説明

ニンニクの線香

【課題】ニンニクを炒めたときやローストした際の香ばしい匂いを、手軽に簡単に得る方法及び用具。
【解決手段】乾燥粉末化したニンニクを線香の原料に用いる。ニンニクは、1〜50重量%範囲で有効である。これにより、線香を焚いたときに、ニンニクを炒めたときやローストした際の香ばしい匂いを得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ニンニクを炒めたときやローストした際の香ばしい匂いを発生する線香に関するものである。
【背景技術】
【0002】
家庭や飲食店で漂うニンニクを炒めたときやローストした際の匂いは、香ばしく、食欲をそそり、気分を昂揚させるものである。また、飲食業においては、この匂いは誘客効果を期待できるものである。
【0003】
この匂いは、調理場や厨房でニンニクを調理すると発生するが、調理時以外にこの匂いを発生させる考案や方法は検討されていなかった。ニンニクの香りに関しては、多くは消臭の問題であり、ニンニクの香りに着目したものは少なかった。ニンニクそのものの香りに着目したものとしては、ハーブソルトの材料としてニンニクを使用するものものがある(例えば、特許文献1参照。)。また、お灸の材料などに使用したものがあり(例えば、特許文献2参照。)、結果としてニンニクを加熱・燃焼することになるものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002-125616号 公報
【特許文献2】特開2001-87349号 公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ニンニクを炒めたときやローストした際の匂いを発生させるには、ガスや炭火などの火力と鍋や鉄板、網などの調理器具が必要であり、いつでも、どこでも手軽に得られるものではない。また、この匂いは、構成成分の種類が多く、複雑すぎるため、合成香料では開発されておらず、人工的に得ることは非常に難しい。
【0006】
以上述べた特許文献1でのハーブソルトでは、ニンニクの炒めたときやローストした際の香ばしい匂いは得られず、特許文献2では、ニンニクから搾った液体状のものを使用しているため、ニンニクの香ばしい匂いは得られない。また、お灸として、もぐさと一緒にニンニクを使用する例もあるが、ニンニクの香ばしい匂いが発生するかどうかは不明であり、もぐさは煙が多く、燃やすための専用の置き台等が必要で、どこでも手軽に利用できるものでない。さらに燃焼時間の調節が困難であり、匂いの発生のオンとオフも簡単にできなかった。
【0007】
本発明は、ニンニクを炒めたときやローストした際の香ばしい匂いを手軽に、特別な道具なしで簡単に得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、鋭意検討した結果、上記の課題を解決する方法を見出し、本発明を完成した。
【0009】
本発明は、手軽に簡単に、ニンニクの炒めたときやローストした際の香ばしい匂いを得るために、線香の原料にニンニクや乾燥粉末ニンニクを含むものである。また、その際のニンニクの量は、線香全体の1〜50重量%含むものである。この線香を点火すると、他の火力で炙られることなく燃焼しつづけ、燃焼している間、ニンニクの香ばしい匂いを発生するものである。さらに、ニンニクの他に炭と炭酸カルシウムを線香に含有することにより、ニンニクの炒めたときやローストした際の香ばしい匂いが増強されたものである。
【0010】
上記の課題解決による作用は、ニンニクそのものを線香の原料に用いると、線香を焚いたときに、ニンニクの炒めたときやローストした際の香ばしい香りが放散するのに、適した温度で加熱が伝わるためと思われる。また、炭と炭酸カルシウムをニンニクと同時に使うことにより、炭やカルシウムや炭酸がニンニクの香りの放散を助長するためと思われる。
【発明の効果】
【0011】
上述したように、本発明では、ニンニクの炒めたときやローストした際の香ばしい匂いを特別な度具や装置を必要とせず、手軽に簡単に得ることができるものである。また、自由自在に成型が可能なことから、製品化の際のバリエーションが広がり、形状によっては、長時間の燃焼が可能なため、長時間、匂いを得ることができる。また、匂いが不要なときは、簡単に燃焼を中断できるため、匂いの必要なとき、不要なときのオンとオフの制御が容易である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明についてその好ましい様態をあげ、より具体的に述べる。
