説明

ネットワーク装置

【課題】消費電力を削減することができるネットワーク装置を提供することを課題とする。
【解決手段】複合機1は、第1省電力モードと、第1省電力モードよりも消費電力の低い第2省電力モードとを有する。電力管理部14は、複合機1の動作モードに関係なく、フロントエンド部62に電力を供給する。バックエンド部61は、第2省電力モードにおいて電力が供給されず、第1省電力モードにおいて、POPプログラム53などの定期実行プログラムを一定の時間間隔で実行する。フロントエンド部62は、定期実行プログラムと、実行時刻と、格納先とを対応付けたリストデータ54を保持する。第2省電力モードのときに、フロントエンド部62は、現在時刻が定期実行プログラムの実行時刻であると判定した場合、リストデータ54に設定された格納先から、定期実行プログラムを取得する。フロントエンド部62は、取得したプログラムを実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力消費量が少ない省電力モードで動作可能なネットワーク装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電力消費量を削減するために、複数の電力モードで動作可能な複合機がある。複合機は、一定時間、ユーザにより操作が行われなかった場合などに、複合機の全体に電力が供給される通常モードから、省電力モードに移行する。
【0003】
省電力モードでは、複合機のメインの制御部に電力が供給されないため、消費電力が低下する。このため、ユーザにとって運用コストを軽減できるというメリットがある。また、消費電力を低下させることで、省エネルギー対策及び環境対策に貢献できるというメリットがある。
【0004】
下記特許文献1には、省電力モードを有する印刷装置が記載されている。特許文献1の印刷装置は、省電力モードに移行する場合、CPU(Central Processing Unit)の内部メモリに、省電力モード時に必要なプログラム及びデータなどを格納する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−111715号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述のように、特許文献1の印刷装置では、省電力モード時に必要なプログラム及びデータの全てが、CPUの内部メモリに格納される。しかし、内部メモリの容量によっては、内部メモリに格納されるプログラム及びデータが制限されることがある。この場合、省電力モードにおいて印刷装置が対応できない機能が増加するため、通常モードへの復帰回数が増加し、消費電力も増加する。
【0007】
そこで、本発明は、前記問題点に鑑み、消費電力を削減することができるネットワーク装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、請求項1記載の発明は、ネットワーク装置であって、第1電力モードと、前記第1電力モードよりも消費電力の低い第2電力モードとにおいて電力が供給され、ネットワークを介した通信を制御する通信制御部と、第1プログラムを記憶し、前記第2電力モードにおいて電力が供給されず、前記第1電力モードにおいて前記第1プログラムを定期的に実行する定期処理実行部と、前記通信制御部と前記定期処理実行部とに供給する電力を管理する電力管理部と、を備え、前記通信制御部は、前記第1プログラムの識別情報と、前記第1プログラムの実行時刻と、前記第1プログラムの格納先とが対応づけられたリストデータを記憶する記憶部と、前記第2電力モードで動作し、かつ、現在時刻が前記実行時刻であると判定した場合、前記リストデータに登録されている前記第1プログラムの格納先に基づいて、前記第1プログラムを前記通信制御部の外部から取得するプログラム取得部と、前記プログラム取得部が取得した第1プログラムを実行するプログラム実行部と、を備える。
【0009】
請求項2記載の発明は、請求項1に記載のネットワーク装置において、前記格納先として、前記ネットワークに接続された記憶装置が前記リストデータに登録されており、前記通信制御部は、さらに、前記第1電力モードから前記第2電力モードへ移行するときに、前記第1プログラム及び前記リストデータを前記定期処理実行部から取得し、前記リストデータに登録された格納先に、前記第1プログラムを送信する移行準備部、を備える。
【0010】
請求項3記載の発明は、請求項1または請求項2のいずれかに記載のネットワーク装置において、前記格納先として、前記定期処理実行部が前記リストデータに登録されており、前記プログラム取得部は、前記第1電力モードへの移行を前記電力管理部に指示し、前記第1電力モードに移行した後に前記定期処理実行部から前記第1プログラムを取得する。
