説明

ネットワーク制御システム

【課題】パケットロスの発生を考慮したコントローラの補償により安定したプラント制御を可能とするネットワーク制御システムを実現する。
【解決手段】制御対象プラントの物理量を測定するセンサからの制御量と目標値との偏差を演算するコントローラの操作量を制御対象プラント側に設けたアクチュエータにネットワークを介してパケット送信しアクチュエータより制御対象プラントに操作量を入力するネットワーク制御システムにおいて、パケット送信のエラー発生時に、アクチュエータに操作量の補完値を与えるMV補完手段と、アクチュエータより制御対象プラントに入力された操作量のトレンドデータまたはMV補完手段からアクチュエータに補完された補完値を、ネットワークを介してコントローラにアンサーバックするMVバッファ手段と、アンサーバックされたトレンドデータまたは補完値に基づいてコントローラの操作量計算を修正するMV補償手段を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制御対象プラントの物理量を測定するセンサからの制御量(以下、PV)と目標値(以下、SV)との偏差を所定のサンプリング周期で演算するコントローラの操作量(以下、MV)を、前記制御対象プラント側に設けたアクチュエータにネットワークを介してパケット送信し、前記アクチュエータより前記制御対象プラントに前記MVを入力するネットワーク制御システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
プラントの制御は、今後無線通信等を用いたネットワーク化制御に移行していく趨勢にある。ネットワーク化制御では、通信状況の悪化によりPVやMVが送信元から送信先に届かないパケット送信エラー、いわゆるパケットロスが発生する。ネットワーク制御システムでは、特にパケットロスを考慮した設計が必要とされる。
【0003】
図8は、従来のネットワーク制御システムの構成例を示す機能ブロック図である。基本構成は、プラント側10とコントローラ側20が、ネットワーク30を介して繋がれている。
【0004】
プラント側10における制御対象プラント11の物理量を測定するセンサ12から、PVがネットワーク30を介してコントローラ側20のコントローラ21へ送信される。
コントローラ21は、送信されたPVと設定されているSVの偏差を例えばPID演算したMVを計算し、ネットワーク30を介してプラント側10のアクチュエータ13へ送信する。アクチュエータ13は、受信したMVを制御対象プラント11に入力する。
【0005】
パケットロスにより、コントローラ21がPVを受信できなかった場合には、MV計算に必要なPVを、PV補完手段22からのPV補完値により補う。同様に、パケットロスにより、アクチュエータ13がMVを受信できなかった場合には、制御対象プラント11に入力するMVを、MV補完手段14からのMV補完値により補う。
【0006】
PV補完値及びMV補完値は、パケットロスが発生する直前のサンプリング周期で受信された最新のPV及びMVの値、または所定サンプリング周期前からのトレンドデータに基づいて計算される推定値が用いられる。
【0007】
【特許文献1】特開平08−328650号公報
【特許文献2】特開平11−345003号公報
【特許文献3】特開2002−040917号公報
【特許文献4】特開2006−277306号公報
【特許文献5】特開2007−233891号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来構成のネットワーク制御システムでは、通信状況により、PVやMVが送信元から送信先に届かないパケットロスの発生による障害を十分に考慮しておらず、パケットロス発生時に、プラント制御に次のような重大な問題をもたらす。
【0009】
パケットロスによりコントローラ21が計算したMVと、実際に制御対象プラント11に入力したMVとが異なる、また実際のPVとPV補完器で補ったPVが異なると、コントローラの内部状態が狂い応答が悪化する。
【0010】
図9は、パケットロスが発生した場合の応答特性の悪化を示す特性図である。パケットロス発生時にコントローラ21が計算したMVと、実際に制御対象プラント11に入力したMVとが異なり応答が悪化する。この例は、SVを20から40に変更した際の応答であり、実線はパケットロスがなかった場合、鎖線は設定値変更時にパケットロスによりアクチュエータ13がMVを受信できなかった場合の特性である。
【0011】
SVが変更されると、コントローラ21はそれに応じたMVを計算する。しかし、鎖線の応答は、設定値変更時にアクチュエータ13が、コントローラ21で計算したMVを受信できなかったため、PVの応答開始が遅れている。
【0012】
