説明

ネットワーク複合機

【課題】 大容量のメモリを備えることなく、かつ通信端末側で専用のドライバなどを組み込むことなく、PCプリントデータの受信処理が実行されている途中で割り込みコピー処理を行うことが可能なネットワーク複合機を提供する。
【解決手段】 ネットワーク複合機1は、データの送受信を行うNIC10と、受信されたPDLデータをラスターデータに展開するプリンタコントローラ11aと、原稿を読み取り画像データを生成する読取部15と、ラスターデータ及び画像データを用紙にプリントアウトする記録部12とを備える。NIC10は、PDLデータの受信中に割り込みコピー処理の要求があった場合、送信元(PC30)に対して、セッションを張った状態でPDLデータの送信を禁止する持続接続制御を実行する持続接続制御部10aを有する。持続接続制御部10aは、原稿の読み取りが終了したときに、持続接続制御を解除して、PDLデータの送信を許可する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ネットワーク複合機に関し、特に、PCプリント機能及び割り込みコピー機能を有するネットワーク複合機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、LANなどのネットワークを介して接続されているパーソナルコンピュータなどから受信したプリントデータを用紙にプリントアウトするPCプリント機能、及び、例えばPCプリント処理が実行されている途中でコピー処理を行う割り込みコピー機能を有するネットワーク複合機が知られている。ここで、プリントデータの受信中に割り込みコピーの要求が入ると、割り込みコピー処理が実行されている間に受信されたプリントデータを記憶しておくための大容量のメモリが必要となる。特に、プリンタエンジン等を1つしか備えていない場合には、複数の画像データを同時に処理することができないため、大容量のメモリを設けることが要求される。
【0003】
メモリの大容量化を回避するためには、割り込みコピー処理中に、プリントデータを受信しない構成とすることも考えられる。ここで、特許文献1には、印刷動作中でも、割り込みコピーモードの設定をすることによってコピー動作が行える複写装置が開示されている。この複写装置は、プリンタモードによる印刷動作の実行中に、プリンタ割り込みコピーモードが設定されたときは、印刷動作が中断された旨を外部装置(パーソナルコンピュータなどの通信端末)に通知する。また、この複写装置は、プリンタ割り込みコピーモードが解除されたときは、その旨を外部装置に通知するとともに、中断前のプリントモードに移行して、中断された印刷動作を再開する。
【0004】
より詳細には、この複写装置によれば、プリントモードによる印刷動作の実行中に、操作パネルのプリンタ割り込みキー(割り込みコピーモードの設定キー)が押されると、外部装置に対して、キー押下通知が送出される。このキー押下通知を受け取ると、外部装置は、割り込みコピーモードへ移行し、プリンタモード中断コマンドを送出し、プリンタモードが再開されるまで待機する。一方、複写装置は、コピー動作を開始する。そして、コピー作業が終了し、プリンタ割り込み終了キーが押下られると、複写装置は、外部装置にプリンタモード再開コマンドを送出する。外部装置では、プリンタモードが再開されると、中断前と同様に、プリントデータの送出等が行われる。すべてのプリントデータの出力が終了すると、外部装置からプリンタ実行終了のコマンドが送出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−272266号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1記載の複写装置では、割り込みコピー処理を実行する際、印刷動作を中断するために、外部装置との間で、「キー押下」「プリンタモード中断」「プリンタモード再開」「プリンタ実行終了」などのコマンドの送受信が行われる。これらのコマンドの送信手順、コマンドフォーマットは予め決められており、コマンドの送受信・解析などに対応するためには、外部装置側で専用のドライバを組み込むことが必要となる。そのため、汎用性に乏しいという問題があった。
【0007】
本発明は、上記問題点を解消する為になされたものであり、大容量のメモリを備えることなく、かつ通信端末側で専用のドライバなどを組み込むことなく、PCプリントデータの受信処理が実行されている途中で割り込みコピー処理を行うことが可能なネットワーク複合機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るネットワーク複合機は、ネットワークを介して接続される通信端末との間でデータの送受信を行う通信手段と、原稿を読み取り画像データを生成する読取手段と、
通信手段により受信されたプリントデータ、及び、読取手段により生成された画像データを用紙にプリントアウトする記録手段とを備え、プリントデータを受信している途中で、読取手段及び前記記録手段を用いる割り込みコピー処理の要求があった場合に、プリントデータの送信元に対して、セッションを張った状態でプリントデータの送信を禁止する持続接続制御を実行する持続接続制御手段を通信手段が有することを特徴とする。
【0009】
本発明に係るネットワーク複合機によれば、プリントデータが受信されている途中で、割り込みコピー処理の要求があった場合に、プリントデータの送信元に対して、セッションを張った状態でプリントデータの送信を禁止する持続接続制御(キープアライブ)が実行される。そのため、通信端末(送信元)側で専用のドライバなどを組み込みことなく、プリントデータの送出を停止することができる。また、自機側では、大容量のメモリを備える必要がない。その結果、大容量のメモリを備えることなく、かつ通信端末側で専用のドライバなどを組み込むことなく、PCプリントデータの受信処理が実行されている途中で割り込みコピー処理を行うことが可能となる。
【0010】
本発明に係るネットワーク複合機では、持続接続制御手段が、読取手段による原稿の読み取りが終了したときに、持続接続制御を解除し、プリントデータの送信元に対して、プリントデータの送信を許可することが好ましい。
【0011】
この場合、原稿の読み取りが終了した時点で持続接続制御が解除され、プリントデータの送信元に対してプリントデータの送信が許可される。そのため、生成された画像データのプリントアウトに続いて、プリントデータを受信し、用紙にプリントアウトすることができる。また、原稿の読み取りが終了される時点では、送信元との間で既にセッションが張られているため、プリントデータの受信を迅速に再開することができる。
【0012】
本発明に係るネットワーク複合機では、割り込みコピー処理の要求があった場合に、持続接続制御手段が、プリントデータに含まれるページの区切りを示す情報が検出されたタイミングで、プリントデータの送信元に対して持続接続制御を実行し、記録手段が、ページの区切りを示す情報で区切られたページまで用紙にプリントアウトするとともに、読取手段により読み取られた原稿の画像データをプリントアウトした後に、持続接続制御が解除された送信元から受信されるプリントデータをプリントアウトすることが好ましい。