【0011】
請求項4記載の発明は、請求項3に記載のネットワーク装置において、前記電力管理部は、前記プログラム取得部が前記第1プログラムを取得した後に、前記ネットワーク装置を第2電力モードへ移行させる。
【0012】
請求項5記載の発明は、請求項2ないし請求項4のいずれかに記載のネットワーク装置において、前記移行準備部は、前記第1電力モードから前記第2電力モードへ移行する場合、前記リストデータに登録されたプログラムの実行時刻に基づいて、前記リストデータに登録されたプログラムの中で最初に実行される最先プログラムを特定し、前記最先プログラムを前記定期処理実行部から取得し、前記最先プログラムを前記記憶部に記憶する。
【0013】
請求項6記載の発明は、請求項1ないし請求項5のいずれかに記載のネットワーク装置において、前記プログラム実行部は、前記第2電力モードのときに前記第1プログラムを実行した場合、前記第1プログラムの実行日時を含むログデータを作成し、前記第2電力モードから前記第1電力モードへ移行したときに前記ログデータを前記定期処理実行部に出力する。
【0014】
請求項7記載の発明は、請求項1ないし請求項6のいずれかに記載のネットワーク装置において、前記プログラム実行部は、前記第1プログラムを実行することにより得られた結果データに基づいて前記第1電力モードへ移行させるか否かを判定する。
【0015】
請求項8記載の発明は、請求項1ないし請求項7のいずれかに記載のネットワーク装置において、前記記憶部は、前記ネットワークに接続された通信装置から要求された所定の処理を実行する待機プログラムを記憶し、前記プログラム実行部は、前記所定の処理の要求を受け付けた場合、前記待機プログラムを実行する。
【発明の効果】
【0016】
本発明のネットワーク装置は、第1電力モードと、第1電力モードよりも消費電力の低い第2電力モードで動作する。通信制御部は、第2電力モードで動作しているときに現在時刻が第1プログラムの実行時刻となったと判断した場合、第1プログラムの格納先が設定されたリストデータに基づいて、第1プログラムを取得する。通信制御部は、取得した第1プログラムを実行する。これにより、第2電力モードにおいて、通信制御部に様々な処理を実行させることができる。ネットワーク装置を第2電力モードから復帰させる回数を削減できるため、ネットワーク装置の消費電力を削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施の形態に係る複合機を含むネットワークシステムの構成を示す図である。
【図2】複合機が備えるネットワークコントローラの機能ブロック図である。
【図3】省電力モードに移行するときの複合機の動作を示すフローチャートである。
【図4】定期実行プログラムのリストデータを示す図である。
【図5】省電力モードに移行するときの複合機の動作を示すフローチャートである。
【図6】省電力モードにおける複合機の動作を示すフローチャートである。
【図7】メールサーバにアクセスするときの複合機の動作を示すフローチャートである。
【図8】複合機が通常モードまたは第1省電力モードに復帰した後における、複合機の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態について説明する。
【0019】
{1.全体構成}
図1は、本実施の形態に係る複合機1を含むネットワークシステムの構成を示す図である。図1に示すネットワークシステムは、複合機1と、PC(Personal Computer)2,3と、メールサーバ4とがLAN(Local Area Network)5に接続された構成である。
【0020】
複合機1は、プリンタ機能、FAX機能、コピー機能、ウェブサーバ機能などを備えた多機能装置である。複合機1は、通常モード、第1省電力モード、及び第2省電力モードのいずれかの動作モードで動作する。各動作モードの詳細は、後述する。
【0021】
PC2,3は、複合機1が実行する定期実行プログラムを格納する。定期実行プログラムは、複合機1の動作モードに関係なく、複合機1が一定間隔で実行するプログラムである。PC2は、定期実行プログラムとして、DHCP(Dynamic Host Configuration Protocol)プログラム51を記憶部21に格納する。PC3は、定期実行プログラムとして、SNTP(Simple Network Time Protocol)プログラム52と、POP(Post Office Protocol)プログラム53とを記憶部31に格納する。
【0022】
メールサーバ4は、複合機1に設定されたメールアドレス宛ての電子メールを格納するサーバである。
