場合がある。加えて、投与頻度は、処置が予防的であるか、また、治療的であるかによって異なる場合がある。
【0055】
処置方法
変異体ニューブラスチンポリペプチドは、神経細胞またはニューロン細胞の代謝、増殖、分化、または生存を調節するために有用である。具体的には、変異体ニューブラスチンポリペプチドは、生存している動物(例えば、ヒト)の障害または疾患(これらの障害または疾患は、神経栄養因子の活性に反応する)を処置または緩和するために使用することができる。
【0056】
本明細書中に開示される変異体ニューブラスチンポリペプチド(およびそれを含む薬学的組成物)は、感覚ニューロンまたは網膜神経節細胞(後根ガングリオンの中のニューロン、および以下の組織のいずれかの中にあるニューロンが含まれる:膝状関節、側頭骨錐体、および節上神経節;第8脳神経の内耳神経複合体;三叉神経節の上下顎葉の腹側両極;ならびに中脳三叉神経核)の損傷を特徴とする障害の処置のための方法において使用することができる。
【0057】
いくつかの実施形態においては、感覚ニューロンおよび/または自律神経系ニューロンを処置することができる。具体的には、侵害および機械受容ニューロン、さらに具体的には、A−δ線維、C−線維、およびA−β繊維ニューロンを処置することができる。加えて、自律神経系の交感神経ニューロンおよび副交感神経ニューロンも処置することができる。
【0058】
いくつかの実施形態においては、運動ニューロン疾患(例えば、筋萎縮側索硬化症(「ALS」)および脊髄性筋萎縮症)を処置することができる。他の実施形態においては、変異体ニューブラスチンポリペプチドは、外傷性損傷後の神経の回復を増強させるために使用することができる。あるいは、または加えて、ポリマー結合ニューブラスチンポリペプチド、または変異したニューブラスチンポリペプチドの融合体もしくは結合体を含むマトリックスを有している神経ガイドチャンネルを使用することができる。このような神経ガイドチャンネルは、例えば、米国特許第5,834,029号に開示されている。
【0059】
いくつかの実施形態においては、変異体ニューブラスチンポリペプチド(およびそれを含む薬学的組成物)は、黄斑変性症、網膜色素変性症、緑内障、および同様の疾患に罹患している患者の網膜の中の光受容体の欠損を含む種々の眼疾患の処置に使用される。
【0060】
いくつかの実施形態においては、変異体ニューブラスチンポリペプチド(およびそれを含む薬学的組成物)は、神経障害の痛みを処置するため、接触性アロディニアを処置するため、神経障害に伴う痛覚の欠如を軽減させるため、ウイルス感染およびウイルスが関係している神経障害を処置するため、痛みを伴う糖尿病性神経障害を処置するため、ならびに、神経系の障害を処置するために使用される。この方法は、以下のサブセクションで詳細に議論される。
【0061】
1.神経障害の痛みの処置
本明細書中に開示される変異体ニューブラスチンポリペプチド(およびそれを含む薬学的組成物)は、被験体の神経障害の痛みを処置するための方法において使用することができる。この方法には、被験体に有効量の変異体ニューブラスチンポリペプチドを単独で投与する工程、または被験体に有効量の以下からなる群より選択される無痛覚症を誘導する化合物を投与する工程もまた、含まれる:オピオイド、不整脈治療剤、局所鎮痛薬、局所麻酔薬、抗痙攣剤、抗鬱剤、コルチコステロイド、および非ステロイド系抗炎症薬(NSAIDS)。1つの実施形態においては、無痛覚症を誘導する化合物は抗痙攣剤である。別の実施形態においては、無痛覚症を誘導する化合物はガバペンチン((1−アミノメチル)シクロヘキサン酢酸)またはプレガバリン(S−(+)−4−アミノ−3−(2−メチルプロピル)ブタン酸)。である。
【0062】
本明細書中に開示される変異体ニューブラスチンポリペプチド(およびそれを含む薬学的組成物)は、末梢神経障害に伴う痛みの処置に使用することができる。中でも、処置することができる末梢神経障害は、外傷によって誘導される神経障害(例えば、身体の損傷または疾患状態、脳の物理的損傷、脊髄の物理的損傷、脳損傷を伴う脳卒中、および神経変性が関係している神経学的障害によって引き起こされるもの)である。
【0063】
本明細書中に開示される変異体ニューブラスチンポリペプチド(およびそれを含む薬学的組成物)は、以下を含む多数の抹消神経障害の処置に使用することができる:(a)外傷によって誘導される神経障害、(b)化学療法によって誘導される神経障害、(c)毒素によって誘導される神経障害(アルコール依存症、ビタミンB6中毒、ヘキサ炭素中毒(hexacarbon intoxication)、アミオダロン、クロラムフェニコール、ビスルファン、イソナイアジド、金、リチウム、メトロニダゾール、ミソニダゾール、ニトロフラントインによって誘導される神経障害が含まれるがこれらに限定はされない)、(d)治療薬によって誘導される神経障害の痛みを含む薬剤によって誘導される神経障害(例えば、抗ガン剤、具体的には、タキソール、タキソテーレ、シスプラチン、ノコダゾール、ビンクリスチン、ビンデシン、およびビンブラスチンからなる群より選択される抗ガン剤によって引き起こされるもの;ならびに、抗ウイルス剤、具体的には、ddI、DDC、d4T、フォスカネット、ダプソーン、メトロニダゾール、およびイソナイアジドからなる群より選択される抗ウイルス剤によって引き起こされるもの)、(e)ビタミン欠乏症によって誘導される神経障害(ビタミンB12欠乏症、ビタミンB6欠乏症、およびビタミンE欠乏症が含まれるがこれらに限定はされない)、(f)特発性神経障害、(g)糖尿病性神経障害、(h)病原体によって誘導される神経の損傷、(i)炎症によって誘導される神経の損傷、(j)神経変性、(k)遺伝性神経障害(フリードライヒ失調症、家族性アミロイドニューロパシー、タンジアー病、ファブリー病が含まれるがこれらに限定はされない)、(l)代謝疾患(腎不全および甲状腺機能低下症が含まれるがこれらに限定はされない)、(m)感染性およびウイルス性神経障害(ハンセン病、ライム病に伴う神経障害の痛み、ウイルス、特に、ヘルペスウイルス(ヘルペス後の神経痛を引き起こし得る帯状疱疹)、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、およびパピローマウイルスからなる群より選択されるウイルスによる感染に伴う神経障害の痛みが含まれるがこれらに限定されない)、(n)自己免疫性神経障害(ギラン・バレー症候群、慢性炎症性脱髄性多発神経炎、決定されていない有意なものおよび多発性神経障害のモノクローナル免疫グロブリン異常症が含まれるがこれらに限定はされない)(o)三叉神経の神経痛および絞扼性神経障害(Carpel−tunnel症候群が含まれるがこれに限定はされない)、ならびに(p)他の神経障害の痛みの症候群(外傷後の神経痛、幻肢痛、多発性硬化症の痛み、複合性局所疼痛症候群(反射性交感神経性ジストロフィー、灼熱痛が含まれるがこれらに限定はされない)、新生組織形成に伴う痛み、脈菅/血管の神経障害、および坐骨神経痛)。神経障害の痛みは、異痛症、痛覚過敏症、突発性の痛みまたは幻想痛として症状を呈する場合もある。