【0013】
この場合、プリントデータのページの区切りで、持続接続制御が実行されてプリントデータの送信が禁止される。そのため、プリントデータのページの区切りで、PCプリント処理から割り込みコピー処理へ処理を切替えることができる。また、プリントデータを一時的に格納するためのメモリ量を低減することが可能となる。
【0014】
また、本発明に係るネットワーク複合機では、ページの区切りを示す情報に続いて、プリントジョブの終了を示す情報が検出された場合には、持続接続制御手段が、持続接続制御を実行しないことが好ましい。このようにすれば、不要な持続接続制御が実行されることを抑制することができる。
【0015】
本発明に係るネットワーク複合機は、受信手段により受信されたプリントデータを一時的に記憶する記憶手段を備え、持続接続制御手段が、割り込みコピー処理の要求があったタイミングで、プリントデータの送信元に対して持続接続制御を実行し、記録手段が、読取手段により読み取られた原稿の画像データをプリントアウトした後に、記憶手段に記憶されているプリントデータ、及び、持続接続制御が解除された送信元から受信されるプリントデータをプリントアウトすることが好ましい。
【0016】
この場合、割り込みコピー処理の要求があった時点で、持続接続制御が実行されてプリントデータの送信が禁止される。よって、より迅速にプリント処理から割り込みコピー処理へ処理を切替えることができ、割り込みコピー処理を迅速に開始・実行することが可能となる。また、プリントデータの送信が禁止される際に、途中まで受信されたプリントデータが、一時的に記憶手段に記憶される。そして、原稿の読み込みが終了し、プリントデータの送信が許可されるときに、記憶手段に記憶されているプリントデータ、及び、新たに受信されるプリントデータがプリントアウトされる。よって、プリントデータを欠落させることなくプリントアウトすることができる。
【0017】
ここで、上記プリントデータはPDLデータであり、通信手段により受信されたPDLデータをラスターデータに展開する展開手段を備え、記録手段が、展開手段により展開されたラスターデータを用紙にプリントアウトすることが好ましい。
【0018】
このようにすれば、PDL(Page Description Language:ページ記述言語)で記述されたプリントデータ(PDLデータ)を用いたPCプリントデータの受信中に、割り込みコピー処理の要求があったとしても、適切に割り込みコピー処理を実行することができる。
【0019】
本発明に係るネットワーク複合機では、割り込みコピー処理の要求があった場合に、持続接続制御手段が、PDLデータに含まれるページの区切りを示す情報が検出されたタイミングで、PDLデータの送信元に対して持続接続制御を実行し、展開手段が、ページの区切りを示す情報で区切られたページまでラスターデータに展開するとともに、読取手段により原稿が読み取られた後に、持続接続制御が解除された送信元から受信されるPDLデータを展開することが好ましい。
【0020】
この場合、プリントデータのページの区切りで、持続接続制御が実行されてPDLデータの送信が禁止される。そのため、PDLデータのページの区切りで、PCプリント処理から割り込みコピー処理へ処理を切替えることができる。また、PDLデータを一時的に格納するためのメモリ量を低減することが可能となる。
【0021】
本発明に係るネットワーク複合機は、受信手段により受信されたPDLデータを一時的に記憶する記憶手段を備え、持続接続制御手段が、コピー処理の要求があったタイミングで、PDLデータの送信元に対して持続接続制御を実行し、展開手段が、持続接続制御が解除された後に、記憶手段に記憶されているPDLデータ、及び、持続接続制御が解除された送信元から受信されたPDLデータをラスターデータに展開し、記録手段が、読取手段により読み取られた原稿の画像データをプリントアウトした後に、展開手段により展開されるラスターデータをプリントアウトすることが好ましい。
【0022】
この場合、割り込みコピー処理の要求があった時点で、持続接続制御が実行されてPDLデータの送信が禁止される。よって、より迅速にプリント処理から割り込みコピー処理へ処理を切替えることができ、割り込みコピー処理を迅速に開始・実行することが可能となる。また、PDLデータの送信が禁止される際に、途中まで受信されたPDLデータが、一時的に記憶手段に記憶される。そして、原稿の読み込みが終了し、PDLデータの送信が許可されるときに、記憶手段に記憶されているPDLデータ、及び、新たに受信されたPDLデータがラスターデータに展開されてプリントアウトされる。よって、PDLデータを欠落させることなくプリントアウトすることができる。
【0023】
なお、上記プリントデータは、GDIデータであってもよい。この場合、GDI(Graphic Device Interface)によって生成されたラスター形式のプリントデータ(GDIデータ)用いたPCプリントデータの受信中に、割り込みコピー処理の要求があったとしても、適切に割り込みコピー処理を実行することができる。また、GDIデータによる方式では、送信元(通信端末側)でデータのラスタライズ等の処理が行われ、ラスターデータとしてネットワーク複合機側へ送られるため、ネットワーク複合機側では、ラスターデータを生成するための展開処理を行う必要がない。
【0024】
本発明に係るネットワーク複合機では、持続接続制御手段が、持続接続制御を実行する際に、TCP/IPに従い、自機の受信可能データ量が略ゼロであることを示す情報を送信元に対して送出することが好ましい。この場合、持続接続制御が実行されるときに、TCP/IPに従い、受信可能データ量として略ゼロ(典型的にはゼロ)がプリンタデータの送信元に対して送出される。そのため、セッションを張った状態で該送信元によるプリントデータの送出を迅速に停止することが可能となる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、大容量のメモリを備えることなく、かつ通信端末側で専用のドライバなどを組み込むことなく、PCプリントデータの受信処理が実行されている途中で割り込みコピー処理を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】第1実施形態に係るネットワーク複合機の全体構成を示すブロック図である。
【図2】第1実施形態に係るネットワーク複合機による、PDLデータのプリント処理の処理手順を示すフローチャート(1ページ目)である。
【図3】第1実施形態に係るネットワーク複合機による、PDLデータのプリント処理の処理手順を示すフローチャート(2ページ目)である。
【図4】第1実施形態に係るネットワーク複合機による、割り込みコピー処理の処理手順を示すフローチャートである。
【図5】第2実施形態に係るネットワーク複合機の全体構成を示すブロック図である。
【図6】第2実施形態に係るネットワーク複合機による、PDLデータのプリント処理の処理手順を示すフローチャート(1ページ目)である。
【図7】第2実施形態に係るネットワーク複合機による、PDLデータのプリント処理の処理手順を示すフローチャート(2ページ目)である。
