説明

ネットワーク障害検出システム

【課題】様々なネットワーク障害に対応してより詳しい障害検出を行うことができるネットワーク障害検出システムを得る。
【解決手段】ネットワークを流れるパケットから、通信に係るパケット損失量に関する値、パケット送信間隔揺らぎに関する値、パケット損失の発生の仕方に関する値に係るパラメータのうち、少なくとも1つのパラメータの値を分類特徴ベクトルとして抽出するパラメータ抽出部102と、パラメータに基づいてネットワークの状態に係る場合分けを行うための数値条件と分類特徴ベクトルの対応するパラメータの値とを定められた順序で比較していって分類ラベルを決定し、障害の有無及び障害の種類を分類する処理を行う障害有無分類部104とを備えるものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ネットワーク(電気通信回線)上に流れるパケット信号に基づいて得られるデータ(情報)に基づいて、ネットワークに発生した障害を検出するシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、ネットワーク上で大きなデータ量の信号を流す、音声や動画のストリーミングなどのマルチメディアデータを使ってリアルタイムに提供するサービスが増えてきている。このようなサービスでは、リアルタイムでデータを含む信号(以下、このような信号もデータという)を送受信する必要がある。このようなリアルタイム通信においては、RTP(Real-time Transport Protocol)、RTCP(Real-time Transport Control Protocol)のような通信プロトコルを使用している。
【0003】
しかし、例えば、RTPはパケットロス対策や伝送時間の保証等は行われていないUDPタイプの通信プロトコルである。したがって、なるべく遅延を少なくしてデータを送り出すことに向いている反面、上記のような対策、保証がなされていないため、ネットワークにおけるデータの通信経路上に発生した障害の影響をすぐにうける。このため、音声が途切れたり、画像が乱れるなどユーザに対するサービス品質が低下しやすいという問題がある。
【0004】
このように、ネットワークによって動画像のストリーミングやテレビ会議のような品質が重視されるサービスを実施する上で利用者に対して提供する通信サービスの品質を管理し、品質劣化などに対して劣化箇所の特定と対策を行うことが重要になってきている。例えばネットワークを提供している事業者にとってその事業者が管理しているネットワーク内の利用者が、管理外のネットワークにいるサーバや端末における何らかのサービスを利用していることがある。このとき、サービスにおけるデータ通信において何らかの品質劣化が検出され、それが管理外のネットワークに原因がある場合、どの地点で起きたものなのか調べたくても管理外のネットワークにおける通信状態などの情報が手に入らないため原因を推測し保全することが難しいという問題がある。このように送信元のネットワークを含めて複数のネットワークを経由する通信が行われると、ユーザに対する品質の保証が難しくなるため、何らかの障害検出の仕組みが必要である。
【0005】
このような背景に対し、セッションの客観的品質を推定するための様々な仕組みが検討されている。例えば、MOS(Meau Opinion Score:平均オピニオン評点)のような評価値、R値等、P.564(PESQ:Perceptual Evaluation of Speech Quality )のような客観的品質評価技術、またRTPにおけるMOS値やその他の品質パラメータを算出し、サービス提供中の品質を把握するためのRTCP−XR(Real-time Transport Control Protocol Extended Reports )のようなものもある。
【0006】
ここで、従来、ネットワークの障害を検出するため、ネットワーク上に接続された機器に対して、様々な条件を有するパケットを生成してその信号を送り、その応答に係る信号を解析してネットワークで発生している障害を検出するシステムが提案されている(例えば特許文献1参照)。ただ、ネットワークには、本来、不必要な監視のためのパケットが流れ続けるため、トラフィックが多くなってしまう。
【0007】
