ネットワーク通信装置およびシステム
【課題】
冗長構成のマルチキャストネットワークにおいて、障害が発生していない正常な経路が存在するにもかかわらず、障害が発生している経路をマルチキャストトラフィックの中継経路として選択してしまい、マルチキャストトラフィックが中継されない。
【解決手段】
上記課題の事象が発生する障害の発生有無を、マルチキャストネットワーク内で冗長経路のそれぞれに接続するネットワーク通信装置から、当該冗長経路を構成する各ネットワーク通信装置に対して問合せパケットを送信することによって確認し、上記障害が発生していない冗長経路をマルチキャストトラフィックの中継経路として選択する。
冗長構成のマルチキャストネットワークにおいて、障害が発生していない正常な経路が存在するにもかかわらず、障害が発生している経路をマルチキャストトラフィックの中継経路として選択してしまい、マルチキャストトラフィックが中継されない。
【解決手段】
上記課題の事象が発生する障害の発生有無を、マルチキャストネットワーク内で冗長経路のそれぞれに接続するネットワーク通信装置から、当該冗長経路を構成する各ネットワーク通信装置に対して問合せパケットを送信することによって確認し、上記障害が発生していない冗長経路をマルチキャストトラフィックの中継経路として選択する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、IPネットワークにおけるマルチキャスト中継技術に関し、特に冗長構成のネットワークにおけるマルチキャスト経路の選択方式に関する。
【背景技術】
【0002】
IPネットワークにおけるマルチキャスト中継技術として、PIM-SM(Protocol Independent Multicast - Sparse Mode)やPIM-SSM(Protocol Independent Multicast - Source Specific Multicast)と呼ばれるマルチキャスト経路制御プロトコルが広く用いられている(非特許文献1、非特許文献2、非特許文献3参照)。
【0003】
以下にPIM-SSMを例に採り上げ、冗長ネットワーク構成における従来技術を用いたマルチキャスト経路の生成過程を図2、図3(a)、図3(b)、図3(c)、図3(d)を用いて説明する。さらに冗長ネットワーク構成において、一方の経路で回線障害が発生している場合の従来技術におけるマルチキャスト経路の生成過程を図4、図5(a)、図5(b)、図5(c)、図5(d)を用いて説明する。
【0004】
図2は、従来技術における冗長ネットワークの構成例であり、マルチキャスト経路制御プロトコルであるPIM-SSMに対応したマルチキャストネットワークである。マルチキャストネットワーク(10)は、マルチキャストトラフィックを配信する配信サーバA(20)と、そのトラフィックの受信を希望する受信端末H(27)を備えており、配信サーバA(20)と受信端末H(27)の間には、配信サーバA(20)と直接接続するFirst HopルータB(21)、受信端末H(27)と直接接続するLast HopルータG(26)、First HopルータB(21)とLast HopルータG(26)間を2経路で構成する中間ルータC(22)、中間ルータD(23)、中間ルータE(24)、中間ルータF(25)を備えている。
【0005】
図2のルータB〜G(21〜26)内には、PIM-SSMのプロトコル動作を制御するPIMプロトコル部(41〜46)と、PIM-SSMプロトコルが動作している隣接ルータの一覧であるPIMネイバー表(51〜56)と、マルチキャストトラフィックの中継先を決定するために用いるマルチキャスト経路表(61〜66)と、後述するマルチキャスト経路の入力インタフェースの決定に用いるユニキャスト経路表(71〜76)を備えている。なお前記ユニキャスト経路表(71〜76)は、OSPF(Open Shortest Path First)などの動的な制御プロトコルで導出されるものとする。
【0006】
図3(a)、図3(b)、図3(c)、図3(d)は、それぞれ図2のLast HopルータG(26)、中間ルータD(23)、中間ルータC(22)、First HopルータB(21)が保持するユニキャスト経路表(76、73、72、71)とPIMネイバー表(56、53、52、51)とマルチキャスト経路表(66、63、62、61)を示している。ユニキャスト経路表(76、73、72、71)には、配信サーバA(20)宛のNext Hopアドレス(ルータ)とそのNext Hopルータと接続しているインタフェースが登録されている。PIMネイバー表(56、53、52、51)には、PIM-SSMプロトコルが動作している隣接ルータのIPアドレスとその隣接ルータと接続しているインタフェースが登録されている。マルチキャスト経路表(66、63、62、61)には、以降で説明するマルチキャスト経路生成の結果として登録されるマルチキャスト経路(ソースアドレス:配信サーバA(20)、グループアドレス:Group1)情報が登録されており、そのマルチキャスト経路に関する入力インタフェース(Incoming Interface)と出力インタフェース(Outgoing Interface)が登録されている。
【0007】
マルチキャスト経路の生成処理を実施するための前段として、まずルータB〜G(21〜26)は、隣接ルータ間において、PIMプロトコル情報を交換するためにPIM Helloメッセージ(200〜211)と呼ばれる制御パケットを定期的に送信する。ルータB〜G(21〜26)は、隣接ルータからPIM Helloメッセージ(200〜211)を受信すると、PIMネイバー表(51〜56)にPIM Helloメッセージ(200〜211)の送信元IPアドレスと受信したインタフェースを登録する。
【0008】
図2において、マルチキャスト経路の生成は、Last HopルータG(26)が受信端末H(27)からIGMP(Internet Group Management Protocol)レポート(IPv4)もしくはMLD(Multicast Listener Discovery)レポート(IPv6)と呼ばれるマルチキャスト受信要求(以降IGMP/MLDレポート(100)と呼ぶ)を受信した契機で行なわれ、マルチキャスト経路の生成は、Last HopルータG(26)から配信サーバA(20)に向かって順次行われ、マルチキャストトラフィックの中継ルートとは逆方向に生成される。すなわち、マルチキャストトラフィックの中継を行なうルータは、マルチキャスト経路生成を行なう過程で、配信サーバA(20)方向の隣接ルータを選択することになるが、このとき、次の2つの条件に合致するルータを選択する。1つ目の条件は「ユニキャスト経路表(71〜76)の配信サーバA(20)宛のNext Hopルータであること」、2つ目の条件は「PIM Helloメッセージを受信していること(PIMネイバー表(51〜56)に登録されたルータであること)」である。一般にこの条件により選択する方法をRPF(Reverse Path Forwarding)と呼び、選択された隣接ルータは、RPF隣接ルータと呼ばれる。
【0009】
また、上記条件を満たす隣接ルータが複数存在する場合(すなわち配信サーバA(20)に到達可能な隣接ルータ(Next Hop)が複数存在するECMP(Equal Cost Multi Path)の場合)、RPF隣接ルータをひとつ選択する必要があり、その選択アルゴリズムとしては、例えば最大のIPアドレスを持つ隣接ルータを選択する方法や、配信サーバのIPアドレスやマルチキャストグループアドレスなどをハッシュキーに用いて隣接ルータを分散選択する方法などが用いられている。
【0010】
以下に従来技術における配信サーバA(20)−受信端末H(27)間のマルチキャスト経路の生成過程をLast HopルータG(26)からFirst HopルータB(21)まで順に説明する。
【0011】
Last HopルータG(26)は、受信端末H(27)から前記IGMP/MLDレポート(100)を受信すると、ユニキャスト経路表(76)の配信サーバA(20)宛のNext Hopが中間ルータD(23)と中間ルータF(25)のECMPとなっているので、所定の選択アルゴリズムによりRPF隣接ルータを選択する。本説明では、前述の選択アルゴリズムのいずれかにより中間ルータD(23)を選択した場合を例に以降の説明を行なう。
【0012】
Last HopルータG(26)は、中間ルータD(23)をRPF隣接ルータに選択すると、図3(a)のマルチキャスト経路表(66)に示すように、当該マルチキャスト経路についての入力インタフェース(Incoming Interface)として中間ルータD(23)が接続されているインタフェースg1を登録し、出力インタフェース(Outgoing Interface)としてIGMP/MLDレポート(100)を受信し受信端末H(27)が接続されているインタフェースg3を登録することによって、Last HopルータG(26)のマルチキャスト経路を生成する。
【0013】
次にLast HopルータG(26)のRPF隣接ルータである中間ルータD(23)でマルチキャスト経路生成を実施するために、そのトリガとなるPIM Joinメッセージ(120)と呼ばれるマルチキャスト経路に関する参加要求をLast HopルータG(26)から中間ルータD(23)に送信する。
【0014】
中間ルータD(23)は、PIM Joinメッセージ(120)を受信すると、以下の手順でマルチキャスト経路の生成を行なう。
中間ルータD(23)は、ユニキャスト経路表(73)から中間ルータC(22)をRPF隣接ルータに選択する。そして中間ルータD(23)は、図3(b)のマルチキャスト経路表(63)にマルチキャスト経路についての入力インタフェース(Incoming Interface)として中間ルータC(22)が接続されているインタフェースd1を登録し、出力インタフェース(Outgoing Interface)としてPIM Joinメッセージ(120)を受信しLast HopルータG(26)が接続されているインタフェースd2を登録することで、マルチキャスト経路を生成する。
【0015】
次に中間ルータD(23)のRPF隣接ルータである中間ルータC(22)でマルチキャスト経路生成を実施するために、そのトリガとなるPIM Joinメッセージ(121)を中間ルータD(23)から中間ルータC(22)に送信する。
【0016】
中間ルータC(22)は、PIM Joinメッセージ(121)を受信すると、中間ルータD(23)と同様の以下の手順でマルチキャスト経路の生成を行なう。
中間ルータC(22)は、ユニキャスト経路表(72)からFirst HopルータB(21)をRPF隣接ルータに選択する。そして中間ルータC(22)は、図3(c)のマルチキャスト経路表(62)にマルチキャスト経路についての入力インタフェース(Incoming Interface)としてFirst HopルータB(21)が接続されているインタフェースc1を登録し、出力インタフェース(Outgoing Interface)としてPIM Joinメッセージ(121)を受信し中間ルータD(23)が接続されているインタフェースc2を登録することで、マルチキャスト経路を生成する。
【0017】
次に中間ルータC(22)のRPF隣接ルータであるFirst HopルータB(21)でマルチキャスト経路生成を実施するために、そのトリガとなるPIM Joinメッセージ(122)を中間ルータC(22)からFirst HopルータB(21)に送信する。
【0018】
First HopルータB(21)は、PIM Joinメッセージ(122)を受信すると、以下の手順でマルチキャスト経路の生成を行なう。
First HopルータB(21)は、配信サーバA(20)と直結されたインタフェースb1を持つため、図3(d)のマルチキャスト経路表(61)にマルチキャスト経路についての入力インタフェース(Incoming Interface)としてb1を登録し、出力インタフェース(Outgoing Interface)としてPIM Joinメッセージ(122)を受信し中間ルータC(22)が接続されているインタフェースb2を登録することで、マルチキャスト経路を生成する。
【0019】
上記のようにLast HopルータG(26)−中間ルータD(23)−中間ルータC(22)−First HopルータB(21)の順にマルチキャスト経路が生成され、マルチキャストトラフィック(140)がFirst HopルータB(21)−中間ルータC(22)−中間ルータD(23)−Last HopルータG(26)の経路を流れることになる。
【0020】
これにより、図2の冗長ネットワークにおいて、冗長経路のどちらの経路を用いてマルチキャストトラフィックの中継が行なわれるかは、Last HopルータG(26)における配信サーバA(20)宛のユニキャスト経路とECMP時の選択アルゴリズムに依存していることがわかる。
【0021】
次に図4、図5(a)、図5(b)、図5(c)、図5(d)を用いて、図2の冗長経路の一方で回線障害が発生している場合のマルチキャスト経路の生成過程を説明する。
図4は、図2と同様のネットワーク構成であるが、First HopルータB(21)−中間ルータC(22)間において、ユニキャスト/マルチキャスト共通の障害(250)である回線障害が発生しているネットワークを示している。
【0022】
図5(a)、図5(b)、図5(c)、図5(d)は、それぞれ図4のLast HopルータG(26)、中間ルータF(25)、中間ルータE(24)、First HopルータB(21)内のユニキャスト経路表(76、75、74、71)とPIMネイバー表(56、55、54、51)とマルチキャスト経路表(66、65、64、61)を示している。
【0023】
以下に、冗長経路の一方で回線障害が発生している場合のマルチキャスト経路の生成過程をLast HopルータG(26)からFirst HopルータB(21)まで順に説明する。
Last HopルータG(26)は、受信端末H(27)からIGMP/MLDレポート(100)を受信すると、図5(a)のユニキャスト経路表(76)より配信サーバA(20)宛のNext Hopを参照するが、図3(a)のユニキャスト経路表(76)とは異なり、Next Hopは、ルータF(25)のみを示している。これは、動的なユニキャストプロトコル(OSPFなど)によってユニキャスト/マルチキャスト共通の障害(250)である回線障害を検知し、ユニキャスト経路表(76)が書き換えられているためである。
【0024】
その結果、中間ルータF(25)がRPF隣接ルータに選択され、Last HopルータG(26)は、図5(a)のマルチキャスト経路表(66) に示すように入力インタフェース(Incoming Interface)として中間ルータF(25)が接続されているインタフェースg2を選択し、中間ルータF(25)にPIM Joinメッセージ(117)を送信することになる。
