説明

ネットワークシステム、ネットワーク機器及びネットワーク所属判定方法

【課題】ネットワーク機器が同一ホームネットワークに所属しているか否かを判断する際、ユーザの利便性を向上し、コンテンツの保護をより確実にすること。
【解決手段】各ネットワーク機器3は、ネットワーク2に接続している期間、周辺機器情報収集部31によりネットワークにどの機器が接続されているかを示す周辺機器情報を収集し、ホームネットワーク情報として周辺機器情報記憶部32に保存する。他の機器の所属を判定する際、他の機器が保存しているホームネットワーク情報を受信し、周辺機器情報照合部35は周辺機器情報記憶部31に保存しているホームネットワーク情報と照合し、他の機器が同一のネットワークに所属するか否かを判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ネットワークに接続される複数の機器間で、互いに同一のホームネットワークに所属していることを判定可能なネットワークシステム、ネットワーク機器及びネットワーク所属判定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
家庭内で使用する情報機器の増加に伴い、家庭内にLAN(Local Area Network)を構築して各機器を接続し、各機器間で相互にコンテンツの授受を行うホームネットワークシステムが実用化されている。一般に、情報機器において著作権保護の対象となるデジタルコンテンツを利用する際、不正コピーや、そのデジタルコンテンツをインターネット上に公開し、不特定多数のものがアクセス、または取得可能にするといった違法利用は禁止されている。一方、デジタルコンテンツを柔軟に運用する立場から、ホームネットワークなどで限られた範囲を私的利用の範囲として捉え、その範囲内ではデジタルコンテンツのコピーを許可し、ホームネットワーク内機器への配信を許可することが提案されている。また、デジタルコンテンツの利用に限らず、同一のホームネットワークに所属している機器間に限り、特定のサービスを享受できる利点も考えられる。
【0003】
上記のようなホームネットワークを構築しこれを正しく運営するためには、各情報機器がどのネットワークに所属しているか、また複数の機器間でコンテンツの授受を行う場合に双方の機器が同一のホームネットワークに所属しているかを的確に判断する必要がある。各機器のネットワークへの所属を定義付けるためには、次のような手法がある。
【0004】
第1の方法は、非特許文献1に示されるIPネットワークにおけるIPパケットのTTL(Time To Live)値を用いて規定する方法である。例えば、TTL値を1とすることで、コンテンツの配信をルータを超えない範囲に制限する。つまり、ホームネットワークを同一物理ネットワークとして規定し、同一物理ネットワークに現在物理的に接続されている機器が、そのホームネットワークに所属するものと定義する方法である。
【0005】
第2の方法は、特許文献1に示されるグループ管理サーバを用いることによって、グループ管理サーバに登録された機器を同一のホームネットワークに属する機器と定義する方法である。そしてこのホームネットワーク内ではコンテンツの私的利用を認め、別に定めたコンテンツ再生許可条件等に従って配信や再生を実行することができる。
【0006】
【非特許文献1】RFC791、Internet Protocol、 J.Postel、1981年9月
【特許文献1】特開2005−301633号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
各家庭で運用されるホームネットワーク構成は様々な形態が考えられ、これに柔軟に対応できる機器管理方法が望まれるが、上記技術では次のような課題が存在する。
【0008】
非特許文献1の技術は、一定のTTL値を与えることで、ホームネットワークの範囲を物理的にまた画一的に規定するものである。この手法では、通常は特定のホームネットワークに接続して利用している機器であっても、そのネットワークに現在物理的に接続していない限り、そのネットワークに所属するとは認められない。例えば、端末機器を外出先に持ち出し、他のネットワークからそのホームネットワークに接続して、ホームネットワークに接続されている他の機器にアクセスする場合がこれに該当する。この場合には、持ち出した端末機器においては、本来ホームネットワークに所属する機器に対して提供されるべきサービスを享受することができず、ユーザにとって不便である。持ち出した端末が、サービスの提供を受けることを認められた正当な端末であることを示すためには、別の認証手段を用いなければならない。
【0009】
