説明

ネットワーク管理装置および光パス設定方法

【課題】ネットワーク上のネットワーク機器の消費電力を抑えて効率的な光パスを設定できること。
【解決手段】ネットワーク管理装置101は、光ネットワーク上の既存の光パスと、発生したトラフィックを収容可能な新規の光パスの候補についてノード間を接続したグラフからなり、光パスのノード間の各辺に、光パス上に設けられるネットワーク機器の電力消費増分に対応した値の重みを付与した補助グラフを作成する補助グラフ作成部201と、補助グラフ作成部201により作成された補助グラフに基づき、最小重み経路を求める経路計算部202と、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ネットワークにおける光パスを求めるネットワーク管理装置および光パス設定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
波長分割多重(WDM:Wavelength Division Multiplexing)技術に基づく光ネットワーク(WDMネットワーク)とIPネットワークを組み合わせたIP/WDMネットワークでは、WDMネットワークの上にIPネットワークがオーバーレイされている。このWDMネットワーク、IPネットワークをそれぞれWDMレイヤ(もしくは、光レイヤ)、IPレイヤと呼ぶ。WDMレイヤは、Optical Cross Connect(OXC)で構成され、任意の2ノード間で光パスと呼ばれる論理的な通信路を作成することができる。光パスの設定には、通常、2ノード間で共通に利用可能な波長を用い、1本の光パスを設定することにより、2ノード間に1波長の容量(たとえば、10Gbpsや40Gbps)に相当する大容量の通信路が論理的に作成される。
【0003】
光パスで結ばれた2ノードは、IPレイヤ上では隣接関係となり、光パスが通過する中間のOXCと対応して接続されるルータはカットスルーされ、このルータにおいてパケットの転送処理が不要になる。OXCでの転送処理に必要な単位ビットレートあたりの消費電力は、ルータでの転送処理に必要な単位ビットレートあたりの消費電力と比較して小さい。一方、OXCでの転送処理の粒度は、ルータの伝送処理の粒度と比較して非常に大きい。
【0004】
上記の要求に対応すべく、複数の品質の光パスが混在するネットワークのノード装置において、複数の誤り訂正復号器を有し、繰り返し復号の最大回数に達する前に誤り訂正されたとき以降の訂正復号をおこなわずに低消費電力化を図った技術がある(たとえば、下記特許文献1参照。)。また、光パス設定について、サービスクラス毎に光パス設定による報酬と光パス設定失敗時のコストをテーブル化して設定し、光パス設定要求をテーブル参照により受入可否を判断することにより、光パスの有効利用と、サービスクラス毎の差別化を図る技術がある(たとえば、下記特許文献2参照。)。
【0005】
また、光パスの設定を監視制御装置で監視し、保有しているトポロジー情報、パス情報等により、新規の光パスの伝送可否を判断し、誤設定を防止して再生中継器における信号誤りの発生等を防止する技術がある(たとえば、下記特許文献3参照。)。また、メッシュ光WDMネットワークにおける最適光パスの検索方法について、新規光パスを初期化し、乱数を用いた二つのノードを選択し、二つのノード間に光パス設定可能かを判定し、送受信インターフェース全てに対する光パスの割り当て完了を判定し、新規光パスが連結グラフとなっているかを判定する。上記処理により、全てのパターンの光パストポロジーを検索せずとも最良の光パストポロジーを検索可能とした技術がある(たとえば、下記特許文献4参照。)。
【0006】
また、仮想トポロジレイヤと物理レイヤからなる補助グラフを作成し、ルータの消費電力および光ファイバを使用することによる消費電力を補助グラフ上の辺の重みとする補助グラフを作成し、その上での最小コスト経路を求めることで光パスの選択および経路計算をおこなう方法が提案され、IP/WDMネットワークにおける消費電力の削減効果が示されている(たとえば、下記非特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010−166378号公報
【特許文献2】特開2010−263442号公報
【特許文献3】特開2010−62647号公報
【特許文献4】特開2006−253786号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】M.Xia, M.Tornatore, Y.Zhang, P.Chowdhury, C.U.Martel, and B.Mukherjee,“Green provisioning for optical wdm networks,” IEEE Journal of Selected Topics in Quantum Electronics,vol.PP,no.99,pp.1−9,Dec.2010.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1〜4の技術では、新規光パスの設定時に、ネットワーク全体の消費電力を削減できる最適な光パスを設定することができない。特に、近年のインターネットトラフィックの増加により、ネットワーク上に配置された上記のルータ、等のネットワーク機器の消費電力が増大してきており、変化するトラフィックに応じて動的に光パスを設定し、IP/WDMネットワークにおける消費電力を削減する必要があるが、特許文献1〜4ではこれがおこなえない。また、既存の光パスがある場合において新規の光パスの設定時に消費電力の削減ができる経路を求めることもできない。
【0010】
一方、非特許文献1の技術では、特許文献1〜4の技術とは異なり、変化するトラフィックに応じて動的に光パスを設定し、IP/WDMネットワークにおける消費電力を削減することができる。しかし、ネットワーク上に配置される光再生中継器の存在が考慮されていないという問題が残っている。光再生中継器は、長距離の光パスを設定する際に必要となる光の信号劣化を補償する機器であり、OXC内に実装されている。光パスを設定するには、再生中継器によって区切られる区間(セグメントと呼ぶ)の距離が、光信号品質の劣化許容値によって決まる規定値以下になるようにしなければならないという制約(光再生中継器の挿入制約と呼ぶ)がある。したがって、非特許文献1では、光再生中継器の存在が無視されているために、下記の問題点を有している。
【0011】
1.光再生中継器が必要となるOXCの場所を求めることができない。
2.使用可能な光再生中継器が存在しないOXCを通過する光パスを解として出してしまい、結果としてこの光パスのリソースがなく、光パスを収容できなくなるブロックが発生する。
3.光再生中継器を使用することによる電力増加の効果が考えられていないため、最良とならない光パスを選択し、消費電力が増加する場合がある。
【0012】
開示のネットワーク管理装置および光パス設定方法は、上述した問題点を解消するものであり、ネットワーク上のネットワーク機器の消費電力を抑えて効率的な光パスを設定できることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上述した課題を解決し、目的を達成するため、開示技術は、光ネットワーク上の既存の光パスと、発生したトラフィックを収容可能な新規の光パスの候補についてノード間を接続したグラフからなり、前記光パスのノード間の各辺に、当該光パス上に設けられるネットワーク機器の電力消費増分に対応した値の重みを付与した補助グラフを作成する補助グラフ作成部と、前記補助グラフ作成部により作成された前記補助グラフに基づき、最小重み経路を求める経路計算部と、を含む。
【発明の効果】
【0014】
開示のネットワーク管理装置および光パス設定方法によれば、ネットワーク上のネットワーク機器の消費電力を抑えて効率的な光パスを設定できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、実施の形態におけるネットワーク管理装置を含むネットワーク全体構成を示す図である。
【図2】図2は、実施の形態1におけるネットワーク管理装置の機能ブロック図である。
【図3】図3は、ネットワーク管理装置のハードウェア構成を示すブロック図である。
【図4】図4は、実施の形態1におけるネットワーク管理装置の経路計算処理を示すフローチャートである。
【図5】図5は、補助グラフ作成部の内部ブロック図である。
【図6】図6は、既存光パスレイヤの作成手順を示すフローチャートである。
【図7】図7は、新規光パスレイヤの作成手順を示すフローチャートである。
【図8−1】図8−1は、各レイヤ間の接続の作成手順の一例を示すフローチャートである。
【図8−2】図8−2は、各レイヤ間の接続状態を示す図である。
【図8−3】図8−3は、各レイヤ間の接続の作成手順の他の例を示すフローチャートである。
【図9−1】図9−1は、補助グラフを作成する対象のネットワーク状態を示す図である。
【図9−2】図9−2は、光パスの情報を示す図である。
【図10】図10は、電力モデル格納部に格納される情報を示す図表である。
【図11】図11は、トラフィック情報格納部に格納される情報を示す図表である。