【0013】
本発明のニンニクは、通常食されている球根の部分を用いる。乾燥粉末化したニンニクのほうが、線香の成形上、均一に混合しやすく、燃焼状態も良好である。さらに、表面も滑らかなので、線香の外観上好ましい。パウダー状、顆粒状のニンニクも本発明で使用可能である。ニンニクを乾燥させて、粉末化して使用できるし、市販の乾燥ニンニクを粉末化して使用してもよい。また、市販のガーリックパウダーも使用可能である。粉末は細かいほど、好ましい。
【0014】
また、線香に含まれているニンニクの量は、1〜50重量%の範囲で有効である。1%以下だとニンニクの香ばしい匂いは発生せず、50%以上だとニンニクの焦げる臭いが強くなりすぎ、好ましくない。
【0015】
本発明の炭は、木や竹などを蒸し焼きにして炭化したものであり、木炭や竹炭やそれらを賦活処理した活性炭なども該当する。炭は、線香の10重量%以上の量が好ましい。また、本発明でいう炭酸カルシウムは化成品であるが、他に炭酸カルシウムが主成分である貝殻なども使用可能である。本発明で用いる炭酸カルシウムは線香の10重量%以上の量が好ましいが、含有比率が高すぎると、立ち消えの原因となるので、40重量%は越えないほうがよい。炭と炭酸カルシウムを線香の原料として同時に用いることにより、ニンニクの炒めたときの香ばしい匂いが増強され、燃焼灰も固まりやすい。
【0016】
ニンニクや炭酸カルシウム以外の線香の原料としては、植物系の基材としてはタブ粉や支那粉、杉粉や松粉、樅粉などの木粉や杉葉の粉末やその他の乾燥植物粉、セルロースなどが用いられる。本線香の燃焼補助剤としては、硝酸カリウム、硝酸アルミニウム、硝酸ナトリウム、硝酸鉄、硝酸バリウム、硝酸マグネシウム、硝酸ストロンチウムなどの硝酸塩や過塩素酸ナトリウム、過塩素酸カリウム、過塩素酸アンモニウム、過塩素酸マグネシウムなどの過ハロゲン酸塩、過炭酸ナトリウム、過塩化ナトリウムなどの過酸化物、その他塩素酸カリウム、二酸化マンガン、鉄や鉄塩などがあげられる。燃焼補助剤の量は、線香の成型後の形態にもよるが、概ね全体の量の2〜40重量%程度が用いられる。燃焼補助剤の量が少ないと点火後、途中で立ち消えしやすい。また、燃焼補助剤の量が多すぎると燃焼時に火花が飛んで、危険である。
【0017】
結合剤としてはでんぷん糊、松脂、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、マンナン、各種ガム類、カゼイン、流動パラフィン、各種合成高分子、各種合成樹脂接着剤などがあり、単独または数種類の混合で用いられ、線香の5〜40重量%程度が使用される。結合剤の含有量が少ないと強度が脆くなり、多いと燃焼性に悪影響を与える。焚いたときに発生するニンニクの香ばしい匂いを妨害しないものが好ましい。
【0018】
これらの原料を混練後、棒状、コーン状、円筒状、平板状、渦巻状などにプレス成型機、押出成型機、打出成型機、射出成型機などにより成型し、乾燥し完成である。
【0019】
以下に実施例を示して本発明を具体的に説明するが、これは単に例示の目的で述べるものであり、本発明はこれらの実施例に限定されるものでない。
【実施例1】
【0020】
市販の乾燥スライスニンニク(輸入・販売:(株)神戸物産)10gを粉砕機(ミルサー、岩谷産業(株)製)で1分間粉砕し、粉末化した。線香の原料として、この乾燥粉末ニンニク0.5gと粉末活性炭素(関東化学(株)製)0.1gとタブ粉0.36gと硝酸カリウム0.04gを乳鉢で混合し、市販のでんぷん糊を加えて、よく混練し、団子状に固めた。これを注射器にて直線状に押し出し成形した。30℃の送風乾燥機で4日間乾燥後、長さ7cmに切り揃えた。直径は約2mmであった。
【0021】
この線香を焚いている間、ニンニクの炒めたときやローストした際の香ばしい匂いが発生した。線香は、立ち消えすることもなかった。
【実施例2】
【0022】
杉の木のおが屑20gを粉砕機(ミルサー、岩谷産業(株)製)で1分間粉砕した。これを150μmのふるいにて分別し、150μm以下の大きさの杉木材粉末を集めた。
【0023】