一方、利用者の端末、所定のノード(機器)の近くを流れるRTPに基づくパケットのパケットロス(消失)発生の有無、揺らぎ(ジッタ)発生の有無、通信経路のラウンドトリップタイム過大について監視し、品質異常を検出しているものがある(例えば、特許文献2参照)。また、パケットが所定数連続で失われたバースト状であるかどうかで障害の種類を判定するものもある(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2008−42470号公報
【特許文献2】特開2009−219075号公報
【特許文献3】特開2006−5775号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、R値といった品質指標、特許文献2の方法のようなネットワークを監視、異常を検出するような方法では、経路によって、有線や無線、ネットワーク装置の能力、ホップ数といった様々なネットワークの特性の違いからそのパラメータの平常時状態における値に幅ができる。
【0010】
また、P.564のような品質評価技術の多くは特定の通信におけるエンド・ツー・エンドにおける品質を評価するものである。また、特許文献2についても、エンド・ツー・エンドにおける判断を行うものである。このため、例えば、その技術によって得られたデータに基づいても、ネットワーク上のどの地点(区間)で障害が発生しているのかを特定することが困難である。
【0011】
さらに、例えば、無線通信のような場合、電波の影響により、通信経路におけるリンク状態が不安定となるリンク障害が発生していることがある。特許文献3に記載する方法の場合、パケットロスが所定回数連続で発生したことで障害発生と原因を判定しているが、リンク障害の場合には、必ず連続してパケットロスが発生するとは限らない。例えば正常なリンク状態とパケットロス、揺らぎが増加する状態との入れ替わりが生じる。このため、パケットロスが連続する回数が少なかったり、揺らぎだけが増加するような状態では、いち早くリンク障害と判定することができない。
【0012】
また、大規模なネットワークにおいて、リンク障害等が発生する経路、区間を特定等しようとすると、すべてのパケットを監視等するために、処理能力が高い装置を必要とする。
【0013】
そこで、様々なネットワーク障害に対応してより詳しい障害検出を行うことができるネットワーク障害検出システムの実現が望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明に係るネットワーク障害検出システムは、ネットワークを流れるパケットから、通信に係るパケット損失量に関する値、パケット送信間隔揺らぎに関する値、パケット損失の発生の仕方に関する値に係るパラメータのうち、少なくとも1つのパラメータの値を分類特徴ベクトルとして抽出する処理を行うパラメータ抽出部と、ネットワークの状態に係る場合分けを行うための数値条件と分類特徴ベクトルの対応するパラメータの値とを比較していって障害の有無及び障害の種類を分類する処理を行う障害有無分類部とを備える。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、パラメータ抽出部が抽出したパラメータからなる分類特徴ベクトルと数値条件とに基づいて、障害有無分類部が障害の有無、種類を分類するようにしたので、パラメータの数値条件によって定められた範囲に基づいて的確なネットワーク障害の有無、障害の種類を判断することができる。
また、パケット損失の発生の仕方に関する値をパラメータに含めることにより、パケット損失のほとんどが連続的に起こっているのかそうでないのか、また、連続的でも損失区間が短いのか長いのか、区間内での発生頻度が多いのか少ないのかといった発生のふるまいで、たとえば、無線通信特有のパケット損失なのか、あるいは無線区間の障害により損失したのかといった違いをさらに判断することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】実施の形態1に係るネットワーク障害検出システムの構成を表す図である。
【図2】RTCP−XRパケットの構成を表す図である。
【図3】分類規則を説明するための図である。
【図4】実施の形態2に係るネットワーク障害検出システムの構成を表す図である。
【図5】分類特徴ベクトル蓄積部201が蓄積するデータを表として表した図である。
【図6】実施の形態3に係るネットワーク障害検出システムの構成を表す図である。
【図7】障害数計数部301の処理を説明するための図である。
【図8】ネットワークトポロジの例を表す図である。
【図9】各ノードとIPアドレスとの関係を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
実施の形態1.