【図8】第2実施形態に係るネットワーク複合機による、割り込みコピー処理の処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、各図において、同一要素には同一符号を付して重複する説明を省略する。また、ネットワーク複合機(MFP)がLANを介してパーソナルコンピュータ(以下「PC」という。特許請求の範囲に記載の通信端末に相当。)と接続されているネットワーク構成を例にして説明する。なお、例示するネットワークシステムは、理解を容易にするためにその構成を簡略化したものである。
【0028】
(第1実施形態)
まず、図1を用いて、第1実施形態に係るネットワーク複合機1の全体構成について説明する。図1は、LAN51に接続されたネットワーク複合機1の全体構成を示すブロック図である。
【0029】
ネットワーク複合機1は、原稿を読み取り画像データを生成するスキャナ機能、読み取り生成した画像データを用紙にプリントアウトするコピー機能、及び、LAN51を介して接続されているPC30から受信したPCプリントデータを用紙にプリントアウトするPCプリント機能を備えている。また、ネットワーク複合機1は、ファクシミリ通信により受信した画像データを用紙にプリントアウトするFAX受信機能、読み取った画像データをファクシミリ送信するFAX送信機能に加え、外部のPC30から受信した画像データをファクシミリ送信するPC−FAX機能を備えている。さらに、ネットワーク複合機1は、電子メールを利用してIP網経由で画像データを送受信するインターネットFAX(IFAX)機能等も有している。これらの各機能を実現するためにネットワーク複合機1は、NIC10、制御部11、記録部12、操作部13、表示部14、読取部15、コーデック16、画像記憶部17、モデム18、NCU19、IFAX制御部20、及び、Webサーバ21等を備えている。なお、上記各部はバス(通信路)23で相互に通信可能に接続されている。
【0030】
NIC10は、各種通信プロトコルの送受信制御処理、及び各種通信プロトコル上のデータ解析処理及びデータ作成処理を行なうネットワークインターフェースである。NIC10は、LAN51を介してPC30に接続されており、PC30との間で、例えばTCP/IPに従ってデータの通信を行なう。すなわち、NIC10は、特許請求の範囲に記載された通信手段として機能する。例えば、NIC10は、TCP/IPに従い、PC30との間にセッションを形成して、PDL(Page Description Language)で記述されたPCプリントデータ(以下、「プリントデータ」又は「PDLデータ」ともいう)を受信する。なお、受信されたプリントデータは、制御部11に転送される。
【0031】
NIC10は、演算を行なうマイクロプロセッサ、マイクロプロセッサに各処理を実行させるためのプログラム等を記憶するROM、マイクロプロセッサにより制御されて通信処理を行う通信用チップ(IC)、及び通信用チップにより受信され、該通信用チップから読み出された受信データなどを一時的に記憶するRAM、及びデータがバックアップされているバックアップRAM等により構成されている。なお、NIC10は、上述したマイクロプロセッサ、通信用チップ、ROM、RAM等がワンチップに収められたマイクロコンピュータを用いて構成してもよい。
【0032】
NIC10では、上述したハードウェアとソフトウェアの組み合わせにより、持続接続制御部10aが構築されている。
【0033】
持続接続制御部10aは、例えばPC30との間でセッションが確立され、PC30からPDLデータを受信しているとき(受信処理中)に、割り込みコピー処理の要求があった場合、PDLデータの送信元(PC30)に対して、セッションを張った状態でプリントデータの送信を禁止する持続接続制御(キープアライブ)を実行する。すなわち、持続接続制御部10aは、特許請求の範囲に記載の持続接続制御手段として機能する。
【0034】
より詳細には、持続接続制御部10aは、割り込みコピー処理の要求があった場合に、PDLデータに含まれるページの区切りを示す情報(ページクローズ情報)が検出されたタイミングで、PDLデータの送信元(PC30)に対して持続接続制御を実行する。その際に、NIC10は、制御部11(プリンタコントローラ11a)に対して、ページクローズ情報で区切られたページまでのデータを転送するとともに、処理を終了する指示を通知する。なお、ページの区切りを示す情報に続いて、プリントジョブの終了を示す情報があるか否か(すなわち最終ページであるか否か)を検出し、プリントジョブの終了を示す情報が検出された場合には、持続接続制御を実行しない構成としてもよい。
【0035】
また、持続接続制御部10aは、読取部15による原稿の読み取りが終了したときに、持続接続制御を終了し、PDLデータの送信元(PC30)に対して、PDLデータの送信を許可する。より具体的には、読取部15による原稿の読み取りが終了したときに、画像記憶部17の空き容量が、例えば、600dpiの解像度でA3用紙1ページ分以上あった場合に持続接続制御を終了する。なお、画像記憶部17に600dpiの解像度でA3用紙1ページ分以上の空き容量が無い場合には、一旦、持続接続制御の終了を保留し、容量が空いた時点で持続接続制御を終了することができる。PDLデータの送信が許可された場合には、NIC10は、制御部11(プリンタコントローラ11a)に対して、持続接続制御が開始された際に受信されておりかつ転送されなかったPDLデータを先に転送し、その後、新たに受信されるPDLデータを転送する。
【0036】
ここで、持続接続制御部10aは、持続接続制御を行う際に、PC30に対して、windows sizeがゼロのACK(win=0)を返信することにより直ちに持続接続制御を開始する。ACK(win=0)が返信されると、送信元(PC30)は、受信バッファが空いたか否かを問い合わせる信号TCP Zero Window Probe(win=0)を定期的に送出する。この信号に対して、持続接続制御部10aが、受信バッファに空き容量がないことを示す信号TCP Zero Window Probe ACK(win=0)を返すことにより持続接続制御が行われる。すなわち、持続接続制御が維持されている間、TCP Zero Window Probe(win=0)に対してTCP Zero Window Probe ACK(win=0)が返信される。一方、持続接続制御部10aは、持続接続制御を解除する際に、例えば、ACK(win=4096)を送信元へ送信する。
【0037】
制御部11は、演算を行なうマイクロプロセッサ、マイクロプロセッサに各処理を実行させるためのプログラム等を記憶するROM、演算結果等の各種データを一時的に記憶するRAM、及びバックアップデータを記憶するバックアップRAM等により構成されている。制御部11は、ROMに記憶されているプログラムを実行することにより、ネットワーク複合機1を構成する記録部12、読取部15、及びその他のハードウェアを統合的に制御し、PCプリント機能、コピー機能(割り込みコピー機能)などの各種機能を実現する。
【0038】