【0023】
{2.複合機1の構成}
図1に示すように、複合機1は、本体制御部11と、プリンタ部12と、FAX部13と、電力管理部14と、ネットワークコントローラ6とを備える。本体制御部11は、図示しないCPU及びRAM(Random Access Memory)を含み、複合機1全体を制御する。
【0024】
プリンタ部12は、PC2,3から送信された印刷データ及び図示しないスキャナが作成した画像データなどを印刷する。FAX部13は、公衆回線網を介して、画像データの送受信を行う。なお、図1において、複合機1が有するその他の機能に関する構成の表示を省略している。
【0025】
ネットワークコントローラ6は、LAN5を介した通信を制御する。ネットワークコントローラ6は、バックエンド部61と、フロントエンド部62とを備える。バックエンド部61は、通常モード及び第1省電力モードにおいて、定期実行プログラムを一定の間隔で実行する。フロントエンド部62は、TCP(Transmission Control Protocol)/IP(Internet Protocol)を利用して、LAN5を介した通信を制御する。
【0026】
電力管理部14は、複合機1の動作モードに応じて、デジタル複合機1の各ブロックに供給する電力を制御する。通常モードにおいて、電力管理部14は、複合機1全体に電力を供給する。第1省電力モードにおいて、電力管理部15は、ネットワークコントローラ6に電力を供給し、本体制御部11、プリンタ部12及びFAX部13に電力を供給しない。第2省電力モードにおいて、電力管理部14は、フロントエンド部62に電力を供給し、本体制御部11、プリンタ部12、FAX部13及びバックエンド部61に電力を供給しない。すなわち、上述の3種類の動作のモードのうち、第2省電力モードの消費電力が、一番少なく、通常モードの消費電力が一番大きい。
【0027】
{3.ネットワークコントローラ6の構成}
図2は、ネットワークコントローラ6の構成を示す機能ブロック図である。バックエンド部61は、制御部611と、記憶部612とを備える。
【0028】
制御部611は、CPUを含み、バックエンド部61を制御する。記憶部612は、不揮発性のメモリである。記憶部612は、DHCPプログラム51と、SNTPプログラム52と、POPプログラム53と、メールプログラム63とを格納する。メールプログラム63は、メールの送受信と、送受信したメールの管理とを行うプログラムである。POPプログラム53は、メールプログラム63が備える機能のうち、メールサーバ4にアクセスする機能に対応したプログラムである。制御部611は、複合機1が通常モードまたは第1省電力モードで動作しているとき、DHCPプログラム51、SNTPプログラム52及びPOPプログラム53を、プログラムごとに定められた実行間隔で実行する。
【0029】
フロントエンド部62は、制御部621と、プログラム取得部622と、移行準備部623と、記憶部624とを備える。
【0030】
制御部621は、CPUを含み、フロントエンド部62を制御する。また、制御部621は、記憶部624に格納されたプログラムを実行する。プログラム取得部622は、複合機1が第2省電力モードで動作しているときに、定期実行プログラムをPC2,3から取得する。移行準備部623は、複合機1が第2省電力モードへ移行するときに、バックエンド部61が第2省電力モードに対応するための処理を実行する。
【0031】
記憶部624は、待機プログラム50と、POPプログラム53と、リストデータ54とを格納する。待機プログラム50は、複合機1の動作モードに関係なく、フロントエンド部62が実行するプログラムである。たとえば、待機プログラム50は、ARP(Address Resolution Protocol)、ICMP(Internet Control Message Protocol)などに対応したプログラムである。なお、記憶部624として、フロントエンド部62のCPUの内部メモリを用いてもよい。
【0032】
{4.動作概要}
フロントエンド部62は、定期実行プログラムと、定期実行プログラムの実行時刻と、定期実行プログラムの格納先とが対応付けられたリストデータ54を記憶部624に格納している。複合機1が第2省電力モードで動作しているときに、フロントエンド部62は、現在時刻が定期実行プログラムの実行時刻を経過したか否かを確認する。
【0033】
現在時刻がリストデータ54に設定された実行時刻を経過した場合、プログラム取得部622は、リストデータ54に設定された格納先(PC2,3など)から定期実行プログラムを取得する。他の定期実行プログラムが記憶部624に格納されていた場合、他の定期実行プログラムが削除され、取得した定期実行プログラムが記憶部624に格納される。制御部621は、取得した定期実行プログラムを実行する。