【図12】図12は、既存光パスレイヤの作成結果を示す図である。
【図13】図13は、既存光パスレイヤにおける辺の情報を示す図表である。
【図14】図14は、各波長毎の接続関係を示す図である。
【図15】図15は、波長1についての全ノード間の最短経路とその経路長を示す図表である。
【図16】図16は、新規光パス候補レイヤの作成結果を示す図である。
【図17】図17は、波長1に対応する新規光パス候補レイヤの情報を示す図表である。
【図18】図18は、図8−1に示したレイヤ間の接続方法により各レイヤ間を接続した場合の補助グラフの作成結果を示す図である。
【図19】図19は、新規光パス経路を補助グラフ上から求める手順を示すフローチャートである。
【図20−1】図20−1は、光パスの最小重み経路を示す図である。
【図20−2】図20−2は、他の光パスの最小重み経路を示す図である。
【図21】図21は、実施の形態2におけるネットワーク管理装置の機能ブロック図である。
【図22】図22は、実施の形態2におけるネットワーク管理装置の経路計算処理を示すフローチャートである。
【図23】図23は、補助グラフの更新処理を示すフローチャートである。
【図24】図24は、更新した補助グラフを示す図である。
【図25】図25は、実施の形態3による各レイヤ間の接続状態を示す図である。
【図26】図26は、入力波長によって出力波長に制約がある場合のレイヤ間の接続状態を示す図である。
【図27】図27は、実施の形態3による各レイヤ間の接続の作成手順の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に添付図面を参照して、開示技術の好適な実施の形態を詳細に説明する。この開示技術は、ネットワーク内で新たに発生したトラフィックに対して動的に経路を決定する。発生したトラフィックは、送信ノード、宛先ノード、および使用帯域の情報をもつものとする。この開示技術では、波長数と同数の新規光パス候補レイヤと、一つの既存光パスレイヤからなり、対象のトラフィックを収容した場合の消費電力の増分値を辺(ノード間をつなぐリンク)の重みとする補助グラフを作成する。そして、補助グラフ上で最小重み経路を求めることによって光パスの新設、既存の光パスの使用、およびその両方を考慮に入れて最小の電力増分となる各光パスの経路を求める。これにより、ネットワーク上のネットワーク機器の消費電力を抑えて効率的な光パスを設定できるようになる。
【0017】
補助グラフは以下の特徴を有する。
1.新規光パス候補レイヤ、既存光パスレイヤともに物理ノードの入力および出力に対応した2種類のノード(inノード、outノード)から構成され、各レイヤは物理ノード数の2倍のノードから構成される。
2.既存光パスレイヤは、同一の物理ノードに対応するinノードからoutノードへの辺をもち、ルータの消費電力増分値をその辺の重みとする。また、既存の光パスの始点物理ノードに対応するoutノードから既存の光パスの終点ノードに対応するinノードへの辺をもち、既存の光パスを使用することによる消費電力増分値を辺の重みとする。
3.新規光パス候補レイヤは、各物理ノードについて、光再生中継器が使用可能な場合、物理ノードに対応するinノードからoutノードへの辺をもち、光再生中継器を使用することによる消費電力増分値をその辺の重みとする。さらに、再生中継器なしで光パスを設定可能な二つの物理ノード間について、始点物理ノードに対応するoutノードから終点物理ノードに対応するinノードへの辺をもち、その物理ノード間で光パスを設定する場合に通過する光ファイバの消費電力増分値をその辺の重みとする。
4.異なるレイヤの同一物理ノードに対応する補助グラフ上のノードに対して辺をもつ。
【0018】
(ネットワークの全体構成)
図1は、実施の形態におけるネットワーク管理装置を含むネットワーク全体構成を示す図である。WDM等のネットワーク100には、ネットワーク管理装置101が設けられ、WDMネットワーク100のトラフィック毎の光パスの経路を決定する。図1に示すネットワーク管理装置101は、ネットワーク100全体を集中管理する制御サーバによりなる例としているが、これに限らず、ネットワーク管理装置101の機能を各ノードが分散管理する場合にも適用することができる。
【0019】
図1に示すように、物理ノードは、OXC102と、ルータ103から構成され、光ファイバ104を介して複数の物理ノードが相互に接続される。同じ場所に設置されたOXC102と、ルータ103は相互に接続されている。このOXC102と、ルータ103は、一体化されたものを用いることもできる。各OXC102には、光再生中継器(Regen)102aを含む。光再生中継器102aは、波長固定タイプ、あるいは波長非依存タイプのいずれであってもよい。
【0020】
(実施の形態1−補助グラフを毎回生成して経路計算する構成例)
図2は、実施の形態1におけるネットワーク管理装置の機能ブロック図である。この実施の形態2では、トラフィック発生毎に補助グラフを毎回生成しながら光パスの経路計算をおこなう構成について説明する。
【0021】
ネットワーク管理装置101は、現在のネットワーク状態の検出に基づいて補助グラフを作成する補助グラフ作成部201と、補助グラフ作成部201により作成された補助グラフ上の最小重み経路を、一般的なダイクストラ法等に基づき計算する最小重み経路計算部202と、最小重み経路計算部202の計算結果にしたがって新規光パスを設定する光パス設定部203と、各構成部の処理に必要な各種情報を格納する情報格納部204と、を含む。
【0022】
情報格納部204は、複数の情報を格納する。物理トポロジ情報格納部211は、ネットワークの物理ノードを構成するOXC102と、ルータ103の構成、および物理ノード相互の接続関係等の物理トポロジ情報を格納する。論理トポロジ情報格納部212は、現在の光パスの設定状態等の論理トポロジ情報を格納する。トラフィック情報格納部213は、ルーティング対象のトラフィック情報を格納する。電力モデル格納部214は、ネットワーク上の装置の消費電力モデル情報を格納する。ルーティング情報格納部215は、ネットワーク中に存在するトラフィックの全ルーティング情報を格納する。
【0023】
図3は、ネットワーク管理装置のハードウェア構成を示すブロック図である。図2に示したネットワーク管理装置101の各機能は、一般的なコンピュータ装置で構成することができる。たとえば、ネットワーク管理装置101は、CPU301と、ROM302と、RAMメモリ303と、ユーザインターフェース304と、通信インターフェース305と、補助記憶306と、を含む。CPU301、ROM302、RAM303、ユーザインターフェース304および通信インターフェース305は、バス310によって接続されている。
【0024】
CPU301は、ネットワーク管理装置101の全体の制御を司る。ROM302には、ネットワーク管理のプログラムが格納されてもよく、光パスの経路計算に関する処理プログラムを含んでもよい。CPU301がROM302に格納されたネットワーク管理のプログラムを実行することにより、光パスの計算処理を実行することができる。RAM303は、CPU301の処理実行時におけるワークエリアとして使用されてもよい。
【0025】
ユーザインターフェース304は、たとえば、ユーザからの操作入力を受け付けるキーボードなどによって実現することができる。出力デバイスは、たとえば、ディスプレイやスピーカなどによって実現することができ、ネットワークの管理情報等を画面表示や音等で出力する。通信インターフェース305は、たとえば、ネットワークの情報を収集するデータ入力ポート等によって実現することができる。補助記憶306は、不揮発性メモリや、ハードディスク、CD−ROM等によって実現することができる。補助記憶306には、ネットワーク管理のプログラムが格納されてもよく、光パスの経路計算に関する処理プログラムを含んでもよい。そして、CPU301は、補助記憶306に格納されたプログラムをRAM303に読み込み、実行してもよい。
【0026】
図2に示した補助グラフ作成部201、最小重み経路計算部202、光パス設定部203は、CPU301によって実現することができる。また、図2に示した情報格納部204は、たとえばRAM303や補助メモリ306によって実現することができる。そして、通信インターフェース305によるトラフィックの発生の検出に基づき、CPU301が補助グラフの作成から光パスの設定に至る一連の経路計算を実行する。
【0027】
(経路計算の概要)
図4は、実施の形態1におけるネットワーク管理装置の経路計算処理を示すフローチャートである。この実施の形態1では、トラフィック発生のたびに、物理トポロジ情報、論理トポロジ情報、電力モデル情報、ルーティング情報、およびトラフィック情報に基づいて毎回補助グラフを作成する。
【0028】
はじめに、トラフィックの発生を待機し(ステップS401:No)、トラフィックが発生すると(ステップS401:Yes)、補助グラフ作成部201は、情報格納部204に格納されている各種情報である物理トポロジ情報、論理トポロジ情報、電力モデル情報、ルーティング情報、およびトラフィック情報を取得する(ステップS402)。そして、補助グラフ作成部201は、取得した情報に基づき、トラフィック発生時におけるネットワーク状態を表す補助グラフを作成する(ステップS403)。この補助グラフの作成方法の詳細については後述する。