図1は本発明の実施の形態1に係るネットワーク障害検出システムの構成を表す図である。パケット受信部100は、ネットワークを流れているパケット信号(以下、パケットという)を受信する処理を行う。パケットフィルタリング部101は、パケット受信部100が受信したパケットのうち、パラメータ抽出部102が処理を行うパケットを選別する処理を行う。パラメータ抽出部102は、パケットフィルタリング部101が選別したパケットに基づいて分類特徴ベクトルとして構成するパラメータを抽出する。
【0018】
また、分類条件記憶部103は、記憶装置で構成されており、後述する障害有無分類部104が障害有無等の分類処理を行うための分類規則及び分類規則における数値条件をデータとして記憶し、保存する。障害有無分類部104は、パラメータ抽出部102が抽出したパラメータからなる分類特徴ベクトル及び分類条件記憶部103が保存している分類規則に基づいて、ネットワーク障害の有無、障害の種類を判断し、分類(決定)する処理を行う。結果出力部105は、障害有無分類部104が分類処理した結果を、例えば表示手段に出力処理する。
【0019】
図1に基づいて、ネットワーク障害検出システムの各部のさらに詳細な動作について説明する。本システムは、パケット受信部100を接点として、ネットワークのある地点においてネットワーク信号を受信できるように接続されている。そして、パケット受信部100はネットワークのある地点を流れるパケットを受信し、パケットフィルタリング部101が処理できるデータ形式にして受け渡す処理を行う。
【0020】
パケットフィルタリング部101はパケット受信部100からのパケットに含まれるヘッダ等に基づいて、例えばデータフロー制御及び送受信先に関するデータを有するパケットを選別し、パラメータ抽出部102に渡す処理を行う。ここで、データフロー制御及び送受信先に関するデータを有するパケットとしては、例えばRTCP−XRをプロトコルとした信号送受信に用いられるパケット(以下、RTCP−XRパケットという)がある。ここではパケットフィルタリング部101が判別を行うパケットがRTCP−XRパケットであるものとして説明する。
【0021】
パラメータ抽出部102は、パケットフィルタリング部101が選別したパケットに含まれるパラメータをデータとして抽出し、分類特徴ベクトルとして構成するパラメータを抽出する。ここで、分類特徴ベクトルとは、ネットワーク障害を分類するための特徴を有するパラメータを集めたデータである。ここでは、その通信に係るパケット損失量に関する値、パケット送信間隔揺らぎに関する値、パケット損失の発生の仕方(例えばバースト等)に関する値のうち、少なくとも1つを分類特徴ベクトルを構成するパラメータとする。
【0022】
図2はRTCP−XRパケットの構成を表す図である。図2(a)はRTCP−XRパケットの全体構成である。RTCP−XRパケットの構成において、分類特徴ベクトルとして構成するパラメータは、Report Blocks の部分に含まれている。
【0023】
また、図2(b)及び図2(c)はReport Blocks を構成するStatistics Summary Report Block 及びVoIP Metrics Report Block の詳細な構成を示している。このうち、パケット損失量に関する値を表すパラメータは、lost packets、loss rate 及びdiscard rateである。また、パケット送信間隔揺らぎに関する値を表すパラメータは、deviation jitter、mean jitter 及びmax jitterである。そして、パケット損失の発生の仕方に関する値を表すパラメータは、burst density 、burst duration及びgap density である。
【0024】
ここで、例えばburst density、burst duration及びgap densityは、それぞれ、所定の統計間隔において、連続的に発生したパケットロスの区間において、失われたRTCP−XRパケットの割合、その区間の長さ、連続的に発生したパケットロスの区間以外でのロスの割合を意味するパラメータである。連続的に発生したパケットロスの区間とは、パケットロスが高い確率で起こっている区間のことである。あらかじめ定められたパラメータGminを用いて、(1)ロスが始まったRTCP−XRパケットから、(2)Gmin個のRTCP−XRパケットが途切れることなくロスしており、(3)区間の最後もパケットロスしているパケット列の最も長いものとしてRFC3611に定められている。他のパラメータについても、例えばRFC3611に定められている。
【0025】
本実施の形態においては、上述したパラメータのうち、パケット損失量に関するlost packets、パケット送信間隔揺らぎに関するdeviation jitter、mean jitter 及びmax jitter並びにパケット損失の発生の仕方に関するburst density 、burst duration及びgap density のパラメータにより分類特徴ベクトルを構成する。ここで、例えばパケットの送信遅延に関する値をパラメータとして抽出し、分類特徴ベクトルを構成するようにしてもよい。