【0034】
このように、フロントエンド部62は、複合機1が通常モードまたは第1省電力モードへ移行させなくても、様々な処理を実行することが可能となる。このため、第2省電力モードからの復帰回数を削減することができる。また、フロントエンド部62は、複合機1が第2省電力モードへ移行するときに、全ての定期実行プログラムを記憶部624に格納しなくてもよい。したがって、記憶部624の容量を削減することができる。
【0035】
{5.ネットワークコントローラ6の動作}
{5.1.第2省電力モードへの移行}
以下、複合機1が第2省電力モードへ移行するときのネットワークコントローラ6の動作について詳しく説明する。
【0036】
複合機1が第2省電力モードへ移行するときのバックエンド部61の動作を、図3を参照しながら説明する。図3は、複合機1が第2省電力モードへ移行するときのバックエンド部61の動作を示すフローチャートである。
【0037】
ユーザにより第2省電力モードへの移行が指示された場合、あるいは、第1省電力モードの継続時間が所定時間を超えた場合などに、バックエンド部61は、複合機1を第2省電力モードへ移行させるために、図3に示す処理を開始する。
【0038】
バックエンド部61は、予め設定されているリストデータ54をフロントエンド部62に出力する(ステップS101)。図4は、リストデータ54を示す図である。
【0039】
図4に示すように、DHCPプログラム51、SNTPプログラム52及びPOPプログラム53が、定期実行プログラムとしてリストデータ54に登録されている。リストデータ54は、定期実行プログラムの名称と、実行日時と、実行間隔と、格納先とを対応付けたデータである。実行日時は、実行間隔と、バックエンド部61が通常モードまたは第1省電力モードにおいて定期実行プログラムを最後に実行した時刻とに基づいて決定される。
【0040】
再び、図3を参照する。バックエンド部61は、プログラムの出力要求がフロントエンド部62から入力された場合(ステップS102においてYes)、リストデータ54に登録された定期実行プログラムをフロントエンド部62に出力する(ステップS103)。プログラムの出力要求は、リストデータ54の出力に対する応答として用いられる。バックエンド部61は、リストデータ54の最上段に登録されたDHCPプログラム51をフロントエンド部62に最初に出力する。このとき、DHCPプログラム51の設定パラメータを含む属性データも、フロントエンド部62へ出力される。詳細は後述するが、ステップS103で出力される定期実行プログラムは、リストデータ54に設定された格納先へ転送され、フロントエンド部62に格納されない。
【0041】
バックエンド部61は、DHCPプログラム51の出力に対する応答を受け付けた場合(ステップS104においてYes)、全ての定期実行プログラムをフロントエンド部62に出力したか否かを確認する(ステップS105)。この時点では、DHCPプログラム51の出力のみ終了しているため(ステップS105においてNo)、バックエンド部61は、ステップS103に戻る。バックエンド部61は、SNTPプログラム52,POPプログラム53をフロントエンド部62に出力するために、ステップS103〜S105を繰り返す。
【0042】
全ての定期実行プログラムの出力が終了した場合(ステップS105においてYes)、バックエンド部61は、定期実行プログラムの出力終了をフロントエンド部62に通知する(ステップS106)。バックエンド部61は、定期実行プログラムのうち、実行時刻が一番早い定期実行プログラム(最先プログラム)をフロントエンド部62に保存するか否かを確認する(ステップS107)。図4に示すように、実行時刻が一番早い最先プログラムは、POPプログラム53である。
【0043】
バックエンド部61は、最先プログラムの保存の可否に関する設定情報を保持している。最先プログラムの保存が許可されていない場合(ステップS107においてNo)、バックエンド部61は、ステップS109に進む。最先プログラムの保存が許可されている場合(ステップS107においてYes)、バックエンド部61は、最先プログラムをフロントエンド部62に出力する(ステップS108)。
【0044】
バックエンド部61は、現在時刻を示す時刻情報をフロントエンド部62に送信する(ステップS109)。バックエンド部61は、電力管理部14に、第2省電力モードに移行可能であることを通知し(ステップS110)、図3に示す処理を終了する。
【0045】
次に、複合機1が第2省電力モードへ移行するときのフロントエンド部62の動作を、図5を参照しながら説明する。
