説明

ネットワーク構成方法及びネットワーク構成装置

【課題】本発明は、利用者の利便性の向上及び維持には、利用者に物理ネットワーク設備および仮想ネットワークの内部構造を隠蔽し、必要な部分のみを提示する適切な抽象化が必要である。また、利用者の要求に応じて、性能保証通信を提供できることが望ましい。
【解決手段】本発明は、仮想ネットワークを点、面及び線の3つの構成要素を用いて抽象化する。点は利用者に対する仮想ネットワークへのインタフェースである。面とは、点の集合を持ち、各点間のベストエフォートな通信路の集合である。線は特定の2点間を結ぶ性能保証付き通信路である。通常は面として通信路を提供しつつ、必要に応じて線として性能保証付き通信を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ネットワークを構成する利用者がネットワーク構成を設定可能なネットワーク構成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
仮想ネットワークを構成する技術としてIP−VPN(Internet Protocol−Virtual Private Network)技術(参考文献1)およびVLAN(Virtual LAN)技術(参考文献2)が広く使われている。IP−VPN技術はネットワーク層で実現される。一方、VLAN技術はデータリンク層で実現される。
【0003】
一般にIP−VPN技術は、ポイントツーポイントで線の形態として提供され、VLAN技術はマルチポイントツーマルチポイントで面の形態として提供される。線の形態では、ノード間とその経路が明確であり、性能保証などを提供しやすい一方、接続地点が増えると、各接続地点の設定や地点間の線の設定が増え、それによる運用管理の負荷が高くなる。
【0004】
VLAN技術は、面として提供できることで、接続地点の増加に対して、中継装置での設定も必要な場合があるが主には各接続地点のみの設定となる。また特に性能保証を必要としない通信の場合、複数拠点間には面としての形態が利用者にとって利便性が高い。しかし、VLAN技術では特定の2点間のみの性能保証は提供しにくい。従来技術では線としての提供技術と面としての提供技術が別々であり、その連携は難しいため、線としての性能保証と、面としての高い利便性の提供を両立させることが難しいという課題がある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】BGP/MPLS IP Virtual Private Networks(VPNs),RFC4364
【非特許文献2】Virtual Bridged Local Area Networks,IEEE Std.802.1Q−2005
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
種々の用途に沿ったネットワークをそれぞれ別に設備を敷設することは経済的ではない。そこで各用途において物理的なネットワーク設備は共用しつつ、各用途に適したネットワークを仮想的に構成し提供することは高い経済的効果が期待される。ここで本発明では物理ネットワーク設備から仮想的に構成されたネットワークを仮想ネットワークと呼び、物理ネットワーク設備から仮想ネットワークを構成および提供する主体を提供者、仮想ネットワークを利用する主体を利用者と呼ぶ。この仮想ネットワークの構成および提供で考慮すべき課題は、利用者の利便性の向上及び維持である。
【0007】
利用者の利便性の向上及び維持には、利用者に物理ネットワーク設備および仮想ネットワークの内部構造を隠蔽し、必要な部分のみを提示する適切な抽象化が必要である。また、利用者の要求に応じて、性能保証通信を提供できることが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明では、仮想ネットワークを点、面及び線の3つの構成要素を用いて抽象化する。点は利用者に対する仮想ネットワークへのインタフェースである。面とは、点の集合を持ち、各点間のベストエフォートな通信路の集合である。線は特定の2点間を結ぶ性能保証付き通信路である。通常は面として通信路を提供しつつ、必要に応じて線として性能保証付き通信を提供する。
【0009】
具体的には、本発明のネットワーク構成方法は、物理ネットワークを構成するノードのうち、サービス品質の保証のない仮想ネットワークを構成するノードを点に抽象化し、当該点の集合からなる面を仮想ネットワークとして表示する仮想ネットワーク抽象化手順と、前記仮想ネットワーク抽象化手順で抽象化した点同士を線で接続する旨の命令及び当該線の属性を受信すると、当該線で接続された点で抽象化されているノード間の通信路における通信性能を前記属性に従って設定する通信性能設定手順と、を順に有する。
【0010】