【0025】
中間ルータF(25)が上記PIM Joinメッセージ(117)を受信後は、上述したLast HopルータG(26)や図2と同様の処理により、中間ルータF(25)−中間ルータE(24)−First HopルータB(21)の順にマルチキャスト経路が生成され、マルチキャストトラフィック(141)は、First HopルータB(21)−中間ルータC(22)間の回線障害を避け、First HopルータB(21)−中間ルータE(24)−中間ルータF(25)−Last HopルータG(26)の経路で中継される。
【0026】
以上より、Last HopルータG(26)が回線障害を検知しているユニキャスト経路(プロトコル)に基づいて、マルチキャスト経路を選択しているため、回線障害が発生していない正常な経路でマルチキャストトラフィックを中継できる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0027】
【非特許文献1】IETF, "Protocol Independent Multicast - Sparse Mode (PIM-SM): Protocol Specification (Revised)", RFC4601
【非特許文献2】IETF, "An Overview of Source-Specific Multicast (SSM)", RFC3569
【非特許文献3】IETF, "Source-Specific Multicast for IP", RFC4607
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0028】
上述したようにマルチキャストの経路選択は、ユニキャスト経路に基づいて決定される。すなわち、上述した回線障害のようなユニキャスト/マルチキャスト共通の障害(250)については、マルチキャストとしても間接的に検知することができ、障害が発生していない経路のみを選択し、マルチキャストトラフィックの中継を行なうことができる。
【0029】
しかし、ユニキャスト経路に基づいてマルチキャスト経路を選択する従来技術では、ユニキャストトラフィックの中継には影響がない、後述するようなマルチキャスト特有の障害が発生している場合、マルチキャストトラフィックの中継を行う上で正常な経路が別途存在するにもかかわらず、障害が発生している経路を選択し、マルチキャストトラフィックの中継ができなくなるという課題がある。
【0030】
マルチキャスト特有の障害とは、次のような状態などを指す。1つ目は、ルータの高負荷やマルチキャストプログラムの不具合などによって、隣接ルータ間で定期送信しているPIM Helloメッセージ(200〜211)を受信できない状態が該当する。2つ目は、装置スペックオーバー(マルチキャスト経路数の登録上限、コピー性能上限などの超過)によるマルチキャスト経路登録不可状態が該当する。3つ目は、マルチキャストトラフィックの中継に使用される帯域が不足している状態が該当する。
【0031】
前記課題の事象が発生するケースについて、図6、図7(a)、図7(b)、図7(c)、図7(d)を用いて説明する。
図6は、図2と同様のネットワーク構成であるが、First HopルータB(21)から中間ルータC(22)へのPIM Helloメッセージ(209)が送受信できておらず、マルチキャスト特有の障害が発生している状態を示している。
【0032】
図7(a)、図7(b)、図7(c)、図7(d)は、それぞれ図6のLast HopルータG(26)、中間ルータD(23)、中間ルータC(22)、First HopルータB(21)内のユニキャスト経路表(76、73、72、71)とPIMネイバー表(56、53、52、51)とマルチキャスト経路表(66、63、62、61)を示している。
【0033】
以下に前記課題の事象が発生するまでの処理過程を説明する。
図7(a)、図7(b)で示すLast HopルータG(26)と中間ルータD(23)のユニキャスト経路表(76、73)、PIMネイバー表(56、53)は、従来技術の説明で用いた図3(a)、図3(b)と同じ状態であるため、Last HopルータG(26)と中間ルータD(23)で行なわれるマルチキャスト経路の生成は、従来技術の説明で用いた図2と同様で、ユニキャスト経路とECMP時の選択アルゴリズムに基づいて、Last HopルータG(26)−中間ルータD(23)の順に生成され、PIM Joinメッセージ(121)が中間ルータD(23)から中間ルータC(22)に送信される。なお、Last HopルータG(26)において、動的なユニキャストプロトコル(OSPFなど)ではマルチキャスト特有の障害を検知することができないため、ユニキャスト経路表(76)は図7(a)に示す通り、Next HopとしてルータDおよびルータFの双方が登録されている。
【0034】
PIM Joinメッセージ(121)を中間ルータD(23)から受信した中間ルータC(22)は、マルチキャスト経路のRPF隣接ルータを選択するために、図7(c)のユニキャスト経路表(72)からFirst HopルータB(21)を選択するが、中間ルータC(22)は、First HopルータB(21)からのPIM Helloメッセージ(209)を受信できていないマルチキャスト特有の障害が発生している状態であるため、従来技術で説明したRPF隣接ルータの選択条件のひとつである「PIM Helloメッセージを受信していること」に合致せず、RPF隣接ルータとして選択できる隣接ルータが存在しない状態となる。そのためマルチキャスト経路を生成できず、中間ルータC(22)からFirst HopルータB(21)にPIM Joinメッセージ(122)を送信することもできない。
【0035】
そのため、マルチキャスト経路の生成は、Last HopルータG(26)と中間ルータD(23)までとなり、中間ルータC(22)とFirst HopルータB(21)ではマルチキャスト経路が生成されないため、障害の発生していない正常な経路が別途存在するにも関わらず、マルチキャストトラフィック(142)が中継できない状態となる。
【0036】
これは、Last HopルータG(26)におけるRPF隣接ルータの選択が配信サーバA(20)宛のユニキャスト経路と上述したECMP時の選択アルゴリズムに基づいて決定されるためであり、Last HopルータG(26)のRPF隣接ルータの選択において、中間ルータC(22)のマルチキャスト特有の障害を考慮していないため、本課題であるマルチキャストトラフィック(142)の中継ができない事象が発生する。
【課題を解決するための手段】
【0037】
本発明は、上記課題を解決するために、冗長構成のマルチキャストネットワークにおいて、配信サーバ宛のユニキャスト経路のNext Hopが複数存在する(ECMPである)場合に、各冗長経路上のルータに対して、当該マルチキャストトラフィックの中継可否の問合せを行うネットワーク通信装置またはシステムを提供する。
【発明の効果】
【0038】
本発明は、冗長構成のマルチキャストネットワークにおいて、マルチキャスト特有の障害が発生していても、障害が発生していない正常な経路をマルチキャスト経路に選択することを可能とし、マルチキャスト中継の信頼性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本実施形態におけるネットワーク構成例および送受信メッセージを示す図である。
【図2】従来技術におけるマルチキャスト経路生成およびトラフィック中継手順を示す図である。
【図3(a)】図2におけるLast HopルータGのユニキャスト/マルチキャスト経路表およびPIMネイバー表を示す図である。
【図3(b)】図2における中間ルータDのユニキャスト/マルチキャスト経路表およびPIMネイバー表を示す図である。
【図3(c)】図2における中間ルータCのユニキャスト/マルチキャスト経路表およびPIMネイバー表を示す図である。
【図3(d)】図2におけるFirst HopルータBのユニキャスト/マルチキャスト経路表およびPIMネイバー表を示す図である。
【図4】従来技術における共通障害発生時のマルチキャスト経路生成およびトラフィック中継手順を示す図である。
【図5(a)】図4におけるLast HopルータGのユニキャスト/マルチキャスト経路表およびPIMネイバー表を示す図である。
【図5(b)】図4における中間ルータFのユニキャスト/マルチキャスト経路表およびPIMネイバー表を示す図である。
【図5(c)】図4における中間ルータEのユニキャスト/マルチキャスト経路表およびPIMネイバー表を示す図である。
【図5(d)】図4におけるFirst HopルータBのユニキャスト/マルチキャスト経路表およびPIMネイバー表を示す図である。
【図6】従来技術におけるマルチキャスト特有障害発生時のマルチキャスト経路生成手順を示す図である。
【図7(a)】図6におけるLast HopルータGのユニキャスト/マルチキャスト経路表およびPIMネイバー表を示す図である。
【図7(b)】図6における中間ルータDのユニキャスト/マルチキャスト経路表およびPIMネイバー表を示す図である。
【図7(c)】図6における中間ルータCのユニキャスト/マルチキャスト経路表およびPIMネイバー表を示す図である。
【図7(d)】図6におけるFirst HopルータBのユニキャスト/マルチキャスト経路表およびPIMネイバー表を示す図である。
【図8】本実施形態におけるFirst HopルータB、中間ルータC,D,E,F、Last HopルータGの内部構造および送受信データを示す説明図である。
【図9】本実施形態におけるマルチキャスト経路選択機能(中継可否問合せ処理)のフローチャート図である。
【図10】本実施形態におけるマルチキャスト中継可否判定機能のフローチャート図である。
【図11】本実施形態におけるマルチキャスト経路選択機能(中継可否応答受信処理)のフローチャート図である。
【図12(a)】本実施形態におけるLast HopルータGのユニキャスト/マルチキャスト経路表およびPIMネイバー表を示す図である。
【図12(b)】本実施形態における中間ルータFのユニキャスト/マルチキャスト経路表およびPIMネイバー表を示す図である。
【図12(c)】本実施形態における中間ルータEのユニキャスト/マルチキャスト経路表およびPIMネイバー表を示す図である。
【図12(d)】本実施形態におけるFirst HopルータBのユニキャスト/マルチキャスト経路表およびPIMネイバー表を示す図である。
【図12(e)】本実施形態における中間ルータDのユニキャスト/マルチキャスト経路表およびPIMネイバー表を示す図である。
【図12(f)】本実施形態における中間ルータCのユニキャスト/マルチキャスト経路表およびPIMネイバー表を示す図である。
【図13】上流ルータリストおよび中継可否応答リストを示す図である。
【図14】第1の実施形態の処理手順を示すシーケンス図である。
【図15】本実施形態における障害未発生時のネットワーク構成例および送受信メッセージを示す図である。
【図16】第2の実施形態におけるLast HopルータGの内部構造を示す説明図である。
【図17(a)】第2の実施形態の処理手順を示すシーケンス図(前半)である。
【図17(b)】第2の実施形態の処理手順を示すシーケンス図(後半)である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
図1を用いて本発明の実施形態を説明する。
図1は、本実施形態におけるネットワーク構成例を示している。図1のネットワーク構成は、本発明が解決しようとする課題で採り上げた図6のマルチキャスト特有の障害が発生しているネットワーク構成と同様のものであるが、本実施形態においては、図6の従来のルータに対して、少なくともFirst HopルータB(21)と中間ルータC、D、E、F(22〜25)にマルチキャスト中継可否判定機能(31〜35)を追加し、Last HopルータG(26)にマルチキャスト経路選択機能(36)を追加した構成となっている点が異なる。
【0041】
図1においてLast HopルータG(26)内のマルチキャスト経路選択機能(36)は、First HopルータB(21)、中間ルータC、D、E、F(22〜25)に対して、マルチキャスト特有の障害が発生していないか、すなわちマルチキャストトラフィックの中継が可能かどうかを問合せ、その応答結果を基に冗長構成の経路の中から中継可能な経路(RPF隣接ルータ)を選択する機能である。
【0042】
First HopルータB(21)、中間ルータC,D,E,F(22〜25)内の中継可否関連情報(91〜95)は、PIMネイバー表(51〜55)、マルチキャスト経路表(61〜65)、ユニキャスト経路表(71〜75)などのマルチキャスト中継可否の判断材料となる情報を総称した名称である。
【0043】
First HopルータB(21)および中間ルータC、D、E、F(22〜25)内のマルチキャスト中継可否判定機能(31〜35)は、中継可否関連情報(91〜95)を基にマルチキャストトラフィックの中継可否を判定し、Last HopルータG(26)内のマルチキャスト経路選択機能(36)に中継可否判定結果を通知する機能である。
【0044】
図8〜図13で本実施形態の構成要素である各機能部を説明する。
図8は、図1のFirst HopルータB(21)、中間ルータC,D,E,F(22〜25)、Last HopルータG(26)の内部構造および本実施形態における送受信メッセージを示している。
【0045】
中継可否問合せメッセージ(101〜105)は、Last HopルータG(26)がFirst HopルータB(21)、中間ルータC、D、E、F(22〜25)にマルチキャストトラフィックの中継可否を問合わせるために送信するメッセージである。
中継可否応答メッセージ(106〜110)は、First HopルータB(21)、中間ルータC、D、E、F(22〜25)がLast HopルータG(26)に送信する中継可否問合せメッセージ(100〜105)に対する応答メッセージである。
【0046】
Last HopルータG(26)のマルチキャスト経路選択機能(36)は、冗長ネットワークにおけるマルチキャストトラフィックの中継可能経路を選択する機能部である中継可能経路選択部(300)と、中継可否問合せメッセージ(101〜105)をFirst HopルータB(21)、中間ルータC,D,E,F(22〜25)に送信する機能部である上流中継可否問合せ送信部(301)と、中継可否応答メッセージ(106〜110)を受信する機能部である上流中継可否応答受信部(302)と、前記中継可否問合せメッセージ(101〜105)を送信する宛先となる上流ルータ(First HopルータBおよび中間ルータC、D、E、F)のIPアドレスが登録されているリストである上流ルータリスト(303)と、中継可否応答メッセージ(106〜110)内の中継可否判定結果が登録されるリストである中継可否応答リスト(304)を備えている。