【0046】
図5は、複合機1が第2省電力モードへ移行するときのフロントエンド部62の動作を示すフローチャートである。複合機1が第2省電力モードへ移行する場合、移行準備部623は、リストデータ54が入力されるまで待機する(ステップS201)。リストデータ54が入力された場合(ステップS201においてYes)、移行準備部623は、入力されたリストデータ54を記憶部624に格納する(ステップS202)。
【0047】
移行準備部623は、リストデータ54を用いて、格納先の動作確認を行う(ステップS203)。具体的には、移行準備部623は、リストデータ54に登録された格納先(PC2,3など)に対して、ICMPパケットを送信する。移行準備部623は、格納先からICMPパケットの応答を受信した場合、格納先が動作中であると判定する。移行準備部623は、ICMPパケットの応答を受信できない場合、格納先が動作していないと判断して、ICMPパケットの送信先をリストデータ54から削除する。応答のない格納先に対して定期実行プログラムを転送する(ステップS206)ことがないため、第2省電力モードへ速やかに移行することができる。
【0048】
格納先の動作確認後、移行準備部623は、定期実行プログラムの出力を要求する(ステップS204)。定期実行プログラムが入力された場合(ステップS205においてYes)、移行準備部623は、入力された定期実行プログラムを格納先へ転送する(ステップS206)。たとえば、図4に示すように、SNTPプログラム52の格納先は、PC2と、IPアドレス「192.168.10.8」の装置である。ステップS206において、フロントエンド部62は、これら二つの装置にSNTPプログラム52を転送する。この時点で、定期実行プログラムは、記憶部624に格納されない。
【0049】
再び、図5を参照する。定期実行プログラムの転送が終了した後に、移行準備部623は、定期実行プログラムの入力に対する応答として、定期実行プログラムの転送終了をバックエンド部61に通知する(ステップS207)。
【0050】
定期実行プログラムの出力終了が通知されるまで(ステップS208においてYes)、移行準備部623は、ステップS205〜S208を繰り返す。出力終了が通知された場合(ステップS208においてYes)、移行準備部623は、予め設定された設定情報に基づいて、最先プログラムを保存するか否かを判定する(ステップS209)。最先プログラムを保存しない場合(ステップS209においてNo)、移行準備部623は、ステップS212に進む。
【0051】
最先プログラムを保存する場合(ステップS209においてYes)、移行準備部623は、最先プログラムが入力されるまで待機する(ステップS210)。最先プログラムが入力された場合(ステップS210においてYes)、移行準備部623は、最先プログラムを記憶部624に保存する(ステップS211)。図4に示すように、POPプログラム53の実行時刻が一番早いため、POPプログラム53が、最先プログラムとして記憶部624に保存される。
【0052】
図5を参照する。移行準備部623は、バックエンド部61から通知された時刻情報に基づいて(ステップS109、図3参照)、図示しない時計ICの時刻を再設定する(ステップS212)。図5に示す処理の終了後、移行準備部623は、第2省電力モードへの移行準備完了を電力管理部14に通知する。電力管理部14は、バックエンド部61からの通知と、フロントエンド部62からの準備完了通知とが入力された後に、複合機1を第2省電力モードへ移行させる。
【0053】
{5.2.第2省電力モードにおける複合機1の動作}
以下、第2省電力モードでのフロントエンド部62の動作について説明する。図6は、第2省電力モードでのフロントエンド部62の動作を示すフローチャートである。
【0054】
フロントエンド部62は、第2省電力モードの終了を電力管理部14から通知された場合(ステップS301においてYes)、図6に示す処理を終了する。第2省電力モードの終了の通知がなければ(ステップS301においてNo)、フロントエンド部62は、1秒が経過するまで待機する(ステップS302)。1秒が経過した場合(ステップS302においてYes)、フロントエンド部62は、現在時刻を更新する(ステップS303)。
【0055】
フロントエンド部62は、リストデータ54を参照して、実行時刻を経過した定期実行プログラム(以下、「対象プログラム」という)があるか否かを確認する(ステップS304)。対象プログラムがなければ(ステップS304においてNo)、フロントエンド部62は、ステップS301に戻る。
【0056】