本発明のネットワーク構成方法は仮想ネットワーク抽象化手順を有するため、利用者に物理ネットワーク設備および仮想ネットワークの内部構造を隠蔽し、必要な部分のみを抽象化して提示することができる。また本発明のネットワーク構成方法は通信性能設定手順を有するため、性能保証付き通信を提供することができる。
【0011】
本発明のネットワーク構成方法では、前記仮想ネットワーク抽象化手順において、前記点で表されたノードの仮想ネットワーク上のアドレスが表示可能な状態で、前記点を表示してもよい。
【0012】
本発明のネットワーク構成方法では、前記通信性能は、前記通信路の遅延量又は保証帯域であってもよい。
【0013】
本発明のネットワーク構成方法では、前記仮想ネットワーク抽象化手順において、複数のノードを1つの点に抽象化してもよい。
【0014】
具体的には、本発明のネットワーク構成装置は、物理ネットワークを構成するノードのうち、サービス品質の保証のない仮想ネットワークを構成するノードを点に抽象化し、当該点の集合からなる面を仮想ネットワークとして表示可能にするとともに、当該点同士を線で接続する旨の命令及び当該線の属性を受信する仮想ネットワーク抽象化部と、前記仮想ネットワーク抽象化部の受信した命令において前記線で接続された点で抽象化されているノード間の通信路における通信性能を前記属性に従って設定する通信性能設定部と、を備える。
【0015】
本発明のネットワーク構成装置は仮想ネットワーク抽象化部を備えるため、利用者に物理ネットワーク設備および仮想ネットワークの内部構造を隠蔽し、必要な部分のみを抽象化して提示することができる。また本発明のネットワーク構成装置は通信性能設定部を備えるため、性能保証付き通信を提供することができる。
【0016】
本発明のネットワーク構成装置では、前記仮想ネットワーク抽象化部は、前記点で表されたノードの仮想ネットワーク上のアドレスが表示可能な状態で、前記点を表示してもよい。
【0017】
本発明のネットワーク構成装置では、前記通信性能は、前記通信路の遅延量又は保証帯域であってもよい。
【0018】
本発明のネットワーク構成装置では、前記仮想ネットワーク抽象化部は、複数のノードを1つの点に抽象化してもよい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、通信路の物理的構成を認識することなく、仮想ネットワーク上で性能保証付き通信路を特定することで、性能保証サービスを実現することができ、性能保証と高い利便性を同時に提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本実施形態に係る物理ネットワークの一例を示す。
【図2】本実施形態に係るネットワーク構成装置の一例を示す。
【図3】仮想ネットワークの構成例を示す。
【図4】性能保証付き通信路の第1の設定例を示す。
【図5】性能保証付き通信路の第2の設定例を示す。
【図6】仮想ネットワークと物理ネットワークの機器との対応関係の一例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
添付の図面を参照して本発明の実施形態を説明する。以下に説明する実施形態は本発明の実施の例であり、本発明は、以下の実施形態に制限されるものではない。なお、本明細書及び図面において符号が同じ構成要素は、相互に同一のものを示すものとする。
【0022】
図1の物理ネットワークから仮想ネットワークを構成し提供する例を説明する。本実施形態の物理ネットワークは、中継系ノード1、2、3、4、アクセス系ノード1.1〜1.4、2.1〜2.4、3.1〜3.4、4.1〜4.4、利用者端末1.1.1、1.1.2、1.2.1、2.1.1、2.1.2、2.2.1、3.3.1、3.4.2、3.4.1、4.3.1、4.4.1、4.4.2から構成される。
【0023】
図2に、本実施形態に係るネットワーク構成装置の一例を示す。本実施形態に係るネットワーク構成装置は、仮想ネットワークを管理する仮想ネットワーク制御管理部として、経路制御機構などを有する各種装置に搭載される。仮想ネットワーク制御管理部は、ISP(Internet Services Provider)やキャリアなどの提供者が操作する。仮想ネットワーク制御管理部10は、物理ネットワーク資源管理部14と、仮想ネットワーク抽象化部11と、通信性能設定部12と、物理ネットワーク設定部13と、を備える。物理ネットワーク資源管理部14は、物理ネットワーク100の情報を取得する。例えば、物理ネットワーク100に管理信号を送信して、物理ネットワーク100を構成する各ノードにリンク情報や各種設定を返信させる。このようにして、物理ネットワーク資源管理部14は物理ネットワーク100の情報を常時把握する。本実施形態に係るネットワーク構成方法は、仮想ネットワーク抽象化手順と、通信性能設定手順と、を順に有する。
【0024】
