説明

ノイズフィルタ

【課題】立ち上がり時間が遅いノイズが印加された場合には、ノイズを素早く接地部に放出するためFGパターンを低インピーダンスにして当該ノイズに対応したノイズ耐量が最も高くなるようにしたので、異なる種類のノイズに対してノイズ耐量を向上させる。
【解決手段】ノイズを逃がす経路を有する装置に適用されるノイズフィルタ10において、基板1に形成されたフレームグランドパターン2上に配設される抵抗素子4と、抵抗素子4に並列に接続され、非導通時の抵抗値が抵抗素子4の抵抗値より高く、かつ、導通時の抵抗値が抵抗素子4の抵抗値より低い特性を有するバリスタ3とを備えて成る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、信号伝送ラインの電磁ノイズ対策に用いられるノイズフィルタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的に、電子機器等の多くは、筺体内に電子部品等が実装されたプリント基板等の回路基板が収容され、これら回路基板に実装された電子部品等は、静電気により電気的破壊に至る場合や誤動作する場合があり、特に電子機器等の筺体が金属で形成されている場合には、人体に帯電した静電気が金属筺体を介して電子部品等に放電されて電気的破壊に至る場合が多い。さらに、電子部品等の内部には多数のトランジスタ等が搭載されているため、そのスイッチング動作などによって発生するノイズが回路を誤動作させる原因ともなっている。そのため、従来の電子機器等は、筺体にアース線を接続したりFG(フレームグランド)パターンを形成することによって印加されたノイズをアースに放出して電子部品等の電気的破壊や誤動作を防止している。ただし、FGパターンなどに急峻なノイズが印加された場合には、急峻なノイズが電子部品等に直接放電し電子部品等を破壊するおそれがあるという問題があった。
【0003】
このようなニーズを満たす手段として、下記特許文献1に示される従来技術は、FGパターン上に抵抗Rと抵抗Rに並列に接続されたコンデンサCとが配設され、コンデンサCのインピーダンスは抵抗Rのインピーダンスより低い値に設定されている。そのため、RC成分に静電気が印加された場合、まずコンデンサCに電荷が充電され、コンデンサCが飽和状態に近づくとコンデンサCのインピーダンスが抵抗Rのインピーダンスを越えるためにコンデンサCの電荷が抵抗Rを通って外部に放出される。ノイズの電圧値は抵抗Rを通過する際に抑制されるので、急峻なノイズに対する不要輻射が低減される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−012495号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に代表される従来技術では、抵抗Rのインピーダンスが高いため、立ち上がり時間が比較的遅いノイズに対するノイズ耐量を高めることができなかった。このことを詳説すると、急峻なノイズに対しては、ノイズの尖頭部を低下させるためにFGパターンを高インピーダンスにして、当該ノイズに対するノイズ耐量が最も高くなるように構成しなければならない。その逆に、立ち上がり時間が比較的遅いノイズに対しては、ノイズを素早く接地部に放出するためにFGパターンを低インピーダンスにして、当該ノイズに対するノイズ耐量が最も高くなるように構成しなければならない。すなわち、上記特許文献1に代表される従来技術は、異なる種類のノイズに対して同時にノイズ耐量を向上させることができないという課題があった。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、異なる種類のノイズに対してノイズ耐量を向上させることが可能なノイズフィルタを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、この発明は、ノイズを逃がす経路を有する装置に適用されるノイズフィルタにおいて、回路基板に形成されたフレームグランドパターン上に配設される抵抗素子と、前記抵抗素子に並列に接続され、非導通時の抵抗値が前記抵抗素子の抵抗値より高く、かつ、導通時の抵抗値が前記抵抗素子の抵抗値より低い特性を有するバリスタとを備えてなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、FGパターン上に抵抗とバリスタが並列に接続されたノイズフィルタを配設するようにしたので、急峻なノイズが印加された場合には、ノイズの尖頭部を低下させるために高インピーダンスにして当該ノイズに対するノイズ耐量が最も高くなるように構成され、立ち上がり時間が遅いノイズが印加された場合には、ノイズを素早く接地部に放出するためFGパターンを低インピーダンスにして当該ノイズに対応したノイズ耐量が最も高くなるようにしたので、異なる種類のノイズに対してノイズ耐量を向上させることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、本発明の実施の形態に係るノイズフィルタの構成を示す図である。
【図2】図2は、本発明の実施の形態に係るノイズフィルタに一般的なノイズが印加された場合の動作を説明するための図である。
【図3】図3は、一般的なノイズとバリスタ応答時間の関係を説明するための図である。
【図4】図4は、本発明の実施の形態に係るノイズフィルタに急峻なノイズが印加された場合の動作を説明するための図である。
【図5】図5は、急峻なノイズとバリスタ応答時間の関係を説明するための図である。
【図6】図6は、抵抗によって急峻なノイズのピーク値が変化した状態を示す図である。
【図7】図7は、本発明の実施の形態に係るノイズフィルタを配設しないFGパターンから発生する輻射ノイズの状態を示す図である。
【図8】図8は、本発明の実施の形態に係るノイズフィルタを配設したFGパターンから発生する輻射ノイズの状態を示す図である。
【図9】図9は、FG側にノイズフィルタを配設した場合にFGパターンから発生する輻射ノイズの状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明にかかるノイズフィルタの実施の形態を図面に基づき詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0011】
実施の形態.