対象プログラムがある場合(ステップS304においてYes)、フロントエンド部62は、対象プログラムが記憶部624に保存されているか否かを確認する(ステップS305)。対象プログラムが保存されていれば(ステップS305においてYes)、フロントエンド部62は、ステップS310に進む。このケースとしては、POPプログラム53が、対象プログラムとして検出された場合が該当する。
【0057】
対象プログラムが保存されていない場合(ステップS305においてNo)、フロントエンド部62は、リストデータ54を参照して、対象プログラムの格納先を確認する(ステップS306)。
【0058】
たとえば、対象プログラムがDHCPプログラム51であると仮定する。図4に示すように、PC2がDHCPプログラムの格納先として設定されているため(ステップS306においてYes)、プログラム取得部622は、DHCPプログラム51をPC2から取得する(ステップS307)。プログラム取得部622は、PC2からDHCPプログラム51を取得できなかった場合、IPアドレスが「192.168.10.6」の装置(図4参照)から取得すればよい。
【0059】
一方、対象プログラムの格納先として、PC2,3などの装置が設定されていない場合(ステップS306においてNo)、フロントエンド部62は、電力管理部14に対して、第1省電力モードへの移行を指示する(ステップS308)。複合機1が第1省電力モードに移行した(バックエンド部61に電力が供給された)後に、プログラム取得部622は、バックエンド部61からDHCPプログラム51を取得する(ステップS309)。具体的には、プログラム取得部622は、図5に示すステップS204〜S206を実行すればよい。また、プログラム取得部622は、リストデータ54に設定された格納先からDHCPプログラム51を取得できなかった場合、バックエンド部61からDHCPプログラム52を取得すればよい。
【0060】
フロントエンド部62は、リストデータ54に設定された対象プログラムの実行時刻を更新する(ステップS310)。リストデータ54に設定された対象プログラムの実行時刻に、実行間隔が加算されることにより、実行時刻が更新される。フロントエンド部62は、対象プログラムを実行する(ステップS311)。対象プログラムの実行後、フロントエンド部62は、対象プログラムの実行時刻、実行結果などが記録されたログを作成し、記憶部624に格納する。ログは、複合機1が通常モードまたは第1省電力モードに移行したときに、バックエンド部61に出力される。バックエンド部61は、ログを参照することで、定期実行プログラムを次に実行する時刻を決定することができる。
【0061】
{5.3.定期実行プログラムの詳細}
以下、ステップS311で実行される定期実行プログラムについて説明する。対象プログラムがDHCPプログラム51である場合、フロントエンド部62は、DHCP Renewingを実行する。DHCP Renewingは、図示しないDHCPサーバに対して、IPアドレスのリースの延長を求める処理である。DHCPプログラム51の属性データには、DHCPサーバのIPアドレスと、DHCPサーバから割り当てられた複合機1のIPアドレスと、DHCP Discovery実行時にDHCPサーバから受信したIDとが設定される。
【0062】
あるいは、DHCPプログラム51は、DHCPサーバからIPアドレスを再取得するDHCP Rebindingを実行するプログラムでもよい。DHCPプログラム51は、DHCP Renewing及びDHCP Rebindingの両者を実行するプログラムでもよい。
【0063】
対象プログラムがSNTPプログラム52である場合、フロントエンド部62は、図示しないNTP(Network Time Protocol)サーバにアクセスして、現在時刻を再設定する。SNTPプログラム52の属性データには、NTPサーバのIPアドレスと、複合機1が設置されている地域を示すタイムゾーン情報とが設定される。
【0064】
対象プログラムがPOPプログラム53である場合、フロントエンド部62は、メールサーバ4にアクセスして、複合機1宛てのメールを受信しているか否かを問い合わせる。属性データには、メールサーバ4のIPアドレスと、メールサーバ4にアクセスするためのユーザ情報(ID,パスワードなど)とが設定される。
【0065】
図7は、フロントエンド部62がPOPプログラム53を実行するときの動作を示すフローチャートである。フロントエンド部62は、POPプログラム53にアクセスし、メールサーバ4に受信メールの有無を問い合わせる(ステップS401)。
【0066】