しかし、コントローラ21は、このPVの応答開始が遅れている時間中も、自身の内部状態である積分値を加算する。この結果、積分値が大きくなり過ぎる。大きくなり過ぎた積分値は、適正な値に戻さなければならない。
【0013】
積分値が設定値に見合う値よりも大きくなった場合、一度PVをSVより大きくしなければ積分を適正値に戻すことはできない。このために、PVのオーバーシュートが大きくなる。以上のことにより、応答が乱れている。
【0014】
本発明は上述した問題点を解決するためになされたものであり、パケットロスの発生を考慮したコントローラの補償により、安定したプラント制御を可能とするネットワーク制御システムの実現を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0015】
このような課題を達成するために、本発明は次の通りの構成になっている。
(1)制御対象プラントの物理量を測定するセンサからの制御量と目標値との偏差を所定のサンプリング周期で演算するコントローラの操作量を、前記制御対象プラント側に設けたアクチュエータにネットワークを介してパケット送信し、前記アクチュエータより前記制御対象プラントに前記操作量を入力するネットワーク制御システムにおいて、
前記パケット送信のエラー発生時に、前記アクチュエータに操作量の補完値を与えるMV補完手段と、
前記アクチュエータより前記制御対象プラントに入力された操作量のトレンドデータまたは前記MV補完手段から前記アクチュエータに補完された前記補完値を、前記ネットワークを介して前記コントローラにアンサーバックするMVバッファ手段と、
アンサーバックされた前記トレンドデータまたは補完値に基づいて前記コントローラの操作量計算を修正するMV補償手段と、
を備えることを特徴とするネットワーク制御システム。
【0016】
(2)前記MV補償手段は、アンサーバックされた前記トレンドデータまたは前記補完値と、前記コントローラ側で保持されているトレンドデータに基づいて、前記パケット送信のエラー発生時のサンプリングから現在のサンプリングまでの操作量値が、前記トレンドデータの値に一致するような仮想SV値を計算し、この仮想SV値により前記コントローラの操作量を修正計算することを特徴とする(1)に記載のネットワーク制御システム。
【0017】
(3)前記コントローラは、前記トレンドデータまたは前記補完値のアンサーバックを取得するまで前記操作量の前記アクチュエータへの送信を一時的に停止することを特徴とする(1)または(2)に記載のネットワーク制御システム。
【0018】
(4)前記コントローラは、微分動作内の前記目標値変更分に係る第1の操作量及びそれ以外の変更分に係る第2の操作量に分けて前記アクチュエータに送信し、前記MV補完手段は、前記パケット送信が正常な場合には前記第1及び第2の操作量の和を補完値として前記アクチュエータに与え、前記パケット送信がエラーの場合には前記第2の操作量のみを補完値として前記アクチュエータに与えることを特徴とする(1)乃至(3)のいずれかに記載のネットワーク制御システム。
【0019】
(5)前記センサにより測定された制御量を、ネットワークを介して前記コントローラにパケット送信する場合において、
前記パケット送信エラー発生時に前記コントローラに制御量の補完値を与えるPV補完手段と、
前記センサにより測定された制御量のトレンドデータを、前記ネットワークを介して前記コントローラに送信するPVバッファ手段と、
を備えることを特徴とする(1)乃至(5)のいずれかに記載のネットワーク制御システム。
【0020】
(6)前記PV補完手段は、前記操作量のトレンドデータに基づいて前記制御量の補完値を修正することを特徴とする(1)乃至(7)に記載のネットワーク制御システム。
【発明の効果】
【0021】
本発明の構成によれば、ネットワーク制御下において、パケットロスによりアクチュエータがMVを受信できない場合が発生しても、コントローラ側でのMV補償により、プラントの状態を大きく乱すことなく安定したプラント制御を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明を図面により詳細に説明する。図1は、本発明を適用したネットワーク制御システムの一実施形態を示す機能ブロック図である。基本構成は、図7で説明した従来システムと同一である。
【0023】
プラント側100における制御対象プラント101の物理量を測定するセンサ102から、PVがネットワーク300を介してコントローラ側200のコントローラ201へ送信される。コントローラ201は、送信されたPVと設定されているSVの偏差を例えばPID演算したMVを計算し、ネットワーク300を介してプラント側100のアクチュエータ103へ送信する。アクチュエータ103は、受信したMVを制御対象プラント101に入力する。
【0024】