一方特許文献1の技術では、グループ管理サーバに登録することで所望の機器をホームネットワークに参入させることができる。その場合、登録を許可する管理者の運用次第では、ホームネットワークに不当に参入した機器により、ネットワーク内で配信される私的情報であるコンテンツが窃取される恐れがある。
【0010】
上記課題を解決するには、同一ホームネットワークに所属しているか否かを判断するための新たな手法が求められる。本発明の目的は、ユーザの利便性を向上するとともに、コンテンツの保護をより確実にするホームネットワークにおける機器所属判定の手法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、ネットワークに複数のネットワーク機器が接続されて構成されるネットワークシステムにおいて、各ネットワーク機器は、ネットワークに接続している期間、ネットワークにどのネットワーク機器が接続されているかを示す周辺機器情報を収集する周辺機器情報収集部と、収集した周辺機器情報を基に、ネットワークに接続されたネットワーク機器の時系列リストであるホームネットワーク情報を保存する周辺機器情報記憶部と、他のネットワーク機器からの要求に応じて、周辺機器情報記憶部に保存しているホームネットワーク情報を送信する周辺機器情報送信部と、他のネットワーク機器に要求し、他のネットワーク機器が保存しているホームネットワーク情報を受信する周辺機器情報受信部と、周辺機器情報受信部により他のネットワーク機器から受信したホームネットワーク情報と、周辺機器情報記憶部に保存しているホームネットワーク情報とを照合し、他のネットワーク機器が当該ネットワーク機器と同一のネットワークに所属するか否かを判定する周辺機器情報照合部とを備える。
【0012】
また本発明は、ネットワークに接続可能な第1及び第2のネットワーク機器が同一のネットワークに所属するか否かを判定するネットワーク所属判定方法であって、各ネットワーク機器は、ネットワークに接続している期間、ネットワークにどのネットワーク機器が接続されているかを示す周辺機器情報を収集し、収集した周辺機器情報を基に、ネットワークに接続されたネットワーク機器の時系列リストであるホームネットワーク情報を保存しておく。そして、第1のネットワーク機器は、第2のネットワーク機器の所属を判定する際、第2のネットワーク機器が保存しているホームネットワーク情報を受信し、これを第1のネットワーク機器が保存しているホームネットワーク情報と照合して、照合の結果に基づき第2のネットワーク機器が第1のネットワーク機器と同一のネットワークに所属するか否かを判定する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ホームネットワークを介して相互の機器を利用する際に、ユーザの利便性を向上するとともに、コンテンツの保護の運用をより柔軟にすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
図1は、本発明の実施形態に係るホームネットワークシステム1の全体構成図である。ホームネットワークシステム1は、LAN(Local Area Network)2と、これに接続される複数のネットワーク機器3と、ルータ4から構成される。またホームネットワークシステム1は、ルータ4を介してインターネット5に接続される。LAN2は、例えばイーサネット(登録商標)や電話回線、電灯線、無線、赤外線などの通信回線を用いて構築される。ネットワーク機器3の具体例としては、パーソナルコンピュータ、通信機能を有するハードディスクレコーダ、可搬性に優れた映像・音楽等を再生可能なモバイルプレイヤー、携帯電話等の携帯端末などがある。これらのネットワーク機器3は、LAN2を介して相互に通信可能に接続され、またLAN2に接続されているネットワーク機器3は、ルータ4とインターネット5を経由して、外部機器との通信も可能となっている。なおここでいう「接続」とは、物理的に接続しているだけでなく、互いに通信可能な状態にあることを意味する。
【0015】
ここではネットワーク機器3として、次の5種類の使用形態(3a〜3e)を想定する。ネットワーク機器3aと3dは、定常的にLAN2に接続して使用する。ネットワーク機器3bは可搬性にすぐれたモバイル機器で、各種ネットワークに接続して使用するが、その多くの時間はLAN2に接続する。ネットワーク機器3cも、各種ネットワークに接続して使用するモバイル機器であるが、LAN2に接続する時間は少ない。ネットワーク機器3eは、インターネット5に接続された外部機器で、LAN2に接続することがない。このように、各ネットワーク機器はLAN2に接続して使用する時間(頻度)が異なる。
【0016】