【0064】
2.接触性アロディニアの処置
本明細書中に開示される変異体ニューブラスチンポリペプチド(およびそれを含む薬学的組成物)は、被験体の接触性アロディニアの処置に使用することができる。用語「接触性アロディニア」は、通常、痛みが、正常であれば無害である皮膚の刺激(接触)によって引き起こされる被験体の症状をいう。
【0065】
いくつかの実施形態においては、接触性アロディニアは、被験体に薬学的有効量の変異体ニューブラスチンポリペプチドを投与することによって処置される。関連する実施形態においては、接触性アロディニアは、被験体に有効量の変異体ニューブラスチンポリペプチドを単独で投与すること、または、被験体に有効量の変異体ニューブラスチンポリペプチドを、以下からなる群より選択される無痛覚症を誘導する有効量の化合物とともに投与することによってのいずれかで処置することができる:オピオイド、不整脈治療剤、局所鎮痛薬、局所麻酔薬、抗痙攣剤、抗鬱剤、コルチコステロイド、およびNSAIDS。1つの実施形態においては、無痛覚症を誘導する化合物は抗痙攣剤である。別の実施形態においては、無痛覚症を誘導する化合物はガバペンチン((1−アミノメチル)シクロヘキサン酢酸)またはプレガバリン(S−(+)−4−アミノ−3−(2−メチルプロピル)ブタン酸)である。
【0066】
いくつかの実施形態においては、変異体ニューブラスチンポリペプチドは、治療薬(抗ガン剤または抗ウイルス剤が含まれるがこれらに限定はされない)と組み合わせて投与される。抗ガン剤としては、タキソール、タキソテーレ、シスプラチン、ノコダゾール、ビンクリスチン、ビンデシン、およびビンブラスチンが挙げられるがこれらに限定はされない。抗ウイルス剤としては、ddI、DDC、d4T、フォスカネット、ダプソーン、メトロニダゾール、およびイソナイアジドが挙げられるがこれらに限定はされない。
【0067】
3.痛覚の欠如の軽減のための処置
別の実施形態においては、本明細書中に開示される変異体ニューブラスチンポリペプチド(およびそれを含む薬学的組成物)は、神経障害に罹患している被験体の痛覚の欠如を軽減させるための方法において使用することができる。1つの実施形態においては、神経障害は糖尿病性神経障害である。いくつかの実施形態においては、痛覚の欠如は、熱痛覚の欠如である。この方法には、予防的処置と治療的処置の両方が含まれる。
【0068】
予防的処置においては、変異体ニューブラスチンポリペプチドは、痛覚の欠如を生じるリスクがある被験体に投与される(このような被験体は、初期段階の神経障害を有している被験体と予想される)。このような状況下での変異体ニューブラスチンポリペプチドでの処置は、リスクのある患者を事前に処置するように作用する。
【0069】
治療的処置においては、変異体ニューブラスチンポリペプチドは、神経障害の罹患の結果としての痛覚の欠如に悩まされている被験体に投与される(このような被験体は、後期段階の神経障害を有している被験体と予想される)。このような状況下での変異体ニューブラスチンポリペプチドでの処置は、被験体において適切な痛覚を回復させるように作用する。
【0070】
4.ウイルス感染およびウイルス感染に伴う神経障害の処置
感染およびウイルスによる神経障害の予防的処置が想定される。予防的処置は、ウイルス感染の決定後であって、神経障害の痛みの発症の前に行われる。処置の間に、変異体ニューブラスチンポリペプチドが投与されて、神経障害の痛み(ハンセン病、ライム病に伴う神経障害の痛み、ウイルス、特に、ヘルペスウイルス(およびより具体的には、ヘルペス後の神経痛を引き起こし得る帯状疱疹ウイルス)、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、およびパピローマウイルスからなる群より選択されるウイルスによる感染に伴う神経障害の痛みが含まれるがこれらに限定されない)の出現が防がれる。別の実施形態においては、変異体ニューブラスチンポリペプチドは、起こるであろう神経障害の痛みの重篤度を低下させるために投与される。
【0071】
急性のウイルス感染の症状には、多くの場合に、発疹の出現が含まれる。他の症状としては、例えば、体の罹患した部分での持続的な痛みの発症が含まれ、これは、帯状疱疹感染(帯状疱疹)の一般的な合併症である。ヘルペス後の神経痛は、1ヶ月間またはそれ以上持続する場合があり、何らかの発疹のような症状が消えた数ヶ月後に現れる場合もある。
【0072】
5.痛みを伴う糖尿病性神経障害の処置
痛みを伴う糖尿病性神経障害の予防的処置が想定される。糖尿病性神経障害の予防的処置は、糖尿病または糖尿病に伴う症状の最初の診断の決定後であって、神経障害の痛みの発症の前に、開始される。痛みを伴う糖尿病性神経障害の予防的処置はまた、被験体に糖尿病または糖尿病に伴う症状を発症するリスクがあることが決定されると開始される場合もある。処置の間に、変異体ニューブラスチンポリペプチドが投与されて、神経障害の痛みの出現が防がれる。別の実施形態においては、変異体ニューブラスチンポリペプチドは、すでに現れている神経障害の痛みの重篤度を低下させるために投与される。
【0073】
6.神経系の障害の処置
本明細書中に開示される変異体ニューブラスチンポリペプチド(およびそれを含む薬学的組成物)は、被験体(例えば、ヒト)の神経系の障害の処置または予防において、その必要がある被験体に治療有効量の変異体ニューブラスチンポリペプチド、変異体ニューブラスチンポリペプチドを含む組成物、またはポリアルキレン部分(例えば、PEG)に結合した安定な水溶性結合変異体ニューブラスチンポリペプチドを含む複合体を投与することによって使用することができる。