パケットロスにより、コントローラ201がPVを受信できなかった場合には、MV計算に必要なPVを、PV補完手段202からのPV補完値により補う。同様に、パケットロスにより、アクチュエータ103がMVを受信できなかった場合には、制御対象プラント101に入力するMVを、MV補完手段104からのMV補完値により補う。
【0025】
コントローラ201内にMVバッファ手段201aを設置する。このMVバッファ手段201aは、現在のサンプリングからm個前のサンプリングまでの各サンプリングにおいてコントローラが計算したMVからなるm+1個の情報を持ったトレンドデータを保持する。
【0026】
同様に、アクチュエータ103内にMVバッファ手段103aを設置する。このMVバッファ手段103aは、現在のサンプリングからm個前のサンプリングまでの各サンプリングにおいてアクチュエータ103が実際に制御対象プラント101に入力したMVからなる(m+1)個の情報を持ったトレンドデータを保持する。
【0027】
アクチュエータ103は、MVバッファ手段103aに保持するm+1個の情報を持ったトレンドデータを、ネットワーク300を介してコントローラ201に送信してアンサーバックする。
【0028】
パケットロスにより、アクチュエータ103がコントローラ201より送信されるMVを受信できなかった場合には、MV補完手段104のMV補完値で補うが、この際、コントローラ201が計算したMVと実際に制御対象プラント101に入力するMVとが異なる。
【0029】
このMVの乖離は、コントローラ201の内部状態を狂わせ、以後の応答を悪化させる要因となる。そこで、コントローラ201は、アクチュエータ103からのアンサーバックで受信したMVレンドデータと、自身のMVバッファ手段201aが保持するMVトレンドデータを比較し、異なっている場合にはMV補償手段201cによりアンサーバックされたMVレンドデータを利用して補償動作を行い、自身の内部状態を補正する。
【0030】
センサ102内にPVバッファ手段102aを設置する。このPVバッファ手段102aは、現在のサンプリングからm個前のサンプリングまでの各サンプリングにおいてセンサ102が測定したPVからなるm+1個の情報を持ったトレンドデータを保持する。
【0031】
同様に、コントローラ201内にPVバッファ手段201bを設置する。このPVバッファ手段201bは、現在のサンプリングからm個前のサンプリングまでの各サンプリングにおいてコントローラ201がMVの計算に用いたPVからなるm+1個の情報を持ったトレンドデータを保持する。
【0032】
センサ102は、PVバッファ手段102aに保持するm+1個の情報を持ったトレンドデータを、ネットワーク300を介してコントローラ201に送信する。
【0033】
パケットロスにより、コントローラ201がセンサ102より送信されるPVを受信できなかった場合には、PV補完手段202のPV補完値で補うが、この補われた値は、真のPVとは異なる。
【0034】
次に、MV補償手段201cの補償演算の実施例を説明する。コントローラ201がPVとSVの偏差をPID演算した操作量u(=MV)は、(1)式で表記される。
【0035】
【数1】

【0036】
MV補償手段201cは、アンサーバックされたトレンドデータとコントローラ201側で保持されているトレンドデータに基づいて、パケット送信のエラー発生時のサンプリングから現在のサンプリングまでの操作量値が、アンサーバックされたトレンドデータの値に一致するような仮想SV値を計算し、この仮想SV値によりコントローラ201のMVを修正計算する。この仮想SV値は、(2)式で与えられる。
【0037】
【数2】

【0038】
図2は、コントローラのMV計算を補償する手順を示すフローチャートである。ステップS1で、コントローラで計算したMVと実際にプラントに入力したMVとが異なっていることが判明した場合、ステップS2で、コントローラが内部に保持しているMV(コントローラが計算したMVまたは補償動作により更新されたMV)と、実際にプラントに入力したMVとが異なるのが最大何サンプリング前かを調べ、これをkとする。
【0039】
現在のサンプリングをnとすると、補償動作は、コントローラが内部に保持しているMVと実際にプラントに入力したMVが初めて異なったサンプリングである、n−k番目のサンプリングからスタートする。
【0040】
ステップS3では、補償対象サンプリングであるn−k番目のサンプリングに実際にプラントに入力したMVを、(2)式のun−kに代入して、そのMVに見合う設定値rn−kを計算する。
【0041】
ステップS4では、求まったrn−kをn−k番目のサンプリングの設定値であったと考えて、n−k番目のサンプリングの偏差およびn−k番目のサンプリングまでの積分値を計算し直す。
【0042】