【0026】
図3は分類規則を説明するための図である。図3において、分類規則は、障害有無分類部104が判断、分類を行い、場合分けをするための数値条件を、階層的構造で有している(順序付けを行っている)。実線は数値条件を満たしたと判断した場合の遷移方向を表し、破線は数値条件を満たさなかったと判断した場合の遷移方向を表している(図3では一部(波線間)を省略している)。図3中におけるまる囲みは、数値条件を判断していった結果、導き出されるネットワークの状態を表す分類ラベルとなる。例えば、図3では無線平常状態、有線平常状態のような障害が発生していない平常状態、無線リンク障害等のような障害が発生している状態を分類ラベルとして設定する。
【0027】
例えば、図3において、「mean jitter が121以下」、「mean jitter が98以上」、「deviation jitterが162以下」、「deviation jitterが121以上」、「gap density が1以下」、「burst density が87以上」、「burst durationが240以下」の数値条件を満たすRTCP−XRパケットは、「無線リンク障害」が発生している中で行われた通信によるものであることを表している。各数値条件は、ある時間間隔において通信揺らぎ(ジッター)がそれほど大きくなく一定で、かつ異常に大きな(例えば160を超えるような)揺らぎもなく、パケット損失も起きないような通信が無線通信においての障害のない状態の1つの特徴であることから導き出したものである。ここで、本実施の形態では、パケット送信間隔揺らぎに関する数値条件から適用しているが、適用する順序は、特に限定するものではない。ただ、順序を異ならせることで、その後の場合分けにおける評価等が異なる可能性があるため、数値条件の数値、結果となる分類ラベル等が異なる可能性がある。また、ここでは分類規則の内容を図で示しているが、例えば、「IF〜THEN〜ELSE」のような条件分岐文等の形式であってもよい。
【0028】
次に障害有無分類部104において行う分類処理の動作について説明する。まず、分類規則の先頭にある数値条件から参照していき、分類特徴ベクトルの要素であるパラメータmean jitter の値が最初の数値条件である「mean jitter が121以下」であるかどうかを判断する。
【0029】
「mean jitter が121以下」であると判断すると、「mean jitter が98以上」であるかどうかを判断する。一方、「mean jitter が121以下」でないと判断すると、「max jitterが480以下」であるかどうかを判断する。以上のようにして、定められた順に、分類特徴ベクトルの対応するパラメータの値と数値条件とに基づいて判断していく。そして、最終的に、1以上の平常時状態、1以上の障害時状態のいずれかの分類ラベルを決定する。以上のようにして、その分類特徴ベクトルが抽出されたRTCP−XRパケットの通信環境におけるネットワークの状態を示す判断結果として分類されることになる。そして、障害有無分類部104は、障害時状態であると分類した場合には、結果出力部105に分類ラベルの内容等、出力を行うためのデータを渡す。
【0030】
そして、結果出力部105は障害検出結果のデータを出力し、例えば表示手段に表示等をさせる。ここで、結果出力部105は、ネットワークのどのパス上で障害が検出されたかわかるようにパケットフィルタリング部101が選別したRTCP−XRパケットから、例えばIP(Internet Protocol )アドレス等といった送信者、受信者に関するデータ(情報)を抽出し、出力するようにしてもよい。
【0031】
以上のように、実施の形態1のネットワーク障害検出システムによれば、パケット受信部100がネットワークから受信したパケットから、パケットフィルタリング部101がデータフロー制御及び送受信者に関するデータを内包するパケットを選別し、また、パラメータ抽出部102が抽出したパラメータからなる分類特徴ベクトルと分類条件記憶部103が保存している分類規則に基づいて、障害有無分類部104が分類処理を行うようにしたので、分類規則によるパラメータの数値範囲に基づいて的確なネットワーク障害の有無、障害の種類を判断することができる。このとき、一定の統計間隔でネットワークに流れるデータフロー制御及び送受信者に関する情報を内包する、例えばRTCP−XRパケットを選別して、分類処理を行うようにしたので、すべてのパケットについて障害検出のための処理を行わなくてもよくなる。このため、処理負荷が少なくなり、処理能力を高くすることなく処理を行うことができる装置を得ることができ、コストを抑えることができる。
また、パケット損失の発生の仕方に関する値をパラメータに含めることにより、パケット損失のほとんどが連続的に起こっているのかそうでないのか、また、連続的でも損失区間が短いのか長いのか、区間内での発生頻度が多いのか少ないのかといった発生のふるまいで、たとえば、無線通信特有のパケット損失なのか、あるいは無線区間の障害により損失したのかといった違いをさらに判断することができる。
【0032】
実施の形態2.