本実施形態では、各機器がLAN2を共有している時間(頻度)を指標に本ネットワークシステム1に「所属」するか否かを定義するところに特徴がある。すなわち、定常的にLAN2に接続するネットワーク機器3aと3dは、本ホームネットワークシステム1に所属すると判定し、LAN2に接続することがないネットワーク機器3eは本ホームネットワークシステム1に所属しないと判定する。機器3eは他のホームネットワークシステムに所属しているか、あるいはどのホームネットワークシステムにも所属していない機器である。さらに、LAN2との接続時間が多いモバイル機器3bも本ホームネットワークシステム1に所属するものとし、機器3bを外出先で使用する場合、その場面ではLAN2に接続されていなくても本ホームネットワークシステム1に所属すると判定する。逆にLAN2との接続時間が少ないモバイル機器3cは本ホームネットワークシステム1に所属しないものとし、ある場面ではLAN2に接続されていても本ホームネットワークシステム1に所属しないと判定する。このように本実施形態においては、あるネットワーク機器がホームネットワークシステム1に所属するということは、今までにLAN2へ接続した時間(頻度)により決定されるものであって、現時点でのLANやインターネットへの接続状況とは無関係に定義する。
【0017】
図2は、本実施形態に係るネットワーク機器3のハードウェアの構成例を示す図である。例えば、パーソナルコンピュータや通信機能を有するハードディスクレコーダが該当する。ネットワーク機器3は、ネットワーク機器3全体の制御を司るCPU20、データやプログラムを記憶するRAM(Random Access Memory)21及びROM(Read Only Memory)22、LAN2を介して他のネットワーク機器との間でデータの送受信を行うネットワークインターフェース23、外部に接続されるモニタ26に情報を表示するための制御を行う表示制御部24、データやコンテンツを記録するハードディスク25から構成される。ハードディスク25は他の記録媒体(例えば光ディスク、半導体メモリ)でもよく、モニタ26は機器3に内蔵してもよい。CPU20はROM22に記憶されているプログラムをRAM21に読み出して、後述する各種機能を実行する。
【0018】
図3は、図2に示したネットワーク機器3を機能ブロックに分けて示す図である。ネットワーク機器3は、周辺機器情報収集部31、周辺機器情報記憶部32、周辺機器情報送信部33、周辺機器情報受信部34、周辺機器情報照合部35を備える。ここではネットワーク所属判定に必要な機能を示し、それ以外の機器特有の機能(例えばコンテンツの送受信、加工、記録、表示機能など)は省略している。なお以下の説明において、各ネットワーク機器3a,3b,・・・の有する機能ブロックは、それぞれ31a,31b,・・・のように区別するものとする。
【0019】
周辺機器情報収集部31は、LAN2を介して他のネットワーク機器(以下、周辺機器とも呼ぶ)の機器情報や、周辺機器のLAN2に対する「参加」や「離脱」の情報等を収集する。これらの情報を、以下「周辺機器情報」と呼ぶ。ここで「参加」とは、LAN2に対して接続を開始したことまたは接続中であることを意味し、「離脱」とは、LAN2に対して接続を切断したことまたは切断中であることを意味する。周辺機器情報を収集するには、種々の既存技術を利用できるが、ここではUPnP(Universal Plug and Play)を利用することとする。UPnPによれば、LAN2に接続されている機器間で、一定時間間隔で相互に機器情報を発信し受信することができる。また、自己機器の情報も自己機器で受信できるので、周辺機器には自己機器も含める。収集する情報は、周辺機器が保持するデバイスディスクリプションやサービスディスクリプションに記述されている情報と、SSDP(Simple Service Discovery Protocol)で把握できる周辺機器のLAN2への参加・離脱の情報である。
【0020】
周辺機器情報記憶部32は、周辺機器情報収集部31で得られた周辺機器情報を、記録して保存する。その際、収集した情報を加工して記録してもよい。上記のように、記録される周辺機器情報は、LAN2に接続される周辺機器の機器情報と周辺機器のLAN2への参加・離脱の履歴である。このような情報を収集して記録するためには、当該機器自身がLAN2に接続されていなければならない。つまり、LAN2から離脱した期間があると、その期間内の周辺機器からの情報は収集できず欠落することになる。よって、各機器において保存される周辺機器情報は自己機器の参加・離脱の履歴を反映した独自のものになる。
【0021】