仮想ネットワーク抽象化手順では、仮想ネットワーク抽象化部11が、図1に示す物理ネットワークを構成するノードのうち、サービス品質の保証のない仮想ネットワーク200を構成するノードを点に抽象化し、当該点の集合からなる面を仮想ネットワーク200として表示する。これにより、図1に示す物理ネットワーク100に接続されている各ノードは、抽象化された仮想ネットワーク200の表示データを取得することができる。
【0025】
具体的には、仮想ネットワーク制御管理部10は、仮想ネットワーク200を、利用者へのインタフェースである「点」と、点をつなぐ「面」という構成として、利用者に提供する。例えば、仮想ネットワーク抽象化部11は、物理ネットワーク資源管理部14の管理する物理ネットワーク100の情報から仮想ネットワーク200を構成するノードの情報を取得し、利用者へのインタフェースである「点」を抽出して「面」を構成する。そして、仮想ネットワーク抽象化部11は、抽象化した仮想ネットワーク200の表示データを仮想ネットワーク200に提供する。ここで、表示データには、以下で説明する図3から図5に示すように、ネットワークトポロジやノードの通信性能が含まれていてもよい。
【0026】
ここでは、仮想ネットワーク抽象化部11が図3のような仮想ネットワークAを提供するとする。点A.1、点A.2、点A.3、点A.4は仮想ネットワークAへのインタフェースであり、ベストエフォート通信路の集合である面で接続されている。図の各点間は点A.1、点A.2、点A.3、点A.4にそれぞれ5Gbps、1Gbps、5Gbps、1Gbpsのリソースが与えられている。このリソースは点を通る入出力帯域の上限を表す。入力方向と出力方向とで独立に異なる上限値を与えることもできる。各点からは与えられたリソースの範囲において自由に通信可能である。図1のように面での接続の限りでは、各点間はベストエフォート通信が行える。
【0027】
通信性能設定手順では、仮想ネットワーク制御管理部10は、以下のように動作する。
仮想ネットワーク抽象化部11が、仮想ネットワーク抽象化部11で抽象化した点同士を線で接続する旨の命令及び当該線の属性を受信する。この命令は、例えば、提供者によって入力される。仮想ネットワーク抽象化部11は、当該命令を受信すると、受信した点に対応するノードを特定し、特定したノードの情報と線の属性を通信性能設定部12に出力する。通信性能設定部12は、仮想ネットワーク抽象化部11の受信した命令に従って仮想ネットワーク200を設定して物理ネットワーク設定部13に出力する。物理ネットワーク設定部13は、通信性能設定部12からの設定に従い、物理ネットワーク100を設定する。これにより、仮想ネットワーク200の構成が更新される。このとき、物理ネットワーク資源管理部14は、設定後の物理ネットワーク100の情報を取得する。そして、仮想ネットワーク抽象化部11は、最新の仮想ネットワーク200を抽象化し、抽象化後の設定データを仮想ネットワーク200に提供する。
【0028】
具体的には、点A.1から点A.3へ性能保証付き通信路が必要となった場合は、物理ネットワーク100の利用者のノードは、図4のように点A.1から点A.3を結ぶ線を設定する。線は保証遅延量と保証帯域の属性を持つ。これにより、通信性能設定部12が、ノード間の通信路における通信性能を取得する。すると、物理ネットワーク設定部13は、通信性能設定部12の取得した属性になるように、物理ネットワーク100を設定する。
【0029】
ここで、線は片方向ごと、もしくは双方向として追加可能である。また要求に応じて、削除や属性値の変更が可能である。また、点A.1から点A.3への通信は、ベストエフォートおよび性能保証の両方が可能となる。明示的に性能保証またはベストエフォートを指定することも可能である。通信トラヒックが帯域保証値を超えた場合は、超過分はベストエフォートとして扱われる。
【0030】
各点間のすべての通信を十分に保証させたい場合は、図5のように全地点を結ぶ木構造かもしくはフルメッシュに線で接続する。各点に対応するノードは、接続された各線のトラヒックを転送する。
【0031】
各インタフェースに対応する機器は、仮想ネットワークインタフェース機能を持つ。仮想ネットワークインタフェースの基本機能は宛先点に配送されるように物理ネットワークのアドレスに変換もしくはカプセル化するマッピング機能である。物理ネットワーク100はあるアドレス体系における経路制御機構が動作し、経路、各リンク帯域及びトラヒック情報は集中または分散管理される。物理ネットワーク設定部13は、経路、各リンク帯域及びトラヒック情報を取得するとともに設計変更も行う。
【0032】
仮想ネットワーク200は物理ネットワーク100とは別なアドレス体系を利用できる。仮想ネットワーク200のアドレス体系と物理ネットワーク100のアドレス体系のマッピング情報は、集中または分散管理される。物理ネットワーク設定部13は、仮想ネットワーク200のアドレス体系と物理ネットワーク100のアドレス体系のマッピング情報を取得するとともに設計変更も行う。