【0029】
つぎに、作成した補助グラフに対して最小重み経路計算部202は、最小重み経路計算をおこなう(ステップS404)。つぎに、光パス設定部203は、最小重み経路の結果から、光パスの新設が必要であるか否かを判断する(ステップS405)。発生したトラフィックに対する光パスの新設が必要な場合には(ステップS405:Yes)、このトラフィックに対する光パスの設定をおこない(ステップS406)、論理トポロジ情報格納部212に格納されている論理トポロジ情報の更新をおこなった上で(ステップS407)、ルーティング情報格納部215に格納されているルーティング情報の更新をおこない(ステップS408)、処理を終了する。ステップS405において、発生したトラフィックに対する光パスの新設が不要な場合には(ステップS405:No)、このトラフィックを含めたルーティング情報の更新をおこない(ステップS408)、処理を終了する。
【0030】
(補助グラフの作成方法)
上述した補助グラフの作成は、1台のルータ103の消費電力Prouter、1本の光ファイバ104の消費電力Pfiber、1台の光再生中継器102aの消費電力Pregenの消費電力を考慮しておこなう。Prouterは、1台のルータ103が処理をおこなう単位時間あたりのトラフィック量をBとすると、
Prouter=Mrouter(B) …(1)
と表すことができる。ここで、Mrouterはルータ103の消費電力モデルを意味する。
【0031】
Pfiberは、光ファイバ104中に存在する光増幅器の1波長あたりの消費電力をPamp、光増幅器の有効範囲(光増幅可能な距離)をRamp、光ファイバの長さをLとすると、
【0032】
【数1】

【0033】
と表すことができる。
【0034】
また、Pregenは、固定値とする。1波長の帯域をC、1本の光ファイバに多重する波長数をW、物理トポロジをGphysical=(Voxc,Efiber)、論理トポロジをGlogical=(Vrouter,Elightpath)とし、光再生中継器102aの有効範囲(光再生中継可能な距離)をRregenとし、発生したトラフィックは、vs∈Vrouterからvd∈Vrouter(s≠d)への帯域b(bps)の通信であるとする。上記有効範囲は、光信号品質の劣化許容値によって決まる規定値以下になるようにしなければならないという制約(光再生中継器の挿入制約)を示す。
【0035】
図5は、補助グラフ作成部の内部ブロック図である。上述した補助グラフは、一つの既存光パスレイヤと、W個の新規光パス候補レイヤから構成される。補助グラフ作成部201は、既存光パスレイヤを作成する既存光パスレイヤ作成部501と、新規光パス候補レイヤを作成する新規光パスレイヤ作成部502と、作成された各レイヤ間を接続するレイヤ間接続部503と、を含む。
【0036】
・既存光パスレイヤの作成
既存光パスレイヤは、以下の手順にしたがって作成する。
1.Vrouterに含まれるノードvi全てについて、それぞれ入力、出力に対応する2種類のノード(inノード、outノード)を作成する。既存光パスレイヤのinノードをvEi,inと表し、既存光パスレイヤのoutノードをvEi,outと表す。
2.Vrouterに含まれるノードvi全てについて、vEi,inからvEi,outへの辺を作成する。ノードviのルータ103が現時点で処理している単位時間あたりのトラフィック量をBとし、ルータ103の消費電力モデルをMirouterとすると、この辺の重みは、ルータ103の消費電力増分値に相当し、Mirouter(B+b)−Mirouter(B)とする。
3.Elightpathに含まれる既存の光パスei,jのうち空き帯域がトラフィックの帯域b以上あるものについて、vEi,outからvEj,inに辺を作成する。この辺の重みは、極小値εとする。
【0037】
図6は、既存光パスレイヤの作成手順を示すフローチャートである。既存光パスレイヤ作成部501が実行する作成処理を説明する。はじめに、既存光パスレイヤ作成部501は、物理トポロジ情報格納部211から複数の各物理ノードに対応するinノードと、outノードを作成する(ステップS601)。
【0038】
つぎに、対象とする物理ノードを一つ取り出し(ステップS602)、取り出した物理ノードに対応するinノードからoutノードへの辺を作成する(ステップS603)。つぎに、辺の重みをルータ103の消費電力増分値に設定する(ステップS604)。そして、全ての物理ノードを取り出したかを判断し(ステップS605)、取り出していなければ(ステップS605:No)、ステップS602に戻り、取り出していれば(ステップS605:Yes)、以下の処理に移行する。
【0039】
つぎに、空き帯域がトラフィックの帯域b以上ある既存の光パスを取り出し(ステップS606)、光パスの始点物理ノードに対応するoutノードから光パスの終点物理ノードに対応するinノードへの辺を作成する(ステップS607)。つぎに、辺の重みを極小値ε(たとえば、10-6)に設定する(ステップS608)。そして、空き帯域b以上の既存の光パスを全て取り出したかを判断し(ステップS609)、取り出していなければ(ステップS609:No)、ステップS606に戻り、取り出していれば(ステップS609:Yes)、処理を終了する。
【0040】
・新規光パスレイヤの作成
新規光パスレイヤは、各波長について、以下の手順にしたがって作成する。以下では、w∈Wについて新規光パスレイヤを作成するものとして説明する。
1.Voxcに含まれるノードvi全てについて、対応する2種類のノード(inノード、outノード)を作成する。ノードviに対応する波長w(=1…W)に対応した新規光パス候補レイヤのinノードをvN,wi,inと表し、波長wの新規光パス候補レイヤのoutノードをvN,wi,outと表す。
2.Voxcに含まれるノードvi全てについて、使用可能な光再生中継器102aが存在する場合には、vN,wi,inからvN,wi,outへの辺を作成する。この辺の重みは、光再生中継器102aの消費電力Pregenとする。
3.波長wを用いて光再生中継器102aなしで光パスを設定可能な始点ノード、終点ノードをそれぞれvi∈Voxc,vj∈Voxcとすると、vN,wi,outからvN,wj,inへの辺を作成する。この辺の重みは、viからvjまで、光パスを設定する際に通過する光ファイバ104の消費電力の総和とする。
【0041】
図7は、新規光パスレイヤの作成手順を示すフローチャートである。新規光パスレイヤ作成部502が実行する作成処理を説明する。新規光パス候補レイヤの数は、光ネットワーク上で用いる波長数と同数(図示の例では波長1,2の二つ)となるよう作成する。はじめに、新規光パスレイヤ作成部502は、物理トポロジ情報格納部211から複数の各物理ノードに対応するinノードと、outノードを作成する(ステップS701)。
【0042】
つぎに、対象とする物理ノードを一つ取り出し(ステップS702)、この物理ノードで光再生中継器102aが使用可能であるかを判断する(ステップS703)。使用可能であれば(ステップS703:Yes)、取り出した物理ノードに対応するinノードからoutノードへの辺を作成し(ステップS704)、辺の重みを光再生中継器102aの一つあたりの消費電力に設定する(ステップS705)。一方、ステップS703において光再生中継器102aが使用可能でなければ(ステップS703:No)、ステップS706に移行する。
【0043】
つぎに、全ての物理ノードを取り出したかを判断し(ステップS706)、取り出していなければ(ステップS706:No)、ステップS702に戻り、取り出していれば(ステップS706:Yes)、以下の処理に移行する。
【0044】
つぎに、物理ノードを2個取り出し(ステップS707)、取り出した始点ノードから終点ノードまでの最短経路を計算する(ステップS708)。そして、最短経路長が光再生中継器102aの有効範囲内かを判断する(ステップS709)。有効範囲内であれば(ステップS709:Yes)、始点物理ノードに対応するoutノードから終点物理ノードに対応するinノードへの辺を作成し(ステップS710)、辺の重みを最短経路が通過する光ファイバ104の電力増分値の総和に設定する(ステップS711)。一方、ステップS709において、有効範囲内でなければ(ステップS709:No)、ステップS712に移行する。
【0045】
つぎに、全ての物理ノードの組み合わせを取り出したかを判断し(ステップS712)、取り出していなければ(ステップS712:No)、ステップS707に戻り、取り出していれば(ステップS712:Yes)、処理を終了する。
【0046】
・各レイヤ間の接続方法
各レイヤ間を結ぶ辺は、下記いずれかの手順1.2.にしたがって作成する。
1.w∈Wの全ての波長について、vN,wi,inからvEi,inへの辺と、vEi,outからvN,wi,outへの辺を作成する。どちらの辺も、その重みは極小値εとする。
2.Voxcに含まれる全てのノードviについて、全ての波長wについてvEi,inからvN,wi,outへの辺を作成する。また、波長w以外の波長x全てについて、vN,wi,inからvN,xi,outへの辺を作成する。さらに、vN,wi,inからvEi,outへの辺を作成する。全ての辺について、その重みをMirouter(B+b)−Mirouter(B)とする。