図4は本発明の実施の形態2に係るネットワーク障害検出システムの構成を表す図である。図4において、図1と同じ符号を付しているものは、実施の形態1と同様の処理動作を行うものである。分類特徴ベクトル蓄積部201は、例えば記憶装置で構成され、パラメータ抽出部102において抽出した分類特徴ベクトルをデータとして蓄積する。このとき、分類ラベルを分類特徴ベクトルに対応させておく。また、分類条件生成部202は、特徴ベクトル蓄積部201に蓄積された分類特徴ベクトル及び分類ラベルとに基づいて、分類規則を生成する処理を行う。そして、分類条件設定部203は、分類条件生成部202が生成した分類規則を分類条件記憶部103に記憶させ、設定する処理を行う。
【0033】
本実施の形態は、例えば、障害有無分類部104が処理を行う前に、ネットワーク上に実際に流れているパケットに基づいて、分類規則を生成する処理に関するものである。次に本実施の形態に係る分類規則生成、設定処理について説明する。
【0034】
図5は分類特徴ベクトル蓄積部201が蓄積するデータ内容を表として表した図である。まず、パラメータ抽出部102は、実施の形態1で説明したように、パケット受信部100が受信し、パケットフィルタリング部101が選別した、ネットワークに実際に流れるRTCP−XRパケットに基づいてパラメータを抽出する。そして、抽出したパラメータに基づく分類特徴ベクトルが分類特徴ベクトル蓄積部201に蓄積される。蓄積する際、システム管理者等がそのRTCP−XRパケットが流れた通信経路における状態に基づいて任意に設定した分類ラベルと分類特徴ベクトルとを対応付けて蓄積させる。
【0035】
例えば、有線のみの通信経路で、かつ経路に障害が発生していないRTCP−XRパケットの分類特徴ベクトルについては「有線平常状態」とする分類ラベルを対応付ける。また、有線と無線とが混在した通信経路で、かつ経路に障害が発生していないRTCP−XRパケットの分類特徴ベクトルについては「有線無線混在平常状態」とする分類ラベルを対応付ける。そして、有線と無線とが混在した通信経路で、かつ無線の経路においてリンク障害が発生しているRTCP−XRパケットの分類特徴ベクトルについては「有線無線混在リンク障害」とする分類ラベルを対応付ける。
【0036】
分類条件生成部202は、分類特徴ベクトル蓄積部201に蓄積されたデータに基づいて、分類規則を生成する処理を行う。本実施の形態では、例えばデータマイニング手法を用いて処理を行い、分類規則を生成する。データマイニング手法としては、例えば決定木、サポートベクターマシンのようなものがある。このようなデータマイニング手法のいずれか1つを使って、分類条件記憶部103がキックするような、分類特徴ベクトルの各パラメータがどのような数値範囲に含まれるとどのようなネットワークの状態にあるかという分類規則を生成し、数値範囲と分類ラベルとを対応付けるようにする。
【0037】
例えば、決定木では以下のような方法で各パラメータのとる数値範囲を決定する。今、分類ラベルをC1,C2,…,Cnとし、あるデータ集合Sに対し各分類ラベルをもつデータがそれぞれNc1,Nc2,…,Ncnであるとする。このときエントロピーI(Nc1,Nc2,…,Ncn)を以下の(1)式で算出する。ここで、Nは集合Sの要素数(Nc1+Nc2+…+Ncn)である。
【0038】
【数1】

【0039】
また、分類特徴ベクトルに含まれる各パラメータに対し、1つ以上の分割閾値を設定し、それぞれのパラメータに対するエントロピーを求める。今、パラメータaを数値範囲を定めて集合Sをm個の集合S1 ,S2 ,…,Sm に分割したとすると、パラメータaに対するそれぞれの集合におけるエントロピーを以下の(2)式で求める。ここで、NS1は集合S1 の要素数で、MはS1 ,S2 ,…,Sm の要素数の和(NS1+NS2+…+NSm)で、IS1(Nc1、Nc2,…,Ncn)は集合Sj のエントロピーである。
【0040】
【数2】

【0041】
以上から(3)式に示すように、パラメータaの情報利得Gain(a)を得る。
Gain(a)=IS(Nc1、Nc2,…,Ncn)−E(a) …(3)
【0042】
全てのパラメータに対して情報利得を計算し、その最大のものを最もよい分割パラメータとして選択し、蓄積されたデータを定めた数値範囲でそれぞれ分割する。以下、分割された集合に対し同様に情報利得が最も大きくなるパラメータと数値範囲を決めていく。そして、分割された集合に1つの分類ラベルが与えられたデータしか存在しないものにその分類ラベルを割り当てる。
【0043】
以上の動作により、決定木における各パラメータのとる数値範囲とそれによって得られる分類ラベルが割り当てられる。
【0044】
分類条件設定部203は、分類条件生成部202が生成した分類規則を分類条件記憶部103に設定する処理を行う。実施の形態1で説明したように、分類条件記憶部103が記憶する分類規則に基づいて分類処理を行う。
【0045】
以上のように、実施の形態2のネットワーク障害検出システムによれば、ネットワークに流れるパケットに係る分類特徴ベクトルを分類特徴ベクトル蓄積部201に蓄積しておき、分類条件生成部202がデータマイニング手法に基づいて分類規則を生成するようにしたので、実際のパケットに基づく分類規則を生成し、分類条件記憶部103に記憶させることができる。また、これにより、現状のネットワークの状態に基づく分類規則を随時生成し直す等することができ、ネットワークの状況変化による誤判定を減らすことができる。
【0046】
実施の形態3.