受信メールがない場合(ステップS402においてNo)、フロントエンド部62は、図7に示す処理を終了する。受信メールがある場合(ステップS402においてYes)、フロントエンド部62は、電力管理部14に対して、通常モードへの移行を指示する(ステップS403)。複合機1が通常モードに移行した場合(ステップS404においてYes)、フロントエンド部62は、受信メールをメールサーバ4から取得する(ステップS405)。通常モードへの移行後に受信メールを取得する理由は、受信メールが、サイズの大きな添付ファイルを有する場合、記憶部624がオーバーフローするおそれがあるためである。フロントエンド部62は、取得した受信メールをバックエンド部61に出力し(ステップS406)、図7に示す処理を終了する。
【0067】
図8は、複合機1が通常モードまたは第1省電力モードに復帰した後における、バックエンド部61の動作を示すフローチャートである。バックエンド部61は、フロントエンド部62の指示により通常モードまたは第1省電力モードへ復帰したか否かを確認する(ステップS501)。
【0068】
フロントエンド部62の指示により復帰したのではない場合(ステップS501においてNo)、バックエンド部61は、図8に示す処理を終了する。この場合、ユーザの操作により、複合機1が通常モードまたは第1省電力モードに復帰したと考えられる。複合機1は、ユーザの操作に応じた処理を実行する。
【0069】
フロントエンド部62の指示により復帰した場合(ステップS501においてYes)、バックエンド部61は、フロントエンド部62から定期実行プログラムの出力を要求されたか否かを確認する(ステップS502)。要求された場合(ステップS502においてYes)、バックエンド部61は、要求された定期実行プログラムをフロントエンド部62に出力する(ステップS503)。その後、バックエンド部61は、第2省電力モードへの移行を指示する(ステップS504)。このとき、フロントエンド部62が第2省電力モードに応じた処理を既に実行しているため、フロントエンド部62は、図3に示す処理を実行しない。同様に、バックエンド部61は、図5に示す処理を実行しない。
【0070】
定期実行プログラムの出力を要求されていない場合(ステップS502においてNo)、バックエンド部61は、複合機1が通常モードへ復帰したか否かを確認する(ステップS505)。バックエンド部61は、複合機1が通常モードへ復帰した後に(ステップS505においてYes)、フロントエンド部62から入力された受信メールを本体制御部11に出力する(ステップS506)。本体制御部11は、受信メールの印刷、メールを受信したことを示すメッセージの表示などを行う。
【0071】
以上説明したように、フロントエンド部62は、定期実行プログラムの実行時刻となった場合、リストデータ54に設定された格納先から定期実行プログラムを取得し、取得したプログラムを実行する。これにより、フロントエンド部62は、複合機1を通常モードまたは第1省電力モードに移行させることなく、様々な処理を実行することができる。このため、複合機1が第2省電力モードから通常モードまたは第1省電力モードへ移行する回数を削減することができる。
【0072】
また、フロントエンド部62は、全ての定期実行プログラムを記憶部624に格納しなくてもよい。このため、フロントエンド部62は、大容量の記憶部624を備えなくてもよい。
【0073】
上記実施の形態において、定期実行プログラムが、DHCPプログラム51、SNTP52、POPプログラム53である例を説明した。しかし、定期実行プログラムは、複合機1の動作モードに関係なく、LAN5を介した通信を利用して、一定の時間間隔で実行する必要のあるプログラムであればよい。
【0074】
上記実施の形態において、記憶部624には、一つの定期実行プログラムを格納する例を説明した。しかし、記憶部624は、二つ以上の定期実行プログラムを格納してもよい。すなわち、記憶部624が格納できる定期実行プログラムの数が、リストデータ54に登録された定期実行プログラムの数よりも少なければよい。
【0075】
上記実施の形態において、定期実行プログラムの格納先として、PC2,3などLAN5に接続された通信装置が設定される例を説明した。しかし、図4に示すリストデータ54において、バックエンド部61が格納先に設定されてもよい。この場合、プログラム取得部622は、ネットワーク接続された通信装置(PC3など)から優先的に定期実行プログラムを取得すればよい。これにより、複合機1が第1省電力モードへ復帰する回数を削減できる。
【0076】
上記実施の形態において、定期実行プログラムの例として、DHCPプログラム51、SNTPプログラム52及びPOPプログラム53を説明した。しかし、定期実行プログラムは、上記のプログラムでなくてもよく、複合機1の動作モードに関係なく、複合機1が一定間隔で実行するネットワークプログラムであればよい。