【0047】
Last HopルータG(26)内のPIMプロトコル部(320)は、PIM-SSMのプロトコル動作を制御する機能部である。PIMプロトコル部(320)内の生成可能経路取得部(321)は、IGMP/MLDレポート(100)の受信などを契機に実施されるマルチキャスト経路生成処理において、中継可能経路選択部(300)に中継可能経路選択要求(400)を行い、冗長経路の中からマルチキャストトラフィックの中継が可能な経路(Next Hop)を取得(410)する機能部である。
【0048】
First HopルータB(21)および中間ルータC、D、E、F(22〜25)内のマルチキャスト中継可否判定機能(31〜35)は、中継可否関連情報(91〜95)よりマルチキャストトラフィックの中継可否を判定する機能部である中継可否判定部(310)と、Last HopルータG(26)が送信した中継可否問合せメッセージ(101〜105)を受信する機能部である下流中継可否問合せ受信部(311)と、中継可否応答メッセージ(106〜110)をLast HopルータG(26)へ送信する機能部である下流中継可否応答送信部(312)を備えている。
【0049】
図9、図10、図11は、上述したマルチキャスト経路選択機能(36)とマルチキャスト中継可否判定機能(31〜35)がマルチキャストトラフィックの中継可能経路を選択する過程を示したフローチャートである。各処理ボックスの末尾の小括弧内の数字は、図8に示す各処理部間の通信や、処理部からデータ表への登録・参照を示す矢印の番号と対応する。
【0050】
図12(a)、図12(b)、図12(c)、図12(d)、図12(e)、図12(f)は、図8のFirst HopルータB(21)、中間ルータC、D、E、F(22〜25)、Last HopルータG(26)内のユニキャスト経路表(71〜76)とPIMネイバー表(51〜56)とマルチキャスト経路表(61〜66)を示している。特に、図12(f)について、中間ルータC(22)のPIMネイバー表(52)には、マルチキャスト特有の障害が発生していることにより、First HopルータB(21)のアドレスが登録されていない。
【0051】
図13は、Last HopルータG(26)が保持する上流ルータリスト(303)と中継可否応答リスト(304)を説明する図である。
上流ルータリスト(303)には、「Source(配信サーバ)」として配信サーバAが登録され、Next Hopルータである中間ルータD(23)と配信サーバA(20)間の経路(冗長経路#1)上のルータであるFirst HopルータB(21)、中間ルータC(22)、中間ルータD(23)のIPアドレスと、もうひとつのNext Hopルータである中間ルータF(23)と配信サーバA(20)間の経路(冗長経路#2)上のルータであるFirst HopルータB(21)、中間ルータE(22)、中間ルータF(23)のIPアドレスが「上流ルータアドレス」として登録されている。なお、上流ルータリスト(303)のデータは、コンフィグレーションによって登録されるものとする。
中継可否応答リスト(304)には、以降で説明するマルチキャスト経路(ソースアドレス:配信サーバA(20)、グループアドレス:Group1)についての冗長経路#1、2上のルータからの中継可否判定結果(「中継可」もしくは「中継不可」)が登録されている。
【0052】
以降より、2つの実施形態を説明する。
第1の実施形態では、マルチキャスト特有の障害を考慮して、新規マルチキャスト経路の生成を行なう方式を示し、第2の実施形態では、マルチキャスト経路が既に生成済みの状態で、マルチキャストトラフィックが中継されている最中に、その経路上でマルチキャスト特有の障害が発生した場合のマルチキャスト経路の切り替え方式を示す。
【0053】
[第1の実施形態]
図14は、第1の実施形態を説明する処理シーケンスを示しており、受信端末H(27)がIGMP/MLDレポート(S100)を送信してから、マルチキャスト特有の障害を考慮した経路選択により、マルチキャストトラフィックが正常に中継されるまでを示している。以下に図14に示すシーケンスに沿って、図1、図8〜図14を用いて、第1の実施形態であるマルチキャスト経路の選択方式を時系列に説明する。
【0054】
図14に示すように、Last HopルータG(26)は、受信端末H(27)からマルチキャスト受信要求を示すIGMP/MLDレポート(S100)を受信すると、中継可否問合せ処理(S600)により、First HopルータB(21)と中間ルータC、D、E、F(22〜25)に、当該マルチキャスト経路の中継可否を確認するために、中継可否問合せメッセージ(S101〜S105)を送信する。
中継可否問合せメッセージ(S101〜S105)を受信したFirst HopルータB(21)と中間ルータC、D、E、F(22〜25)は、中継可否判定処理(S620)により、中継可否判定結果を格納した中継可否応答メッセージ(S106〜S110)をLast HopルータG(26)へ送信する。
中継可否応答メッセージ(S106〜S110)を受信したLast HopルータG(26)は、中継可否応答受信処理(S640)により、中継可能経路(RPF隣接ルータ)を選択する。
上記、中継可否問合せ処理(S600)−中継可否判定処理(S620)−中継可否応答受信処理(S640)の一連の処理(S700)が本実施形態における主要な処理手順であり、それぞれの詳細処理を図9、10,11のフローチャートを用いて説明する。
【0055】
図9は、図14の中継可否問合せ処理(S600)の詳細フローを示しており、図8に示したLast HopルータG(26)内の各機能部位の処理フローを示している。
図9に示す中継可否問合せ処理(S600)を以下に説明する。
Last HopルータG(26)が受信端末H(27)からマルチキャスト受信要求を示すIGMP/MLDレポート(S100)を受信すると、PIMプロトコル部(320)の生成可能経路取得部(321)がマルチキャスト経路選択機能(36)の中継可能経路選択部(300)へ中継可能経路選択要求を送信する。中継可能経路選択部(300)が生成可能経路取得部(321)から中継可能経路選択要求を受信(S601)すると、まず図12(a)のユニキャスト経路表(76)から配信サーバA(20)宛のNext Hopアドレスを取得する(S602)。
【0056】
Next Hopアドレス(ルータ)として、中間ルータD(23)と中間ルータF(25)が存在する(S603の「Yes」)ため、中継可能経路選択部(300)は、上流中継可否問合せ送信部(301)に前記中継可否問合せメッセージ(101〜105)の送信を依頼(S604)する。
上記依頼(S604)を受けた上流中継可否問合せ送信部(301)は、図13の前記上流ルータリスト(303)から中継可否問合せメッセージ(101〜105)の宛先IPアドレスである上流ルータアドレスを取得(S605)する。
その上流ルータアドレス宛に中継可否の判定対象・材料となるマルチキャスト経路情報(ソースアドレス:配信サーバA(20)、グループアドレス:Group1、その他の中継可否の判断情報)を中継可否問合せメッセージ(101〜105)に格納して送信(S606)する。
そして上流中継可否問合せ送信部(301)は、図13の中継可否応答リスト(304)に中継可否問合せメッセージ(101〜105)を送信した上流ルータアドレスを登録(S607)し、本処理を終了(応答待ち)(S608)する。
【0057】
なお、本説明で使用している図1のネットワーク構成例においては該当しないが、S602のNext Hopアドレスの取得において、Next Hopが存在しない(S603の「No」)場合、中継可能経路選択部(300)は、「中継可能経路なし」をPIMプロトコル部(46)に通知(S609)して処理を終了(S610)することになる。
【0058】
図10は、図14の前記中継可否判定処理(S620)の詳細フローを示しており、図8に示したFirst HopルータB(21)と中間ルータC、D、E、F(22〜25)内の各機能部位の処理フローを示している。
図10に示す中継可否判定処理(S620)を以下に説明する。
下流中継可否問合せ受信部(311)がLast HopルータG(26)から中継可否問合せメッセージ(101〜105)を受信(S621)すると、中継可否判定部(310)に中継可否問合せメッセージ(101〜105)に格納されているマルチキャスト経路(ソースアドレス:配信サーバA(20)、グループアドレス:Group1)についての中継可否判定を依頼(S622)する。
中継可否判定部(310)は、中継可否の判断材料となる前記中継可否関連情報(91〜95)を取得(S623)し、マルチキャスト特有の障害が発生していないか判定(S624)、つまり当該マルチキャストを中継可能であるか否かの判定を行なう。
【0059】
以下にその中継可否判定(S624)の一例を示す。
マルチキャスト特有の障害は、前述の発明が解決しようとする課題で説明したように、いくつか挙げられるため、その中からいくつか採り上げて具体的な判定方法の例を説明する。
【0060】
例1として、図1(および図6)で採り上げたPIM Helloメッセージが受信できないことにより、RPF隣接ルータが存在しない状態が発生するかどうかの判定方法を示す。
その判定方法は、基本的にはRPF隣接ルータを選択する処理と同様であるが、中継可否問合せメッセージ(S101〜S105)に格納されたマルチキャスト経路のソースアドレス(配信サーバA(20)のアドレス)宛のユニキャスト経路のNext Hopアドレスをユニキャスト経路表(71〜75)から取得する。そして、そのNext Hopアドレスが中継可否関連情報(91〜95)であるPIMネイバー表(51〜55)に登録されているかどうかで中継可否を判定する方法である。(PIMネイバー表に登録されていれば「中継可」、登録されていなければ「中継不可」となる。)
例2として、当該マルチキャスト経路に関連する隣接ルータからPIM Helloメッセージを受信しているかどうかの例1とは異なる判定方法を示す。
その判定方法は、Last HopルータG(26)が送信する中継可否問合せメッセージ(S101〜S105)内に、対象マルチキャストトラフィックの中継を行なうために必要なPIM隣接ルータのアドレスを格納して送信し、中継可否判定部(310)がその格納データとPIMネイバー表(51〜55)を比較することで判定する方法である。
【0061】
例3として、マルチキャスト特有の障害として前述したマルチキャスト経路数の登録上限オーバーについての判定方法を説明する。
その判定方法は、まず中継可否関連情報(91〜95)であるマルチキャスト経路表(61〜65)を参照し、上限値まで登録数が達しているか確認する。達していない場合は「中継可」となり、達している場合は中継可否の判定対象となるマルチキャスト経路(ソースアドレス:配信サーバA(20)、グループアドレス:Group1)が既にマルチキャスト経路表(61〜65)に登録されていれば「中継可」、登録されていなければ「中継不可」となる。
【0062】
以上の中継可否判定方法および中継可否関連情報(91〜95)は、あくまで一例であり、上記以外にも各ベンダーや機種に依存する性能/機能などを判定材料に中継可否を判定することが可能である。
【0063】
上記判定処理の例1を用いると、中間ルータC(22)の中継可否判定結果(S624)は、中継可否関連情報(92)である図12(f)のユニキャスト経路表(72)とPIMネイバー表(52)より、配信サーバA(20)宛のNext HopルータであるFirst HopルータB(21)が、PIMネイバー表(52)に登録されていない(すなわち、First HopルータB(21)からのPIM Helloメッセージを受信できていない)ため、「中継不可」となる。その他のFirst HopルータB(21)、中間ルータD、E、F(23〜25)については、マルチキャスト特有の障害は発生しておらず、中継可否判定結果(S624)は「中継可」となる。
【0064】
上記判定処理が終了すると、中継可否判定部(310)は、中継可否判定結果を下流中継可否応答送信部(312)に通知(S625、S626)する。下流中継可否応答送信部(312)は、中継可否判定結果を格納した中継可否応答メッセージ(106〜110)をLast HopルータG(26)に送信(S627)し、本処理を終了(S628)する。
【0065】
図11は、図14の前記中継可否応答受信処理(S640)の詳細フローを示しており、図8に示したLast HopルータG(26)内の各機能部位の処理フローを示している。
図11に示す中継可否応答受信処理(S640)を図14に示すS106〜S110の順で中継可否応答メッセージを受信した場合を例に説明する。
上流中継可否応答受信部(302)が中間ルータF(25)から中継可否判定結果が「中継可」の中継可否応答メッセージ(S106)を応答待ち時間内に受信(S641、S642の「No」)すると、上流中継可否応答受信部(302)は、図13の中継可否応答リスト(304)に示すように、中間ルータF(25)の中継可否判定結果に「中継可」を登録(S643)する。そしてFirst HopルータB(21)や中間ルータC、D、E(22〜24)からはまだ中継可否応答メッセージ(106〜109)を受信していない(S645の「No」)ため、本処理を一旦終了(応答待ち)(S646)する。
【0066】
同様に中間ルータE、D(24、23)から応答待ち時間内に中継可否応答メッセージ(S107、S108)を受信(S641、S642の「No」)すると、図13の中継可否応答リスト(304)に中間ルータE、D(24、23)の中継可否判定結果に「中継可」を登録(S643)し、本処理を一旦終了(応答待ち)する(S646)。
【0067】
中間ルータC(22)から中継可否判定結果が「中継不可」の中継可否応答メッセージ(S109)を応答待ち時間内に受信(S641、S642の「No」)すると、図13の中継可否応答リスト(304)に示すように、中間ルータC(22)の中継可否判定結果に「中継不可」を登録(S643)し、本処理を一旦終了(応答待ち)(S646)する。
【0068】
First HopルータB(21)から両経路(冗長経路#1,2)の中継可否判定結果が「中継可」の中継可否応答メッセージ(S110)を応答待ち時間内に受信(S641、S642の「No」)すると、図13の中継可否応答リスト(304)に示すように、First HopルータB(21)の中継可否判定結果(冗長経路#1,2の両方)に「中継可」を登録(S643)する。そして当該マルチキャスト経路の全上流ルータから中継可否応答メッセージ(S106〜S110)を受信した(S645の「Yes」)ため、上流中継可否応答受信部(302)は、中継可能経路選択部(300)に受信完了を通知(S647)する。