また、制御部11は、例えばPC30などから入力されるPDLデータを解釈・展開してラスターデータを生成するプリンタコントローラ11a有している。プリンタコントローラ11aは、特許請求の範囲に記載の展開手段として機能する。プリンタコントローラ11aは、NIC10から転送されたPDLデータを一時的に格納するスプールバッファを有しており、ラスターデータを生成する際に、該スプールバッファに格納されているPDLデータを読み出して処理する。プリンタコントローラ11aにより生成されたラスターデータは、制御部11を介して記録部12に出力される。
【0039】
記録部12は、電子写真方式のプリンタであり、プリンタコントローラ11aにより生成されたラスターデータを用紙にプリントアウトする。すなわち、記録部12は、特許請求の範囲に記載の記録手段として機能する。また、記録部12は、読取部15により読み取られ生成された画像データ、及びFAX、IFAX等で受信された画像データを用紙にプリントアウトする。そのため、記録部12は、プリンタエンジン12aを備えている。
【0040】
プリンタエンジン12aは、印刷を行う印刷機構である。プリンタエンジン12aは、プリンタコントローラ11aから入力されるラスターデータ、読取部15で読み取られ生成された画像データなどを用紙に印刷する。より詳細には、プリンタエンジン12aは、給紙、ドラムへの帯電、レーザの照射、トナーの塗布、用紙への転写、定着等の印刷工程を実行し、ラスターデータのプリントアウトを行う。
【0041】
操作部13は、ネットワーク複合機1の各機能を利用するために用いられる複数のキー、例えば、割り込みコピーボタン、スタートボタン、ストップボタン、テンキー、短縮キー、及び各種のファンクションキー等を備えている。表示部14は、LCD等を用いた表示装置であり、割り込みコピーが可能である旨のほか、ネットワーク複合機1の動作状態及び/又は各種設定内容等を表示する。
【0042】
読取部15は、ADF(Auto Document Feeder)などにセットされた原稿をページ毎に読み取り、画像データを生成する。詳細には、読取部15は、光源及びCCD等を有しており、原稿を設定された副走査線密度に応じてライン毎に読み取り、画像データを生成する。また、読取部15は、割り込みコピー要求があった場合には、直ちに原稿の読み取りを開始する。すなわち、PDLデータの受信中、及びプリントアウト中であっても原稿の読み取りを開始する。すなわち、読取部15は、特許請求の範囲に記載の読取手段として機能する。なお、読取部15で生成された画像データは、コピー処理では記録部12に出力され、ファクシミリ処理ではコーデック16に出力される。
【0043】
コーデック16は、読取部15で読み取られた画像データを符号化圧縮するとともに符号化圧縮されている画像データを復号する。画像記憶部17は、DRAM等で構成されており、コーデック16で符号化圧縮された画像データ、FAX受信された画像データ、及び、外部のパーソナルコンピュータなどから受信されて符号化圧縮された画像データ等を記憶する。
【0044】
モデム(変復調器)18は、ディジタル信号とアナログ信号との間の変復調を行なう。また、モデム18は、ディジタル命令信号(DCS)等の各種機能情報の発生及び検出を行なう。NCU(Network Control Unit)19は、モデム18と接続されており、モデム18と公衆交換電話網(PSTN)50との接続を制御する。また、NCU19は、送信先のファクシミリ番号に対応した呼出信号の送出、及びその着信を検出する機能を備えている。
【0045】
IFAX制御部20は、インターネット環境を利用したIFAX機能を司る。IFAX制御部20は、SMTP(Simple Mail Transfer Protocol)に従って電子メールを送信する機能、及び、POP(Post Office Protocol)に従って電子メールを受信する機能を有している。IFAX制御部20は、送信原稿をTIFF形式等の画像データとして電子メールに添付し、メールアドレス(SMTPサーバ)宛てに送信する。また、IFAX制御部20は、設定された時間毎にPOPサーバから電子メールを受信して添付ファイルをプリントアウトする。Webサーバ21は、例えばHTMLで記述されたホームページ、ログインページ、及びファクシミリ操作ページ等のデータに対して、外部のパーソナルコンピュータなどからアクセスして所定のHTTPタスクを実行することを可能にする。
【0046】
次に、図2〜図4を併せて参照しつつ、ネットワーク複合機1による、PDLデータ(PCプリントデータ)のプリント処理、及び割り込みコピーについて説明する。図2及び図3は、PDLデータのプリント処理の処理手順を示すフローチャート(1ページ目及び2ページ目)である。また、図4は、割り込みコピー処理の処理手順を示すフローチャートである。
【0047】
まず、図2,3を参照しつつ、PDLデータのプリント処理について説明する。ステップS100では、セッション確立要求があるか否か(SYN信号が受信されたか否か)の判断が行われる。ここで、セッション確立要求がある場合は、ステップS102に処理が移行する。一方、セッション確立要求がないときには、セッション確立要求があるまで本ステップが繰り返し実行される。
【0048】
セッション確立要求があった場合、ステップS102では、セッション確立処理が実行され、セッション確立要求の送信元(例えばPC30)との間でセッションが確立する。より具体的には、SYN信号に対してACK/SYN信号を返すことによりセッションが確立する。
【0049】
続いて、ステップS104では、受信データがPDLデータであるか否かについての判断が行われる。ここで、受信データがPDLデータではない場合には、ステップS106に処理が移行する。一方、受信データがPDLデータである場合には、ステップS112に処理が移行する。
【0050】
受信データがPDLデータではない場合、ステップS106では、該受信データに対応したネットワーク処理が実行される。続いて、ステップS108では、セッション切断要求があるか否か(すなわち、セッションを切断するためのFIN信号が受信されたか否か)についての判断が行われる。ここで、セッション切断要求があった場合には、ステップS110に処理が移行する。一方、セッション切断要求がないときには、ステップS106に処理が移行し、セッション切断要求があるまで上述したステップS106の処理が繰り返し実行される。
【0051】
セッション切断要求があった場合、ステップS110では、セッション切断処理が実行される。より具体的には、ACK/FIN信号が返され、セッションが切断される。その後、本処理が終了する。
【0052】
受信データがPDLデータである場合、ステップS112では、PDLデータを受信中であることを示すフラグが記憶される。続いて、ステップS114において、プリンタコントローラ11aに対して、PCプリント処理の開始が指示される。その後、ステップS118において、PDLデータがプリントコントローラ11aに転送される。
【0053】
次に、ステップS120では、割り込みコピー処理の開始要求(詳細は後述する)があるか否かについての判断が行われる。ここで、割り込みコピー処理の開始要求があった場合には、ステップS136に処理が移行する。一方、割り込みコピー処理の開始要求がないときには、ステップS122処理が移行する。