【0047】
図8−1は、各レイヤ間の接続の作成手順の一例を示すフローチャートである。レイヤ間接続部503が実行する上記1.の作成手順を示す。はじめに、物理ノードを一つ取り出し(ステップS801)、物理ノードの波長を一つ選択する(ステップS802)。そして、取り出した物理ノードの選択した波長に対応する新規光パス候補レイヤのinノードから既存光パスレイヤの取り出した物理ノードに対応するinノードへの辺を作成する(ステップS803)。そして、作成した辺の重みを極小値εに設定する(ステップS804)。
【0048】
この後、既存光パスレイヤの取り出した物理ノードに対応するoutノードから取り出した物理ノードの選択した波長に対応する新規光パス候補レイヤのoutノードへの辺を作成する(ステップS805)。そして、作成した辺の重みを極小値εに設定する(ステップS806)。
【0049】
この後、全ての波長を選択したか判断し(ステップS807)、全ての波長を選択していなければ(ステップS807:No)、ステップS802に戻り、全ての波長を選択していれば(ステップS807:Yes)、つぎに、全ての物理ノードを取り出したか判断し(ステップS808)、全ての物理ノードを取り出していなければ(ステップS808:No)、ステップS801に戻り、全ての物理ノードを取り出していれば(ステップS808:Yes)、処理を終了する。
【0050】
図8−2は、各レイヤ間の接続状態を示す図である。図8−1に示した作成手順に基づく各レイヤ間の接続状態について、一つの物理ノードvxに対応した補助グラフ上のノード、およびレイヤ間を接続する辺を示している。図中実線矢印がレイヤ間を接続する辺を表している。図示のように、レイヤ間の辺は、複数の新規光パス候補レイヤのinノードから既存光パスレイヤのinノードへの辺821と、既存光パスレイヤのoutノードの辺から複数の新規光パス候補レイヤのoutノードへの辺822とを含む。
【0051】
図8−3は、各レイヤ間の接続の作成手順の他の例を示すフローチャートである。レイヤ間接続部503が実行する上記2.の作成手順を示す。はじめに、物理ノードを一つ取り出し(ステップS811)、補助グラフ上のレイヤを二つ選択する(ステップS812)。選択したレイヤをx,yとする。
【0052】
そして、レイヤxの物理ノードに対応するinノードからレイヤyの物理ノードに対応するoutノードへの辺を作成する(ステップS813)。そして、作成した辺の重みをルータ103の消費電力増分値に設定する(ステップS814)。
【0053】
この後、レイヤyの物理ノードに対応するinノードからレイヤxの物理ノードに対応するoutノードへの辺を作成する(ステップS815)。そして、作成した辺の重みをルータ103の消費電力増分値に設定する(ステップS816)。
【0054】
この後、全てのレイヤの組み合わせを選択したか判断し(ステップS817)、全てのレイヤの組み合わせを選択していなければ(ステップS817:No)、ステップS812に戻り、全てのレイヤの組み合わせを選択していれば(ステップS817:Yes)、つぎに、全ての物理ノードを取り出したか判断し(ステップS818)、全ての物理ノードを取り出していなければ(ステップS818:No)、ステップS811に戻り、全ての物理ノードを取り出していれば(ステップS818:Yes)、処理を終了する。
【0055】
(補助グラフの作成例)
つぎに、上述した補助グラフの作成例について作成の手順に沿って説明する。図9−1は、補助グラフを作成する対象のネットワーク状態を示す図である。図9−1に示すネットワークは、4ノードから構成され、リンクに示される数字は光ファイバの長さを示す。図9−2は、光パスの情報を示す図である。1本の光ファイバには最大2波長多重でき、波長1(λ1)を用いて始点ノード1−終点ノード4間に、物理ノード1−2−4の経路の光パスが設定されている。また、波長2(λ2)を用いて始点ノード2−終点ノード3間に、物理ノード2−4−3の経路の光パスが設定されているものとする。1−4間の光パスの空き帯域は5Gbpsであり、2−3間の光パスの空き帯域は7Gbpsとする。ここで、光再生中継器102aの有効範囲Rregen=1500、光増幅器の有効範囲Ramp=80とする。
【0056】
図10は、電力モデル格納部に格納される情報を示す図表である。電力モデル格納部214には、ルータ103の電力モデルと、光再生中継器102aの電力モデルと、光ファイバ104中に存在する光増幅器の電力モデルが格納されている。ルータ103の電力モデルは、固定分消費電力と、通信速度に対応する線形増加分消費電力からなる。光再生中継器102a、および光増幅器の電力モデルは、それぞれ一個あたりの消費電力からなる。
【0057】
図11は、トラフィック情報格納部に格納される情報を示す図表である。トラフィック情報格納部213には、新たに発生したトラフィックが、始点物理ノード2から終点物理ノード4までで、要求帯域が4Gbpsであるという情報が格納されている。
【0058】
以下、この新たに発生したトラフィックが使用する光パスと、経路を計算する例について説明する。各ノードには波長専用の光再生中継器102aを波長毎に一個もっているものとする。つまり、図9−1に示したように、ノード2の波長1用の光再生中継器102aは使用されており、また、ノード4の波長2用の光再生中継器102aも使用されている。ただし、光再生中継器102aが各波長毎に専用であるか否かは補助グラフ作成方法を制限するものではなく、光再生中継器102aに波長依存性がない場合であっても、補助グラフの作成に適用可能である。
【0059】
図12は、既存光パスレイヤの作成結果を示す図である。図6に示した作成手順にしたがい、まず、各ノードに対応したinノード,outノードを作成する。この例では、ノード1から4への光パスと、ノード2からノード3への光パスが設定されているため、1,outから4,inへの辺と、2,outから3,inへの辺を作成する。
【0060】
図13は、既存光パスレイヤにおける辺の情報を示す図表である。ルーティング対象となるトラフィックは、図11に示したように4Gbpsであり、ルータ103の消費電力は、図10に示したようにトラフィック量に対して線形に増加し、その増加量は1Gbpsあたり20Wであるため、1,inから1,outへの辺の重みは80(20×4)となる。一方、ノード1からノード4、およびノード2からノード3へのそれぞれの既存の光パスに対応する辺の重みは極小値εとなる。
【0061】
図14は、各波長毎の接続関係を示す図である。波長1について注目すると、ノード1からノード2へと、ノード2からノード4へは直接の接続関係がないことが分かる。これは、既に図9−1に示すように、ノード1からノード4へ1−2−4を通る光パスが設定されているためである。同様にして、波長2について注目すると、ノード2からノード4へと、ノード4からノード3へは直接の接続関係がないことが分かる。これは、既に図9−1に示すように、ノード2からノード3へ2−4−3を通る光パスが設定されているためである。このように、物理トポロジ上の接続関係から光パスで使われているリンクを波長毎に取り除くことによって、図14に示すように波長毎の接続関係を得ることができる。
【0062】
図15は、波長1についての全ノード間の最短経路とその経路長を示す図表である。図14に示した各波長毎の接続関係のグラフから、各波長毎に全ノード間の最短経路を求め、最短経路長が光再生中継器102aの有効範囲(Rregen=1500)以下となる2ノード間を抽出する。たとえば、図15に示す波長1について、始点ノード1〜終点ノード2への直接の光パスは1−3−4−2が最短経路となる。また、光再生中継器102aの有効範囲(Rregen=1500)を超える経路長の光パスは、辺を作成できないため、図中×印を付している。
【0063】
図16は、新規光パス候補レイヤの作成結果を示す図である。つぎに、図15に示す結果に基づき、新規光パス候補レイヤを作成する。図16に示す新規光パス候補レイヤのグラフは、各波長毎に図15に示すような情報を作成して得る。図16に示すように、最短経路長が光再生中継器102aの有効範囲(Rregen)以下(すなわち光再生中継器102aが不要)となる始点物理ノードに対応するoutノードから終点物理ノードに対応するinノードに辺をもつ。
【0064】
さらに、光再生中継器102aが使用可能なノードのinノードからoutノードには辺をもつことになる。たとえば、図9−1に示す波長1の光パスの経路長が1600であるため、ノード2では、波長1用の光再生中継器102aを既に使用している。このため、図16の波長1では、2,inから2,outへの辺をもたないが、ノード1には使用可能な波長1用の光再生中継器102aが存在するため1,inから1,outへの辺をもっている。
【0065】