【0069】
上記通知(S647)を受信した中継可否経路選択部(300)は、中継可否応答リスト(304)より中継可否判定結果を取得(S648)し、全上流ルータが「中継可」を応答した冗長経路が存在するか判定(S649)する。その判定の結果、図13に示す冗長経路#2(First HopルータB(21)、中間ルータE(24)、中間ルータF(25))の全てのルータが「中継可」を応答しているため、中継可能経路選択部(300)は、PIMプロトコル部(320)内の生成可能経路取得部(321)に中継可能な冗長経路#2についてのNext Hopである、中間ルータF(25)のルータ情報をPIMプロトコル部(320)へ通知(S652)する。
【0070】
なお、図14のシーケンスにおいては例として採り上げていないが、中継可否応答メッセージ(S106〜S110)を応答待ち時間内に受信できない(S642の「Yes」))場合、上流中継可否応答受信部(302)は、受信できなかった上流ルータについて、中継可否応答リスト(304)の中継可否判定結果に「中継不可」を登録(S644)し、中継可能経路選択部(300)に受信完了を通知(S647)する。
【0071】
また、本説明で使用している図1のネットワーク構成例においては該当しないが、S649の判定において、全上流ルータが「中継可」を応答した冗長経路が存在しない(S649の「No」)場合、中継可能経路選択部(300)は「中継可能経路なし」をPIMプロトコル部(46)に通知(S650)して処理を終了(S651)することになる。
【0072】
上記S652の通知を受信したPIMプロトコル部(320)は、中間ルータF(25)をRPF隣接ルータに選択する。Last HopルータG(26)のRPF隣接ルータ決定後のマルチキャスト経路の生成処理は、背景技術と同様であり、Last HopルータG(26)-中間ルータF(25)-中間ルータE(24)-First HopルータB(21)の順でPIM Joinを送信し(S117、S118、S119)、マルチキャスト経路の生成処理を行ない、マルチキャストトラフィック(141)がマルチキャスト特有の障害が発生していないFirst HopルータB(21)- 中間ルータE(24)- 中間ルータF(25)- Last HopルータG(26)のルータを経由して、受信端末H(27)に中継される(S141)。
【0073】
以上より、冗長構成のネットワークにおいて、新規マルチキャスト経路の生成時に、図9〜11で示した処理を適用することによって、マルチキャスト特有の障害の発生有無を考慮することができ、正常な経路でマルチキャストトラフィックの中継を開始することが可能となる。
【0074】
[第2の実施形態]
第2の実施形態は、前述したように、マルチキャストトラフィックの中継中に、マルチキャスト特有の障害が発生した場合のマルチキャスト経路の切り替え方式である。
図15は、図1と同様のネットワーク構成であるが、マルチキャスト特有の障害が発生していない両冗長経路が正常な場合を示している。以下では、図15の状態でマルチキャストトラフィックを中継中に、図1に示したマルチキャスト特有の障害が発生した場合のマルチキャスト経路の切り替え方式を説明する。
【0075】
図16は、第2の実施形態におけるLast HopルータG(21)の内部構造を示している。図8の第1の実施形態で用いたLast HopルータG(21)の内部構造とはPIMプロトコル部(322)内に定期中継可否監視部(323)を有する点が異なる。
定期中継可否監視部(323)とは、中継中のマルチキャスト経路に対して、定期的に中継可能経路選択部(300)に中継可能経路選択要求(400)を行い、マルチキャスト特有の障害の発生を監視する機能である。
すなわち、監視方法自体は、第1の実施形態で説明した中継可否問合せ処理(S600)、中継可否判定処理(S620)、中継可否応答受信処理(S640)をそのまま適用し、その処理の起動契機が定期中継可否監視部(323)からの定期起動となる。
【0076】
図17(a)、17(b)は、第2の実施形態を説明する処理シーケンスを示しており、この処理シーケンスの初期状態では、図15に示したようにマルチキャスト特有の障害は発生しておらず、マルチキャストトラフィック(S140)がFirst HopルータB(21)−中間ルータC(22)−中間ルータD(23)−Last HopルータG(26)を中継されている状態となっている。その状態から、第2の実施形態により、図1に示すマルチキャスト特有の障害を検出し、マルチキャスト経路がFirst HopルータB(21)−中間ルータE(24)−中間ルータF(25)−Last HopルータG(26)の経路に切り替わり、マルチキャストトラフィック(S141)が中継されることを示している。
【0077】
以下に図17(a)、17(b)のシーケンスに沿って、本発明の第2の実施形態であるマルチキャスト経路の監視・切替方式を時系列に説明する。
S701の定期中継可否監視は、マルチキャスト特有の障害が発生する前に定期起動された場合の処理を示している。S701内の中継可否問合せ処理(S600)、中継可否判定処理(S620)、中継可否応答受信処理(S640)は、第1の実施例で説明した図9〜図11のフローチャートと同様であり、その処理の結果、マルチキャスト特有の障害は発生していないため、全ての中継可否応答メッセージ(S106〜S110)の中継可否判定結果は「中継可」となり、中継中のFirst HopルータB(21)−中間ルータC(22)−中間ルータD(23)−Last HopルータG(26)の経路は正常であることを確認できる。
【0078】
次にマルチキャスト特有の障害発生(S800)直後のS702の定期中継可否監視について説明する。S701とは異なり、中間ルータC(22)において、マルチキャスト特有の障害発生(S800)により、中間ルータC(22)からの中継可否応答メッセージ(S109)の中継可否判定結果が「中継可」から「中継不可」に変更となったため、Last HopルータG(26)の中継可能経路選択部(300)は、PIMプロトコル部(322)内の定期中継可否監視部(323)に中継可能経路のNext Hopルータとして中間ルータF(25)を通知する。
【0079】
その通知を受信した定期中継可否監視部(323)は、RPF隣接ルータが中間ルータD(23)から中間ルータF(25)に変更となるため、即座に当該マルチキャスト経路の入力インタフェース(Incoming Interface)を中間ルータD(23)が接続されているg1から、図12(a)のLast HopルータG(26)内のマルチキャスト経路表(66)に示すように、中間ルータF(25)が接続されているg2に切り替え、新RPF隣接ルータである中間ルータF(25)にPIM Joinメッセージ(S117)を送信する。
【0080】
以降のマルチキャスト経路の生成処理は、背景技術と同様で、上記PIM Joinメッセージ(S117)を受信した中間ルータF(25)から順に中間ルータE(24)、First HopルータB(21)とマルチキャスト経路の生成が行なわれ、マルチキャストトラフィック(141)がFirst HopルータB−中間ルータE(24)−中間ルータF(25)−Last HopルータG(26)のルータを経由して受信端末H(27)に中継される。
【0081】
以上より、冗長構成のネットワークにおいて、マルチキャストトラフィックの中継中に、図9〜11で示した処理を定期的に実行することによって、マルチキャスト特有の障害発生時に、正常な経路にマルチキャスト経路を切り替えることが可能となる。
【0082】
なお、これまで説明した第1の実施形態および第2の実施形態では、受信端末Hを収容するLast HopルータGがマルチキャスト経路選択機能(36)を有するものとして説明したが、必ずしもLast HopルータGである必要はなく、マルチキャスト経路の一部分のみが冗長経路となっている場合には、その冗長経路の始点となる中間ルータがマルチキャスト経路選択機能(36)を保持して、マルチキャスト特有の障害を考慮した経路選択を行ってもよい。
【符号の説明】
【0083】
10:マルチキャストネットワーク、20:配信サーバ、21:First Hopルータ、22〜25:中間ルータ、26:Last Hopルータ、27:受信端末、31〜35:マルチキャスト中継可否判定機能、36:マルチキャスト経路選択機能、41〜46,320,322:PIMプロトコル部、51〜56:PIMネイバー表、61〜66:マルチキャスト経路表、71〜76:ユニキャスト経路表、91〜95:中継可否関連情報、100:IGMP/MLDレポートメッセージ、101〜105:中継可否問合せメッセージ、106〜110:中継可否応答メッセージ、117〜122:PIM Joinメッセージ、130,131:ユニキャストトラフィック中継可能経路、140,141:マルチキャストトラフィック、200〜211:PIM Helloメッセージ
【技術分野】
【0001】
本発明は、IPネットワークにおけるマルチキャスト中継技術に関し、特に冗長構成のネットワークにおけるマルチキャスト経路の選択方式に関する。
【背景技術】
【0002】
IPネットワークにおけるマルチキャスト中継技術として、PIM-SM(Protocol Independent Multicast - Sparse Mode)やPIM-SSM(Protocol Independent Multicast - Source Specific Multicast)と呼ばれるマルチキャスト経路制御プロトコルが広く用いられている(非特許文献1、非特許文献2、非特許文献3参照)。
【0003】
以下にPIM-SSMを例に採り上げ、冗長ネットワーク構成における従来技術を用いたマルチキャスト経路の生成過程を図2、図3(a)、図3(b)、図3(c)、図3(d)を用いて説明する。さらに冗長ネットワーク構成において、一方の経路で回線障害が発生している場合の従来技術におけるマルチキャスト経路の生成過程を図4、図5(a)、図5(b)、図5(c)、図5(d)を用いて説明する。
【0004】
図2は、従来技術における冗長ネットワークの構成例であり、マルチキャスト経路制御プロトコルであるPIM-SSMに対応したマルチキャストネットワークである。マルチキャストネットワーク(10)は、マルチキャストトラフィックを配信する配信サーバA(20)と、そのトラフィックの受信を希望する受信端末H(27)を備えており、配信サーバA(20)と受信端末H(27)の間には、配信サーバA(20)と直接接続するFirst HopルータB(21)、受信端末H(27)と直接接続するLast HopルータG(26)、First HopルータB(21)とLast HopルータG(26)間を2経路で構成する中間ルータC(22)、中間ルータD(23)、中間ルータE(24)、中間ルータF(25)を備えている。
【0005】
図2のルータB〜G(21〜26)内には、PIM-SSMのプロトコル動作を制御するPIMプロトコル部(41〜46)と、PIM-SSMプロトコルが動作している隣接ルータの一覧であるPIMネイバー表(51〜56)と、マルチキャストトラフィックの中継先を決定するために用いるマルチキャスト経路表(61〜66)と、後述するマルチキャスト経路の入力インタフェースの決定に用いるユニキャスト経路表(71〜76)を備えている。なお前記ユニキャスト経路表(71〜76)は、OSPF(Open Shortest Path First)などの動的な制御プロトコルで導出されるものとする。
【0006】
図3(a)、図3(b)、図3(c)、図3(d)は、それぞれ図2のLast HopルータG(26)、中間ルータD(23)、中間ルータC(22)、First HopルータB(21)が保持するユニキャスト経路表(76、73、72、71)とPIMネイバー表(56、53、52、51)とマルチキャスト経路表(66、63、62、61)を示している。ユニキャスト経路表(76、73、72、71)には、配信サーバA(20)宛のNext Hopアドレス(ルータ)とそのNext Hopルータと接続しているインタフェースが登録されている。PIMネイバー表(56、53、52、51)には、PIM-SSMプロトコルが動作している隣接ルータのIPアドレスとその隣接ルータと接続しているインタフェースが登録されている。マルチキャスト経路表(66、63、62、61)には、以降で説明するマルチキャスト経路生成の結果として登録されるマルチキャスト経路(ソースアドレス:配信サーバA(20)、グループアドレス:Group1)情報が登録されており、そのマルチキャスト経路に関する入力インタフェース(Incoming Interface)と出力インタフェース(Outgoing Interface)が登録されている。
【0007】
マルチキャスト経路の生成処理を実施するための前段として、まずルータB〜G(21〜26)は、隣接ルータ間において、PIMプロトコル情報を交換するためにPIM Helloメッセージ(200〜211)と呼ばれる制御パケットを定期的に送信する。ルータB〜G(21〜26)は、隣接ルータからPIM Helloメッセージ(200〜211)を受信すると、PIMネイバー表(51〜56)にPIM Helloメッセージ(200〜211)の送信元IPアドレスと受信したインタフェースを登録する。
【0008】
図2において、マルチキャスト経路の生成は、Last HopルータG(26)が受信端末H(27)からIGMP(Internet Group Management Protocol)レポート(IPv4)もしくはMLD(Multicast Listener Discovery)レポート(IPv6)と呼ばれるマルチキャスト受信要求(以降IGMP/MLDレポート(100)と呼ぶ)を受信した契機で行なわれ、マルチキャスト経路の生成は、Last HopルータG(26)から配信サーバA(20)に向かって順次行われ、マルチキャストトラフィックの中継ルートとは逆方向に生成される。すなわち、マルチキャストトラフィックの中継を行なうルータは、マルチキャスト経路生成を行なう過程で、配信サーバA(20)方向の隣接ルータを選択することになるが、このとき、次の2つの条件に合致するルータを選択する。1つ目の条件は「ユニキャスト経路表(71〜76)の配信サーバA(20)宛のNext Hopルータであること」、2つ目の条件は「PIM Helloメッセージを受信していること(PIMネイバー表(51〜56)に登録されたルータであること)」である。一般にこの条件により選択する方法をRPF(Reverse Path Forwarding)と呼び、選択された隣接ルータは、RPF隣接ルータと呼ばれる。