【0074】
神経系の障害は、末梢神経系の疾患(例えば、末梢神経障害または神経障害の痛みの症候群)であり得る。ヒトが処置の好ましい被験体である。
【0075】
変異体ニューブラスチンポリペプチドは、ニューロン(病変のニューロン、および損傷を受けたニューロンが含まれるがこれらに限定はされない)の中の欠損を処置するために有用である。外傷を受けた末梢神経としては、髄質の神経または脊髄の神経が挙げられるがこれらに限定はされない。変異体ニューブラスチンポリペプチドは、神経変性疾患(例えば、脳の虚血性神経損傷;神経障害(例えば、末梢神経障害、アルツハイマー病、ハンチントン病、パーキンソン病、筋萎縮側索硬化症(ALS))の処置に有用である。このような変異体ニューブラスチンポリペプチドは、記憶障害(例えば、認知症に伴う記憶障害)の処置に使用することができる。
【0076】
以下は本発明の実施の例である。これらは、いかなる方法においても本発明の範囲の限定とは解釈されない。
【実施例】
【0077】
実施例1:変異体ニューブラスチンポリペプチドの設計および合成
ヒトニューブラスチンを結晶化させ、互いに近い位置に接近している以下の4つのニューブラスチン残基:Arg14、Arg48、Arg49、およびArg51と相互作用する硫酸イオンの三者関係であるその構造を明らかにした。この三者構造の存在と、それらの相対的な互いの空間配置に基づいて、ニューブラスチンのこの領域がヘパリン硫酸結合ドメインである可能性があり得ると想定した。その後、先に解明されていたヘパリン硫酸構造を、硫酸塩の三者構造の部位でニューブラスチンに対してドッキングさせた(イン−シリコ)。ヘパリン硫酸はこの位置にきっちりとフィットし、このことは、ニューブラスチンの中のこの領域がヘパリン硫酸結合について可能性があることを示唆している。
【0078】
ニューブラスチンの結晶化のデータによってまた、以下のアミノ酸残基によって硫酸イオンの三者構造、またはニューブラスチン:Ser46、Ser73、Gly72、Arg39、Gln21、Ser20、Arg68、Arg33、His32、およびVal94と相互作用する3つの他の硫酸イオンの1つ以上との補助的な相互作用が提供されることも明らかになった。結晶構造によって明らかになった硫酸結合部位に加えて、ニューブラスチンには、そのN末端にある3位〜9位の残基にヘパリン硫酸結合部位コンセンサス配列(GPGSRAR)が含まれる。この領域は、結晶構造に構造化されないが、グリコサミノグリカンの結合の際に秩序構造になる場合がある。この領域は結晶構造の中に観察される3つの硫酸クラスターに対して空間的におそらく近い(Arg14は、たいていの場合にタンパク質のヒンジ領域の中の中心にある、ヘパリン結合部位に寄与している)。
【0079】
可能性のあるヘパリン硫酸結合ドメインの生物学的関連性を研究するために、3つの別々の1アミノ酸残基置換を、113アミノ酸の成熟ヒトニューブラスチン(配列番号1)の中に作製した。48位(「Arg48E」と呼ばれる変異体、配列番号2)、49位(「Arg49E」と呼ばれる変異体、配列番号3)、および51位(「Arg51E」と呼ばれる変異体、配列番号4)のそれぞれのアルギニン残基を、硫酸塩を引き付けるものから硫酸塩を反発するものへ、そして周辺のアルギニン残基を潜在的に安定化させる残基変化へと変化させる意図で、グルタミン酸で置き換えた(すなわち、3種類の異なる1アミノ酸変異体構築物を調製した)。タンパク質を、大腸菌(E.coli)封入体によって折り畳ませ、これから精製した(WO04/069176を参照のこと)。それぞれのニューブラスチン変異体を、構造の完全性を確認し、正確な残基の置換を確認するために分析した。全ての3つの変異体は、野生型ヒトニューブラスチンに構造的に似ていた。
【0080】

実施例2:陽イオン性クロマトグラフィーおよびヘパリンセファロースクロマトグラフィー
変異体ニューブラスチンポリペプチドを、さらに生物学的分析を行い、ヘパリンの結合に対してそれぞれの変異が有している効果を決定した。ヘパリンセファロースと陽イオンクロマトグラフィーの両方を使用した。野生型のヒトニューブラスチンは、11.31の見かけのpIを有している塩基性タンパク質であるので、ニューブラスチンは陽イオン系の樹脂に効率よく結合する。アルギニンからグルタミン酸への1つの変換によって、見かけのpIは10.88に下がる。しかし、このpIの低下は、野生型の対照と比較して、陽イオン樹脂への結合を劇的に変化させることはなく、また、変異体の溶出プロフィールをもまた変化させることはないと予想された。
【0081】
それぞれの変異体(野生型ニューブラスチンである対照とともに)について陽イオンクロマトグラフィーを行った。試料を、5mMのリン酸塩(pH6.5)および150mMの塩化ナトリウムを含む緩衝液中で樹脂上にロードし、その後、150mMで始まり1Mで終わる塩化ナトリウムの直線的塩勾配で溶出させた。野生型ニューブラスチンは、約800mMの塩化ナトリウムで溶出し(図2A;ピークD)、一方、3つの変異体のそれぞれは、およそ500mMの塩範囲で溶出した。したがってこれは、それらの低いpIを反映している。Arg49EとArg51E(図2A;ピークBおよびC)は、Arg48E(図2A;ピークA)を溶出させるために必要であったよりもわずかに高い塩で溶出した(それぞれ、520mM対490mM)。この差は、Arg48がより表面に接近可能であり、他の2つの変異体よりも陽イオン結合により寄与していることを示唆している。
【0082】
ArgからGluへの置換がヘパリン結合に対して効果があるかどうかを決定するために、3種類の変異体のそれぞれ(野生型のヒトニューブラスチンとともに)についてヘパリンセファロースクロマトグラフィーを行った(図2B)。結合および溶出の条件は、陽イオンクロマトグラフィーに使用した結合および溶出の条件と同様とした。しかし、観察された溶出プロフィールは、陽イオン樹脂溶出プロフィールとは有意に異なっていた。野生型ニューブラスチンは、およそ720mMの塩化ナトリウムで溶出し(図2B;ピークH)、一方、Arg51E、Arg49E、およびArg48Eは、それぞれ、570mM(図2B;ピークG)、510mM(図2B;ピークF)、および450mM(図2B;ピークE)の塩化ナトリウムで溶出した。Arg48Eは、ヘパリン結合に対して特に劇的な効果を有しているようであった。まとめると、これらのクロマトグラフィープロフィールは、それぞれの変異によって、ヘパリンに対するニューブラスチンの見かけの親和性が低下することを示唆している。