図6は本発明の実施の形態3に係るネットワーク障害検出システムの構成を表す図である。図6において、図1と同じ符号を付しているものは、実施の形態1と同様の処理動作を行うものである。
【0047】
障害数計数部301は、障害有無分類部104が行った分類結果に基づいて、任意の単位数毎に障害数を計数する処理を行う。本実施の形態では、例えばRTCP−XRパケットの送信元のIPアドレス及び送信先のIPアドレスの組毎に障害数を計数する。ネットワークトポロジ記憶部302は、例えばノード間の接続の有無等、ネットワークの構成を表すネットワークトポロジをデータとして記憶する。障害箇所推定部303は、障害として検出された通信の経路とネットワークトポロジ記憶部302が記憶するネットワーク構成のデータとに基づいて、経路の重なる部分を障害発生箇所として絞り込む処理を行う。
【0048】
本実施の形態は、例えば、障害有無分類部104が処理を行った分類結果に基づいて、さらに詳細な障害検出、障害発生箇所の推定等を行う処理に関するものである。次に本実施の形態に係る障害発生箇所推定処理等について説明する。
【0049】
図7は障害数計数部301の処理を説明するための図である。例えば、IPアドレスがCCC.BBB.KKK.YYY を送信元(src )とし、BBB.DDD.AAA.CCC を送信先(dst )とするRTCP−XRパケットに係る分類特徴ベクトルについて障害有無分類部104が分類処理した結果、障害と分類すると、障害カウント数を5から1増やして6にする。例えば、該当する送信元のIPアドレス及び送信先のIPアドレスの組が存在しなければ、新しく追加処理を行い、障害カウント数を1とする。
【0050】
そして、単位数の分類結果について計数カウントを終了すると、あらかじめ定めた閾値を超えた障害数となった送信元のIPアドレス及び送信先のIPアドレスの組を障害発生頻度が多いとし、障害のある通信として判定を行い、処理結果を結果出力部105に出力する。例えば、閾値を10とした場合、送信元のIPアドレスがCCC.BBB.KKK.YYY 及び送信先のIPアドレスがYYY.DDD.DDD.XXX の組における通信の障害カウント数が15であるため、障害のある通信として判定する。
【0051】
図8はネットワークトポロジの例を表す図である。図8(a)は実際のネットワークを模式化して表したものである。また、図8(b)は図8(a)をネットワークトポロジ記憶部302が記憶するデータをテーブル形式で表したものである。
【0052】
図9は各ノードとIPアドレスとの関係を表す図である。各ノードを構成するサーバ等の機器は、それぞれ図7に示すIPアドレスを有しているものとする。閾値を超えて障害のある通信と判定された判定送信元のIPアドレス及び送信先のIPアドレスの組に係るデータ(情報)と障害がないと判定された組のデータとから、図9に示す太線の経路について障害発生箇所として推測することができる。
【0053】
例えば、図7に示す障害カウント数と閾値とから、IPアドレスがCCC.BBB.KKK.YYY からYYY.DDD.DDD.XXX への経路、CCC.BBB.DDD.YYY からYYY.DDD.DDD.XXX への経路、及びDDD.AAA.CCC.BBB からKKK.XXX.YYY.ZZZ の経路が障害のある通信経路となる。しかし、CCC.BBB.KKK.YYY からBBB.DDD.AAA.CCC への経路、及びBBB.DDD.AAA.CCC からCCC.BBB.DDD.YYY への経路が障害のない通信経路であることから、BBB.DDD.AAA.CCC とYYY.DDD.DDD.XXX との間の経路を障害発生箇所として推測する。一方、DDD.AAA.CCC.BBB からKKK.XXX.YYY.ZZZ への経路については、障害のない通信経路と判定された他の経路が存在しないことから、障害発生箇所と推測することができない。
【0054】
以上のようにして、障害発生箇所と推測することができた通信経路、障害発生箇所を推測できなかった場合には、障害のある通信と判定された通信経路全体を処理結果として結果出力部105に出力する。
【0055】
以上のように、実施の形態3のネットワーク障害検出システムによれば、障害有無分類部104が複数の分類特徴ベクトルについて分類処理を行った結果について、障害数計数部301が、例えば送信元のIPアドレスと送信先のIPアドレスの組等、所定の単位毎に障害数を計数し、例えばその数が閾値を超えたときに障害として出力するようにしたので、一回の分類だけで障害を検出することなく、障害数という統計値に基づいて、障害発生の確からしさ、発生度合いから、より高精度に障害検出を行うことができる。また、障害箇所推定部303がネットワーク内の障害箇所の推定を行うようにしたので、障害箇所の絞り込みを行うことができ、早急な障害、復旧対策を行うことができる。
【0056】
実施の形態4.