線香の原料として、市販の顆粒パウダーニンニク(商品名:ガーリック調味料、ハウス食品(株)製)0.3gとタブ粉0.4gと杉木材粉末0.2gと硝酸カリウム0.1gを乳鉢で混合し、市販のでんぷん糊を加えて、よく混練し、団子状に固めた。これを注射器にて直線状に押し出し成形した。30℃の送風乾燥機で4日間乾燥後、長さ7cmに切り揃えた。直径は約2mmであった。
【0024】
この線香を焚いている間、ニンニクの炒めたときやローストした際の香ばしい匂いが発生した。線香は、立ち消えすることもなかった。
【実施例3】
【0025】
市販の乾燥スライスニンニク(輸入・販売:(株)神戸物産)10gを粉砕機(ミルサー、岩谷産業(株)製)で1分間粉砕し、粉末化した。
【0026】
1)炭と炭酸カルシウムなし:線香の原料として、乾燥粉末ニンニク0.1gとセルロース粉末(輸入・販売:和光純薬工業(株))2.9gと杉木材粉末2gとタブ粉4gと硝酸カリウム1gを乳鉢で混合し、市販のでんぷん糊を加えて、よく混練し、団子状に固めた。
【0027】
2)炭あり、炭酸カルシウムなし:線香の原料として、乾燥粉末ニンニク0.1gと粉末活性炭素(関東化学(株)製)1gとセルロース粉末(輸入・販売:和光純薬工業(株))1.9gと杉木材粉末2gとタブ粉4gと硝酸カリウム1gを乳鉢で混合し、市販のでんぷん糊を加えて、よく混練し、団子状に固めた。
【0028】
3)炭なし、炭酸カルシウムあり:線香の原料として、乾燥粉末ニンニク0.1gと炭酸カルシウム(和光純薬工業(株)製)1gとセルロース粉末(輸入・販売:和光純薬工業(株))1.9gと杉木材粉末2gとタブ粉4gと硝酸カリウム1gを乳鉢で混合し、市販のでんぷん糊を加えて、よく混練し、団子状に固めた。
【0029】
4)炭と炭酸カルシウムあり:線香の原料として、乾燥粉末ニンニク0.1gと粉末活性炭素(関東化学(株)製)1g炭酸カルシウム(和光純薬工業(株)製)1gとセルロース粉末(輸入・販売:和光純薬工業(株))1.9gと杉木材粉末2gとタブ粉3gと硝酸カリウム1gを乳鉢で混合し、市販のでんぷん糊を加えて、よく混練し、団子状に固めた。
【0030】
これらを注射器にて直線状に押し出し成形した。30℃の送風乾燥機で4日間乾燥後、長さ7cmに切り揃えた。直径は約2mmであった。
【0031】
これらの線香を焚いている間、1)と2)と3)は、ニンニクの炒めたときやローストした際の香ばしい匂いは発生しなかったが、4)は香ばしい匂いが発生した。上記1)〜4)のすべての線香は、立ち消えすることもなく、煙の量も適当であった。
【実施例4】
【0032】
線香の原料として、市販の顆粒パウダーニンニク(商品名:ガーリック調味料、ハウス食品(株)製)0.2gとホタテ貝殻粉末(商品名:貝殻パウダー120、販売:(有)ふるさと物産)0.2gと杉木材粉末0.3gとセルロース粉末(輸入・販売:和光純薬工業(株))0.2gと硝酸カリウム0.1gを乳鉢で混合し、市販のでんぷん糊を加えて、よく混練し、団子状に固めた。これを注射器にて直線状に押し出し成形した。30℃の送風乾燥機で4日間乾燥後、長さ7cmに切り揃えた。直径は約2mmであった。
【0033】
この線香を焚いている間、ニンニクの炒めたときやローストした際の香ばしい匂いが発生した。線香は、立ち消えすることもなかった。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明は、香りを楽しむお香やアロマグッズなどの日用品や飲食店などでの販売促進ツールなどに適用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ニンニクを含有することを特徴とする線香。
【請求項2】
請求項1でのニンニクが、乾燥粉末ニンニクであることを特徴とする線香。
【請求項3】
請求項1および請求項2でニンニクを1〜50重量%含むことを特徴とする線香。
【請求項4】
ニンニクを炒めたときやローストした際の香ばしい匂いを、燃焼することで得られる線香。
【請求項5】
ニンニクと炭と炭酸カルシウムを含有することを特徴とする、焚いたときに、ニンニクの炒めたときやローストした際の香ばしい匂いが増強された線香。

【公開番号】特開2011−168497(P2011−168497A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−30986(P2010−30986)
【出願日】平成22年2月16日(2010.2.16)
【出願人】(309015019)地方独立行政法人青森県産業技術センター (52)
【Fターム(参考)】