【0009】
また、上記条件を満たす隣接ルータが複数存在する場合(すなわち配信サーバA(20)に到達可能な隣接ルータ(Next Hop)が複数存在するECMP(Equal Cost Multi Path)の場合)、RPF隣接ルータをひとつ選択する必要があり、その選択アルゴリズムとしては、例えば最大のIPアドレスを持つ隣接ルータを選択する方法や、配信サーバのIPアドレスやマルチキャストグループアドレスなどをハッシュキーに用いて隣接ルータを分散選択する方法などが用いられている。
【0010】
以下に従来技術における配信サーバA(20)−受信端末H(27)間のマルチキャスト経路の生成過程をLast HopルータG(26)からFirst HopルータB(21)まで順に説明する。
【0011】
Last HopルータG(26)は、受信端末H(27)から前記IGMP/MLDレポート(100)を受信すると、ユニキャスト経路表(76)の配信サーバA(20)宛のNext Hopが中間ルータD(23)と中間ルータF(25)のECMPとなっているので、所定の選択アルゴリズムによりRPF隣接ルータを選択する。本説明では、前述の選択アルゴリズムのいずれかにより中間ルータD(23)を選択した場合を例に以降の説明を行なう。
【0012】
Last HopルータG(26)は、中間ルータD(23)をRPF隣接ルータに選択すると、図3(a)のマルチキャスト経路表(66)に示すように、当該マルチキャスト経路についての入力インタフェース(Incoming Interface)として中間ルータD(23)が接続されているインタフェースg1を登録し、出力インタフェース(Outgoing Interface)としてIGMP/MLDレポート(100)を受信し受信端末H(27)が接続されているインタフェースg3を登録することによって、Last HopルータG(26)のマルチキャスト経路を生成する。
【0013】
次にLast HopルータG(26)のRPF隣接ルータである中間ルータD(23)でマルチキャスト経路生成を実施するために、そのトリガとなるPIM Joinメッセージ(120)と呼ばれるマルチキャスト経路に関する参加要求をLast HopルータG(26)から中間ルータD(23)に送信する。
【0014】
中間ルータD(23)は、PIM Joinメッセージ(120)を受信すると、以下の手順でマルチキャスト経路の生成を行なう。
中間ルータD(23)は、ユニキャスト経路表(73)から中間ルータC(22)をRPF隣接ルータに選択する。そして中間ルータD(23)は、図3(b)のマルチキャスト経路表(63)にマルチキャスト経路についての入力インタフェース(Incoming Interface)として中間ルータC(22)が接続されているインタフェースd1を登録し、出力インタフェース(Outgoing Interface)としてPIM Joinメッセージ(120)を受信しLast HopルータG(26)が接続されているインタフェースd2を登録することで、マルチキャスト経路を生成する。
【0015】
次に中間ルータD(23)のRPF隣接ルータである中間ルータC(22)でマルチキャスト経路生成を実施するために、そのトリガとなるPIM Joinメッセージ(121)を中間ルータD(23)から中間ルータC(22)に送信する。
【0016】
中間ルータC(22)は、PIM Joinメッセージ(121)を受信すると、中間ルータD(23)と同様の以下の手順でマルチキャスト経路の生成を行なう。
中間ルータC(22)は、ユニキャスト経路表(72)からFirst HopルータB(21)をRPF隣接ルータに選択する。そして中間ルータC(22)は、図3(c)のマルチキャスト経路表(62)にマルチキャスト経路についての入力インタフェース(Incoming Interface)としてFirst HopルータB(21)が接続されているインタフェースc1を登録し、出力インタフェース(Outgoing Interface)としてPIM Joinメッセージ(121)を受信し中間ルータD(23)が接続されているインタフェースc2を登録することで、マルチキャスト経路を生成する。
【0017】
次に中間ルータC(22)のRPF隣接ルータであるFirst HopルータB(21)でマルチキャスト経路生成を実施するために、そのトリガとなるPIM Joinメッセージ(122)を中間ルータC(22)からFirst HopルータB(21)に送信する。
【0018】
First HopルータB(21)は、PIM Joinメッセージ(122)を受信すると、以下の手順でマルチキャスト経路の生成を行なう。
First HopルータB(21)は、配信サーバA(20)と直結されたインタフェースb1を持つため、図3(d)のマルチキャスト経路表(61)にマルチキャスト経路についての入力インタフェース(Incoming Interface)としてb1を登録し、出力インタフェース(Outgoing Interface)としてPIM Joinメッセージ(122)を受信し中間ルータC(22)が接続されているインタフェースb2を登録することで、マルチキャスト経路を生成する。
【0019】
上記のようにLast HopルータG(26)−中間ルータD(23)−中間ルータC(22)−First HopルータB(21)の順にマルチキャスト経路が生成され、マルチキャストトラフィック(140)がFirst HopルータB(21)−中間ルータC(22)−中間ルータD(23)−Last HopルータG(26)の経路を流れることになる。
【0020】
これにより、図2の冗長ネットワークにおいて、冗長経路のどちらの経路を用いてマルチキャストトラフィックの中継が行なわれるかは、Last HopルータG(26)における配信サーバA(20)宛のユニキャスト経路とECMP時の選択アルゴリズムに依存していることがわかる。
【0021】
次に図4、図5(a)、図5(b)、図5(c)、図5(d)を用いて、図2の冗長経路の一方で回線障害が発生している場合のマルチキャスト経路の生成過程を説明する。
図4は、図2と同様のネットワーク構成であるが、First HopルータB(21)−中間ルータC(22)間において、ユニキャスト/マルチキャスト共通の障害(250)である回線障害が発生しているネットワークを示している。
【0022】
図5(a)、図5(b)、図5(c)、図5(d)は、それぞれ図4のLast HopルータG(26)、中間ルータF(25)、中間ルータE(24)、First HopルータB(21)内のユニキャスト経路表(76、75、74、71)とPIMネイバー表(56、55、54、51)とマルチキャスト経路表(66、65、64、61)を示している。
【0023】
以下に、冗長経路の一方で回線障害が発生している場合のマルチキャスト経路の生成過程をLast HopルータG(26)からFirst HopルータB(21)まで順に説明する。
Last HopルータG(26)は、受信端末H(27)からIGMP/MLDレポート(100)を受信すると、図5(a)のユニキャスト経路表(76)より配信サーバA(20)宛のNext Hopを参照するが、図3(a)のユニキャスト経路表(76)とは異なり、Next Hopは、ルータF(25)のみを示している。これは、動的なユニキャストプロトコル(OSPFなど)によってユニキャスト/マルチキャスト共通の障害(250)である回線障害を検知し、ユニキャスト経路表(76)が書き換えられているためである。
【0024】
その結果、中間ルータF(25)がRPF隣接ルータに選択され、Last HopルータG(26)は、図5(a)のマルチキャスト経路表(66) に示すように入力インタフェース(Incoming Interface)として中間ルータF(25)が接続されているインタフェースg2を選択し、中間ルータF(25)にPIM Joinメッセージ(117)を送信することになる。
【0025】
中間ルータF(25)が上記PIM Joinメッセージ(117)を受信後は、上述したLast HopルータG(26)や図2と同様の処理により、中間ルータF(25)−中間ルータE(24)−First HopルータB(21)の順にマルチキャスト経路が生成され、マルチキャストトラフィック(141)は、First HopルータB(21)−中間ルータC(22)間の回線障害を避け、First HopルータB(21)−中間ルータE(24)−中間ルータF(25)−Last HopルータG(26)の経路で中継される。
【0026】
以上より、Last HopルータG(26)が回線障害を検知しているユニキャスト経路(プロトコル)に基づいて、マルチキャスト経路を選択しているため、回線障害が発生していない正常な経路でマルチキャストトラフィックを中継できる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0027】
【非特許文献1】IETF, "Protocol Independent Multicast - Sparse Mode (PIM-SM): Protocol Specification (Revised)", RFC4601
【非特許文献2】IETF, "An Overview of Source-Specific Multicast (SSM)", RFC3569
【非特許文献3】IETF, "Source-Specific Multicast for IP", RFC4607
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0028】
上述したようにマルチキャストの経路選択は、ユニキャスト経路に基づいて決定される。すなわち、上述した回線障害のようなユニキャスト/マルチキャスト共通の障害(250)については、マルチキャストとしても間接的に検知することができ、障害が発生していない経路のみを選択し、マルチキャストトラフィックの中継を行なうことができる。
【0029】
しかし、ユニキャスト経路に基づいてマルチキャスト経路を選択する従来技術では、ユニキャストトラフィックの中継には影響がない、後述するようなマルチキャスト特有の障害が発生している場合、マルチキャストトラフィックの中継を行う上で正常な経路が別途存在するにもかかわらず、障害が発生している経路を選択し、マルチキャストトラフィックの中継ができなくなるという課題がある。
【0030】
マルチキャスト特有の障害とは、次のような状態などを指す。1つ目は、ルータの高負荷やマルチキャストプログラムの不具合などによって、隣接ルータ間で定期送信しているPIM Helloメッセージ(200〜211)を受信できない状態が該当する。2つ目は、装置スペックオーバー(マルチキャスト経路数の登録上限、コピー性能上限などの超過)によるマルチキャスト経路登録不可状態が該当する。3つ目は、マルチキャストトラフィックの中継に使用される帯域が不足している状態が該当する。
【0031】
前記課題の事象が発生するケースについて、図6、図7(a)、図7(b)、図7(c)、図7(d)を用いて説明する。
図6は、図2と同様のネットワーク構成であるが、First HopルータB(21)から中間ルータC(22)へのPIM Helloメッセージ(209)が送受信できておらず、マルチキャスト特有の障害が発生している状態を示している。
【0032】
図7(a)、図7(b)、図7(c)、図7(d)は、それぞれ図6のLast HopルータG(26)、中間ルータD(23)、中間ルータC(22)、First HopルータB(21)内のユニキャスト経路表(76、73、72、71)とPIMネイバー表(56、53、52、51)とマルチキャスト経路表(66、63、62、61)を示している。
【0033】
以下に前記課題の事象が発生するまでの処理過程を説明する。
図7(a)、図7(b)で示すLast HopルータG(26)と中間ルータD(23)のユニキャスト経路表(76、73)、PIMネイバー表(56、53)は、従来技術の説明で用いた図3(a)、図3(b)と同じ状態であるため、Last HopルータG(26)と中間ルータD(23)で行なわれるマルチキャスト経路の生成は、従来技術の説明で用いた図2と同様で、ユニキャスト経路とECMP時の選択アルゴリズムに基づいて、Last HopルータG(26)−中間ルータD(23)の順に生成され、PIM Joinメッセージ(121)が中間ルータD(23)から中間ルータC(22)に送信される。なお、Last HopルータG(26)において、動的なユニキャストプロトコル(OSPFなど)ではマルチキャスト特有の障害を検知することができないため、ユニキャスト経路表(76)は図7(a)に示す通り、Next HopとしてルータDおよびルータFの双方が登録されている。
【0034】
PIM Joinメッセージ(121)を中間ルータD(23)から受信した中間ルータC(22)は、マルチキャスト経路のRPF隣接ルータを選択するために、図7(c)のユニキャスト経路表(72)からFirst HopルータB(21)を選択するが、中間ルータC(22)は、First HopルータB(21)からのPIM Helloメッセージ(209)を受信できていないマルチキャスト特有の障害が発生している状態であるため、従来技術で説明したRPF隣接ルータの選択条件のひとつである「PIM Helloメッセージを受信していること」に合致せず、RPF隣接ルータとして選択できる隣接ルータが存在しない状態となる。そのためマルチキャスト経路を生成できず、中間ルータC(22)からFirst HopルータB(21)にPIM Joinメッセージ(122)を送信することもできない。
【0035】
そのため、マルチキャスト経路の生成は、Last HopルータG(26)と中間ルータD(23)までとなり、中間ルータC(22)とFirst HopルータB(21)ではマルチキャスト経路が生成されないため、障害の発生していない正常な経路が別途存在するにも関わらず、マルチキャストトラフィック(142)が中継できない状態となる。
【0036】
これは、Last HopルータG(26)におけるRPF隣接ルータの選択が配信サーバA(20)宛のユニキャスト経路と上述したECMP時の選択アルゴリズムに基づいて決定されるためであり、Last HopルータG(26)のRPF隣接ルータの選択において、中間ルータC(22)のマルチキャスト特有の障害を考慮していないため、本課題であるマルチキャストトラフィック(142)の中継ができない事象が発生する。
【課題を解決するための手段】
【0037】
本発明は、上記課題を解決するために、冗長構成のマルチキャストネットワークにおいて、配信サーバ宛のユニキャスト経路のNext Hopが複数存在する(ECMPである)場合に、各冗長経路上のルータに対して、当該マルチキャストトラフィックの中継可否の問合せを行うネットワーク通信装置またはシステムを提供する。