【0083】

実施例3:陰イオンクロマトグラフィー
6.5の標準的なpH条件、および150mMの塩化ナトリウム濃度では、ニューブラスチンは陰イオン系樹脂には結合しない。対照的に、ヘパリン硫酸は、これらの同じ条件下で陰イオン系樹脂に結合する。
【0084】
ニューブラスチンを、16−kDaのヘパリン硫酸と1:1のモル比であらかじめ混合し、そして上記の条件を使用して陰イオンマトリックスに載せると、ニューブラスチンは結合し、600mMの塩化ナトリウムで溶出した(図3B、「FT」と記したレーン)。これは、ニューブラスチンがヘパリン硫酸とのその相互作用を介して陰イオン系マトリックスに結合することを示唆している。ヘパリンが存在しない条件では、ニューブラスチンは陰イオン系樹脂には結合せず(図3A,「FT」と記したレーン)、ニューブラスチンは600mMの塩化ナトリウムでは溶出しなかった(図3A、「溶出」と記したレーン)。これらのデータは、ヘパリンに結合するニューブラスチンの能力のさらなる証拠を提供する。
【0085】

実施例4:チャイニーズハムスター卵巣細胞結合実験
ニューブラスチンは、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞の表面に非特異的に結合することが以前に示されている。ニューブラスチンCHO細胞結合アッセイを、この相互作用が、細胞表面のヘパリン硫酸分子に対するニューブラスチンの結合によって少なくとも一部媒介されているかどうかを決定するために設定した。
【0086】
野生型のヒトニューブラスチン(40μg)またはArg48E変異体を、いずれの形態のニューブラスチンも漸増量の16kDaのヘパリン硫酸と完全に結合する細胞密度で、CHO細胞(10細胞)と予め混合し、37℃で4時間インキュベートした。インキュベーションの後、細胞を遠心分離によってペレット状にし、上清の中の残っている結合していないニューブラスチンについてSDS/PAGE分析を行った。自動濃度測定によるそれぞれのタンパク質バンドの定量の後、得られた光学密度の値を、それぞれの試料中のヘパリン濃度に対してプロットした(図4)。
【0087】
2つの低いヘパリン濃度では、野生型のニューブラスチンおよび変異体ニューブラスチンのいずれの形態も、上清の中で同定された等量のタンパク質を有していた。しかし、ヘパリン濃度が0.5μg/mlおよびそれ以上に増大するにつれて、Arg48E変異体よりも多くの野生型のニューブラスチンが、上清の中で同定された。この観察は、ヘパリンが、野生型ニューブラスチンの結合について細胞表面に結合したヘパリンと競合することができることを示唆している(すなわち、野生型のニューブラスチンに対するヘパリンの結合によって細胞表面からのその除去が生じる)。一方、ヘパリンは、Arg48E変異体を容易に完全には除去することはできない。最も高いヘパリン濃度(50μg/ml)では、Arg48E変異体は細胞表面を溶出させ始め、このことは、ヘパリンとArg48E変異体との間でのイオン性相互作用がこの観察に関係している可能性があることを示唆している。
【0088】

実施例5:野生型ニューブラスチンおよび変異体ニューブラスチンポリペプチドのヘパリン結合
ニューブラスチンのヘパリン結合部位として同定されたアルギニンの三者構造の役割をさらに研究するために、ヘパリン結合ELISAを設定した。簡単に説明すると、抗ニューブラスチンモノクローナル抗体を96ウェルプレート上にコーティングし、その後、洗浄、およびニューブラスチンの1つの形態の添加を行った。その後、ビオチニル化ヘパリンをプレートに添加した。さらなる洗浄工程の後、ニューブラスチン/ヘパリン複合体を、化学発光基質を用いてストレプトアビジン−IIRP結合体を使用して同定した。このヘパリン結合ELISAを使用して、野生型のヒトニューブラスチンの113アミノ酸の形態(配列番号1)と、104アミノ酸の形態(配列番号1の10位から13位のアミノ酸)の形態を、1アミノ酸置換(Arg48E、Arg49E、およびArg51E;配列番号2〜4)を含む変異体ニューブラスチンポリペプチド、さらには二重置換体(Arg48,49E;配列番号5)に対して比較した。
【0089】
野生型形態のニューブラスチンはいずれも、約1ng/mlのヘパリンのEC50でヘパリンに結合した(図5)。Arg49EおよびArg51Eは低い効率で結合し、約10ng/mlの見かけのEC50を有していたが、最大結合は同じままであった(図5)。3種類の1点変異体のうち、Arg48Eがヘパリン結合に対して最も劇的な効果を有しており、約100ng/mlの見かけのEC50を有していたが、未修飾の形態のニューブラスチンと比較すると、同じ最大ヘパリン結合値がなおも得られた(図5)。Arg48E変異体は、したがって、未修飾のニューブラスチン形態と比較すると、ヘパリンへの結合においては100倍効率が低く、他の1置換変異体と比較すると10倍効率が低かった。Arg48およびArg49の両方をグルタミン酸で置換した場合には、ヘパリン結合はほぼ排除され、これによって、最大ヘパリン結合が7倍減少したが、EC50は1点変異体の範囲の中に留まっていた。これらの結果は、Arg48が、推定されるヘパリン結合部位におけるその中心位置の理由からヘパリン結合において重要な役割を果たしていることを示唆している。
【0090】

実施例6:野生型ニューブラスチンおよびヘパリン結合変異体のキナーゼ受容体活性化分析
ヘパリン結合部位変異体が細胞をベースとする生体アッセイにおいてニューブラスチン受容体によるシグナル伝達に対して効果を有しているかどうかを決定するために、変異体形態のニューブラスチンについて、野生型ニューブラスチンとともに、キナーゼ受容体活性化(KIRA)分析を行った。
【0091】
ArgからGluへの1置換変異体のそれぞれは、KIRA活性に関して未修飾の対照と同じであるように見え、これは、これらの変異体が、野生型と構造的に類似しており、ニューブラスチン受容体およびシグナル伝達カスケードを活性化することができることを示唆している(図6)。さらに、これらのデータは、ニューブラスチンに対するヘパリン結合には、受容体の活性化は必要ない可能性があることを示唆している。
【0092】