各ネットワーク機器が保存している周辺機器情報は、機器間で相互に送受信することができる。周辺機器情報送信部33は、周辺機器からの要求に対し、周辺機器情報記憶部32に記録している周辺機器情報を読み出してLAN2を介して相手の周辺機器へ送信する。逆に周辺機器情報受信部34は、周辺機器に対して周辺機器にて保存している周辺機器情報を要求し、LAN2を介して相手の周辺機器からこれを受信する。この際、送信側の機器の周辺機器情報送信部33と受信側の機器の周辺機器情報受信部34との間では、情報を交換するのに正当な機器であるか否かを判断するために、1対1の認証手段を用いても良い。ここで、周辺機器情報受信部34は前記周辺機器情報収集部31と機能的には分離しているが、共通のハードウェアにて実現することができる。
【0022】
周辺機器情報照合部35は、当該機器の周辺機器情報記憶部32に保存している周辺機器情報と、周辺機器情報受信部34で受信した相手の機器の保存する周辺機器情報を比較照合する。そして、両者の周辺機器情報が同一であるか、あるいはどれだけ一致しているか、あるいは同じ傾向を示しているデータであるか等を調べ、両者の機器が同一ホームネットワークに所属しているかどうかを判定する。両者の機器が、LAN2に参加している期間が共に長ければ、両者の周辺機器情報は類似のものとなり、同一ホームネットワークに所属していると判定する。逆に、少なくとも一方の機器がLAN2に参加している期間が短ければ、両者の周辺機器情報は異なるものとなり、同一ホームネットワークに所属していないと判定する。そのアルゴリズムは、両者の一致率を算出し、基準値以上かどうかで判定する。ここでは、周辺機器情報が所定以上(例えば50%以上)同一であれば、同一ホームネットワークに所属していると判定することにする。このように、周辺機器情報はホームネットワークへの所属を判定するための情報であり、以下、「ホームネットワーク情報」と呼んで説明する。
【0023】
図4は、周辺機器情報記憶部32に記録したホームネットワーク情報(周辺機器情報)の一例を示す。周辺機器情報収集部31が周辺機器から一定時間間隔で収集した情報を基に、周辺機器情報記憶部32(RAM21またはハードディスク25が対応する)にホームネットワーク情報40を記録し保存する。このホームネットワーク情報40は、LAN2に現在接続されている、あるいは過去に接続されていたと把握しているネットワーク機器の機器リストのログ情報である。機器リストには、LAN2に自己の機器が接続されているログ情報も含む。
【0024】
記録する内容としては、ネットワーク機器のデバイスディスクリプションより得られるフレンドリーネーム、重複しない識別子であるUDN(Unique Device Name)、製造メーカ名、製造番号等の機器情報と、該ネットワーク機器から受信したSSDPアライブパケットの時刻情報等が可能である。図4では簡単のために、SSDPアライブパケットを受信した時系列41の順に、機器名UDN42を平文のまま記述したログ情報を示す。ホームネットワーク情報40は、改ざんされないように暗号化を施す等、さらに加工して記述してもよい。
【0025】
図5は、図1に示した各ネットワーク機器3a〜3eが保存しているそれぞれのホームネットワーク情報40a〜40eの一例を示す図である。ここでは、各機器においてある一定期間に記録したログ情報(履歴)を示すが、簡単のため、機器名UDNを符号A,B,C,・・・で区別して表示している。ホームネットワーク情報は、履歴でなく、ある時点でネットワークに接続されている、ネットワーク機器の接続状況を、#とUDNに対応付けてもよい。
【0026】
以下に示す各機器のホームネットワーク情報は、図1の説明で述べた各機器のネットワークへの接続状況(接続時間)を反映したものとして説明する。すなわち、情報40aと40dは定常的にLAN2に接続して使用する機器の場合、情報40bは多くの時間はLAN2に接続するモバイル機器の場合、情報40cはLAN2に接続する時間が少ないモバイル機器の場合、情報40eはLAN2に接続することがない場合である。
【0027】
以下、図5のホームネットワーク情報を利用して、2台の機器が同一のホームネットワークに所属しているか否かをどのように判定するかを具体的に説明する。基本的には、各機器のホームネットワーク情報のUDN列がどれだけ一致しているかを算出して判定する。その際、各機器が保存しているホームネットワーク情報の全てを参照してもよいが、実用的には、適当な期間(例えば最近の1ヶ月)に収集した情報に限定するのがよい。そして抽出した2つのUDN列を比較するのであるが、UDN列を時系列方向にずらしながらUDNの一致数が最大になるときの一致率を求める。そして、一致率が所定値以上(例えば50%以上)であれば、同一ホームネットワークに所属していると判定する。
