説明

ニンニク成分含有飲料及びニンニク成分による風味の調整を行う方法

【課題】ニンニク独特の不快臭や雑味が低減され、摂取しやすいニンニク加工品を提供すること。
【解決手段】(A)ニンニク成分、及び(B)0.1質量%以上5.0質量%以下のシトルリンを含有するニンニク成分含有飲料、又はニンニク成分を含有するニンニク成分含有飲料に対して、シトルリンを添加することにより、含有されているニンニク抽出物による風味の調整を行う方法によれば、ニンニク成分に由来するニンニク独特の不快臭や雑味が低減され、摂取しやすいニンニク成分含有飲料を提供できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ニンニク成分含有飲料及びニンニク成分による風味の調整を行う方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ニンニクはネギ科の香味野菜で、これが有する独特の風味のため、古来よりその球根は香辛料として広く使用されている。また、ニンニクは疲労回復、体力増強、滋養強壮等の効果を有するとされ、各種栄養ドリンクやサプリメント等の加工品の原料としても使用されている。
ニンニクの加工品としては、例えば、特許文献1に、生ニンニクを、60℃から75℃の温度、75%から90%の湿度の範囲内で熟成し、自己醗酵させた醗酵黒ニンニクの皮を除去した後、潰してペースト状にしたものに水を加えて抽出し、さらに該抽出物に親水性有機溶媒を混合して抽出した抽出物である醗酵黒ニンニク抽出液が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4080507号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ニンニクの加工品であってもニンニクが有する上述の独特の風味を有しているため、ニンニク加工品は摂取しづらく、またニンニク加工品の摂取後に残る不快臭のため、ニンニク加工品の摂取が忌避される傾向がある。特に、ニンニク成分含有飲料は、ニンニク特有の臭い・味がより感じられて摂取しにくいものであった。このため、ニンニクの不快臭や雑味が低減され、摂取しやすいニンニク成分含有飲料を開発することが望まれていた。
よって、本発明は、ニンニク独特の不快臭や雑味が低減され、摂取しやすいニンニク成分含有飲料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の発明者らは、上記課題に鑑み鋭意研究を行った。その結果、ニンニク成分に所定量のシトルリンを添加することにより、ニンニク独特の不快臭や雑味が低減され、摂取しやすいニンニク成分含有飲料を提供できることを見出し、本発明を完成するに至った。
具体的には、本発明は、(A)ニンニク成分、及び(B)0.1質量%以上5.0質量%以下のシトルリンを含有するニンニク成分含有飲料に関する。
また、本発明は、ニンニク成分を含有するニンニク成分含有飲料に対して、シトルリンを添加することにより、含有されているニンニク成分による風味の調整を行う方法に関する。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、ニンニク成分含有飲料において、ニンニク成分に加えて、所定量のシトルリンを添加したので、ニンニク成分に由来するニンニク独特の不快臭や雑味が低減され、摂取しやすいニンニク成分含有飲料を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
<ニンニク抽出物含有飲料>
ニンニク抽出物含有飲料は、(A)ニンニク成分、及び(B)0.1質量%以上5.0質量%以下のシトルリンを含有する。
【0008】
[ニンニク成分]
本発明のニンニク成分含有飲料は、ニンニク成分を含む。ここで、本発明において、「ニンニク」とは、アリウム サチバム エル(Allium sativum L)なる学名で呼称されるもの、及びこの類縁種で球根が食用に供されるものを意味する。ニンニク成分とは、生ニンニク、又はニンニクから抽出したニンニク抽出物若しくはニンニク粉末を意味する。これらは単独で用いてもよく、任意に併用して用いてもよい。
本発明のニンニク成分含有飲料におけるニンニク成分の含有量は、ニンニク成分含有飲料の総質量に対し、生換算量で1質量%以上12質量%以下であることが好ましく、2質量%以上10質量%以下であることが好ましい。ニンニク成分含有飲料におけるニンニク成分の含有量を、上記範囲内のものとすることにより、風味良好なニンニク成分含有飲料を得ることができる。なお、生換算量は、ニンニク成分の添加量を、生ニンニクの添加量で、又はニンニク抽出物若しくはニンニク粉末の添加量を、抽出物若しくは粉末の調製に使用した生ニンニクの量で規定した量である。
本発明で用いられるニンニク成分の生ニンニクは、適宜、搾汁液や粉砕物として用いることができる。ニンニク抽出物はその性状に関係なく、ニンニクに含まれる水溶性の成分を含む組成物を指す。即ち、ニンニク抽出物は、ニンニクを抽出することにより得られた水性の溶液であってもよいし、当該水性の溶液を乾燥処理し、溶媒を除去したものであってもよい。ニンニク粉末としては生ニンニクを乾燥粉末化したものを用いることができる。
ニンニクを抽出する方法としては、特に限定されるものではなく、当業者に周知の方法を使用することができる。例えば、ニンニク抽出物は、ニンニクを破砕しペースト状にして、ろ過或いは遠心分離によって不溶成分を取り除き、適宜濃縮、殺菌処理して得ることができる。また、上記のペースト状にしたニンニクに抽出用の溶媒を添加し、得られた溶液を例えば40℃以上80℃以下の温度において保持することにより得ることができる。抽出用の溶媒としては、特に限定されるものではないが、水、エタノール等のアルコール並びにこれらの混合物を使用することができる。
