説明

ネジコア、射出成形用金型ユニット及び成形品の製造方法

【課題】耐久性が向上した雄ネジ部を有するネジコア、当該ネジコアを備えた射出成形用金型ユニット及び当該射出成形用金型ユニットを用いた成形品の製造方法を提供することを課題とする。
【解決手段】可動側金型200と固定側金型300、400とにより画定されたキャビティ内に突出して成形品500に雌ネジ部510を形成するネジコア100であって、先端側に形成され、雌ネジ部510を形成するための雄ネジ部110と、先端側に形成され、固定側金型400と当接する円錐状の凸面120と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ネジコア、当該ネジコアを備えた射出成形用金型ユニット及び当該射出成形用金型ユニットを用いた成形品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
射出成形により、雌ネジ部を有した成形品を形成する技術が知られている(特許文献1参照)。このような成形品の成形は、固定側金型と可動側金型とにより確定されるキャビティ内に、成形品の雌ネジ部を成形するための雄ネジ部を有したネジコアを挿入することにより成形される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−207104号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
固定側金型の先端とネジコアの先端とが当接した状態で、キャビティ内に合成樹脂が充填される。固定側金型の先端とネジコアの先端とは、互いに平面状である。このため、ネジコアの雄ネジ部の最も先端側のネジ部は不完全ネジ部となる。ネジコア先端の平面部はネジコアの中心軸に鉛直である。従って、ネジ山の角度が60°である場合には、不完全ネジ部のネジ山と平面部とのなす角度が30°となる箇所がある。このような箇所は強度的に脆いため、成形作業中あるいは金型の取り扱い中に先端側のネジ山が欠けてしまう恐れがある。先端側のネジ山が欠けてしまうと、成形品に雌ネジ部を成形できないおそれがある。
【0005】
そこで本発明は、耐久性が向上した雄ネジ部を有するネジコア、当該ネジコアを備えた射出成形用金型ユニット及び当該射出成形用金型ユニットを用いた成形品の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的は、第1金型と第2金型とにより画定されたキャビティ内に突出して成形品に雌ネジ部を形成するネジコアであって、先端側に形成され、前記雌ネジ部を形成するための雄ネジ部と、先端側に形成され、前記第2金型と当接する円錐状の凸面と、を備え、前記雄ネジ部は、前記円錐状の凸面に至るように形成されている、ことを特徴とするネジコアによって達成できる。
【0007】
ネジコアは、先端側に円錐状の凸面を有しているので、ネジコアの最も先端側のネジ山と凸面とのなす角度が大きくなる。これにより、ネジコアの最も先端側のネジ山が欠けることが防止され、ネジコアの雄ネジ部は耐久性が向上する。これにより、成形品に雌ネジ部を適切に形成することができる。
【0008】
また、上記目的は、上記のネジコアと、前記凸面に対応した円錐状の凹面を有している前記第2金型と、を備えた、射出成形用金型ユニットによって達成できる。これにより、成形品に雌ネジ部を適切に形成することができる。
【0009】
また、上記目的は、射出成形に用いられる第1金型と第2金型との間で画定されるキャビティ内に、成形品に雌ネジ部を形成するための雄ネジ部を有したネジコアを突出させるステップと、前記ネジコアの先端に形成された円錐面と、前記凸面に対応した円錐状の前記第1金型の凹面とを当接させるステップと、前記キャビティ内に樹脂を充填するステップと、を有した成形品の製造方法によって達成できる。これにより、成形品に雌ネジ部を適切に形成することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、耐久性が向上した雄ネジ部を有するネジコア、当該ネジコアを備えた射出成形用金型ユニット及び当該射出成形用金型ユニットを用いた成形品の製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】射出成形用金型装置の一部分を示した模式的な断面図である。
【図2】ネジコアの先端を示した図である。
【図3】固定側金型を示した図である。
【図4】成形品の断面図である。
【図5】成形品を先端側から見た図である。
【図6】成形品の不完全ネジ部の説明図である。
【図7】本実施例に係る金型装置とは異なる構造を有した金型装置による成形品の製造の説明図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明に係る実施例について図面を参照して説明する。
【0013】
図1は、射出成形用金型装置の一部分を示した模式的な断面図である。
金型装置は、ネジコア100、可動側金型200、固定側金型300、400などを備えている。金型装置は、雌ネジ部を有した成形品を射出成形するための装置である。尚、本実施例の金型装置は、ネジコア100、固定側金型400以外の構成については、公知のものと同様である。可動側金型200は、第1金型に相当する。固定側金型300、400は、第2金型に相当する。
【0014】
ネジコア100は、ロッド状に形成され、先端側に雄ネジ部110を有している。雄ネジ部110は、複数のネジ山を含んでいる。雄ネジ部110により、成形品の雌ネジ部が形成される。可動側金型200は、固定側金型300、固定側金型400に対して進退可能に設けられている。可動側金型200と、固定側金型300、固定側金型400との間で、キャビティCが画定される。キャビティC内には合成樹脂が充填される。ネジコア100は、キャビティC内に進退可能かつ回転可能に設けられている。このような金型装置により成形品が製造される。成形品の製造方法については後述する。
【0015】