【0054】
ステップS122では、PDLデータが受信されたか否かについての判断が行われる。ここで、PDLデータが受信された場合には、ステップS124に処理が移行する。一方、PDLデータが受信されていないときには、ステップS120に処理が移行し、割り込みコピー処理の開始要求があるか、又は、PDLデータが受信されるまで、上述した、ステップS120、S122の処理が繰り返して実行される。
【0055】
PDLデータが受信された場合、ステップS124において、受信されたPDLデータが、プリンタコントローラ11aに転送される。その後、ステップS126では、セッション切断要求があるか否かについての判断が行われる。ここで、セッション切断要求があった場合には、ステップS128に処理が移行する。一方、セッション切断要求がないときには、ステップS120に処理が移行し、上述したステップS120以降の処理が繰り返して実行される。
【0056】
セッション切断要求があった場合、ステップS128では、セッション切断処理が実行され、(例えばPC30との間の)セッションが切断される。続いて、ステップS130では、プリンタコントローラ11aに対して、PCプリント処理の終了が指示される。その後、ステップS134において、PDLデータを受信中であることを示すフラグが削除される。その後、本処理が終了する。
【0057】
上述したステップS120において、割り込みコピー処理の開始要求があると判断された場合、ステップS136では、PDLデータが受信されたか否かについての判断が行われる。ここで、PDLデータが受信された場合には、ステップS138に処理が移行する。一方、PDLデータが受信されていないときには、PDLデータが受信されるまで、本ステップが繰り返して実行される。
【0058】
ステップS138では、PDLデータにページの終了を示すページ終了指示子(ページクローズ情報)があるか否かについての判断が行われる。ここで、ページ終了指示子がある場合には、図3に示される、ステップS146に処理が移行する。一方、ページ終了指示子がないときには、ステップS140に処理が移行する。
【0059】
ステップS140では、PDLデータがプリントコントローラ11aに転送される。その後、ステップS142では、セッション切断要求があるか否かについての判断が行われる。ここで、セッション切断要求があった場合には、ステップS144に処理が移行する。一方、セッション切断要求がないときには、ステップS136に処理が移行し、上述したステップS136以降の処理が繰り返して実行される。
【0060】
セッション切断要求があった場合、ステップS144では、セッション切断処理が実行され、(例えばPC30との間の)セッションが切断される。その後、上述したステップS130に処理が移行する。
【0061】
上述したステップS138において、PDLデータにページ終了指示子があると判断された場合、ステップS146では、PDLデータのページ終了指示子までのデータがプリントコントローラ11aに転送される。続く、ステップS148では、PDLデータのページ終了指示子から後のデータが記憶される。続いて、ステップS150では、プリンタコントローラ11aに対して、PCプリント処理の終了が指示される。
【0062】
次に、ステップS152では、Window Size=0のACKが送出され、PDLデータの送信元(例えばPC30)に対して、セッションを張った状態でPDLデータの送信を禁止する持続接続制御が開始される。続いて、ステップS154では、受信バッファが空いたか否かを問い合わせるTCP Zero Windowが受信されたか否かについての判断が行われる。ここで、TCP Zero Windowが受信されていない場合には、TCP Zero Windowが受信されるまで、本ステップが繰り返して実行される。一方、TCP Zero Windowが受信されたときには、ステップS156に処理が移行する。
【0063】
ステップS156では、割り込みコピー処理の終了通知(詳細は後述する)があるか否かについての判断が行われる。ここで、割り込みコピー処理の終了通知があった場合には、ステップS160に処理が移行する。一方、割り込みコピー処理の終了通知がないときには、ステップS158に処理が移行する。
【0064】
ステップS158では、PDLデータの送信元(例えばPC30)に対して、受信バッファに空き容量がないことを示すTCP Zero Window Probe ACKが送出され持続接続制御が継続される。その後、ステップS154に処理が移行し、上述したステップS154以降の処理が繰り返して実行される。
【0065】
PDLデータの受信終了指示があった場合、ステップS160では、Window Size=4096のACKが送出され、PDLデータの送信元(例えばPC30)に対する持続接続制御が解除される。続いて、ステップS162では、プリンタコントローラ11aに対して、PCプリント処理の開始が指示される。そして、ステップS164において、ステップS150で記憶されたPDLデータのページ終了指示子から後のデータがプリンタコントローラ11aに転送される。その後、図2に示されるステップS120に処理が移行し、上述したステップS120以降の処理が実行される。
【0066】
続いて、図4を参照しつつ、割り込みコピー処理について説明する。まず、ステップS200では、ユーザにより割り込みコピーボタンが押下げられることにより、割り込みコピー要求信号が入力される。その場合、続くステップS202において、PDLデータ(プリントデータ)が受信処理中であるか否かについての判断が行われる。ここで、PDLデータが受信処理中ではない場合には、ステップS204において、無効処理であることを示すブザー音が出力された後、本処理から抜ける。一方、PDLデータが受信処理中のときには、ステップS206に処理が移行する。
【0067】
ステップS206では、ユーザによりコピーのスタートボタンが押下げられることにより、コピースタート信号が入力される。その場合、続くステップS208において、読取部15に原稿がセットされているか否かについての判断が行われる。ここで、読取部15に原稿がセットされていない場合には、ステップS210において、表示部14にエラー表示がされた後、ステップS206に処理が移行し、読取部15に原稿がセットされるまで、上述したステップS206,S208の処理が繰り返して実行される。一方、読取部15に原稿がセットされているときには、ステップS212に処理が移行する。
【0068】
ステップS212では、割り込みコピー処理の開始要求があった旨を示す情報がPDLデータ処理側に通知される(図2のステップS120参照)。次に、ステップS214では、セットされた原稿の読み取り処理が実行される。続いて、ステップS216では、すべての原稿(ページ)の読み取りが終了したか否かについての判断が行われる。ここで、まだ読み取られていない原稿がある場合には、ステップS214に処理が戻り、すべての原稿が読み取られるまで、上述したステップS214、S216の処理が繰り返して実行される。一方、すべての原稿の読み取りが終了したときには、ステップS218に処理が移行する。