【符号の説明】
【0077】
1 複合機
2,3 PC
4 メールサーバ
5 LAN
6 ネットワークコントローラ
51 DHCPプログラム
52 SNTPプログラム
53 POPプログラム
54 リストデータ
61 バックエンド部
62 フロントエンド部
611,621 制御部
612,624 制御部
622 プログラム取得部
623 移行準備部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1電力モードと、前記第1電力モードよりも消費電力の低い第2電力モードとにおいて電力が供給され、ネットワークを介した通信を制御する通信制御部と、
第1プログラムを記憶し、前記第2電力モードにおいて電力が供給されず、前記第1電力モードにおいて前記第1プログラムを定期的に実行する定期処理実行部と、
前記通信制御部と前記定期処理実行部とに供給する電力を管理する電力管理部と、
を備え、
前記通信制御部は、
前記第1プログラムの識別情報と、前記第1プログラムの実行時刻と、前記第1プログラムの格納先とが対応づけられたリストデータを記憶する記憶部と、
前記第2電力モードで動作し、かつ、現在時刻が前記実行時刻であると判定した場合、前記リストデータに登録されている前記第1プログラムの格納先に基づいて、前記第1プログラムを前記通信制御部の外部から取得するプログラム取得部と、
前記プログラム取得部が取得した第1プログラムを実行するプログラム実行部と、
を備えるネットワーク装置。
【請求項2】
請求項1に記載のネットワーク装置において、
前記格納先として、前記ネットワークに接続された記憶装置が前記リストデータに登録されており、
前記通信制御部は、さらに、
前記第1電力モードから前記第2電力モードへ移行するときに、前記第1プログラム及び前記リストデータを前記定期処理実行部から取得し、前記リストデータに登録された格納先に、前記第1プログラムを送信する移行準備部、
を備えるネットワーク装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2のいずれかに記載のネットワーク装置において、
前記格納先として、前記定期処理実行部が前記リストデータに登録されており、
前記プログラム取得部は、前記第1電力モードへの移行を前記電力管理部に指示し、前記第1電力モードに移行した後に前記定期処理実行部から前記第1プログラムを取得するネットワーク装置。
【請求項4】
請求項3に記載のネットワーク装置において、
前記電力管理部は、前記プログラム取得部が前記第1プログラムを取得した後に、前記ネットワーク装置を第2電力モードへ移行させるネットワーク装置。
【請求項5】
請求項2ないし請求項4のいずれかに記載のネットワーク装置において、
前記移行準備部は、前記第1電力モードから前記第2電力モードへ移行する場合、前記リストデータに登録されたプログラムの実行時刻に基づいて、前記リストデータに登録されたプログラムの中で最初に実行される最先プログラムを特定し、前記最先プログラムを前記定期処理実行部から取得し、前記最先プログラムを前記記憶部に記憶するネットワーク装置。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のいずれかに記載のネットワーク装置において、
前記プログラム実行部は、前記第2電力モードのときに前記第1プログラムを実行した場合、前記第1プログラムの実行日時を含むログデータを作成し、前記第2電力モードから前記第1電力モードへ移行したときに前記ログデータを前記定期処理実行部に出力するネットワーク装置。
【請求項7】
請求項1ないし請求項6のいずれかに記載のネットワーク装置において、
前記プログラム実行部は、前記第1プログラムを実行することにより得られた結果データに基づいて前記第1電力モードへ移行させるか否かを判定するネットワーク装置。
【請求項8】
請求項1ないし請求項7のいずれかに記載のネットワーク装置において、
前記記憶部は、前記ネットワークに接続された通信装置から要求された所定の処理を実行する待機プログラムを記憶し、
前記プログラム実行部は、前記所定の処理の要求を受け付けた場合、前記待機プログラムを実行するネットワーク装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−148446(P2012−148446A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−7819(P2011−7819)
【出願日】平成23年1月18日(2011.1.18)
【出願人】(000006297)村田機械株式会社 (4,916)
【Fターム(参考)】