上述のとおり、ニンニク抽出物は、ニンニク成分含有飲料にそのまま添加しても、濃縮した上で添加してもよく、乾燥させて粉体組成物とした後、ニンニク成分含有飲料に添加してもよい。ニンニク抽出物の乾燥は、例えば、濃縮乾燥、噴霧乾燥、真空乾燥、及び凍結乾燥等、当業者に周知の乾燥方法を用いればよい。
なお、上述のニンニク成分として醗酵させたニンニクに由来するものを用いる場合には、醗酵によりニンニク特有の臭い・味が抑えられる。このため、当該醗酵させたニンニクに由来するニンニク成分は、本発明に好適に用いることができる。醗酵させたニンニクに由来するニンニク成分を得る方法としては、特に限定されるものではなく、当業者に周知の方法を使用することができる。例えば、前述の生ニンニクを55℃以上80℃以下の温度において、数日から15日間程度保持することにより醗酵させたニンニクを用いて、搾汁液や粉砕物とする方法や、当該醗酵させたニンニクからニンニク抽出物やニンニク粉末を得る方法を使用することができる。ニンニク成分として生ニンニクのアリイナーゼを不活性化処理したものから得た生ニンニクの搾汁液、粉砕物、ニンニク抽出物、又はニンニク粉末等のいわゆる無臭化処理したニンニク成分を用いてもよい。
【0009】
<シトルリン>
本発明のニンニク成分含有飲料は、0.1質量%以上5.0質量%以下、好ましくは0.3質量%以上3質量%以下のシトルリンを含有する。ここで、シトルリンはオルニチン回路を構成し、L−2−アミノ−5−(カルバモイルアミノ)ペンタン酸のIUPAC名を有するアミノ酸を指す。ニンニク成分含有飲料が、ニンニク成分に加えて所定量のシトルリンを含有することにより、ニンニク独特の不快臭や雑味が低減され、摂取しやすいニンニク成分含有飲料を提供することができる。
ここで、ニンニク成分含有飲料における、シトルリンの含有量は、上述のとおり0.1質量%以上5.0質量%以下である。シトルリンの含有量が、上記の範囲内のものであることにより、ニンニク成分含有飲料の風味や味を良好なものとすることができる。
本発明のニンニク成分含有飲料に用いられるシトルリンは、市販のものを使用することができ、例えば、協和醗酵バイオ株式会社、プロテインケミカル株式会社により提供されるものを入手して使用することができる。
【0010】
<その他の成分>
本発明のニンニク成分含有飲料には、クエン酸、ビタミンB1、及び/又は塩化マグネシウムを、単独で、又は任意に組み合せて含有させることができる。これらの成分をニンニク成分及びシトルリンと組み合わせて添加することにより、ニンニク成分含有飲料の味質が効果的に改善され、ニンニク成分含有飲料が、より摂取のし易いものとなる。
なお、上記成分の添加量は、ニンニク成分含有飲料の総質量に対し、クエン酸であれば0.05質量%以上0.7質量%以下、ビタミンB1であれば0.001質量%以上0.05質量%以下、塩化マグネシウムであれば0.01質量%以上0.8質量%以下とすることが好ましい。上記添加量で各成分を添加することにより、ニンニク成分含有飲料の味質を効果的に改善することができる。
特に、ニンニク成分含有飲料のpHを2以上4以下とすることにより、飲料がすっきりとした味質の飲みやすいものとなる。特に、クエン酸を添加して上記のpHを達成することにより、よりすっきりとした味質の飲みやすい飲料となる。また、ビタミンB1及び/又は塩化マグネシウムを添加することにより、飲料のニンニクの雑味が低減され、味のしまった味質のものとなる。
【0011】
その他、本発明のニンニク成分含有飲料には、クエン酸及び/又はクエン酸ナトリウム、塩化マグネシウム以外にも、果糖ブドウ糖液糖、果汁、甘味料、酸味料、増粘剤、酸化防止剤、香料、ビタミンB1以外のビタミン類を添加することができる。これらの食品添加物の添加量は、当業者が通常採用する添加量の範囲内において適宜決定すればよい。
【0012】
<風味の調整を行う方法>
本発明は、ニンニク成分を含有するニンニク成分含有飲料に対して、シトルリンを添加することにより、含有されているニンニク成分による風味の調整を行う方法にも関する。
即ち、後述する実施例において示すとおり、シトルリンはニンニク成分と組み合わせて用いられることにより、ニンニク成分に由来する、ニンニク独特の不快臭や雑味を低減し、ニンニク成分含有飲料を摂取しやすいものとする効果を有する。このため、ニンニク成分含有飲料にシトルリンを添加することにより、ニンニク独特の不快臭や雑味が低減され、摂取しやすいニンニク成分含有飲料を提供することができる。
【実施例】
【0013】
以下、本発明について、実施例を挙げて詳細に説明する。なお、本発明は、以下に示す実施例に何ら限定されるものではない。
【0014】
<実施例1から7、比較例1から2>
表1に従い、醗酵ニンニク乾燥粉末、シトルリン、甘味料として果糖ブドウ糖液糖、酸味料としてクエン酸、増粘剤としてペクチンを混合して、水溶液とし、93℃に加熱して容積を100mLに調整し、金属缶にホットパックしてニンニク成分含有飲料を調製した。表1に質量%として各原料の添加量を示した。
なお、醗酵ニンニク乾燥粉末は、生のニンニクを約60℃の温度、約90%の湿度で20日間保持して醗酵させ、これを約50℃で1カ月熱風乾燥した。乾燥させたニンニクを粉砕して目開き60メッシュを通るものを篩別したものであった。
【0015】
【表1】