【0069】
ステップS218では、読み取られた原稿がプリントアウトされる。続いて、ステップS220では、ユーザにより指定された部数のプリントアウト処理が終了したか否かについての判断が行われる。ここで、指定部数分のプリントアウト処理が終了した場合には、ステップS222に処理が移行する。一方、指定部数分のプリントアウト処理がまだ終了していないときには、ステップS224に処理が移行する。
【0070】
ステップS224では、600dpiの解像度でA3用紙1ページ分の画像データを格納できる記憶エリアが残っているか否かについての判断が行われる。ここで、画像データを格納できる記憶エリアが残っている場合には、ステップS226に処理が移行する。一方、画像データを格納できる記憶エリアが残っていないときには、ステップS230に処理が移行する。
【0071】
ステップS226では、割り込みコピー処理の開始要求があった旨を示す情報がPDLデータ処理側に通知済みであるか否かについての判断が行われる。ここで、情報が既に通知済みの場合には、ステップS218に処理が移行し、上述したステップS218以降の処理が再度実行される。一方、情報がまだ通知されていないときには、ステップS228において、割り込みコピー処理が終了した旨を示す情報がPDLデータ処理側に通知(図3のステップS156参照)された後、ステップS218に処理が移行する。そして、上述したステップS218以降の処理が再度実行される。
【0072】
ステップS224において、記憶エリアが残っていないと判断されたときには、ステップS230において、割り込みコピー処理の開始要求があった旨を示す情報がPDLデータ処理側に通知済みであるか否かについての判断が行われる。ここで、情報が既に通知済みの場合には、ステップS218に処理が移行し、上述したステップS218以降の処理が再度実行される。一方、情報がまだ通知されていないときには、ステップS232において、割り込みコピー処理の開始要求があった旨を示す情報がPDLデータ処理側に通知(図2のステップS120参照)された後、ステップS218に処理が移行する。そして、上述したステップS218以降の処理が再度実行される。
【0073】
一方、ステップS220において、指定部数分のプリントアウトが終了したと判断された場合には、ステップS222において、割り込みコピー処理が終了した旨を示す情報がPDLデータ処理側に通知される(図3のステップS156参照)。その後、本処理が終了する。
【0074】
本実施形態によれば、PDLデータ(PCプリントデータ)が受信されている途中で、割り込みコピー処理の要求があった場合に、PDLデータの送信元(例えばPC30)に対して、セッションを張った状態でPDLデータの送信を禁止する持続接続制御が実行される。そのため、通信端末(PC30)側で専用のドライバなどを組み込みことなく、PDLデータの送出を停止することができる。また、自機側では、大容量のメモリを備える必要がない。その結果、大容量のメモリを備えることなく、かつ通信端末側で専用のドライバなどを組み込むことなく、PCプリントデータの受信処理が実行されている途中で割り込みコピー処理を行うことが可能となる。
【0075】
また、本実施形態によれば、原稿の読み取りが終了した時点で持続接続制御が解除され、PDLデータの送信元(例えばPC30)に対してPDLデータの送信が許可される。そのため、生成された画像データのプリントアウトに続いて、PDLデータを受信し、用紙にプリントアウトすることができる。また、原稿の読み取りが終了される時点では、送信元との間で既にセッションが張られているため、PDLデータの受信を迅速に開始することができる。
【0076】
さらに、本実施形態によれば、PDLデータのページの区切りで、持続接続制御が実行されてPDLデータの送信が禁止される。そのため、PDLデータのページの区切りで、PCプリント処理からコピー処理へ処理を切替えることができる。また、PDLデータを一時的に格納するためのメモリ量をより低減することが可能となる。
【0077】
(第2実施形態)
上記実施形態では、PDLデータの受信中に割り込みコピー要求が受け付けられた場合、PDLデータに含まれるページの終わりが検出されるのを待って持続接続制御を開始したが、割り込みコピー要求が受け付けられた時点で、すぐに持続接続制御を開始する構成としてもよい。
【0078】
次に、図5を用いて、第2実施形態に係るネットワーク複合機2の構成について説明する。図5は、ネットワーク複合機2の全体構成を示すブロック図である。なお、図5において第1実施形態と同一又は同等の構成要素については同一の符号が付されている。
【0079】
ネットワーク複合機2は、NIC10に代えて、メモリ10cを有するNIC10Bを備えている点で上述したネットワーク複合機1と異なっている。また、NIC10Bは、持続接続制御部10aに代えて、持続接続制御部10bを有している点でNIC10と異なっている。その他の構成は、上述したネットワーク複合機1と同一又は同様であるので、ここでは説明を省略する。
【0080】
メモリ10cは、例えば、DRAMなどで構成されており、受信されたPDLデータを一時的に記憶する。より詳細には、NIC10Bでは、ページの区切りを示す情報(ページオープン情報及びページクローズ情報)を監視しており、メモリ10cは、ページオープン情報からページクローズ情報まで(ページクローズ情報が検出されていないときは受信されたところまで)のPDLデータを記憶する。メモリ10cは、特許請求の範囲に記載の記憶手段に相当する。
【0081】
持続接続制御部10bは、割り込みコピー処理の要求があった時点で、PDLデータの送信元(例えばPC30)に対して持続接続制御を実行する。なお、その際に、NIC10Bは、制御部11(プリンタコントローラ11a)に対して、処理中のページのラスターデータを破棄するとともに、処理を終了する指示を通知する。
【0082】
また、持続接続制御部10bは、読取部15による原稿の読み取りが終了した後に、PDLデータの送信元(例えばPC30)に対してPDLデータの送信を許可する。なお、PDLデータの送信が許可された場合、NIC10Bは、制御部11(プリンタコントローラ11a)に対して、メモリ10cに一時的に記憶されているPDLデータを先に転送し、その後、新たに受信されるPDLデータを転送する。よって、プリンタコントローラ11aは、PDLデータの送信が許可された際に、メモリ10cに記憶されているPDLデータをまずラスターデータに展開した後、送信元(PC30)から新たに受信されたPDLデータをラスターデータに展開し、プリンタエンジン12aに出力する。
【0083】
次に、図6〜図8を併せて参照しつつ、ネットワーク複合機2による、PDLデータ(PCプリントデータ)のプリント処理、及び割り込みコピー処理について説明する。図6及び図7は、PDLデータのプリント処理の処理手順を示すフローチャート(1ページ目及び2ページ目)である。また、図8は、割り込みコピー処理の処理手順を示すフローチャートである。
【0084】
