説明

ネットプロテクタ及びネットプロテクタ付きホース

【課題】ゴムホースへの取り付け性を損なうことなく簡単にゴムホースに位置決め固定できるネットプロテクタを提供する。
【解決手段】保護糸11をブレード編組することにより、筒状のネットプロテクタを形成する。ネットプロテクタのそれぞれの保護糸11を、耐磨耗性を有する1本のナイロン製モノフィラメント13と、柔軟性を有する2本のポリエチレン製モノフィラメント15と、1本のLDPE又はHDPE製溶融モノフィラメントと、を引き揃えることにより形成する。溶融モノフィラメントの融点が150℃乃至160℃となるようにしておき、ゴムホースの加硫時に溶融モノフィラメントが溶融するように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば自動車用ヒーターホースなどのゴムホースに用いられるネットプロテクタ及びこのようなネットプロテクタを備えたネットプロテクタ付きホースに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車用ヒーターホースなどの自動車配管ホースは、狭い配管スペース内に、周辺部品・部材と接触状態で、あるいは接近した状態で配置される。したがって、特にゴムホースの場合には、周辺部品や部材との接触による損傷からホースを保護するために、外周にプロテクタを設けておくことが好ましい。
【0003】
このようなプロテクタとしては、ゴム製のものも使用されているが、例えば特許文献1に開示されているような、曲がり部を有するゴムホースにも比較的簡単に装着することができ、かつ軽量なネット状のものも使用されている。
【0004】
ところで、こういったプロテクタはホースの外周に位置ずれしないように設けられる必要がある。プロテクタの位置ずれ防止手段としては、例えば特許文献2や特許文献3に記載されているように、プロテクタとして熱収縮チューブを用い、ゴムホースの加硫時の加熱によりプロテクタを熱収縮させ、プロテクタをゴムホースにずれないように取り付けるといったものが採用されているが、ネット状のプロテクタに関しては、接着剤を塗布してプロテクタを固定したり、プロテクタの両端部に滑り止め用の弾性材コーティングを設けるといった手段が用いられている。
【0005】
【特許文献1】特許第2604746号公報
【特許文献2】特公平6−22938号公報
【特許文献3】特開平8−267599号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、接着剤の塗布によるネットプロテクタの固定は作業が面倒だし、弾性材コーティングをネットプロテクタに設けておくと、特に曲がり部を有するホースにはネットプロテクタを簡単に装着できなくなってしまう。
【0007】
そこで本発明は、ゴムホースへの取り付け性を損なうことなく簡単にゴムホースに位置決め固定できるネットプロテクタ及びこのようなネットプロテクタが固定されたネットプロテクタ付きホースの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的を達成するための本発明のネットプロテクタは、少なくとも外面側(例えば外面層)がゴム製のゴムホースの外周に配置される筒状のネットプロテクタであり、複数本のモノフィラメントが引き揃えられて形成される保護糸をブレード編み(編組)して構成されていて、前記保護糸は、融点が前記ゴムホースの加硫温度以下である溶融モノフィラメントを含んでいるものである。ネットプロテクタは、未加硫のゴムホースの外周に取り付けられる。ゴムホースの加硫処理が、1次加硫とこの1次加硫に続く2次加硫とによって行われる場合には、例えば、溶融モノフィラメントは2次加硫の加硫温度以下の融点を有し、ネットプロテクタは1次加硫後で2次加硫前の未加硫のゴムホースに取り付けられる。ネットプロテクタを未加硫のゴムホースに取り付けたら、ゴムホースを加熱して加硫あるいは2次加硫する。溶融モノフィラメントはここでの加熱により溶融し、加硫された外面側のゴム材と他のモノフィラメントとを接着する。ここでは、ネットプロテクタを固定(位置ずれ防止)するための特別の工程は要求されない。溶融モノフィラメント以外の他のモノフィラメントの融点は、通常、加硫温度よりも高い。
【0009】
溶融モノフィラメントとして、融点が例えば150℃乃至160℃のものを使用することができる。また、溶融モノフィラメントは、低密度ポリエチレン(LDPE)又は高密度ポリエチレン(HDPE)等のオレフィン系樹脂製であることが好ましい。オレフィン系樹脂は官能基を有していないので、オレフィン系樹脂を用いることにより、外面側のゴム材への影響を考慮することなくネットプロテクタを構成できる。