図17は、波長1に対応する新規光パス候補レイヤの情報を示す図表である。1,inから1,outへの辺は、光再生中継器102aの消費電力の増分値を重みとしてもち、ここでは電力モデル格納部214に格納された情報により重みは50となる。1,outから4,inの辺は、1−3−4という経路を用いて光再生中継器102aなしで光パスを設定できることを示している。この辺の重みは、1−3の光ファイバ長400と、3−4の光ファイバ長1000から各光ファイバ104に存在する光増幅器の個数の合計の消費電力Pampを求め、これらの和とするので、上記式(2)に基づき、
【0066】
【数2】

【0067】
となる。(図10によりPamp=5)
【0068】
図18は、図8−1に示したレイヤ間の接続方法により各レイヤ間を接続した場合の補助グラフの作成結果を示す図である。最終的に作成した補助グラフでは、各新規光パス候補レイヤのinノードから対応する既存光パスレイヤのinノードへの辺と、既存光パスレイヤのoutノードから対応する全ての波長における新規光パス候補レイヤのoutノードへの辺を有する。
【0069】
(補助グラフ上での経路計算)
到着したトラフィックがvs∈Vrouterからvd∈Vrouter(s≠d)への帯域b(bps)の通信であったとき、上記の補助グラフ上でノードvEs,inからvEd,outまでの経路をダイクストラ法などを用いることによって、消費電力の増分値が最も小さい経路(最小重み経路)を求めることができる。
【0070】
たとえば、ノード2からノード4までの経路については、vE2,inからvE4,outまでの最小重み経路を求めることになる。最小重み経路が得られると、つぎには、得られた経路をたどることによって、新規に設定すべき光パスを求める。これは、得られた補助グラフ上の最小重み経路から、同一波長の新規光パス候補レイヤ内で連続する最長区間(群)を調べることと同じである。つまり、得られた区間の始まるノードから、得られた区間の終わるノード間に新しい光パスが必要であることを示している。
【0071】
図19は、新規光パス経路を補助グラフ上から求める手順を示すフローチャートである。光パス設定部203がおこなう処理について説明する。はじめに、補助グラフ作成部201により求めた補助グラフ上の最小重み経路の最初の辺を選択する(ステップS1901)。つぎに、選択した辺が既存光パスレイヤのoutノードから新規光パス候補レイヤのoutノードへの辺であるかを判断する(ステップS1902)。
【0072】
選択した辺が既存光パスレイヤのoutノードから新規光パス候補レイヤのoutノードへの辺であれば(ステップS1902:Yes)、対応する物理ノードをn、新規光パス候補レイヤに対応する波長をxとし(ステップS1903)、ステップS1907に移行する。
【0073】
一方、選択した辺が既存光パスレイヤのoutノードから新規光パス候補レイヤのoutノードへの辺でなければ(ステップS1902:No)、選択した辺が新規光パス候補レイヤのinノードから既存光パスレイヤのinノードへの辺であるか判断する(ステップS1904)。
【0074】
選択した辺が新規光パス候補レイヤのinノードから既存光パスレイヤのinノードへの辺であれば(ステップS1904:Yes)、対応する物理ノードをm、新規光パス候補レイヤに対応する波長をyとする(ステップS1905)。そして、光パス設定部203は、物理ノードnから物理ノードmへの新規光パスが必要と判断し(ステップS1906)、ステップS1907に移行する。一方、選択した辺が新規光パス候補レイヤのinノードから既存光パスレイヤのinノードへの辺でなければ(ステップS1904:No)、ステップS1907に移行する。
【0075】
ステップS1907では、上記処理で選択した辺が求めた補助グラフ上の最小重み経路の最後の辺であるか判断する(ステップS1907)。選択した辺が求めた補助グラフ上の最小重み経路の最後の辺であれば(ステップS1907:Yes)、処理を終了するが、選択した辺が求めた補助グラフ上の最小重み経路の最後の辺でなければ(ステップS1907:No)、補助グラフ上の最小重み経路において一つ次の辺を選択し(ステップS1908)、ステップS1902に戻り、ステップS1902以降の処理をおこなう。
【0076】
図20−1は、光パスの最小重み経路を示す図である。図20−1には、ノード2からノード4までの消費電力の増分値が最小となる経路を示す。図20−1の中の太線で示す経路が最小重み経路として求まる。この際、図13および図17に示す辺の重みを用いてダイクストラ法などの方法により最小重み経路が求められる。図20−1に示した最小重み経路は、vE2,in→vE2,out→vE3,in→vE3,out→vN,13,out→vN,14,in→vE4,in→vE4,outであることが示されている。この最小重み経路に含まれる同一波長の新規光パス候補レイヤ内において連続する最長区間はvN,13,out→vN,14,inである。よって、ノード3からノード4への光パスの新設が必要になることが分かる。この光パスが通過する物理経路および光再生中継器102aを使用する必要があるノードは、得られた区間内の辺を調べることによって分かる。
【0077】
まず、新規光パス候補レイヤにおいて、同一物理ノードに対応するinノードからoutノードまでの辺を通過していないことから、光再生中継器102aの使用が必要でないことが分かる。vN,13,out→vN,14,inを通過していることにより、この光パスは、ノード3−4という経路を使用することが分かる。これは、vN,13,out→vN,14,inの辺は、ノード3−4を通過する光パスの経路長が1000であり、光再生中継器102aの有効範囲(Rregen=1500)以下のためである。
【0078】
そして、補助グラフ上の最小重み経路の結果により、ノード2からノード4までの4Gbpsの新規のトラフィックでは、ノード3−4の光パスを波長1で新規に設定する。そして、図13に示した既存の2−4−3という物理経路を通り波長2を使用する2−3の光パスを通過させる。この後、新たに設定したノード3−4の光パスが波長1を用いてノード4に至る経路となる。なお、ノード3において、使用する波長が波長2から波長1に変更される。
【0079】
図20−2は、他の光パスの最小重み経路を示す図である。図18で示された補助グラフにおいてノード1からノード4までの4Gbpsのトラフィックの経路を計算した結果を示す。図20−2に示す太線で示す経路が消費電力の増分値が最小となる経路として得られる。この場合、既存光パスレイヤ上の辺のみを通過するため、新規の光パスの設定はおこなわれない。
【0080】
上述した実施の形態1によれば、光再生中継器の挿入制約および光再生中継器の消費電力増加を考慮して、光パスを新設することができる。特に、既存の光パスを使用する場合、およびその両者を組み合わせた場合の全てを考慮して最小の消費電力増分値となる経路を計算することができる。また、光再生中継器の存在を前提としているため、より現実的で、大規模なWDMネットワークにおいて最小電力経路を求めることができる。また、光パスの経路をグラフの最小重み経路に基づき得るため、全探索手法と比較して高速に処理が実行でき効率的に光パスを設定できる。
【0081】
(実施の形態2−補助グラフを更新して経路計算する構成例)
図21は、実施の形態2におけるネットワーク管理装置の機能ブロック図である。この実施の形態2では、作成した補助グラフを更新して光パスの経路計算をおこなう構成について説明する。図21に示すように、補助グラフ作成部201と、最小重み経路計算部202と、光パス設定部203と、情報格納部204の構成は実施の形態1(図2)と同様である。実施の形態1と比べて、情報格納部204に補助グラフ格納部2102を設けた点が異なる。補助グラフ作成部201により作成された補助グラフは、補助グラフ格納部2102に格納され、以降の新規の光パス設定毎に読み出して更新(変更)処理され、再度、補助グラフ格納部2102に格納される。
【0082】
図22は、実施の形態2におけるネットワーク管理装置の経路計算処理を示すフローチャートである。はじめに、トラフィックの発生を待機し(ステップS2201:No)、トラフィックが発生すると(ステップS2201:Yes)、補助グラフ作成部201は、情報格納部204に格納されている電力モデル情報、ルーティング情報、トラフィック情報、および補助グラフを取得する(ステップS2202)。つぎに、補助グラフ作成部201は、取得した情報に基づき、補助グラフの変更をおこなう(ステップS2203)。この補助グラフの変更は、ルーティング対象のトラフィックにあわせて、補助グラフ中の辺の削除、辺の重みの変更をおこなう操作になる。
【0083】
つぎに、変更した補助グラフに対して最小重み経路計算部202は、最小重み経路計算をおこなう(ステップS2204)。つぎに、光パス設定部203は、最小重み経路の結果から、光パスの新設が必要であるか否かを判断する(ステップS2205)。発生したトラフィックに対する光パスの新設が必要な場合には(ステップS2205:Yes)、このトラフィックに対する光パスの設定をおこない(ステップS2206)、補助グラフを補助グラフ格納部2102に格納する更新をおこなった上で(ステップS2207)、ルーティング情報格納部215に格納されているルーティング情報の更新をおこない(ステップS2208)、処理を終了する。ステップS2205において、発生したトラフィックに対する光パスの新設が不要な場合には(ステップS2205:No)、このトラフィックを含めたルーティング情報の更新をおこない(ステップS2208)、処理を終了する。