まず、図6,7を参照しつつ、PDLデータのプリント処理について説明する。ステップS300では、セッション確立要求があるか否か(SYN信号が受信されたか否か)の判断が行われる。ここで、セッション確立要求がある場合は、ステップS302に処理が移行する。一方、セッション確立要求がないときには、セッション確立要求があるまで本ステップが繰り返し実行される。
【0085】
セッション確立要求があった場合、ステップS302では、セッション確立処理が実行され、セッション確立要求の送信元(例えばPC30)との間でセッションが確立する。より具体的には、SYN信号に対してACK/SYN信号を返すことによりセッションが確立する。
【0086】
続いて、ステップS304では、受信データがPDLデータであるか否かについての判断が行われる。ここで、受信データがPDLデータではない場合には、ステップS306に処理が移行する。一方、受信データがPDLデータである場合には、ステップS312に処理が移行する。
【0087】
受信データがPDLデータではない場合、ステップS306では、該受信データに対応したネットワーク処理が実行される。続いて、ステップS308では、セッション切断要求があるか否か(すなわち、セッションを切断するためのFIN信号が受信されたか否か)についての判断が行われる。ここで、セッション切断要求があった場合には、ステップS310に処理が移行する。一方、セッション切断要求がないときには、ステップS306に処理が移行し、セッション切断要求があるまで上述したステップS306の処理が繰り返し実行される。
【0088】
セッション切断要求があった場合、ステップS310では、セッション切断処理が実行される。より具体的には、ACK/FIN信号が返され、セッションが切断される。その後、本処理が終了する。
【0089】
受信データがPDLデータである場合、ステップS312では、PDLデータを受信中であることを示すフラグが記憶される。続いて、ステップS314において、プリンタコントローラ11aに対して、PCプリント処理の開始が指示される。その後、ステップS318において、PDLデータがプリントコントローラ11aに転送される。続くステップS320では、PDLデータの一時的な仮記憶が開始される。
【0090】
次に、ステップS322では、割り込みコピー処理の開始要求があるか否かについての判断が行われる。ここで、割り込みコピー処理の開始要求があった場合には、図7に示されるステップS348に処理が移行する。一方、割り込みコピー処理の開始要求がないときには、ステップS324処理が移行する。
【0091】
ステップS324では、PDLデータが受信されたか否かについての判断が行われる。ここで、PDLデータが受信された場合には、ステップS326に処理が移行する。一方、PDLデータが受信されていないときには、ステップS322に処理が移行し、割り込みコピー処理の開始要求があるか、又は、PDLデータが受信されるまで、上述した、ステップS322、S324の処理が繰り返して実行される。
【0092】
PDLデータが受信された場合、ステップS326では、受信されたPDLデータにページの終了を示すページ終了指示子(ページクローズ情報)があるか否かについての判断が行われる。ここで、ページ終了指示子がある場合には、ステップS328において、仮記憶されたPDLデータが削除された後、ステップS336に処理が移行する。一方、ページ終了指示子がないときには、ステップS330に処理が移行する。
【0093】
ステップS330では、受信されたPDLデータにページの開始を示すページ開始指示子(ページオープン情報)があるか否かについての判断が行われる。ここで、ページ開始指示子がある場合には、ステップS332において、受信されたPDLデータの仮記憶が開始された後、ステップS334に処理が移行する。一方、ページ終了指示子がないときには、そのまま、ステップS334に処理が移行する。
【0094】
ステップS334では、受信されたPDLデータが仮記憶される。続くステップS336では、受信されたPDLデータが、プリンタコントローラ11aに転送される。その後、ステップS338では、セッション切断要求があるか否かについての判断が行われる。ここで、セッション切断要求があった場合には、ステップS340に処理が移行する。一方、セッション切断要求がないときには、ステップS322に処理が移行し、上述したステップS322以降の処理が繰り返して実行される。
【0095】
セッション切断要求があった場合、ステップS340では、セッション切断処理が実行され、(例えばPC30との間の)セッションが切断される。続いて、ステップS342では、プリンタコントローラ11aに対して、PCプリント処理の終了が指示される。その後、ステップS346において、PDLデータを受信中であることを示すフラグが削除される。その後、本処理が終了する。
【0096】
上述したステップS322において、割り込みコピー処理の開始要求があると判断された場合、図7に示されるステップS348において、Window Size=0のACKが送出され、PDLデータの送信元(例えばPC30)に対して、セッションを張った状態でPDLデータの送信を禁止する持続接続制御が開始される。続いて、ステップS350では、受信バッファが空いたか否かを問い合わせるTCP Zero Windowが受信されたか否かについての判断が行われる。ここで、TCP Zero Windowが受信されていない場合には、TCP Zero Windowが受信されるまで、本ステップが繰り返して実行される。一方、TCP Zero Windowが受信されたときには、ステップS352に処理が移行する。
【0097】
ステップS352では、割り込みコピー処理の終了通知があるか否かについての判断が行われる。ここで、PDLデータの受信終了指示があった場合には、ステップS356に処理が移行する。一方、PDLデータの受信終了指示がないときには、ステップS354に処理が移行する。
【0098】
ステップS354では、PDLデータの送信元(例えばPC30)に対して、受信バッファに空き容量がないことを示すTCP Zero Window Probe ACKが送出され持続接続制御が継続される。その後、ステップS350に処理が移行し、上述したステップS350以降の処理が繰り返して実行される。
【0099】
PDLデータの受信終了指示があった場合、ステップS356では、Window Size=4096のACKが送出され、PDLデータの送信元(例えばPC30)に対する持続接続制御が解除される。続いて、ステップS358では、プリンタコントローラ11aに対して、PCプリント処理の開始が指示される。続いて、ステップS360において、仮記憶されているPDLデータがプリンタコントローラ11aに転送される。そして、ステップS362において、仮記憶されているPDLデータが削除された後、図6に示されるステップS322に処理が移行し、上述したステップS322以降の処理が実行される。
【0100】
なお、図8に示される、ネットワーク複合機2による、割り込みコピー処理(ステップS400〜ステップS432)は、上述したステップS200〜ステップS232の処理と同一であるので、ここでは、詳細な説明を省略する。