(単位は質量%)
【0016】
[評価]
実施例1から7、比較例1から2のニンニク成分含有飲料について、「ニンニクの不快臭」、「ニンニクの雑味」、及び「摂取のし易さ」をパネラー11名で官能評価し、以下に示す基準でスコアをつけて平均値を算出した。
(ニンニクの不快臭)
醗酵による特有の酸味を伴った蒸れたニンニク臭が
1:弱い、2:やや弱い、3:どちらとも言えない、4:やや強い、5:強い
(ニンニクの雑味)
醗酵による特有の加熱による蒸れ感のあるこもったニンニク味が
1:弱い、2:やや弱い、3:どちらとも言えない、4:やや強い、5:強い
(摂取のし易さ)
醗酵ニンニク特有の臭い・味が抑えられた、刺激が抑えられ、かつ後味にキレのあるバランスの取れた味が
1:ある、2:ある程度ある、3:どちらとも言えない、4:あまりない、5:ない
【0017】
【表2】

【0018】
なお、t−検定は公知の手法を用いて比較例1との間の有意差を検定した。
*** :水準5%で有意差あり
** :水準10%で傾向あり

表2より、実施例2から7では、比較例に比べ、ニンニクの不快臭が有意に低減し、更に、実施例3から5では、比較例に比べ、ニンニクの雑味も有意に低減した。加えて、実施例2から6では、比較例に比べ、ニンニク成分含有飲料の摂取のし易さも有意に改善されていた。このような結果より、ニンニク成分含有飲料において、所定量のシトルリンを含有することにより、ニンニクの不快臭や雑味が低減し、ニンニク成分含有飲料の摂取のし易さも改善することが分かる。
【0019】
<実施例8>
味質改善のためにビタミンB1 0.02質量%を加え、等量の体積の水を減らして水溶液とした以外は実施例5と同様にしてニンニク成分含有飲料を調製した。この飲料は、pHが3.2で、実施例5の飲料と同様にニンニクの不快臭、雑味が低減し、更に味のしまった摂取し易いものであった。
<実施例9>
味質改善のために塩化マグネシウム0.05質量%を加え、等量の体積の水を減らして水溶液とした以外は実施例5と同様にしてニンニク成分含有飲料を調製した。この飲料は、pHが3.2で、実施例5の飲料と同様にニンニクの不快臭、雑味が低減した、更に味のしまった摂取し易いものであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ニンニク成分、及び
(B)0.1質量%以上5.0質量%以下のシトルリンを含有するニンニク成分含有飲料。
【請求項2】
ニンニク成分の含有量が1質量%以上10質量%以下である請求項1のニンニク成分含有飲料。
【請求項3】
ニンニク成分が、醗酵ニンニクの成分である請求項1又は2のニンニク成分含有飲料。
【請求項4】
更に、クエン酸を含有する請求項1から3のいずれかのニンニク成分含有飲料。
【請求項5】
更に、ビタミンB1及び/又は塩化マグネシウムを含有する請求項1から4のいずれかのニンニク成分含有飲料。
【請求項6】
pHが2以上4以下である請求項1から5のいずれかのニンニク成分含有飲料。
【請求項7】
ニンニク成分を含有するニンニク成分含有飲料に対して、シトルリンを添加することにより、含有されているニンニク成分による風味の調整を行う方法。