【0028】
ここで、いずれの機器の立場で判定するかに注意する必要がある。なぜなら、例えばコンテンツの配信のとき、コンテンツ送信側の機器から見て、受信側の機器が同一ホームネットワークに所属しているかどうかを確認する必要があるからである。これを逆の立場で判定すると、判定の意味がなくなる。一致率を算定するとき、その母数は判定する側(送信側機器)のUDN列の総数を与える。判定する側と判定される側とではUDN列の総数は異なる場合もあるので、立場が入れ替わると一致率は異なることもある。
【0029】
以下の例では、ネットワーク機器3aを送信側の機器とし、受信側となる他の各ネットワーク機器3b〜3eが同一のホームネットワークに所属しているかをそれぞれ判定する。
【0030】
<機器3aと3b>
ホームネットワーク情報40aと40bを比較すると、情報40aのリスト#3〜14の部分と、情報40bのリスト#1〜12の部分について、12個のUDN列(B,C,A・・・B)が一致する。一致率は、情報40aのリスト長17に対して、12/17=71%であるので、送信側のリスト長の過半数(50%以上)の判定基準を満足する。よって、送信側の機器3aに対して受信側の機器3bは同一のホームネットワークに所属していると判定する。その結果、LAN2との接続時間が多いモバイル機器である機器3bは、外出先で使用しても同一のホームネットワークに所属していると判定され、機器3aからコンテンツ等を受信することができる。
【0031】
<機器3aと3c>
ホームネットワーク情報40aと40cを比較すると、情報40aのリスト#8〜14の部分と、情報40bのリスト#1〜8の部分について、8個のUDN列(C,A,D・・・B)が一致する。一致率は、情報40aのリスト長17に対して、8/17=47%であるので、機器3aに対して機器3cは同一のホームネットワークに所属していないと判定する。その結果、LAN2との接続時間が少ないモバイル機器である機器3cは、その場面ではLAN2に接続されていても、同一のホームネットワークに所属していないと判定され、機器3aはコンテンツ等の送信を拒否する。その結果、接続時間の少ない機器へのコンテンツの流出を抑え、著作権の保護を高めることができる。
【0032】
<機器3aと3d>
ホームネットワーク情報40aと40dを比較すると、情報40aのリスト#2〜14の部分と、情報40dのリスト#1〜13の部分について、13個のUDN列(D,B,C・・・B)が一致する。一致率は、情報40aのリスト長17に対して、13/17=76%であるので、機器3aに対して機器3dは同一のホームネットワークに所属していると判定する。
【0033】
<機器3aと3e>
ホームネットワーク情報40aと40eを比較すると、UDN列は全く一致しない。一致率は0%であるので、機器3aに対して機器3eは同一のホームネットワークに所属していないと判定する。
【0034】
これ以外の機器間での判定も同様に行うことができ、その説明は省略する。なお、2つの機器間において、判定する側の機器と判定される側の機器を入れ替えると一致率が異なり、判定結果が逆転することもあり得る。
【0035】
このように本実施形態によれば、LANとの接続時間が多いモバイル機器(上記3b)は、LANから外れて外出先で使用しても同一のホームネットワークに所属していると判定され、ユーザの利便性を向上させることができる。逆に、LANとの接続時間が少ないモバイル機器(上記3c)は、その場面ではLANに接続されていても同一のホームネットワークに所属していないと判定され、コンテンツ等を受信することができず、コンテンツの保護をより確実にすることができる。
【0036】
上記の例では、所属すると判定する条件を一致率が過半数の50%以上としたが、もちろん状況に応じてその値は変更して設定することができる。また、一致率を求める際、UDN列が連続して一致することを条件としたが、必ずしもこれに拘らず、途中に1個または数個の異なるUDNを含みながら他のUDNが一致する場合を許容するなど、柔軟に設定してもよい。
【0037】
以下、本実施形態のホームネットワークシステムにおいて、ネットワーク機器の所属を判定する方法をフローチャートで説明する。
【0038】
図6は、ネットワーク機器(ここでは3aとする)において、周辺機器の情報を収集する処理(S600)のフローチャートを示す図である。
【0039】