【0101】
本実施形態によれば、割り込みコピー処理の要求があった時点で、持続接続制御が実行されてPDLデータの送信が禁止される。よって、より迅速にプリント処理からコピー処理へ処理を切替えることができ、割り込みコピー処理を迅速に開始・実行することが可能となる。また、PDLデータの送信が禁止される際に、途中まで受信されたPDLデータが、一時的にメモリ10cに記憶される。そして、割り込みコピー処理が終了し、PDLデータの送信が許可されるときに、まず、メモリ10cに記憶されているPDLデータがラスターデータに展開され、その後、新たに受信されるPDLデータがラスターデータに展開される。よって、PDLデータを欠落させることなくプリントアウトすることができる。
【0102】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく種々の変形が可能である。例えば、ネットワーク複合機1,2を構成する機能的な要素の配置は、上記実施形態には限られない。例えば、メモリ10cを、NIC10Bではなく、プリンタコントローラ11a側に設ける構成としてもよい。
【0103】
上記実施形態では、PDLデータを用いたPCプリント処理を例にして説明したが、予めPC側のドライバーソフトで生成されたラスターデータ(GDIデータ)を用いてもよい。ラスターデータ(GDIデータ)がページ毎にTAG又はBoundary等を用いた識別子で区切られた状態になっている場合には、上記と同様の制御を実行することができる。なお、ラスターデータを用いた場合には、ネットワーク複合機1,2側で展開処理を行う必要はない。
【符号の説明】
【0104】
1,2 ネットワーク複合機
10,10B NIC
10a,10b 持続接続制御部
10c メモリ
11 制御部
11a プリンタコントローラ
12 記録部
12a プリンタエンジン
13 操作部
14 表示部
15 読取部
16 コーデック
17 画像記憶部
18 モデム
19 NCU
20 IFAX制御部
21 Webサーバ
30 パーソナルコンピュータ
51 LAN

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ネットワークを介して接続される通信端末との間でデータの送受信を行う通信手段と、
原稿を読み取り画像データを生成する読取手段と、
前記通信手段により受信されたプリントデータ、及び、前記読取手段により生成された画像データを用紙にプリントアウトする記録手段と、を備え、
前記通信手段は、前記プリントデータを受信している途中で、前記読取手段及び前記記録手段を用いる割り込みコピー処理の要求があった場合に、前記プリントデータの送信元に対して、セッションを張った状態でプリントデータの送信を禁止する持続接続制御を実行する持続接続制御手段を有することを特徴とするネットワーク複合機。
【請求項2】
前記持続接続制御手段は、前記読取手段による原稿の読み取りが終了したときに、前記持続接続制御を解除し、前記プリントデータの送信元に対して、プリントデータの送信を許可することを特徴とする請求項1に記載のネットワーク複合機。
【請求項3】
前記割り込みコピー処理の要求があった場合に、前記持続接続制御手段は、前記プリントデータに含まれるページの区切りを示す情報が検出されたタイミングで、前記プリントデータの送信元に対して前記持続接続制御を実行し、前記記録手段は、前記ページの区切りを示す情報で区切られたページまで用紙にプリントアウトするとともに、前記読取手段により読み取られた原稿の画像データをプリントアウトした後に、前記持続接続制御が解除された前記送信元から受信されるプリントデータをプリントアウトすることを特徴とする請求項2に記載のネットワーク複合機。
【請求項4】
前記持続接続制御手段は、前記ページの区切りを示す情報に続いて、プリントジョブの終了を示す情報が検出された場合には、前記持続接続制御を実行しないことを特徴とする請求項3に記載のネットワーク複合機。
【請求項5】
前記受信手段により受信された前記プリントデータを一時的に記憶する記憶手段を備え、
前記持続接続制御手段は、前記割り込みコピー処理の要求があったタイミングで、前記プリントデータの送信元に対して前記持続接続制御を実行し、
前記記録手段は、前記読取手段により読み取られた原稿の画像データをプリントアウトした後に、前記記憶手段に記憶されているプリントデータ、及び、前記持続接続制御が解除された前記送信元から受信されるプリントデータをプリントアウトすることを特徴とする請求項2に記載のネットワーク複合機。
【請求項6】
前記プリントデータはPDLデータであり、
前記通信手段により受信されたPDLデータをラスターデータに展開する展開手段を備え、
前記記録手段は、前記展開手段により展開されたラスターデータを用紙にプリントアウトすることを特徴とする請求項2に記載のネットワーク複合機。
【請求項7】
前記割り込みコピー処理の要求があった場合に、前記持続接続制御手段は、前記PDLデータに含まれるページの区切りを示す情報が検出されたタイミングで、前記PDLデータの送信元に対して前記持続接続制御を実行し、前記展開手段は、前記ページの区切りを示す情報で区切られたページまでラスターデータに展開するとともに、前記読取手段により原稿が読み取られた後に、前記持続接続制御が解除された前記送信元から受信されるPDLデータを展開することを特徴とする請求項6に記載のネットワーク複合機。
【請求項8】
前記受信手段により受信された前記PDLデータを一時的に記憶する記憶手段を備え、
前記持続接続制御手段は、前記コピー処理の要求があったタイミングで、前記PDLデータの送信元に対して前記持続接続制御を実行し、
前記展開手段は、持続接続制御が解除された後に、前記記憶手段に記憶されているPDLデータ、及び、前記持続接続制御が解除された前記送信元から受信されたPDLデータをラスターデータに展開し、
前記記録手段は、前記読取手段により読み取られた原稿の画像データをプリントアウトした後に、前記展開手段により展開されるラスターデータをプリントアウトすることを特徴とする請求項6に記載のネットワーク複合機。
【請求項9】
前記プリントデータは、GDIデータであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のネットワーク複合機。
【請求項10】
前記持続接続制御手段は、前記持続接続制御を実行する際に、TCP/IPに従い、自機の受信可能データ量が略ゼロであることを示す情報を前記送信元に対して送出することを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載のネットワーク複合機。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−39546(P2012−39546A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−180255(P2010−180255)
【出願日】平成22年8月11日(2010.8.11)
【出願人】(000006297)村田機械株式会社 (4,916)
【Fターム(参考)】