続いてステップS5では、k=k−1、つまり補償対象サンプリングを次サンプリングにずらして、同様の作業を行い、n−k番目のサンプリングの偏差およびn−1番目のサンプリングまでの積分値が求まるまでこれを繰り返す。
【0043】
ステップS7では、コントローラが内部に保持しているMVを、補償に用いた実際にプラントに入力したMVに更新し、ステップS8で補償処理を終了する。
【0044】
コントローラ201は、図2では位置型のPIDコントローラを対象としたが、位置型のPIDコントローラに限らず、速度型のPIDコントローラも対象とする。速度型のPIDコントローラは、コントローラ201が(3)式のようなMVの差分△uをアクチュエータ103に送信する。
【0045】
【数3】

【0046】
これがパケットロスにより欠損したとすると、アクチュエータ103は何らかの△uを補うことになる。例えば、前サンプリングのMVをそのまま維持するとすれば、△u=0である。
【0047】
すると、コントローラが計算したMVの差分と、実際にプラントに入力したMVに適用された差分とが異なり、位置型の場合と同様に、コントローラの内部状態が狂う。そこで、位置型の場合と同様に補償を行う。補償式は(4)式で与えられる。
【0048】
【数4】

【0049】
図3は、速度型のPIDコントローラのMV計算を補償する手順を示すフローチャートである。ステップS1〜S8は、図2のステップS1〜S8に対応する。この補償は、位置型の場合と同様に、コントローラが計算したMVの差分と、実際に制御対象プラント101に入力したMVに適用された差分との異なりの原因を、SVが変わっていたと置き換えることにより、コントローラの内部状態の狂いを解消し、応答の悪化を防ぐ。
【0050】
実際に制御対象プラント101に入力したMVに適用された差分ではなく、実際に制御対象プラント101に入力したMVが得られるような場合には、このMVからMVの差分を計算すればよい。
【0051】
ここで、位置型の場合には前記(1)式に偏差と積分が入っているのでこの2つを補償するが、速度型の場合には(3))に積分が入ってこないので偏差のみを補償する。速度型の場合には、アクチュエータ103がMVの偏差からMVを計算するので、実質的にアクチュエータ103が積分値を持つと考えることができる。
【0052】
アクチュエータ103は、パケットロスに関わらず毎サンプリングで実際に制御対象プラント101に入力したMVに適用された差分で状態を更新するので、状態に異常は生じない。
【0053】
次に、MV補完手段104のMV補完値の設定手順につき説明する。図10は、MV補完値の従来の設定手順を示すフローチャートである。ステップS1では、各サンプリングにおいて、コントローラ201は操作量U(=MV)を算出し、ステップS2でネットワークを介してこの操作量Uをアクチュエータに送信する。
【0054】
ステップS3で、アクチュエータ103は、操作量Uを受信できた場合には、この操作量UをステップS4で制御対象プラント101に入力する。パケットロスにより、操作量Uを受信できなかった場合には、ステップS4で何らかの値を補って制御対象プラント101に入力する。
【0055】
値の補い方として、次の2つの手法がある。1つは、現在制御対象プラント101に入力している操作量をそのまま維持する前回値保持(前回もパケットロスしている場合には前々回値)、もう1つは、制御対象プラント101に何も入力しない(操作量をゼロとする)ことである。
【0056】
前回値保持の手法では、例えば、設定値変更があると、そのサンプリングだけ操作量が非常に大きな値となる可能性がある。この時、次サンプリングでパケットロスが発生すると、この非常に大きな操作量が保持されることになり、応答を乱す。
【0057】
操作量をゼロとする手法では、これまでプラントに何らかの操作量を入力していたものを、急にゼロとすることになり、これも応答を乱す。
【0058】
図4は、本発明を適用したMV補完値の設定手順を示すフローチャートである。ステップS1において、コントローラ201は、各サンプリングにおいて、操作量を次の2つに分けて計算する。1つは次回保持分である第1の操作量U1、もう1つは次回保持分以外である第2の操作量U2である。U1及びU2は、(5)式及び(6)式で表記される。
【0059】
【数5】

【0060】
【数6】

【0061】
ステップS2で、ネットワークを介してこのU1とU2をアクチュエータ103に送信する。ステップS3において、アクチュエータ103は、これらU1とU2を受信できた場合には、ステップS4で(U1+U2)を制御対象プラント101に入力する。
【0062】
パケットロスにより、U1とU2を受信できなかった場合には、ステップS5で前回受信した(前回もパケットロスしている場合には前々回受信した)U1とU2のうち、U1分だけを制御対象プラント101に入力する。