Arg48,49E二重変異体(配列番号5;113アミノ酸の形態)についてKIRA分析を行った場合には、その見かけのEC50は、野生型であるヒトニューブラスチンである対照と比較した場合には、その最大受容体活性化の増大に伴っておよそ1桁左にシフトした(図7A)。同様に、Arg48,49E二重変異体(配列番号7;104アミノ酸の形態)もまた、野生型ニューブラスチンと比較すると、高い効力を示した(図7B)。Arg48,51EとArg49,51E二重変異体(それぞれ、配列番号9および配列番号8;113アミノ酸の形態)はそれぞれ、KIRA活性に関して未修飾のニューブラスチンである対照と同様のようであった(図7B)。
【0093】

実施例7:3成分複合体の分析
野生型のヒトニューブラスチンと個々のヘパリン変異体について、2つのわずかに異なるプロトコールを使用して3成分複合体分析を行った。第1のプロトコールでは、ニューブラスチンの受容体成分(GFRα3およびRET)をプール中のニューブラスチンとともに混合し、その後、捕捉抗体でコーティングしたELISAプレートに添加した(図8)。第2のプロトコールでは、これらの成分を、最初に添加したGFRα3を含むELISAプレートに対して連続して添加し、その後、ニューブラスチンを、そしてその後にRETを添加した(図9)。
【0094】
これらの成分をプールとしてまとめて添加すると、最大結合は、Arg48EおよびArg48,49Eのいずれを用いた場合にも得られ、このことは、これらのニューブラスチン形態がそれらの受容体に対して最も高い親和性を有していることを示唆している。野生型のニューブラスチンはArg49E変異体の親和性と同様の親和性で結合するようであり、一方、Arg51Eおよび三重変異体(Arg48、49、および51を全てグルタミン酸に置換した)は、最も弱い受容体結合を示した。
【0095】
受容体成分を連続して添加した場合には、Arg48Eは最も高い受容体結合を示した。しかし、これらの条件下では、二重変異体は、その受容体に対して、Arg51E変異体と同様に見える親和性で弱く結合した。Arg49Eと野生型ニューブラスチンは、観察された最大結合と最小結合の間の中間の、受容体に対する親和性を有していた。三重変異体はこれらの条件下では結合しなかった。まとめると、これらのデータは、Arg48がその受容体に対するニューブラスチンの親和性に影響を与えることにおいて極めて重要な役割を担っていることを示唆している。
【0096】

実施例8:近紫外光および遠紫外光CD分析
ニューブラスチンの二次構造および三次構造に対する二重変異の効果をさらに研究するために、Arg48,49E二重変異体について、近紫外光および遠紫外光CD分析の両方を行った。微妙な差が二次構造と三次構造において検出されたが、二重変異体の立体構造は野生型ニューブラスチンの立体構造と極めてよく似ていた。
【0097】

実施例9:ニューブラスチンArg48,49E二重変異体の薬物動態分析
ヒトニューブラスチンは、ラットに静脈内(IV)または皮下(SC)で投与した場合には乏しい薬物動態(PK)を示し、全体的な生体利用性は1%未満である。ヘパリンに基づくクリアランスは、この低い生体利用性の理由の1つであり得る。ヘパリンに基づくクリアランスがラットからのヒトニューブラスチンの迅速なクリアランスに関係しているかどうかを決定するために、Arg48,49E二重変異体(野生型である対照とともに)についてPK分析をおこなった。
【0098】
いずれの形態も、7mg/kg SCでラットに別々に投与した。血清試料を、1時間で採取し始め、96時間で終了し、ニューブラスチンについて分析した(図10)。野生型ニューブラスチンについて観察された曲線下面積(AUC)は約109であり、一方、二重変異体について観察されたAUCは20,145であった。これは、二重変異体のAUCにおける185倍の増大(野生型ニューブラスチンと比較して)、血清暴露の有意な増加を示していた。
【0099】
野生型ニューブラスチンおよび二重変異体ニューブラスチンの両方について、IV投与(1mg/kg)後にPK分析をもまた行った。二重変異体の最初の血漿濃度は、注射の5分後には野生型対照(四角)よりもおよそ6倍高かった(菱形)が、これは1時間以内に迅速に野生型のレベルに近づいた(図11)。これらのデータは、ニューブラスチンの中の二重変異が血清暴露の増大を助けるが、全体的なクリアランス速度には影響を及ぼさないことを示唆している。
【0100】
SCの観察をまとめると、ヘパリン結合は、SC投与後に特に関係があるようであるが、これによっておそらく、デポー様の効果が生じる。一旦、ニューブラスチンが循環に入ると、二重変異体分子および野生型分子がクリアランスされる速度はほぼ同じである。
【0101】
ニューブラスチンがラットの中の循環からクリアランスされる速度を調べるために、野生型の形態と二重変異体の形態のニューブラスチンの両方を、SPAをベースとするカップリング化学反応を使用して10kDaのPEGでPEG化した。ニューブラスチンはホモ二量体であり、自然界に存在しているリジン残基を有していないので、10kDa部分でそれぞれの単量体のアミノ酸末端を特異的に標識した。2×10K PEG化ヒト二重変異体ニューブラスチンを均質になるように精製し、構造分析および生物学的分析、その後、PK分析を行った。
【0102】
2×10K PEG Arg48,49E二重変異体を、IV(1mg/kg)またはSC(7mg/kg)のいずれかでラットに注射し、分析のために種々の時点で血清を回収した。IV投与後、2×10K PEG二重変異体は、10μg/mlの理論上のCmaxに達し(菱形)、典型的なα期とβ期を有していた(図12)。PEG化した二重変異体のSC投与は、24時間の注射で40ng/mlのCmaxを示した(図12)。一旦、薬剤が循環に達すると、見かけのクリアランス速度はIV用量のクリアランス速度と同等であった。この構築物の生体利用性は、非PEG化またはPEG化した野生型ヒトニューブラスチンについての1%未満と比較して、およそ10%であった。
【0103】

実施例10:チャイニーズハムスター卵巣細胞の中でのニューブラスチンヘパリン結合変異体の発現