【0084】
このように、実施の形態2では、毎回補助グラフを作成する必要が無く、作成した補助グラフは、補助グラフ格納部2102に格納される。なお、実施の形態1では、論理トポロジ情報の更新をおこなって、毎回補助グラフを作成する処理であるのに対し、実施の形態2では、補助グラフを読み出し、補助グラフを更新処理する点が異なっている。
【0085】
上述した補助グラフの更新の概要について説明する。補助グラフ上での最小重み経路を計算し、新規に設定すべき光パスが求まった後、光パスの設定にあわせてこの補助グラフを更新する。既存光パスレイヤの作成時に、対象のトラフィックが収容できない既存光パスに対応する辺が既存光パスレイヤから削除されるが、その削除した辺を復元する。つぎに、既存光パスレイヤ上の異なる物理ノードに対応するinノードからoutノードへの辺の属性として保持している空き帯域の値からルーティング対象のトラフィックが使用する帯域の値を引く。さらに、新規に光パスを設定する始点ノードに対応する既存光パスレイヤ上のoutノードから、新規に光パスを設定する終点ノードに対応する既存光パスレイヤ上のinノードに新たに辺を作成する。最後に、使用可能な光再生中継器102aが無くなった場合にはそれに対応する辺を削除し、さらに、新規に設定する光パスが使用する波長でその光パスが使用するリンクが使用できなくなることによって、光再生中継器102aなしで光パスを設定できなくなる2ノード間に対応する新規光パス候補レイヤの辺を削除する。
【0086】
図23は、補助グラフの更新処理を示すフローチャートである。補助グラフ作成部201がおこなう図22のステップS2207における補助グラフの更新の処理について詳細に説明する。はじめに、空き帯域がトラフィックの帯域b以下の既存光パスに対応する辺を既存光パスレイヤ上に復元する(ステップS2301)。つぎに、新規に設定する光パスを一つ取り出し(ステップS2302)、取り出した光パスに対応する辺を既存光パスレイヤ上に作成する(ステップS2303)。この後、新規に設定する光パスを全て取り出したか判断し(ステップS2304)、全て取り出していなければ(ステップS2304:No)、ステップS2302に戻り、全て取り出していれば(ステップS2304:Yes)、つぎの処理に移行する。
【0087】
つぎに、経路として使用する光パス(既存、新規双方)の空き帯域の値から対象トラフィックの帯域を引き、空き帯域を更新する(ステップS2305)。そして、使用不可能な光再生中継器102aに対応する新規光パスレイヤ上の辺を削除する(ステップS2306)。つぎに、波長を一つ選択し(ステップS2307)、選択した波長に対応する新規光パス候補レイヤを再作成する(ステップS2308)。この後、全波長を選択したか判断し(ステップS2309)、全波長を選択していなければ(ステップS2309:No)、ステップS2307に戻り、全波長を選択していれば(ステップS2309:Yes)、処理を終了する。
【0088】
以上の処理に基づき、たとえば、上述した図19と同様の最小重み経路が求められたとき、この後に、補助グラフ作成部201は、以下の処理をおこなう。図24は、更新した補助グラフを示す図である。
1.ノード3−4の光パスが新規作成されるので、既存光パスレイヤの3,outから既存光パスレイヤの4,inへの辺を作成する。
2.ノード3−4の光パスは波長1を使い、ノード3−4という物理経路を使用するため、波長1の新規光パス候補レイヤ上の辺のうち、波長1において、ノード3から4のリンクが使用できなくなる。これに基づき、光再生中継器102aなしで光パスを設定できなくなる2ノード間に対応する辺、すなわち、3,outから4,inへの辺を削除する。以上の更新後の情報(図24相当)を情報格納部204の補助グラフ格納部2102に再格納する。
【0089】
以上説明した実施の形態2においても、実施の形態1同様に、光再生中継器の挿入制約および光再生中継器の消費電力増加を考慮して、光パスを新設することができる。特に、既存の光パスを使用する場合、およびその両者を組み合わせた場合の全てを考慮して最小の消費電力増分値となる経路を計算することができる。また、光再生中継器の存在を前提としているため、より現実的で、大規模なWDMネットワークにおいて最小電力経路を求めることができる。また、光パスの経路をグラフの最小重み経路に基づき得るため、全探索手法と比較して高速に処理が実行でき効率的に光パスを設定できる。加えて、実施の形態2によれば、補助グラフの一部を変更して用いるため、光パスが発生する毎に補助グラフを作成する必要が無く補助グラフの作成にかかる所定の手間を省くことができるようになる。
【0090】
(実施の形態3−波長変換可能な光ネットワークへの適用例)
実施の形態1,2では、光再生中継器が存在する光ネットワークにおいて、消費電力の増分値が最も小さくなる経路を求める構成について説明した。実施の形態3では、物理ノードに波長変換器が設けられて波長変換が可能な光ネットワークに適用し、消費電力の増分値が最も小さくなる経路を求める構成例について説明する。
【0091】
実施の形態1,2では、1個の既存光パスレイヤと、波長数と同数の新規光パス候補レイヤからなる補助グラフを作成し、補助グラフ上の最小重み経路問題に問題を帰着させることにより所望の解を得ている。そして、補助グラフ上のノードは、既存光パスレイヤ上の辺と、新規光パス候補レイヤ上の辺と、レイヤ間を接続する辺とを含む。実施の形態3では、レイヤ間を接続する辺の作成方法を変更することにより、波長変換を含む光パスの設定を可能としている。
【0092】
図25は、実施の形態3による各レイヤ間の接続状態を示す図である。一つの物理ノードvxに対応した補助グラフ上のノード、およびレイヤ間を接続する辺を示し、実線矢印がレイヤ間を接続する辺を表している。そして、レイヤ間の辺は、実施の形態1(図8−2)と同様に、複数の新規光パス候補レイヤのinノードから既存光パスレイヤのinノードへの辺821と、既存光パスレイヤのoutノードの辺から複数の新規光パス候補レイヤのoutノードへの辺822を含む。
【0093】
そして、実施の形態3では、さらに、新規光パス候補レイヤのinノードから別の波長に対応する新規光パス候補レイヤのoutノードへの辺2501を含む。新たにこの辺2501を設けることにより、一つの光パスにおいて、中間ノードで別の波長に波長変換されることを表現することができるようになり、波長変換が可能なネットワークへの適用が可能になる。
【0094】
上述したように、実施の形態3の構成は、実施の形態1,2に対し、レイヤ間の辺の作成方法のみが異なるため、波長変換が存在する場合のレイヤ間の辺の作成方法の詳細について説明する。以下、波長変換器1個あたりの消費電力をPconvと表すものとし、
(a)入力波長に関係なく任意の波長に波長変換可能である場合
(b)入力波長によって出力波長に制約がある場合
について、それぞれレイヤ間の辺の作成方法について説明する。
【0095】
(a)任意の波長への波長変換が可能な場合のレイヤ間の辺
レイヤ間接続部503は、各物理ノードに対応する補助グラフ上のノードに対し、以下の処理でレイヤ間の辺を作成する。1本の光ファイバに多重する波長数をW、入力される波長をp、変換後の波長をqとし、
1.p∈Wの全ての波長について、vN,pi,inからvEi,inへの辺(新規光パス候補レイヤから既存光パスレイヤへの辺)を作成する。辺の重みは極小値に設定する。
2.p∈Wの全ての波長について、vE,i,outからvN,pi,outへの辺(既存光パス候補レイヤから既存光パスレイヤへの辺)を作成する。辺の重みは極小値に設定する。
3.p∈W、q∈Wの全ての波長について、波長pを入力波長として設定可能な波長変換器が使用可能であれば、vN,pi,inからvN,qi,outへの辺(新規光パス候補レイヤから別の新規光パス候補レイヤへの辺)を作成する。辺の重みは波長変換器の消費電力Pconvとする。波長数W=4の場合、ノードxについてのレイヤ間の辺の作成結果は、図25に示した状態となる。
【0096】
(b)入力波長によって出力波長に制約がある場合のレイヤ間の辺
レイヤ間接続部503は、各物理ノードに対応する補助グラフ上のノードに対し、以下の処理でレイヤ間の辺を作成する。
1.p∈Wの全ての波長について、vN,pi,inからvEi,inへの辺(新規光パス候補レイヤから既存光パスレイヤへの辺)を作成する。辺の重みは極小値に設定する。
2.p∈Wの全ての波長について、vE,i,outからvN,pi,outへの辺(既存光パス候補レイヤから既存光パスレイヤへの辺)を作成する。辺の重みは極小値に設定する。
3.p∈W、q∈Wの全ての波長について、波長pを入力波長として設定可能な波長変換器が使用可能であり、かつ、その波長変換器が入力波長pを波長qに変換可能であれば、vN,pi,inからvN,qi,outへの辺(新規光パス候補レイヤから別の新規光パス候補レイヤへの辺)を作成する。辺の重みは波長変換器の消費電力Pconvとする。
【0097】