機器3aを、LANに接続する(S601)。もし接続されていなければ、以下の収集処理は実行できない。LANに接続されると、同一LANに接続されている周辺機器(他の機器3b,3cほか)から接続情報が一定時間間隔に送られ、周辺機器情報収集部31によりこれを収集する(S602)。具体的には、UPnPを利用して得られるLANに接続された周辺機器の機器情報を収集し、周辺機器がSSDPを利用して通知する参加・離脱情報を受信する。収集した情報に必要な加工を施す(S603)。例えば、情報の間引きや暗号化処理を行いホームネットワーク情報40aとする。S603は省略してもよい。周辺機器情報記憶部32aは、ホームネットワーク情報40aをRAM21かハードディスク25に記録して保存する(S604)。この情報収集処理を繰返し、機器3aはホームネットワーク情報40aを蓄積して保存する。
【0040】
他のネットワーク機器3b,3c等においても同様に情報収集処理を繰返し実行して、ホームネットワーク情報40b,40cを周辺機器情報記憶部32b,32cに蓄積して保存する。
【0041】
図7は、ネットワーク機器3aにおいて、他のネットワーク機器(ここでは3xとする)が同一のホームネットワークに所属しているかどうかを判定する処理(S700)のフローチャートを示す図である。
【0042】
機器3aは、判定する相手機器である機器3xに対して、機器3xが保存しているホームネットワーク情報40xを送信するように要求する(S701)。要求された機器3xは、周辺機器情報記憶部32xに保存しているホームネットワーク情報40xを機器3aへ送信し、機器3aは、これを周辺機器情報受信部34aにて取得する(S702)。また機器3aは、自己の周辺機器情報記憶部32aに保存しているホームネットワーク情報40aを読み出す(S703)。
【0043】
次に機器aは、周辺機器情報照合部35aにより、S702とS703とで得られた2つのホームネットワーク情報40aと40xを比較照合する。この場合、両者の情報がどれだけ一致するか、具体的には情報40aと情報40xとのUDN列の一致率を算出する(S704)。UDN列の一致率が判定基準値(ここでは、過半数50%)以上であるかどうかを判定する(S705)。判定基準値以上である場合は、機器3aから見て、機器3xは同一のホームネットワークに所属すると判定する(S706)。判定基準値に満たない場合は、機器3xは同一のホームネットワークに所属していないと判定する(S707)。
【0044】
ここで図6、図7の具体例として、ホームネットワークシステム1のLAN2に定常的に接続しているネットワーク機器3aが、ネットワークに接続している時間の内、多くの時間をLAN2に接続している可搬性に優れたネットワーク機器3bを相手として、同一のホームネットワークに所属しているか否かを判定する場合を説明する。
【0045】
始めに、機器3a,3bは、それぞれ独立に情報収集処理(S600)の処理を開始する。LAN2に接続している期間(S601でYes)、ネットワーク機器3a,3bはそれぞれ、LAN2に接続されているネットワーク機器(周辺機器)から送信されるUPnPに基づく周辺機器情報を、それぞれ周辺機器情報収集部31a,31bから収集する(S602)。機器3a,3bは、それぞれ収集した情報を所定の方法で加工してホームネットワーク情報とし(S603)、それぞれの周辺情報記憶部32a,32bに記録する(S604)。収集と記録を繰返し実行し、周辺情報記憶部32a,32bには、図7の40a、40bに示すホームネットワーク情報(UDN列)が保存される。機器3aはLAN2に定常的に接続されているので、周辺機器情報は全て収集保存される。一方機器3bは可搬型であり、当該LANに接続していない期間は上記の周辺機器情報を収集できず、その期間の情報は欠落している。
【0046】
次に所属判定処理に移る。ここで機器3bは、現在LAN2から離脱してインターネット5に接続されており、LAN2に接続されている機器3aの提供するサービス(例えばコンテンツ配信)を要求する場合を想定する。この場合、サービス提供元である機器3aは、要求元である機器3bが同一ホームネットワークに所属するかどうかを判定する。まず、機器3bに要求し、周辺情報記憶部32bに保存しているホームネットワーク情報40bを取得する(S701,S702)。情報の伝送は、機器3bの周辺機器情報送信部33b、インターネット5、LAN2、機器3aの周辺機器情報受信部34aを経由して行う。また機器3aは、自己の周辺機器情報記憶部32aに保存しているホームネットワーク情報40aを読み出す(S703)。
【0047】
機器3aは周辺機器情報照合部35aにて、2つのホームネットワーク情報40aと40bとを比較する。そしてその情報の一致率(互いのUDN列が連続して一致する割合)を算出し、図5の例では、一致率は71%と求まる(S704)。すなわち、機器3aと機器3bとは、LAN2に対する接続時間に関し71%を共有していることになる。一致率が過半数50%以上の場合は同一のネットワークに所属している、という判定基準を用いて判定すると(S705)、機器3aから見て機器3bは同一のホームネットワークに所属しているという判定結果となる(S706)。この結果に基づき、機器3aは機器3bへ向けて要求されたコンテンツ配信などのサービスを行う。