【0063】
このように、U2を微分動作内のSV変更分、U1をそれ以外の分とすれば、従来手法の問題点である、設定値変更時に出る大きめの操作量が保持される問題はなくなる。これは、設定値変更時に大きめの操作量が出るのは微分動作内のSV変更分によるものなので、これをU2とすることにより、次サンプリングにパケットロスが発生したとしても、設定値変更時に操作量が大きくなる要因である微分動作内のSV変更分が制御対象プラント101に入力されないからである。
【0064】
図5は、本発明を適用したネットワーク制御システムの他の実施形態を示す機能ブロック図である。図1の構成との相違は、アクチュエータ103に送受信成否検出手段103bを追加した点にある。
【0065】
アクチュエータは103は、毎サンプリングにm+1個の情報を持ったMVトレンドデータを送信するのではなく、パケットロスによりアクチュエータ103がMVを受信できなかった場合にMV補完器で補った値のみから構成されるデータを送信するとしてもよい。これにより、アクチュエータからコントローラに送信される情報量を減らし、通信負荷を軽くできる。
【0066】
この場合、アクチュエータ103がMVバッファ手段103aに保持するMVデータは、MVを受信できなかった場合にMV補完手段104で補ったMV補完値のみから構成される。したがって、アクチュエータ103は、MVを受信できなかった場合のみ、MVバッファ手段103aにMV補完値を格納する。
【0067】
また、このMVバッファを手段103aのMV補完値をMVトレンドデータアンサーバックとしてコントローラ201に送信するが、この送受信の成否を送受信成否検出手段103検出し、確実に送信できたと確認できた場合のみMVバッファ手段103aを空にする。
【0068】
これは、コントローラ201に一度値が届けば、その値は不要となるからである。この手法は、アクチュエータ103が単純にm+1個のデータを送信する場合に比べて、アクチュエータ側の処理が増える。従って、アクチュエータ103にある程度の処理機能が要求される。
【0069】
更に、コントローラ201は、アクチュエータ103からのトレンドデータまたは補完値のアンサーバックを取得するまで、MVのアクチュエータ103への送信を一時的に停止する機能を備えることも可能である。
【0070】
図6は、本発明を適用したネットワーク制御システムの更に他の実施形態を示す機能ブロック図である。図1の構成との相違は、センサ102に送受信成否検出手段102bを追加した点にある。
【0071】
センサ102は、毎サンプリングにm+1個の情報を持ったPVトレンドデータを送信するのではなく、最新のPVと以前コントローラに届かなかったPVのみから構成されるデータを送信するとしてもよい。これにより、センサ102からコントローラ201に送信される情報量を減らし、通信負荷を軽くできる。
【0072】
この場合、センサ102のPVバッファ手段102aが保持するPVデータは、最新のPVとコントローラに送信できていない過去のPVのみから構成される。センサ102はPVバッファ手段102aのデータをコントローラ201に送信するが、送受信成否検出手段102bはこの送受信の成否を検出し、確実に送信できたと確認できた場合のみPVバッファ手段102aを空にする。
【0073】
これは、コントローラ201に一度値が届けば、その値は不要となるからである。この手法は、センサ201が単純にm+1個のデータを送信する場合に比べて、センサ側の処理が増える。したがって、センサ201にある程度の処理機能が要求される。
【0074】
図7は、本発明を適用したネットワーク制御システムの更に他の実施形態を示す機能ブロック図である。この実施形態の特徴は、コントローラ201がセンサ102と一体化されており、コントローラ201とアクチュエータ103間の情報伝達のみがネットワーク300を介して行われる。
【0075】
この場合、PVがパケットロスすることはないので、PV補完手段、センサ102内にあるPVバッファ手段、コントローラ201内にあるPVバッファ手段は不要となる。また、センサ102からコントローラ201へ伝えられる情報は、PVトレンドデータではなく、最新のPVのみとなる。
【0076】
PV補完手段202aによるPV補完値は、PVトレンドデータの推移により予測される値を計算して設定する手法が一般であるが、プロセスモデル202aを備えることにより、MVのトレンドデータからPVを予測してPV補完値を補正することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】本発明を適用したネットワーク制御システムの一実施形態を示す機能ブロック図である。
【図2】コントローラの操作量計算を補償する手順を示すフローチャートである。