図26は、入力波長によって出力波長に制約がある場合のレイヤ間の接続状態を示す図である。波長数W=4、波長変換制約のパラメータk=2、入力波長pに対して波長変換可能な出力波長qがmax(1,p−k)≦q≦min(W,p+k)である場合のノードxについてのレイヤ間の辺の作成結果を示す。つまり、入力波長pに対してp±kの範囲で波長変換が可能な場合を示している。図26に示す例では、隣接する新規光パス候補レイヤ間で他の波長に対し1波長および2波長までの波長変換が可能であり、2波長の変換は辺2601に相当する。
【0098】
図27は、実施の形態3による各レイヤ間の接続の作成手順の一例を示すフローチャートである。レイヤ間接続部503は、はじめに、物理ノードを一つ取り出し(ステップS2701)、物理ノードの波長を一つ選択する(ステップS2702)。そして、取り出した物理ノードの選択した波長に対応する新規光パス候補レイヤのinノードから既存光パスレイヤの取り出した物理ノードに対応するinノードへの辺を作成する(ステップS2703)。そして、作成した辺の重みを極小値εに設定する(ステップS2704)。
【0099】
この後、既存光パスレイヤの取り出した物理ノードに対応するoutノードから取り出した物理ノードの選択した波長に対応する新規光パス候補レイヤのoutノードへの辺を作成する(ステップS2705)。そして、作成した辺の重みを極小値εに設定する(ステップS2706)。
【0100】
この後、全ての波長を選択したか判断し(ステップS2707)、全ての波長を選択していなければ(ステップS2707:No)、ステップS2702に戻り、全ての波長を選択していれば(ステップS2707:Yes)、異なる二つの波長(x,y)を選択する(ステップS2708)。
【0101】
そして、選択した二つの波長について、波長xから波長yへの波長変換が可能であるか判断する(ステップS2709)。波長xから波長yへの波長変換が可能であれば(ステップS2709:Yes)、波長xに対応する新規光パス候補レイヤ上の物理ノードに対応するinノードから波長yに対応する新規光パス候補レイヤ上の物理ノードに対応するoutノードまでの辺を作成する(ステップS2710)。一方、ステップS2709において、波長xから波長yへの波長変換が可能でなければ(ステップS2709:No)、ステップS2712に移行する。
【0102】
つぎに、辺の重みを波長変換器の消費電力に設定し(ステップS2711)、ステップS2712に移行する。ステップS2712では、全ての異なる二つの波長の組み合わせを選択したか判断し(ステップS2712)、全ての異なる二つの波長の組み合わせを選択していれば(ステップS2712:Yes)、つぎに、全ての物理ノードを取り出したか判断する(ステップS2713)。ステップS2712において、全ての異なる二つの波長の組み合わせを選択していなければ(ステップS2712:No)、ステップS2708に戻る。
【0103】
そして、ステップS2713において、全ての物理ノードを取り出していなければ(ステップS2713:No)、ステップS2701に戻り、全ての物理ノードを取り出していれば(ステップS2713:Yes)、処理を終了する。
【0104】
つぎに、補助グラフ上での経路計算について説明する。実施の形態3でも実施の形態1の説明と同様に、発生したトラフィックが、vs∈Vrouterからvd∈Vrouter(s≠d)へのトラフィックであった場合、最小重み経路計算部202は、補助グラフ作成部201で作成された補助グラフ上の既存光パスレイヤのノードvEs,inからvEd,outまでの最小重み経路を求めることで、電力増加が最小となる経路を求めることができる。すなわち、新規光パス経路を補助グラフ上から求める手順は、実施の形態1(図19参照)と同様の処理となる。
【0105】
最小重み経路が得られたら、つぎは、得られた補助グラフ上の最小重み経路をたどることによって、新規に設定すべき光パスを求める。このとき、波長変換が可能な場合には、得られた経路のたどり方が実施の形態1と異なる。
【0106】
実施の形態1では、同一の波長に対応する新規光パス候補レイヤ内で連続する最長の区間を求めていた。これによって、得られた区間が開始する補助グラフ上のノードに対応する物理ノードから得られた区間が終了する補助グラフ上のノードに対応する物理ノードの間に新規の光パスの設定が必要であることが分かる。これは、波長変換がないため、一つの光パスならば同じ波長を使用するためである。
【0107】
一方、実施の形態3では、どの波長に対応する新規光パス候補レイヤかは関係なく、新規光パス候補レイヤ内で連続する最長の区間を求める。つまり、既存光パスレイヤのoutノードから新規光パス候補レイヤのinノードへの辺をたどったあと、新規光パス候補レイヤのinノードから既存光パスレイヤのinノードをたどるまでに通過する区間が、新規光パス候補レイヤ内で連続する最長の区間である。これによって、得られた区間が開始する補助グラフ上のノードに対応する物理ノードから得られた区間が終了する補助グラフ上のノードに対応する物理ノードの間に新規の光パスの設定が必要であることが分かる。これは、波長変換が可能なため、一つの光パスであっても使用波長を変更できるためである。
【0108】
上述した実施の形態3によれば、実施の形態1の効果に加えて、波長変換が可能な光ネットワークに適用し、消費電力の増分値が最も小さくなる経路を求めることができるようになる。すなわち、光再生中継器の挿入制約および光再生中継器での波長変換の有無、光再生中継器の消費電力増加を考慮して、光パスを新設することができる。
【0109】
上述した各実施の形態に関し、さらに以下の付記を開示する。
【0110】
(付記1)光ネットワーク上の既存の光パスと、発生したトラフィックを収容可能な新規の光パスの候補についてノード間を接続したグラフからなり、前記光パスのノード間の各辺に、当該光パス上に設けられるネットワーク機器の電力消費増分に対応した値の重みを付与した補助グラフを作成する補助グラフ作成部と、
前記補助グラフ作成部により作成された前記補助グラフに基づき、最小重み経路を求める経路計算部と、
を備えたことを特徴とするネットワーク管理装置。
【0111】
(付記2)前記補助グラフ作成部は、前記補助グラフが新規の光パスの候補のグラフからなる新規光パス候補レイヤと、既存の光パスのグラフからなる既存光パスレイヤとにレイヤ分けして作成することを特徴とする付記1に記載のネットワーク管理装置。
【0112】
(付記3)前記補助グラフ作成部は、前記新規光パス候補レイヤの数を、光ネットワーク上で用いる波長数と同数として設けることを特徴とする付記2に記載のネットワーク管理装置。
【0113】
(付記4)前記補助グラフ作成部は、前記新規光パス候補レイヤについて、一つの物理ノードにつき入力および出力の2種類のノードを作成し、前記2種類のノード間の辺の有無を前記ネットワーク機器としての再生中継器の使用可能の有無に対応づけ、前記2種類のノード間の辺の前記再生中継器が使用可能であるとき、当該再生中継器の消費電力に対応した値の重みを前記2種類のノード間の辺に付与することを特徴とする付記2または3に記載のネットワーク管理装置。
【0114】
(付記5)前記補助グラフ作成部は、前記新規光パス候補レイヤとして、前記再生中継器を使用せずに光パスを設定可能な2ノード間に辺を作成することを特徴とする付記2〜4のいずれか一つに記載のネットワーク管理装置。
【0115】
(付記6)前記補助グラフ作成部は、前記補助グラフとして、同一物理ノードに対応する新規光パス候補レイヤと既存光パス候補レイヤのノード間をそれぞれつなぐ辺を作成することを特徴とする付記2〜5のいずれか一つに記載のネットワーク管理装置。
【0116】
(付記7)前記光ネットワーク上で波長変換が可能な場合、
前記補助グラフ作成部は、前記新規光パス候補レイヤ内のノードから、同一の前記物理ノードに対応する異なる新規光パス候補レイヤのノードへの辺を作成することを特徴とする付記2〜6のいずれか一つに記載のネットワーク管理装置。
【0117】
(付記8)前記物理ノードに波長変換器が設けられ、当該波長変換器が入力波長に関係なく任意の出力波長に変換可能な場合、
前記補助グラフ作成部は、前記新規光パス候補レイヤ内のノードから、同一の前記物理ノードに対応する他の全ての新規光パス候補レイヤのノードへの辺を作成することを特徴とする付記2〜6のいずれか一つに記載のネットワーク管理装置。
【0118】
(付記9)前記物理ノードに波長変換器が設けられ、当該波長変換器が入力波長によって変換可能な出力波長に制約がある場合、
前記補助グラフ作成部は、前記新規光パス候補レイヤ内のノードから、同一の前記物理ノードに対応する変換可能な波長の新規光パス候補レイヤのノードへの辺を作成することを特徴とする付記2〜6のいずれか一つに記載のネットワーク管理装置。
【0119】
(付記10)前記補助グラフ作成部は、前記補助グラフとして、ルーティング対象となるトラフィックを収容した場合の前記ネットワーク機器による消費電力の増分値を辺の重みとして付与することを特徴とする付記2〜9のいずれか一つに記載のネットワーク管理装置。
【0120】
(付記11)前記補助グラフ作成部は、トラフィックの発生毎に、前記補助グラフを作成することを特徴とする付記1〜10のいずれか一つに記載のネットワーク管理装置。
【0121】
(付記12)前記補助グラフ作成部は、トラフィックの発生毎に、前記補助グラフを更新することを特徴とする付記1〜10のいずれか一つに記載のネットワーク管理装置。