【0033】
仮想ネットワークインタフェースのマッピング機能は、同一機器内にあるマッピング情報または集中管理機器にあるマッピング情報をもとに物理ネットワークのアドレス体系に変換またはカプセル化して送信する。受信側では、同様にマッピング情報にもとづいて仮想ネットワーク200のアドレス体系へ変換またはデカプセル化をして受信し、必要であればそれを仮想ネットワークアドレス体系にもとづいて転送する。
【0034】
図6の破線は、インタフェースに接続された物理ネットワークの機器との対応関係を表す。点A.1のように利用者端末1.1.1が接続されている場合、利用者端末が仮想ネットワークインタフェース機能を持つ。他方、点A.2のようにアクセス系ノードが接続されている場合、アクセス系ノードが仮想ネットワークインタフェース機能を持ち、配下の利用者端末は仮想ネットワークインタフェース機能を持つ必要はない。利用者端末4.3.1のように、複数のインタフェースとなることもできる。経路制御の仕組みを利用して、通信相手ごとやアプリケーションごとにインタフェースを割り振る。また、点A.3のように1つのインタフェースに2つ以上のノードを対応させることができる。複数のノードを仮想ネットワーク200上では同一に見せることで、仮想ネットワーク200に影響なしに、仮想ネットワークインタフェースのマッピング情報を、負荷分散や故障時切換として機能させるように設定できる。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明は情報通信産業に適用することができる。
【符号の説明】
【0036】
1、2、3、4:中継系ノード
1.1〜1.4、2.1〜2.4、3.1〜3.4、4.1〜4.4:アクセス系ノード
1.1.1、1.1.2、1.2.1、2.1.1、2.1.2、2.2.1、3.3.1、3.4.2、3.4.1、4.3.1、4.4.1、4.4.2:利用者端末
10:仮想ネットワーク制御管理部
11:仮想ネットワーク抽象化部
12:通信性能設定部
13:物理ネットワーク設定部
100:物理ネットワーク
200:仮想ネットワーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
物理ネットワークを構成するノードのうち、サービス品質の保証のない仮想ネットワークを構成する利用者のノードを点に抽象化し、当該点の集合からなる面を仮想ネットワークとして表示する仮想ネットワーク抽象化手順と、
前記仮想ネットワーク抽象化手順で抽象化した点同士を線で接続する旨の命令及び当該線の属性を受信すると、当該線で接続された点で抽象化されているノード間の通信路における通信性能を前記属性に従って設定する通信性能設定手順と、
を順に有するネットワーク構成方法。
【請求項2】
前記仮想ネットワーク抽象化手順において、前記点で表されたノードの仮想ネットワーク上のアドレスが表示可能な状態で、前記点を表示することを特徴とする請求項1に記載のネットワーク構成方法。
【請求項3】
前記通信性能は、前記通信路の遅延量又は保証帯域であることを特徴とする請求項1又は2に記載のネットワーク構成方法。
【請求項4】
前記仮想ネットワーク抽象化手順において、複数のノードを1つの点に抽象化することを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のネットワーク構成方法。
【請求項5】
物理ネットワークを構成するノードのうち、サービス品質の保証のない仮想ネットワークを構成するノードを点に抽象化し、当該点の集合からなる面を仮想ネットワークとして表示可能にするとともに、当該点同士を線で接続する旨の命令及び当該線の属性を受信する仮想ネットワーク抽象化部と、
前記仮想ネットワーク抽象化部の受信した命令において前記線で接続された点で抽象化されているノード間の通信路における通信性能を前記属性に従って設定する通信性能設定部と、
を備えるネットワーク構成装置。
【請求項6】
前記仮想ネットワーク抽象化部は、前記点で表されたノードの仮想ネットワーク上のアドレスが表示可能な状態で、前記点を表示することを特徴とする請求項5に記載のネットワーク構成装置。
【請求項7】
前記通信性能は、前記通信路の遅延量又は保証帯域であることを特徴とする請求項5又は6に記載のネットワーク構成装置。
【請求項8】
前記仮想ネットワーク抽象化部は、複数のノードを1つの点に抽象化することを特徴とする請求項5から7のいずれかに記載のネットワーク構成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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