野生型ニューブラスチンをコードするプラスミド構築物と変異体ニューブラスチンをコードするプラスミド構築物をCHO細胞の中で発現させ、分泌された可溶性タンパク質の量をELISAによって測定した。これらの実験で使用したプラスミド構築物は、(i)野生型のヒトニューブラスチンのカルボキシ末端の104個のアミノ酸に対して、または(ii)Arg48,49E二重変異体(104個のアミノ酸の形態)に対して融合させた、ヒト成長ホルモンシグナルペプチド(SigPep)(プラスミドの中に含まれるイントロンを含むもの、または含まないもの)を含む融合タンパク質をコードする。
【0104】
以下は、これらの実験で使用したニューブラスチン融合タンパク質のアミノ酸配列である。ニューブラスチン配列は大文字である。ヒト成長ホルモンシグナルペプチド配列は小文字である。シグナルペプチドとニューブラスチン配列の連結部分はカラット
【0105】
【化2−2】

で示す。48位および49位のアミノ酸には下線を付けた。
【0106】
【化3】

【0107】
【化4】

CHO細胞を上記の形態のニューブラスチンのそれぞれをコードするプラスミドでトランスフェクトし、384ウェルプレートの中で培養した。数週間後、増殖中の細胞を含むウェルを、新しい96ウェル培養プレートに移した。馴化培地をELISAによって分析して、可溶性ニューブラスチンの力価を測定した。試験したそれぞれのプラスミドについての累積吸光度のデータ(エラーバーとしての1標準偏差と共に平均値)を検出した。
【0108】
CHO細胞の、Arg48,49E二重変異体をコードするプラスミドでのトランスフェクションによって、野生型ニューブラスチンをコードするプラスミドでトランスフェクトした細胞と比較して、組み換え体タンパク質の高いレベルを示す細胞株の数の有意な増大が生じた(図13)。
【0109】
個々のトランスフェクションによる主要な細胞株をさらに拡大させた。一定数の細胞を3日間培養し、そして、全細胞数、生存性、および力価を決定した。主要なArg48,49E二重変異体細胞株から発現させられたニューブラスチンの力価は、主要な野生型ニューブラスチン細胞株のものよりもほぼ5倍高かった(図14)。
【0110】
他の実施形態
本発明は、その詳細な説明と組み合わせて記載されているが、上記の記載は本発明を例示するように意図され、その範囲を限定するように意図されない。本発明は、添付の特許請求の範囲によって定義される。他の態様、利点、および変更は、以下の特許請求の範囲に含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0111】
【図1】図1は、野生型のヒトプレプロニューブラスチンポリペプチド(配列番号10)、野生型のマウスプレプロニューブラスチンポリペプチド(配列番号11)、および野生型のラットプレプロニューブラスチンポリペプチド(配列番号12)のアラインメントである。左および右の垂直の線は、それぞれ、成熟形態の113アミノ酸と104アミノ酸の開始部位を示す。RRXRヘパリン結合モチーフを四角で囲って示す。
【図2】図2Aは、野生型ニューブラスチン(ピークD)と、3種類のArgからGluの1置換変異体(ピークA、B、およびC)の陽イオン溶出プロフィールを示す(傾斜した線は、カラムから溶出させられた任意の所定の容量について理論上の塩化ナトリウム濃度を示す)。データは、溶出した試料のOD280値の表示である。図2Bは、野生型ニューブラスチン(ピークH)と、3種類のArgからGluの1置換変異体(ピークE、F、およびG)のヘパリンセファロース溶出プロフィールを示す(傾斜した線は、カラムから溶出させられた任意の所定の容量について理論上の塩化ナトリウム濃度を示す)。データは、溶出した試料のOD280値の表示である。
【図3】図3A〜3Bは、ヘパリンの存在下(2A)またはヘパリンが存在しない条件下(2B)での陰イオンクロマトグラフィーの後の野生型ニューブラスチンのSDS/PAGEを示す写真である。
【図4】図4は、ニューブラスチンCHO細胞結合アッセイの結果を示すグラフである。SDS/PAGEおよび濃度測定の後、野生型ニューブラスチンとAgr48E変異体ニューブラスチンのバンドのOD値を、それぞれの試料中のヘパリン濃度に対してプロットした。
【図5】図5は、野生型のヒトNBN113、野生型のヒトNBN104、Arg48E、Arg49E、Arg51E、およびArg48,49Eを使用したヘパリン結合ELISAの結果を示すグラフである。
【図6】図6は、野生型のラットNBN113、Arg51E、Arg48E、Arg49E、およびラットNBN113のKIRA分析の結果を示すグラフである。
【図7】図7Aは、野生型のヒトニューブラスチンとArg48,49E変異体ヒトニューブラスチンのKIRA分析の結果を示すグラフである。図7Bは、野生型のヒトニューブラスチン、Arg48,49E変異体ヒトニューブラスチン(104アミノ酸の形態)、Arg48,51Eヒトニューブラスチン(113アミノ酸の形態)、およびArg49,51Eヒトニューブラスチン(113アミノ酸の形態)のKIRA分析の結果を示すグラフである。
【図8】図8は、野生型ヒトニューブラスチン、Arg48E、Arg49E、Arg51E、Arg48,49E、およびArg48,49,51Eニューブラスチンの形態の3成分複合体分析の結果を示すグラフである。
【図9】図9は、野生型ニューブラスチン、Arg48E、Arg49E、Arg51E、Arg48,49E、およびArg48,49,51Eニューブラスチンの形態の3成分複合体分析の結果を示すグラフである。
【図10】図10は、1回のボーラスである7mg/kgの皮下注射の後の、野生型ニューブラスチンと、Arg48,49Eの薬物動態分析の結果を示すグラフである(ニューブラスチン血漿濃度は、ニューブラスチン検出ELISAを使用して決定した)。
【図11】図11は、1回のボーラスである1mg/kgの静脈内注射の後の、野生型ニューブラスチンと、Arg48,49Eの薬物動態分析の結果を示すグラフである(ニューブラスチン血漿濃度は、ニューブラスチン検出ELISAを使用して決定した)。
【図12】図12は、1回のボーラスである7mg/kgの皮下注射(示されるデータは、1mg/kgについて推定した)、および1mg/kgを静脈内に投与した2×10K PEG化Arg48,49Eニューブラスチンの後の、2×10K PEG化Arg48,49Eニューブラスチンの薬物動態分析の結果を示すグラフである(ニューブラスチン血漿濃度は、ニューブラスチン検出ELISAを使用して決定した)。