前述した実施の形態1においては、障害有無分類部104は、1の分類規則に基づいて分類処理を行う場合について説明したが、例えば、ある分類特徴ベクトルについて、複数の分類規則による分類処理を行うようにしてもよい。複数の分類規則から分類処理を行った場合、最終的に複数の分類ラベルが決定されることになる場合がある。このとき、多数決分類決定部(図示せず)を設ける等して、多数決により、最も決定数が多かった分類ラベルを最終的な判断結果として決定し、結果出力部105に出力するようにするとよい。
【0057】
そして、例えば、上述の実施の形態2において、また、例えば決定木の一手法であるランダムフォレスト法のようなアンサンブル学習法では一度に複数の分類規則を生成することができる。この場合に、多数決分類決定部により多数決に係る処理を行うようにしてもよい。
【0058】
実施の形態5.
前述した実施の形態3においては、障害数計数部301は、RTCP−XRパケットの送信元のIPアドレス及び送信先のIPアドレスの組毎に障害数を計数するようにした。ただ、これに限定するものではなく、例えば、AS(Autonomous System :自律システム)に基づくネットワーク毎の障害数を計数するようにしてもよい。
【0059】
また、実施の形態3においては、障害数のみを計数するようにしていたが、例えば障害がない平常時状態と分類した数(以下、非障害数という)を計数するようにしてもよい。そして、障害のある通信であるか否かを判断する場合、前述した閾値ではなく、例えば障害数が非障害数の2倍以上であると障害のある通信として判定を行い、処理結果を結果出力部105に出力するようにしてもよい。
【0060】
実施の形態6.
上述の実施の形態では、選別するパケットがRTCP−XRパケットであるものとして説明したが、RTCP−XRパケットに限定するものではない。例えば前述したように、データフロー制御等の分類特徴ベクトルの要素となるパラメータ、送受信先に関するデータを有する他のパケットでも適用することができる。
【符号の説明】
【0061】
100 パケット受信部
101 パケットフィルタリング部
102 パラメータ抽出部
103 分類条件記憶部
104 障害有無分類部
105 結果出力部
201 分類特徴ベクトル蓄積部
202 分類条件生成部
203 分類条件設定部
301 障害数計数部
302 ネットワークトポロジ記憶部
303 障害箇所推定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ネットワークを流れるパケットから、通信に係るパケット損失量に関する値、パケット送信間隔揺らぎに関する値、パケット損失の発生の仕方に関する値に係るパラメータのうち、少なくとも1つのパラメータの値を分類特徴ベクトルとして抽出する処理を行うパラメータ抽出部と、
前記ネットワークの状態に係る場合分けを行うための数値条件と前記分類特徴ベクトルの対応するパラメータの値とを比較していって障害の有無及び障害の種類を分類する処理を行う障害有無分類部と
を備えることを特徴とするネットワーク障害検出システム。
【請求項2】
前記パラメータ抽出部は、前記パケットの送信遅延に関するパラメータの値を抽出し、前記分類特徴ベクトルに含めることを特徴とする請求項1記載のネットワーク障害検出システム。
【請求項3】
前記パラメータ抽出部は、前記パケット送信間隔揺らぎに関する値については、あらかじめ定めた統計間隔におけるパケットの送信間隔揺らぎの平均値、偏差、最大値のうちの少なくとも1つを抽出し、
前記パケット損失の発生の仕方に関する値については、パケット損失の連続発生区間の長さ、前記連続発生区間における発生割合、連続発生区間外での発生割合のうちの少なくとも1つを抽出することを特徴とする請求項1又は2記載のネットワーク障害検出システム。
【請求項4】
前記パラメータに基づいて前記ネットワークの状態に係る場合分けを行うための数値条件と、該数値条件の適用順序と、前記数値条件を適用していった結果となる、前記ネットワークにおける障害の有無及び障害の種類を表す分類ラベルとを定めた分類規則をデータとして記憶する分類条件記憶部をさらに備え、
前記ネットワークにおける無線リンクに関する障害に係る前記分類ラベルを有する場合には、
あらかじめ定めた統計間隔における前記パケットの送信間隔揺らぎの平均値及び偏差が所定の範囲内にあること、パケット損失の連続発生区間外での発生割合が第1の所定値以下であること、前記パケット損失の連続発生区間の長さが第2の所定値以上であること及び連続発生区間における前記パケット損失の発生割合が第3の所定値以上であることを、前記数値条件に含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のネットワーク障害検出システム。
【請求項5】
前記分類条件記憶部は前記分類規則を複数有しており、