【0010】
ゴムホースへの十分な保護を確保するために、保護糸は、ナイロン製の耐磨耗モノフィラメントを含んでいることが効果的である。
【0011】
また、本発明のネットプロテクタ付きホースは、少なくとも外面側(例えば外面層)がゴム製のゴムホースと、このゴムホースの外周に配置された筒状のネットプロテクタと、を備えたネットプロテクタ付きホースであり、前記ネットプロテクタは、複数本のモノフィラメントが引き揃えられて形成される保護糸をブレード編み(編組)して構成され、未加硫の前記ゴムホースの外周に予め(加硫前に)配置されていて、前記ネットプロテクタの前記保護糸は、融点が前記ゴムホースの加硫温度以下である溶融モノフィラメントを含み、この溶融モノフィラメントは、前記ゴムホースの加硫時に溶融して、前記ゴムホースの前記外面側及び前記ネットプロテクタ、より具体的には、加硫された外面側のゴム材及び他のモノフィラメントを接着しているものである。ゴムホースの加硫処理が、1次加硫とこの1次加硫に続く2次加硫とによって行われる場合には、ネットプロテクタは、例えば、1次加硫後で2次加硫前の未加硫のゴムホースの外周に予め(2次加硫前に)配置される。また、溶融モノフィラメントは、例えば、2次加硫の加硫温度以下の融点を有し、ゴムホースの2次加硫時に溶融する。
【発明の効果】
【0012】
以上説明したように、本発明では、ネットプロテクタを簡単にゴムホースに位置ずれしないように取り付けることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための形態を図面を参照して説明する。
【0014】
図1は本発明に係るネットプロテクタが取り付けられて固定されるゴムホースを示す図である。
【0015】
ゴムホース1は、自動車用ヒーターホースとして使用されるものであり、内側ゴム層3と、外面側の外側ゴム層(外面ゴム層)5と、内側ゴム層3及び外側ゴム層5の間に配置された補強層7と、を有する積層構造を備えている。内側ゴム層3には、耐透水性及び耐熱性を有するエチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)が用いられ、外側ゴム層3にも、耐候性に優れたEPDMが用いられているが、外側ゴム層3には、エチレン−プロピレンゴム(EPM)、ニトリルゴム(NBR)、ニトリルゴムと塩化ビニルとのブレンド(NBR+PVC)、アクリルゴム(ACM)、クロロプレンゴム(CR)又はエピクロルヒドリンゴム(ECO)を用いることもできる。補強層7は、ナイロン等の高強度の補強糸を編組、ブレード編組又はブレード編みして形成されているが、補強糸をスパイラル巻きして形成してもよい。
【0016】
図2はゴムホース1に取り付けられて固定されるネットプロテクタを示す図、図3はネットプロテクタの編組構造を示す拡大図である。
【0017】
ネットプロテクタ9は、保護糸11を編組、ブレード編組又はブレード編みすることにより筒状に形成されていて、例えば、ゴムホース1の外径とほぼ同一の内径を有し、ゴムホース1を部分的に保護するように、ゴムホース1よりも短く形成されている。ネットプロテクタ9のそれぞれの保護糸11は、耐磨耗性を有する1本のナイロン製モノフィラメント13と、柔軟性を有する2本のポリエチレン製モノフィラメント15と、1本のLDPE又はHDPE製溶融モノフィラメント17と、を引き揃えて形成されている。溶融モノフィラメント17は、150℃乃至160℃の融点を有している。図では、モノフィラメント13、15及び17が同一の径を有するものとして示されているが、それぞれのモノフィラメント13、15及び17の径は適当に設定することができ、例えば、溶融モノフィラメント17の径を他のモノフィラメント13及び15よりも小さく設定することができる。
【0018】
図4は、ゴムホース1にネットプロテクタ9を取り付けて固定することにより構成した本発明に係るネットプロテクタ付きホースを示す図、図5はネットプロテクタ付きホースのネットプロテクタの固定構造を示す拡大図である。
【0019】
ネットプロテクタ9は径方向に適度の伸縮性を有しているので、ゴムホース1の外周に簡単に装着して取り付けることができる。ネットプロテクタ9の装着は、ゴムホース1の加硫処理前に行われる。加硫前のゴムホース1を準備し、ネットプロテクタ9を装着したら、蒸気を供給してゴムホース1を加熱し、ゴムホース1のゴム材を加硫する。ここでの加硫温度(蒸気の温度)は175℃に達するが、ネットプロテクタ9の溶融モノフィラメント17の融点は150℃乃至160℃なので、溶融モノフィラメント17は加硫時に溶融し(図5の符号19参照)、外側ゴム層5とモノフィラメント13、15とに結合して、自動的に外側ゴム層5及びモノフィラメント13、15を接着する。