【0048】
判定する対象であるネットワーク機器が変われば、それぞれの機器に対して上記の判定処理を行い、各機器毎に同一のホームネットワークに所属しているか否かを判定する。
また上記ステップS702において、機器3bから機器3aに対しホームネットワーク情報40bを送信する際、機器間の相互認証や交換する情報の暗号化処理を行えば、より安全性が高まる。
【0049】
上記した実施形態は、以下に述べる各種の変形が可能である。
本実施形態では、ネットワーク機器3aに周辺機器情報記憶部32aが含まれているが、該記憶部32aを他のネットワーク機器、例えば機器3bに設けてもよい。その場合は、機器3aにて収集した周辺機器情報を機器3bへ転送して記録させる。同様に、機器3aに周辺機器情報照合部35aが含まれているが、該照合部35aを他のネットワーク機器、例えば機器3bに設けてもよい。
【0050】
本実施形態では、相手の機器が同一ホームネットワークに所属しているかの判定は、全て同じルール(一致率が例えば50%以上)を適用したが、個々のネットワーク機器の特性に応じて適用するルールを変更して設定してもよい。
【0051】
本実施形態では、サービスを提供するネットワーク機器3aとサービスを享受するネットワーク機器3bとの、いわば当事者間で所属判定処理を実行したが、代行機器にて判定することもできる。すなわち、サービスを提供する機器3aの代行として、機器3aと同一ホームネットワークに所属していることが既に判明している機器、例えば機器3dを代行とし、機器3dと機器3bとの間で所属判定処理を実行してもよい。そして、その判定結果に従い、機器3aから機器3bへのサービス提供の可否判断に適用することもできる。
【0052】
本実施形態では、周辺機器情報照合部35の行う所属判定処理は、LAN2に対し接続しているネットワーク機器の機器情報の履歴を利用したが、履歴ではなくある時点のネットワーク機器の接続状況を利用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の実施形態に係るホームネットワークシステム1の全体構成図。
【図2】本実施形態に係るネットワーク機器3のハードウェアの構成例を示す図。
【図3】図2のネットワーク機器3を機能ブロックに分けて示す図。
【図4】周辺機器情報記憶部32に記録したホームネットワーク情報の一例を示す図。
【図5】各ネットワーク機器3a〜3eが保存しているホームネットワーク情報40a〜40eの一例を示す図。
【図6】ネットワーク機器3aにおいて、周辺機器の情報を収集するフローチャート。
【図7】ネットワーク機器3aにおいて、ネットワーク機器3xが同一のホームネットワークに所属しているかどうかを判定するフローチャート。
【符号の説明】
【0054】
1…ホームネットワークシステム
2…LAN
3…ネットワーク機器
4…ルータ
5…インターネット
20…CPU
21…RAM
22…ROM
23…ネットワークインターフェース
24…表示制御部
25…ハードディスク
26…モニタ
31…周辺機器情報収集部
32…周辺機器情報記憶部
33…周辺機器情報送信部
34…周辺機器情報受信部
35…周辺機器情報照合部
40…ホームネットワーク情報。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ネットワークに複数のネットワーク機器が接続されて構成されるネットワークシステムであって、
上記各ネットワーク機器は、
該ネットワークに接続している期間、該ネットワークにどのネットワーク機器が接続されているかを示す周辺機器情報を収集する周辺機器情報収集部と、
該収集した周辺機器情報を基に、該ネットワークに接続されたネットワーク機器の時系列リストであるホームネットワーク情報を保存する周辺機器情報記憶部と、
他のネットワーク機器からの要求に応じて、該周辺機器情報記憶部に保存しているホームネットワーク情報を送信する周辺機器情報送信部と、
他のネットワーク機器に要求し、該他のネットワーク機器が保存しているホームネットワーク情報を受信する周辺機器情報受信部と、
該周辺機器情報受信部により他のネットワーク機器から受信したホームネットワーク情報と、上記周辺機器情報記憶部に保存しているホームネットワーク情報とを照合し、該他のネットワーク機器が当該ネットワーク機器と同一のネットワークに所属するか否かを判定する周辺機器情報照合部と、を備えることを特徴とするネットワークシステム。