【発明の効果】
【0038】
本発明は、冗長構成のマルチキャストネットワークにおいて、マルチキャスト特有の障害が発生していても、障害が発生していない正常な経路をマルチキャスト経路に選択することを可能とし、マルチキャスト中継の信頼性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本実施形態におけるネットワーク構成例および送受信メッセージを示す図である。
【図2】従来技術におけるマルチキャスト経路生成およびトラフィック中継手順を示す図である。
【図3(a)】図2におけるLast HopルータGのユニキャスト/マルチキャスト経路表およびPIMネイバー表を示す図である。
【図3(b)】図2における中間ルータDのユニキャスト/マルチキャスト経路表およびPIMネイバー表を示す図である。
【図3(c)】図2における中間ルータCのユニキャスト/マルチキャスト経路表およびPIMネイバー表を示す図である。
【図3(d)】図2におけるFirst HopルータBのユニキャスト/マルチキャスト経路表およびPIMネイバー表を示す図である。
【図4】従来技術における共通障害発生時のマルチキャスト経路生成およびトラフィック中継手順を示す図である。
【図5(a)】図4におけるLast HopルータGのユニキャスト/マルチキャスト経路表およびPIMネイバー表を示す図である。
【図5(b)】図4における中間ルータFのユニキャスト/マルチキャスト経路表およびPIMネイバー表を示す図である。
【図5(c)】図4における中間ルータEのユニキャスト/マルチキャスト経路表およびPIMネイバー表を示す図である。
【図5(d)】図4におけるFirst HopルータBのユニキャスト/マルチキャスト経路表およびPIMネイバー表を示す図である。
【図6】従来技術におけるマルチキャスト特有障害発生時のマルチキャスト経路生成手順を示す図である。
【図7(a)】図6におけるLast HopルータGのユニキャスト/マルチキャスト経路表およびPIMネイバー表を示す図である。
【図7(b)】図6における中間ルータDのユニキャスト/マルチキャスト経路表およびPIMネイバー表を示す図である。
【図7(c)】図6における中間ルータCのユニキャスト/マルチキャスト経路表およびPIMネイバー表を示す図である。
【図7(d)】図6におけるFirst HopルータBのユニキャスト/マルチキャスト経路表およびPIMネイバー表を示す図である。
【図8】本実施形態におけるFirst HopルータB、中間ルータC,D,E,F、Last HopルータGの内部構造および送受信データを示す説明図である。
【図9】本実施形態におけるマルチキャスト経路選択機能(中継可否問合せ処理)のフローチャート図である。
【図10】本実施形態におけるマルチキャスト中継可否判定機能のフローチャート図である。
【図11】本実施形態におけるマルチキャスト経路選択機能(中継可否応答受信処理)のフローチャート図である。
【図12(a)】本実施形態におけるLast HopルータGのユニキャスト/マルチキャスト経路表およびPIMネイバー表を示す図である。
【図12(b)】本実施形態における中間ルータFのユニキャスト/マルチキャスト経路表およびPIMネイバー表を示す図である。
【図12(c)】本実施形態における中間ルータEのユニキャスト/マルチキャスト経路表およびPIMネイバー表を示す図である。
【図12(d)】本実施形態におけるFirst HopルータBのユニキャスト/マルチキャスト経路表およびPIMネイバー表を示す図である。
【図12(e)】本実施形態における中間ルータDのユニキャスト/マルチキャスト経路表およびPIMネイバー表を示す図である。
【図12(f)】本実施形態における中間ルータCのユニキャスト/マルチキャスト経路表およびPIMネイバー表を示す図である。
【図13】上流ルータリストおよび中継可否応答リストを示す図である。
【図14】第1の実施形態の処理手順を示すシーケンス図である。
【図15】本実施形態における障害未発生時のネットワーク構成例および送受信メッセージを示す図である。
【図16】第2の実施形態におけるLast HopルータGの内部構造を示す説明図である。
【図17(a)】第2の実施形態の処理手順を示すシーケンス図(前半)である。
【図17(b)】第2の実施形態の処理手順を示すシーケンス図(後半)である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
図1を用いて本発明の実施形態を説明する。
図1は、本実施形態におけるネットワーク構成例を示している。図1のネットワーク構成は、本発明が解決しようとする課題で採り上げた図6のマルチキャスト特有の障害が発生しているネットワーク構成と同様のものであるが、本実施形態においては、図6の従来のルータに対して、少なくともFirst HopルータB(21)と中間ルータC、D、E、F(22〜25)にマルチキャスト中継可否判定機能(31〜35)を追加し、Last HopルータG(26)にマルチキャスト経路選択機能(36)を追加した構成となっている点が異なる。
【0041】
図1においてLast HopルータG(26)内のマルチキャスト経路選択機能(36)は、First HopルータB(21)、中間ルータC、D、E、F(22〜25)に対して、マルチキャスト特有の障害が発生していないか、すなわちマルチキャストトラフィックの中継が可能かどうかを問合せ、その応答結果を基に冗長構成の経路の中から中継可能な経路(RPF隣接ルータ)を選択する機能である。
【0042】
First HopルータB(21)、中間ルータC,D,E,F(22〜25)内の中継可否関連情報(91〜95)は、PIMネイバー表(51〜55)、マルチキャスト経路表(61〜65)、ユニキャスト経路表(71〜75)などのマルチキャスト中継可否の判断材料となる情報を総称した名称である。
【0043】
First HopルータB(21)および中間ルータC、D、E、F(22〜25)内のマルチキャスト中継可否判定機能(31〜35)は、中継可否関連情報(91〜95)を基にマルチキャストトラフィックの中継可否を判定し、Last HopルータG(26)内のマルチキャスト経路選択機能(36)に中継可否判定結果を通知する機能である。
【0044】
図8〜図13で本実施形態の構成要素である各機能部を説明する。
図8は、図1のFirst HopルータB(21)、中間ルータC,D,E,F(22〜25)、Last HopルータG(26)の内部構造および本実施形態における送受信メッセージを示している。
【0045】
中継可否問合せメッセージ(101〜105)は、Last HopルータG(26)がFirst HopルータB(21)、中間ルータC、D、E、F(22〜25)にマルチキャストトラフィックの中継可否を問合わせるために送信するメッセージである。
中継可否応答メッセージ(106〜110)は、First HopルータB(21)、中間ルータC、D、E、F(22〜25)がLast HopルータG(26)に送信する中継可否問合せメッセージ(100〜105)に対する応答メッセージである。
【0046】
Last HopルータG(26)のマルチキャスト経路選択機能(36)は、冗長ネットワークにおけるマルチキャストトラフィックの中継可能経路を選択する機能部である中継可能経路選択部(300)と、中継可否問合せメッセージ(101〜105)をFirst HopルータB(21)、中間ルータC,D,E,F(22〜25)に送信する機能部である上流中継可否問合せ送信部(301)と、中継可否応答メッセージ(106〜110)を受信する機能部である上流中継可否応答受信部(302)と、前記中継可否問合せメッセージ(101〜105)を送信する宛先となる上流ルータ(First HopルータBおよび中間ルータC、D、E、F)のIPアドレスが登録されているリストである上流ルータリスト(303)と、中継可否応答メッセージ(106〜110)内の中継可否判定結果が登録されるリストである中継可否応答リスト(304)を備えている。
【0047】
Last HopルータG(26)内のPIMプロトコル部(320)は、PIM-SSMのプロトコル動作を制御する機能部である。PIMプロトコル部(320)内の生成可能経路取得部(321)は、IGMP/MLDレポート(100)の受信などを契機に実施されるマルチキャスト経路生成処理において、中継可能経路選択部(300)に中継可能経路選択要求(400)を行い、冗長経路の中からマルチキャストトラフィックの中継が可能な経路(Next Hop)を取得(410)する機能部である。
【0048】
First HopルータB(21)および中間ルータC、D、E、F(22〜25)内のマルチキャスト中継可否判定機能(31〜35)は、中継可否関連情報(91〜95)よりマルチキャストトラフィックの中継可否を判定する機能部である中継可否判定部(310)と、Last HopルータG(26)が送信した中継可否問合せメッセージ(101〜105)を受信する機能部である下流中継可否問合せ受信部(311)と、中継可否応答メッセージ(106〜110)をLast HopルータG(26)へ送信する機能部である下流中継可否応答送信部(312)を備えている。
【0049】
図9、図10、図11は、上述したマルチキャスト経路選択機能(36)とマルチキャスト中継可否判定機能(31〜35)がマルチキャストトラフィックの中継可能経路を選択する過程を示したフローチャートである。各処理ボックスの末尾の小括弧内の数字は、図8に示す各処理部間の通信や、処理部からデータ表への登録・参照を示す矢印の番号と対応する。
【0050】
図12(a)、図12(b)、図12(c)、図12(d)、図12(e)、図12(f)は、図8のFirst HopルータB(21)、中間ルータC、D、E、F(22〜25)、Last HopルータG(26)内のユニキャスト経路表(71〜76)とPIMネイバー表(51〜56)とマルチキャスト経路表(61〜66)を示している。特に、図12(f)について、中間ルータC(22)のPIMネイバー表(52)には、マルチキャスト特有の障害が発生していることにより、First HopルータB(21)のアドレスが登録されていない。
【0051】
図13は、Last HopルータG(26)が保持する上流ルータリスト(303)と中継可否応答リスト(304)を説明する図である。
上流ルータリスト(303)には、「Source(配信サーバ)」として配信サーバAが登録され、Next Hopルータである中間ルータD(23)と配信サーバA(20)間の経路(冗長経路#1)上のルータであるFirst HopルータB(21)、中間ルータC(22)、中間ルータD(23)のIPアドレスと、もうひとつのNext Hopルータである中間ルータF(23)と配信サーバA(20)間の経路(冗長経路#2)上のルータであるFirst HopルータB(21)、中間ルータE(22)、中間ルータF(23)のIPアドレスが「上流ルータアドレス」として登録されている。なお、上流ルータリスト(303)のデータは、コンフィグレーションによって登録されるものとする。
中継可否応答リスト(304)には、以降で説明するマルチキャスト経路(ソースアドレス:配信サーバA(20)、グループアドレス:Group1)についての冗長経路#1、2上のルータからの中継可否判定結果(「中継可」もしくは「中継不可」)が登録されている。
【0052】
以降より、2つの実施形態を説明する。
第1の実施形態では、マルチキャスト特有の障害を考慮して、新規マルチキャスト経路の生成を行なう方式を示し、第2の実施形態では、マルチキャスト経路が既に生成済みの状態で、マルチキャストトラフィックが中継されている最中に、その経路上でマルチキャスト特有の障害が発生した場合のマルチキャスト経路の切り替え方式を示す。
【0053】
[第1の実施形態]
図14は、第1の実施形態を説明する処理シーケンスを示しており、受信端末H(27)がIGMP/MLDレポート(S100)を送信してから、マルチキャスト特有の障害を考慮した経路選択により、マルチキャストトラフィックが正常に中継されるまでを示している。以下に図14に示すシーケンスに沿って、図1、図8〜図14を用いて、第1の実施形態であるマルチキャスト経路の選択方式を時系列に説明する。
【0054】
図14に示すように、Last HopルータG(26)は、受信端末H(27)からマルチキャスト受信要求を示すIGMP/MLDレポート(S100)を受信すると、中継可否問合せ処理(S600)により、First HopルータB(21)と中間ルータC、D、E、F(22〜25)に、当該マルチキャスト経路の中継可否を確認するために、中継可否問合せメッセージ(S101〜S105)を送信する。
中継可否問合せメッセージ(S101〜S105)を受信したFirst HopルータB(21)と中間ルータC、D、E、F(22〜25)は、中継可否判定処理(S620)により、中継可否判定結果を格納した中継可否応答メッセージ(S106〜S110)をLast HopルータG(26)へ送信する。
中継可否応答メッセージ(S106〜S110)を受信したLast HopルータG(26)は、中継可否応答受信処理(S640)により、中継可能経路(RPF隣接ルータ)を選択する。
上記、中継可否問合せ処理(S600)−中継可否判定処理(S620)−中継可否応答受信処理(S640)の一連の処理(S700)が本実施形態における主要な処理手順であり、それぞれの詳細処理を図9、10,11のフローチャートを用いて説明する。
【0055】
図9は、図14の中継可否問合せ処理(S600)の詳細フローを示しており、図8に示したLast HopルータG(26)内の各機能部位の処理フローを示している。
図9に示す中継可否問合せ処理(S600)を以下に説明する。
Last HopルータG(26)が受信端末H(27)からマルチキャスト受信要求を示すIGMP/MLDレポート(S100)を受信すると、PIMプロトコル部(320)の生成可能経路取得部(321)がマルチキャスト経路選択機能(36)の中継可能経路選択部(300)へ中継可能経路選択要求を送信する。中継可能経路選択部(300)が生成可能経路取得部(321)から中継可能経路選択要求を受信(S601)すると、まず図12(a)のユニキャスト経路表(76)から配信サーバA(20)宛のNext Hopアドレスを取得する(S602)。
【0056】
Next Hopアドレス(ルータ)として、中間ルータD(23)と中間ルータF(25)が存在する(S603の「Yes」)ため、中継可能経路選択部(300)は、上流中継可否問合せ送信部(301)に前記中継可否問合せメッセージ(101〜105)の送信を依頼(S604)する。