図1は、本発明の実施の形態に係るノイズフィルタの構成を示す図である。図1に示されるノイズフィルタ10は、基板1内において一端が外部のケーブルなどを接続するコネクタなどの金属部5に接続され他端がFG6に接続されたFGパターン2に配設されている。ノイズフィルタ10は、FGパターン2の所定箇所において、バリスタ3と抵抗4とを並列に接続し、金属部5からのノイズをFG6に放出するフィルタ回路として機能する。図1に示されるノイズフィルタ10は、ノイズが印加される可能性の高い金属部5からのノイズを効果的に放出するために、金属部5の直近に配設されている。
【0012】
図2は、本発明の実施の形態に係るノイズフィルタに一般的なノイズが印加された場合の動作を説明するための図であり、図3は、一般的なノイズとバリスタ応答時間の関係を説明するための図である。
【0013】
一般的なノイズ7が金属部5に印加された場合、一般的なノイズの立上り時間は、バリスタ3が高インピーダンス状態から低インピーダンス状態になるまでの時間(以下単に「バリスタ応答時間」と称する)に比べ充分長い。そのため、バリスタ3に印加されたノイズ7は、低インピーダンス状態のバリスタ3を経由してFG6に放出される。なお、図3ではバリスタ3の応答時間は約5nsであるが、この応答時間に限定されるものではない。
【0014】
図4は、本発明の実施の形態に係るノイズフィルタに急峻なノイズが印加された場合の動作を説明するための図であり、図5は、急峻なノイズとバリスタ応答時間の関係を説明するための図であり、図6は、抵抗によって急峻なノイズのピーク値が変化した状態を示す図である。
【0015】
急峻なノイズ8が金属部5に印加された場合、ノイズ8の立上り時間(例えば2〜3ns)は、バリスタ応答時間比べ短い。そのため、バリスタ3に印加されたノイズ8は、高インピーダンス状態のバリスタ3を経由せずに、抵抗4を経由してFG6に放出される。すなわち、バリスタ3が低インピーダンスとなるまでに所定の時間を必要とするため、その間に抵抗4により急峻なノイズ8の尖頭部を低下させることが可能となる。
【0016】
図6の左側には、印加されるノイズ8のピーク値が示され、図6の右側には、抵抗4を通過した後のノイズ8の状態が示されている。このように、バリスタ3に印加されたノイズ8が抵抗4を経由することにより、ノイズ8の尖頭部を低下させることができる。その結果、基板1上の他の信号パターンを誤動作させる輻射ノイズレベルが軽減される。なお、抵抗4の抵抗値は、ノイズ8がFG6に素早く放出されるようにするため、例えば数Ω〜数十Ωが望ましい。
【0017】
図7は、本発明の実施の形態に係るノイズフィルタを配設しないFGパターンから発生する輻射ノイズの状態を示す図であり、図8は、本発明の実施の形態に係るノイズフィルタを配設したFGパターンから発生する輻射ノイズの状態を示す図であり、図9は、FG側にノイズフィルタを配設した場合にFGパターンから発生する輻射ノイズの状態を示す図である。
【0018】
図7に示すように、FGパターン2上にノイズフィルタ10を配設しない場合、急峻なノイズ8が印加されると、基板1上の他の信号パターンを誤動作させるような輻射ノイズ9のレベルが、複数の矢印で示すように大きくなる。一方、図8に示すように、金属部5の直近に本実施の形態にかかるノイズフィルタ10を配設した場合、急峻なノイズ8が印加されても、輻射ノイズ9のレベルが抵抗4を経由する際に大幅に軽減される。
【0019】
図9に示されるような位置にノイズフィルタ10を配設した場合、金属部5とノイズフィルタ10の間から輻射ノイズ9が多く発生する。そのため、ノイズフィルタ10は、できる限り金属部5側に近づけることが望ましい。