【0122】
(付記13)前記経路計算部により求められた前記最小重み経路に基づき、前記補助グラフ上の経路の中から、新規光パス候補レイヤ内で連続する最長区間を求め、当該最長区間の始点に対応するノードから終点に対応するノードの間に新規の光パスを設定する光パス設定部を備えたことを特徴とする付記1〜12のいずれか一つに記載のネットワーク管理装置。
【0123】
(付記14)光ネットワーク上の既存の光パスと、発生したトラフィックを収容可能な新規の光パスの候補についてノード間を接続し、前記光パスのノード間の各辺に、当該光パス上に設けられるネットワーク機器の電力消費増分に対応した値の重みを付与した補助グラフを作成する補助グラフ作成工程と、
前記補助グラフ作成工程により作成された前記補助グラフに基づき、最小重み経路を求める経路計算工程と、
を含むことを特徴とする光パス設定方法。
【0124】
(付記15)前記経路計算工程により求められた前記最小重み経路に基づき、前記補助グラフ上の経路の中から、新規光パス候補レイヤ内で連続する最長区間を求め、当該最長区間の始点に対応するノードから終点に対応するノードの間に新規の光パスを設定する光パス設定工程を含むことを特徴とする付記14に記載の光パス設定方法。
【0125】
(付記16)前記補助グラフ作成工程は、前記補助グラフを新規の光パスの候補のグラフからなる新規光パス候補レイヤと、既存の光パスのグラフからなる既存光パスレイヤとにレイヤ分けして作成することを特徴とする付記14または15に記載の光パス設定方法。
【0126】
(付記17)前記補助グラフ作成工程は、前記新規光パス候補レイヤの数を、光ネットワーク上で用いる波長数と同数として設けることを特徴とする付記16に記載の光パス設定方法。
【0127】
(付記18)前記補助グラフ作成工程は、前記補助グラフとして、同一物理ノードに対応する新規光パス候補レイヤと既存光パス候補レイヤのノード間をそれぞれつなぐ辺を作成することを特徴とする付記16または17に記載の光パス設定方法。
【0128】
(付記19)前記光ネットワーク上で波長変換が可能な場合、
前記補助グラフ作成部は、前記新規光パス候補レイヤ内のノードから、同一の前記物理ノードに対応する異なる新規光パス候補レイヤのノードへの辺を作成することを特徴とする付記16〜18のいずれか一つに記載の光パス設定方法。
【符号の説明】
【0129】
100 ネットワーク
101 ネットワーク管理装置
102a 光再生中継器
103 ルータ
104 光ファイバ
201 補助グラフ作成部
202 最小重み経路計算部
203 光パス設定部
204 情報格納部
211 物理トポロジ情報格納部
212 論理トポロジ情報格納部
213 トラフィック情報格納部
214 電力モデル格納部
215 ルーティング情報格納部
304 ユーザインターフェース
305 通信インターフェース
306 補助メモリ
310 バス
501 既存光パスレイヤ作成部
502 新規光パスレイヤ作成部
503 レイヤ間接続部
2102 補助グラフ格納部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ネットワーク上の既存の光パスと、発生したトラフィックを収容可能な新規の光パスの候補についてノード間を接続したグラフからなり、前記光パスのノード間の各辺に、当該光パス上に設けられるネットワーク機器の電力消費増分に対応した値の重みを付与した補助グラフを作成する補助グラフ作成部と、
前記補助グラフ作成部により作成された前記補助グラフに基づき、最小重み経路を求める経路計算部と、
を備えたことを特徴とするネットワーク管理装置。
【請求項2】
前記補助グラフ作成部は、前記補助グラフが新規の光パスの候補のグラフからなる新規光パス候補レイヤと、既存の光パスのグラフからなる既存光パスレイヤとにレイヤ分けして作成することを特徴とする請求項1に記載のネットワーク管理装置。
【請求項3】
前記補助グラフ作成部は、前記新規光パス候補レイヤの数を、光ネットワーク上で用いる波長数と同数として設けることを特徴とする請求項2に記載のネットワーク管理装置。
【請求項4】
前記補助グラフ作成部は、前記新規光パス候補レイヤについて、一つの物理ノードにつき入力および出力の2種類のノードを作成し、前記2種類のノード間の辺の有無を前記ネットワーク機器としての再生中継器の使用可能の有無に対応づけ、前記2種類のノード間の辺の前記再生中継器が使用可能であるとき、当該再生中継器の消費電力に対応した値の重みを前記2種類のノード間の辺に付与することを特徴とする請求項2または3に記載のネットワーク管理装置。
【請求項5】
前記補助グラフ作成部は、前記新規光パス候補レイヤとして、前記再生中継器を使用せずに光パスを設定可能な2ノード間に辺を作成することを特徴とする請求項2〜4のいずれか一つに記載のネットワーク管理装置。
【請求項6】
前記補助グラフ作成部は、前記補助グラフとして、同一物理ノードに対応する新規光パス候補レイヤと既存光パス候補レイヤのノード間をそれぞれつなぐ辺を作成することを特徴とする請求項2〜5のいずれか一つに記載のネットワーク管理装置。
【請求項7】
前記光ネットワーク上で波長変換が可能な場合、
前記補助グラフ作成部は、前記新規光パス候補レイヤ内のノードから、同一の前記物理ノードに対応する異なる新規光パス候補レイヤのノードへの辺を作成することを特徴とする請求項2〜6のいずれか一つに記載のネットワーク管理装置。
【請求項8】
前記物理ノードに波長変換器が設けられ、当該波長変換器が入力波長に関係なく任意の出力波長に変換可能な場合、
前記補助グラフ作成部は、前記新規光パス候補レイヤ内のノードから、同一の前記物理ノードに対応する他の全ての新規光パス候補レイヤのノードへの辺を作成することを特徴とする請求項2〜6のいずれか一つに記載のネットワーク管理装置。
【請求項9】
前記物理ノードに波長変換器が設けられ、当該波長変換器が入力波長によって変換可能な出力波長に制約がある場合、
前記補助グラフ作成部は、前記新規光パス候補レイヤ内のノードから、同一の前記物理ノードに対応する変換可能な波長の新規光パス候補レイヤのノードへの辺を作成することを特徴とする請求項2〜6のいずれか一つに記載のネットワーク管理装置。
【請求項10】
前記補助グラフ作成部は、前記補助グラフとして、ルーティング対象となるトラフィックを収容した場合の前記ネットワーク機器による消費電力の増分値を辺の重みとして付与することを特徴とする請求項2〜9のいずれか一つに記載のネットワーク管理装置。
【請求項11】
前記補助グラフ作成部は、トラフィックの発生毎に、前記補助グラフを作成することを特徴とする請求項1〜10のいずれか一つに記載のネットワーク管理装置。
【請求項12】
前記補助グラフ作成部は、トラフィックの発生毎に、前記補助グラフを更新することを特徴とする請求項1〜10のいずれか一つに記載のネットワーク管理装置。
【請求項13】
前記経路計算部により求められた前記最小重み経路に基づき、前記補助グラフ上の経路の中から、新規光パス候補レイヤ内で連続する最長区間を求め、当該最長区間の始点に対応するノードから終点に対応するノードの間に新規の光パスを設定する光パス設定部を備えたことを特徴とする請求項1〜12のいずれか一つに記載のネットワーク管理装置。
【請求項14】
光ネットワーク上の既存の光パスと、発生したトラフィックを収容可能な新規の光パスの候補についてノード間を接続し、前記光パスのノード間の各辺に、当該光パス上に設けられるネットワーク機器の電力消費増分に対応した値の重みを付与した補助グラフを作成する補助グラフ作成工程と、
前記補助グラフ作成工程により作成された前記補助グラフに基づき、最小重み経路を求める経路計算工程と、
を含むことを特徴とする光パス設定方法。
【請求項15】
前記経路計算工程により求められた前記最小重み経路に基づき、前記補助グラフ上の経路の中から、新規光パス候補レイヤ内で連続する最長区間を求め、当該最長区間の始点に対応するノードから終点に対応するノードの間に新規の光パスを設定する光パス設定工程を含むことを特徴とする請求項14に記載の光パス設定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8−1】
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【図8−2】
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【図8−3】
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【図9−1】
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【図9−2】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20−1】
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【図20−2】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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