上記依頼(S604)を受けた上流中継可否問合せ送信部(301)は、図13の前記上流ルータリスト(303)から中継可否問合せメッセージ(101〜105)の宛先IPアドレスである上流ルータアドレスを取得(S605)する。
その上流ルータアドレス宛に中継可否の判定対象・材料となるマルチキャスト経路情報(ソースアドレス:配信サーバA(20)、グループアドレス:Group1、その他の中継可否の判断情報)を中継可否問合せメッセージ(101〜105)に格納して送信(S606)する。
そして上流中継可否問合せ送信部(301)は、図13の中継可否応答リスト(304)に中継可否問合せメッセージ(101〜105)を送信した上流ルータアドレスを登録(S607)し、本処理を終了(応答待ち)(S608)する。
【0057】
なお、本説明で使用している図1のネットワーク構成例においては該当しないが、S602のNext Hopアドレスの取得において、Next Hopが存在しない(S603の「No」)場合、中継可能経路選択部(300)は、「中継可能経路なし」をPIMプロトコル部(46)に通知(S609)して処理を終了(S610)することになる。
【0058】
図10は、図14の前記中継可否判定処理(S620)の詳細フローを示しており、図8に示したFirst HopルータB(21)と中間ルータC、D、E、F(22〜25)内の各機能部位の処理フローを示している。
図10に示す中継可否判定処理(S620)を以下に説明する。
下流中継可否問合せ受信部(311)がLast HopルータG(26)から中継可否問合せメッセージ(101〜105)を受信(S621)すると、中継可否判定部(310)に中継可否問合せメッセージ(101〜105)に格納されているマルチキャスト経路(ソースアドレス:配信サーバA(20)、グループアドレス:Group1)についての中継可否判定を依頼(S622)する。
中継可否判定部(310)は、中継可否の判断材料となる前記中継可否関連情報(91〜95)を取得(S623)し、マルチキャスト特有の障害が発生していないか判定(S624)、つまり当該マルチキャストを中継可能であるか否かの判定を行なう。
【0059】
以下にその中継可否判定(S624)の一例を示す。
マルチキャスト特有の障害は、前述の発明が解決しようとする課題で説明したように、いくつか挙げられるため、その中からいくつか採り上げて具体的な判定方法の例を説明する。
【0060】
例1として、図1(および図6)で採り上げたPIM Helloメッセージが受信できないことにより、RPF隣接ルータが存在しない状態が発生するかどうかの判定方法を示す。
その判定方法は、基本的にはRPF隣接ルータを選択する処理と同様であるが、中継可否問合せメッセージ(S101〜S105)に格納されたマルチキャスト経路のソースアドレス(配信サーバA(20)のアドレス)宛のユニキャスト経路のNext Hopアドレスをユニキャスト経路表(71〜75)から取得する。そして、そのNext Hopアドレスが中継可否関連情報(91〜95)であるPIMネイバー表(51〜55)に登録されているかどうかで中継可否を判定する方法である。(PIMネイバー表に登録されていれば「中継可」、登録されていなければ「中継不可」となる。)
例2として、当該マルチキャスト経路に関連する隣接ルータからPIM Helloメッセージを受信しているかどうかの例1とは異なる判定方法を示す。
その判定方法は、Last HopルータG(26)が送信する中継可否問合せメッセージ(S101〜S105)内に、対象マルチキャストトラフィックの中継を行なうために必要なPIM隣接ルータのアドレスを格納して送信し、中継可否判定部(310)がその格納データとPIMネイバー表(51〜55)を比較することで判定する方法である。
【0061】
例3として、マルチキャスト特有の障害として前述したマルチキャスト経路数の登録上限オーバーについての判定方法を説明する。
その判定方法は、まず中継可否関連情報(91〜95)であるマルチキャスト経路表(61〜65)を参照し、上限値まで登録数が達しているか確認する。達していない場合は「中継可」となり、達している場合は中継可否の判定対象となるマルチキャスト経路(ソースアドレス:配信サーバA(20)、グループアドレス:Group1)が既にマルチキャスト経路表(61〜65)に登録されていれば「中継可」、登録されていなければ「中継不可」となる。
【0062】
以上の中継可否判定方法および中継可否関連情報(91〜95)は、あくまで一例であり、上記以外にも各ベンダーや機種に依存する性能/機能などを判定材料に中継可否を判定することが可能である。
【0063】
上記判定処理の例1を用いると、中間ルータC(22)の中継可否判定結果(S624)は、中継可否関連情報(92)である図12(f)のユニキャスト経路表(72)とPIMネイバー表(52)より、配信サーバA(20)宛のNext HopルータであるFirst HopルータB(21)が、PIMネイバー表(52)に登録されていない(すなわち、First HopルータB(21)からのPIM Helloメッセージを受信できていない)ため、「中継不可」となる。その他のFirst HopルータB(21)、中間ルータD、E、F(23〜25)については、マルチキャスト特有の障害は発生しておらず、中継可否判定結果(S624)は「中継可」となる。
【0064】
上記判定処理が終了すると、中継可否判定部(310)は、中継可否判定結果を下流中継可否応答送信部(312)に通知(S625、S626)する。下流中継可否応答送信部(312)は、中継可否判定結果を格納した中継可否応答メッセージ(106〜110)をLast HopルータG(26)に送信(S627)し、本処理を終了(S628)する。
【0065】
図11は、図14の前記中継可否応答受信処理(S640)の詳細フローを示しており、図8に示したLast HopルータG(26)内の各機能部位の処理フローを示している。
図11に示す中継可否応答受信処理(S640)を図14に示すS106〜S110の順で中継可否応答メッセージを受信した場合を例に説明する。
上流中継可否応答受信部(302)が中間ルータF(25)から中継可否判定結果が「中継可」の中継可否応答メッセージ(S106)を応答待ち時間内に受信(S641、S642の「No」)すると、上流中継可否応答受信部(302)は、図13の中継可否応答リスト(304)に示すように、中間ルータF(25)の中継可否判定結果に「中継可」を登録(S643)する。そしてFirst HopルータB(21)や中間ルータC、D、E(22〜24)からはまだ中継可否応答メッセージ(106〜109)を受信していない(S645の「No」)ため、本処理を一旦終了(応答待ち)(S646)する。
【0066】
同様に中間ルータE、D(24、23)から応答待ち時間内に中継可否応答メッセージ(S107、S108)を受信(S641、S642の「No」)すると、図13の中継可否応答リスト(304)に中間ルータE、D(24、23)の中継可否判定結果に「中継可」を登録(S643)し、本処理を一旦終了(応答待ち)する(S646)。
【0067】
中間ルータC(22)から中継可否判定結果が「中継不可」の中継可否応答メッセージ(S109)を応答待ち時間内に受信(S641、S642の「No」)すると、図13の中継可否応答リスト(304)に示すように、中間ルータC(22)の中継可否判定結果に「中継不可」を登録(S643)し、本処理を一旦終了(応答待ち)(S646)する。
【0068】
First HopルータB(21)から両経路(冗長経路#1,2)の中継可否判定結果が「中継可」の中継可否応答メッセージ(S110)を応答待ち時間内に受信(S641、S642の「No」)すると、図13の中継可否応答リスト(304)に示すように、First HopルータB(21)の中継可否判定結果(冗長経路#1,2の両方)に「中継可」を登録(S643)する。そして当該マルチキャスト経路の全上流ルータから中継可否応答メッセージ(S106〜S110)を受信した(S645の「Yes」)ため、上流中継可否応答受信部(302)は、中継可能経路選択部(300)に受信完了を通知(S647)する。
【0069】
上記通知(S647)を受信した中継可否経路選択部(300)は、中継可否応答リスト(304)より中継可否判定結果を取得(S648)し、全上流ルータが「中継可」を応答した冗長経路が存在するか判定(S649)する。その判定の結果、図13に示す冗長経路#2(First HopルータB(21)、中間ルータE(24)、中間ルータF(25))の全てのルータが「中継可」を応答しているため、中継可能経路選択部(300)は、PIMプロトコル部(320)内の生成可能経路取得部(321)に中継可能な冗長経路#2についてのNext Hopである、中間ルータF(25)のルータ情報をPIMプロトコル部(320)へ通知(S652)する。
【0070】
なお、図14のシーケンスにおいては例として採り上げていないが、中継可否応答メッセージ(S106〜S110)を応答待ち時間内に受信できない(S642の「Yes」))場合、上流中継可否応答受信部(302)は、受信できなかった上流ルータについて、中継可否応答リスト(304)の中継可否判定結果に「中継不可」を登録(S644)し、中継可能経路選択部(300)に受信完了を通知(S647)する。
【0071】
また、本説明で使用している図1のネットワーク構成例においては該当しないが、S649の判定において、全上流ルータが「中継可」を応答した冗長経路が存在しない(S649の「No」)場合、中継可能経路選択部(300)は「中継可能経路なし」をPIMプロトコル部(46)に通知(S650)して処理を終了(S651)することになる。
【0072】
上記S652の通知を受信したPIMプロトコル部(320)は、中間ルータF(25)をRPF隣接ルータに選択する。Last HopルータG(26)のRPF隣接ルータ決定後のマルチキャスト経路の生成処理は、背景技術と同様であり、Last HopルータG(26)-中間ルータF(25)-中間ルータE(24)-First HopルータB(21)の順でPIM Joinを送信し(S117、S118、S119)、マルチキャスト経路の生成処理を行ない、マルチキャストトラフィック(141)がマルチキャスト特有の障害が発生していないFirst HopルータB(21)- 中間ルータE(24)- 中間ルータF(25)- Last HopルータG(26)のルータを経由して、受信端末H(27)に中継される(S141)。
【0073】
以上より、冗長構成のネットワークにおいて、新規マルチキャスト経路の生成時に、図9〜11で示した処理を適用することによって、マルチキャスト特有の障害の発生有無を考慮することができ、正常な経路でマルチキャストトラフィックの中継を開始することが可能となる。
【0074】
[第2の実施形態]
第2の実施形態は、前述したように、マルチキャストトラフィックの中継中に、マルチキャスト特有の障害が発生した場合のマルチキャスト経路の切り替え方式である。
図15は、図1と同様のネットワーク構成であるが、マルチキャスト特有の障害が発生していない両冗長経路が正常な場合を示している。以下では、図15の状態でマルチキャストトラフィックを中継中に、図1に示したマルチキャスト特有の障害が発生した場合のマルチキャスト経路の切り替え方式を説明する。
【0075】
図16は、第2の実施形態におけるLast HopルータG(21)の内部構造を示している。図8の第1の実施形態で用いたLast HopルータG(21)の内部構造とはPIMプロトコル部(322)内に定期中継可否監視部(323)を有する点が異なる。
定期中継可否監視部(323)とは、中継中のマルチキャスト経路に対して、定期的に中継可能経路選択部(300)に中継可能経路選択要求(400)を行い、マルチキャスト特有の障害の発生を監視する機能である。
すなわち、監視方法自体は、第1の実施形態で説明した中継可否問合せ処理(S600)、中継可否判定処理(S620)、中継可否応答受信処理(S640)をそのまま適用し、その処理の起動契機が定期中継可否監視部(323)からの定期起動となる。
【0076】
図17(a)、17(b)は、第2の実施形態を説明する処理シーケンスを示しており、この処理シーケンスの初期状態では、図15に示したようにマルチキャスト特有の障害は発生しておらず、マルチキャストトラフィック(S140)がFirst HopルータB(21)−中間ルータC(22)−中間ルータD(23)−Last HopルータG(26)を中継されている状態となっている。その状態から、第2の実施形態により、図1に示すマルチキャスト特有の障害を検出し、マルチキャスト経路がFirst HopルータB(21)−中間ルータE(24)−中間ルータF(25)−Last HopルータG(26)の経路に切り替わり、マルチキャストトラフィック(S141)が中継されることを示している。
【0077】
以下に図17(a)、17(b)のシーケンスに沿って、本発明の第2の実施形態であるマルチキャスト経路の監視・切替方式を時系列に説明する。
S701の定期中継可否監視は、マルチキャスト特有の障害が発生する前に定期起動された場合の処理を示している。S701内の中継可否問合せ処理(S600)、中継可否判定処理(S620)、中継可否応答受信処理(S640)は、第1の実施例で説明した図9〜図11のフローチャートと同様であり、その処理の結果、マルチキャスト特有の障害は発生していないため、全ての中継可否応答メッセージ(S106〜S110)の中継可否判定結果は「中継可」となり、中継中のFirst HopルータB(21)−中間ルータC(22)−中間ルータD(23)−Last HopルータG(26)の経路は正常であることを確認できる。
【0078】
次にマルチキャスト特有の障害発生(S800)直後のS702の定期中継可否監視について説明する。S701とは異なり、中間ルータC(22)において、マルチキャスト特有の障害発生(S800)により、中間ルータC(22)からの中継可否応答メッセージ(S109)の中継可否判定結果が「中継可」から「中継不可」に変更となったため、Last HopルータG(26)の中継可能経路選択部(300)は、PIMプロトコル部(322)内の定期中継可否監視部(323)に中継可能経路のNext Hopルータとして中間ルータF(25)を通知する。
【0079】
その通知を受信した定期中継可否監視部(323)は、RPF隣接ルータが中間ルータD(23)から中間ルータF(25)に変更となるため、即座に当該マルチキャスト経路の入力インタフェース(Incoming Interface)を中間ルータD(23)が接続されているg1から、図12(a)のLast HopルータG(26)内のマルチキャスト経路表(66)に示すように、中間ルータF(25)が接続されているg2に切り替え、新RPF隣接ルータである中間ルータF(25)にPIM Joinメッセージ(S117)を送信する。