図2は、ネジコア100の先端を示した図である。ネジコア100の先端には、円錐状の凸面120が形成されている。ネジコア100の最も先端側には不完全ネジ部112が形成されている。不完全ネジ部112は、完全なネジ山として形成されていない。図3は、固定側金型300、固定側金型400を示した図である。固定側金型300は円筒状に形成され、固定側金型300の内周には固定側金型400が嵌合している。固定側金型400の先端には、凸面120と対応するように円錐状の凹面420が形成されている。凸面120の角度と、凹面420の角度とは一致している。また、固定側金型400の中心には貫通した孔422が設けられている。
【0016】
図4は、成形品の断面図である。成形品500は、円筒部501と、円筒部501の内周に形成された雌ネジ部510とを有している。雌ネジ部510は、雄ネジ部110によって成形される。雌ネジ部510は、複数のネジ山を含む。また、成形品500の最も先端には、不完全ネジ部520が形成されている。不完全ネジ部520は、完全なネジ山として形成されていない。図5は、成形品を先端側から見た図である。不完全ネジ部520が、成形品500の半周以上に亘って形成されている。図6は、成形品の不完全ネジ部520の説明図である。不完全ネジ部520は、雄ネジ部110の最も先端側のネジ山のフランク111と凹面420とによって画定される隙間により形成される。
【0017】
本実施例におけるネジコア100の雄ネジ部110は、ネジコア100の凸面120に至るまで加工されている。本実施例においては凸面120の角度はネジ山の角度と同一である。そのため、不完全ネジ部112のネジ山の角度は図1に示すとおり60°を下回らない。従って、ネジコア100の強度が落ちることが無く、耐久性に優れたネジコア100を得ることができる。なお、本実施例においてはネジ山の角度と凸面120の角度とは同一としたが、必ずしも同一でなくてもよく、ネジコアの強度が許す限り、いかなる角度であってよい。
【0018】
次に、本実施例に係る金型装置とは異なる構造を有した金型装置による成形品について説明する。図7は、本実施例に係る金型装置とは異なる構造を有した金型装置による成形品の製造の説明図である。尚、図7は、図6と対応している。
【0019】
固定側金型400xは、先端に平面420xを有している。これに対応するように、ネジコア100xの先端には平面120xが形成されている。このように、ネジコア100xの先端が平面であるため、不完全ネジ部112xには、平面とネジ山とのなす角度が30°になる箇所がある。この箇所で不完全ネジ部112xが欠ける恐れがあった。
【0020】
しかしながら、図6に例示したように、ネジコア100の不完全ネジ部112は、一定の厚みを有している。このため、本実施例に係るネジコア100の不完全ネジ部112は欠けにくい構成となっている。このため、ネジコア100は耐久性が向上している。
【0021】
次に、本実施例に係る金型装置による成形品の製造方法について簡単に説明する。まず、可動側金型200を、固定側金型300、400に当接させる。これにより、可動側金型200、固定側金型300、400によって囲まれた空間がキャビティCとして画定される。尚、可動側金型200は、固定側金型300、400に対して進退自在である。次に、キャビティC内にネジコア100を突出させる。この際に、凸面120と凹面420とが当接する。
【0022】
次に、キャビティC内に合成樹脂を充填する。次に、所定時間経過しキャビティC内の合成樹脂が硬化したら、可動側金型200を固定側金型300、400から離れるように移動させる。可動側金型200が、固定側金型300、400から所定距離離れると、ネジコア100を回転させると共に後退させて、ネジコア100から成形品500を取り外す。以上のようにして、雌ネジ部520が形成された成形品500が製造される。
【0023】
以上本発明の好ましい一実施形態について詳述したが、本発明は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0024】
C キャビティ
100 ネジコア
110 雄ネジ部
111 フランク
112 不完全ネジ部
120 凸面
200 可動側金型
300、400 固定側金型
420 凹面
500 成形品
501 円筒部
510 雌ネジ部
520 不完全ネジ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1金型と第2金型とにより画定されたキャビティ内に突出して成形品に雌ネジ部を形成するネジコアであって、
先端側に形成され、前記雌ネジ部を形成するための雄ネジ部と、
先端側に形成され、前記第2金型と当接する円錐状の凸面と、を備え、
前記雄ネジ部は、前記円錐状の凸面に至るように形成されている、
ことを特徴とするネジコア。
【請求項2】
請求項1のネジコアと、
前記凸面に対応した円錐状の凹面を有している前記第2金型と、を備えた、ことを特徴とする射出成形用金型ユニット。
【請求項3】
前記第1金型は可動金型で、前記第2金型は固定側金型である、
ことを特徴とする請求項2に記載の射出整形用金型ユニット。
【請求項4】
射出成形に用いられる第1金型と第2金型との間で画定されるキャビティ内に、成形品に雌ネジ部を形成するための雄ネジ部を有したネジコアを突出させるステップと、
前記ネジコアの先端に形成された円錐面と、前記凸面に対応した円錐状の前記第1金型の凹面とを当接させるステップと、
前記キャビティ内に樹脂を充填するステップと、を有したことを特徴とする成形品の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−162773(P2010−162773A)
【公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−7090(P2009−7090)
【出願日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【出願人】(396004981)セイコープレシジョン株式会社 (481)
【Fターム(参考)】