【0020】
なお、ゴムホース1にACM系、シリコーンゴム(FKM)系あるいはビニルメチルシリコーンゴム(VMQ)系などが用いられると、まず1次加硫を行い、続いて2次加硫を施す必要があるが、ここでは、ネットプロテクタ9は1次加硫の後にゴムホース1に装着される。そして、ネットプロテクタ9が装着されてから蒸気の供給により2次加硫が行われる。ここでの2次加硫温度(蒸気の温度)は175℃に達するので、溶融モノフィラメント17(融点は150℃乃至160℃)は2次加硫時に溶融し(図5の符号19参照)、外側ゴム層5及びモノフィラメント13、15を接着する。
【産業上の利用可能性】
【0021】
本発明のネットプロテクタ又はネットプロテクタ付きホースは、例えば自動車配管に用いられて、配管の損傷を効果的に防止する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明に係るネットプロテクタが取り付けられて固定されるゴムホースを示す図である。
【図2】ゴムホースに取り付けられて固定されるネットプロテクタを示す図である。
【図3】ネットプロテクタの編組構造を示す拡大図である。
【図4】ゴムホースにネットプロテクタを取り付けて固定することにより構成した本発明に係るネットプロテクタ付きホースを示す図である。
【図5】ネットプロテクタ付きホースのネットプロテクタの固定構造を示す概略的拡大図である。
【符号の説明】
【0023】
1 ゴムホース
9 ネットプロテクタ
11 保護糸
13 ナイロン製モノフィラメント
15 ポリエチレン製モノフィラメント
17 溶融モノフィラメント

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも外面側がゴム製のゴムホースの外周に配置される筒状のネットプロテクタであり、
複数本のモノフィラメントが引き揃えられて形成される保護糸をブレード編みして構成されていて、
前記保護糸は、融点が前記ゴムホースの加硫温度以下である溶融モノフィラメントを含んでいる、ことを特徴とするネットプロテクタ。
【請求項2】
前記ゴムホースには1次加硫に続いて2次加硫が施され、前記溶融モノフィラメントの前記融点は、前記2次加硫の加硫温度以下である、ことを特徴とする請求項1記載のネットプロテクタ。
【請求項3】
前記溶融モノフィラメントの融点は150℃乃至160℃である、ことを特徴とする請求項1又は2記載のネットプロテクタ。
【請求項4】
前記溶融モノフィラメントはオレフィン系樹脂製である、ことを特徴とする請求項1、2又は3記載のネットプロテクタ。
【請求項5】
前記保護糸は、ナイロン製の耐磨耗モノフィラメントを含んでいる、ことを特徴とする請求項1、2、3又は4記載のネットプロテクタ。
【請求項6】
少なくとも外面側がゴム製のゴムホースと、このゴムホースの外周に配置された筒状のネットプロテクタと、を備えたネットプロテクタ付きホースであり、
前記ネットプロテクタは、複数本のモノフィラメントが引き揃えられて形成される保護糸をブレード編みして構成され、未加硫の前記ゴムホースの外周に予め配置されていて、
前記ネットプロテクタの前記保護糸は、融点が前記ゴムホースの加硫温度以下である溶融モノフィラメントを含み、この溶融モノフィラメントは、前記ゴムホースの加硫時に溶融して、前記ゴムホースの前記外面側及び前記ネットプロテクタを接着している、ことを特徴とするネットプロテクタ付きホース。
【請求項7】
前記ゴムホースには1次加硫に続いて2次加硫が施され、
前記ネットプロテクタは、1次加硫後で2次加硫前の前記ゴムホースの外周に予め配置されていて、
前記溶融フィラメントの前記融点は、前記2次加硫の加硫温度以下であり、前記溶融モノフィラメントは、前記ゴムホースの前記2次加硫時に溶融する、ことを特徴とする請求項6記載のネットプロテクタ付きゴムホース。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−138964(P2007−138964A)
【公開日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−329077(P2005−329077)
【出願日】平成17年11月14日(2005.11.14)
【出願人】(000219602)東海ゴム工業株式会社 (1,983)
【Fターム(参考)】