【請求項2】
請求項1記載のネットワークシステムにおいて、
前記周辺機器情報照合部は、前記2つのホームネットワーク情報に含まれる機器リストの一致率が所定値以上である場合、同一のネットワークに所属すると判定することを特徴とするネットワークシステム。
【請求項3】
ネットワークに接続可能な複数のネットワーク機器の1つであって、
該ネットワークに接続している期間、該ネットワークにどのネットワーク機器が接続されているかを示す周辺機器情報を収集する周辺機器情報収集部と、
該収集した周辺機器情報を基に、該ネットワークに接続されたネットワーク機器の時系列リストであるホームネットワーク情報を保存する周辺機器情報記憶部と、
他のネットワーク機器からの要求に応じて、該周辺機器情報記憶部に保存しているホームネットワーク情報を送信する周辺機器情報送信部と、
他のネットワーク機器に要求し、該他のネットワーク機器が保存しているホームネットワーク情報を受信する周辺機器情報受信部と、
該周辺機器情報受信部により他のネットワーク機器から受信したホームネットワーク情報と、上記周辺機器情報記憶部に保存しているホームネットワーク情報とを照合し、該他のネットワーク機器が当該ネットワーク機器と同一のネットワークに所属するか否かを判定する周辺機器情報照合部と、を備えることを特徴とするネットワーク機器。
【請求項4】
請求項3記載のネットワーク機器において、
前記周辺機器情報照合部は、前記2つのホームネットワーク情報に含まれる機器リストの一致率が所定値以上である場合、同一のネットワークに所属すると判定することを特徴とするネットワーク機器。
【請求項5】
請求項3記載のネットワーク機器において、
前記周辺機器情報照合部は、前記2つのホームネットワーク情報に含まれる機器リストの一致率を、時系列方向に連続して一致する機器リストの数から算出することを特徴とするネットワーク機器。
【請求項6】
ネットワークに接続可能な第1及び第2のネットワーク機器が同一のネットワークに所属するか否かを判定するネットワーク所属判定方法であって、
上記各ネットワーク機器は、上記ネットワークに接続している期間、該ネットワークにどのネットワーク機器が接続されているかを示す周辺機器情報を収集し、
該収集した周辺機器情報を基に、該ネットワークに接続されたネットワーク機器の時系列リストであるホームネットワーク情報を保存しておき、
上記第1のネットワーク機器は、上記第2のネットワーク機器の所属を判定する際、該第2のネットワーク機器が保存しているホームネットワーク情報を受信し、これを該第1のネットワーク機器が保存しているホームネットワーク情報と照合して、
該照合の結果に基づき該第2のネットワーク機器が該第1のネットワーク機器と同一のネットワークに所属するか否かを判定することを特徴とするネットワーク所属判定方法。
【請求項7】
請求項6記載のネットワーク所属判定方法において、
前記照合の結果、前記2つのホームネットワーク情報に含まれる機器リストの一致率が所定値以上である場合、同一のネットワークに所属すると判定することを特徴とするネットワーク所属判定方法。
【請求項8】
請求項7記載のネットワーク所属判定方法において、
前記2つのホームネットワーク情報に含まれる機器リストの一致率を、時系列方向に連続して一致する機器リストの数から算出することを特徴とするネットワーク所属判定方法。
【請求項9】
請求項6記載のネットワーク所属判定方法において、
前記第1のネットワーク機器は前記ネットワークに定常的に接続され、前記第2のネットワーク機器は前記ネットワークに接続される時間が多い場合、
所属判定の際、該第2のネットワーク機器が当該ネットワークに接続されていなくても、同一のネットワークに所属すると判定することを特徴とするネットワーク所属判定方法。
【請求項10】
請求項6記載のネットワーク所属判定方法において、
前記第1のネットワーク機器は前記ネットワークに定常的に接続され、前記第2のネットワーク機器は前記ネットワークに接続される時間が少ない場合、
所属判定の際、該第2のネットワーク機器が当該ネットワークに接続されていても、同一のネットワークに所属していないと判定することを特徴とするネットワーク所属判定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−257265(P2007−257265A)
【公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−80462(P2006−80462)
【出願日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】