【0020】
このように、バリスタ3は、非導通時の抵抗値が抵抗4の抵抗値より高く、かつ、導通時の抵抗値が抵抗4の抵抗値より低い特性を有しており、非導通時の抵抗値から導通時の抵抗値に変化するまでに要する応答時間が、抑制対象のノイズ8の立ち上がり時間より長く設定されている。なお、本実施の形態では、ノイズフィルタ10はバリスタ3と抵抗4のみで構成されているが、これに限定されるものではなく、たとえば、当該並列回路に図示しない他の抵抗素子を直列に接続するなどして構成してもよい。
【0021】
以上に説明したように、本実施の形態にかかるノイズフィルタ10は、抵抗4とバリスタ3を並列接続しFGパターン2上に配設され、急峻なノイズが印加された場合には高インピーダンスにして当該ノイズに対するノイズ耐量が最も高くなり、立ち上がり時間が遅いノイズが印加された場合にはFGパターンを低インピーダンスにして当該ノイズに対応したノイズ耐量が最も高くなるようにしたので、異なる種類のノイズに対してノイズ耐量を向上させることができる。すなわち、バリスタ3はできる限り低インピーダンスとし一般的なノイズ7を逃すように機能し、抵抗4は急峻なノイズ8の尖頭部を低下させるように機能する。その結果、基板1上の他の信号パターンを誤動作させる輻射ノイズレベルが軽減され、従来技術よりも電子部品等の損傷や誤動作といった問題を一層効果的に抑制することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0022】
以上のように、本発明に係るノイズフィルタは、信号伝送ラインの電磁ノイズ対策に用いられるノイズフィルタに適用可能であり、特に、異なる種類のノイズに対してノイズ耐量を向上させることが可能な発明として有用である。
【符号の説明】
【0023】
1 基板
2 FGパターン
3 バリスタ
4 抵抗
5 金属部
6 FG
7 一般的なノイズ
8 急峻なノイズ
9 輻射ノイズ
10 ノイズフィルタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノイズを逃がす経路を有する装置に適用されるノイズフィルタにおいて、
回路基板に形成されたフレームグランドパターン上に配設される抵抗素子と、
前記抵抗素子に並列に接続され、非導通時の抵抗値が前記抵抗素子の抵抗値より高く、かつ、導通時の抵抗値が前記抵抗素子の抵抗値より低い特性を有するバリスタと、
を備えてなることを特徴とするノイズフィルタ。
【請求項2】
前記非導通時の抵抗値が前記導通時の抵抗値に変化するまでに要する前記バリスタの応答時間は、抑制対象のノイズの立ち上がり時間より長いことを特徴とする請求項1に記載のノイズフィルタ。
【請求項3】
ノイズを逃がす経路を有する装置に適用されるノイズフィルタにおいて、
回路基板に形成されたフレームグランドパターン上に配設される抵抗素子、および、前記抵抗素子に並列に接続され非導通時の抵抗値が前記抵抗素子の抵抗値より高くかつ導通時の抵抗値が前記抵抗素子の抵抗値より低い特性を有するバリスタで構成された並列回路を備えてなることを特徴とするノイズフィルタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−232849(P2010−232849A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−76807(P2009−76807)
【出願日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】