【図13】図13は、野生型ニューブラスチン、またはArg48,49EをコードするプラスミドでトランスフェクトしたCHO細胞の中での相対的なニューブラスチンの発現レベルを示すグラフである。
【図14】図14は、Arg48,49E二重変異体でトランスフェクトしたCHO細胞株を導き、そして野生型ニューブラスチンでトランスフェクトしたCHO細胞を導くことにおける、相対的なニューブラスチンの発現レベルを示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号1の15位〜113位のアミノ酸に対して少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含むポリペプチドであって、前記アミノ酸配列には:
配列番号1の48位に相当する位置にアルギニン以外のアミノ酸;
配列番号1の49位に相当する位置にアルギニン以外のアミノ酸;および
配列番号1の51位に相当する位置にアルギニン以外のアミノ酸
からなる群より選択される、配列番号1と比較して少なくとも1つのアミノ酸置換が含まれており、前記ポリペプチドは、二量体化すると、GFRα3とRETを含む複合体に結合する、ポリペプチド。
【請求項2】
前記アミノ酸配列に、配列番号1の48位に相当する位置にアルギニン以外のアミノ酸が含まれる、請求項1に記載のポリペプチド。
【請求項3】
配列番号1の48位のアルギニン残基が、非保存的アミノ酸残基で置換されている、請求項2に記載のポリペプチド。
【請求項4】
配列番号1の48位のアルギニン残基が、グルタミン酸で置換されている、請求項2に記載のポリペプチド。
【請求項5】
前記アミノ酸配列に、配列番号1の49位に相当する位置にアルギニン以外のアミノ酸が含まれる、請求項1に記載のポリペプチド。
【請求項6】
配列番号1の49位のアルギニン残基が、非保存的アミノ酸残基で置換されている、請求項5に記載のポリペプチド。
【請求項7】
配列番号1の49位のアルギニン残基が、グルタミン酸で置換されている、請求項5に記載のポリペプチド。
【請求項8】
前記アミノ酸配列に、配列番号1の51位に相当する位置にアルギニン以外のアミノ酸が含まれる、請求項1に記載のポリペプチド。
【請求項9】
配列番号1の51位のアルギニン残基が、非保存的アミノ酸残基で置換されている、請求項8に記載のポリペプチド。
【請求項10】
配列番号1の51位のアルギニン残基が、グルタミン酸で置換されている、請求項8に記載のポリペプチド。
【請求項11】
前記アミノ酸配列に、配列番号1の48位と49位に相当する位置にアルギニン以外のアミノ酸が含まれる、請求項1に記載のポリペプチド。
【請求項12】
配列番号1の48位のアルギニン残基と49位のアルギニン残基が、非保存的アミノ酸残基で置換されている、請求項11に記載のポリペプチド。
【請求項13】
配列番号1の48位のアルギニン残基と49位のアルギニン残基が、それぞれ、グルタミン酸で置換されている、請求項11に記載のポリペプチド。
【請求項14】
前記アミノ酸配列が、配列番号1の15位〜113位のアミノ酸に対して少なくとも90%同一である、請求項1〜13のいずれかに記載のポリペプチド。
【請求項15】
前記アミノ酸配列が、配列番号1の15位〜113位のアミノ酸に対して少なくとも95%同一である、請求項1〜13のいずれかに記載のポリペプチド。
【請求項16】
前記アミノ酸配列が、配列番号1の15位〜113位のアミノ酸に対して少なくとも98%同一である、請求項1〜13のいずれかに記載のポリペプチド。
【請求項17】
配列番号2の15位〜113位のアミノ酸、配列番号3の15位〜113位のアミノ酸、配列番号4の15位〜113位のアミノ酸、配列番号5の15位〜113位のアミノ酸、配列番号8の15位〜113位のアミノ酸、または配列番号9の15位〜113位のアミノ酸を含む、ポリペプチド。
【請求項18】
前記ポリペプチドが、配列番号2の10位〜113位のアミノ酸、配列番号3の10位〜113位のアミノ酸、配列番号4の10位〜113位のアミノ酸、配列番号5の10位〜113位のアミノ酸、配列番号8の10位〜113位のアミノ酸、または配列番号9の10位〜113位のアミノ酸を含む、請求項17に記載のポリペプチド。
【請求項19】
前記ポリペプチドが、配列番号2にアミノ酸配列、配列番号3のアミノ酸配列、配列番号4のアミノ酸配列、配列番号5のアミノ酸配列、配列番号8のアミノ酸配列、または配列番号9のアミノ酸配列を含む、請求項17に記載のポリペプチド。
【請求項20】
請求項1から19のいずれか1項に記載の2つのポリペプチドを含む、二量体。
【請求項21】
自然界には存在しないポリマーに結合した請求項1から19のいずれかに記載のポリペプチドを含む、結合体。
【請求項22】
請求項1から19のいずれかに記載のポリペプチドと異種アミノ酸配列を含む、融合タンパク質。
【請求項23】
請求項1から19のいずれかに記載のポリペプチド、請求項20に記載の二量体、請求項21に記載の結合体、または請求項22に記載の融合タンパク質と、薬学的に許容される担体または賦形剤を含む、薬学的組成物。
【請求項24】
請求項1から19のいずれかに記載のポリペプチドをコードする配列を含む、核酸。
【請求項25】
請求項24に記載の核酸を含む、発現ベクター。
【請求項26】
請求項25に記載の発現ベクターを含む、細胞。
【請求項27】
ポリペプチドを作製する方法であって:
請求項26に記載の細胞を提供する工程、および
核酸の発現が可能な条件下で前記細胞を培養する工程
を含む、方法。
【請求項28】
哺乳動物の神経系の障害を処置または予防する方法であって、哺乳動物に治療有効量の請求項23に記載の薬学的組成物を投与する工程を含む、方法。
【請求項29】
哺乳動物の神経障害の痛みを処置する方法であって、哺乳動物に治療有効量の請求項23に記載の薬学的組成物を投与する工程を含む、方法。
【請求項30】
哺乳動物においてRET受容体を活性化させる方法であって、哺乳動物に、有効量の請求項1から19のいずれかに記載のポリペプチド、請求項20に記載の二量体、請求項21に記載の結合体、請求項22に記載の融合タンパク質、または請求項23に記載の薬学的組成物を投与する工程を含む、方法。
【請求項31】
配列番号1の15位〜113位のアミノ酸に対して少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含むポリペプチドであって、前記アミノ酸配列には:
配列番号1の20位に相当する位置にセリン以外のアミノ酸;
配列番号1の21位に相当する位置にグルタミン以外のアミノ酸;
配列番号1の32位に相当する位置にヒスチジン以外のアミノ酸;
配列番号1の33位に相当する位置にアルギニン以外のアミノ酸;
配列番号1の39位に相当する位置にアルギニン以外のアミノ酸;
配列番号1の46位に相当する位置にセリン以外のアミノ酸;
配列番号1の68位に相当する位置にアルギニン以外のアミノ酸;
配列番号1の72位に相当する位置にグリシン以外のアミノ酸;
配列番号1の73位に相当する位置にセリン以外のアミノ酸;および
配列番号1の94位に相当する位置にバリン以外のアミノ酸
からなる群より選択される、配列番号1と比較して少なくとも1つのアミノ酸置換が含まれており、前記ポリペプチドは、二量体化すると、GFRα3とRETを含む複合体に結合する、ポリペプチド。
【請求項32】
前記アミノ酸配列が、配列番号1の15位〜113位のアミノ酸に対して少なくとも90%同一である、請求項31に記載のポリペプチド。
【請求項33】
前記アミノ酸配列が、配列番号1の15位〜113位のアミノ酸に対して少なくとも95%同一である、請求項31に記載のポリペプチド。
【請求項34】
前記アミノ酸配列が、配列番号1の15位〜113位のアミノ酸に対して少なくとも98%同一である、請求項31に記載のポリペプチド。
【請求項35】
配列番号1に対して少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含むポリペプチドであって、前記アミノ酸配列には:
配列番号1の7位に相当する位置にアルギニン以外のアミノ酸;
配列番号1の9位に相当する位置にアルギニン以外のアミノ酸;および
配列番号1の14位に相当する位置にアルギニン以外のアミノ酸
からなる群より選択される、配列番号1と比較して少なくとも1つのアミノ酸置換が含まれており、前記ポリペプチドは、二量体化すると、GFRα3とRETを含む複合体に結合する、ポリペプチド。
【請求項36】
前記アミノ酸配列に、配列番号1の7位に相当する位置にアルギニン以外のアミノ酸が含まれる、請求項35に記載のポリペプチド。
【請求項37】
配列番号1の7位のアルギニン残基が、非保存的アミノ酸残基で置換されている、請求項36に記載のポリペプチド。
【請求項38】
配列番号1の7位のアルギニン残基が、グルタミン酸で置換されている、請求項36に記載のポリペプチド。
【請求項39】
前記アミノ酸配列に、配列番号1の9位に相当する位置にアルギニン以外のアミノ酸が含まれる、請求項35に記載のポリペプチド。
【請求項40】
配列番号1の9位のアルギニン残基が、非保存的アミノ酸残基で置換されている、請求項39に記載のポリペプチド。
【請求項41】
配列番号1の9位のアルギニン残基が、グルタミン酸で置換されている、請求項39に記載のポリペプチド。
【請求項42】
前記アミノ酸配列に、配列番号1の14位に相当する位置にアルギニン以外のアミノ酸が含まれる、請求項35に記載のポリペプチド。
【請求項43】
配列番号1の14位のアルギニン残基が、非保存的アミノ酸残基で置換されている、請求項42に記載のポリペプチド。
【請求項44】
配列番号1の14位のアルギニン残基が、グルタミン酸で置換されている、請求項42に記載のポリペプチド。
【請求項45】
前記アミノ酸配列が、配列番号1に対して少なくとも90%同一である、請求項35〜44のいずれかに記載のポリペプチド。
【請求項46】
前記アミノ酸配列が、配列番号1に対して少なくとも95%同一である、請求項35〜44のいずれかに記載のポリペプチド。
【請求項47】
前記アミノ酸配列が、配列番号1の15位〜113位のアミノ酸に対して少なくとも98%同一である、請求項35〜44のいずれかに記載のポリペプチド。
【請求項48】
請求項31から47のいずれか1項に記載の2つのポリペプチドを含む、二量体。
【請求項49】
自然界には存在しないポリマーに結合した請求項31から47のいずれかに記載のポリペプチドを含む、結合体。
【請求項50】
請求項31から47のいずれかに記載のポリペプチドと異種アミノ酸配列を含む、融合タンパク質。
【請求項51】
請求項31から47のいずれかに記載のポリペプチド、請求項48に記載の二量体、請求項49に記載の結合体、または請求項50に記載の融合タンパク質と、薬学的に許容される担体または賦形剤を含む、薬学的組成物。
【請求項52】
請求項31から47のいずれかに記載のポリペプチドをコードする配列を含む、核酸。
【請求項53】
請求項52に記載の核酸を含む、発現ベクター。
【請求項54】
請求項53に記載の発現ベクターを含む、細胞。
【請求項55】
ポリペプチドを作製する方法であって:
請求項54に記載の細胞を提供する工程、および
核酸の発現が可能な条件下で前記細胞を培養する工程
を含む、方法。
【請求項56】
哺乳動物の神経系の障害を処置または予防する方法であって、哺乳動物に治療有効量の請求項51に記載の薬学的組成物を投与する工程を含む、方法。
【請求項57】
哺乳動物の神経障害の痛みを処置する方法であって、哺乳動物に治療有効量の請求項51に記載の薬学的組成物を投与する工程を含む、方法。
【請求項58】
哺乳動物においてRET受容体を活性化させる方法であって、哺乳動物に、有効量の請求項31から47のいずれかに記載のポリペプチド、請求項48に記載の二量体、請求項49に記載の結合体、請求項50に記載の融合タンパク質、または請求項51に記載の薬学的組成物を投与する工程を含む、方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公表番号】特表2008−510468(P2008−510468A)
【公表日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−528061(P2007−528061)
【出願日】平成17年8月18日(2005.8.18)
【国際出願番号】PCT/US2005/029637
【国際公開番号】WO2006/023781
【国際公開日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【出願人】(592221528)バイオジェン・アイデック・エムエイ・インコーポレイテッド (224)
【Fターム(参考)】