【図3】コントローラの操作量計算を補償する他の手順を示すフローチャートである。
【図4】本発明を適用したMV補完値の設定手順を示すフローチャートである。
【図5】本発明を適用したネットワーク制御システムの他の実施形態を示す機能ブロック図である。
【図6】本発明を適用したネットワーク制御システムの更に他の実施形態を示す機能ブロック図である。
【図7】本発明を適用したネットワーク制御システムの更に他の実施形態を示す機能ブロック図である。
【図8】従来のネットワーク制御システムの構成例を示す機能ブロック図である。
【図9】パケットロスが発生した場合の応答特性の悪化を示す特性図である。
【図10】MV補完値の従来の設定手順を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0078】
100 プラント側
101 制御対象プラント
102 センサ
102a PVバッファ手段
103 アクチュエータ
103a MVバッファ手段
104 MV補完手段
200 コントローラ側
201 コントローラ
201a MVバッファ手段
201b PVバッファ手段
201c MV補償手段
202 PV補完手段
202a プロセスモデル
300 ネットワーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御対象プラントの物理量を測定するセンサからの制御量と目標値との偏差を所定のサンプリング周期で演算するコントローラの操作量を、前記制御対象プラント側に設けたアクチュエータにネットワークを介してパケット送信し、前記アクチュエータより前記制御対象プラントに前記操作量を入力するネットワーク制御システムにおいて、
前記パケット送信のエラー発生時に、前記アクチュエータに操作量の補完値を与えるMV補完手段と、
前記アクチュエータより前記制御対象プラントに入力された操作量のトレンドデータまたは前記MV補完手段から前記アクチュエータに補完された前記補完値を、前記ネットワークを介して前記コントローラにアンサーバックするMVバッファ手段と、
アンサーバックされた前記トレンドデータまたは補完値に基づいて前記コントローラの操作量計算を修正するMV補償手段と、
を備えることを特徴とするネットワーク制御システム。
【請求項2】
前記MV補償手段は、アンサーバックされた前記トレンドデータまたは前記補完値と、前記コントローラ側で保持されているトレンドデータに基づいて、前記パケット送信のエラー発生時のサンプリングから現在のサンプリングまでの操作量値が、前記トレンドデータの値に一致するような仮想SV値を計算し、この仮想SV値により前記コントローラの操作量を修正計算することを特徴とする請求項1に記載のネットワーク制御システム。
【請求項3】
前記コントローラは、前記トレンドデータまたは前記補完値のアンサーバックを取得するまで前記操作量の前記アクチュエータへの送信を一時的に停止することを特徴とする請求項1または2に記載のネットワーク制御システム。
【請求項4】
前記コントローラは、微分動作内の前記目標値変更分に係る第1の操作量及びそれ以外の変更分に係る第2の操作量に分けて前記アクチュエータに送信し、前記MV補完手段は、前記パケット送信が正常な場合には前記第1及び第2の操作量の和を補完値として前記アクチュエータに与え、前記パケット送信がエラーの場合には前記第2の操作量のみを補完値として前記アクチュエータに与えることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のネットワーク制御システム。
【請求項5】
前記センサにより測定された制御量を、ネットワークを介して前記コントローラにパケット送信する場合において、
前記パケット送信エラー発生時に前記コントローラに制御量の補完値を与えるPV補完手段と、
前記センサにより測定された制御量のトレンドデータを、前記ネットワークを介して前記コントローラに送信するPVバッファ手段と、
を備えることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載のネットワーク制御システム。
【請求項6】
前記PV補完手段は、前記操作量のトレンドデータに基づいて前記制御量の補完値を修正することを特徴とする請求項1乃至7に記載のネットワーク制御システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−110180(P2009−110180A)
【公開日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−280543(P2007−280543)
【出願日】平成19年10月29日(2007.10.29)
【出願人】(000006507)横河電機株式会社 (4,443)
【Fターム(参考)】