前記障害有無分類部が複数の分類規則に基づいて分類処理を行って決定した複数の分類ラベルのうち、最も多い分類ラベルを最終分類結果とする多数決分類決定部をさらに備えることを特徴とする請求項4記載のネットワーク障害検出システム。
【請求項6】
前記分類規則を前記分類条件記憶部に記憶させて設定する処理を行う分類条件設定部をさらに備えることを特徴とする請求項5記載のネットワーク障害検出システム。
【請求項7】
あらかじめ受信したパケットから抽出した分類特徴ベクトルと、該分類特徴ベクトルに係るパケットを受信したときのネットワークの状態を表す分類ラベルとに基づいて、前記分類特徴ベクトルのパラメータを解析し、分類規則を生成する処理を行う分類条件生成部をさらに備えることを特徴とする請求項4〜6のいずれかに記載のネットワーク障害検出システム。
【請求項8】
前記分類条件生成部は、データマイニング手法に基づいて前記パラメータを解析し、前記分類規則を生成することを特徴とする請求項7記載のネットワーク障害検出システム。
【請求項9】
前記分類条件生成部は、決定木、サポートベクターマシン、ニューラルネットワーク、ベイズネット、ランダムフォレスト法のうちのいずれかの前記データマイニング手法に基づいて生成処理することを特徴とする請求項8記載のネットワーク障害検出システム。
【請求項10】
前記パラメータ抽出部は、RTCP−XRのプロトコルに基づくパケットから前記分類特徴ベクトルを抽出する処理を行い、前記抽出するパラメータにおいて、パケット損失量に関する値は、前記RTCP−XRで定められたlost packets、loss rate 及びdiscard rateであり、パケット送信間隔揺らぎに関する値は、前記RTCP−XRで定められたdeviation jitter、mean jitter 及びmax jitterであり、パケット損失の発生の仕方に関する値は、前記RTCP−XRで定められたburst density 、burst duration及びgap density であることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載のネットワーク障害検出システム。
【請求項11】
前記パラメータ抽出部は、RTCP−XRのプロトコルに基づくパケットから前記分類特徴ベクトルを抽出する処理を行い、前記抽出するパラメータにおいて、あらかじめ定めた統計間隔におけるパケットの送信間隔揺らぎの平均値は前記RTCP−XRで定められたmean jitter 、偏差はdeviation jitter、最大値はmax jitterであり、前記パケット損失の連続発生区間の長さは前記RTCP−XRで定められたburst duration、前記連続発生区間における発生割合はburst density 、連続発生区間外での発生割合はgap density であることを特徴とする請求項3〜10のいずれかに記載のネットワーク障害検出システム。
【請求項12】
前記ネットワークを流れるパケットを受信するパケット受信部と、
該パケット受信部が受信した前記パケットのうち、前記分類特徴ベクトルとして抽出するパラメータを含むパケットを選別して前記パラメータ抽出部に送るパケットフィルタリング部と
をさらに備えることを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載のネットワーク障害検出システム。
【請求項13】
前記障害有無分類部の処理に基づいて、あらかじめ定めた単位毎に計数する障害数計数部をさらに備えることを特徴とする請求項1〜12のいずれかに記載のネットワーク障害検出システム。
【請求項14】
前記障害数計数部は、送信元のIPアドレスと送信先のIPアドレスとの組を前記あらかじめ定めた単位とすることを特徴とする請求項13記載のネットワーク障害検出システム。
【請求項15】
前記障害数計数部は、自律システムを前記あらかじめ定めた単位とすることを特徴とする請求項13記載のネットワーク障害検出システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−171981(P2011−171981A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−33538(P2010−33538)
【出願日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(独立行政法人情報通信研究機構「高度通信・放送研究開発委託研究/次世代ネットワーク(NGN)基盤技術の研究開発」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受けるもの)
【出願人】(000000295)沖電気工業株式会社 (6,645)
【Fターム(参考)】