【0080】
以降のマルチキャスト経路の生成処理は、背景技術と同様で、上記PIM Joinメッセージ(S117)を受信した中間ルータF(25)から順に中間ルータE(24)、First HopルータB(21)とマルチキャスト経路の生成が行なわれ、マルチキャストトラフィック(141)がFirst HopルータB−中間ルータE(24)−中間ルータF(25)−Last HopルータG(26)のルータを経由して受信端末H(27)に中継される。
【0081】
以上より、冗長構成のネットワークにおいて、マルチキャストトラフィックの中継中に、図9〜11で示した処理を定期的に実行することによって、マルチキャスト特有の障害発生時に、正常な経路にマルチキャスト経路を切り替えることが可能となる。
【0082】
なお、これまで説明した第1の実施形態および第2の実施形態では、受信端末Hを収容するLast HopルータGがマルチキャスト経路選択機能(36)を有するものとして説明したが、必ずしもLast HopルータGである必要はなく、マルチキャスト経路の一部分のみが冗長経路となっている場合には、その冗長経路の始点となる中間ルータがマルチキャスト経路選択機能(36)を保持して、マルチキャスト特有の障害を考慮した経路選択を行ってもよい。
【符号の説明】
【0083】
10:マルチキャストネットワーク、20:配信サーバ、21:First Hopルータ、22〜25:中間ルータ、26:Last Hopルータ、27:受信端末、31〜35:マルチキャスト中継可否判定機能、36:マルチキャスト経路選択機能、41〜46,320,322:PIMプロトコル部、51〜56:PIMネイバー表、61〜66:マルチキャスト経路表、71〜76:ユニキャスト経路表、91〜95:中継可否関連情報、100:IGMP/MLDレポートメッセージ、101〜105:中継可否問合せメッセージ、106〜110:中継可否応答メッセージ、117〜122:PIM Joinメッセージ、130,131:ユニキャストトラフィック中継可能経路、140,141:マルチキャストトラフィック、200〜211:PIM Helloメッセージ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配信サーバから配信されるマルチキャストトラフィックを中継するための冗長経路に接続されるネットワーク通信装置であって、
ユニキャスト経路表に基づいてマルチキャストトラフィックを中継するための経路を決定するマルチキャスト経路決定部を備え、
前記マルチキャスト経路決定部は、
前記ユニキャスト経路表において前記配信サーバ宛の経路として複数のネットワークインタフェースを持つECMP(Equal Cost Multi Path)を構成する場合において、ECMPのNext Hopアドレスが示す複数の隣接するネットワーク通信装置から配信サーバまでの各冗長経路上のネットワーク通信装置に対して、マルチキャストトラフィックの中継可否を問い合せる中継可否問合せメッセージを送信する上流中継可否問合せ送信部を備えることを特徴とするネットワーク通信装置。
【請求項2】
請求項1に記載のネットワーク通信装置であって、
前記マルチキャスト経路決定部は、
前記各冗長経路上のネットワーク通信装置からマルチキャストトラフィックの中継可否を示す応答メッセージを受信する上流中継可否応答受信部と、
前記上流中継可否応答受信部が受信した応答メッセージに含まれる中継可否判定結果に基づいて前記冗長経路の中からマルチキャストトラフィックの中継が可能な経路を選択する中継可能経路選択部を備えることを特徴とするネットワーク通信装置。
【請求項3】
請求項2に記載のネットワーク通信装置であって、
マルチキャストトラフィックの中継開始時のマルチキャスト経路選択時に前記中継可能経路選択部から前記マルチキャストトラフィックの中継が可能な経路を取得する生成可能経路取得部を備えることを特徴とするネットワーク通信装置。
【請求項4】
請求項2または請求項3に記載のネットワーク通信装置にあって、
マルチキャストトラフィックの中継中に、定期的に前記マルチキャストトラフィックの中継可否を前記中継可能経路選択部から取得する定期中継可否監視部を備えることを特徴とするネットワーク通信装置。
【請求項5】
マルチキャストトラフィックを送信する配信サーバと前記マルチキャストトラフィックを受信する受信端末間を複数のネットワーク通信装置で冗長経路に構成するマルチキャストネットワークシステムであって、
配信サーバから配信されるマルチキャストトラフィックを中継するための前記冗長経路のそれぞれに接続される第1のネットワーク通信装置と、
前記冗長経路の一部を構成する第2のネットワーク通信装置とを備え、
前記第1のネットワーク通信装置は、
ユニキャスト経路表に基づいてマルチキャストトラフィックを中継するための経路を決定するマルチキャスト経路決定部を備え、
前記マルチキャスト経路決定部は、
前記ユニキャスト経路表において前記配信サーバ宛の経路として複数のネットワークインタフェースを持つECMP(Equal Cost Multi Path)を構成する場合において、ECMPのNext Hopアドレスが示す複数の隣接するネットワーク通信装置から配信サーバまでの各冗長経路上のネットワーク通信装置である前記第2のネットワーク通信装置に対して、マルチキャストトラフィックの中継可否を問い合せる中継可否問合せメッセージを送信する上流中継可否問合せ送信部を備えることを特徴とするマルチキャストネットワークシステム。
【請求項6】
請求項5に記載のマルチキャストネットワークシステムであって、
前記第2のネットワーク通信装置は、
前記第1のネットワーク通信装置の前記上流中継可否問合せ送信部から送信された中継可否問合せメッセージを受信する下流中継可否問合せ受信部と、
前記中継可否問合せメッセージに含まれるマルチキャスト経路に関する情報および自ネットワーク通信装置が保持する情報に基づいて当該マルチキャスト経路の中継可否を判定する中継可否判定部と、
前記中継可否判定部にて判定した中継可否判定結果を応答メッセージとして前記第1のネットワーク通信装置に送信する下流中継可否応答送信部と、
を備えることを特徴とするマルチキャストネットワークシステム。
【請求項7】
請求項6に記載のマルチキャストネットワークシステムであって、
前記第1のネットワーク通信装置のマルチキャスト経路決定部は、
前記第2のネットワーク通信装置から前記応答メッセージを受信する上流中継可否応答受信部と、
前記上流中継可否応答受信部が受信した応答メッセージに含まれる中継可否判定結果に基づいて前記冗長経路の中からマルチキャストトラフィックの中継が可能な経路を選択する中継可能経路選択部と、
を備えることを特徴とするマルチキャストネットワークシステム。
【請求項8】
請求項7に記載のマルチキャストネットワークシステムであって、
前記第1のネットワーク通信装置は、
マルチキャストトラフィックの中継開始時のマルチキャスト経路選択時に前記中継可能経路選択部から前記マルチキャストトラフィックの中継が可能な経路を取得する生成可能経路取得部を備えることを特徴とするマルチキャストネットワークシステム。
【請求項9】
請求項7または請求項8に記載のマルチキャストネットワークシステムにあって、
前記第1のネットワーク通信装置は、
マルチキャストトラフィックの中継中に、定期的に前記マルチキャストトラフィックの中継可否を前記中継可能経路選択部から取得する定期中継可否監視部を備えることを特徴とするマルチキャストネットワークシステム。
【請求項1】
配信サーバから配信されるマルチキャストトラフィックを中継するための冗長経路に接続されるネットワーク通信装置であって、
ユニキャスト経路表に基づいてマルチキャストトラフィックを中継するための経路を決定するマルチキャスト経路決定部を備え、
前記マルチキャスト経路決定部は、
前記ユニキャスト経路表において前記配信サーバ宛の経路として複数のネットワークインタフェースを持つECMP(Equal Cost Multi Path)を構成する場合において、ECMPのNext Hopアドレスが示す複数の隣接するネットワーク通信装置から配信サーバまでの各冗長経路上のネットワーク通信装置に対して、マルチキャストトラフィックの中継可否を問い合せる中継可否問合せメッセージを送信する上流中継可否問合せ送信部を備えることを特徴とするネットワーク通信装置。
【請求項2】
請求項1に記載のネットワーク通信装置であって、
前記マルチキャスト経路決定部は、
前記各冗長経路上のネットワーク通信装置からマルチキャストトラフィックの中継可否を示す応答メッセージを受信する上流中継可否応答受信部と、
前記上流中継可否応答受信部が受信した応答メッセージに含まれる中継可否判定結果に基づいて前記冗長経路の中からマルチキャストトラフィックの中継が可能な経路を選択する中継可能経路選択部を備えることを特徴とするネットワーク通信装置。
【請求項3】
請求項2に記載のネットワーク通信装置であって、
マルチキャストトラフィックの中継開始時のマルチキャスト経路選択時に前記中継可能経路選択部から前記マルチキャストトラフィックの中継が可能な経路を取得する生成可能経路取得部を備えることを特徴とするネットワーク通信装置。
【請求項4】
請求項2または請求項3に記載のネットワーク通信装置にあって、
マルチキャストトラフィックの中継中に、定期的に前記マルチキャストトラフィックの中継可否を前記中継可能経路選択部から取得する定期中継可否監視部を備えることを特徴とするネットワーク通信装置。
【請求項5】
マルチキャストトラフィックを送信する配信サーバと前記マルチキャストトラフィックを受信する受信端末間を複数のネットワーク通信装置で冗長経路に構成するマルチキャストネットワークシステムであって、
配信サーバから配信されるマルチキャストトラフィックを中継するための前記冗長経路のそれぞれに接続される第1のネットワーク通信装置と、
前記冗長経路の一部を構成する第2のネットワーク通信装置とを備え、
前記第1のネットワーク通信装置は、
ユニキャスト経路表に基づいてマルチキャストトラフィックを中継するための経路を決定するマルチキャスト経路決定部を備え、
前記マルチキャスト経路決定部は、
前記ユニキャスト経路表において前記配信サーバ宛の経路として複数のネットワークインタフェースを持つECMP(Equal Cost Multi Path)を構成する場合において、ECMPのNext Hopアドレスが示す複数の隣接するネットワーク通信装置から配信サーバまでの各冗長経路上のネットワーク通信装置である前記第2のネットワーク通信装置に対して、マルチキャストトラフィックの中継可否を問い合せる中継可否問合せメッセージを送信する上流中継可否問合せ送信部を備えることを特徴とするマルチキャストネットワークシステム。
【請求項6】
請求項5に記載のマルチキャストネットワークシステムであって、
前記第2のネットワーク通信装置は、
前記第1のネットワーク通信装置の前記上流中継可否問合せ送信部から送信された中継可否問合せメッセージを受信する下流中継可否問合せ受信部と、
前記中継可否問合せメッセージに含まれるマルチキャスト経路に関する情報および自ネットワーク通信装置が保持する情報に基づいて当該マルチキャスト経路の中継可否を判定する中継可否判定部と、
前記中継可否判定部にて判定した中継可否判定結果を応答メッセージとして前記第1のネットワーク通信装置に送信する下流中継可否応答送信部と、
を備えることを特徴とするマルチキャストネットワークシステム。
【請求項7】
請求項6に記載のマルチキャストネットワークシステムであって、
前記第1のネットワーク通信装置のマルチキャスト経路決定部は、
前記第2のネットワーク通信装置から前記応答メッセージを受信する上流中継可否応答受信部と、
前記上流中継可否応答受信部が受信した応答メッセージに含まれる中継可否判定結果に基づいて前記冗長経路の中からマルチキャストトラフィックの中継が可能な経路を選択する中継可能経路選択部と、
を備えることを特徴とするマルチキャストネットワークシステム。
【請求項8】
請求項7に記載のマルチキャストネットワークシステムであって、
前記第1のネットワーク通信装置は、
マルチキャストトラフィックの中継開始時のマルチキャスト経路選択時に前記中継可能経路選択部から前記マルチキャストトラフィックの中継が可能な経路を取得する生成可能経路取得部を備えることを特徴とするマルチキャストネットワークシステム。
【請求項9】
請求項7または請求項8に記載のマルチキャストネットワークシステムにあって、
前記第1のネットワーク通信装置は、
マルチキャストトラフィックの中継中に、定期的に前記マルチキャストトラフィックの中継可否を前記中継可能経路選択部から取得する定期中継可否監視部を備えることを特徴とするマルチキャストネットワークシステム。
【図1】
【図2】
【図3(a)】
【図3(b)】
【図3(c)】
【図3(d)】
【図4】
【図5(a)】
【図5(b)】
【図5(c)】
【図5(d)】
【図6】
【図7(a)】
【図7(b)】
【図7(c)】
【図7(d)】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12(a)】
【図12(b)】
【図12(c)】
【図12(d)】
【図12(e)】
【図12(f)】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17(a)】
【図17(b)】
【図2】
【図3(a)】
【図3(b)】
【図3(c)】
【図3(d)】
【図4】
【図5(a)】
【図5(b)】
【図5(c)】
【図5(d)】
【図6】
【図7(a)】
【図7(b)】
【図7(c)】
【図7(d)】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12(a)】
【図12(b)】
【図12(c)】
【図12(d)】
【図12(e)】
【図12(f)】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17(a)】
【図17(b)】
【公開番号】特開2013−9213(P2013−9213A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−141382(P2011−141382)
【出願日】平成23年6月27日(2011.6.27)
【出願人】(504411166)アラクサラネットワークス株式会社 (315)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年6月27日(2011.6.27)
【出願人】(504411166)アラクサラネットワークス株式会社 (315)
【Fターム(参考)】
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